(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】電極ユニットおよび内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2020568893
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2019002750
(87)【国際公開番号】W WO2020157803
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生熊 聡一
(72)【発明者】
【氏名】林田 剛史
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-095677(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0053908(US,A1)
【文献】特表2001-517529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351826(US,A1)
【文献】特開平05-220172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流を用いて
被検体内の組織を切除または凝固する電極ユニットであって、
表面が電気絶縁性を有する材料により被覆された一対の先端硬質部を備える電極支持部と、
前記先端硬質部によって支持され、2つの前記先端硬質部の一対の対向面から第1軸に沿って互いに近づくように突出している一対の基部と、略コ字状または略U字状で、長手軸に沿う方向から見た場合において、前記一対の基部から下方に向かって凸形状となるように湾曲している、前記先端硬質部の表面から離間した状態で前記一対の基部を接続する架設部とから構成される処置用電極と、
前記一対の先端硬質部のそれぞれの基端側に配置され、前記先端硬質部と前記組織との接触状態を検出する検知用電極と、
を含むことを特徴とする電極ユニット。
【請求項2】
高周波電流を用いて
被検体内の組織を切除または凝固する電極ユニットであって、
表面が電気絶縁性を有する材料により被覆された一対の先端硬質部と、前記先端硬質部よりも剛性の低い弾性領域と、を備える電極支持部と、
前記先端硬質部によって支持され、2つの前記先端硬質部の一対の対向面から第1軸に沿って互いに近づくように突出している一対の基部と、略コ字状または略U字状で、長手軸に沿う方向から見た場合において、前記一対の基部から下方に向かって凸形状となるように湾曲している、前記先端硬質部の表面から離間した状態で前記一対の基部を接続する架設部とから構成される処置用電極と、
前記弾性領域の基端側に配置される基端硬質部と、
前記弾性領域の曲がり量を検出する曲がり検知センサと、
前記基端硬質部の重力方向に対する傾き量を検出する姿勢検知センサと、
を含むことを特徴とする電極ユニット。
【請求項3】
内視鏡による観察下において高周波電流を用いて被検体内の組織を処置する電極ユニットであって、
前記被検体内に挿入され、外表面が電気絶縁性を有する材料からなる電極支持部と、
前記電極支持部の先端部に設けられた先端硬質部と、
前記先端硬質部によって支持され、前記先端硬質部の外表面から突出する処置用電極と、
前記処置用電極との間で通電される回収電極と、
前記先端硬質部の外表面のうちの前記処置用電極が突出する方向に向く面において、前記処置用電極よりも基端側に配置され、前記先端硬質部と前記組織との接触状態を検出する検知用電極と、
を含むことを特徴とする電極ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の電極ユニットと、
高周波の出力を制御する高周波電源制御装置と、
前記高周波電源制御装置に設けられ、前記電極ユニットを流れる電流の抵抗値を検知する抵抗検知部と、を含み、
前記高周波電源制御装置は、前記検知用電極が、一対の前記先端硬質部の間を流れる電流の抵抗値を検出し、前記抵抗値に基づき、前記処置用電極への高周波電流の出力を制御することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項5】
前記電極ユニットは、複数の前記検知用電極を備え、
前記抵抗検知部は、複数の前記検知用電極の間の抵抗値を検知し、
前記高周波電源制御装置は、前記抵抗検知部により検知される抵抗値が所定の閾値以上である場合に、前記処置用電極への高周波電流の出力を許可し、前記抵抗値が所定の閾値未満である場合に、前記処置用電極への高周波電流の出力を禁止する
ことを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
さらに、回収電極を備え、
前記抵抗検知部は、前記検知用電極と前記回収電極との間の抵抗値を検知し、
前記高周波電源制御装置は、前記抵抗検知部により検知される抵抗値が所定の閾値以上である場合に、前記処置用電極への高周波電流の出力を許可し、前記抵抗値が所定の閾値未満である場合に、前記処置用電極への高周波電流の出力を禁止する
ことを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記被検体内において潅流液の圧力を検知する圧力センサを備え、
前記高周波電源制御装置は、前記圧力センサにより検知される潅流液の圧力が所定の範囲外である場合には、前記抵抗値の値に関わらず前記処置用電極への高周波電流の出力を禁止する
ことを特徴とする請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
請求項2に記載の電極ユニットと、
高周波の出力を制御する高周波電源制御装置と、
前記高周波電源制御装置に設けられたプロセッサと、を含み、
前記プロセッサは、前記曲がり量と前記傾き量とに基づいて、前記先端硬質部の前記組織に対する姿勢を検出し、前記姿勢に基づき、前記処置用電極への高周波電流の出力を制御することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項9】
請求項3に記載の電極ユニットと、
高周波の出力を制御する高周波電源制御装置と、
前記高周波電源制御装置に設けられ、前記電極ユニットを流れる電流の抵抗値を検知する抵抗検知回路と、を含み、
前記高周波電源制御装置は、前記検知用電極が、一対の前記先端硬質部の間を流れる電流の抵抗値を検出し、前記抵抗値に基づき、前記処置用電極への高周波電流の出力を制御することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項10】
前記電極ユニットは、複数の前記検知用電極を備え、
前記抵抗検知回路は、複数の前記検知用電極の間の抵抗値を検知し、
前記高周波電源制御装置は、前記抵抗検知回路により検知される抵抗値が所定の閾値以上である場合に、前記処置用電極への高周波電流の出力を許可し、前記抵抗値が所定の閾値未満である場合に、前記処置用電極への高周波電流の出力を禁止することを特徴とする請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記抵抗検知回路は、前記検知用電極と前記回収電極との間の抵抗値を検知し、
前記高周波電源制御装置は、前記抵抗検知回路により検知される抵抗値が所定の閾値以上である場合に、前記処置用電極への高周波電流の出力を許可し、前記抵抗値が所定の閾値未満である場合に、前記処置用電極への高周波電流の出力を禁止することを特徴とする請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記被検体内において潅流液の圧力を検知する圧力センサを備え、
前記高周波電源制御装置は、前記圧力センサにより検知される潅流液の圧力が所定の範囲外である場合には、前記抵抗値の値に関わらず前記処置用電極への高周波電流の出力を禁止することを特徴とする請求項10に記載の内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電流を用いて被検体内の組織を処置する電極ユニットおよび内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体等の被検体の組織を処置(例えば、切除または凝固等)する技術として電気メスが知られている。例えば、日本国特許3730796号公報には、内視鏡による観察下において、高周波電流を用いて被検体内の組織を処置(例えば、切除または凝固等)する装置が開示されている。日本国特許3730796号公報に開示の技術では、ループ形状に形成された電極に高周波電流を流すことにより、組織の処置(例えば、切除または凝固等)を行う。
【0003】
日本国特許3730796号公報に開示されているような、ループ形状に形成された電極は、例えば膀胱等の臓器内の組織を切除するために用いられる。ここで、電極が臓器の壁面に入り込む深さは、使用者が電極を壁面に押しつける力の強さに応じて変化する。このため、従来のループ形状に形成された電極を用いて組織を切除する場合、使用者が加える力加減によって切除される組織の厚さにばらつきが生じてしまう。例えば、切除した組織を生検に用いる場合、所定の厚さの組織が必要となるため、切除される組織の厚さは使用者によらず一定であることが好ましい。
【0004】
本発明は、上述した点を解決するものであって、切除する組織の厚さの制御が容易な電極ユニットおよび内視鏡システムを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による電極ユニットは、高周波電流を用いて被検体内の組織を切除または凝固する電極ユニットであって、表面が電気絶縁性を有する材料により被覆された一対の先端硬質部を備える電極支持部と、前記先端硬質部によって支持され、2つの前記先端硬質部の一対の対向面から第1軸に沿って互いに近づくように突出している一対の基部と、略コ字状または略U字状で、長手軸に沿う方向から見た場合において、前記一対の基部から下方に向かって凸形状となるように湾曲している、前記先端硬質部の表面から離間した状態で前記一対の基部を接続する架設部とから構成される処置用電極と、前記一対の先端硬質部のそれぞれの基端側に配置され、前記先端硬質部と前記組織との接触状態を検出する検知用電極と、を含む。
また、本発明の他の態様の電極ユニットは、高周波電流を用いて被検体内の組織を切除または凝固する電極ユニットであって、表面が電気絶縁性を有する材料により被覆された一対の先端硬質部と、前記先端硬質部よりも剛性の低い弾性領域と、を備える電極支持部と、前記先端硬質部によって支持され、2つの前記先端硬質部の一対の対向面から第1軸に沿って互いに近づくように突出している一対の基部と、略コ字状または略U字状で、長手軸に沿う方向から見た場合において、前記一対の基部から下方に向かって凸形状となるように湾曲している、前記先端硬質部の表面から離間した状態で前記一対の基部を接続する架設部とから構成される処置用電極と、前記弾性領域の基端側に配置される基端硬質部と、前記弾性領域の曲がり量を検出する曲がり検知センサと、前記基端硬質部の重力方向に対する傾き量を検出する姿勢検知センサと、を含む。
また、本発明のさらなる他の態様の電極ユニットは、内視鏡による観察下において高周波電流を用いて被検体内の組織を処置する電極ユニットであって、前記被検体内に挿入され、外表面が電気絶縁性を有する材料からなる電極支持部と、前記電極支持部の先端部に設けられた先端硬質部と、前記先端硬質部によって支持され、前記先端硬質部の外表面から突出する処置用電極と、前記処置用電極との間で通電される回収電極と、前記先端硬質部の外表面のうちの前記処置用電極が突出する方向に向く面において、前記処置用電極よりも基端側に配置され、前記先端硬質部と前記組織との接触状態を検出する検知用電極と、を含む。
【0006】
また、本発明の一態様による内視鏡システムは、前記本発明の一態様による電極ユニットと、高周波の出力を制御する高周波電源制御装置と、前記高周波電源制御装置に設けられ、前記電極ユニットを流れる電流の抵抗値を検知する抵抗検知部と、を含み、前記高周波電源装置は、前記検知用電極が、一対の前記先端硬質部の間を流れる電流の抵抗値を検出し、前記抵抗値に基づき、前記処置用電極への高周波電流の出力を制御する。
また、本発明の他態様による内視鏡システムは、前記本発明の他態様による電極ユニットと、高周波の出力を制御する高周波電源制御装置と、前記高周波電源制御装置に設けられたプロセッサと、を含み、前記プロセッサは、前記曲がり量と前記傾き量とに基づいて、前記先端硬質部の前記組織に対する姿勢を検出し、前記姿勢に基づき、前記処置用電極への高周波電流の出力を制御する。
また、本発明のさらなる他態様による内視鏡システムは、前記本発明のさらなる他態様による電極ユニットと、高周波の出力を制御する高周波電源制御装置と、前記高周波電源制御装置に設けられ、前記電極ユニットを流れる電流の抵抗値を検知する抵抗検知回路と、を含み、前記高周波電源装置は、前記検知用電極が、一対の前記先端硬質部の間を流れる電流の抵抗値を検出し、前記抵抗値に基づき、前記処置用電極への高周波電流の出力を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の内視鏡システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態の電極ユニットを第1軸に沿って見た図である。
【
図3】第1の実施形態の電極ユニットを第2軸に沿って見た図である。
【
図7】第1の実施形態の高周波電源制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態の電極ユニットを用いて組織を切除する様子を示す図である。
【
図9】第1の実施形態の電極ユニットを用いて組織を切除する様子を示す図である。
【
図10】第1の実施形態の電極ユニットを用いて組織を切除する様子を示す図である。
【
図11】第2の実施形態の内視鏡システムの概略的な構成を示す図である。
【
図12】第2の実施形態の高周波電源制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】第3の実施形態の内視鏡システムの概略的な構成を示す図である。
【
図14】第3の実施形態の検知用電極の構成を示す断面図である。
【
図15】第3の実施形態の高周波電源制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図16】第4の実施形態の内視鏡システムの概略的な構成を示す図である。
【
図17】第4の実施形態の高周波電源制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図18】第5の実施形態の電極ユニットを第1軸に沿って見た図である。
【
図19】第5の実施形態の高周波電源制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図20】第5の実施形態の電極ユニットを用いて組織を切除する様子を示す図である。
【
図21】第5の実施形態の電極ユニットを用いて組織を切除する様子を示す図である。
【
図22】第6の実施形態の電極ユニットを第2軸に沿って上方から見た図である。
【
図23】第6の実施形態の電極ユニットを第1軸に沿って見た図である。
【
図24】第6の実施形態の電極ユニットの弾性領域を湾曲させた状態を示す図である。
【
図25】第6の実施形態の第4指標を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、内視鏡システム1の概略的な構成を示す図である。内視鏡システム1は、被検体内において、内視鏡による観察下で組織を処置(例えば、切除または凝固等)する装置である。
【0010】
本実施形態の内視鏡システム1は、内視鏡であるレゼクトスコープ10、電極ユニット30および外部装置50を含む。本実施形態では一例として、被検体は人体である。また、本実施形態では一例として、内視鏡は一般にレゼクトスコープと称される形態のものであるが、内視鏡は軟性内視鏡であってもよい。
【0011】
レゼクトスコープ10は、シース11、スライダ20およびテレスコープ21を含む。
【0012】
シース11は、直線状の長手軸Lに沿う管状の部位を有する。シース11は、レゼクトスコープ10の使用時において、被検体外から被検体内に挿入される部位である。シース11は、長手軸Lに沿う方向の両端が開口している。レゼクトスコープ10の使用時においては、シース11内に、後述するテレスコープ21および電極ユニット30が挿入される。
【0013】
なお、シース11の外周には、潅流液を被検体内に導入するためのアウターシースが配置される。アウターシース等の潅流液を被検体内に導入するための構成は公知であるため説明を省略する。本実施形態では、潅流液は、例えば生理食塩水等の電解質溶液であり、導電性を有する。
【0014】
シース11の長手軸Lに沿う方向の両端のうち、被検体内に挿入される側の端を先端11aと称し、先端11aとは反対側の端を基端11bと称する。シース11の基端11bは、レゼクトスコープ10の使用時において被検体外に露出する。
【0015】
以下では説明のため、長手軸Lに直交し、かつ互いに直交する一対の軸である、第1軸Xおよび第2軸Yを定める。また、第1軸Xに沿う方向のうちの一方を右方向とし、他方を左方向とする。第2軸Yに沿う方向のうちの一方を上方向とし、他方を下方向とする。本実施形態では一例として、テレスコープ21を用いて撮像される画像中における水平方向が第1軸Xと略平行であり、垂直方向が第2軸Yと略平行である。また、上方向および右方向は、テレスコープ21を用いて撮像される画像中における上および右である。
【0016】
シース11の少なくとも先端11a近傍の表面には、導電性の材料からなる回収電極11cが露出している。なお、シース11全体が金属等の導電性の材料からなり、シース11の表面全体が回収電極11cとなる構成であってもよい。
【0017】
また、シース11の基端11b近傍には、シースコネクタ11dが設けられている。シースコネクタ11dは、回収電極11cに電気的に接続されている。シースコネクタ11dには、ケーブル56が接続される。ケーブル56は、シースコネクタ11dと、外部装置50の高周波電源制御装置55と、を電気的に接続する。
【0018】
スライダ20は、シース11の基端11b側に配置される。スライダ20は、シース11に対して長手軸Lに沿う方向に相対的に移動する。スライダ20には、ハンドル20aが設けられている。使用者が手指によりハンドル20aに力を加えることにより、スライダ20は、シース11に対して長手軸Lに沿う方向に相対的に移動する。なお、シース11に対してスライダ20を相対的に移動可能に案内する機構は、従来のレゼクトスコープ10と同様であるため、図示および説明を省略する。
【0019】
スライダ20は、スコープ保持部22、電極ユニット保持部23、電極コネクタ24および検知用コネクタ25を含む。スコープ保持部22は、テレスコープ21を保持する。
【0020】
テレスコープ21は、被検体内を光学的に観察するための部位である。テレスコープ21は、細長の挿入部21a、接眼部21bおよび光源接続部21cを備える。挿入部21aは、テレスコープ21がスコープ保持部22に固定された状態において、シース11内に挿入される。
【0021】
挿入部21aの先端部21a1には、観察窓および照明光出射窓が配設されている。また、挿入部21aの基端部21a2には、接眼部21bおよび光源接続部21cが配設されている。
【0022】
接眼部21bには、撮像ユニット52が装着される。撮像ユニット52は、外部装置50のビデオプロセッサ51に電気的に接続されている。ビデオプロセッサ51には画像表示装置53が電気的に接続されている。また、光源接続部21cには、光ファイバケーブル54aの一端が接続される。光ファイバケーブル54aの他端は、外部装置50の光源装置54に接続される。
【0023】
挿入部21aの先端部21a1に設けられた観察窓からの視界が、撮像ユニット52により撮像され、画像表示装置53に表示される。また、光源装置54から出射された照明光が、挿入部21aの先端部21a1に設けられた照明光出射窓から出射される。テレスコープ21およびテレスコープ21に接続される外部装置50の構成は、従来のレゼクトスコープ10と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0024】
電極ユニット保持部23は、後述する電極ユニット30を保持する。電極コネクタ24および検知用コネクタ25は、電極ユニット保持部23に保持された電極ユニット30に電気的に接続される。電極コネクタ24および検知用コネクタ25には、ケーブル56が接続される。ケーブル56は、電極コネクタ24および検知用コネクタ25と、外部装置50の高周波電源制御装置55と、を電気的に接続する。
【0025】
電極ユニット30は、電極ユニット保持部23に固定された状態において、シース11内に挿通される部位を有する。スライダ20は、テレスコープ21および電極ユニット30と共に、シース11に対して長手軸Lに沿って相対的に移動する。電極ユニット30の一部は、シース11の先端11aから突出することができる。後述するが、電極ユニット30の、シース11の先端11aから突出する部位には、処置用電極35が配設されている。
【0026】
電極ユニット30、回収電極11cおよび高周波電源制御装置55は、いわゆるバイポーラ式の電気手術装置を構成する。高周波電源制御装置55は、スイッチ55a、抵抗検知部55b、プロセッサ55cおよび情報出力部55dを含む。
【0027】
スイッチ55aは、例えば使用者が足により操作するフットスイッチである。スイッチ55aは、使用者が、高周波電流の出力を行う指示を高周波電源制御装置55に入力するための装置である。
【0028】
高周波電源制御装置55は、使用者によるスイッチ55aの操作と、後述する判定処理に基づいて、高周波電流を電極ユニット30へ出力の有無を切り替える。高周波電源制御装置55から出力される高周波電流は、被検体内において、処置用電極35、潅流液および回収電極11cの間で流れる。高周波電源制御装置55が高周波電流を出力している状態において、処置用電極35に接触する被検体の組織が発熱し、組織の処置(例えば、切除または凝固等)が行われる。
【0029】
抵抗検知部55bは、電極ユニット30を流れる電流の抵抗値を検知する。プロセッサ55cは、高周波電流制御装置55の動作を制御するハードウエアを含む。プロセッサ55cは、図示しない記憶装置に記憶されているプログラムに従って動作する。情報出力部55dは、使用者に向けた情報を出力する。情報出力部55dは、例えば画像や文字を表示する表示装置、光を発する発光装置、音を発するスピーカ、振動を発するバイブレータ、またはこれらの組み合わせ、を含む。また、情報出力部55dは、画像表示装置53を介して使用者に向けた情報を出力する形態であってもよい。抵抗検知部55b、プロセッサ55cおよび情報出力部55dの動作については後述する。
【0030】
図2は、電極ユニット30を、第1軸Xに沿って左から見た図である。
図2において、図中の上が上方向である。
図3は、電極ユニット30を、第2軸Yに沿って下から見た図である。
図3において、図中の上が左方向である。
図4は、
図3のIV-IV断面図である。
図4において、図中の上が上方向であり、図中の右が左方向である。
図5は、
図4のV-V断面図である。
図5において、図中の上が右方向である。
図6は、
図4のVI-VI断面図である。
図4において、図中の上が上方向である。
【0031】
図2および
図3に示すように、電極ユニット30は、長手軸Lに沿う方向を長手方向とした細長の形状を有する。電極ユニット30は、基端硬質部31、電極支持部32および処置用電極35を含む。
【0032】
基端硬質部31は、レゼクトスコープ10の電極ユニット保持部23に固定される部位である。基端硬質部31の先端31aには、後述する電極支持部32が結合されている。基端硬質部31の基端31bには、電気的接続部31cおよび検知用接続部31eが設けられている。
【0033】
電気的接続部31cは、基端硬質部31が電極ユニット保持部23に固定された状態において、レゼクトスコープ10の電極コネクタ24と電気的に接続される。また、電気的接続部31cは、電極ユニット30内に挿通されている導電性のワイヤ33を介して、処置用電極35に電気的に接続されている。
【0034】
検知用接続部31eは、基端硬質部31が電極ユニット保持部23に固定された状態において、レゼクトスコープ10の検知用コネクタ25と電気的に接続される。また、検知用接続部31eは、電極ユニット30内に挿通されている導電性の検知用ワイヤ34(
図2に図示)を介して、後述する検知用電極39に電気的に接続されている。
【0035】
電極支持部32は、処置用電極35および検知用電極39を支持する。電極支持部32は、レゼクトスコープ10の使用時において、シース11の先端11aから突出する部位である。電極支持部32は、1つまたは2つの先端硬質部36および1つまたは2つの弾性領域37を含む。先端硬質部36には、処置用電極35および検知用電極39が固定される。
【0036】
弾性領域37は、先端硬質部36の基端と、基端硬質部31の先端とを連結する。弾性領域37の曲げ剛性は、先端硬質部36および基端硬質部31の曲げ剛性よりも低い。
【0037】
処置用電極35は、金属ワイヤ等の導電性を有する線状の部材からなる。処置用電極35は、先端硬質部36の表面から突出している。
【0038】
処置用電極35は、先端硬質部36の表面の一点から先端硬質部36の外側に突出し、異なる点において先端硬質部36の内側に入り込むループ形状を有している。具体的には、処置用電極35は、先端硬質部36の表面の互いに離間した2点において、先端硬質部36によって支持された一対の基部35aと、先端硬質部36の表面から離間した状態で一対の基部35aを接続する架設部35bと、を含む。
【0039】
図4に示すように、架設部35bは、長手軸Lに沿う方向から見た場合に略コ字状または略U字状である。第1軸Xに沿う方向から見た場合に、架設部35bの頂部35cは、基部35aから長手軸Lに交差する方向に向かって突出している。
【0040】
一対の基部35aは、先端硬質部36内において、ワイヤ33と電気的に接続されている。
図4および
図5に示すように、本実施形態では一例として、ワイヤ33および処置用電極35は、同一の金属製の線状部材からなる。
【0041】
検知用電極39は、先端硬質部36の外表面のうちの処置用電極35が突出する方向に向く面である下端面36bにおいて、外側に露出するよう配置されている。検知用電極39は、処置用電極35よりも基端側に配置されている。
【0042】
より具体的に、本実施形態の電極支持部32は、2つの先端硬質部36を備える。個々の先端硬質部36は、長手軸Lに沿う方向を長手方向とした柱状の外形を有する。なお、図示する本実施形態では、先端硬質部36の断面は略円形であるが、先端硬質部36の断面は平行四辺形であってもよいし、他の多角形であってもよい。
【0043】
2つの先端硬質部36は、長手軸Lに沿う方向についてはほぼ同じ位置に配置されており、かつ第1軸Xに沿う方向(左右方向)に離間して配置されている。すなわち、2つの先端硬質部36は、第1軸Xに沿う方向から見た場合に、重なり合う部分が存在する様に配置されている。したがって、2つの先端硬質部36のそれぞれは、第1軸Xに沿う方向について互いに対向する面である対向面36aを有する。
【0044】
なお、ここで「互いに対向する面」とは、右側に配置された先端硬質部36の概ね左方向に向く表面と、左側に配置された先端硬質部36の概ね右方向に向く表面と、のことを指す。すなわち、対向面36aとは、2つの先端硬質部36に挟まれた空間に面する部位である。したがって、2つの先端硬質部36の対向面36aは、互いに平行となる部位を有していなくともよい。
【0045】
処置用電極35の一対の基部35aは、2つの先端硬質部36のそれぞれに配置されている。すなわち、処置用電極35は、2つの先端硬質部36の間に架け渡された金属製のワイヤ33である。
【0046】
一対の基部35aは、2つの先端硬質部36の対向面36aから、第1軸Xに沿って突出するように配置されている。また、一対の基部35aは、長手軸Lに沿う方向についてほぼ同じ位置配置されている。すなわち、一対の基部35aは、一対の対向面36から第1軸Xに沿って互いに近づくように突出している。
【0047】
架設部35bは、一対の基部35aの先端部の間を接続している。架設部35bは、長手軸Lに沿う方向から見た場合において、一対の基部35aから下方に向かって凸形状となるように湾曲している。そして、
図4に示すように、架設部35bの頂部35cは、2つの先端硬質部36の下方に面する下端面36bよりも下方に位置している。
【0048】
以上に説明した構成を有する処置用電極35は、第2軸Yに沿う方向から見た場合に、2つの先端硬質部36に挟まれた空間内のみにおいて外部に露出している。言い換えれば、処置用電極35の外部に露出する部位は、第2軸Yに沿う方向から見た場合に、2つの先端硬質部36と重ならないように配置されている。
【0049】
図4および
図5に示すように、個々の先端硬質部36は、セラミックパイプ32aと被覆部38により構成されている。セラミックパイプ36cおよび被覆部38は、電気絶縁性を有する。セラミックパイプ32aは、内側にワイヤ33が挿通される中空の部材である。被覆部38は、樹脂製のチューブであり、セラミックパイプ32aを被覆している。セラミックパイプ32aおよび被覆部38の側面には、処置用電極35の基部35aを保持する貫通孔32cが形成されている。
【0050】
本実施形態の電極支持部32は、一例として2つの弾性領域37を有する。2つの弾性領域37は、2つの先端硬質部36のそれぞれの基端に接続されている。なお、電極支持部32は、2つの先端硬質部36の双方の基端に接続される1つの弾性領域37を備える形態であってもよい。
【0051】
本実施形態の弾性領域37は、電気絶縁性を有する樹脂製のチューブである被覆部38により構成されている。本実施形態では一例として、先端硬質部36の被覆部38と、弾性領域37の被覆部38とは、長手軸Lに沿う方向に連続した同一の部材である。弾性領域37の被覆部38内には、ワイヤ33が挿通される。すなわち、本実施形態では、被覆部38内に挿入されているセラミックパイプ32aが、先端硬質部36の曲げ剛性を弾性領域37よりも高める役割を有している。
【0052】
そして、本実施形態の基端硬質部31は、樹脂製のチューブである被覆部38および金属パイプ31dにより構成されている。本実施形態では一例として、基端硬質部31の被覆部38と、弾性領域37の被覆部38とは、長手軸Lに沿う方向に連続した同一の部材である。基端硬質部31の被覆部38内には、ワイヤ33が挿通される。金属パイプ31dは、被覆部38の外周を被覆している。すなわち、本実施形態では、金属パイプ31dが、基端硬質部31の曲げ剛性を弾性領域37よりも高める役割を有している。
【0053】
図3および
図6に示すように、検知用電極39は、2つの先端硬質部36のそれぞれの下端面36bにおいて、処置用電極35よりも基端側に配置されている。すなわち、本実施形態の電極ユニット30は、離間して配置された複数の検知用電極39を備える。本実施形態では一例として、検知用電極39は、被覆部38の内側に配設されており、被覆部38を貫通する貫通孔38aを介して外側に露出している。
【0054】
次に、本実施形態の高周波電源制御装置55の動作について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
図7のフローチャートの処理は、プロセッサ55cにより所定の周期で繰り返し実行される。
図7のフローチャートの処理を開始する時点において、高周波電源制御装置55は、電流の出力を停止した状態である。
【0055】
まずステップS10において、プロセッサ55cは、スイッチ55aがON状態であるか否かを判定する。スイッチ55aは、使用者による高周波電流の出力の実行指示が入力される場合にON状態となる。
【0056】
ステップS10の判定において、スイッチ55aがON状態ではないと判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS200に移行する。ステップS200では、プロセッサ55cは、高周波電源制御装置55が電極ユニット30に通電中であるか否かを判定する。
【0057】
ステップS200の判定において、電極ユニット30に通電中であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS210に移行する。ステップS210では、プロセッサ55cは、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止し、ステップS10に戻る。また、ステップS200の判定において、電極ユニット30に通電中ではないと判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS10に戻る。すなわち、スイッチ55aがON状態ではない場合には、高周波電源制御装置55は、電極ユニット30への通電を行わない。
【0058】
一方、スイッチ55aがON状態であると判定した場合には、プロセッサ55cはステップS20以降の処理を実行する。
【0059】
ステップS20では、プロセッサ55cは、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値を検知する。具体的には、プロセッサ55cは、抵抗検知部55bにより、複数の検知用電極39間に微少な第1出力の電流を流し、その抵抗値を検知する。ここで、第1出力とは、組織を処置(例えば、切除または凝固等)する際に処置用電極35に流す高周波電流の出力である第2出力よりも低い。
【0060】
次に、ステップS30において、プロセッサ55cは、抵抗検知部55bが検知した抵抗値が、所定の閾値Th以上であるか否かを判定する。ここで処置の閾値Thは、複数の検知用電極39が、導電性を有する潅流液中に露出している場合の抵抗値よりも若干高い抵抗値である。導電性を有する潅流液とは、本実施形態では生理食塩水である。
【0061】
ステップS30の判定において、抵抗値が閾値Th以上であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS40に移行する。ステップS40では、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を開始する。前述のように、第2出力の高周波電流とは、組織を処置(例えば、切除または凝固等)する際に出力するものである。すなわち、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値以上である場合に、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を許可する。
【0062】
ステップS30の判定において、抵抗値が閾値Th未満であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS50に移行する。ステップS50では、プロセッサ55cは、情報出力部55bにより、警告を表す情報を出力する。ここで、警告を表す情報とは、電極ユニット30の姿勢が適切でない旨を使用者に知らせる情報を含む。情報出力部55bから当該情報を出力する方法は、音の発生であってもよいし、画像表示装置53への画像の出力であってもよい。そして、プロセッサ55cは、ステップS210に移行し、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止する。すなわち、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値未満である場合に、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を禁止する。
【0063】
図8および
図9に、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1を用いて被検体の臓器100内の組織を切除する様子の模式図を示す。
【0064】
電極ユニット30を用いて臓器100内の組織を切除する場合には、使用者は、まず臓器100内において、電極支持部32を、先端硬質部36の下端面36bが組織に対向する姿勢とする。そして、
図8に示すように、使用者は、先端硬質部36の下端面36bが組織に接するように、電極支持部32を臓器100の壁面に当接させる。このとき、処置用電極35は組織に略埋没するが、組織は切開されない。また、臓器100内は、導電性の潅流液により満たされている。なお、電極ユニット100およびレゼクトスコープ10のシース11を臓器100内に挿入する方法や、臓器100内を潅流液で満たす方法は従来の電極ユニットと同様であるため、説明を省略する。
【0065】
次に、使用者は、スイッチ55aを操作する。このとき、
図8に示すように、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触し、組織の壁面と下端面36bとが略平行であれば、複数の検知用電極39が組織によって覆われる。この場合、複数の検知用電極39間の電気的接続に組織が介在するため、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値は、所定の閾値Th以上となる。
【0066】
よって、
図8に示すように、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触している場合には、使用者によるスイッチ55aの操作に応じて、高周波電源制御装置55は第2電力の高周波電流の出力を開始する。これにより、高周波電流が、処置用電極35から潅流液を通って回収電極11cへ向かって流れるため、処置用電極35に接触する組織が発熱し、組織が切除される。
【0067】
ここで、前述のように、処置用電極35は、第2軸Yに沿う方向(下方)から見た場合に、先端硬質部36と重ならないように配置されている。したがって、先端硬質部36の下端面36bが組織に接触した状態では、処置用電極35が組織内に入り込むことができる深さが制限される。すなわち、先端硬質部36の下端面36bは、電極35が組織内に入り込む深さを規制するストッパーとして機能する。
【0068】
もし本実施形態とは異なり、下方から見た場合に、電極35が先端硬質部36の下端面36bと重なるように配置されているとすれば、下端面36bは電極35により切断された組織に押し付けられる。この場合、下端面36bが電極35の組織内への進行を規制する力が本実施形態よりも弱くなってしまう可能性がある。本実施形態では、このような状態を避けることができ、電極35が組織内に入り込む深さを確実に規制することができる。
【0069】
よって、本実施形態では、使用者が電極支持部32を臓器100の壁面に押し当てる力が変化したとしても、先端硬質部36が組織に当接した状態からさらに処置用電極35が組織内に入り込むことが防止される。
【0070】
そして、
図9に示すように、使用者は、レゼクトスコープ10を移動させて、電極支持部32を臓器100の壁面に沿って移動させる。すると、組織内において壁面に沿う方向に処置用電極35が移動するため、所定の厚さの組織片が切除される。
【0071】
ここで、前述のように、使用者が電極支持部32を臓器100の壁面に押し当てる力が変化したとしても、処置用電極35が組織内に入り込む深さは一定に保たれる。また、使用者によるレゼクトスコープ10を組織方向に押し付ける力が変化する場合であっても、弾性部37が曲がることにより、電極35が組織の方向に押し付けられる力の変化が略一定に保たれる。これにより、先端硬質部36が組織を変形させる量もほぼ一定に保たれ、電極35が組織内に入り込む深さもほぼ一定に保たれる。また、使用者によるレゼクトスコープ10の移動が臓器100の壁面の形状に沿っておらず、臓器100の壁面とシース11の先端11aとの距離が変化する場合であっても、本実施形態では弾性領域37が弾性変形することにより、先端硬質部36が組織に当接した状態が保たれる。そして、先端硬質部36が組織に当接した状態であれば、前述のように、処置用電極35が組織内に入り込む深さは一定に保たれる。
【0072】
また、
図10に示すように、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触していない場合には、複数の検知用電極39が潅流液中に露出する。この場合、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値Th未満となるため、使用者がスイッチ55aを操作したとしても、高周波電源制御装置55は第2電力の高周波電流を出力しない。
【0073】
図10に示すように、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触しておらず、組織の壁面と下端面36bとが略平行ではない場合には、組織に対する処置用電極35の姿勢が所期の状態とは異なるため、処置用電極35が組織内に入り込む深さが、所定の深さとは異なる可能性がある。
【0074】
本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1は、このような組織に対する処置用電極35の姿勢が所期の状態とは異なる場合に、高周波電源制御装置55からの高周波電流の出力を停止する。すなわち、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1を用いれば、処置用電極35から高周波電流を流して組織の切除を実行している期間中は、処置用電極35が組織内に入り込む深さを一定に保つことができる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1は、使用者が処置用電極35を移動させる軌跡にふらつきがある場合や、使用者が処置用電極35に加える力に変動がある場合であっても、処置用電極35が組織内に入り込む深さは一定に保つことができる。よって、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1によれば、切除する組織の厚さの制御が容易である。
【0076】
なお、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1では、複数の検知用電極39間の電気抵抗に基づいて先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触しているか否かを検出しているが、当該検出の方法は本実施形態に限定されず、電極ユニット30に設けたセンサを用いる形態であってもよい。
【0077】
例えば、電極ユニット30は、下端面36bに加えられる圧力を検知する圧力センサを備える形態であってもよい。この場合、プロセッサ55cは、圧力センサが検知する圧力が所定の閾値以上である場合に、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触していると判定する。
【0078】
また例えば、電極ユニット30は、下端面36bと組織との間の距離を音波等を用いて測定する測距センサを備える形態であってもよい。この場合、プロセッサ55cは、測距センサが検知する距離が所定の閾値以下である場合に、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触していると判定する。
【0079】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
【0080】
図11に示す本実施形態の内視鏡システム1は、圧力センサ12を備える。圧力センサ12は、内視鏡システム1の使用時において、潅流液の圧力を検知し、検知結果をプロセッサ55cに出力する。
【0081】
圧力センサ12が配置される箇所は特に限定されないが、本実施形態では一例として、圧力センサ12は、シース11の先端部に配置されている。シース11の基端11b近傍には、センサコネクタ13が設けられている。センサコネクタ13には、ケーブル56が接続される。ケーブル56は、センサコネクタ13と高周波電源制御装置55とを電気的に接続する。
【0082】
次に、本実施形態の高周波電源制御装置55の動作について説明する。
図12は、本実施形態の高周波電源制御装置55の動作を示すフローチャートである。
図12のフローチャートは、第1の実施形態のフローチャート(
図7)に、ステップS31、ステップS32およびステップS33が追加されている。
【0083】
図12のフローチャートの処理は、プロセッサ55cにより所定の周期で繰り返し実行される。
図12のフローチャートの処理を開始する時点において、高周波電源制御装置55は、電流の出力を停止した状態である。
【0084】
まずステップS10において、プロセッサ55cは、スイッチ55aがON状態であるか否かを判定する。スイッチ55aは、使用者による高周波電流の出力の実行指示が入力される場合にON状態となる。
【0085】
ステップS10の判定において、スイッチ55aがON状態ではないと判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS200に移行する。ステップS200では、プロセッサ55cは、高周波電源制御装置55が電極ユニット30に通電中であるか否かを判定する。
【0086】
ステップS200の判定において、電極ユニット30に通電中であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS210に移行する。ステップS210では、プロセッサ55cは、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止し、ステップS10に戻る。また、ステップS200の判定において、電極ユニット30に通電中ではないと判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS10に戻る。すなわち、スイッチ55aがON状態ではない場合には、高周波電源制御装置55は、電極ユニット30への通電を行わない。
【0087】
一方、スイッチ55aがON状態であると判定した場合には、プロセッサ55cはステップS20以降の処理を実行する。
【0088】
ステップS20では、プロセッサ55cは、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値を検知する。具体的には、プロセッサ55cは、抵抗検知部55bにより、複数の検知用電極39間に微少な第1出力の電流を流し、その抵抗値を検知する。ここで、第1出力とは、組織を処置(例えば、切除または凝固等)する際に処置用電極35に流す高周波電流の出力である第2出力よりも低い。
【0089】
次に、ステップS30において、プロセッサ55cは、抵抗検知部55bが検知した抵抗値が、所定の閾値Th以上であるか否かを判定する。ここで処置の閾値Thは、複数の検知用電極39が、導電性を有する潅流液中に露出している場合の抵抗値よりも若干高い抵抗値である。導電性を有する潅流液とは、本実施形態では生理食塩水である。
【0090】
ステップS30の判定において、抵抗値が閾値Th以上であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS31に移行する。ステップS31では、プロセッサ55cは、圧力センサ12により、臓器100内の潅流液の圧力を検知する。
【0091】
次にステップS32において、プロセッサ55cは、臓器100内の潅流液の圧力が所定の適正範囲内であるか否かを判定する。
【0092】
ステップS32の判定において、臓器100内の潅流液の圧力が所定の適正範囲内であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS40に移行する。ステップS40では、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を開始する。前述のように、第2出力の高周波電流とは、組織を処置(例えば、切除または凝固等)する際に出力するものである。
【0093】
すなわち、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値以上であり、かつ臓器100内の潅流液の圧力が所定の範囲内である場合に、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を許可する。
【0094】
ステップS30の分岐の説明に戻る。ステップS30において、抵抗値が閾値Th未満であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS50に移行する。ステップS50では、プロセッサ55cは、情報出力部55bにより、警告を表す情報を出力する。ここで、警告を表す情報とは、電極ユニット30の姿勢が適切でない旨を使用者に知らせる情報を含む。そして、プロセッサ55cは、ステップS210に移行し、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止する。すなわち、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値未満である場合に、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を禁止する。
【0095】
ステップS32の分岐の説明に戻る。ステップS32の判定において、臓器100内の潅流液の圧力が所定の適正範囲外であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS33に移行する。ステップS33では、プロセッサ55cは、情報出力部55bにより、警告を表す情報を出力する。ここで、警告を表す情報とは、臓器100内の潅流液の圧力が適切でない旨を使用者に知らせる情報を含む。そして、プロセッサ55cは、ステップS210に移行し、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止する。
【0096】
すなわち、臓器100内の潅流液の圧力が所定の範囲外である場合には、プロセッサ55cは、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値の大小にかかわらず、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を禁止する。
【0097】
臓器100内を満たす潅流液の圧力が変化すると、臓器100の壁面の厚さが変化する。例えば、臓器100内を満たす潅流液の圧力が高くなるほど、臓器100が膨脹するため、臓器100の壁面が薄くなる。一方、臓器100内を満たす潅流液の圧力が低くなるほど、臓器100が収縮するため、臓器100の壁面が厚くなる。
【0098】
処置用電極35が組織内に入り込む深さが一定であっても、臓器100の壁面の厚さが変化すると、処置用電極35により切除される組織の厚さが変化してしまう可能性がある。本実施形態の内視鏡システム1は、前述のように、臓器100内を満たす潅流液の圧力が所定の適正範囲内である場合にのみ、処置用電極35から高周波電流を流し組織を切除することが可能となる。すなわち、本実施形態の内視鏡システム1は、臓器100の壁面の厚さが所定の範囲内である場合にのみ組織を切除するように構成されていることから、切除する組織の厚さを略一定に保つことができる。
【0099】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
【0100】
図13および
図14に示す本実施形態の内視鏡システム1は、検知用電極39および抵抗検知部55bの構成が第1の実施形態と異なる。
【0101】
図13に示すように、本実施形態の検知用電極39は、ワイヤ33および処置用電極35と電気的に接続されている。本実施形態では一例として、検知用電極39は、ワイヤ33が貫通孔38aを介して外側に露出した部位である。貫通孔38aは、被覆部38およびセラミックパイプ32aを貫通している。
【0102】
本実施形態では、電極ユニット30の電気的接続部31cが検知用接続部31eを兼ねる。また、レゼクトスコープ10の電極コネクタ24が検知用コネクタ25を兼ねる。
【0103】
抵抗検知部55bは、検知用電極39と回収電極11cとの間の電気的な抵抗値を検知する。すなわち、抵抗検知部55bは、ワイヤ33と回収電極11cとの間に微少な第1出力の電流を流し、その抵抗値を検知する。
【0104】
本実施形態においても、
図8に示すように、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触し、組織の壁面と下端面36bとが略平行であれば、貫通孔38aが組織によって塞がれることは第1の実施形態と同様である。このため、
図8に示すように、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触していれば、検知用電極39と回収電極11cとの間の電気的な抵抗値は、所定の閾値Th以上となる。
【0105】
一方、
図10に示すように、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触していない場合には、検知用電極39が潅流液中に露出する。したがって、
図10に示すように、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触していなければ、検知用電極39と回収電極11cとの間の電気的な抵抗値は、所定の閾値Th未満となる。
【0106】
次に、本実施形態の高周波電源制御装置55の動作について説明する。
図15は、本実施形態の高周波電源制御装置55の動作を示すフローチャートである。
図15のフローチャートは、第1の実施形態のフローチャート(
図7)に比して、ステップS21の処理のみが異なる。
【0107】
図15のフローチャートの処理は、プロセッサ55cにより所定の周期で繰り返し実行される。
図15のフローチャートの処理を開始する時点において、高周波電源制御装置55は、電流の出力を停止した状態である。
【0108】
まずステップS10において、プロセッサ55cは、スイッチ55aがON状態であるか否かを判定する。スイッチ55aは、使用者による高周波電流の出力の実行指示が入力される場合にON状態となる。
【0109】
ステップS10の判定において、スイッチ55aがON状態ではないと判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS200に移行する。ステップS200では、プロセッサ55cは、高周波電源制御装置55が電極ユニット30に通電中であるか否かを判定する。
【0110】
ステップS200の判定において、電極ユニット30に通電中であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS210に移行する。ステップS210では、プロセッサ55cは、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止し、ステップS10に戻る。また、ステップS200の判定において、電極ユニット30に通電中ではないと判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS10に戻る。すなわち、スイッチ55aがON状態ではない場合には、高周波電源制御装置55は、電極ユニット30への通電を行わない。
【0111】
一方、スイッチ55aがON状態であると判定した場合には、プロセッサ55cはステップS21以降の処理を実行する。
【0112】
ステップS21では、プロセッサ55cは、検知用電極39と回収電極11cとの間の電気的な抵抗値を検知する。具体的には、プロセッサ55cは、抵抗検知部55bにより、検知用電極39と回収電極11cとの間に微少な第1出力の電流を流し、その抵抗値を検知する。ここで、第1出力とは、組織を処置(例えば、切除または凝固等)する際に処置用電極35に流す高周波電流の出力である第2出力よりも低い。
【0113】
次に、ステップS30において、プロセッサ55cは、抵抗検知部55bが検知した抵抗値が、所定の閾値Th以上であるか否かを判定する。ここで処置の閾値Thは、複数の検知用電極39が、導電性を有する潅流液中に露出している場合の抵抗値よりも若干高い抵抗値である。導電性を有する潅流液とは、本実施形態では生理食塩水である。
【0114】
ステップS30の判定において、抵抗値が閾値Th以上であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS40に移行する。ステップS40では、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を開始する。前述のように、第2出力の高周波電流とは、組織を処置(例えば、切除または凝固等)する際に出力するものである。すなわち、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値以上である場合に、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を許可する。
【0115】
ステップS30の判定において、抵抗値が閾値Th未満であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS50に移行する。ステップS50では、プロセッサ55cは、情報出力部55bにより、警告を表す情報を出力する。ここで、警告を表す情報とは、電極ユニット30の姿勢が適切でない旨を使用者に知らせる情報を含む。そして、プロセッサ55cは、ステップS210に移行し、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止する。すなわち、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値未満である場合に、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を禁止する。
【0116】
本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1は、第1の実施形態と同様に、このような組織に対する処置用電極35の姿勢が所期の状態とは異なる場合に、高周波電源制御装置55からの高周波電流の出力を停止する。すなわち、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1を用いれば、処置用電極35から高周波電流を流して組織の切除を実行している期間中は、処置用電極35が組織内に入り込む深さを一定に保つことができる。
【0117】
以上に説明したように、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1は、使用者が処置用電極35を移動させる軌跡にふらつきがある場合や、使用者が処置用電極35に加える力に変動がある場合であっても、処置用電極35が組織内に入り込む深さは一定に保つことができる。よって、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1によれば、切除する組織の厚さの制御が容易である。
【0118】
(第4の実施形態)
以下に、本発明の第4の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第3の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
【0119】
図16に示す本実施形態の内視鏡システム1は、圧力センサ12を備える。圧力センサ12は、内視鏡システム1の使用時において、潅流液の圧力を検知し、検知結果をプロセッサ55cに出力する。
【0120】
圧力センサ12が配置される箇所は特に限定されないが、本実施形態では一例として、圧力センサ12は、シース11の先端部に配置されている。シース11の基端11b近傍には、センサコネクタ13が設けられている。センサコネクタ13には、ケーブル56が接続される。ケーブル56は、センサコネクタ13と高周波電源制御装置55とを電気的に接続する。
【0121】
次に、本実施形態の高周波電源制御装置55の動作について説明する。
図17は、本実施形態の高周波電源制御装置55の動作を示すフローチャートである。
図17のフローチャートは、第3の実施形態のフローチャート(
図15)に、ステップS31、ステップS32およびステップS33が追加されている。
【0122】
図15のフローチャートの処理は、プロセッサ55cにより所定の周期で繰り返し実行される。
図12のフローチャートの処理を開始する時点において、高周波電源制御装置55は、電流の出力を停止した状態である。
【0123】
まずステップS10において、プロセッサ55cは、スイッチ55aがON状態であるか否かを判定する。スイッチ55aは、使用者による高周波電流の出力の実行指示が入力される場合にON状態となる。
【0124】
ステップS10の判定において、スイッチ55aがON状態ではないと判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS200に移行する。ステップS200では、プロセッサ55cは、高周波電源制御装置55が電極ユニット30に通電中であるか否かを判定する。
【0125】
ステップS200の判定において、電極ユニット30に通電中であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS210に移行する。ステップS210では、プロセッサ55cは、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止し、ステップS10に戻る。また、ステップS200の判定において、電極ユニット30に通電中ではないと判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS10に戻る。すなわち、スイッチ55aがON状態ではない場合には、高周波電源制御装置55は、電極ユニット30への通電を行わない。
【0126】
一方、スイッチ55aがON状態であると判定した場合には、プロセッサ55cはステップS20以降の処理を実行する。
【0127】
ステップS20では、プロセッサ55cは、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値を検知する。具体的には、プロセッサ55cは、抵抗検知部55bにより、複数の検知用電極39間に微少な第1出力の電流を流し、その抵抗値を検知する。ここで、第1出力とは、組織を処置(例えば、切除または凝固等)する際に処置用電極35に流す高周波電流の出力である第2出力よりも低い。
【0128】
次に、ステップS30において、プロセッサ55cは、抵抗検知部55bが検知した抵抗値が、所定の閾値Th以上であるか否かを判定する。ここで処置の閾値Thは、複数の検知用電極39が、導電性を有する潅流液中に露出している場合の抵抗値よりも若干高い抵抗値である。導電性を有する潅流液とは、本実施形態では生理食塩水である。
【0129】
ステップS30の判定において、抵抗値が閾値Th以上であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS31に移行する。ステップS31では、プロセッサ55cは、圧力センサ12により、臓器100内の潅流液の圧力を検知する。
【0130】
次にステップS32において、プロセッサ55cは、臓器100内の潅流液の圧力が所定の適正範囲内であるか否かを判定する。
【0131】
ステップS32の判定において、臓器100内の潅流液の圧力が所定の適正範囲内であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS40に移行する。ステップS40では、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を開始する。前述のように、第2出力の高周波電流とは、組織を処置(例えば、切除または凝固等)する際に出力するものである。
【0132】
すなわち、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値以上であり、かつ臓器100内の潅流液の圧力が所定の範囲内である場合に、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を許可する。
【0133】
ステップS30の分岐の説明に戻る。ステップS30において、抵抗値が閾値Th未満であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS50に移行する。ステップS50では、プロセッサ55cは、情報出力部55bにより、警告を表す情報を出力する。ここで、警告を表す情報とは、電極ユニット30の姿勢が適切でない旨を使用者に知らせる情報を含む。そして、プロセッサ55cは、ステップS210に移行し、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止する。すなわち、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値が所定の閾値未満である場合に、プロセッサ55cは、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を禁止する。
【0134】
ステップS32の分岐の説明に戻る。ステップS32の判定において、臓器100内の潅流液の圧力が所定の適正範囲外であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS33に移行する。ステップS33では、プロセッサ55cは、情報出力部55bにより、警告を表す情報を出力する。ここで、警告を表す情報とは、臓器100内の潅流液の圧力が適切でない旨を使用者に知らせる情報を含む。そして、プロセッサ55cは、ステップS210に移行し、高周波電源制御装置55の電極ユニット30への通電を停止する。
【0135】
すなわち、臓器100内の潅流液の圧力が所定の範囲外である場合には、プロセッサ55cは、複数の検知用電極39間の電気的な抵抗値の大小にかかわらず、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を禁止する。
【0136】
臓器100内を満たす潅流液の圧力が変化すると、臓器100の壁面の厚さが変化する。例えば、臓器100内を満たす潅流液の圧力が高くなるほど、臓器100が膨脹するため、臓器100の壁面が薄くなる。一方、臓器100内を満たす潅流液の圧力が低くなるほど、臓器100が収縮するため、臓器100の壁面が厚くなる。
【0137】
処置用電極35が組織内に入り込む深さが一定であっても、臓器100の壁面の厚さが変化すると、処置用電極35により切除される組織の厚さが変化してしまう可能性がある。本実施形態の内視鏡システム1は、前述のように、臓器100内を満たす潅流液の圧力が所定の適正範囲内である場合にのみ、処置用電極35から高周波電流を流し組織を切除することが可能となる。すなわち、本実施形態の内視鏡システム1は、臓器100の壁面の厚さが所定の範囲内である場合にのみ組織を切除するように構成されていることから、切除する組織の厚さを略一定に保つことができる。
【0138】
(第5の実施形態)
以下に、本発明の第5の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
【0139】
図18に示す本実施形態の電極ユニット30は、第1の実施形態の検知用電極39に代わり、曲がり検知センサ40および姿勢検知センサ41を備える。
【0140】
曲がり検知センサ40は、弾性領域37の曲がり量θを検出するセンサである。曲がり検知センサ40は、例えば弾性領域37に配置される歪みセンサである。曲がり検知センサ40は、電極ユニット30内に挿通されている検知用ケーブル40aを介して、検知用接続部31eに電気的に接続されている。高周波電源制御装置55のプロセッサ55cは、曲がり検知センサ40から出力される信号に基づいて、弾性領域37の曲がり量θを検出することができる。
【0141】
ここで、弾性領域37の曲がり量θとは、基端硬質部31に対する先端硬質部36の角度の変化量で表す。具体的には、
図18に示すように、曲がり量θは、第1軸Xに平行な方向から見た場合における、長手軸Lと下端面36bとが成す角度である。
図18に実線で示されているように、長手軸Lと下端面36bとが平行である場合、曲がり量θは0度である。曲がり量θの値は、
図18に二点鎖線で示されているように、下端面36bを外側として弾性領域37が曲がる場合に増加するものとする。
【0142】
姿勢検知センサ41、基端硬質部31の重力方向に対する傾き量φを検出するセンサである。姿勢検知センサ41は、例えば基端硬質部31に配置される加速度センサである。姿勢検知センサ41は、基端硬質部31内に挿通されている第2検知用ケーブル41aを介して、第2検知用接続部31fに電気的に接続されている。
【0143】
第2検知用接続部31fは、基端硬質部31が電極ユニット保持部23に固定された状態において、レゼクトスコープ10の検知用コネクタ25と電気的に接続される。高周波電源制御装置55のプロセッサ55cは、姿勢検知センサ41から出力される信号に基づいて、基端硬質部31の重力方向に対する傾き量φを検出することができる。
【0144】
ここで、傾き量φとは、長手軸Lと重力方向とが成す角度である。基端硬質部31の先端31aが基端31bよりも重力方向(下方)に位置し、かつ長手軸Lが垂直である場合、傾き量φは0度である。長手軸Lが水平である場合、傾き量φは90度である。
【0145】
図19は、本実施形態の高周波電源制御装置55の動作を示すフローチャートである。本実施形態の高周波電源制御装置55は、第1の実施形態に比して、ステップS20およびステップS30における動作が異なる。
【0146】
本実施形態では、ステップS20において、プロセッサ55cは、曲がり検知センサ40および姿勢検知センサ41から出力される信号に基づいて、弾性領域37の曲がり量θおよび基端硬質部31の傾き量φを検出する。
【0147】
そして、ステップS30において、プロセッサ55cは、弾性領域37の曲がり量θが基端硬質部31の傾き量φ以上であるか否かを判定する。すなわち、本実施形態では、プロセッサ55cは、傾き量φを閾値として設定し、曲がり量θが当該閾値以上であるか否かを判定する。
【0148】
ステップS30の判定において、弾性領域37の曲がり量θが基端硬質部31の傾き量φ以上であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS40に移行する。一方、ステップS30の判定において、弾性領域37の曲がり量θが基端硬質部31の傾き量φ未満であると判定した場合には、プロセッサ55cは、ステップS50に移行する。
【0149】
このように、本実施形態のプロセッサ55cは、弾性領域37の曲がり量θが基端硬質部31の傾き量φ以上である場合に、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を許可し、弾性領域37の曲がり量θが基端硬質部31の傾き量φ未満である場合に、処置用電極35への第2出力の高周波電流の出力を禁止する。
【0150】
本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1を用いて被検体の膀胱である臓器100内の組織を切除する場合について説明する。例えば、
図20に示すように、膀胱(臓器100)内における、尿道口101に対向する壁面の組織を切除する場合、基端硬質部31は概ね水平となり、傾き量φは概ね90度となる。なお、
図20においては、図中の下方が重力方向Gである。この場合、弾性領域37の曲がり量θが90度以上であれば、
図20に示すように、弾性領域37の曲がり量が十分であり、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触している可能性が高い。
【0151】
また例えば、
図21に示すように、膀胱(臓器100)内における、尿道口101よりも重力方向(下方)に位置する壁面の組織を切除する場合、基端硬質部31は90度未満となる。なお、
図21においては、図中の下方が重力方向Gである。
図21に示すように、傾き量φが60度の場合には、弾性領域37の曲がり量が60度以上であれば、弾性領域37の曲がり量が十分であり、先端硬質部36の下端面36bの全体が組織に接触している可能性が高い。
【0152】
以上に説明したように、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1は、組織に対する処置用電極35の姿勢が所期の状態とは異なる場合に、高周波電源制御装置55からの高周波電流の出力を停止する。すなわち、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1を用いれば、処置用電極35から高周波電流を流して組織の切除を実行している期間中は、処置用電極35が組織内に入り込む深さを一定に保つことができる。
【0153】
なお、弾性領域37の曲がり量θを検出する構成は本実施形態に限定されない。例えば、先端硬質部36に先端硬質部36の重力方向に対する傾きを検出する第2の姿勢検知センサを設け、当該第2の姿勢検知センサの検出結果と姿勢検知センサ41の検出結果との比較に基づき曲がり量θを検出する構成であってもよい。
【0154】
また、本実施形態では、姿勢検知センサ41を用いて検出される傾き量φの値をそのままステップS30の判定における閾値として使用したが、ステップS30において用いる閾値は、傾き量φに係数をかけるなどした値であってもよい。
【0155】
また、本実施形態では、姿勢検知センサ41を基端硬質部31に設けたが、姿勢検知センサ41は、レゼクトスコープ10の、シース11、スライダ20およびテレスコープ21などに設けてもよい。
【0156】
(第6の実施形態)
以下に、本発明の第5の実施形態を説明する。以下では第5の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
【0157】
第5の実施形態の内視鏡システム1は、高周波電源制御装置55のプロセッサ55cが曲がり量θを自動的に検出するためのセンサを備えているが、本実施形態の内視鏡システム1は、使用者が視覚に基づいて曲がり量θを認識するための複数の指標を備える。
【0158】
内視鏡システム1は、使用者が視認可能な第1から第4指標を備える。第1指標42、第2指標43および第3指標44は、電極ユニット30に設けられている。また、第4指標45は、高周波電源制御装置55が生成し画像表示装置53に表示させる画像である。
【0159】
図23に示すように、第1指標42は、ワイヤ33の弾性領域37内に挿通されている部分の表面に設けられている。具体的には、
図22に示すように、弾性領域37には、被覆部38の上面からワイヤ33まで貫通する開口であるL方向スリット42aが形成されている。L方向スリット42aは、長手軸Lに沿う方向を長手方向とした細長の貫通孔である。第1指標42は、L方向スリット42aが形成されている箇所において、ワイヤ33の下面を着色することにより形成されている。
【0160】
図23に示すように弾性領域37が直線状である場合には、第1指標42は、被覆部38に覆われるため、外部に露出しない。
図24に示すように、弾性領域37が上面を内側として湾曲すると、L方向スリット42aの開口幅が左右方向に広がるため、第1指標42が外部に露出する。使用者は、テレスコープ21を用いて撮像される画像により、外部に露出した第1指標42を視認することができる。
【0161】
本実施形態では、
図22に示すように、一対の弾性領域37のそれぞれにL方向スリット42aおよび第1指標42を設けている。そして、右方の弾性領域37に設けたL方向スリット42aおよび第1指標42は、弾性領域37の曲がり量θが90度以上である場合に第1指標42が外部に露出する。また、左方の弾性領域37に設けたL方向スリット42aおよび第1指標42は、弾性領域37の曲がり量θが60度以上である場合に第1指標42が外部に露出する。
【0162】
図23に示すように、第2指標43は、ワイヤ33の弾性領域37内に挿通されている部分の表面に設けられている。具体的には、
図22に示すように、弾性領域37には、被覆部38の上面からワイヤ33まで貫通する開口である径方向スリット43aが形成されている。径方向スリット43aは、長手軸Lに直交する方向を長手方向とした細長の貫通孔である。第2指標43は、径方向スリット43aが形成されている箇所において、ワイヤ33の外周面を着色することにより形成されている。
【0163】
図23に示すように弾性領域37が直線状である場合には、第2指標42は、径方向スリット43aを介して外部に露出する。この場合、使用者は、テレスコープ21を用いて撮像される画像により、外部に露出した第2指標43を視認することができる。
図24に示すように、弾性領域37が上面を内側として湾曲すると、径方向スリット43aの開口幅が狭まり、第2指標42は外部に露出しなくなる。
【0164】
本実施形態では、
図22に示すように、一対の弾性領域37のそれぞれに径方向スリット43aおよび第2指標43を設けている。そして、右方の弾性領域37に設けた径方向スリット43aおよび第2指標43は、弾性領域37の曲がり量θが90度以上である場合に第2指標43が外部に露出しなくなる。また、左方の弾性領域37に設けた径方向スリット43aおよび第2指標43は、弾性領域37の曲がり量θが60度以上である場合に第1指標42が外部に露出しなくなる。
【0165】
使用者は、画像表示装置53に表示されるテレスコープ21を用いて撮像される画像において、第1指標42および第2指標43が視認できるか否かに基づき、弾性領域37の曲がり量θを認識することができる。
【0166】
図23に示すように、第3指標44は、先端硬質部36の下面を着色することにより形成されている。先端硬質部36の下端面36bの全体が臓器100の壁面に接触すると、第3指標44は、臓器100の組織に覆われる。
【0167】
使用者は、画像表示装置53に表示されるテレスコープ21を用いて撮像される画像において、第3指標44が視認できるか否かに基づき、先端硬質部36の下端面36bの壁面への接触の様子を認識することができる。
【0168】
第4指標45は、
図25に示すように、高周波電源制御装置55が生成し画像表示装置53に表示させる画像の一部である。第4指標45は、テレスコープ21を用いて撮像される内視鏡画像53aの側方に配置される。第4指標45は、内視鏡画像53a中の上下方向における、適切な電極ユニット30の先端の位置の上限を示す。
【0169】
本実施形態のレゼクトスコープ10は、スライダ20の位置を検出するスライダ操作量検出部を備える。高周波電源制御装置55のプロセッサ55cは、姿勢検知センサ41を用いて検出される傾き量φに基づき、先端硬質部36の下端面36bの全体を組織に接触させるために必要な弾性領域37の曲がり量θ(適切曲がり量)を算出する。そして、プロセッサ55cは、適切曲がり量とスライダ20の位置とに基づき、内視鏡画像53a中における、先端硬質部36の下端面36bの全体を組織に接触させるために適切な電極ユニット30の先端の位置を算出する。そして、プロセッサ55cは、この算出した適切な電極ユニット30の先端の位置を第4指標45として画像表示装置53に表示する。
【0170】
使用者は、画像表示装置53の内視鏡画像53a中における電極ユニット30の先端の位置が、第4指標45よりも上方に位置していれば、弾性領域37の曲がり量θが十分であると認識することができる。
【0171】
以上に説明したように、本実施形態の電極ユニット30および内視鏡システム1によれば、使用者は、視覚に基づいて弾性領域37の曲がり量θを容易に認識することができ、、先端硬質部36の下端面36bの全体を組織に接触させることができる。
【0172】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電極ユニットおよび内視鏡システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。