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特許7189973ヘッドアップディスプレイ(HUD)のための試験装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ(HUD)のための試験装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20221207BHJP
   B60K 35/00 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020571369
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019067274
(87)【国際公開番号】W WO2020043352
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】18191436.7
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】マルティン アルント
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ カプッチッリ
(72)【発明者】
【氏名】ニネット ババヤニ
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-209457(JP,A)
【文献】特開2016-161317(JP,A)
【文献】特開2017-096654(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179453(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/198678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下を含む、ヘッドアップディスプレイ(HUD)のための試験装置:
- イメージングユニット(8)、
- ウィンドシールド(1)の方向に前記イメージングユニット(8)の放射線を偏向させ、かつそれによって前記ウィンドシールド(1)のHUD領域(B)を照射して、虚像(7)を生成するのに適している、光学素子(13)、
- 前記ウィンドシールド(1)を前記光学素子(13)に対して所定の配置に固定するために適した位置決め装置(11)、及び
- 異なるアイポジションから前記ウィンドシールド(1)を通じた前記虚像(7)を取り込むために適したカメラユニット(12)、
ここで、前記虚像(7)全体が前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)内にあるようにし、かつ光軸に沿った前記虚像(7)の拡張範囲(Δx)が、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)よりも小さいか又はこれに等しいが、前記光学素子(13)を使用しない光軸に沿った前記虚像(7)の拡張範囲(Δx)が、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)よりも大きくなるようにして、前記光学素子(13)が構成されており、かつ
前記ヘッドアップディスプレイ(HUD)のための試験装置は、3mを超える投影距離(d)で前記虚像(7)を生成するために適している。
【請求項2】
4mを超える投影距離(d)で前記虚像(7)を生成するために適している、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記光学素子(13)が、曲面ミラー、又はレンズである、請求項1又は2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記ミラー又は前記レンズの曲率半径が、中心から縁に向かって変化している、請求項3に記載の試験装置。
【請求項5】
前記光学素子(13)が、回転しないように取り付けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項6】
前記イメージングユニット(8)が、平面光源(10)によって裏から照らされる穿孔のパターンを有するプレート(9)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項7】
前記カメラユニット(12)が、移動可能に取り付けられた単一のカメラとして、又は静的に取り付けられた複数のカメラとして実施されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項8】
少なくとも以下の工程を含む、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の試験方法:
(a)位置決め装置(11)を用いて、光学素子(13)に対する所定の配置に、HUD領域(B)を有するウィンドシールド(1)を置くこと、
(b)イメージングユニット(8)によって前記光学素子(13)を照射すること、ここで、前記光学素子(13)によって、前記ウィンドシールド(1)の方向に放射線を偏向させ、かつ前記HUD領域(B)を照射し、それによって虚像(7)を生成させる、
(c)異なるアイポジションからカメラユニット(12)を用いて前記虚像(7)を取り込むこと、
ここで、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)内に前記虚像(7)全体があるようにし、かつ光軸に沿った前記虚像(7)の拡張範囲(Δx)が、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)よりも小さいか又はこれに等しいが、前記光学素子(13)を使用しない光軸に沿った前記虚像(7)の拡張範囲(Δx)が、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)よりも大きくなるようにして、前記光学素子(13)を構成し、かつ
前記HUD領域(B)上へ3mを超える投影距離(d)で前記虚像(7)を生成する。
【請求項9】
4mを超える投影距離(d)で前記虚像(7)を生成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記HUD領域(B)が、前記ウィンドシールド(1)の面積の少なくとも7%を占める、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ウィンドシールド(1)が、熱可塑性中間層(4)を用いて互いに接合された外部ペイン(2)と内部ペイン(3)とを含み、ここで、前記中間層(4)が、少なくとも前記HUD領域(B)においてくさび形である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記内部ペイン(3)を介して前記ウィンドシールド(1)に照射する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ウィンドシールド(1)のHUD領域(B)上へのイメージングユニット(8)の放射線を偏向させるための光学素子(13)の使用であって、
前記光学素子(13)に対する前記ウィンドシールド(1)の配置は、位置決め装置(11)によって固定されており、
虚像(7)を生成し、カメラユニット(12)を用いて、試験する目的で、異なるアイポジションから前記ウィンドシールド(1)を通じた前記虚像(7)を取り込み、
ここで、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)内に前記虚像(7)全体があるようにし、かつ光軸に沿った前記虚像(7)の拡張範囲(Δx)が、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)よりも小さいか又はこれに等しいが、前記光学素子(13)を使用しない光軸に沿った前記虚像(7)の拡張範囲(Δx)が、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)よりも大きくなるようにして、前記光学素子(13)を構成し、かつ
前記HUD領域(B)上へ3mを超える投影距離(d)で前記虚像(7)を生成する、
使用。
【請求項14】
前記光学素子(13)が、曲面ミラー又はレンズであり、かつ前記ミラー又は前記レンズの曲率半径が、中心から縁に向かって変化している、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)のための、特に、コンタクトアナログHUDのための試験装置、このようなHUDを試験するための方法、及びこのような試験における光学素子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の自動車にはいわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)がますます装備されるようになっている。例えば、ダッシュボードの領域又はルーフ領域にあるプロジェクターによって、像をウィンドシールド上へ投影し、そこで像を反射させ、かつウィンドシールドの後方で(運転者の視点から)虚像として運転者が像を認識する。したがって、重要なデータ、例えば、現在の駆動速度、運行指示、又は警告メッセージを運転者の視野へ投影することができ、運転者は道路から目をそらす必要なく、これらのデータを認識することができる。このため、ヘッドアップディスプレイは、交通安全の向上に著しく寄与することができる。静的データを表示するための一般的なHUDの投影距離(虚像と運転者との間の距離)は、典型的には約2mである。
【0003】
HUDのより最新の変形は、コンタクトアナログHUD又は拡張現実HUDと呼ばれるものである。これらのHUDは、より大きいHUD領域(ペイン上の投影面積)と、少なくとも5m、典型的には7mを超えるかなり大きい投影距離とで区別されている。コンタクトアナログHUDは、読み取ることができるデータをペイン上に静的に投影する可能性をもはや開拓するだけでなく、乗物の実環境の要素を識別するために光学情報を使用する可能性も開拓し、例示的な応用としては、道路境界の光学的マーク、道路側部の歩行者の光学的ハイライト、道路上の直接の走行指示、又は運転補助システムによって認識された乗物のマークがある。例えば、追加のミラーとより大きな容積とによって、プロジェクターの内部のビームの光路長をより大きくすることで、より大きな投影距離を作り出す。コンタクトアナログHUDは、例えば、独国特許出願公開第102014001710 A1号公報、国際公開第2014/079567 A1号、米国特許出願公開第2013/249942 A1号公報、米国特許出願公開第2014/354692 A1号公報、米国特許出願公開第2014/375816 A1号公報、及び国際公開第2013/136374 A1号に記載されている。
【0004】
HUDを設計する際に、試験装置における像の光学品質を調査することが慣習となっている。イメージング(結像)ユニットでウィンドシールドを照射し、典型的には点及び線の特徴的パターンの形態で、HUD像に対応する虚像を生成させる。運転者の複数の可能なアイポジション(目の位置)から、カメラユニットでウィンドシールドを通じてこの像を取り込む。この像を使用すると、多重反射の結果としてのゆがみ、ひずみ、ゴースト像の発生、及びその他の光学的効果を、異なるアイポジションに対して詳細に評価することができる。
【0005】
一般的なウィンドシールドの曲面形状と、それに伴う像領域の湾曲との結果として、HUDの虚像は、平面には配置されずに、空間的に曲がって配置される。この像は、比較的小さい拡張範囲のみを有しており、したがって、湾曲があるにもかかわらずカメラユニットではっきりと全体としてこの像を取り込むことができるので、このことは一般的なHUDの試験においては問題とならない。しかしながら、実質的により拡張した画像サイズを有するコンタクトアナログHUDの場合は、カメラユニットの焦点深度が限られているので、像の湾曲は、像の複数の部分が常に焦点からはずれて表示されることを引き起こす可能性があり、その評価を困難にするか、又は不可能にする。さらに、光軸に対して傾斜して放射線がウィンドシールドに当たるので、非点収差によって結像誤差が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に、コンタクトアナログHUDにも使用することができる、ヘッドアップディスプレイ(HUD)のための改善した試験装置を提供することにある。
【0007】
この目的は、請求項1に従う試験装置によって本発明に基づき達成される。好ましい実施形態は、従属請求項から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般的な試験装置は、少なくとも、イメージングユニット、位置決め装置、及びカメラユニットを備えている。本発明によるヘッドアップディスプレイ(HUD)のための試験装置は、さらに、光学素子を含む。イメージングユニットが放射線を発し、それによって、試験すべきウィンドシールド上での反射後に虚像を生成し、その位置及び拡張範囲が、後のHUD像に対応するようになっている。しかしながら、イメージングユニットがウィンドシールドを直接的に照射するわけではなく、光学素子を介して間接的に照射する。光学素子は、ウィンドシールドの方向にイメージングユニットの放射線を偏向させるのに適しており、かつこのために提供されており、これによって、ウィンドシールドのHUD領域を照射し、それによって、虚像を生成するようになっている。位置決め装置は、光学素子及びイメージングユニットに対して所定の配置にウィンドシールドを固定するために適しており、このために提供されている。乗物におけるHUDプロジェクターが後にウィンドシールドを照射するのと同じ様式で、イメージングユニットがウィンドシールドを照射すべきであり、そのため、試験装置において生成した像が、後のHUD投影に対する良好な見本となる。したがって、後にHUDプロジェクターの放射線がウィンドシールドに当たるのと実質的に同じ入射角及び同じ開口角で、イメージングユニットの放射線が、ウィンドシールドの同じ領域に当たるべきである。カメラユニットは、異なるアイポジションからウィンドシールドを通じた虚像を取り込むために適しており、かつこのために提供されている。「アイポジション(目の位置)」とは、後のHUDの視聴者/使用者の目の可能な位置を指す。
【0009】
光学素子は、虚像の空間における湾曲(像面湾曲)を縮小することができ、それによって、本発明の主要な利点を構成しながら、カメラユニットが、焦点が合った状態で像の全体を取り込むことができるようになっている。このために、光学素子は、カメラユニットの被写界深度の範囲内に虚像全体があるようにして実施される。より正確には、このことは、(カメラユニットと像の中心との間をはしる)光軸に沿った像の拡張範囲が、カメラユニットの被写界深度の範囲よりも小さいか又はこれに等しく、それによって、カメラユニットの焦点を像に合わせることができるようになっており、これにより、像の全体がこの被写界深度の範囲内にあり、したがって、焦点が合って表示されるようになっている、ということを意味する。一次像とゴースト像とは両方とも焦点が合って表示されるべきなので、厳密にいえば、像は、一次像とゴースト像との重ね合わせを含む。理想的には、一次像は、カメラユニットの焦点を合わせることができる単一の平面に配置される。しかしながら、この理想的な平面性からのわずかな逸脱、すなわち、像のわずかな残存する湾曲は、許容できる。許容可能な湾曲の度合いは、使用するカメラ及びその被写界深度に依存する。画像領域の湾曲に加えて、非点収差もまた、本発明による光学素子によって補償することができる。
【0010】
本発明の一つの目的は、像の拡張範囲を縮めることにあり、さもなければ、カメラの被写界深度の範囲内に完全な像を取り込むことはできない。この問題は、特に、コンタクトアナログHUDに関連して生じる。その結果として、好ましい実施形態では、光学素子を使用せずに、虚像が完全にカメラユニットの被写界深度の範囲内にあることはない。言い換えれば、光学素子を使用しないと、光軸に沿った像の拡張範囲は、カメラユニットの被写界深度の範囲よりも大きい。
【0011】
本発明の別の利点は、光学素子を通じたビーム路が、いわばねじ曲がっており、その結果、試験装置は、著しくよりスペースを取らない設計を有することができ、これは、コンタクトアナログHUDとその大きな投影距離に関して有利である。
【0012】
また、本発明は、少なくとも以下の工程を含む、HUDの試験方法を含む:
(a)位置決め装置を用いて、光学素子に対する所定の配置に、HUD領域を有するウィンドシールドを置くこと、
(b)イメージングユニットによって光学素子を照射すること、ここで、この光学素子によって、ウィンドシールドの方向に放射線を偏向させ、かつHUD領域を照射し、それによって虚像を生成させる、
(c)異なるアイポジションからカメラユニットを用いてこの虚像を取り込むこと、
ここで、このカメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)内にこの虚像全体(7)があるようにして、光学素子を構成する。
【0013】
上記の装置及び上記の方法に等しく言及する好ましい実施形態とともに、本発明を以下に詳細に説明する。
【0014】
光学素子は、好ましくはミラー、特に曲面ミラーである。ミラーの湾曲の適切な設計は、虚像の望ましくない像範囲の湾曲を補償することを可能にし、かつあらゆる非点収差を補償することも可能にする。例えば、ミラーの曲率半径を、中心から出発して縁の方向へ変化させることができ、それによって、それぞれのミラー領域によって生成する像の部分の位置に影響を与えるようになっている。ミラーを設計するとき、試験すべきペインの形状は、決定的なものであり、かつカメラユニットの位置も考慮に入れる必要がある。必要とされる設計、特に、ミラーの湾曲は、当業界で慣習となっている方法によって決定することができ、例えば、既知のコディントンの式を使用して、特に、いわゆる光線追跡法を適用することで決定することができる。光学素子は、特に好ましくは、高度に研磨した金属ミラーであり、これは高い精度で製造することができる。しかしながら、代替として、その他の光学素子も想定することもでき、例えば、適切な屈曲プロファイルを有するレンズを想定することもできる。
【0015】
好ましい実施形態では、光学素子は、特にミラーとして設計したときに、回転可能ではなく、代わりに、静的に取り付けられる。したがって、より高い測定精度及びより高速の測定を許容しながら、より簡素であって、かつよりエラーが発生しにくい構造として実施することができる。このため、光学素子は、アイボックス(eye box)全体を同時に照らすようにして設計する必要がある。このことは、特に、限られたアイボックスウィンドウ(eye box window)のみを照射することができ、かつアイボックス全体をカバーするために回転しなければならないHUDプロジェクター内のミラーとは、本発明による光学素子を区別するものである。
【0016】
本発明による試験装置は、特に有利には、コンタクトアナログHUD(いわゆる「拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR-HUD))を試験するために適している。これらは、従来からのHUDよりも著しく大きい投影距離(像と視聴者との間の距離)を有し、かつ著しく大きい投影像を有する。その結果、投影像を取り込んだときに、その湾曲の効果がより目立つようになり、それによって、像の複数の部分がカメラユニットの被写界深度の範囲の外に延在するので、しっかりと焦点の合った像全体を取り込むことができない可能性がある。この効果を、本発明による装置によって減少させる。通常のHUDは、3m未満の投影距離を有するのに対して、コンタクトアナログHUDは、(時には著しく)3mを超える投影距離を有する。したがって、特に有利な実施形態では、虚像は、3mを超える投影距離で生成され、好ましくは4mを超え、特に好ましくは5mを超える投影距離で生成される。
【0017】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)の投影装置は少なくとも乗物のウィンドシールド(特に、動力乗物のウィンドシールド、例えば、乗用車のウィンドシールド)及びプロジェクターを含む。プロジェクターが、ウィンドシールドの領域を照射し、ここで、放射線は視聴者(運転者)の方向に反射し、それによって虚像が生成し、乗物の中に位置する視聴者が、その視点からウィンドシールドの後ろとして、この虚像を認識する。プロジェクターが照射することのできるウィンドシールドの領域は、HUD領域と呼ばれている。プロジェクターは、HUD領域に向けられている。プロジェクターの照射の方向は、典型的にはミラーによって、特に鉛直方向に変化させることができ、それによって、視聴者の身体の大きさに投影が適合するようになっている。所与のミラー位置で視聴者の目が位置する必要がある領域は、アイボックスウィンドウ(eye box window)と呼ばれる。このアイボックスウィンドウは、したがって、アイボックス(eye box)と呼ばれる利用可能な領域全体(すなわち、すべての可能なアイボックスウィンドウのオーバーレイ)で、ミラーの調節によって鉛直方向に動かすことができる。アイボックスの範囲内に位置する視聴者は、虚像を認識することができる。むろん、このことは、例えば、身体全体ではなく、視聴者の目が、アイボックスの範囲内に位置する必要があるということを意味する。アイボックスは、いわば、視聴者の目のすべての可能な位置の総和であり、これは、通常はアイポジション(eye position;目の位置)と呼ばれる。プロジェクターとアイボックスの中心との間をはしるビームは、一般的には中心ビームと呼ばれる。これは、HUD投影装置の設計のための特徴的な参照ビームである。
【0018】
ここで使用するHUDの分野からの技術的用語は、当業者には一般的に知られている。詳細な説明については、ミュンヘン工科大学の情報学研究所(ミュンヘン:ミュンヘン大学図書館 TU、2012)におけるアレキサンダー ノイマンによる論文、「ヘッドアップディスプレイを試験するためのシミュレーションベースの計測学」、特に、第2章「ヘッドアップディスプレイ」が挙げられる。
【0019】
HUD投影の認識は、アイポジション(目の位置)に依存する。HUDは、通常は、アイボックスの中心に対して概念上は最適化されており、しばしば、他のアイポジションで、ゆがみ、より強いゴースト像、又はその他の望ましくない光学的効果が生じ得る。本発明の装置によって、これを調査する。
【0020】
イメージングユニットを用いて、ウィンドシールドのHUD領域を照射し、試験虚像を生じさせる。この試験像は、典型的には、点及び/又は線のパターンである。このため、このようなパターンは、光学的基準に関して定量的に容易に評価することができる。このパターンは、予歪を有し得るものであり、それによって、ウィンドシールドによって不可避的に生じる任意のゆがみを補償し、かつこのパターンが、(少なくとも中心ビームに関して)虚像に規則的にあらわれるようになっている。好ましい実施形態では、イメージングユニットは、プレートと、このプレートの背後から光を当てる平面光源とを備えている。パターンは、有孔板の様式で貫通孔の形態でこのプレートに導入されている。プレートは、例えば、金属又はプラスチックでできていてよい。しかしながら、代替として、イメージングユニットは、例えば、ディスプレイ(スクリーン)として実施されていてもよく、例えば、LED、LCD,又はDLPディスプレイとして実施されていてもよい。
【0021】
イメージングユニットの放射線が光学素子に当たり、かつこの放射線が、光学素子によって位置決め装置に固定されたウィンドシールドのHUD領域へ投影される。位置決め装置は、例えば、ホルダーであり、その中へウィンドシールドが固定され、それによって、その位置を再現可能であるようにしている。ウィンドシールド、光学素子、及びイメージングユニットの相対的な配置は、HUDプロジェクターの放射線と同じ角度及び同じ拡張範囲で、放射線がウィンドシールドに当たるようにして選択され、それによって、試験像がHUD投影のための現実的なモデルであるようになっている。
【0022】
こうして生成させた試験虚像は、異なるアイポジションからカメラユニットを使用して取り込まれる。このために、例えば、ロボットアームに取り付けられ、それによって、異なるアイポジション間で動かすことができるようになっている、可動に取り付けられた単一のカメラを使用することができる。あるいは、一つのアイポジションにそれぞれが関連する複数のカメラを使用することができる。このため、試験の間の移動は不要であり、したがって、カメラは、好ましくは静的に取り付けられている。
【0023】
カメラユニットで取り込まれた像は、次いで、当業界で慣例となっているように画像処理プログラムを使用して分析される。特に、ゴースト像、ゆがみ、例えば、回転ゆがみ又は台形ゆがみの発生と強度、及びその他の光学的効果を、対比するものに応じて調査することができる。
【0024】
ウィンドシールドは、通常、熱可塑性中間層を介して互いに接合する外部ペイン及び内部ペインを備えている。乗物のウィンドウ開口部において、ウィンドシールドは、外部環境から内部を分離することを意図している。本発明に関して、「内部ペイン」とは、内部(乗物内部)に向かい合うペインを指す。「外部ペイン」とは、外部環境に向かい合うペインを指す。ウィンドシールドは、約10cmから約40mの範囲の通常の曲率半径で、典型的には湾曲している。HUD領域では、曲率半径は、典型的には2mから20mまでである。内部ペインの内側面は、実質的には凹面であり、外部ペインの外側面は凸面である。「内側面」とは、設置位置で乗物の内部に向かい合う面を指す。「外側面」とは、設置位置で外部環境に向かい合う面を指す。
【0025】
HUDの場合、試験装置におけるウィンドシールドを、内部側から出発して照射する。したがって、HUDプロジェクター及びイメージングユニットが、ウィンドシールドの内側面に配置されており、それによって、内部ペインがこれらに向かい合うようになっている。ウィンドシールドを、内部ペインの内側面を介して照射する。
【0026】
いわゆるゴースト像の問題は、HUDによく見られる。プロジェクターは、乗物の内部に配置され、かつその放射線が内部ペインの内側面に当たり、ここで、運転者の目の方へ一部が反射して、所望の虚像を生成し、運転者がこの虚像をウィンドシールドの後ろとして、すなわち外側として、運転者の視点から認識する。放射線の大部分はウィンドシールドを通過し、ここで、一部が再び外部ペインの外側面で反射する。この二次的な反射が、別のHUD像、つまりゴースト像を作り出し、ゴースト像は一次像に対してわずかにオフセットしており、かつより低い強度を有するので、運転者は、気を散らすものとしてゴースト像を認識する。典型的なウィンドシールドはくさび形であり、それによって、内部ペインの内側面及び外部ペインの外側面が、互いに対して角度をなして配置されており、これによって、ゴースト像と一次像とが重なり合うか、又は少なくともこれらの間の距離を縮小し、それによって、ゴースト像は、それほど気を散らすものとならないようになっている。しかしながら、この補償は、しばしば理想的なものとはならず、かつアイポジションにも依存する。
【0027】
ウィンドシールドのくさび形状は、通常は、同様にくさび形の熱可塑性層を使用することによって達成される。中間層の厚さは、ウィンドシールドの上縁と下縁の間で、鉛直方向に少なくとも部分的に変化している。ここで、「部分的に」とは、上縁と下縁との間の鉛直方向において、中間層の厚さが位置に応じて変化する少なくとも一つの区域を有すること、すなわち、中間層がくさび角度を有することを意味する。中間層の厚さは、少なくともHUD領域において変化している。しかしながら、この厚さは、複数の区域において、又は鉛直方向全体で変化していてもよく、例えば、下縁から上縁へと実質的に連続して増加することができる。「鉛直方向」との用語は、上縁に実質的に垂直な方向に合わせた進行方向での上縁と下縁との間の方向を指す。ウィンドシールドにおいて、上縁は直線からは大きく外れていてよいので、本発明に関して鉛直方向は、上縁の角の間の接続線に対して垂直な方向としてより厳密に表現される。中間層は、少なくとも部分的に有限なくさび角度、すなわち、0°を超えるくさび角度を有しており、つまり、この部分では厚さが変化している。「くさび角度」との用語は、中間層の2つの面の間の角度を指す。くさび角度が一定ではない場合、その測定のために、その面に対する接線を点で使用する必要がある。典型的なくさび角度は、0.2mradから1mradの範囲であり、特に、0.3mradから0.7mradの範囲である。このくさび角度は、鉛直方向で一定であってよく、その結果、典型的かつ好ましくは、底部から頂部に厚さがより大きくなりながら、中間層の厚さは線形に変化する。「底部から頂部に」との方向表示は、下縁から上縁への方向を指す。しかしながら、より複雑な厚さのプロファイルが存在していてもよく、ここでのくさび角度は、底部から頂部へ、線形又は非線形に変化している(言い換えれば、くさび角度は、鉛直方向において位置依存性である)。
【0028】
コンタクトアナログHUD又は拡張現実HUDにおいて、ウィンドシールドの限られた領域に投影するのは情報だけではなく、外部環境の要素もディスプレイに含まれる。この例は、歩行者のマーキング、先行する乗物に対する距離の表示、又は例えば、選択すべき車線をマーキングするための、道路上の運行指示データの直接的な投影である。コンタクトアナログHUDは、通常の静的HUDとは区別され、投影距離が3mを超え、好ましくは4mを超え、典型的にはさらに5mを超える。静的HUDにおいて、投影距離は、大幅により小さく、典型的には約2mである。本発明に関して、「投影距離」とは、虚像と視聴者、すなわち、一般に運転者の頭との間の距離を指す。投影距離は、好ましくは少なくとも7mである。投影距離は、好ましくは最大で15mである。
【0029】
コンタクトアナログHUDの投影装置において、すべての投影された像に対する投影距離は、実質的に一定である。異なる距離で主観的に視聴者が認識することになっている投影であっても、実際には実質的に同じ投影距離を有している。異なる距離の主観的印象は、幾何学的な光学的効果によって得られる。
【0030】
ウィンドシールドと虚像との間の距離は、通例、「イメージ距離(イメージ幅)」と呼ばれる。典型的には、運転者の頭がウィンドシールドからおおよそ1mの距離を有するので、イメージ距離は投影距離よりも約1m小さい。その結果として、投影距離に代わるものとして、十分な精度を有する基準としてイメージ距離を使用することができる。したがって、イメージ距離は、好ましくは2mを超え、特に好ましくは3mを超え、最も特に好ましくは少なくとも4mを超え、かつ好ましくは最大で14mである。
【0031】
コンタクトアナログHUDの場合、HUD領域は、典型的には通常の静的HUDの場合のものよりも大きい。好ましい実施形態では、HUD領域の面積は、ウィンドシールドの面積の少なくとも7%であり、特に好ましくは少なくとも8%である。静的HUDのHUD領域の面積は、典型的にはウィンドシールドの面積の最大で4~5%である。
【0032】
内部ペイン及び外部ペインは、好ましくはガラスでできており、特に好ましくはソーダ石灰ガラスでできており、これはそれ自体でウィンドウガラスであると分かるものである。しかしながら、これらのペインは、他のタイプのガラス、例えば、ホウケイ酸ガラス、又はアルミノケイ酸ガラスでできていてもよい。あるいは、これらのペインは、基本的にプラスチックでできていてよく、特に、ポリカーボネート又はPMMAでできていてもよい。外部ペイン及び内部ペインの厚さは、当業界で通例となっている値に関して自由に選択することができる。一般的なウィンドシールドについて、個々のペインの厚さは、通例、1mm~5mm、特に1.2mm~3mmの範囲である。標準的なペインの厚さは、例えば、2.1mm又は1.6mmである。外部ペイン、内部ペイン、及び熱可塑性中間層は、無色透明であってよいが、薄く色が付いていても、又は着色していてもよい。好ましい実施態様では、特に、複合ガラスがウィンドシールドであるときに、複合ガラスを通じた全透過率は70%を超える。「全透過率」との用語は、ECE-R43、付属書類3、セクション9.1で規定される動力乗物ウィンドウの光透過性を試験するためのプロセスに基づくものである。
【0033】
中間層は、通常は、少なくとも一つの熱可塑性フィルムによって形成されており、好ましくは、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、又はそれらの混合物、若しくはコポリマー、若しくは誘導体をベースとし、特に好ましくはPVBをベースとする。中間層の厚さは、くさび形フィルムの場合にはその薄い縁で測定して、典型的には0.2mm~2mm、特に0.5mm~1mmの範囲にある。
【0034】
ウィンドシールドの設置角度は、典型的には水平線に対して55°~75°の範囲にあり、特に、60°~70°、例えば、約65°である。
【0035】
本発明は、本発明による試験装置と、位置決め装置に固定したウィンドシールドとを含む、HUDのための試験装置も含む。
【0036】
本発明によって試験するHUDは、好ましくは乗物に使用され、特に好ましくは動力乗物に、最も特に好ましくは乗用車に使用される。
【0037】
また、本発明は、ウィンドシールドのHUD領域上へのイメージングユニットの放射線を偏向させるための光学素子の使用であって、
この光学素子に対するウィンドシールドの配置は、位置決め装置によって固定されており、
虚像を生成し、試験する目的で、異なるアイポジションからカメラユニットを用いて、ウィンドシールドを通じた虚像を取り込み、
ここで、カメラユニットの被写界深度の範囲内に虚像全体があるようにして、光学素子を構成する、
使用を含む。
【0038】
本発明を、図面及び例示的な実施形態を参照しながら詳細に説明する。図面は、概略図であり、正確な縮尺ではない。図面は、決して本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、HUDのためのウィンドシールドの平面図である。
図2図2は、HUDのための投影面としての図1のウィンドシールドの断面図である。
図3図3は、HUDのための従来技術の試験装置の側面図である。
図4図4は、HUDのための本発明による試験装置の側面図である。
図5図5は、図3の従来技術の試験装置と、図4の本発明による試験装置との、模擬的例示像である。
図6図6は、虚像の拡張範囲と、カメラユニットの被写界深度の範囲とを概略的に図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、HUD投影装置を有するウィンドシールド1の平面図を示す。ウィンドシールド1は、上縁O、下縁U、及びこれらを結合する2つの側端を有している。上縁Oは設置位置で上方を指し、乗物のルーフ(ルーフエッジ)の方を指しており;下縁Uは、エンジン室(エンジンエッジ)の方を指している。ウィンドシールド1は、HUD領域Bを有しており、設置位置で、HUDプロジェクターが、この領域Bを照射することができ、かつ操作の間にこの領域Bを照射する。
【0041】
図2は、図1のウィンドシールド1及びHUDプロジェクター5を含むHUD投影装置の断面図を示す。ウィンドシールド1を切断線A-A’で切断する。ウィンドシールド1は、外部ペイン2及び内部ペイン3を備えており、これらは熱可塑性中間層4を介して互いに接合している。ウィンドシールド1は、外部環境から乗物内部を分離し、ここで、設置位置で、外部ペイン2が外部環境に向き合っており、内部ペイン3が乗物内部に向き合っている。水平線に対する設置角度βは、例えば、65°である。
【0042】
外部ペイン2及び内部ペイン3は、例えば、強化処理をしていないソーダ石灰ガラスでできている。例えば、外部ペイン2は2.1mmの厚さを有し、内部ペイン3は1.6mmの厚さを有する。これらのペインはウィンドシールドにとって通常のものである。中間層4の厚さは、これら2つのペインの面間の実質的に一定であるくさび角度αを有しながら、下縁Uから上縁Oへと鉛直方向に連続的に増加している。中間層4は、PVBでできた単一のフィルムから形成されている。中間層4の厚さは上縁Oで、例えば1.0mmであり、下縁Uで例えば0.76mmである。中間層4をくさび形の形状で実施することによって、中間層の反対側を向く外部ペイン2及び内部ペイン3の2つの面で、プロジェクター像が反射することによって生成する2つの像が互いに重なり合う。その結果、気を散らすゴースト像が生じる程度は比較的低くなる。
【0043】
プロジェクター5は、HUD領域Bを向いている。プロジェクター5によって、この領域で像が作り出される。プロジェクター像は、ウィンドシールド1によって、視聴者6(乗物の運転者)の方向に反射する。したがって、虚像7が作り出され、乗物の中にいる視聴者6が、その視点からウィンドシールド1の後ろに、この虚像を認識する。視聴者6と虚像7との間の距離は、投影距離dと呼ばれる。ウィンドシールド1と虚像7との間の距離は、イメージ距離wと呼ばれる。
【0044】
この投影装置は、いわゆるコンタクトアナログHUD又は拡張現実HUDと呼ばれており、これは、例えば10mの大きな投影距離dによって特徴付けられている。これは、光学的表示に環境を含めることを可能にし、それによって、例えば、視聴者6のための運行指示として、道路上に直接はっきりと選択すべき車線を投影することができる。より大きな投影距離dに加えて、コンタクトアナログHUDは、一般的なHUDとは、より大きなHUD領域Bを有する点で異なっており、その面積は、例えばウィンドシールド1の面積の9%である。
【0045】
虚像を認識するために視聴者6の目が位置していなければならない範囲内の領域は、アイボックスウィンドウと呼ばれる。アイボックスウィンドウは、プロジェクター5内のミラーで鉛直方向に調節可能であり、それによって、異なる体の大きさ及び異なる座位の視聴者6に対してHUDを合わせることができるようになっている。アイボックスウィンドウを動かすことができる範囲内の利用可能な領域全体は、アイボックスEと呼ばれる。
【0046】
HUDには、多数の望ましくない光学的効果が生じ得る。これには、一方で、ディスプレイのゆがみ、例えば、回転や、台形ひずみが含まれる。他方で、プロジェクターの放射線がウィンドシールド1の両方の外面で反射し、それによって、一次像に加えて、わずかにオフセットしたゴースト像が生じる。くさび角度αは、一次像とゴースト像とをできる限り重ね合わせることを意図しており、ここで、くさび角度の設計は、通常、中心ビーム(プロジェクター5とアイボックスEの中心との間のビーム)に基づいている。しかしながら、光学的効果の発生は、アイポジション(目の位置)、すなわち、アイボックスEの範囲内の視聴者の正確な配置に強く依存する。そのため、この効果の発生をアイポジションに応じて試験すべきであり、この目的のために、本発明の要旨を構成する試験装置を使用する。
【0047】
図3は、HUDのための従来技術の一般的な試験装置を示す。HUDのためのウィンドシールド1は、イメージングユニット8に対するウィンドシールド1の配置を規定する位置決め装置11に固定されている。イメージングユニットは、点及び/又は線の形態の特徴的なパターンの穿孔(ホール)を有するプレート9を備えており、かつプレート9の背後から光を当てる平面光源10も備えている。ウィンドシールド1とイメージングユニット8との相対的な配置は、使用時に予定されている配置にあるウィンドシールド1とHUDプロジェクター5との相対的な配置に相応している。ウィンドシールド1のHUD領域Bをイメージングユニット8が照射し、ここで、点及び/又は線の特徴的なパターンの虚像7が、ウィンドシールド1の後ろに生成する。放射線を灰色の角型矢印で示してある。虚像7は、アイボックスEの範囲内で異なるアイポジションから、カメラユニット12によって、例えば、ロボットアームに取り付けたカメラによって取り込まれる。次いで、カメラユニット12の像を、画像処理ソフトウェアを使用して詳細に評価することができる。したがって、特に、例えば、ゴースト像やゆがみの発生のような、望ましくない光学的効果を定量的にかつアイポジションに応じて評価することができ、それによって、HUD像の品質に関する結論を引き出すことができるようになっている。
【0048】
図示したように、虚像7は平面ではなく、それよりむしろ空間において湾曲しており、特に、ペインの湾曲に起因して湾曲している。特に、コンタクトアナログHUDに伴って生じるような相対的に大きな像7の場合に、取り込みの間に問題が発生し得る。カメラユニット12は、限られた被写界深度の範囲を有し、それによって、時として、しっかりと焦点の合った像全体を取り込むことができない場合がある。その代わりに、被写界深度の範囲の外側に延在する焦点面のそれぞれに、像7の領域があり、その結果、焦点がはずれて像を取り込む。これは、像の評価に悪影響を与える。
【0049】
一方、図4は、HUDのための本発明による試験装置を示す。図3の従来技術の試験装置とは対照的に、イメージングユニット8はウィンドシールド1を直接的には照射しない。その代わりに、光学素子13によって、放射線をウィンドシールド1の方向に偏向させる。ここでも、放射線を灰色の角型矢印で示してある。虚像7に影響を与えるために光学素子13を使用することができ、それによって、虚像が図中の一つの平面におおよそ配置されるようにして、虚像7を設計し直すようにされている。少なくとも像7の湾曲は、光軸に沿った拡張範囲が、最大でもカメラユニット12の被写界深度の範囲と同じ大きさであるような程度まで縮小する。次いで、カメラユニット12は焦点を合わせることができ、それによって、焦点を合わせて像7全体を取り込み、かつ問題のない評価をすることが可能であるようになっている。
【0050】
光学素子13は、例えば、高度に研磨した金属プレートでできた曲面ミラーとして実施され、ここで、ミラーの適切な曲面プロファイルによって、像7の湾曲に対する本発明による影響をもたらすことができ、ミラーにおける曲率半径は、ミラーの中心から出発して側端の方へ適切に変化させることができる。
【0051】
図5は、本発明の例と比較例との模擬的な写真を示す。図5(a)は、図3による従来技術の試験装置に基づくものであり、ここでは、HUDプロジェクターの位置から、イメージングユニット8によってウィンドシールド1を直接的に照射した。像の複数の領域がカメラユニット12の被写界深度の範囲内にないので、像のこれらの領域は焦点が合っていないことがはっきりとわかる。対照的に、図5(b)は、光学素子13として非球面ミラーを有する図4による本発明の試験装置に基づくものであった。光軸に沿った像7の拡張範囲を光学要素13によって縮小することができ、それによって、像7が完全に被写界深度の範囲内にあり、したがって、くっきりと焦点が合うようになっている。
【0052】
いずれの場合にも、模擬実験は、イメージングユニットとして二次元のパターンの孔を有する、バックライト付き穿孔プレートと、10mの投影距離と、1600mm×800mmの像の大きさ(中央のカメラ(アイポイント)から10mの距離の虚像の面で測定した大きさ)とを前提とするものであった。図5(a)では、穿孔プレートから複合ペインまでの距離は、10mである。図5(b)では、非球面ミラーから複合ペインまでの距離は、300mmである。
【0053】
図6は、本発明が達成する効果を図示したものである。カメラユニット12は、限定された被写界深度の範囲Δdを有している。所与の焦点設定で、Δdは、光軸(カメラユニット12と像の中心との間の結合軸)に沿った遠点d(カメラユニット12から最も遠い焦点が合った地点)と近点d(カメラユニット12から最も近い焦点が合った地点)との間の領域である。虚像7は、主としてウィンドシールド1の湾曲に起因して、空間において湾曲している。このことは、光軸に沿った像7の拡張範囲Δxをもたらす。拡張範囲Δxが被写界深度の範囲Δdよりも大きい場合、焦点を合わせて像7全体を表示することができる焦点面が存在せず、つまり、像7は、被写界深度の範囲Δdの外側に常に部分的に延在する(図6(a))。本発明による光学素子13は、拡張範囲Δxを縮小し、それによって、拡張範囲Δxが被写界深度の範囲Δdよりも小さいようになっている。ここで、焦点を合わせて像7全体を表示し、次いで分析することができるようにするために、焦点面を選択することができる(図6(b))。完全に焦点が合って表示される像7の可能性を提供するために、一般的に、以下を適用する必要がある:Δx≦Δd
【0054】
ここでは、簡潔さのために、像7を単一の線の形態で描写している。分析のために、一次像及びゴースト像の両者は、しっかりと焦点が合って表示されるので、実際には、拡張範囲Δxは、一次像とゴースト像との総和に基づく。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]少なくとも以下を含む、ヘッドアップディスプレイ(HUD)のための試験装置:
- イメージングユニット(8)、
- ウィンドシールド(1)の方向に前記イメージングユニット(8)の放射線を偏向させ、かつそれによって前記ウィンドシールド(1)のHUD領域(B)を照射して、虚像(7)を生成するのに適している、光学素子(13)、
- 前記ウィンドシールド(1)を前記光学素子(13)に対して所定の配置に固定するために適した位置決め装置(11)、及び
- 異なるアイポジションから前記ウィンドシールド(1)を通じた前記虚像(7)を取り込むために適したカメラユニット(12)、
ここで、前記虚像(7)全体が前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)内にあるようにして、前記光学素子(13)が構成される。
[2]光軸に沿った前記虚像(7)の拡張範囲(Δx)が、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)よりも小さいか又はこれに等しいが、前記光学素子(13)を使用しない光軸に沿った前記虚像(7)の拡張範囲(Δx)が、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)よりも大きい、上記[1]に記載の試験装置。
[3]3mを超え、好ましくは4mを超え、特に好ましくは5mを超える投影距離(d)で前記虚像(7)を生成するために適している、上記[1]又は[2]に記載の試験装置。
[4]前記光学素子(13)が、曲面ミラー、特に、高度に研磨した金属ミラー又はレンズである、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の試験装置。
[5]前記ミラー又は前記レンズの曲率半径が、中心から縁に向かって変化している、上記[4]に記載の試験装置。
[6]前記光学素子(13)が、回転しないように取り付けられている、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の試験装置。
[7]前記イメージングユニット(8)が、平面光源(10)によって裏から照らされる穿孔のパターンを有するプレート(9)、特に、金属プレートを含む、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の試験装置。
[8]前記カメラユニット(12)が、移動可能に取り付けられた単一のカメラとして、又は静的に取り付けられた複数のカメラとして実施されている、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の試験装置。
[9]少なくとも以下の工程を含む、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の試験方法:
(a)位置決め装置(11)を用いて、光学素子(13)に対する所定の配置に、HUD領域(B)を有するウィンドシールド(1)を置くこと、
(b)イメージングユニット(8)によって前記光学素子(13)を照射すること、ここで、前記光学素子(13)によって、前記ウィンドシールド(1)の方向に放射線を偏向させ、かつ前記HUD領域(B)を照射し、それによって虚像(7)を生成させる、
(c)異なるアイポジションからカメラユニット(12)を用いて前記虚像(7)を取り込むこと、
ここで、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)内に前記虚像(7)全体があるようにして、前記光学素子(13)を構成する。
[10]3mを超え、好ましくは4mを超え、特に好ましくは5mを超える投影距離
(d)で前記虚像(7)を生成する、上記[9]に記載の方法。
[11]前記HUD領域(B)が、前記ウィンドシールド(1)の面積の少なくとも7%、好ましくは少なくとも8%を占める、上記[9]又は[10]に記載の方法。
[12]前記ウィンドシールド(1)が、熱可塑性中間層(4)を用いて互いに接合された外部ペイン(2)と内部ペイン(3)とを含み、ここで、前記中間層(4)が、少なくとも前記HUD領域(B)においてくさび形である、上記[9]~[11]のいずれか一つに記載の方法。
[13]前記内部ペイン(3)を介して前記ウィンドシールド(1)に照射する、上記[12]に記載の方法。
[14]ウィンドシールド(1)のHUD領域(B)上へのイメージングユニット(8)の放射線を偏向させるための光学素子(13)の使用であって、
前記光学素子(13)に対する前記ウィンドシールド(1)の配置は、位置決め装置(11)によって固定されており、
虚像(7)を生成し、カメラユニット(12)を用いて、試験する目的で、異なるアイポジションから前記ウィンドシールド(1)を通じた前記虚像(7)を取り込み、
ここで、前記カメラユニット(12)の被写界深度の範囲(Δd)内に前記虚像(7)全体があるようにして、前記光学素子(13)を構成する、使用。
[15]前記光学素子(13)が、曲面ミラー又はレンズであり、かつ前記ミラー又は前記レンズの曲率半径が、中心から縁に向かって変化している、上記[14]に記載の使用。
【符号の説明】
【0055】
1 ウィンドシールド
2 外部ペイン
3 内部ペイン
4 熱可塑性中間層
5 プロジェクター
6 視聴者/乗物の運転者
7 虚像
8 イメージングユニット
9 穿孔のパターンを有する(金属)プレート
10 平面光源
11 ウィンドシールドの位置決め装置
12 カメラユニット
13 光学素子
O ウィンドシールド1の上縁
U ウィンドシールド1の下縁
B ウィンドシールド1のHUD領域
α 中間層4のくさび角度
β 水平線に対するウィンドシールド1の設置角度
d 投影距離/視聴者・乗物の運転者6と虚像7との間の距離
w イメージ距離/ウィンドシールド1と虚像7との間の距離
カメラユニット12の近点
カメラユニット12の遠点
Δd カメラユニット12の被写界深度の範囲
Δx 光軸に沿った像7の拡張範囲
E アイボックス
A-A’ 鉛直切断線
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】