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特許71899742段階式の電磁弁を電気的に切替えるための制御装置および方法
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  • 特許-2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための制御装置および方法 図1a
  • 特許-2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための制御装置および方法 図1b
  • 特許-2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための制御装置および方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20221207BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20221207BHJP
   H01F 7/18 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60T8/17 Z
F16K31/06 310A
H01F7/18 U
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020572554
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019064797
(87)【国際公開番号】W WO2020011455
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】102018211686.5
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ベンツラー シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】長倉 安孝
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531572(JP,A)
【文献】特表2005-512877(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01130300(EP,A1)
【文献】特開2012-015146(JP,A)
【文献】特開2015-179417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 15/00-17/22
F16K 31/06-31/11
H01F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単に通電されている切替え状態または通電されていない切替え状態に切替え可能である2段階式の電磁弁(12)のための制御装置(10)であって、
前記電磁弁(12)の少なくとも1つのマグネットコイルを通って流れる電流を切替え信号(28)として前記電磁弁(12)に印加するために設計された駆動装置(10a)を有しており、
この場合、前記電磁弁(12)は、前記駆動装置(10a)が場合によって前記切替え信号(28)の電流強さ(I)をゼロから、前記電磁弁(12)をその通電されていない切替え状態からその通電されている切替え状態に切替え可能である、前記電磁弁(12)の構成によって予め設定された保持電流強さよりも大きいかまたはこれと同じである切替え電流強さ(IS)に上昇させるために設計されていることによって、前記駆動装置(10a)によりその通電されていない切替え状態からその通電されている切替え状態に切替え可能であり、
前記電磁弁(12)は、前記駆動装置(10a)が場合によっては前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を切替え時間間隔(Δtotal)中に、ゼロと前記切替え電流強さ(IS)との間の少なくとも1つの電流強さの値に調節し、前記切替え時間間隔(Δtotal)後にゼロに低下させるために設計されていることによって、前記駆動装置(10a)によりその通電されている切替え状態からその通電されていない切替え状態に切替え可能である、
形式のものにおいて、
前記駆動装置(10a)は、前記切替え時間間隔(Δtotal)中に前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を、少なくとも2回それぞれ所定のパルス時間間隔(Δtpuls)だけゼロと前記切替え電流強さ(IS)との間の所定の電流パルス値(Ihigh)に上昇させ、前記パルス時間間隔(Δtpuls)外の前記切替え時間間隔(Δtotal)の時間中に前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を、ゼロより大きく、前記所定の電流パルス値(Ihigh)よりも小さい少なくとも1つの電流強さの値に調節するために、設計されていることを特徴とする、2段階式の電磁弁(12)のための制御装置(10)。
【請求項2】
前記駆動装置(10a)が、前記切替え時間間隔(Δtotal)中に前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を、少なくとも3回それぞれ前記所定のパルス時間間隔(Δtpuls)だけ前記所定の電流パルス値(Ihigh)に上昇させる、請求項1記載の制御装置(10)。
【請求項3】
前記駆動装置(10a)は、前記切替え時間間隔(Δtotal)中に、相次いで連続する2つのパルス時間間隔(Δtpuls)間のそれぞれの中間時間間隔(Δtinter)中の前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を、それぞれの中間値が、後で同じ切替え時間間隔(Δtotal)内で維持される、後の中間時間間隔(Δtinter)の中間値よりも大きくなるように、それぞれの中間値に調節するために設計されている、請求項2記載の制御装置(10)。
【請求項4】
車両のためのブレーキシステムであって、
請求項1から3までのいずれか1項記載の制御装置(10)と、
前記制御装置(10)によって制御可能な2段階式の電磁弁(12)と、
を有する、車両のためのブレーキシステム。
【請求項5】
前記2段階式の電磁弁(12)が無電流閉鎖式の電磁弁(12)または無電流開放式の電磁弁である、請求項4記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記2段階式の電磁弁(12)がホイールインレットバルブまたはホイールアウトレットバルブ(12,14)である、請求項4または5記載のブレーキシステム。
【請求項7】
単に通電されている切替え状態または通電されていない切替え状態に切替え可能である2段階式の電磁弁(12)を電気的に切替えるための方法であって、
切替え信号(28)として前記電磁弁(12)の少なくとも1つのマグネットコイルを通って流れる電流の電流強さ(I)をゼロから、前記電磁弁(12)をその通電されていない切替え状態からその通電されている切替え状態に切替える、前記電磁弁(12)の構成によって予め設定された保持電流強さよりも大きいかまたはこれと同じである切替え電流強さ(IS)に上昇させることによって、前記電磁弁(12)をその通電されていない切替え状態からその通電されている切替え状態に切替えるステップ(S1)と、
前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を切替え時間間隔(Δtotal)中にゼロと前記切替え電流強さ(IS)との間の少なくとも1つの電流強さの値に調節し、前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を前記切替え時間間隔(Δtotal)後にゼロに低下させることによって、前記電磁弁(12)をその通電されている切替え状態からその通電されていない切替え状態に切替えるステップ(S2)と、
を有する方法において、
前記切替え時間間隔(Δtotal)中に前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を少なくとも2回それぞれ所定のパルス時間間隔(Δtpuls)だけ、ゼロと前記切替え電流強さ(IS)との間の所定の電流パルス値(Ihigh)に上昇させ、前記パルス時間間隔(Δtpuls)外の前記切替え時間間隔(Δtotal)の時間中に前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を、ゼロより大きく、かつ前記所定の電流パルス値(Ihigh)よりも小さい少なくとも1つの電流強さの値に調節することを特徴とする、2段階式の電磁弁(12)を電気的に切替えるための方法。
【請求項8】
前記切替え時間間隔(Δtotal)中に、前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を少なくとも3回それぞれ所定の前記パルス時間間隔(Δtpuls)だけ前記所定の電流パルス値(Ihigh)に上昇させる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記切替え時間間隔(Δtotal)中に、相次いで連続する2つのパルス時間間隔(Δtpuls)間のそれぞれの中間時間間隔(Δtinter)中の前記切替え信号(28)の前記電流強さ(I)を、それぞれの中間値が、後で同じ切替え時間間隔(Δtotal)内で維持される、後の中間時間間隔(Δtinter)の中間値よりも大きくなるように、それぞれの中間値に調節する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
2段階式の電磁弁(12)として、車両のブレーキシステムの弁(12)、ホイールインレットバルブおよび/またはホイールアウトレットバルブ(12,14)を、電気的に切替える、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2段階式の電磁弁のための制御装置に関する。同様に本発明は車両のためのブレーキシステムに関する。さらに本発明は、2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のブレーキシステム内にブレーキ弁として組み込まれた電磁弁を制御するための方法および装置が記載されている。電磁弁は2段階式の電磁弁として、選択的にその通電されていない開放した切替え状態にまたは通電されている閉鎖された切替え状態に切替え可能である。従って、電磁弁のマグネットコイルを通る電流の電流強さを増大させることによって、電磁弁はその通電されている閉鎖された切替え状態に切替えられ、これに対して電磁弁は、マグネットコイルを通る電流の電流強さを低下させることによって、通電されていない開放した切替え状態に切替え可能である。特許文献1に記載された電磁弁の制御では、いわゆるコンフォートパルス(Komfortpuls)も、電磁弁を切替えるための電流の電流強さの変化中に電磁弁のマグネットコイルを通って伝送されるので、電磁弁の切替え時の可聴音の放射を低減可能とする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】ドイツ連邦共和国特許公開第102016226272号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する2段階式の電磁弁のための制御装置、請求項4の特徴を有する車両のためのブレーキシステム、および請求項7の特徴を有する2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、切替え時間間隔中に、切替え信号の電流強さを少なくとも2回それぞれの所定のパルス時間間隔だけ所定の電流パルス値に上昇させることで、位置調節可能な弁部材の激しく騒々しい衝突(例えば電磁弁のバルブシートに対する)が阻止されるように、電磁弁の位置調節可能な弁部材の不都合に強い加速に対抗して作用することによって、単にその通電されていない切替え状態またはその通電されている切替え状態に切替え可能な2段階式の電磁弁を、その通電されている切替え状態からその通電されていない切替え状態に切替えるための改善された可能性を提供する。従って、本発明は、電磁弁の切替え時のNVH特性(Noise Vibration Harshness:ノイズバイブレーションハーシュネス)を改善する。従って、いわゆる「弁切替え騒音」または「弁ノッキング騒音」は、電磁弁の本発明による切替え時に減少/除去されている。
【0006】
制御装置の好適な1実施例では、駆動装置が、切替え時間間隔中に切替え信号の電流強さを、少なくとも3回それぞれ所定のパルス時間間隔だけ、所定の電流パルス値に上昇させるために設計されている。切替え時間間隔中に実行されるパルス間隔の比較的多い回数によって、パルス時間間隔と次の中間時間間隔との迅速な交換、または中間時間間隔と次のパルス時間間隔との迅速な交換が可能である。2つの異なる間隔タイプ間の比較的頻繁な交換によって、位置調節可能な弁部材は、電磁弁を切替えるために確実に位置調節され、それと同時に、位置調節可能な弁部材の不都合に高い加速は阻止され得る。
【0007】
好適な形式で、駆動装置は追加的に、切替え時間間中に、相次いで連続する2つのパルス時間間隔間のそれぞれの中間時間間隔中の切替え信号の電流強さを、それぞれの中間値が、後で同じ切替え時間間隔内に維持される、後の中間時間間隔の中間値よりも大きくなるように、それぞれの中間値に調節するために設計されている。従って、切替え信号の電流強さは中間時間間隔中に所定の機能に従って低下され、これに対して、中間時間間隔の間でパルス時間間隔は位置調節可能な弁部材の不都合に強い加速に対抗して作用する。これによって、その通電されている切替え状態からその通電されていない切替え状態への切替え時における電磁弁のNVH特性は改善され、それと同時に電磁弁の所望の切替えは確実に実行可能なままである。
【0008】
上記の利点は特に、このような形式の制御装置およびこの制御装置によって駆動可能な2段階式の電磁弁を備えた車両のためのブレーキシステムにおいて保証されている。2段階式電磁弁の通電されている切替え状態から通電されていない切替え状態への切替え時における「弁切替え騒音」または「弁ノッキング騒音」が、制御装置の好適な構成によって減少/除去されたことによって、このような騒音により車両内の乗員が悩まされる恐れはなくなる。従って、このような制御装置を備えたブレーキシステムは、車両内の乗員の快適性を向上させる。
【0009】
例えば、2段階式の電磁弁は、無電流閉鎖式の電磁弁または無電流開放式の電磁弁であってよい。同様に、2段階式の電磁弁はホイールインレットバルブまたはホイールアウトレットバルブであってよい。従って、本発明は、しばしば使用される多くの弁型式のために好適に使用され得る。しかしながら、2段階式の電磁弁の形成可能性は、ホイールインレットバルブまたはホイールアウトレットバルブに限定されないことを指摘しておく。
【0010】
上記の利点は、2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための対応する方法を実行することによっても得ることができる。2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための方法は、制御装置および/またはブレーキシステムの前記実施例に従ってさらに改良可能であることを明確に指摘しておく。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a】2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための方法の1実施例を説明するためのフローチャートである。
図1b】2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための方法の1実施例を説明するための座標系である。
図2】制御装置、またはこの制御装置を備えた、車両のためのブレーキシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のその他の特徴および利点を以下に図面を用いて説明する。
【0013】
図1aおよび図1bは、2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための方法の1実施例を説明するためのフローチャートおよび座標系を示す。
【0014】
以下に記載した方法を用いて電気的に切替えられる2段階式の電磁弁とは、単に通電されている切替え状態または通電されていない切替え状態に切替え可能である切替え弁であると解釈されてよい。従って、2段階式の電磁弁は、これら2つの切替え状態間のみを往復して切替えられる。2段階式の電磁弁は、その通電されている切替え状態でまたはその通電されていない切替え状態で閉鎖されており、これに対して2段階式の電磁弁は、2つの切替え状態のうちの他方の切替え状態では開放している。従って、2段階式の電磁弁は、無電流閉鎖式の電磁弁または無電流開放式の電磁弁であってよい。
【0015】
好適な形式で、以下に記載した方法は、車両/自動車のブレーキシステムの2段階式の電磁弁を電気的に切替えるために構成されている。従って、以下に記載する方法の利点は、その場にいる人が騒音によって悩まされやすい場所的環境において役立つ。例えば、2段階式の電磁弁として、ブレーキシステムのホイールインレットバルブまたはホイールアウトレットバルブが電気的に切替えられる。しかしながら、以下に記載した方法の実行可能性は、所定の場所的環境にもまた特殊な弁型式にも限定されない、ということを指摘しておく。
【0016】
2段階式の電磁弁を電気的に切替えるための方法の方法ステップS1で、電磁弁はその通電されていない切替え状態から通電されている切替え状態に切替えられる。これは、切替え信号として電磁弁の少なくとも1つのマグネットコイルを通って流れる電流の電流強さが、(概ね)ゼロから、電磁弁の構成によって所定の保持電流強さと同じかまたはこれより大きい切替え電流強さIに上昇することによって行われる。保持電流強さとは、電磁弁がその通電されていない切替え状態から通電されている切替え状態に切替え可能/保持可能である、かろうじてまだ十分な電流強さであると解釈されてよい。電磁弁の少なくとも1つのマグネットコイルを通って流れる、切替え電流強さIを有する電流は、電磁弁をその通電されていない切替え状態に対応する初期位置から通電されている切替え状態に相当する終端位置へ位置調節するために十分な磁界を生ぜしめ、この場合、電磁弁の少なくとも1つのばねが、初期位置から終端位置への位置調節可能な弁部材の位置調節運動に抗して作用する。
【0017】
方法ステップS1と交互に実行される方法ステップS2で、電磁弁はその通電されている切替え状態からその通電されていない切替え状態に切替えられる。これは、切替え時間間隔Δtotal中に、切替え信号の電流強さIがゼロと切替え電流強さIとの間の少なくとも1つの電流強さの値に調節され、切替え信号の電流強さIが切替え時間間隔Δtotal後に(概ね)ゼロに低下されることによって行われる。さらに、切替え信号の電流強さIは切替え時間間隔Δtotal中に少なくとも2回、それぞれ所定のパルス時間間隔Δtpulsだけゼロと切替え電流強さIとの間の所定の電流パルス値Ihighに上昇される。これに対して、パルス時間間隔Δtpuls外の切替え時間間隔Δtotalの時間中に、切替え信号の電流強さIは、ゼロより大きく所定の電流パルス値Ihighより小さい少なくとも1つの電流強さの値に調節される。
【0018】
図1bは座標系を示し、その横座標は時間軸tであって、座標系の縦座標によって切替え信号として電磁弁の少なくとも1つのマグネットコイルを通って流れる電流の電流強さIが示されている。
【0019】
例えばゼロから時点tまでの時間tにおいて、電磁弁は、250mA(ミリアンペア)の切替え電流強さIによってその通電されている切替え状態に保持される。
【0020】
時間tから、方法ステップS2の実行が開始され、この方法ステップS2で時間tとtendとの間の次の切替え時間間隔Δtotal中に、切替え信号の電流強さIは、(概ね)ゼロと切替え電流強さIとの間の少なくとも1つの電流強さの値に調節される。さらに、切替え時間間隔Δtotal中に、切替え信号の電流強さIが少なくとも2回、それぞれ所定のパルス時間間隔Δtpulsだけ、ゼロと所定の切替え電流強さIとの間の所定の電流パルス値Ihighに上昇されることによって、少なくとも2つのいわゆる高圧電流パルス2が電磁弁の少なくとも1つのマグネットコイルを通って伝送される。電流パルス値Ihighは、例えば120mA(ミリアンペア)であってよい。
【0021】
切替え時間間隔Δtotal中に、切替え信号の電流強さIは少なくとも一時的に、電磁弁の少なくとも1つのばねに抗して作用する磁界を生ぜしめるためにもはや十分ではなくなる。従って、電磁弁の位置調節可能な弁部材は、少なくとも1つのばねによってその終端位置から再びその初期位置に向かって押しやられる。ただし、切替え時間間隔Δtotal中に少なくとも2回、電磁弁の少なくとも1つのマグネットコイルを通って伝送される高圧電流パルス2が、磁界の短時間の「回復」を生ぜしめるか、またはその磁力の短時間の上昇を生ぜしめ、それによって、電磁弁の位置調節可能な弁部材の加速に関連する少なくとも1つのばねの作用が一時的に弱められる。従って、切替え時間間隔Δtotal中に少なくとも2回実行された高圧電流パルス2は、少なくとも1つのばねによって動かされた弁部材の僅かな遅延を生ぜしめる。従って、少なくとも2つの高圧電流パルス2は、位置調節可能な弁部材の不都合に強い加速に対抗して作用する。従って、少なくとも1つのばねによって位置調節された弁部材がその初期位置(例えば電磁弁の弁座)で激しくまたは騒々しく停止することは、少なくとも2つの高圧電流パルス2によって阻止され得る。これにより、方法ステップS2の実行時に「弁切替え騒音」または「弁ノッキング騒音」も心配される必要はない。従って、電磁弁の場所的環境内の人員、例えば電磁弁を備えた車両/自動車の乗員が、このような騒音によって悩まされることもない。少なくとも2つの高圧電流パルス2によって、不都合な「弁切替え騒音」または「弁ノッキング騒音」は、従来技術に対して少なくとも50%低減され得る。
【0022】
好適な形式で、切替え時間間隔Δtotal中に切替え信号の電流強さIは少なくとも3回、それぞれ所定のパルス時間間隔Δtpulsだけ、所定の電流パルス値Ihighに上昇される。切替え時間間隔Δtotal中に電磁弁の少なくとも1つのマグネットコイルを通って伝送された高圧電流パルス2の回数が多いことによって、パルス時間間隔Δtpulsといわゆる中間時間間隔Δtinterとの間で比較的迅速かつ相対的に頻繁な交換が行われ、この場合、各中間時間間隔Δtinterは、連続する2つのパルス時間間隔Δtpulsによって区切られている。従って、各パルス時間間隔Δtpulsは、1ms(ミリ秒)と10ms(ミリ秒)との間の比較的短い間隔、例えば5ms(ミリ秒)の間隔を有していてよい。相応に、各中間時間間隔Δtinterも1ms(ミリ秒)と10ms(ミリ秒)との間の比較的短い間隔、例えば5ms(ミリ秒)の間隔を有していてよい。このような形式で生ぜしめられる、パルス時間間隔Δtpulsと中間時間間隔Δtinterとの間の頻繁な交換は、終端位置から初期位置への位置調節運動中の電磁弁の位置調節可能な弁部材の大きすぎる加速に確実に対抗する作用を生ぜしめる。
【0023】
図1aおよび図1bを用いて示されたこの方法の実施例では、各中間時間間隔Δtinter中の切替え信号の電流強さIは、それぞれの中間値が、後で同じ切替え時間間隔Δtinter内で維持される、後の中間時間間隔Δtinterの中間値よりも大きくなるように、それぞれの中間値に調節される。例えば、相次いで連続する2つの中間時間間隔Δtinterの間のそれぞれの中間値は、固定的に設定された段高さdstepだけ段階的に低下されてよい。段高さdstepは、例えば15mA(ミリアンペア)であってよい。このような形式で、高圧電流パルス2の比較的頻繁な実行にも拘わらず、電磁弁は確実にその通電されている切替え状態からその通電されていない切替え状態へ切替えられ、しかも「弁切替え騒音」または「弁ノッキング騒音」を懸念する必要がないことが、保証され得る。中間時間間隔Δtinter内でそれぞれ維持される中間値を段高さdstepだけ段階的に低下させることによる別の利点は、この実施例において、どの程度の保持電流強さから、電磁弁がその通電されていない切替え状態からその通電されている切替え状態に切替え可能/保持可能であるかを確認する必要がない、という点にある。
【0024】
図1bの座標系により分かるように、切替え時間間隔Δtotalの開始時に、電流強さIはまず、所定の時間間隔tinitだけ切替え電流Iから出発して初期電流強さIinitに低下されてよい。次いで所定の時間間隔tinitの経過後に、第1の高圧電流パルス2が実行される。初期電流強さIinitは例えば80mA(ミリアンペア)であってよい。所定の時間間隔tinitは、例えば5ms(ミリ秒)であってよい。次いで、第1の高圧電流パルス2に続く第1の中間時間間隔Δtinter内で、電流強さIは初期電流強さIinitに対して段高さdstepだけ低下されてよい。
【0025】
図2は、制御装置、またはこの制御装置を備えた、車両のためのブレーキシステムの概略図を示す。
【0026】
図2に概略的に示された制御装置10は、2段階式の電磁弁12を電気的に切替えるために設計されている。電磁弁12の2段階式の構成とは、電磁弁12が単にその通電されていない切替え状態へ切替え可能であるか、またはその通電されている状態へ切替え可能である、と解釈されるべきである。従って、図2では無電流閉鎖式の電磁弁12として図示された電磁弁12は、別の実施例では無電流開放式の電磁弁であってもよい。
【0027】
図2の例では、制御装置10によって切替え可能な2段階式の電磁弁12は、例えば車両のためのブレーキシステムの弁であって、この場合、制御装置10もブレーキシステムの構成要素であってよい。しかしながら、制御装置10の使用可能性は、この制御装置によって切替え可能な電磁弁12の所定の使用目的に限定されないことを指摘しておく。ホイールアウトレットバルブ12および14としての、制御装置10によって切替え可能な電磁弁12の構成も、一例としてのみ解釈され得る。制御装置10によって、例えばホイールインレットバルブ16および18、高圧切替え弁20および/または切替え弁22も制御可能である。さらに、制御装置10の機能性は、図2に図示されているように、1つの電磁弁12だけの電気的な切替えに限定されるものでもない。その代わり、以下に記載された処理方法によって、複数の弁、ブレーキシステムの例えばすべての弁12乃至22も切換可能であってよい。図2にはブレーキシステムの1つのブレーキ回路しか示されていないが、複数のブレーキ回路の弁12乃至22も制御装置10によって切替えられ得る。図2に図示されたブレーキシステムの別の構成要素、例えば少なくとも1つのポンプ26のポンプモータ24も、制御装置10によって切替え可能である。
【0028】
制御装置10は駆動装置10aを有しており、この駆動装置10aは、電磁弁12の少なくとも1つのマグネットコイルを通って流れる電流を切替え信号28として電磁弁12に提供するために構成されている。駆動装置10aが、場合によっては切替え信号28の電流強さを、(概ね)ゼロから、電磁弁12がその通電されていない切替え状態からその通電されている切替え状態に切替え可能である、電磁弁の構成によって予め設定された保持電流強さより大きいかまたはこれと同じである切替え電流強さに上昇させるように、設計されていることによって、電磁弁12は、駆動装置10aによってその通電されていない切替え状態からその通電されている切替え状態に切替え可能である。駆動装置10aによるその通電されていない切替え状態からその通電されている切替え状態への、無電流閉鎖式の電磁弁12の切替えは、例えば、運転者がそのブレーキ操作部材30に加えた運転者制動力32によってブレーキ液が後置されたマスタブレーキシリンダ34から少なくとも1つの接続されたブレーキ回路内に押しやられる間に、行うことができる。無電流閉鎖式の電磁弁12をその通電されている切替え状態に切替えることによって、この場合、それぞれのブレーキ回路内に押しやられたブレーキ液を開放に切替えられた無電流閉鎖式の電磁弁12を介して後置されたリザーブチャンバ/低圧リザーブチャンバ36内へ移動させることに基づいて、それぞれのブレーキ回路の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ38および40内の圧力上昇が制限されるかまたは阻止される(図2参照)。運転者によるブレーキ操作部材30の操作は、ブレーキ操作部材センサ42の少なくとも1つのセンサ信号42aによって制御装置10に表示され得る。制御装置10は、少なくとも1つの圧力センサ44の少なくとも1つのセンサ信号44aを用いて、それぞれのブレーキ回路内のブレーキ圧上昇の制限/阻止を検証するために設計されていてもよい。しかしながら、無電流閉鎖式の電磁弁12の切替えによる、例えばここに記載された「回生制動」の例は、これに限定されないと解釈されるべきである。
【0029】
しかも、駆動装置10aが、場合によっては、切替え信号28の電流強さを、切替え時間間隔中にゼロと切替え電流強さとの間の少なくとも1つの電流強さの値に調節し、かつ切替え時間間隔後に(概ね)ゼロに低下させるように設計されていることによって、電磁弁12は駆動装置10aによって、その通電されている切替え状態からその通電されていない切替え状態へ切替え可能である。特に、駆動装置10aは、切替え時間間隔中に切替え信号の電流強さを少なくとも2回それぞれ1つの所定のパルス時間間隔だけ、ゼロと切替え電流強さとの間の所定の電流パルス値に上昇させ、パルス時間間隔外の切替え時間間隔の時間中に、切替え信号の電流強さを、ゼロより大きく、かつ所定の電流パルス値よりも小さい少なくとも1つの電流強さの値に調節するために設計されている。これによって、制御装置10も上述した方法の利点をもたらす。
【0030】
制御装置10/その駆動装置10aは、特に前記方法を実行するために構成されていてよい。例えば、駆動装置10aは、切替え時間間隔中に切替え信号の電流強さを少なくとも3回それぞれ所定のパルス時間間隔だけ所定の電流パルス値に上昇させるために設計されていてよい。好適な形式で、駆動装置10aは、切替え時間間隔中に切替え信号の電流強さを、相次いで連続する2つのパルス時間間隔の間のそれぞれの中間時間間隔中に、中間値のそれぞれが後で同じ切替え時間間隔内で維持される、後の中間時間間隔の中間値よりも大きくなるように、それぞれの中間値に調節するために設計されてもいる。
【0031】
制御装置10を備えたブレーキシステムも上記利点をもたらす。しかしながら、図2に図示されたこのような形式の制御装置10を備えたブレーキシステムの構成は一例としてのみ解釈されるべきであることを明確に指摘しておく。構成要素14乃至44、並びにブレーキ倍力装置46、ブレーキ液リザーバタンク48およびフィルタ50も、このような形式のブレーキシステムのブレーキシステム構成要素のための一例にすぎない。
【符号の説明】
【0032】
2 高圧電流パルス
10 制御装置
10a 駆動装置
12 電磁弁
12,14 ホイールアウトレットバルブ
16,18 ホイールインレットバルブ
20 高圧切替え弁
22 切替え弁
24 ポンプモータ
28 切替え信号
30 ブレーキ操作部材
36 リザーブチャンバ、低圧リザーブチャンバ
42 ブレーキ操作部材センサ
42a センサ信号
44 圧力センサ
44a センサ信号
46 ブレーキ倍力装置
48 ブレーキ液リザーバタンク
50 フィルタ
I 電流強さ
high 電流パルス値
切替え電流強さ
init 初期電流強さ
S1,S2 方法ステップ
step 段高さ
t 時間軸、時間
時間
end 時間
init 所定の時間間隔
Δtotal 切替え時間間隔
Δtpuls パルス時間間隔
Δtinter 中間時間間隔
図1a
図1b
図2