(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】スピンドル駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 35/06 20060101AFI20221207BHJP
F16D 3/12 20060101ALI20221207BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F16H35/06
F16D3/12 Z
F16F7/00 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021004011
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】10 2020 101 771.5
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503219640
【氏名又は名称】シュタビルス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】STABILUS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ タイス
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ヒレン
(72)【発明者】
【氏名】ヨナサン ケスラー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ボヘン
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0199482(US,A1)
【文献】特開2016-114244(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011117857(DE,A1)
【文献】特開2016-113761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 35/06
F16D 3/12
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力車両における調整要素をモータ駆動で調整するためのスピンドル駆動装置であって、管状又はハーフシェル状のスピンドル駆動装置ハウジング(1)を備え、該スピンドル駆動装置ハウジング(1)の一方の端部領域に、環状又はディスク状の結合部(4)が嵌め込まれると共に固定され、前記結合部(4)が、弾性減衰材(15,15`)で構成された減衰要素(20)を介して、軸線方向駆動運動を伝達するための接続構造(10)に接続されているスピンドル駆動装置において、
前記結合部(4)が、周方向の内壁に周方向の溝(8)を含む同軸の凹部(7)を有し、前記スピンドル駆動装置ハウジング(1)側における前記接続構造(10)の端部領域が、前記結合部(4)の前記凹部(7)内に軸線方向に突入すると共に、前記溝(8)内に半径方向に突入する周方向のフランジ(12)を有し、前記溝(8)の側壁と前記フランジ(12)の側壁との間に、前記減衰要素(20)が配置されたギャップ(13,14)が形成され
、前記環状又はディスク状の結合部(4)が、2個以上の環状又はディスク状のセグメント(3,3`)で構成されていることを特徴とするスピンドル駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスピンドル駆動装置であって、前記溝(8)の底面と前記フランジ(12)における周方向の外面との間に、前記減衰要素(20)の第2部分が配置された第2ギャップ(14)が形成されていることを特徴とするスピンドル駆動装置。
【請求項3】
請求項
1に記載のスピンドル駆動装置であって、前記フランジ(12)が、半径方向外方に向けて円錐状又は部分円錐状にテーパ付けされた断面を有し、前記溝(8)が、前記フランジの前記テーパ付けされた断面に対応する断面を有することを特徴とするスピンドル駆動装置。
【請求項4】
請求項
1に記載のスピンドル駆動装置であって、前記接続構造(10)が、前記結合部(4)の外端面(17)に軸線方向に対向する支持フランジ(18)を有し、前記結合部(4)の前記外端面(17)と前記支持フランジ(18)との間に、前記減衰要素(20)の第3部分が配置された第2ギャップ(14)が形成されていることを特徴とするスピンドル駆動装置。
【請求項5】
請求項
1に記載のスピンドル駆動装置であって、前記減衰要素が、前記結合部と前記接続構造との間の前記ギャップにおける射出成形プラスチックで構成されていることを特徴とするスピンドル駆動装置。
【請求項6】
請求項1
又は4に記載のスピンドル駆動装置であって、前記減衰要素が、前記フランジの輪郭及び場合によって前記支持フランジの輪郭に加硫され、又は前記溝の輪郭及び場合によって前記結合部の前記端面に加硫されたプレハブの減衰要素であることを特徴とするスピンドル駆動装置。
【請求項7】
請求項
1に記載のスピンドル駆動装置であって、前記2個以上の環状又はディスク状のセグメント(3,3`)が、2個以上の同一の環状又はディスク状のセグメント(3,3`)であることを特徴とするスピンドル駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力車両における調整要素をモータ駆動で調整するためのスピンドル駆動装置に関する。本発明に係るスピンドル駆動装置は、管状又はハーフシェル状のスピンドル駆動装置ハウジングを備え、そのスピンドル駆動装置ハウジングの一方の端部領域には、環状又はディスク状の結合部が嵌め込まれると共に固定され、結合部は、弾性減衰材で構成された減衰要素を介して、軸線方向駆動運動を伝達するための接続構造に接続されている。
【背景技術】
【0002】
このようなスピンドル駆動装置においては、結合部内に形成された減衰ソケット内に減衰材を堅固に配置することが既知である。減衰材により、スピンドル駆動装置の作動中に生じる振動が遮断され、従って調整要素への伝達が回避されるのが望ましい。例えばフラップとして構成された調整要素の場合、振動が遮断されなければ、これら振動によって不快な騒音が発生する。減衰材内には、接続構造のネック部分が突入し、そのネック部分は、減衰材内において、半径方向に延在する保持部分を有する。スピンドル駆動装置が調整要素に対して移動すると、減衰ソケットの底面は、減衰材を介して保持部分に押圧される。スピンドル駆動装置が接続構造を引っ張るよう移動すると、接続構造側における保持部分の減衰材が無制限に伸びる。このことは、長期的には減衰材の該当箇所の疲労につながり、従って早期の摩耗をもたらす。このような引張り負荷は、例えば、フラップとして構成可能な調整要素が手動で引っ張られたときに生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の課題は、冒頭に述べた形式のスピンドル駆動装置において、構成及び組み付けを簡略化しつつ、作動中に生じる振動を遮断すると共に、長寿命化を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するため、本発明に係るスピンドル駆動装置は、結合部が、周方向の内壁に周方向の溝を含む同軸の凹部を有し、スピンドル駆動装置ハウジング側における接続構造の端部領域が、結合部の凹部内に軸線方向に突入すると共に、溝内に半径方向に突入する周方向のフランジを有し、溝の側壁とフランジの側壁との間に、減衰要素が配置されたギャップが形成されていることを特徴とする。
【0005】
減衰要素により、スピンドル駆動装置の作動中に生じる振動が遮断されて調整要素に伝達されないため、振動によって不快な騒音が発生しない。
【0006】
減衰要素の変形は、接続構造におけるフランジの側壁と結合部における溝の側壁との間のギャップにより、引張り負荷の場合のみならず圧縮負荷の場合でも限定的にしか生じないため、減衰材の疲労、従ってその早期の摩耗が回避される。
【0007】
圧縮負荷に比べて引張り負荷で異なる程度の減衰を実現するために、スピンドル駆動側及び接続構造側におけるギャップを、異なる程度の弾性を有する減衰材で充填することができる。ただし、その目的のために、フランジの一方の側におけるギャップはプロファイル付けされ、フランジの他方の側におけるギャップはプロファイル付けされないようにすることも可能である。
【0008】
半径方向の溝及び半径方向のフランジにより、接続構造の座屈が特に引張り負荷が生じた場合に回避される。
【0009】
減衰能力を高めるために、溝の底面とフランジにおける周方向の外面との間に、減衰要素の第2部分が配置された第2ギャップを形成することができる。これにより、ギャップの幅をより小さく形成することが可能であると共に、スピンドル駆動装置の小型化を図ることも可能になる。
【0010】
フランジは、半径方向外方に向けて円錐状又は部分円錐状にテーパ付けされた断面を有することができ、溝は、そのフランジのテーパ付けされた断面に対応する断面を有することができる。
【0011】
接続構造が、結合部の外端面に軸線方向に対向する支持フランジを有し、結合部の外端面と支持フランジとの間に、減衰要素の第3部分が配置された第2ギャップが形成されていれば、スピンドル駆動装置の全長を大幅に増加させることなく、引張り負荷が生じた場合のみならず圧縮負荷が生じた場合でも減衰材の変形を制限しつつ、減衰材の有効質量を増加させることができる。
【0012】
減衰要素を、結合部と接続構造との間のギャップにおける射出成形プラスチックで構成すれば製造が容易である。
【0013】
減衰要素を、フランジの輪郭及び場合によって支持フランジの輪郭に加硫し、又は溝の輪郭及び場合によって結合部の端面に加硫したプレハブの減衰要素とすれば、やはり製造が容易である。
【0014】
接続構造を環状又はディスク状の結合部に容易に接続するために、環状又はディスク状の結合部は、2個以上の環状又はディスク状のセグメントで構成することができる。
【0015】
この場合、先ずは環状又はディスク状の要素が、スピンドル駆動側における接続構造の端部において接続構造を包囲するよう配置され、次いで事前組み立てされたそのアセンブリが、管状のスピンドル駆動装置ハウジング内に嵌め込まれてハウジングと堅固に接続される。この場合、管状のスピンドル駆動装置ハウジングにより、環状又はディスク状のセグメントが保持されて環状又はディスク状の結合部が形成される。
【0016】
2個以上の環状又はディスク状のセグメントは、好適には、2個以上の同一の環状又はディスク状のセグメントである。
【0017】
これにより、合理的な製造及び保管が可能である。
【0018】
結合部は、好適には、管状又はハーフシェル状のスピンドル駆動装置ハウジングに対して形状係合的に接続されている。
【0019】
この場合、結合部が、スピンドル駆動装置ハウジングに対して半径方向にフランジング加工されていれば特に容易である。
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】スピンドル駆動装置の端部領域を示す縦断面図である。
【
図2】
図1におけるスピンドル駆動装置の結合部・接続構造アセンブリを示す側面図である。
【
図3】
図2におけるアセンブリを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図示のスピンドル駆動装置は、その端部領域において管状のスピンドル駆動装置ハウジング1を備え、そのスピンドル駆動装置ハウジング1内には、スピンドル駆動装置のモータ駆動部2が配置されている。
【0023】
スピンドル駆動装置ハウジング1の端部領域には、2個の同一の環状セグメント3,3`で形成された環状の結合部4が嵌め込まれ、その結合部4は、スピンドル駆動装置ハウジング1の内径と同じ外径を有すると共に、周方向の外側円筒状面5に周方向の環状溝6を有する。環状溝6には、半径方向への変形により、金属製のスピンドル駆動装置ハウジング1の材料が入り込んでおり、従って結合部4がスピンドル駆動装置ハウジング1と堅固に接続されている。
【0024】
結合部4は、同軸の凹部7を有し、その凹部7は、周方向の円筒状内壁に周方向の環状溝8を含む。
【0025】
凹部7内には、アングル継手として構成されたボール継手のボールソケットピン9が突入し、そのボール継手によって接続構造10が構成されている。凹部7に対向するボールソケットピン9の端部には、ボールソケット11が配置されている。
【0026】
凹部7内に突入するボールソケットピン9領域には、溝8内に半径方向に突入するフランジ12が配置されることにより、フランジ12の側壁と溝8の側壁との間に第1ギャップ13が形成されている。更に、溝8の底面とフランジ12における周方向の外面との間には、第1ギャップ13とほぼ同じ幅を有する第2ギャップ14が形成されている。
【0027】
フランジ12は、半径方向外方に向けてテーパ付けされた断面を有し、溝8は、フランジ12の半径方向外方に向けてテーパ付けされた断面に対応する断面を有する。
【0028】
フランジ12と溝8との間に形成されたギャップ13,14には、弾性減衰材15が充填されている。
【0029】
接続構造側において、溝8には、結合部4に含まれる半径方向内方に向けた環状突起16が隣接し、ボールソケット11側の環状突起16により、結合部4の外端面17が形成されている。
【0030】
ボールソケットピン9は、端面17の上方で半径方向外方に向けて延在する支持フランジ18を有する。端面17と支持フランジ18との間には、ギャップ13,14にほぼ対応する厚さを有する第3ギャップ19が形成され、その第3ギャップ19も、環状突起16の半径方向内方における環状面周りで延在している。第3ギャップ19にも、弾性減衰材15`が充填されている。
【0031】
スピンドル駆動装置の作動中にモータ駆動部2によって生じると共に、スピンドル駆動装置ハウジング1及び結合部4に作用する振動は、接続構造10及びその接続構造10に配置された調整要素(図示せず)に大幅に低減された状態でのみ伝達され、従って不快な騒音が大幅に低減される。なぜなら、この場合に振動は、減衰要素20を構成する減衰材15,15`によって遮断されるからである。
【0032】
減衰材15,15`の軸線方向変形は、接続構造10の引張り負荷が生じた場合のみならず圧縮負荷が生じた場合でも制限される。これは、減衰材15,15`がギャップ13,14,19内で軸線方向の両側において制限されるよう支持されているからである。このように、特に減衰材15,15`の軸線方向伸長が制限されるため、減衰材15,15`の疲労、従ってその早期の摩耗が回避される。
【符号の説明】
【0033】
1 スピンドル駆動装置ハウジング
2 モータ駆動部
3 環状セグメント
3` 環状セグメント
4 結合部
5 円筒状面
6 環状溝
7 凹部
8 溝
9 ボールソケットピン
10 接続構造
11 ボールソケット
12 フランジ
13 第1ギャップ
14 第2ギャップ
15 減衰材
15` 減衰材
16 環状突起
17 外端面
18 支持フランジ
19 第3ギャップ
20 減衰要素