(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム内で電力波を生成するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20221207BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20221207BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20221207BHJP
H02J 50/15 20160101ALI20221207BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20221207BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20221207BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/10
H02J50/12
H02J50/15
H02J50/20
H02J50/90
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021039737
(22)【出願日】2021-03-11
(62)【分割の表示】P 2018534624の分割
【原出願日】2016-12-29
【審査請求日】2021-04-02
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514160238
【氏名又は名称】エナージャス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リーブマン,マイケル,エー.
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0142291(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0273819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/10
H02J 50/12
H02J 50/15
H02J 50/20
H02J 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力をいつ受信機に無線伝送するかを決定するために比吸収率(SAR)値をモニタリングする方法であって、前記方法は、
無線供給されたRF電力に対する受信機からの要求を無線電力伝送デバイスで受信することであって、前記受信機は前記無線電力伝送デバイスの伝送場内の位置に存在する、受信することと、
前記要求を受信することに応答して、無線周波数電力伝送信号を前記受信機に伝送するために用いるための伝送特性を決定することと、
記憶されたSAR値決定基準及び前記伝送特性のうちの1つ以上を用いて、前記伝送特性を有する前記無線周波数電力伝送信号が前記受信機の前記位置に伝送された後に前記位置に存在する予測SAR値を決定することと、
前記予測SAR値が既定のSAR値を下回るといった決定に従って、前記無線電力伝送デバイスに前記無線周波数電力伝送信号を前記受信機に伝送させることとを含む、方法。
【請求項2】
1つ以上のサンプリングトリガ又はパラメータを満たした後、前記伝送特性を有する前記無線周波数電力伝送信号が前記受信機の前記位置に伝送された後に前記位置に存在する更新された予測SAR値を決定することと、
前記更新された予測SAR値が前記既定のSAR値以上となるといった決定に従って、
1つ以上の操作された伝送特性を定めるために前記伝送特性のうちの1つ以上を操作することと、
前記1つ以上の操作された伝送特性を用いて、前記無線電力伝送デバイスに前記無線周波数電力伝送信号を前記受信機に伝送させることとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記記憶されたSAR値決定基準は、前記無線電力伝送デバイスの展開前又は製造前に行われるモデリングに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無線電力伝送デバイスの展開前又は製造前に行われる前記モデリングは、様々な波形特性を有するRF電力伝送信号が人体に類似することを意図するモデルに伝送されながら、SAR値を測定するために前記人体に類似することを意図する前記モデルを走査することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記記憶されたSAR値決定基準は、前記予測SAR値を決定するために知られているチャネル伝搬モデル及び伝搬損失に関する経験的データを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記既定のSAR値は、1キログラム当たり約1.6ワット(W/Kg)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記記憶されたSAR値決定基準は、前記無線電力伝送デバイスと結合されたメモリに記憶される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記無線周波数電力伝送信号を前記受信機に伝送する前に、前記受信機の前記位置からの所定距離を取り囲むゾーンに対する追加の予測SAR値を計算することをさらに含み、
前記予測SAR値が既定のSAR値を下回るといった前記決定は、前記追加の予測SAR値が前記既定のSAR値を下回るといった決定も含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記伝送場にわたって前記予測SAR値に準拠したままである均一のエネルギレベルを維持するために無線周波数電力伝送信号の伝送を調節するこ
とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記予測SAR値は、1つ以上のセンサからのセンサデータにさらに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
実行可能な命令を記憶する非一時なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、電力をいつ受信機に無線伝送するかを決定するために比吸収率(SAR)値をモニタリングするように構成された送信機によって実行された場合、前記送信機に
無線供給されたRF電力に対する受信機からの要求を無線電力伝送デバイスで受信することであって、前記受信機は前記無線電力伝送デバイスの伝送場内の位置に存在する、受信することと、
前記要求を受信することに応答して、無線周波数電力伝送信号を前記受信機に伝送するために用いるための伝送特性を決定することと、
記憶されたSAR値決定基準及び前記伝送特性のうちの1つ以上を用いて、前記伝送特性を有する前記無線周波数電力伝送信号が前記受信機の前記位置に伝送された後に前記位置に存在する予測SAR値を決定することと、
前記予測SAR値が既定のSAR値を下回るといった決定に従って、前記無線電力伝送デバイスに前記無線周波数電力伝送信号を前記受信機に伝送させることと
を行わせる、非一時なコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記送信機によって実行された場合、前記送信機に請求項2~10のいずれかに記載の方法を行わせる実行可能な命令さらに含む、請求項11に記載の非一時なコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
無線電力伝送のためのシステムであって、前記システムは、
1つ以上の送信機を備え、前記1つ以上の送信機の各々は、電力をいつ受信機に無線伝送するかを決定するために比吸収率(SAR)値をモニタリングするように構成され、各送信機は、
無線供給されたRF電力に対する受信機からの要求を無線電力伝送デバイスで受信することであって、前記受信機は前記無線電力伝送デバイスの伝送場内の位置に存在する、受信することと、
前記要求を受信することに応答して、無線周波数電力伝送信号を前記受信機に伝送するために用いるための伝送特性を決定することと、
記憶されたSAR値決定基準及び前記伝送特性のうちの1つ以上を用いて、前記伝送特性を有する前記無線周波数電力伝送信号が前記受信機の前記位置に伝送された後に前記位置に存在する予測SAR値を決定することと、
前記予測SAR値が既定のSAR値を下回るといった決定に従って、前記無線電力伝送デバイスに前記無線周波数電力伝送信号を前記受信機に伝送させることと
を行うように構成されたマイクロプロセッサを含む、システム。
【請求項14】
各送信機の前記マイクロプロセッサは、請求項2~10のいずれかに記載の方法を行うようにさらに構成される、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本願は、一般に無線充電システム並びにかかるシステム内で使用されるハードウェア及びソフトウェアコンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
電子装置にエネルギを無線伝送する(受信機装置が伝送を消費し、それを電気エネルギに変換することができる)ために数多くの試みがなされてきた。しかし、従来の殆どの技法は任意の有意味の距離においてエネルギを伝送することができない。例えば磁気共鳴は、電力共振器に電子装置を結線することを必要とせずに装置に電力を与える。しかし、電子装置が電力共振器のコイルの近くに(即ち磁場内に)位置する必要がある。従来の他の解決策は、自分のモバイル装置を充電している利用者について利用者の移動性を企図しない場合があり、又はかかる解決策は装置が運用性の狭いウィンドウの外側にあることを認めない。
【0003】
離れている電子装置に無線で給電するには、電力伝送装置の伝送場内での電子装置の位置を識別するための手段を必要とし得る。従来のシステムは概して電子装置の位置を近くで突き止めようと試みるため、例えば広いコーヒー店、世帯、オフィスビル、又は電気装置が潜在的に動き回る可能性がある他の三次元空間内で、充電するのに空いている装置のスペクトルを識別しマッピングするための機能がない。更に、指向性目的及び電力出力変調の両方のための、電力波の発生を管理するためのシステムが求められている。従来の多くのシステムはサービス提供する電子装置の多岐にわたる移動を企図しないので、電力伝送装置によってサービス提供され得る電子装置を動的且つ正確に追跡するための手段も求められている。
【0004】
無線電力伝送は一定の規制上の要件を満たさなければならない場合がある。無線エネルギを伝送する装置は、人間又は他の生物のための電磁場(EMF)への暴露を防ぐ規格に準拠することを要求され得る。最大暴露限度が電力密度限度及び電場限度(並びに磁場限度)に関して米国及び欧州の規格によって定められている。これらの限度の一部は最大許容暴露量(MPE)について米国連邦通信委員会(FCC)によって確立されており、一部の限度は放射線暴露に関する欧州の監査機関によって確立されている。MPEについてFCCによって確立されている限度は47 CFR §1.1310で成文化されている。マイクロ波領域内の電磁場(EMF)周波数では、暴露の強度を表現するために電力密度を使用することができる。電力密度は単位面積当たりの電力として定められる。例えば電力密度は1平方メートル当たりのワット数(W/m2)、1平方センチメートル当たりのミリワット数(mW/cm2)、又は1平方センチメートル当たりのマイクロワット数(μW/cm2)に換算して一般に表現され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、これらの規制要件を満たすように無線電力伝送のためのシステム及び方法を適切に与えることが望ましい。伝送場内の人間又は他の生物が規制限度又は他の公称限度近くの又はそれを上回るEMFエネルギに暴露されないことを確実にするために様々な安全技法を組み込む、無線電力伝送のための手段が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本明細書で開示するのは、当技術分野の欠点に対処するだけでなく、追加の又は代替的な利点を提供し得るシステム及び方法である。本明細書で開示する実施形態は、その物理的な波形特性(例えば周波数、振幅、位相、利得、方向)の結果として、エネルギのポケットを発生させるために伝送場内の所定位置において収束する電力波を生成し伝送することができる。無線充電システムによって給電されている電子装置に関連する受信機はこれらのエネルギのポケットからエネルギを抽出し、受信機に関連する電子装置にとって使用可能な電力へとそのエネルギを変換することができる。エネルギのポケットは三次元場(例えば伝送場)として生じることができ、そこではエネルギのポケット内に又はその近くに位置する受信機によってエネルギがハーベストされ得る。一部の実施形態では、センサからの入力センサデータに基づいて電力レベルを調整するために又は特定の物体を回避するために、電力波の伝送を調節することによって送信機が適応ポケット形成プロセスを実行し得る。エネルギのポケットを何処に形成すべきか及び電力波を何処に伝送すべきかを決定するために、伝送場内の領域を識別するための技法を使用することができる。一例では、この技法が1つ又は複数のアンテナから放射される伝送場内の1つ又は複数の電力波に対する伝送場内の各空間位置における比吸収率(SAR)値の決定をもたらし得る。特定のSARを決定することは、送信機に結合され又は送信機に組み込まれるセンサによって行われ得る。それらのセンサは、伝送場内でSARの測定を行うのに有用な情報を捕捉することができ、送信機は送信機によって作り出される電力波の知られている伝搬特性に基づいて伝送場内のSAR値を決定する予め記憶された計算及び推定と共に、その情報を使用することができる。SARとは、無線周波数(RF)波からの電磁エネルギが人体又は別の生物によって吸収される率である。別の例では、エネルギのポケットを何処に形成すべきかを決定する際、後で参照し又は計算するためにマッピングメモリ内に記憶され得るマッピングデータの一形態であるヒートマップデータが使用され得る。更に別の例では、電力波が回避すべき区域を識別し得るセンサデータをセンサが生成することができる。このセンサデータはマッピングデータの追加形態又は代替形態とすることができ、後で参照し又は計算するために同じくマッピングメモリ内に記憶され得る。
【0007】
一実施形態では、無線電力伝送の方法が、送信機の1つ又は複数のアンテナから放射される1つ又は複数の電力波に対する送信機の伝送場内の各空間位置における比吸収率(SAR)値を送信機によって計算すること、計算したSAR値が既定のSAR値の閾値に満たない伝送場内の被選択部分を送信機によって決定すること、及び伝送場内の被選択部分において相殺的に収束するように1つ又は複数の電力波を送信機によって伝送することを含む。
【0008】
別の実施形態では、無線電力伝送の方法が、1つ又は複数のアンテナから放射される1つ又は複数の電力波に対する送信機の伝送場内の各空間位置における比吸収率(SAR)値を送信機によって受信することを含む。この方法は、得られるSAR値が既定のSAR値を上回る伝送場内の被選択部分を送信機によって決定することを更に含む。この方法は、伝送場内の被選択部分において相殺的に収束するように1つ又は複数の電力波を送信機によって伝送することを更に含む。この方法は、伝送場内の残りの部分においてヌル空間を形成するために相殺的に収束するように1つ又は複数の電力波を送信機によって伝送することを更に含む。
【0009】
別の実施形態では、無線電力伝送のためのシステムが1つ又は複数の送信機を含み得る。1つ又は複数の送信機のそれぞれは、1つ又は複数のアンテナから放射される1つ又は複数の電力波に対する送信機の伝送場内の各空間位置における比吸収率(SAR)値を計算し、計算されるSAR値が既定のSAR値を上回る伝送場内の被選択部分を決定するように構成されるマイクロプロセッサを含み得る。1つ又は複数の送信機のそれぞれは1つ又は複数のアンテナアレイを更に含むことができ、1つ又は複数のアンテナアレイのそれぞれは、伝送場内の被選択部分においてヌル空間を形成するために相殺的に収束するように電力波を伝送するように構成される1つ又は複数のアンテナを含む。
【0010】
図面の簡単な説明
添付図面は本明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を示す。以下の図面を参照することによって本開示をより良く理解することができる。図中のコンポーネントは必ずしも縮尺通りではなく、本開示の原理を示すことに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】例示的実施形態による無線電力伝送システムを示す。
【
図1B】例示的実施形態によるシステムのコンポーネントを示す。
【
図1C】
図1Bに示す例示的実施形態によるシステムのコンポーネントを示す。
【
図2】例示的実施形態による、無線電力伝送システム内でエネルギのポケットを形成するための方法を示す。
【
図3】例示的実施形態による、無線電力伝送システム内でヌル空間を形成するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
次に図中に示す例示的実施形態を参照し、かかる実施形態を説明するために本明細書では特定の言語を使用する。かかる例示的実施形態の説明によって本発明の範囲を限定することは意図しないことを理解すべきである。本開示を保持する当業者なら思い付く例示的実施形態の改変及び更なる修正、並びに本発明の特徴の原理を実装する追加の応用例が本開示の範囲に含まれると考えるべきである。
【0013】
電力を無線で提供するために使用されるエネルギのポケットが、送信機によって伝送される電力波の建設的干渉パターンの位置に形成され得る。エネルギのポケットは三次元場として生じることができ、そこでエネルギのポケット内に又はその近くに位置する受信機によってエネルギがハーベストされ得る。動作面では、ポケット形成プロセス中に送信機によって作り出されるエネルギのポケットが受信機によってハーベストされ、電荷に変換され、装置を動作させるために又は装置の電池を充電するために受信機に関連する電子装置(例えばラップトップコンピュータ、スマートフォン、充電池)に与えられ得る。一部の実施形態では、複数の送信機及び/又は複数の受信機が様々な電子装置に給電し得る。受信機は電子装置から分離できても電子装置と一体化されても良い。
【0014】
建設的干渉は、1つ又は複数の送信機に関連する伝送場内の特定の位置における電力波の収束において生じ得る一種の波形干渉であり得る。建設的干渉は、電力波が収束し、そのそれぞれの波形特性が融合し、それにより電力波が収束する特定の位置に集中するエネルギの量を増大させるとき起こり得る。建設的干渉は特定の波形特性を有する電力波の結果とすることができ、そのため、建設的干渉は電力波が収束する伝送場内の特定の位置におけるエネルギの場又は「エネルギのポケット」をもたらす。チャープ波や正弦波等の周期信号の場合、特定の位置に到達する電力波の正のピーク及び負のピークが同期するとき建設的干渉パターンが作り出される。波形全体にわたる相関性のある正のピーク及び負のピークは累積的に加わって、個々の電力波のそれぞれよりも大きい振幅を有する累積波形を作り出す。
【0015】
相殺的干渉は、1つ又は複数の送信機に関連する伝送場内の特定の位置における電力波の収束において生じ得る別の種類の波形干渉であり得る。相殺的干渉は、電力波が特定の位置において収束し、そのそれぞれの波形特性が互いに正反対であり(即ち波形が互いを打ち消し合い)、それによりその特定の位置に集中するエネルギの量を減少させるとき起こり得る。建設的干渉は十分なエネルギがあるときエネルギのポケットを発生させ得るのに対し、相殺的干渉は相殺的干渉を形成するように電力波が収束する伝送場内の特定の位置においてごく僅かなエネルギ量又は「ヌル」を発生させることをもたらし得る。チャープ波や正弦波等の周期波の場合、特定の位置に到達する電力波の正のピーク及び負のピークが累積的に加わるのではなく互いを減じるとき相殺的干渉パターンが作り出され、従って低(理想的にはゼロ)振幅の波形信号がもたらされる。
【0016】
送信機は、例えば電力波を生成し伝送すること、伝送場内の位置においてエネルギのポケットを形成すること、伝送場の条件をモニタリングすること、及び必要に応じてヌル空間を生成することを担う様々なコンポーネント及び回路を含む、さもなければかかるコンポーネント及び回路に関連する電子装置であり得る。送信機は、送信機の伝送場内の1つ又は複数の空間位置において送信機によって決定される比吸収率(SAR)値に基づき、ポケット形成及び/又はヌルステアリングのための電力波を生成し伝送し得る。比吸収率(SAR)値は送信機のプロセッサによって決定されても良く、無線周波数(RF)波に暴露される人体等の生体組織によって吸収される電力を示す。伝送場内の特定の位置におけるRFエネルギのSAR値が所定のSAR閾値を上回らないように送信機は電力波を生成し伝送し、或いは調節することができる。
【0017】
受信機は、電子装置に給電し又は電子装置を充電するためにエネルギのポケットを利用し得る少なくとも1つのアンテナ、少なくとも1つの整流回路、及び少なくとも1つの電力変換器を含む電子装置であり得る。「ポケット形成」とは、制御されたエネルギのポケット及びヌル空間を形成する、伝送場内で収束する1つ又は複数のRF波を生成することを指し得る。「エネルギのポケット」とは、波が収束することに基づいてエネルギ又は電力が蓄積し、その区域又は領域において建設的干渉を引き起こし得る空間の区域又は領域を指し得る。「ヌル空間」とはエネルギのポケットが形成されない空間の区域又は領域を指すことができ、その区域又は領域において波が相殺的に干渉することによって引き起こされ得る。
【0018】
送信機は、1つ又は複数のサンプリング技法又は測定技法を使用し、伝送場の1つ又は複数の特定の位置におけるRFエネルギの現在のSAR値を決定することができる。一部の実装では、予め記憶されたSAR閾値をどの波形特性が上回る可能性があるのかを送信機に指示する値、テーブル、及び/又はアルゴリズムが送信機に予めロードされ得る。例えば、送信機から幾らかの距離(D)離れて位置する空間の体積(V)のSAR値が、特定の周波数(F)を有する幾らかの電力波(P)を受信していることをルックアップテーブルが示し得る。特定の位置におけるRFエネルギのSAR値を決定するための、任意の数の変数を使用し得る任意の数の潜在的な計算があり得ることを当業者なら理解されよう。
【0019】
更に送信機は、電力波を生成し、伝送し、又は調節するとき、特定の位置について識別されるSAR値を様々な方法で適用することができる。一部の実施形態では、伝送場全体にわたる一定のエネルギレベルを維持するためにSAR値が送信機によって測定され使用されても良く、エネルギレベルはSAR閾値を間違いなく下回るが、受信機が電力に効果的に変換するのに十分なRFエネルギを依然として含む。一部の実装では、所定のSAR値に基づいて新たに形成される電力波から生じることが企図されるRFに基づき、送信機が電力波を積極的に変調することができる。例えば、電力波をどのように生成し又は調節するのかを決定した後だが、電力波を実際に伝送する前に、送信機は伝送しようとする電力波がSAR閾値を満たす又は下回る特定の位置におけるRFエネルギの蓄積をもたらすかどうかを判定することができる。加えて又は或いは、一部の実装では、送信機が伝送場を能動的にモニタして、特定の位置を通過する又は特定の位置に蓄積する電力波がSAR閾値を下回ると送信機が判定するとき、特定の位置に伝送される又は特定の位置を通過して伝送される電力波を反応的に調節することができる。送信機が電力波を積極的且つ反応的に調節するように構成される場合、伝送場全体にわたる継続的な電力レベルを維持する目標により、送信機は電力波がSAR閾値を満たすことを確実にするために特定の位置に伝送される電力波を積極的に調節するように構成され得るが、伝送場全体にわたる位置におけるSAR値を継続的にポーリングして特定の位置に蓄積し又は特定の位置を通過する電力波のSAR値がSAR閾値を企図せずに下回るかどうかを判定することもできる。一部の実施形態では、送信機が特定の位置におけるエネルギのポケット又はヌルを生成するように構成されても良く、従ってエネルギのポケットの周辺の区域がSAR閾値を十分下回るかどうかを判定するために、又はヌル空間を生成する相殺的干渉パターンの有効性を判定するためにSAR値が使用され得る。
【0020】
本明細書に記載の例示的実施形態は、RFによる波伝送技術の使用について言及するが、使用され得る無線充電技法はかかるRFベースの技術及び技法に限定されないことを理解すべきである。むしろ、伝送エネルギを電力に変換することができる受信機にエネルギを無線伝送するための任意の数の技術及び技法を含み得る、追加の又は代替的な無線充電技法がこれらであることを理解すべきである。受信装置によって電力に変換され得るエネルギのための非限定的な例示的伝送技法は超音波、マイクロ波、レーザー光、赤外線、又は他の形式の電磁エネルギを含み得る。
【0021】
一部の実施形態では、送信機の制御システムが被験者のための電磁場(EMF)への暴露を防ぐ規格に準拠する。最大暴露限度が電力密度限度及び電場限度(並びに磁場限度)に関して米国及び欧州の規格によって定められている。これらの限度は、例えばMPEについて米国連邦通信委員会(FCC)によって確立されている限度、及び放射線暴露について欧州の監査機関によって確立されている限度を含む。MPEについてFCCによって確立されている限度は47 CFR §1.1310で成文化されている。マイクロ波領域内の電磁場(EMF)周波数では、暴露の強度を表現するために電力密度を使用することができる。電力密度は単位面積当たりの電力として定められる。例えば電力密度は1平方メートル当たりのワット数(W/m2)、1平方センチメートル当たりのミリワット数(mW/cm2)、又は1平方センチメートル当たりのマイクロワット数(μW/cm2)に換算して一般に表すことができる。
【0022】
一部の実施形態では、無線電力伝送のための本システム及び方法が、伝送場内の又は伝送場付近の人間の占有者が規制限度又は他の公称限度近くの又はそれを上回るEMFエネルギに暴露されないことを確実にするために様々な安全技法を組み込む。1つの安全上の方法は、被験者がEMF暴露限度の又はそれに近い電力レベルに暴露されないように、公称限度を上回る許容誤差(例えば約10%から20%)を含めることである。第2の安全上の方法は、EMF暴露限度を上回る電力密度レベルを有するエネルギのポケットに人間(一部の実施形態では他の生物又は敏感な物体)が近づく場合に無線電力伝送を減らしたり止めたりすること等、段階的な保護手段を提供し得る。
【0023】
図1Aは、例示的実施形態による無線電力伝送システム100を示す。無線電力伝送システム100は、アンテナアレイ106から1つ又は複数の電力波104を伝送する送信機102を含む。電力波104の非限定的な例は、マイクロ波、無線波、及び超音波を含み得る。エネルギのポケット112が必要だとコントローラが判定する伝送場内の1つ又は複数の位置においてエネルギのポケット112を形成するために、送信機102のマイクロプロセッサによって電力波104が制御される。送信機102は、伝送される電力波が互いを著しく打ち消し合う1つ又は複数の位置内で1つ又は複数のヌル空間を作り出すように三次元空間内に収束し得る電力波104を伝送するように更に構成される。一部の実装では、伝送場全体にわたる一貫したエネルギレベルを維持するために、送信機102が伝送場内の区域の比吸収率(SAR)値を継続的に測定することができる。かかる実施形態では、維持されるエネルギレベルは、電子装置108、110を充電する受信機103に給電するのに十分高いが所与のSAR閾値を下回ったままであり得る。従って、一部の実施形態は伝送場全体にわたる均一の又はほぼ均一の安全且つ効果的なエネルギレベルを維持し得るので、エネルギのポケット112又はヌルを生成することが全ての実施形態で必要ではない場合があることを当業者なら理解されよう。伝送場内の受信機103に電力波104を届けるための適切な手段を決定するための技法の任意の組合せに従って動作するように送信機102が構成され得ることが更に理解されよう。
【0024】
一部の実施形態では、所与の位置に若しくは所与の位置を通って伝送されている電力波、又は所与の位置に若しくは所与の位置を通って伝送されようとしている電力波の特性に基づいて所与の位置におけるSAR値を決定するために送信機102のプロセッサが使用し得るアルゴリズム、変数、テーブル、他のかかる情報等、送信機102が、所定のSAR値の決定基準を記憶するメモリ又はハードディスクを含むことができ、或いはかかるメモリ又はハードディスクに結合され得る。送信機102は、知られているチャネル伝搬モデル、及び製造前に又は展開前に集められた伝搬損失に関する経験的データを使用して、送信機102から幾らかの距離離れた場所のSARが何であり得るのかを計算することができる。例えば、展開前又は製造前に、生体組織のモデル内の空間の体積を走査するためにプローブを使用することができ、又は体組織のほぼ等しい特性を有する液体で満たされた容器等、人体に類似することを意図する他のモデルを伝送場内に配置することができる。送信機102のアンテナアレイ106は、電力波104をモデルに近づけ交わらせる様々な特性を有する電力波104を伝送することができる。プローブは、モデル付近の及び/又はモデル内のSAR値及びRFエネルギレベルを測定することができる。プローブは、アンテナアレイ106によって伝送される電力波104の振幅、周波数、ベクトル特性等の様々な波形特性から生じるRFエネルギ及びSAR値をレジスタする(register)ために使用され得る。その結果生じるSAR値及びRFエネルギは送信機102にとってアクセス可能なメモリ内に記憶することができ、送信機102は、送信機102によって生成されている電力波104の特性に基づいて伝送場の位置におけるSAR値を決定するために予め記憶されたデータを使用することができる。
【0025】
受信機103及び送信機102は、電力波104から独立した別個の無線通信チャネルである通信信号131によって様々な種類のデータを伝送するように構成される無線通信チップとすることができる、それぞれの通信コンポーネント111(受信機103では不図示)を含み得る。
図1の受信機103等の一部の事例では、受信機103又は送信機102に結合されるラップトップ108や他のコンピュータ等の電子装置に通信コンポーネントが埋め込まれ或いは組み込まれ得る。例えば受信機103がラップトップ108に組み込まれても良く、受信機103の通信コンポーネントはラップトップ108のネイティブBluetooth(登録商標)チップセットを含み得る。
図1の送信機102等の一部の事例では、通信コンポーネントが送信機102又は受信機103内に埋め込まれ或いは組み込まれ得る。一部の実施形態では、通信コンポーネントが送信機102、受信機103、又は他の任意の電子装置とは別個の独立した構造であり得る。送信機102は、受信機103が実行するための動作命令を含む、又は受信機103からの電力レベルデータ若しくは他の動作データを得るための要求を含む通信信号を受信機103に伝送し得る。
【0026】
一部の実施形態では、エネルギを効果的に与えるために、及び生物又は他の敏感な物体を安全に回避するために電力波104がどのように生成され伝送されるべきかを送信機102のマイクロプロセッサが決定するように構成される。電力波104がどのように生成されるべきかを決定することは、送信機102の1つ又は複数のアンテナから伝送場内に放射される1つ又は複数の電力波104について、送信機102の伝送場内の各空間位置においてサンプリングされ又は決定されるSAR値に基づき得る。電力波104がどのように生成され伝送されるべきかを決定するとき、マイクロコントローラは、電力波104の物理的特性(例えば周波数、振幅、位相)及び/又は電力波104を伝送するために送信機102のどのアンテナが使用され得るのかを決定することができる。建設的干渉パターン及び/又は相殺的干渉パターンを作り出すために伝送場内の特定の位置において電力波104が収束するように、送信機102は電力波104の特性を決定し且つ/又は電力波104を伝送するためのアンテナのサブセットを識別することができる。加えて又は或いは、マイクロコントローラが電力波104を伝送するための特性及び/又はアンテナを決定することができ、それにより電力波104が伝送場全体にわたる又は伝送場の1つ若しくは複数の特定の局部における均一の又はほぼ均一のエネルギレベルを発生させる。
【0027】
一例として、伝送場内の特定の位置においてサンプリングされた特定のSAR値に基づき、送信機102のマイクロプロセッサが電力波104の波形の種類(例えばチャープ、正弦波、鋸形、階段形)を選択することができ、電力波104の出力周波数、1つ又は複数のアンテナアレイ106の形状、及び少なくとも1つのアンテナアレイ106内の1つ又は複数のアンテナの間隔を選択し得る。これらの選択又は決定の1つ又は複数を使用し、送信機100は電力波104を生成し伝送することができ、その結果、電力波104が目標位置にエネルギのポケット112を形成して1つ又は複数の電子装置108、110に給電する。一部の実施形態では、送信機102の伝送場内の各空間位置におけるSAR値に基づき、送信機102のマイクロプロセッサが電力波104の出力周波数、1つ又は複数のアンテナアレイ106の形状、及び少なくとも1つのアンテナアレイ106内の1つ又は複数のアンテナの間隔を選択して送信機102の伝送場内の位置において1つ又は複数のヌル空間を形成するように更に構成される。電力波104が蓄積してエネルギの三次元場を形成する、エネルギのポケットが形成される。
【0028】
一部の実施形態では、送信機102のアンテナアレイ106のアンテナが1つ又は複数のアンテナの単一のアレイとして動作可能である。他の一部の実施形態では、マイクロコントローラが伝送場内の複数の装置又は複数の領域にサービス提供するように動作するサブセットへとアレイを区分化することができる。一実施形態では、アンテナアレイ106がアンテナ素子を含むことができ、アレイ106の少なくとも1つのアンテナの高さは約1/8インチから約1インチに及ぶことができ、少なくとも1つのアンテナの幅は約1/8インチから約1インチであり得る。アンテナアレイ106内の2つの隣接するアンテナ間の距離は約1/3から約12ラムダとすることができる。例えば一部の事例では、アンテナ間の距離が約1ラムダよりも長くても良く、一部の事例ではアンテナ間の距離が約1ラムダから約10ラムダでも良く、一部の事例ではその距離が約4ラムダから約10ラムダであり得る。ラムダとは電力波106の波長であり、アンテナアレイ106のアンテナ間の間隔の長さとして使用され得る。
【0029】
送信機102は、伝送場内でアンテナアレイ106の1つ又は複数のアンテナから放射される1つ又は複数の電力波104について、送信機102の伝送場内の各空間位置におけるSAR値を計算する。一部の実施形態では、送信機102のマイクロプロセッサが、各空間位置における計算済みのSAR値を閾値のSAR値と比較する。例えば、FCCの規制に基づき既定のSAR値は1キログラム当たり約1.6ワット(W/Kg)であり、そのため送信機102は、特定の位置に蓄積する電力波102が2.0W/Kgの建設的干渉パターンを発生させ、それにより閾値をもはや満たさないと判定する場合、電力波102の様々な特性を調節して伝送場内の特定の位置に蓄積するエネルギ量又は電力量を減らすことができる。
【0030】
一部の実施形態では、或る空間位置における計算済みのSAR値が既定のSAR値の閾値を満たさない場合、送信機102が電力波104を生成し、伝送し、或いは調節することができる。電力波104の特性を決定するように及び/又は電力波104をどのアンテナから伝送するのかを決定するように送信機104のマイクロプロセッサを構成することができ、それにより電力波104が特定の位置において相殺的干渉パターンを形成するように収束し、伝送場内のその部分においてエネルギの蓄積が非常に少量の、ごく僅かな、又はないヌル空間をもたらす。一部の実装では、ヌル空間を発生させるために、送信機102がエネルギのポケット112を形成するために建設的に収束する第1の1組の電力波104を、次いでヌル空間を形成するために相殺的に収束する第2の1組の電力波104を生成し得る。一部の実施形態では、伝送場の1つ又は複数の位置においてサンプリングされたSAR値に基づき、マイクロプロセッサが伝送場内の特定の位置において建設的に収束するように電力波104を生成し、伝送し、或いは調節し、同時に伝送場内の他の位置において1つ又は複数のヌル空間を形成するために相殺的に収束するように電力波104を生成し、伝送し、或いは調節することができる。
【0031】
更に別の実施形態では、伝送場の被選択部分内で計算済みのSAR値が既定のSAR値を下回る場合、マイクロプロセッサは、伝送場内の被選択部分において電力波104が建設的に収束するように伝送する電力波104の種類を選択し、同時に伝送場内の被選択部分以外の部分内に1つ又は複数のヌル空間を形成するために相殺的に収束する他の任意の種類の電力波104を伝送するように構成される。これらの電力波104は、外部電源及び圧電材料を使用する局部発振器チップを使用することによって作り出すこともできる。一部の実施形態では、電力波104の位相及び/又は相対振幅を調節するための独自チップも含み得る送信機102のマイクロプロセッサによって電力波104が絶えず制御される。
【0032】
送信機102のマイクロプロセッサは、1つ又は複数のサンプリングトリガ又はパラメータに従ってSAR値を継続的に又は周期的に受信し且つ/又は計算することができる。一部の例では、マイクロプロセッサが位置のサンプリング間隔(例えば1インチ間隔や1フット間隔)に従って所定位置のSAR値を決定することができる。一部の例では、マイクロプロセッサが位置のSAR値を継続的に決定することができ、又は所与の時間のサンプリング間隔においてSAR値を決定することができる。一部の例では、1つ又は複数の電力波104の周波数値に変化があるたびにマイクロプロセッサが位置のSAR値を決定し又は受信することができる。サンプリング中、送信機102のマイクロプロセッサが各所定位置又は所与の位置のサンプリング間隔における新たな又は調節された電力波104のSAR値を決定し、伝送場内の空間位置ごとに得られる新たなSAR値を既定のSAR値の閾値と比較する。その比較結果に基づき、マイクロプロセッサは例えば対応する新たに計算されたSAR値がもはや既定のSAR値を満たさない伝送場区域内の位置を識別することができる。送信機102のマイクロプロセッサは、伝送される電力波104の周波数、位相、振幅、若しくは他の特性及び/又は新たな電力波104を伝送するためのアンテナ若しくはアンテナアレイの新たな組の選択を操作して電力波104の伝送を制御することができる。
【0033】
送信機102は、送信機102の伝送場内の1つ又は複数の受信機の位置データを受信することができる。別の実施形態では、送信機102が、送信機102の伝送場内の1つ又は複数の受信機の位置データを決定する。送信機102は、1つ又は複数の受信機の位置のそれぞれにおける、及び送信機102の伝送場内の1つ又は複数の受信機からの所定距離を取り囲むゾーン内のSAR値を計算する。別の実施形態では、受信機によって測定され報告される1つ又は複数の受信機の位置のそれぞれにおける、及び送信機102の伝送場内の1つ又は複数の受信機からの所定距離を取り囲むゾーン内のSAR値を送信機102が受信する。次いで送信機102のマイクロプロセッサは、1つ又は複数の受信機の位置のそれぞれにおける、及び伝送場内の1つ又は複数の受信機からの所定距離を取り囲むゾーン内の計算済みのSAR値を既定のSAR値と比較する。一実施形態では、既定のSAR値が1キログラム当たり1.6ワット(W/Kg)であり得る。別の実施形態では、既定のSAR値は米国連邦通信委員会(FCC)によって確立された任意の値であり得る。
【0034】
1つ又は複数の受信機の位置のそれぞれにおける、及び1つ又は複数の受信機からの所定距離を取り囲むゾーン内の計算済みのSAR値が伝送場の被選択部分内の既定のSAR値を満たす場合、送信機102は伝送場内の被選択部分において建設的に収束するように電力波104を生成し、伝送し、或いは調節することができる。別の実施形態では、1つ又は複数の受信機の位置のそれぞれにおける、及び1つ又は複数の受信機からの所定距離を取り囲むゾーン内の計算済みのSAR値が伝送場の被選択部分内の既定のSAR値を満たさない場合、マイクロプロセッサは伝送場内の被選択部分内に1つ又は複数のヌル空間を形成するために相殺的に収束するように1つ又は複数の電力波104を生成し、伝送し、或いは調節するように構成される。
【0035】
1つ又は複数の受信機の位置を決定するために、送信機102は送信機102の伝送場内に電力波104及び通信信号を継続的に伝送することができる。電力波104は、伝送場内の所与の位置にある1つ又は複数の受信機に給電し得る、1組の任意の特性を有する任意の種類の波とすることができる。電力波の非限定的な例は、超音波、マイクロ波、赤外線波、及び無線周波数波を含み得る。電力波104は、電力波104が伝送場内の所与の位置において高いエネルギレベルを与えることをもたらす1組の或る物理的特性(例えば周波数、位相、エネルギレベル、振幅、距離、方向)を用いて伝送され得る。一部の実施形態では、送信機102が所謂探索的電力波を伝送することができ、この探索的電力波は1つ又は複数の受信機に給電する電力波に通常使用される電力レベルよりも比較的低い電力レベルを有する電力波である。探索的電力波は、1つ又は複数の受信機を識別するために使用されても良く、且つ/又は伝送場内の1つ若しくは複数の受信機に最終的に給電する電力波104の適切な特性を決定するために使用され得る。
【0036】
通信信号は、関連するプロトコルによってデータを通信するために電気装置によって使用される任意の種類の波であり得る。非限定的な例は、Bluetooth(登録商標)、NFC、Wi-Fi、ZigBee(登録商標)等を含み得る。通信信号は、電力波104を適切に策定するために送信機102によって使用されるパラメータを通信するために使用され得る。通信信号は、伝送されている低レベル電力波の特性を記述するデータを含み得る。このデータは、例えば通信信号と共に伝送される電力波104の方向やエネルギレベルを示し得る。
【0037】
1つ又は複数の受信機の1つ又は複数のアンテナが、送信機102から電力波104及び通信信号を受信することができる。電力波104は、低レベルの電力を電力波104に与える波形特性を有し得る。通信信号は電力波104の特性を示すデータを含み得る。送信機102が電力波104を伝送場内の特定の方向に又は特定の位置に策定し且つ/又は伝送する場合、送信機102の通信コンポーネント111が電力波104について記述するデータを生成し、通信信号114内で伝送することができる。例えば通信信号114は、振幅、周波数、エネルギレベル、電力波の軌道、電力波が伝送された所望の位置等、電力波に関する情報を示し得る。
【0038】
一部の実施形態では、通信信号内のデータを入力パラメータとして使用し、受信機103が自らの位置についての指示、例えば位置情報の明確な通信や、セグメント又はサブセグメント内での探索的低電力波伝送の受信及び/又は前述の探索的な波の電力レベルが伝送場内で特定の閾値を上回ることの確認を示す通信によって送信機102に応答し得る。1つ又は複数の受信機は、自らの位置についての指示によって送信機102に応答するためのメッセージを生成するように構成されるプロセッサを含み得る。1つ又は複数の受信機は、低電力波伝送の受信時に受信機の位置を示すメッセージを生成するように構成されるプロセッサを含む電子装置に(例えばスマートフォンに)組み込まれ、又はかかる電子装置(例えばスマートフォンバックパック)に結合され得る。代替的実施形態では、1つ又は複数の受信機が、受信される通信信号によって示される受信電力波の特性に基づいて自らの位置を決定し、それを送信機102に伝送することができる。
【0039】
一実施形態では、1つ又は複数のアンテナを可動要素上に固定することができ、所与の部分に関する計算済みのSAR値と既定のSAR値との比較結果に基づいてエネルギのポケット又はヌル空間を形成する必要がある伝送場内の部分の位置に応じて、1つ又は複数のアンテナアレイのそれぞれの中の1つ又は複数のアンテナ間の距離が動的に調節される。可動要素は、送信機のマイクロプロセッサによって制御される任意の機械的アクチュエータである。送信機のマイクロプロセッサは伝送場内の部分の位置を決定し、その部分の位置に基づき、アンテナが搭載される機械的アクチュエータの動きを制御する。
【0040】
1つ又は複数のアンテナの配置が原因で、1つ又は複数のアンテナアレイそれぞれの1つ又は複数のアンテナが互いに異なる時間に1つ又は複数の電力波を伝送するように構成され得る。別の実施形態では、送信機のマイクロプロセッサによって制御されるタイミング回路があることが原因で、1つ又は複数のアンテナアレイそれぞれの1つ又は複数のアンテナが互いに異なる時間に1つ又は複数の電力波を伝送するように構成され得る。タイミング回路は、1つ又は複数のアンテナそれぞれの異なる伝送時間を選択するために使用され得る。一例では、1つ又は複数のアンテナのそれぞれから1つ又は複数の伝送波を伝送するタイミングにより、マイクロプロセッサがタイミング回路を予め構成することができる。別の例では、所与の部分に関する計算済みのSAR値と既定のSAR値との比較結果に基づいてエネルギのポケット又はヌル空間を形成する必要がある伝送場内の部分の位置に応じて、送信機が少数のアンテナからの少数の伝送波の伝送を遅らせることができる。
【0041】
一実装では、送信機がスイッチに結合されるアンテナ回路を含むことができ、アンテナアレイ内の1つ又は複数のアンテナのそれぞれが、所与の位置に関する計算済みのSAR値と既定のSAR値との比較結果に基づいて電力波、エネルギのポケット、又はヌル空間を形成し或いは伝送する必要がある伝送場内の位置に応じて調節され或いは選択される。一実施形態では、1つ又は複数のアンテナのうちの第1の1組のアンテナをオンにすることによって電力波の方向が第1の方向に向けられ得るように、及び1つ又は複数のアンテナのうちの第2の1組のアンテナをオンにすることによってアンテナアレイの電力波の方向が第2の方向に向けられ得るようにアンテナアレイが構成される。第2の1組のアンテナは第1の1組のアンテナからの1つ又は複数のアンテナを含むことができ、又は第1の組からのアンテナを全く含まなくても良い。一実施形態では、複数の方向のそれぞれについて1つ又は複数のアンテナからの1組のアンテナをオンにすることによってアンテナアレイの電力波の方向を複数の方向に向けることができる。一部の実施形態では、第1の1組のアンテナ及び第2の1組のアンテナ内のアンテナの選択が、第1の1組のアンテナ内のアンテナと第2の1組のアンテナ内のアンテナとの間の距離に基づく。一部の実施形態では、第1の組、第2の組、又は任意の組のアンテナから出てくる電力波が所望の位置におけるエネルギのポケットの効果的な伝送を発生させるように距離が選択される。
【0042】
別の実施形態では、送信機が少なくとも2つのアンテナアレイを含む。一例では、その少なくとも2つのアンテナアレイが第1のアンテナアレイと第2のアンテナアレイとを含む。一部の実施形態では、マイクロプロセッサが第1のアンテナアレイと第2のアンテナアレイとの間の間隔を制御するように構成される。一部の実施形態では、所与の部分に関する計算済みのSAR値と既定のSAR値との比較結果に基づいてエネルギのポケット又はヌル空間を形成する必要がある伝送場内の位置に応じて、第1のアンテナアレイと第2のアンテナアレイとの間の距離が動的に調節される。一実施形態では、第1のアンテナアレイ及び第2のアンテナアレイが平面形状でも良く、少なくとも2つのアンテナアレイ間のオフセット距離が4インチである。
【0043】
別の実施形態では、送信機が少なくとも2つのアンテナアレイを含む。一例では、その少なくとも2つのアンテナアレイが第1のアンテナアレイと第2のアンテナアレイとを含む。説明を簡単にするために、第1のアンテナアレイ及び第2のアンテナアレイについては説明してあることに留意すべきだが、開示する実施形態の範囲から外れることなしに3つ以上のアンテナアレイがシステム内に含まれ得る。第1のアンテナアレイ及び第2のアンテナアレイのそれぞれは、1つ又は複数の電力波を伝送するように構成されるアンテナの1つ又は複数の行及び1つ又は複数の列を含む。一例では、所与の部分に関する計算済みのSAR値と既定のSAR値との比較結果に基づいてエネルギのポケット又はヌル空間を形成する必要がある伝送場内の位置に応じるのと同時に、エネルギのポケットを作り出すために第1のアンテナアレイ及び第2のアンテナアレイの両方が使用される。別の例では、所与の部分に関する計算済みのSAR値と既定のSAR値との比較結果に基づいてエネルギのポケット又はヌル空間を形成する必要がある伝送場内の位置に応じるのと同時に、ヌル空間を作り出すために第1のアンテナアレイ及び第2のアンテナアレイの両方が使用される。別の例では、所与の部分に関する計算済みのSAR値と既定のSAR値との比較結果に基づいてエネルギのポケット又はヌル空間を形成する必要がある伝送場内の位置に応じるのと同時に、エネルギのポケット及びヌル空間を作り出すために第1のアンテナアレイ及び第2のアンテナアレイの両方が使用される。
【0044】
図1Bは、例示的実施形態によるシステム100のコンポーネントを示す。この例示的システムは、SARのレベルがSAR閾値を上回らないようにだが、受信機103に結合される電子装置108のための電力を受信機103が捕捉し変換するのに十分なRFエネルギが残るように、一定のエネルギレベルを維持することを目的とする1つ又は複数の電力波104を伝送するように構成される送信機102を含む。一部の実施形態では、第1の位置105はRFエネルギがSAR閾値を上回る十分なRFエネルギを含み、第2の位置107が伝送場全体にわたって均一であり且つSAR閾値に準拠するRFエネルギを含む。送信機102は、任意の数の技法によって第1の位置105の非準拠SAR値を検出することができる。例えば送信機102は、送信機102が所与の距離の間隔において特定の位置に生成している電力波104のSAR値を継続的に決定することができる。かかる例では、送信機102は送信機102からの所与の距離に位置し且つ特定の水平方向の間隔に位置する第1の位置105が、その位置におけるRFエネルギにSAR値の閾値を超えさせる特定の特性を有する伝送電力波104を有すると決定し得る。従って送信機102は、伝送場全体にわたる均一なエネルギレベルを維持するために電力波104が調節され得ると決定することができる。
【0045】
図1Cは、
図1Bに示す例示的実施形態によるシステム100のコンポーネントを示す。
図1Cでは、第1の位置105におけるSAR閾値を上回るRFエネルギを弱めるために、送信機102が送信機102によって生成され伝送される電力波104を調節している可能性がある。そのため、電力波104のRFエネルギが伝送場全体にわたって均一のままになる。
【0046】
図2は、例示的実施形態による、無線電力伝送システム内でエネルギのポケットを形成するための方法を示す。
【0047】
最初のステップ202で、送信機(TX)が、1つ又は複数のアンテナから放射される伝送場内の1つ又は複数の電力波に対する、送信機の伝送場内の空間位置ごとのSAR値を決定する。例えば別の実施形態では、1つ又は複数のアンテナから放射される伝送場内の1つ又は複数の電力波に対する伝送場内の空間位置ごとに得られるSAR値をTXが決定する。
【0048】
SAR値は幾つかの波形パラメータに従って予め決定され又はモデリングされ得ることを当業者なら理解されよう。そのモデル及び所定値はTXのメモリ内に記憶され又はTXのプロセッサ内に予めプログラムされ、電力波をどのように生成し、伝送し、或いは調節するのかを決定する結果として波形パラメータはTXに知られている。例えば送信機は、特定の位置が見出される空間の或る体積に入る1つ又は複数の電力波の周波数、電力レベル、アンテナ強度、及び距離を使用するモデルを使用し、特定の位置のSAR値のサンプルを決定し得る。これらの知られている値及びモデルを使用し、TXはその位置を含む体積の中でどれ位の電力が電力波によって生成されるのかを決定し得る。
【0049】
次のステップ204で、送信機が、1つ又は複数のアンテナから放射される伝送場内の1つ又は複数の電力波に対する伝送場内の空間位置ごとのSAR値を既定のSAR値と比較する。一実施形態では、既定のSAR値が1キログラム当たり1.6ワット(W/Kg)である。別の実施形態では、既定のSAR値は米国連邦通信委員会(FCC)によって確立された任意の値であり得る。
【0050】
次のステップ206で、送信機のマイクロプロセッサが、伝送場内の空間位置ごとのSAR値と既定のSAR値との比較を分析するために1つ又は複数のソフトウェアモジュールを実行し、その分析に基づいて伝送場内の安全区域を識別することができる。一実施形態では、安全区域は計算されるSAR値が既定のSAR閾値を下回る伝送場内の区域である。
【0051】
次いでマイクロプロセッサは、送信機からの安全区域の距離及び広さを決定し、決定した安全区域の距離及び広さに基づき、1つ又は複数のソフトウェアモジュールを実行して波形発生器によって生成される電力波を選択し、電力波の出力周波数を選択し、アンテナの所望の間隔に対応する1つ又は複数のアンテナアレイの固定された物理的形状からアンテナのサブセットを選択して安全区域におけるエネルギのポケットを形成することができる。
【0052】
一実施形態では、送信機が安全区域の距離及び広さについて電力波を調節し得る。例えば送信機は、送信機のアンテナが電力を伝送する位相を調節することができる。アンテナの最適な構成が明らかになると、送信機のメモリがその構成を記憶して送信機にその最高レベルで伝送させ続けることができる。別の実施形態では、送信機からの安全区域の決定される距離及び広さに基づいて送信機のアルゴリズムが電力波を何時調節する必要があるのかを決定することができ、送信機のアンテナの構成も変えることができる。例えば送信機は、決定される安全区域の距離及び広さに基づき、安全区域において受信される電力が最大未満だと判定し得る。送信機は電力波の位相を調節することができる。
【0053】
次のステップ208で、安全区域におけるエネルギのポケットを生成するために、送信機が伝送場内の安全区域において建設的に収束するように1つ又は複数の電力波を伝送する。
【0054】
図3は、例示的実施形態による、無線電力伝送システム内でヌル空間を形成するための方法を示す。
【0055】
最初のステップ302で、送信機(TX)が送信機の伝送場内の空間位置ごとのSAR値を計算する。別の実施形態では、TXが伝送場内の空間位置ごとに得られるSAR値を受信する。
【0056】
次のステップ304で、送信機が伝送場内の空間位置ごとのSAR値を既定のSAR値と比較する。一実施形態では、既定のSAR値が1キログラム当たり1.6ワット(W/Kg)である。別の実施形態では、既定のSAR値は米国連邦通信委員会(FCC)によって確立された任意の値であり得る。
【0057】
次のステップ306で、送信機のマイクロプロセッサが、伝送場内の空間位置ごとのSAR値と既定のSAR値との比較を分析するために1つ又は複数のソフトウェアモジュールを実行し、その分析に基づいて伝送場内の非安全区域を識別することができる。一実施形態では、非安全区域は伝送場内の空間位置ごとに計算されるSAR値が既定のSAR値を上回る伝送場内の区域である。
【0058】
次いでマイクロプロセッサは、送信機からの非安全区域の距離及び広さを決定し、決定した送信機からの非安全区域の距離及び広さに基づき、1つ又は複数のソフトウェアモジュールを実行して波形発生器によって生成される電力波を選択し、電力波の出力周波数を選択し、アンテナの所望の間隔に対応する1つ又は複数のアンテナアレイの固定された物理的形状からアンテナのサブセットを選択して非安全区域におけるヌル空間を形成することができる。
【0059】
一実施形態では、非安全区域においてヌル空間を形成するために、送信機のアルゴリズムに従って計算される送信機からの非安全区域の距離及び広さが送信機のアンテナによる電力波の生成及び伝送を変え得る。例えば送信機は、送信機のアンテナが電力を伝送する位相を調節することができる。アンテナの最適な構成が明らかになると、送信機のメモリがその構成を記憶して送信機にその最高レベルで伝送させ続けることができる。別の実施形態では、送信機からの非安全区域の決定される距離及び広さに基づいて送信機のアルゴリズムが電力波を何時調節する必要があるのかを決定することができ、送信機のアンテナの構成も変えることができる。
【0060】
次のステップ308で、送信機はヌル空間を形成するために伝送場内の非安全区域において相殺的に収束するように1つ又は複数の電力波を伝送する。一実施形態では、非安全区域が送信機から複数の電力伝送信号を受信し得る。複数の電力伝送信号のそれぞれは、送信機の複数のアンテナからの電力波を含む。電力波が相殺的に合わさってヌル空間を作り出すので、これらの電力伝送信号のコンポジットはほぼゼロであり得る。
【0061】
別の実施形態では、送信機の波形発生器によって少なくとも2つの電力波が生成され得る。生成される少なくとも2つの電力波は異なる周波数を有し得る。一部の実施形態では、少なくとも2つの電力波のうちの1つの周波数の位相の変化が統一的な電力波の形成をもたらし得る。均一な電力波は、伝送場内の非安全区域以外の区域内でエネルギのポケットを生成すると共に、伝送場内の非安全区域においてヌル空間を形成するものであり得る。
【0062】
上記の方法の説明及びプロセス流れ図は説明に役立つ例として与えたに過ぎず、様々な実施形態のステップを提示した順序で実行しなければならないことを要求することも含意することも意図しない。当業者なら理解されるように、上記の実施形態の中のステップは任意の順序で実行することができる。「次いで」や「次に」等の語はステップの順序を限定することは意図せず、これらの語は単に方法についての説明を読者に教え導くために使用する。プロセス流れ図では操作を逐次プロセスとして記述する場合があるが、操作の多くは並列に又は同時に実行することができる。加えて、操作の順序は並べ替えることができる。プロセスは、方法、関数、手続き、サブルーチン、サブプログラム等に対応し得る。プロセスが関数に対応する場合、その終了は呼び出し関数又はmain関数に関数が戻ることに対応し得る。
【0063】
本明細書で開示した実施形態に関連して記載した様々な説明のための論理ブロック、モジュール、回路、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はその両方の組合せとして実装することができる。このハードウェアとソフトウェアとの互換性を明確に示すために、様々な説明のためのコンポーネント、ブロック、モジュール、回路、及びステップを概してその機能の観点から上記で説明してきた。その機能をハードウェアとして実装するかソフトウェアとして実装するのかは、個々の応用例及びシステム全体に課せられる設計制約によって決まる。当業者は、記載した機能を個々の応用例ごとに様々な方法で実装することができるが、そのような実装の決定は本発明の範囲からの逸脱を生じさせるものとして解釈すべきではない。
【0064】
コンピュータソフトウェアによって実装される実施形態は、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又はその任意の組合せによって実装され得る。コードセグメント又は機械実行可能命令は、手続き、関数、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、クラス、又は命令、データ構造、若しくはプログラム文の任意の組合せを表し得る。情報、データ、引き数、パラメータ、又はメモリコンテンツを受渡し且つ/又は受信することにより、コードセグメントは別のコードセグメント又はハードウェア回路に結合され得る。情報、引き数、パラメータ、データ等は、メモリ共用、メッセージ受渡し、トークン受渡し、ネットワーク伝送等を含む任意の適切な手段によって受渡しされ、転送され、又は伝送され得る。
【0065】
これらのシステム及び方法を実装するために使用される実際のソフトウェアコード又は専用の制御ハードウェアは本発明を限定するものではない。従って、本明細書の説明に基づくシステム及び方法を実装するためにソフトウェア及び制御ハードウェアを設計できることを理解し、本システム及び方法の動作及び挙動について具体的なソフトウェアコードを参照することなしに説明した。
【0066】
ソフトウェアによって実装する場合、これらの機能は、非一時的コンピュータ可読又はプロセッサ可読記憶媒体上の1つ又は複数の命令又はコードとして記憶することができる。本明細書で開示した方法又はアルゴリズムのステップは、コンピュータ可読又はプロセッサ可読記憶媒体上にあり得るプロセッサ実行可能ソフトウェアモジュールによって実施され得る。非一時的コンピュータ可読又はプロセッサ可読媒体は、或る場所から別の場所にコンピュータプログラムを転送するのを助けるコンピュータ記憶媒体及び有形記憶媒体の両方を含む。非一時的プロセッサ可読記憶媒体は、コンピュータによってアクセスされ得る任意の可用媒体とすることができる。限定ではなく例として、かかる非一時的プロセッサ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROMや他の光ディスク記憶域、磁気ディスク記憶域や他の磁気記憶装置、又は命令若しくはデータ構造形式の所望のプログラムコードを記憶するために使用でき、コンピュータ又はプロセッサによってアクセスされ得る他の任意の有形記憶媒体を含み得る。本明細書で使用するとき、ディスク(disk)及びディスク(disc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザーディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピディスク、及びブルーレイディスクを含み、ディスク(disk)が通常データを磁気的に複製するのに対し、ディスク(disc)はデータをレーザーによって光学的に複製する。上記のものの組合せもコンピュータ可読媒体の範囲に含まれるべきである。更に、方法又はアルゴリズムの動作は、コンピュータプログラム製品に組み込むことができるコード及び/又は命令の1つとして又は任意の組合せ若しくは組として、非一時的プロセッサ可読媒体及び/又はコンピュータ可読媒体上にあり得る。