(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/18 20060101AFI20221207BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20221207BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20221207BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G06F1/18 F
G06F1/16 312F
H05K5/02 V
H05K7/14 K
(21)【出願番号】P 2021071168
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0324964(US,A1)
【文献】特開2003-158355(JP,A)
【文献】特開2001-142569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/00
G06F 1/16-1/18
H05K 5/00-5/06
H05K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1電子部品を搭載した第1筐体と、
前記第1筐体と隣接して設けられ、第2電子部品を搭載した第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第1筐体及び前記第2筐体の互いの隣接端部を跨ぐように該第1筐体と該第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1電子部品と前記第2電子部品とを接続するフレキシブル基板と、
を備え、
前記フレキシブル基板は、前記隣接端部よりも前記第1筐体側にオフセットした位置に設けられ、前記第2筐体から前記第1筐体に向かう第1方向から該第1方向とは逆の第2方向へと折り返された第1折返し部と、
前記隣接端部よりも前記第2筐体側にオフセットした位置に設けられ、前記第2方向から前記第1方向へと折り返された第2折返し部と、
前記第1折返し部で前記第2方向へと折り返された後の位置に設けられ、前記第1筐体と相対的に固定された第1筐体固定部と、
前記第2折返し部で前記第1方向へと折り返された後の位置に設けられ、前記第2筐体と相対的に固定された第2筐体固定部と、
前記第1折返し部で前記第2方向へと折り返された後の位置から屈曲し、前記隣接端部に沿って延在する第1屈曲部と、
前記第2折返し部で前記第1方向へと折り返された後の位置から屈曲し、前記隣接端部に沿って延在する第2屈曲部と、
前記第1電子部品と接続された第1端部と、
前記第2電子部品と接続された第2端部と、
を有し、
前記第1電子部品は、前記第1折返し部よりも前記第1方向側にオフセットした位置に配置され、
前記第2電子部品は、前記第2折返し部よりも前記第2方向側にオフセットした位置に配置され、
前記フレキシブル基板は、その長手方向で、前記第1折返し部から前記第1端部に向かって順に前記第1屈曲部と前記第1筐体固定部とが設けられ、前記第2折返し部から前記第2端部に向かって順に前記第2屈曲部と前記第2筐体固定部とが設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記フレキシブル基板は、さらに、前記第1折返し部と前記第2折返し部との間に設けられ、前記ヒンジ装置と相対的に固定されたヒンジ固定部を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
さらに、前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って延在し、前記第1筐体及び前記第2筐体が相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイを備え、
前記第1折返し部は、前記ディスプレイの裏面から次第に離間する方向に向かいながら前記第1方向から前記第2方向へと折り返され、
前記第2折返し部は、前記ディスプレイの裏面から次第に離間する方向に向かいながら前記第2方向から前記第1方向へと折り返されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
電子機器であって、
第1電子部品を搭載した第1筐体と、
前記第1筐体と隣接して設けられ、第2電子部品を搭載した第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第1筐体及び前記第2筐体の互いの隣接端部を跨ぐように該第1筐体と該第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1電子部品と前記第2電子部品とを接続するフレキシブル基板と、
を備え、
前記フレキシブル基板は、
前記隣接端部よりも前記第1筐体側にオフセットした位置に設けられ、前記第2筐体から前記第1筐体に向かう第1方向から該第1方向とは逆の第2方向へと折り返された第1折返し部と、
前記第1折返し部で前記第2方向へと折り返された後の位置に設けられ、前記第1筐体と相対的に固定された筐体固定部と、
前記第1折返し部で前記第2方向へと折り返された後の位置から屈曲し、前記隣接端部に沿って延在する屈曲部と、
前記第1電子部品と接続された端部と、
を有し、
前記第1電子部品は、前記第1折返し部よりも前記第1方向側にオフセットした位置に配置され、
前記フレキシブル基板は、その長手方向で、前記第1折返し部から前記端部に向かって順に前
記屈曲部と前記筐体固定部とが設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記フレキシブル基板は、さらに、前記ヒンジ装置と相対的に固定されたヒンジ固定部を有し、
前記第1折返し部は、前記ヒンジ固定部と前記筐体固定部との間に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電子機器であって、
前記フレキシブル基板は、さらに、前記隣接端部よりも前記第2筐体側にオフセットした位置に設けられ、前記第2方向から前記第1方向へと折り返された第2折返し部を有する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体を相対的に回動可能に連結した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体だけでなくディスプレイまでも折り畳み可能に構成した電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、筐体の回動動作時にディスプレイの長さが変化することを防止する必要がある。そこで、通常、筐体は、ディスプレイの表面に一致した位置に回動中心を有する。このため、左右の筐体にそれぞれ搭載された電子部品間を接続する配線は、筐体間の回動動作時に生じる内輪差によって伸縮動作を生じる。すなわち、配線は、ディスプレイが折り曲げられた状態では伸長され、ディスプレイが開かれた状態では余長を生じる。
【0005】
上記特許文献1の構成では、左右の筐体間の境界に位置する背表紙部材に溝部を設け、この溝部内で配線を水平方向に撓ませることで配線の余長を吸収している。このように、金属線を絶縁被覆した一般的なケーブル状の配線であれば、単に水平方向に撓ませるだけで伸縮動作を吸収できる。
【0006】
ところで、左右の筐体間で送受信される情報量が大きい場合等、一般的な配線では太くなり過ぎるときは、フレキシブル基板を使用することが考えられる。ところが、フレキシブル基板は、水平方向への折り曲げができないため、上記特許文献1の構造によって余長を吸収することはできない。他方、余長の吸収を考慮せずにフレキシブル基板を左右の筐体間に延在させた場合は、筐体の回動動作時にフレキシブル基板がばたつき、円滑に余長を吸収することが難しい。なお、このようなフレキシブル基板の余長の問題は、フレキシブルディスプレイを用いない折り畳み型の電子機器でも同様に生じ得る。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、相対的に回動可能に連結された筐体間に亘るフレキシブル基板の余長を円滑に吸収できる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1電子部品を搭載した第1筐体と、前記第1筐体と隣接して設けられ、第2電子部品を搭載した第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、前記第1筐体及び前記第2筐体の互いの隣接端部を跨ぐように該第1筐体と該第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1電子部品と前記第2電子部品とを接続するフレキシブル基板と、を備え、前記フレキシブル基板は、前記隣接端部よりも前記第1筐体側にオフセットした位置に設けられ、前記第2筐体から前記第1筐体に向かう第1方向から該第1方向とは逆の第2方向へと折り返された第1折返し部を有する。
【0009】
本発明の第2態様に係る電子機器は、第1電子部品を搭載した第1筐体と、前記第1筐体と隣接して設けられ、第2電子部品を搭載した第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、前記第1筐体及び前記第2筐体の互いの隣接端部を跨ぐように該第1筐体と該第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1電子部品と前記第2電子部品とを接続するフレキシブル基板と、を備え、前記フレキシブル基板は、前記隣接端部よりも前記第1筐体側にオフセットした位置に設けられ、前記第2筐体から前記第1筐体に向かう第1方向から該第1方向とは逆の第2方向へと折り返された第1折返し部と、前記第1折返し部で前記第2方向へと折り返された後の位置に設けられ、前記第1筐体と相対的に固定された筐体固定部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、相対的に回動可能に連結された筐体間に亘るフレキシブル基板の余長を円滑に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3中のIV-IV線に沿う模式的な斜視断面図である。
【
図5A】
図5Aは、180度姿勢での電子機器の模式的な側面断面図である。
【
図5B】
図5Bは、60度姿勢での電子機器の模式的な側面断面図である。
【
図5C】
図5Cは、0度姿勢での電子機器の模式的な側面断面図である。
【
図6A】
図6Aは、ディスプレイの表面側からフレキシブル基板を見た模式的な斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、ディスプレイの裏面側からフレキシブル基板を見た模式的な斜視図である。
【
図7】
図7は、180度姿勢及び0度姿勢での第1折返し部及びその周辺部の状態を模式的に示した側面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るフレキシブル基板の第1折返し部及びその周辺部の状態を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0014】
図1~
図3に示すように、電子機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態の電子機器10は、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCを例示する。電子機器10は、携帯電話、スマートフォン、携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0015】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、例えば、それぞれヒンジ装置14で連結される辺(隣接端部12Aa,12Ba)以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材で形成されている。各筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。ヒンジ装置14は、筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、
図1に示す0度姿勢で形成される隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を隠す背表紙部材としても機能する。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。
【0016】
図3に示すように、第1筐体12Aは、マザーボード17等の電子部品を搭載している。マザーボード17には、例えばCPU(Central Processing Unit)17a、通信モジュール17b、SSD(Solid State Drive)17c等の電子部品が実装されている。CPU17aは、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。通信モジュール17bは、例えば第2筐体12Bに搭載されたアンテナを介して送受信される無線通信の情報処理を行うデバイスであり、例えばワイヤレスWANや第5世代移動通信システムに対応する。SSD17cは、半導体メモリを用いた記憶装置である。
【0017】
第2筐体12Bは、例えばバッテリ装置18、サブカード19等の電子部品を搭載している。バッテリ装置18は、電子機器10の電源となる二次電池である。サブカード19は、例えば電源ボタンやUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠した外部コネクタ等を実装した基板である。
【0018】
筐体12A,12B間は、例えば3本のフレキシブル基板20,21,22によって電気的に接続されている。フレキシブル基板20は、例えばマザーボード17とバッテリ装置18との間を接続する。フレキシブル基板21は、例えばマザーボード17とディスプレイ16との間を接続する。フレキシブル基板22は、例えばマザーボード17とサブカード19との間を接続する。フレキシブル基板20~22の接続対象は上記以外でもよい。フレキシブル基板20~22の設置本数は適宜変更可能である。
【0019】
電子機器10は、第2筐体12Bにマザーボード17を搭載し、バッテリ装置18等を第1筐体12Aに搭載してもよい。また電子機器10は、例えばマザーボード17とサブカード19を第1筐体12Aに搭載し、バッテリ装置18を第2筐体12Bに搭載する等、各電子部品の配置は適宜変更してもよい。フレキシブル基板20(21,22)は、これらの電子部品以外の接続に使用するものでもよい。
【0020】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する隣接端部12Aa,12Baに沿った方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。X方向については、第2筐体12Bから第1筐体12Aに向かう方向をX1方向、その逆の第1筐体12Aから第2筐体12Bに向かう方向をX2方向と呼ぶこともある。また、筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(
図1及び
図5C参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(
図5A参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼び、例えば
図5Bに示す姿勢を60度姿勢と呼ぶ。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じるものであり、これらのずれた角度位置も含めて、本実施形態では0度姿勢等と呼んで説明している。
【0021】
図4は、
図3中のIV-IV線に沿う模式的な斜視断面図である。
図4は、フレキシブル基板20及びその周辺部の構成を代表的に図示しているが、他のフレキシブル基板21,22及びその周辺部の構成も
図4に示すものと同一又は同様の構成である。そこで、以下では、他のフレキシブル基板21,22について、フレキシブル基板20の構成要素と同一又は同様の構成要素に同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0022】
フレキシブル基板20~22は、例えば可撓性を持った絶縁性フィルムを用い、薄く且つ柔軟に形成したフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printed circuit)である。
図3に示すように、フレキシブル基板20(21,22)は、第1筐体12A側の第1端部20Aがマザーボード17に接続され、第2筐体12B側の第2端部20Bがバッテリ装置18(ディスプレイ16,サブカード19)に接続される。
図6A及び
図6Bでは、第2端部20Bは、ケーブル18aを介してバッテリ装置18と接続される構成を例示しているが、ケーブル18aを介さずに直接的にバッテリ装置18(ディスプレイ16,サブカード19)と接続されてもよい。
【0023】
図5A、
図5B、
図5Cは、それぞれ180度姿勢、60度姿勢、0度姿勢での電子機器10の模式的な側面断面図である。
【0024】
図5A~
図5Cに示すように、筐体12A,12B間は、ヒンジ装置14により、2つの角度姿勢の間(本実施形態では0度姿勢と180度姿勢との間)で相対的に回動可能に連結されている。
図5Cに示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに面方向で重なるように積層される。
図5Aに示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んで配置される。
【0025】
ディスプレイ16は、筐体12A,12Bに亘って延在したフレキシブルディスプレイである。
図5Cに示す0度姿勢時、ディスプレイ16は、第1筐体12A側の領域RAと、第2筐体12B側の領域RBとが対向するように配置され、領域RA,RB間の境界領域である折曲領域R1が円弧状に折り曲げられた状態となる。
図5Aに示す180度姿勢時、ディスプレイ16は、領域RA,RB及び折曲領域R1がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す(
図2も参照)。
【0026】
ディスプレイ16は、裏面16aが筐体12A,12B及びヒンジ装置14で支持され、表面16bが映像表示面となる。ディスプレイ16は、Z方向で筐体12A,12Bの最上部に位置している。ディスプレイ16は、例えば有機EL等で構成されたディスプレイパネル16cの裏面にシート状部材16dを貼り付けた構造である。
【0027】
ディスプレイ16は、領域RAが第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域RBが第2筐体12Bに対して相対的に固定される。具体的には、領域RAの裏面16aは、第1プレート24A及び第1サポートプレート27Aで支持され、第1プレート24Aを介して第1筐体12Aと固定される。領域RBの裏面16aは、第2プレート24B及び第2サポートプレート27Bで支持され、第2プレート24Bを介して第2筐体12Bと固定される。サポートプレート27A,27Bは、ヒンジ装置14の構成部品である。
【0028】
折曲領域R1は、筐体12A,12Bに対して相対的に移動可能である。180度姿勢時、折曲領域R1の裏面16aは、ヒンジ本体26及びサポートプレート27A,27Bで支持される(
図5A参照)。0度姿勢時、折曲領域R1は、円弧状に折り曲げられ、裏面16aの一部がサポートプレート27A,27Bで支持され、大部分はヒンジ装置14から離間する(
図5C参照)。
【0029】
プレート24A,24Bは、炭素繊維強化樹脂や金属で形成されたプレートである。プレート24A,24Bは、ヒンジ装置14を間に挟むように左右に配置され、それぞれの表面でディスプレイ16の裏面16aを支持する。
【0030】
図3、
図4及び
図5Aに示すように、本実施形態のヒンジ装置14は、ヒンジ本体26と、第1サポートプレート27Aと、第2サポートプレート27Bと、を有する。ヒンジ装置14は筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結し、ディスプレイ16を所望の折曲形状に折曲可能なものであれば、他の構成としてもよい。
【0031】
ヒンジ本体26は、筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Baを跨ぐ位置に設けられ(
図5A参照)、隣接端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している(
図1及び
図3参照)。ヒンジ本体26は、アルミニウム等の金属製のブロック状部品である。ヒンジ本体26は、第1筐体12Aに固定されたブラケットに対して第1回転リンク28A(
図3参照)を介して相対移動可能に連結されている。さらにヒンジ本体26は、第2筐体12Bに固定されたブラケットに対して第2回転リンク28B(
図3参照)を介して相対移動可能に連結されている。これによりヒンジ本体26は、筐体11,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ本体26内には、筐体12A,12B間の回動動作を同期させるギヤ機構や、筐体12A,12B間の回動動作に所定の回動トルクを付与するトルク機構等も設けられている。ヒンジ本体26の外面は、化粧用のカバー材26aで覆われている。
【0032】
図5Aに示す180度姿勢時、ヒンジ本体26は、筐体12A,12B内に収納され、互いに近接又は当接した隣接端部12Aa,12BaをX方向に跨ぐ。
図5Cに示す0度姿勢時、ヒンジ本体26は、大きく離間した隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を塞ぐように配置され、本のように折り畳まれた電子機器10の背表紙となる。この際、カバー材26aが最外面に露出することで、折り畳まれた電子機器10の外観意匠が低下することを防止している(
図1参照)。
【0033】
サポートプレート27A,27Bは、アルミニウム等の金属材料で形成されたプレートであり、左右対称形状である。第1サポートプレート27Aは、第1筐体12Aの内面側に設けられ、隣接端部12Aaに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。第1サポートプレート27Aは、幅方向(X方向)の一端部が回転軸27Aaを用いてヒンジ本体26と相対回転可能に連結されている。第1サポートプレート27Aは、幅方向の他端部が第1筐体12Aに対して相対移動可能に設けられ、第1プレート24Aの一端部と隣接する。これにより第1サポートプレート27Aは、180度姿勢時にヒンジ本体26と第1プレート24Aとの間に配置される。
【0034】
第2サポートプレート27Bは、第2筐体12Bの内面側に設けられ、隣接端部12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。第2サポートプレート27Bは、一端部が回転軸27Baを用いてヒンジ本体26と相対回転可能に連結され、他端部が第2プレート24Bの一端部と隣接する。これにより第2サポートプレート27Bは、180度姿勢時にヒンジ本体26と第2プレート24Bとの間に配置される。
【0035】
サポートプレート27A,27Bは、筐体12A,12B間の回動動作に応じて筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbに対してX方向及びZ方向に相対移動する。180度姿勢時、サポートプレート27A,27Bは、その表面によってディスプレイ16の裏面16aを支持する。180度以外の角度姿勢では、サポートプレート27A,27Bは、ディスプレイ16との間に隙間を設けた状態、又はディスプレイ16を変形させない程度の僅かな力でディスプレイ16に接触する。サポートプレート27A,27Bは、180度以外の角度姿勢でもディスプレイ16の折曲領域R1を支持し、その形状を矯正する構成としてもよい。このように、サポートプレート27A,27Bは、180度姿勢時にはディスプレイ16の折曲領域R1を平面で安定して支持する一方、折曲領域R1の折曲動作を阻害することはない。
【0036】
次に、フレキシブル基板20(21,22)の具体的な構成を説明する。
図6Aは、ディスプレイ16の表面側からフレキシブル基板20を見た模式的な斜視図である。
図6Bは、ディスプレイ16の裏面側からフレキシブル基板20を見た模式的な斜視図である。
【0037】
図4、
図6A及び
図6Bに示すように、フレキシブル基板20(21,22)は、第1折返し部20aと、第2折返し部20bと、ヒンジ固定部20cと、第1筐体固定部20dと、第2筐体固定部20eと、第1屈曲部20fと、第2屈曲部20gと、を有する。
【0038】
第1折返し部20aは、フレキシブル基板20をX1方向からX2方向へと折り返すことで、側面視で略U字状に形成されている。第1折返し部20aは、隣接端部12Aa,12Baよりも第1筐体12A側(X1側)にオフセットした位置に設けられている。具体的には、第1折返し部20aは、第1サポートプレート27AよりもX1側に配置され、第1プレート24Aの裏面と第1筐体12Aの内面12Abとの間の空間S1に位置している。第1折返し部20aは、Z方向を基準として、ディスプレイ16の裏面16aから次第に離間する方向に向かいながらX1方向からX2方向へと折り返されている。言い換えれば、第1折返し部20aは、フレキシブル基板20の第2端部20Bから第1端部20Aに向かう方向を基準として、上から下へと折り返されている。
【0039】
第2折返し部20bは、基本的には第1折返し部20aと左右対称構造である。つまり第2折返し部20bは、隣接端部12Aa,12BaよりもX2側に配置され、第2プレート24Bと第2筐体12Bの内面12Bbとの間の空間S2に位置している。第2折返し部20bは、X2方向からX1方向へと上から下に折り返されている。
【0040】
ヒンジ固定部20cは、折返し部20a,20b間に設けられた部分である。ヒンジ固定部20cは、X方向に沿って延在し、ヒンジ装置14及び隣接端部12Aa,12Baを跨いでいる。ヒンジ固定部20cは、第1サポートプレート27Aの裏面27Abからヒンジ本体26の裏面26bを通過して第2サポートプレート27Bの裏面27Bbまで延在している。
図6Aに示すように、ヒンジ固定部20cの表面20caには、粘着部材30が設けられている。粘着部材30は、両面テープや粘着剤等である。ヒンジ固定部20cは、粘着部材30を介してヒンジ装置14と固定される。
【0041】
第1筐体固定部20dは、第1折返し部20aでX1方向からX2方向へと折り返された後の位置に設けられている。本実施形態のフレキシブル基板20は、第1折返し部20aとマザーボード17との間が第1屈曲部20fによってX方向からY方向へと屈曲している。第1筐体固定部20dは、第1屈曲部20fで屈曲した部分に設けられ、Y方向に延在している。
図6Bに示すように、第1筐体固定部20dの裏面20daにも粘着部材30が設けられている。第1筐体固定部20dは、粘着部材30を介して第1筐体12Aと相対的に固定される。
【0042】
第2筐体固定部20eは、基本的には第1筐体固定部20dと左右対称構造である。つまり第2筐体固定部20eは、第2折返し部20bでX2方向からX1方向へと折り返された後、第2屈曲部20gによってX方向からY方向へと屈曲した部分に設けられている。
図6Bに示すように、第2筐体固定部20eについても裏面20eaに設けられた粘着部材30を介して第2筐体12Bと相対的に固定される。
【0043】
第1屈曲部20fは、第1折返し部20aでX1方向からX2方向へと折り返された後の位置をX方向からY方向へと屈曲させた部分である。フレキシブル基板20(21,22)は、マザーボード17へと向かうX1方向から逆のX2方向へと第1折返し部20aで折り返されている。第1屈曲部20fは、このように第1折返し部20aでX2方向へと折り返されたフレキシブル基板20(21,22)を再びマザーボード17に向けるための部分である。
図6Aに示す構成例では、マザーボード17への接続部である第1端部20Aは、第1屈曲部20fでY方向に屈曲した後、さらにX1方向、Y方向へと屈曲した先にある。第1端部20Aは、第1屈曲部20fでY方向に屈曲した直後、或いはその後にX1方向に屈曲した直後に設けてもよい。
【0044】
第2屈曲部20gは、基本的には第1屈曲部20fと左右対称構造である。つまり第2屈曲部20gは、第2折返し部20bでX2方向からX1方向へと折り返された後の位置をX方向からY方向へと屈曲させる。これにより第2屈曲部20gは、フレキシブル基板20(21,22)を再びバッテリ装置18等へと向かわせる。
図6Aに示す構成例では、バッテリ装置18等への接続部である第2端部20Bは、第2屈曲部20gでY方向に屈曲した後、さらにX1方向へと屈曲した先にある。第2端部20Bの配置も適宜変更可能である。
【0045】
図3に示すように、フレキシブル基板21,22は、フレキシブル基板20と比べて全長が異なる点や、屈曲部20f,20gによる屈曲方向が異なる点等の相違点はあるが、基本的な構造は同一でよい。
【0046】
次に、フレキシブル基板20(21,22)の筐体12A,12Bに対する取付構造を説明する。
【0047】
図4及び
図5Aに示すように、本実施形態の第1筐体12Aには、起立片32と、支持バー33とが設けられている。起立片32は、内面12Abから階段状に起立しながらX1方向へと延びた板片である。起立片32は、空間S1内でY方向に延在している。支持バー33は、内面12Abにねじ止め等で固定されたX方向に幅狭且つZ方向に薄いプレートである。支持バー33は、空間S1内でY方向に延在しており、起立片32の先端水平部分と間隔を介して平行している。起立片32及び支持バー33は第2筐体12Bにも設けられている。本実施形態の場合、第2筐体12Bの起立片32及び支持バー33は第1筐体12Aのものと略左右対称構造ではあるが、多少構造が異なっている。
【0048】
先ず、
図4及び
図5Aに示すように、フレキシブル基板20(21,22)のヒンジ固定部20cは、粘着部材30を用いてヒンジ本体26及びサポートプレート27A,27Bの裏面26b,27Ab,27Bbに固定される。ヒンジ固定部20cは、ヒンジ本体26及びサポートプレート27A,27Bの一部のみに固定されてもよいし、ねじやフックで固定されてもよい。
【0049】
次に、フレキシブル基板20(21,22)のヒンジ固定部20cよりも第1筐体12A側の部分は、第1サポートプレート27Aの裏面27Abから、第1プレート24Aの裏面と起立片32の表面32aとの間を通過して第1折返し部20aに至る。この部分は、移動自由な状態とされ、第1プレート24Aや起立片32に固定されない。
【0050】
第1折返し部20aにおいて、フレキシブル基板20(21,22)は、移動自由な状態のままX1方向からX2方向へと上から下へと折り返される。第1折返し部20aは、側面視でU字状に形成され、起立片32の外端面32bを回り込んでいる。第1折返し部20aでX2方向に折り返された後にある第1屈曲部20f及び第1筐体固定部20dは、起立片32の裏面32cと支持バー33の表面33aとの間に挟まれた位置に配置される。第1筐体固定部20dは、その裏面20daが粘着部材30を介して支持バー33の表面33aに固定される。
【0051】
次に、フレキシブル基板20(21,22)のヒンジ固定部20cよりも第2筐体12B側の部分は、第2サポートプレート27Bの裏面27Bbから、第2プレート24Bの裏面と起立片32の表面32aとの間を通過して第2折返し部20bに至る。この部分も移動自由な状態とされ、第2プレート24Bや起立片32に固定されない。
【0052】
第2折返し部20bにおいて、フレキシブル基板20(21,22)は、移動自由な状態のままX2方向からX1方向へと上から下へと折り返される。第2折返し部20bでX1方向に折り返された後にある第2屈曲部20g及び第2筐体固定部20eは、起立片32の裏面32cと支持バー33の表面33aとの間に挟まれた位置に配置される。第2筐体固定部20eは、その裏面20edaが粘着部材30を介して支持バー33の表面33aに固定される。
【0053】
以上より、フレキシブル基板20(21,22)は、ヒンジ固定部20cがヒンジ装置14に固定され、第1筐体固定部20dが第1筐体12Aと相対的に固定され、これらの間にある第1折返し部20a及びその周辺部が移動自由な状態にある。さらにフレキシブル基板20(21,22)は、ヒンジ固定部20cがヒンジ装置14に固定され、第2筐体固定部20eが第2筐体12Bと相対的に固定され、これらの間にある第2折返し部20b及びその周辺部が移動自由な状態にある。
【0054】
次に、筐体12A,12Bの回動動作と、その際のフレキシブル基板20(21,22)の動作とを説明する。
【0055】
図5Aに示す180度姿勢時、プレート24A,24B、ヒンジ本体26、及びサポートプレート27A,27Bは、それぞれ同一のXY平面上に並び、それぞれの表面が面一に配置されて全体として平板を形成する。ディスプレイ16は、この平板上で裏面16a全体が支持され、1枚の平板状の大画面を形成する(
図2も参照)。
図2中の参照符号36は、ベゼル部材であり、ディスプレイ16の表面16bの周縁部にある非アクティブ領域を枠状にカバー部材である。このように、180度姿勢時、電子機器10は大画面のタブレット型PCとして機能する。
【0056】
次に、筐体12A,12B間が180度姿勢から0度姿勢に向かって回動される場合を説明する。この場合は、筐体12A,12B間の開き動作に伴い、サポートプレート27A,27Bが回転軸27Aa,27Baを中心として揺動しつつ、筐体12A,12Bに対して相対移動する(
図5A~
図5C参照)。筐体12A,12Bは、サポートプレート27A,27Bからそれぞれ離間する方向(X1,X2方向)に相対移動する。この際、筐体12A,12Bと一体的にプレート24A,24Bが動作する。このため、プレート24A,24Bと固定されたディスプレイ16は、折曲領域R1が次第に開かれる。
【0057】
図5Cに示す0度姿勢時、筐体12A,12Bは互いの面方向が略平行して積層された意匠性の高い折り畳み状態となる。この際、ディスプレイ16は、折曲領域R1が所望の曲率で湾曲したベル形状を成す。すなわちディスプレイ16は、所定の隙間を介して平行に積層されたプレート24A,24Bによって折曲領域R1が所望のベル形状に折り曲げられる。その結果、電子機器10は、筐体12A,12Bが可能な限り薄型化され、且つディスプレイ16の折曲時の破損も抑制される。
【0058】
このような回動動作中、ディスプレイ16は、その長さが変化しない必要がある。ディスプレイ16が伸縮負荷を受けると、破損や不具合を生じる懸念があるためである。そこで、当該電子機器10は、筐体12A,12B間の回動中心をディスプレイ16の表面16bに一致させることで、ディスプレイ16の折曲時の伸縮負荷を抑制している。
【0059】
他方、ディスプレイ16よりも下側にあり、回動中心の外側にあるフレキシブル基板20(21,22)は伸縮動作を受ける。すなわち、180度姿勢から0度姿勢に変化する際、フレキシブル基板20(21,22)は引張力を受ける。0度姿勢から180度姿勢に変化する際、フレキシブル基板20(21,22)は圧縮力を受ける。本実施形態のフレキシブル基板20(21,22)は、この伸縮動作を折返し部20a,20bによって吸収するものである。
【0060】
図7は、180度姿勢(180°)及び0度姿勢(0°)での第1折返し部20a及びその周辺部の状態を模式的に示した側面図である。
【0061】
図5A及び
図7に示すように、180度姿勢時、第1折返し部20aは、起立片332の外端面32bからX1方向に大きく離間した余長部38を形成している。第1折返し部20aは、ヒンジ固定部20cと第1筐体固定部20dとの間で移動自由である。180度姿勢から0度姿勢に回動する際、第1筐体12Aは、ヒンジ装置14から離間するようにX1方向へと相対移動する。このため、180度姿勢から0度姿勢に回動する際、余長部38は、ヒンジ固定部20cと第1筐体固定部20dとの間で次第にX2方向に送り出される。その結果、0度姿勢時には余長部38の余裕が減少し、第1折返し部20aが起立片332の外端面32bに近接する。
【0062】
なお、0度姿勢から180度姿勢に回動する際には、第1筐体12Aは、ヒンジ装置14に近接するようにX2方向へと相対移動する。このため、0度姿勢から180度姿勢に回動する際、余長部38は、ヒンジ固定部20cと第1筐体固定部20dとの間で次第にX1方向に送り出される。その結果、180度姿勢時には再び余長部38の余裕が増加し、第1折返し部20aが起立片332の外端面32bから離間する。
【0063】
図7中に示すストロークSが第1折返し部20aによるフレキシブル基板20(21,22)の移動ストロークであり、例えば4mm程度である。なお、第2折返し部20bの動作はこの第1折返し部20aの動作と左右対称である以外は同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る電子機器10は、フレキシブル基板20(21,22)が折返し部20a,20bを備える。これにより筐体12A,12B間の回動動作に伴うフレキシブル基板20(21,22)の伸縮動作で生じる余長(余長部38)を円滑に吸収することができる。また筐体12A,12Bの並び方向(X方向)に沿う折返し部20a,20bでフレキシブル基板20(21,22)の余長を吸収する構成としたことで、余長部38の形状の再現性を確保し易い。
【0065】
ここで、仮に折返し部20a,20bを持たない構成を考えてみる。この構成ではフレキシブル基板の余長のコントロールができない。このため、この構成では180度姿勢時にフレキシブル基板が筐体内の隙間で、例えば波形状や屈曲形状等を適宜形成し、回動の都度異なる形状を成す懸念がある。その結果、この構成では、フレキシブル基板が伸縮動作時に大きな負荷を受ける懸念があり、また余長の吸収のために筐体の厚みを厚くしなければならない等の問題もある。さらに180度姿勢時に余ったフレキシブル基板が筐体内で暴れて他の部材や部品に引っかかって0度姿勢への回動動作を阻害し、或いはフレキシブル基板のコネクタ部等が外れる懸念もある。
【0066】
折返し部20a,20bは、一方のみを備えた構成としてもよい。但し、この構成では、一方の折返し部、例えば第1折返し部20aのみでフレキシブル基板20(21,22)の全ての余長を吸収する必要がある。このため、
図7中のストロークSが倍になり、その移動スペースの確保もより難しくなる。なお、この構成では、フレキシブル基板20(21,22)がヒンジ装置14に対して円滑に相対移動できる必要がある。つまりこの構成では、ヒンジ固定部20cをヒンジ装置14に固定しない必要がある。但し、
図4及び
図5Aに示す通り、ヒンジ装置14は筐体12A,12Bの薄いZ方向厚みのなかに集約されている。このため、この構成では、フレキシブル基板20(21,22)をヒンジ装置14に全く引っかからずに摺動させる必要があり、製造や設計が煩雑である。
【0067】
一方、左右の折返し部20a,20bを備えた構成では、各折返し部20a,20bが担当するストロークSは二分の一でよく、折返し部20a,20bの移動スペースの確保も容易である。また、フレキシブル基板20(21,22)がヒンジ装置14に引っかかることを考慮する必要もなく、製造や設計も容易である。
【0068】
特に、当該電子機器10は、余長を吸収するための折返し部20a,20bを、ヒンジ固定部20cと筐体固定部20d,20eとの間に配置している。このため、余長の吸収時の折返し部20a,20bの動作を一層円滑にコントロールでき、余長部38の形状の再現性を一層確保できる。ヒンジ固定部20c及び筐体固定部20d,20eは省略してもよいが、少なくとも一方を備えれば余長の吸収時の安定性が向上する。
【0069】
折返し部20a,20bは、上から下へと折り返される構成とされている。これにより折返し部20a,20bは、ヒンジ装置14から延びたフレキシブル基板20(21,22)を円滑に折り返すことができ、薄型化もし易い。また、フレキシブル基板20(21,22)の接続先であるマザーボード17やバッテリ装置18はプレート24A,24Bの下にある。このため、折返し部20a,20bを上から下に折り返す方がマザーボード17等への接続も容易となる。折返し部20a,20bは、下から上へと折り返される構成としてもよい。
【0070】
図8は、変形例に係るフレキシブル基板20(21,22)の第1折返し部20a及びその周辺部の状態を模式的に示した側面図である。
図8に示す構成は、左右反転させて第2折返し部20b及びその周辺部に転用してもよい。
【0071】
図8に示すフレキシブル基板20(21,22)は、第1折返し部20aとマザーボード17との間に、第1屈曲部20fに代えて第3折返し部40を備える。第3折返し部40は、第1折返し部20aによってマザーボード17側から逆方向を向いたフレキシブル基板20(21,22)を再びマザーボード17側に向けるためのものである。第3折返し部40は、第1筐体固定部20dの直後に設けられ、X2方向からX1方向へと上から下に折り返されている。
【0072】
第3折返し部40は、第1屈曲部20fを用いる場合と比べてフレキシブル基板20(21,22)のY方向での占有スペースを低減できるという利点がある。但し、本実施形態の電子機器10のような機器は、筐体12A,12Bの薄型化の要望が大きい。このため、薄型化の点では、厚み方向(Z方向)での占有スペースを多く必要とする第3折返し部40を用いた構成よりも、第1屈曲部20fを用いた構成の方が有利である。
【0073】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0074】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な電子機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
14 ヒンジ装置
16 ディスプレイ
17 マザーボード
18 バッテリ装置
19 サブカード
20~22 フレキシブル基板
20a 第1折返し部
20b 第2折返し部
20c ヒンジ固定部
20d 第1筐体固定部
20e 第2筐体固定部
20f 第1屈曲部
20g 第2屈曲部