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特許7190004センサーの動作の安定度判定方法及び監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】センサーの動作の安定度判定方法及び監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/22 20060101AFI20221207BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20221207BHJP
   B01D 65/00 20060101ALI20221207BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G01R27/22 Z
B01D61/10
B01D65/00
G01N27/06 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021114744
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】木下 昭彦
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-76305(JP,A)
【文献】特開2011-64649(JP,A)
【文献】特開2017-181215(JP,A)
【文献】特開2008-5615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/22
B01D 61/10
B01D 65/00
G01N 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の物理量を検出するためのセンサーの動作の安定度を判定する方法であって、
前記センサーは、前記液体の前記物理量を検出すると、前記物理量に対応した電気信号を出力するように意図されたものであり、
前記方法は、
前記センサーが前記液体の前記物理量を検出したときの前記電気信号を取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得された前記電気信号を予め定められた閾値と比較する第2ステップと、
前記第2ステップでの比較結果に基づいて、前記センサーの前記動作の安定度を判定する第3ステップとを含み、
前記第2ステップは、予め定められた時間ごとに、前記センサーから出力された前記電気信号の平均値を計算するステップと、前記平均値を前記閾値と比較するステップとを含み、
前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含む、センサーの動作の安定度判定方法。
【請求項2】
液体の物理量を検出するためのセンサーの動作の安定度を判定する方法であって、
前記センサーは、前記液体の前記物理量を検出すると、前記物理量に対応した電気信号を出力するように意図されたものであり、
前記方法は、
前記センサーが前記液体の前記物理量を検出したときの前記電気信号を取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得された前記電気信号を予め定められた閾値と比較する第2ステップと、
前記第2ステップでの比較結果に基づいて、前記センサーの前記動作の安定度を判定する第3ステップとを含み、
前記第3ステップは、前記電気信号が前記閾値によって画定される許容範囲を外れているとき、前記センサーの前記動作が安定していないと判定し、予め定められた回数にわたって連続して前記電気信号が前記許容範囲内にあるとき、前記センサーの前記動作が安定していると判定し、
前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含む、センサーの動作の安定度判定方法。
【請求項3】
液体の物理量を検出するためのセンサーの動作の安定度を判定する方法であって、
前記センサーは、前記液体の前記物理量を検出すると、前記物理量に対応した電気信号を出力するように意図されたものであり、
前記方法は、
前記センサーが前記液体の前記物理量を検出したときの前記電気信号を取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得された前記電気信号を予め定められた閾値と比較する第2ステップと、
前記第2ステップでの比較結果に基づいて、前記センサーの前記動作の安定度を判定する第3ステップとを含み、
前記第3ステップは、前記電気信号が前記閾値によって画定される許容範囲を外れているとき、前記センサーの前記動作が安定していないと判定し、前記電気信号が前記許容範囲内にあるとき、前記センサーの前記動作が安定していると判定し、
前記電気信号は、アナログ信号であり、
前記第2ステップは、単位時間あたりに標本化された前記電気信号の平均値を計算するステップを含む、
前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含む、センサーの動作の安定度判定方法。
【請求項4】
液体の物理量を検出するためのセンサーの動作の安定度を判定する方法であって、
前記センサーは、前記液体の前記物理量を検出すると、前記物理量に対応した電気信号を出力するように意図されたものであり、
前記方法は、
前記センサーが前記液体の前記物理量を検出したときの前記電気信号を取得する第1ステップと、
前記第1ステップで取得された前記電気信号を予め定められた閾値と比較する第2ステップと、
前記第2ステップでの比較結果に基づいて、前記センサーの前記動作の安定度を判定する第3ステップとを含み、
前記第3ステップは、前記電気信号が前記閾値によって画定される許容範囲を外れているとき、前記センサーの前記動作が安定していないと判定し、前記電気信号が前記許容範囲内にあるとき、前記センサーの前記動作が安定していると判定し、
前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含み、
前記液体は、逆浸透膜処理された逆浸透水である、センサーの動作の安定度判定方法。
【請求項5】
前記第3ステップで、前記センサーの前記動作が安定していると判定したとき、その後に前記第1ステップで検出された前記物理量をディスプレイ装置に表示させる第4ステップをさらに含む、請求項2に記載の安定度判定方法。
【請求項6】
液体の物理量を監視する監視装置であって、
前記液体の前記物理量を検出し、前記物理量に対応した電気信号を出力するセンサーと、
前記センサーから出力された前記電気信号に基づいて、前記センサーの動作の安定度を判定する判定装置とを含み、
前記判定装置は、予め定められた時間ごとに、前記センサーから出力された前記電気信号の平均値を計算し、前記平均値を予め定められた閾値と比較することにより、前記センサーの前記動作の安定度を判定し、
前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含む、
監視装置。
【請求項7】
液体の物理量を監視する監視装置であって、
前記液体の前記物理量を検出し、前記物理量に対応した電気信号を出力するセンサーと、
前記センサーから出力された前記電気信号に基づいて、前記センサーの動作の安定度を判定する判定装置とを含み、
前記判定装置は、前記センサーから出力された前記電気信号を予め定められた閾値と比較することにより、前記センサーの前記動作の安定度を判定し、前記電気信号が前記閾値によって画定される許容範囲を外れているとき、前記センサーの前記動作が安定していないと判定し、予め定められた回数にわたって連続して前記電気信号が前記許容範囲内にあるとき、前記センサーの前記動作が安定していると判定し、
前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含む、
監視装置。
【請求項8】
液体の物理量を監視する監視装置であって、
前記液体の前記物理量を検出し、前記物理量に対応した電気信号を出力するセンサーと、
前記センサーから出力された前記電気信号に基づいて、前記センサーの動作の安定度を判定する判定装置とを含み、
前記判定装置は、前記センサーから出力された前記電気信号を予め定められた閾値と比較することにより、前記センサーの前記動作の安定度を判定し、前記電気信号が前記閾値によって画定される許容範囲を外れているとき、前記センサーの前記動作が安定していないと判定し、前記電気信号が前記許容範囲内にあるとき、前記センサーの前記動作が安定していると判定し、
前記電気信号は、アナログ信号であり、
前記判定装置は、単位時間あたりに標本化された前記電気信号の平均値を計算し、
前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含む、
監視装置。
【請求項9】
液体の物理量を監視する監視装置であって、
前記液体の前記物理量を検出し、前記物理量に対応した電気信号を出力するセンサーと、
前記センサーから出力された前記電気信号に基づいて、前記センサーの動作の安定度を判定する判定装置とを含み、
前記判定装置は、前記センサーから出力された前記電気信号を予め定められた閾値と比較することにより、前記センサーの前記動作の安定度を判定し、
前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含み、
前記液体は、逆浸透膜処理された逆浸透水である、
監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の物理量を検出するためのセンサーの動作の安定度を判定する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電解水を用いた血液透析治療が、患者の酸化ストレスを軽減できるとして、注目されている。例えば、特許文献1には、逆浸透膜処理装置を含む透析液調製装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-200340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、逆浸透膜処理装置から取り出された水(逆浸透水)の電気伝導率を監視できるように構成されるのが望ましい。逆浸透水の電気伝導率の監視にあたっては、例えば、液体の電気伝導率を検出するためのセンサーが、逆浸透膜処理装置の下流側に配されることで実現されうる。
【0005】
しかしながら、センサー及び逆浸透膜処理装置の電源投入直後においては、センサーの検出値が安定しないことがあり、逆浸透水の電気伝導率を適切に監視することが困難であった。上記センサーとしてアナログ信号を出力するセンサーが適用される場合、その出力信号が周囲の環境の影響を受けやすくなり、上記問題が顕著に表れる。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、透析システムの起動直後においても、液体の物理量を適切に監視できるセンサーの動作の安定度判定方法等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体の物理量を検出するためのセンサーの動作の安定度を判定する方法であって、前記センサーは、前記液体の前記物理量を検出すると、前記物理量に対応した電気信号を出力するように意図されたものであり、前記方法は、前記センサーが前記液体の前記物理量を検出したときの前記電気信号を取得する第1ステップと、前記第1ステップで取得された前記電気信号を予め定められた閾値と比較する第2ステップと、前記第2ステップでの比較結果に基づいて、前記センサーの動作の安定度を判定する第3ステップとを含む。
【0008】
本発明に係る前記安定度判定方法において、前記第2ステップは、予め定められた時間ごとに、前記センサーから出力された前記電気信号の平均値を計算するステップと、前記平均値を前記閾値と比較するステップとを含む、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記安定度判定方法において、前記第3ステップは、前記電気信号が前記閾値によって画定される許容範囲を外れているとき、前記センサーの前記動作が安定していないと判定し、前記電気信号が前記許容範囲内にあるとき、前記センサーの前記動作が安定していると判定する、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記安定度判定方法において、前記第3ステップは、前記電気信号が、予め定められた回数にわたって連続して前記許容範囲内にあるとき、前記センサーの前記動作が安定していると判定する、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記安定度判定方法において、前記第3ステップで、前記センサーの前記動作が安定していると判定したとき、その後に前記第1ステップで検出された前記物理量をディスプレイ装置に表示させる第4ステップをさらに含む、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記安定度判定方法において、前記電気信号は、アナログ信号であり、前記第2ステップは、単位時間あたりに標本化された前記電気信号の平均値を計算するステップを含む、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記安定度判定方法において、前記物理量は、前記液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含む、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記安定度判定方法において、前記液体は、逆浸透膜処理された逆浸透水である、ことが望ましい。
【0015】
本発明は、液体の物理量を監視する監視装置であって、液体の物理量を検出し、前記物理量に対応した電気信号を出力するセンサーと、前記センサーから出力された電気信号に基づいて、前記センサーの動作の安定度を判定する判定装置とを含み、前記判定装置は、前記センサーから出力された電気信号を予め定められた閾値と比較することにより、前記センサーの動作の安定度を判定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の前記安定度判定方法は、前記第2ステップで、前記第1ステップで取得された前記電気信号を予め定められた閾値と比較し、前記第3ステップで、前記第2ステップでの比較結果に基づいて、前記センサーの前記動作の前記安定度を判定する。これにより、前記センサーの動作状態を容易に把握することが可能となり、ひいては、透析システムの起動直後においても、前記液体の前記物理量を適切に監視することが可能となる。
【0017】
本発明の前記監視装置は、前記判定装置が、前記センサーから出力された電気信号を予め定められた閾値と比較することにより、前記センサーの動作の安定度を判定する。これにより、前記センサーの動作状態を容易に把握することが可能となり、ひいては、透析システムの起動直後においても、前記液体の前記物理量を適切に監視することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の安定度判定方法が適用される透析システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態の安定度判定方法の手順を示すフローチャートである。
図3図2の安定度判定方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
図4図2または図3の安定度判定方法における第3ステップの具体的な手順を示すフローチャートである。
図5図2の安定度判定方法の別の変形例の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の安定度判定方法が適用される透析システム100の概略構成を示している。
【0020】
透析システム100は、監視装置1と、逆浸透膜処理装置2、透析液調製装置3と、透析装置4とを備えている。
【0021】
監視装置1は、透析システム100で運用する液体の物理量を監視するための装置である。本実施形態では、監視装置1によって、逆浸透膜処理装置2から透析液調製装置3に供給される逆浸透水の電気伝導度が監視される。
【0022】
液体の「物理量」としては、電気伝導度の他、圧力及び流量等が挙げられる。物理量は、液体を特定するための物理量であれば特に限定されない。液体の物理量は、複数設定されていてもよい。液体の物理量は、液体の電気伝導度、圧力及び単位時間あたりの流量の少なくとも1つを含んでいればよい。以下においては、主として、物理量が電気伝導度である場合について説明する。
【0023】
透析液調製装置3に供給される透析液の調製に用いられる水としては、不純物が少ない水が望ましい。水に含まれる不純物の量は、水の電気伝導度を検出することにより知得できる。例えば、不純物が少ない水の電気伝導度は、不純物が多い水の電気伝導度よりも小さい。従って、監視装置1が逆浸透膜処理装置2から透析液調製装置3に供給される逆浸透水の電気伝導度を検出することにより、透析液の調製に用いられる水の純度が知得されうる。
【0024】
上記物理量として液体の圧力が適用される場合、監視装置1は、逆浸透膜処理装置2から透析液調製装置3に供給される逆浸透水の圧力が適正な範囲に維持されているか否かを監視する。また、上記物理量として液体の流量が適用される場合、監視装置1は、逆浸透膜処理装置2から透析液調製装置3に供給される逆浸透水の流量が適正な範囲に維持されているか否かを監視する。
【0025】
監視装置1による液体の物理量の監視は、透析システム100の起動時または運転中に行うことができる。上記監視は、常時継続的になされてもよいし、間欠的になされてもよい。
【0026】
監視装置1は、センサー11と、判定装置12と、ディスプレイ装置13とを含んでいる。センサー11と、判定装置12と、ディスプレイ装置13については、後述される。
【0027】
逆浸透膜処理装置2は、逆浸透膜を有し、供給された原水を逆浸透膜処理、すなわち、逆浸透膜を透過させて浄化する。逆浸透膜処理装置2の下流には、監視装置1が配されている。
【0028】
監視装置1は、逆浸透膜処理装置2の上流に配されていてもよい。この場合、監視装置1によって、逆浸透膜処理装置2に供給される原水の電気伝導度等が監視される。
【0029】
逆浸透膜処理装置2の上流には、電解水生成装置(図示せず)が設けられていてもよい。電解水生成装置は、水を電気分解することにより、水素が溶け込んだ電解水素水を生成する。電解水素水は、血液透析治療に好適であるとして、注目されている。
【0030】
逆浸透膜処理装置2の上流に電解水生成装置を設けられた透析システム100にあっては、監視装置1は、電解水生成装置の上流または下流に配されていてもよい。電解水生成装置の上流に配される監視装置1は、電解水生成装置に供給される原水の電気伝導度等を監視できる。電解水生成装置の下流に配される監視装置1は、電解水生成装置で生成され、逆浸透膜処理装置2に供給される電解水素水の電気伝導度等を監視できる。
【0031】
電解水生成装置は、逆浸透膜処理装置2の下流に設けられていてもよい。この場合、電解水生成装置は、逆浸透膜処理装置2と透析液調製装置3との間に配され、逆浸透膜処理装置2から供給された逆浸透水を電気分解することにより、水素が溶け込んだ電解水素水(電解逆浸透水)を生成し、透析液調製装置3に供給する。
【0032】
逆浸透膜処理装置2の下流に電解水生成装置を設けられた透析システム100にあっては、監視装置1は、電解水生成装置の上流または下流に配されていてもよい。電解水生成装置の上流に配される監視装置1は、電解水生成装置に供給される逆浸透水の電気伝導度等を監視できる。電解水生成装置の下流に配される監視装置1は、電解水生成装置で電解され、逆浸透膜処理装置2に供給される電解逆浸透水の電気伝導度等を監視できる。
【0033】
透析液調製装置3は、逆浸透膜処理装置2から供給された逆浸透水を用いて、例えば、透析原剤を希釈して、透析液を調製する。透析原剤は、液状の他粉末状のものが適用される。透析液調製装置3によって調製された透析液は、透析装置4に送られる。
【0034】
透析装置4は、透析液供給装置とダイアライザーとを含んでいる。透析液供給装置は、透析液調製装置3から供給された透析液をダイアライザーに送出する。ダイアライザーは、例えば、中空糸膜等の多孔質膜によって構成された透析膜を含む人工腎臓であり、透析膜を介して透析液調製装置3から供給された透析液を透析治療の患者の血液に作用させ、血液から老廃物及び水分を除去する。
【0035】
なお、例えば、個人用(少人数用)の透析システムにあっては、透析液調製装置3と透析装置4とが統合された装置が適用されてもよい。
【0036】
次に、監視装置1を構成するセンサー11、判定装置12及びディスプレイ装置13が説明される。
【0037】
センサー11は、監視装置1に供給された液体の物理量を検出し、物理量に対応した電気信号を出力する。センサー11には、電気伝導度、圧力又は流量等の物理量を測定可能な既知のセンサーが適用される。液体の物理量が複数設定されている場合、センサー11の個数も上記物理量に応じたものとなる。
【0038】
判定装置12は、センサー11の動作の安定度を判定する。すでに述べたように、透析システム100の起動当初及びノイズが飛び交う周囲環境にあっては、センサー11の検出値が不安定となる場合がある。判定装置12は、センサー11から出力される電気信号に基づいて、センサー11の動作の安定度を判定する。
【0039】
判定装置12は、例えば、監視装置1の各部の制御を司るPLC (Programmable Logic Controller)によって実現される。PLCは、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)及びCPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等を有している。判定装置12の各種の機能は、CPU、メモリ及びプログラムによって実現される。
【0040】
判定装置12は、センサー11から出力された電気信号を予め定められた閾値と比較することにより、センサー11の動作の安定度を判定する。「閾値」は、変動する電気信号の許容範囲を画定するための上限値であり、例えば、予め実験等により監視装置1の起動当初におけるセンサー11の出力値を取得し、その出力値のレンジから設定されうる。また、閾値は、予め測定された監視装置1の周辺環境のノイズを考慮して設定されていてもよい。
【0041】
ディスプレイ装置13は、センサー11によって検出された液体の物理量を表示する。透析システム100のオペレーター又は管理者は、ディスプレイ装置13に表示される上記物理量に関する情報を確認することにより、透析システム100の動作状態を監視する。
【0042】
本発明の監視装置1は、判定装置12が、センサー11から出力された電気信号を予め定められた閾値と比較することにより、センサー11の動作の安定度を判定する。これにより、センサー11の動作状態を容易に把握することが可能となり、ひいては、監視装置1及び透析システム100の起動直後においても、液体の物理量を適切に監視することが可能となる。
【0043】
図2は、本実施形態の安定度判定方法M1の手順を示している。安定度判定方法M1は、例えば、監視装置1を用いて実行される。
【0044】
本安定度判定方法M1は、第1ステップS1ないし第3ステップS3を含んでいる。
【0045】
第1ステップS1では、センサー11が液体の物理量を検出したときの電気信号を、取得する。監視装置1では、センサー11が逆浸透膜処理装置2から供給される逆浸透水の電気伝導度を検出し、その電気伝導度に対応する電気信号を判定装置12に出力する。
【0046】
第2ステップS2では、判定装置12が第1ステップS1で取得された電気信号を予め定められた閾値と比較する。
【0047】
第3ステップS3では、第2ステップS2での比較結果に基づいて、判定装置12がセンサー11の動作の安定度を判定する。これにより、センサー11の動作状態を容易に把握することが可能となり、ひいては、監視装置1及び透析システム100の起動直後においても、液体の物理量を適切に監視することが可能となる。
【0048】
図3は、図2の安定度判定方法M1の変形例である安定度判定方法M2の手順を示している。安定度判定方法M2のうち、以下で説明されてない部分については、上述した安定度判定方法M1の構成が採用されうる。
【0049】
安定度判定方法M2の第2ステップS2は、予め定められた時間ごとに、センサー11から出力された電気信号の平均値を計算するステップS21と、平均値を閾値と比較するステップS22とを含む。平均値を計算する上記時間(間隔)は、判定装置12の処理能力等に応じて、適宜設定される。
【0050】
安定度判定方法M2では、第2ステップS2においてセンサー11による検出値と閾値とを比較する処理の回数が削減される。
【0051】
図4は、図2の安定度判定方法M1または図3の安定度判定方法M2における第3ステップS3の具体的な手順を示している。
【0052】
第2ステップS2での比較において、電気信号が閾値によって画定される許容範囲を外れているとき(ステップS31においてN)、第3ステップS3において、判定装置12は、センサー11の動作が安定していないと判定する(ステップS32)。一方、電気信号が許容範囲内にあるとき(ステップS31においてY)、判定装置12は、センサー11の動作が安定していると判定する(ステップS33)。このような第3ステップS3によって容易にセンサー11の動作の安定度が判定される。
【0053】
上記ステップS31において、電気信号が許容範囲内にある回数が、予め定められた回数に達したとき(ステップS31においてY)、センサー11の動作が安定していると判定する(ステップS33)ように構成されていてもよい。このような第3ステップS3によれば、センサー11の動作の安定度をより厳格に判定することが可能となる。
【0054】
上記許容範囲内にある「回数」は、複数であり、予め実験等により監視装置1の起動当初におけるセンサー11の出力値を取得し、その収束度合い等に基づいて設定されうる。
【0055】
また、複数の上記閾値が設定されていてもよい。例えば、上記ステップS31において、電気信号が第1閾値によって画定される許容範囲内にある回数が予め定められた回数に達した後、電気信号が上記第1閾値よりも厳格な第2閾値によって画定される許容範囲内にあるとき(ステップS31においてY)、判定装置12は、センサー11の動作が安定していると判定する(ステップS33)ように構成されていてもよい。このような第3ステップS3によれば、センサー11の動作の安定度をより一層厳格に判定することが可能となる。
【0056】
上記ステップS31において、電気信号が、予め定められた回数にわたって連続して許容範囲内にあるとき(ステップS31においてY)、センサー11の動作が安定していると判定する(ステップS33)ように構成されていてもよい。このような第3ステップS3によれば、センサー11の動作の安定度をより一層厳格に判定することが可能となる。
【0057】
上記連続する「回数」は、複数であり、予め実験等により監視装置1の起動当初におけるセンサー11の出力値を取得し、その収束度合い等に基づいて設定されうる。
【0058】
図5は、図2の安定度判定方法M1の別の変形例である安定度判定方法M3の手順を示している。安定度判定方法M3のうち、以下で説明されてない部分については、上述した安定度判定方法M1またはM2の構成が採用されうる。
【0059】
安定度判定方法M3は、第1ステップS1~第3ステップS3と、第3ステップS3の後に実行される第4ステップS4とを含んでいる。第4ステップS4は、第3ステップS3で、センサー11の動作が安定していると判定したとき(図4のステップS33参照)、その後に第1ステップS1で検出された物理量をディスプレイ装置13に表示させる。監視装置1では、センサー11の動作が安定した後の逆浸透水の電気伝導度がディスプレイ装置13に表示される。
【0060】
安定度判定方法M3によると、ディスプレイ装置13に表示される物理量は、センサー11の動作が安定した後の電気伝導度となる。これにより、透析液調製装置3に供給される逆浸透水の電気伝導度の監視が容易となる。
【0061】
なお、安定度判定方法M2に上記第4ステップS4を負荷する形態では、第3ステップS3で、センサー11の動作が安定していると判定した後に、第1ステップS1で検出されステップS21で計算された物理量の平均値がディスプレイ装置13に表示される。
【0062】
センサー11は、電気信号として、デジタル信号を出力する形態であってもよく、アナログ信号を出力する形態であってもよい。
【0063】
アナログ信号を出力するセンサー11が適用される場合、判定装置12は、センサー11から入力されたアナログ信号を標本化してデジタル信号を生成する。そして、上記第2ステップS2は、単位時間あたりに標本化された電気信号の平均値を計算するステップを含む。
【0064】
すでに述べたように、通常、アナログ信号は、周囲の環境の影響を受けやすく、他の医療機器等が発生するノイズが判定装置12に入力される電気信号に混入し、ディスプレイ装置13に液体の物理量として表示される逆浸透水の電気伝導度の変動が大きくなることがある。
【0065】
しかしながら、本監視装置及び安定度判定方法M1等によれば、センサー11の動作が安定した後の電気伝導度がディスプレイ装置13に表示されるので、アナログ信号を出力するセンサー11が適用される場合であっても、透析液調製装置3に供給される逆浸透水の電気伝導度の監視が容易となる。
【0066】
以上、本発明の安定度判定方法M1等及び監視装置1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0067】
すなわち、本発明の安定度判定方法M1等は、少なくとも、液体の物理量を検出するためのセンサー11の動作の安定度を判定する方法であって、センサー11は、液体の物理量を検出すると、物理量に対応した電気信号を出力するように意図されたものであり、
安定度判定方法M1等は、センサー11が液体の物理量を検出したときの電気信号を取得する第1ステップS1と、第1ステップS1で取得された電気信号を予め定められた閾値と比較する第2ステップS2と、第2ステップS2での比較結果に基づいて、センサー11の動作の安定度を判定する第3ステップS3とを含んでいればよい。
【0068】
また、本発明の監視装置1は、少なくとも、液体の物理量を監視する監視装置1であって、液体の物理量を検出し、物理量に対応した電気信号を出力するセンサー11と、センサー11から出力された電気信号に基づいて、センサー11の動作の安定度を判定する判定装置12とを含み、判定装置12は、センサー11から出力された電気信号を予め定められた閾値と比較することにより、センサー11の動作の安定度を判定するように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 監視装置
11 センサー
12 判定装置
13 ディスプレイ装置
M1 安定度判定方法
M2 安定度判定方法
M3 安定度判定方法
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
S21 ステップ
S22 ステップ
S3 第3ステップ
S31 ステップ
S32 ステップ
S33 ステップ
S4 第4ステップ
【要約】
【課題】透析システムの起動直後においても、液体の物理量を適切に監視することが可能なセンサーの動作の安定度判定方法等を提供する。
【解決手段】安定度判定方法M1は、液体の物理量を検出するためのセンサー11の動作の安定度を判定する方法である。センサー11は、液体の物理量を検出すると、物理量に対応した電気信号を出力するように意図されたものである。安定度判定方法M1は、センサー11が液体の物理量を検出したときの電気信号を取得する第1ステップS1と、第1ステップS1で取得された電気信号を予め定められた閾値と比較する第2ステップS2と、第2ステップS2での比較結果に基づいて、センサー11の動作の安定度を判定する第3ステップS3とを含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5