(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】切羽前方探査方法
(51)【国際特許分類】
G01V 1/00 20060101AFI20221207BHJP
G01V 1/20 20060101ALI20221207BHJP
G01V 1/28 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G01V1/00 B
G01V1/20
G01V1/28
(21)【出願番号】P 2021166601
(22)【出願日】2021-10-11
(62)【分割の表示】P 2017203426の分割
【原出願日】2017-10-20
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中谷 匡志
(72)【発明者】
【氏名】大沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩之
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156106(JP,A)
【文献】特開2014-106075(JP,A)
【文献】特開2015-090032(JP,A)
【文献】特開2016-095140(JP,A)
【文献】特開2014-181948(JP,A)
【文献】特開2013-174580(JP,A)
【文献】特開2001-099945(JP,A)
【文献】米国特許第04308751(US,A)
【文献】米国特許第06307808(US,B1)
【文献】特開2017-166881(JP,A)
【文献】特開2015-158437(JP,A)
【文献】特開平10-311880(JP,A)
【文献】特開平11-142528(JP,A)
【文献】特開2014-013222(JP,A)
【文献】特開2013-142556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00 - 9/14 、
G01H 1/00 -17/00 、
G01V 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に地震計を設置し、トンネル内で地震波を発生させてトンネル切羽前方の地質境界面で反射した反射波を前記地震計により受振し、前記反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って前記反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する切羽前方探査方法において、
地震計として、複数の受振センサーを用い、
複数のロックボルトを
、少なくともトンネルの坑壁面の天端、左右側壁にそれぞれ、前記各ロックボルトの一端から相互に異なる方向
へ前記坑壁面に対して直交又は斜交させて打ち込み
、前記各ロックボルトの他端を前記坑壁面上に残して前記ロックボルトの他端の他端面を受振センサー取付部とし、
前記
複数の受振センサーを前記坑壁面に打ち込んだ前記各ロックボルトの受振センサー取付部に前記ロックボルトの長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして取り付けて、
前記各受振センサーの組み合わせにより、多成分受振センサーとして設置し、
前記各受振センサーにより
捉える前記各ロックボルトを伝播する地震波
から前記各ロックボルトの長軸方向の振動を取得して、
当該取得した
前記各ロックボルトの長軸方向の一成分の波形データをデータ処理して前記各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する、
ことを特徴とする切羽前方探査方法。
【請求項2】
トンネル内に地震計を設置し、トンネル内で地震波を発生させてトンネル切羽前方の地質境界面で反射した反射波を前記地震計により受振し、前記反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って前記反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する切羽前方探査方法において、
地震計として、複数の受振センサーを用い、
複数のロックボルトを、トンネルの坑壁面の同一地点に、前記各ロックボルトの一端から相互に異なる方向へ前記各ロックボルトを相互に直交させて打ち込み、前記各ロックボルトの他端を前記坑壁面上に残して前記ロックボルトの他端の他端面を受振センサー取付部とし、
前記複数の受振センサーを前記坑壁面に打ち込んだ前記各ロックボルトの受振センサー取付部に前記ロックボルトの長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして取り付けて、前記各受振センサーの組み合わせにより、多成分受振センサーとして設置し、
前記各受振センサーにより捉える前記各ロックボルトを伝播する地震波から前記各ロックボルトの長軸方向の振動を取得して、当該取得した前記各ロックボルトの長軸方向の一成分の波形データをデータ処理して前記各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する、
ことを特徴とする切羽前方探査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の掘削施工に際し、切羽前方の地質構造の予測に使用する切羽前方探査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルを掘削するにあたり、切羽前方に拡がる地山の性状を適切かつ高い精度で把握することは、支保工を含めた掘削工事全体を効率よくかつ安全に進めていく上で重要である。
【0003】
近時のトンネルの掘削施工では、1点の発振点から地山に弾性波を発生させ、反射面での反射波を坑口近傍に位置する複数の受振点で受振するHSP(Horizontal Seismic Profiling)法や、探査用の発破を行い、この発破による弾性波を地震計により計測し、この計測した弾性波により切羽前方の地質変化を推定するTSP(Tunnel Seismic Prediction)法など、弾性波(弾性波反射法)を用いた切羽前方探査の技術が広く利用されている。
【0004】
この種の弾性波反射法を用いた切羽前方探査方法が特許文献1により提案されている。
この切羽前方探査方法を
図10に示している。この切羽前方探査方法では、複数の受振器がトンネル壁面付近に設けられ、切羽掘削のための発破や掘削ドリル等により生じ、切羽前方の不連続面に反射して戻ってくる波形を測定する。
【0005】
この手法では、まず、切羽T1から離れたトンネルTの壁面の左右に、ドリル等で穴Hを空け、それぞれに複数の受振器S(受振点)を設置する。この場合、例えば、左右に4個ずつ受振器Sを設置する。さらにその後方のトンネルTの壁面上に複数の受振器Sを設置する。この場合、複数の受振器SをトンネルTの壁面の円周上に設置する。例えば、円周上の5個の受振器Sは、水平ラインの両端に2個、垂直ラインの上端に1個、その間に2個配置する。また、この場合、受振器Sはかぎ型プレートを用いてトンネル壁面に取り付ける。かぎ型プレートは受振器取付部と台部からなり、台部には中央にアンカ用に穴が設けられ、受振器取付部には中央に受振器用の穴が設けられる。トンネルTの壁面にアンカ用にドリルで穴を空け、かぎ型プレートの台部を穴に合わせて設置し、アンカを穴に設置して、岩盤に連結する。アンカは、アンカの周りの壁面をグラウトで固め、ねじで締め付け、トンネルTの壁面に固定する。そして、受振器取付部の穴に受振器Sを取り付ける。
【0006】
次に、切羽掘削のため発破、ブレーカー、掘削ドリル等で振動を与え、振動波を発生させる。この際の発破、ブレーカー、掘削ドリル等の振動が発生するポイントが発振点である。
このようにして切羽掘削により発生する発振点から振動を発生し、切羽前方の断層に反射してトンネルT内へ戻ってくる振動波を、トンネルTの壁面の複数の受振器Sで測定する。複数の発振点と複数の受振器Sの組み合わせから数多くの測定波を得る。
【0007】
そして、次の処理手順により、切羽前方の地質構造を推定する。
まず、発振点から受振点に伝播した直接波を利用してトモグラフィ解析を行う。受振点で測定された直接波のデータを格納したデータ収集装置は取り外され、パーソナルコンピュータに接続される。パーソナルコンピュータ上でデータ収集装置から読み出された直接波のデータに基づいてトモグラフィ解析を行う。トモグラフィ解析を行うことにより、発振点と受振点間の地盤の速度分布を算出する。トンネルTの地質状況と、発振点、受振点間の地盤の速度分布から切羽前方地盤の速度分布を仮定する。
次に、発振点と受振点を含む切羽前方に格子点を設定する。
続いて、仮定された速度分布を用いて、発振点から格子点で反射され受振点までの理論的伝播時間を算出する。
次いで、格子点毎に、該格子点を介する複数の前記受振点で測定された波形に対して、前記理論的伝送時間だけシフトさせ、この波形の振幅をすべて足し合わせる。
そして、足し合わせた波形の振幅に基づいて、振幅が正の値でその絶対値が大きい格子点を堅岩部として前記振幅が負の値でその絶対値が大きい格子点を弱層部として、地質を推定する手段と地質を推定する。
【0008】
このようにこの切羽前方探査方法では、トンネル坑内で人工的に発生させた地震波の切羽前方の反射面で鏡面反射した反射波を検出し、この反射波データを用いて切羽前方の地質変化を推定する。坑壁埋設型の多成分受振器を用いたことで、地震波の入射方向が正確となり、切羽前方の反射面の推定精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の切羽前方探査方法(以下の説明で、手法3という。)では、切羽から離れたトンネルの壁面の左右にドリル等で穴を空け、左右の岩盤内部に複数の受振器を設置し、また、実際の施工においては、トンネル壁面から深度4m程度の削孔を行い、穴に受振器を設置した後、グラウト等により岩盤と受振器を一体化する必要があり、このため、受振器の設置に際して、大掛かりな準備作業を必要とし、また、切羽周辺が占有されるために、通常のトンネルの施工作業を中断しなければならない、という問題がある。
【0011】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種の切羽前方探査方法において、トンネル坑内に地震計を大掛かりな準備作業を不要として簡易に設置できるようにすること、しかも、地震計の簡単な設置でありながら、切羽前方の反射面の3次元的な分布状況や反射面位置の出現する方向を精度よく推定できるようにすること、を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(1)の切羽前方探査方法は、
トンネル内に地震計を設置し、トンネル内で地震波を発生させてトンネル切羽前方の地質境界面で反射した反射波を前記地震計により受振し、前記反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って前記反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する切羽前方探査方法において、
地震計として、複数の受振センサーを用い、
複数のロックボルトを、少なくともトンネルの坑壁面の天端、左右側壁にそれぞれ、前記各ロックボルトの一端から相互に異なる方向へ前記坑壁面に対して直交又は斜交させて打ち込み、前記各ロックボルトの他端を前記坑壁面上に残して前記ロックボルトの他端の他端面を受振センサー取付部とし、
前記複数の受振センサーを前記坑壁面に打ち込んだ前記各ロックボルトの受振センサー取付部に前記ロックボルトの長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして取り付けて、前記各受振センサーの組み合わせにより、多成分受振センサーとして設置し、
前記各受振センサーにより捉える前記各ロックボルトを伝播する地震波から前記各ロックボルトの長軸方向の振動を取得して、当該取得した前記各ロックボルトの長軸方向の一成分の波形データをデータ処理して前記各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する、
ことを要旨とする。
本発明(2)の切羽前方探査方法は、
トンネル内に地震計を設置し、トンネル内で地震波を発生させてトンネル切羽前方の地質境界面で反射した反射波を前記地震計により受振し、前記反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って前記反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する切羽前方探査方法において、
地震計として、複数の受振センサーを用い、
複数のロックボルトを、トンネルの坑壁面の同一地点に、前記各ロックボルトの一端から相互に異なる方向へ前記各ロックボルトを相互に直交させて打ち込み、前記各ロックボルトの他端を前記坑壁面上に残して前記ロックボルトの他端の他端面を受振センサー取付部とし、
前記複数の受振センサーを前記坑壁面に打ち込んだ前記各ロックボルトの受振センサー取付部に前記ロックボルトの長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして取り付けて、前記各受振センサーの組み合わせにより、多成分受振センサーとして設置し、
前記各受振センサーにより捉える前記各ロックボルトを伝播する地震波から前記各ロックボルトの長軸方向の振動を取得して、当該取得した前記各ロックボルトの長軸方向の一成分の波形データをデータ処理して前記各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明(1)の切羽前方探査方法では、地震計として、複数の受振センサーを用い、複数のロックボルトを、少なくともトンネルの坑壁面の天端、左右側壁にそれぞれ、各ロックボルトの一端から相互に異なる方向へ坑壁面に対して直交又は斜交させて打ち込み、複数の受振センサーをそれぞれロックボルトの長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして坑壁面上に残した各ロックボルト他端の他端面の受振センサー取付部に取り付けて、各受振センサーの組み合わせにより、多成分受振センサーとして設置する。そして、各受振センサーにより捉える各ロックボルトを伝播する地震波から各ロックボルトの長軸方向の振動を取得して、当該取得した各ロックボルトの長軸方向の一成分の波形データをデータ処理して各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する。このようにしたことで、トンネル坑内に地震計を大掛かりな準備作業を不要として簡易に設置することができ、しかも、この手法によっても、複数の受振器を岩盤内部に埋設して反射波を計測する例えば手法3などのような従来の手法とロックボルトの長軸方向の成分の反射波において概ね同様の挙動が得ることができ、このような地震計のトンネル坑壁面上への簡易な設置でありながら、従来の手法と同様に、切羽前方の反射面の3次元的な分布状況を精度よく推定することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
本発明(2)の切羽前方探査方法では、地震計として、複数の受振センサーを用い、複数のロックボルトを、トンネルの坑壁面の同一地点に、各ロックボルトの一端から相互に異なる方向へ各ロックボルトを相互に直交させて打ち込み、複数のセンサーをそれぞれロックボルトの長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして坑壁面上に残した各ロックボルト他端の他端面の受振センサー取付部に取り付けて、各受振センサーの組み合わせにより、多成分受振センサーとして設置する。そして、各受振センサーにより捉える各ロックボルトを伝播する地震波から各ロックボルトの長軸方向の振動を取得して、当該取得した各ロックボルトの長軸方向の一成分の波形データをデータ処理して各波形データからフィルタ処理により得られる中心周波数を含む特定の周波数領域に限定して当該特定の周波数領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する。このようにしたことで、トンネル坑内に地震計を大掛かりな準備作業を不要として簡易に設置することができ、しかも、この手法によっても、複数の受振器を岩盤内部に埋設して反射波を計測する例えば手法3などのような従来の手法とロックボルトの長軸方向の成分の反射波において概ね同様の挙動が得ることができ、このような地震計のトンネル坑壁面上への簡易な設置でありながら、従来の手法と同様に、切羽前方の反射面の3次元的な分布状況を精度よく推定することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による切羽前方探査方法(手法1)を示す図
【
図2】手法1における受振センサーの設置形式を示す図
【
図4】本発明の第2の実施の形態による切羽前方探査方法(手法2)を示す図
【
図5】手法2における受振センサーの設置形式を示す図
【
図7】手法1、手法2及び従来の手法(手法3)による計測データの周波数特性を示す図
【
図8】手法1及び手法3によるx方向、y方向及びz方向の3成分の地震波の計測データからフィルタ処理により20-250Hzの周波数帯の計測波形を取り出して表示した図
【
図9】手法1、手法2及び手法3のx方向、y方向及びz方向の計測波形から抽出した初動波形(最初の波長(1波長目)の波形)の軌跡を描いた図(リサージュ図形)
【
図10】従来の切羽前方探査方法(手法3)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1、
図2及び
図3に第1の実施の形態を示している。
図1に示すように、この切羽前方探査方法(以下、手法1という。)は、弾性波反射法を利用したもので、トンネルT内に地震計1を設置し、トンネルT内で地震波を発生させてトンネル切羽前方の地質境界面で反射した反射波を地震計1により受振し、反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する。
【0016】
この手法1では、
図2に示すように、地震計1として、中心にロックボルト挿通部10を有するケース11内に少なくともx方向、y方向及びz方向の3次元的方向の受振センサー12を有する多成分受振センサー12を配置してなる受振ユニット12Uと、この受振ユニット12Uで取得した波形データを記録するデータロガーなどの記録装置(図示省略)とを用いる。また、この受振ユニット12UをトンネルT内に設置するために、NATM工法の支保工において岩盤に打ち込まれるロックボルトに着目し、ロックボルト2を受振ユニット12Uの設置アンカーとして使用する。
ロックボルト2は、受振ユニット12Uの設置位置とするトンネルTの坑壁面所定の位置にロックボルト2の一端から打ち込み、ロックボルト2の他端の一部(この場合、3cm程度)を坑壁面上に受振ユニット取付部21として残しておく。受振ユニット12Uは中心のロックボルト挿通部10に坑壁Wに打ち込んだロックボルト2の受振ユニット取付部21を通し、x方向の受振センサー12をトンネルTの軸方向に、y方向の受振センサー12をトンネルTの鉛直方向に、z方向の受振センサー12をロックボルト2の軸方向となるようにしてトンネルTの坑壁Wの坑壁面上に設置した後、ロックボルト2の受振ユニット取付部21にナット3を締め込むことにより、坑壁Wに反力を取って、受振ユニット12Uを坑壁面上に圧接して坑壁Wに一体的に設置する。そして、この受振ユニット12Uの各受振センサー12に通信ケーブルを介して又は無線により記録装置を接続し、この記録装置を受振ユニット12Uの近傍に設置する(図示省略)。
【0017】
また、この場合、
図1(a)に示すように、トンネルT内の坑壁面の一点に受振ユニット12Uを設置してこの一点での計測でも坑壁W(岩盤)の挙動(多成分(3成分)の反射波)を計測して、切羽前方の反射面の分布を推定することが可能であるが、複数のロックボルト2を少なくともトンネルTの坑壁Wの天端、左右側壁にそれぞれ坑壁面に対して直交させて打ち込み、複数の受振ユニット12Uを各ロックボルト2を介して少なくともトンネルTの坑壁Wの天端、左右側壁に圧接して設置することが好ましく、この場合、
図3(b)に示すように、3本のロックボルト2を使用し、その1本をトンネルTの坑壁Wの天端壁面に鉛直方向に向けて打ち込み、残りの2本をそれぞれトンネルTの左右の両側壁面に水平方向に向けて打ち込み、3つの受振ユニット12U(以下、多成分受振センサー12という場合がある。)を各ロックボルト2を介してトンネルTの天端、左右両側壁の壁面に圧接して設置する。このようにすることにより、合計9チャンネル分の地震波を取ることができ、切羽前方の反射面の推定精度を向上させることができる。
【0018】
このようにして、
図1に示すように、従来と同様に、トンネルT内の切羽において切羽掘削のための発破、ブレーカー、掘削ドリル等で振動を与え、地震波を発生させ、受振ユニット12Uの各受振センサー12により坑壁W(岩盤)を伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データに既知のデータ処理、解析処理を施して、各波形データから反射波の反射面位置を計測する。
各波形データのデータ処理、解析では、
図3に示すように、受振ユニット12Uの各受振センサー12で捉え、記録装置に記録した各地震波の各波形データから特定の低周波領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動の波形(最初の波長(1波長目))と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の波形データに基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する。そして、この計測結果より、切羽前方の地質境界面を推定する。
【0019】
さて、この手法1のように、手法3など従来の手法において岩盤内部に設置していた多成分受振センサーをトンネルTの坑壁面にのみ設置して、従来の手法と同様に、反射波データを取得し記録装置に記録する手法では、岩盤内部の多成分受振センサーで取得される波形データと同程度の波形データは取れないというのが一般的な見方であるところ、本願発明者等は、この手法1のような多成分受振センサー12の設置形式であっても、取得した波形データをバンドパスフィルタに掛けることによって得られるある周波数領域に限っては、岩盤内部の多成分受振センサーで取得される波形データに近似する、そのくらいの信号対ノイズ比(S/N比)で波形データを取ることができることを見出した。手法1及び手法3の両手法による計測特性は基礎実験により確認済みであり、その結果を
図7、
図8、及び
図9に示している。
【0020】
図7に
図1(b)に示す手法1、後述する手法2、手法3による計測データの周波数特性を示している。この周波数分析により、地震波の原波形に含まれる周波数成分を調べる。なお、手法2による計測データの周波数特性については第2の実施の形態で参照する。
図7に示すように、手法1、3の3成分(x方向、y方向、z方向)の波形データには図示のような特徴が見られ、100Hz付近に中心周波数があることが分かる。手法1では、この100Hzを中心周波数として20-250Hzくらい(好ましくは50-200Hzくらい)をターゲットとする。
【0021】
図8は手法1、手法3によるx方向、y方向及びz方向の3成分の反射波の計測データからバンドパスフィルタで20-250Hzの周波数帯の計測波形を取り出して表示したグラフであり、上段のグラフに手法1によるx方向の計測波形を実線で、手法3によるx方向の計測波形を破線でそれぞれ示し、中段のグラフに手法1によるy方向の計測波形を実線で、手法3によるy方向の計測波形を破線でそれぞれ示し、下段のグラフに手法1によるz方向の計測波形を実線で、手法3によるz方向の計測波形を破線でそれぞれ示している。
図8に示すように、x方向、y方向及びz方向の各計測波形から、手法1により取得したトンネルT内の坑壁面の挙動と手法3により取得した坑壁W(岩盤内部(深部))の挙動が低周波(20-250Hz)の領域で同じような動きが見られ、とりわけ、手法1の計測波形の初動波形(最初の波長(1波長目)の波形)と手法3の計測波形の初動波形(最初の波長(1波長目)の波形)に同じような波形が取れていることが分かる。この最初の1波長はP波であり、手法1の波形でも手法3の波形でも同じ揺れ方をし、この後に続く後続波の波形にはS波や表面波が混在されているが、後続のP波も同じ動きを取り、反射波のP波成分、つまり、一次反射波もまた同じ動きをするものと考えられる。そこで、この手法1では、特に地震波の1波長目にくるP波を前方探査のソースとする。
【0022】
図9(手法1)は
図8の手法1及び手法3のx方向、y方向及びz方向の計測波形から抽出した初動波形(最初の波長(1波長目)の波形)の軌跡を描いたリサージュ図形であり、これらの波形が手法1及び手法3の計測特性を表している。
図9(手法1)において、実線で表した波形が手法1の波形、破線で表した波形が手法3の波形であり、どちらも同じような波形になっており、手法1が手法3と3成分において同様の計測特性が得られていることが分かる。
このように手法1による計測波形は手法3による計測波形に比べて遜色がなく、手法1によっても、手法3と概ね同様の、3次元的な指向性を持った計測が可能であることを確認した。
【0023】
かくして既述の低周波領域の個々の計測波形から初動波形(最初の波長(1波長目))を取り出し、同個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する後続波、つまり一次反
射波の波形を抽出すれば、これら反射波の波形データについて既知の解析処理(スタッキング処理、マイグレーション処理など)を施すことにより、各反射波の反射面のイメージングを行なうことができる。
【0024】
そこで、この手法1では、
図3に示すように、多成分受振センサー12によりトンネルの坑壁Wを伝播する3成分の地震波を捉え、取得した各地震波の波形データ(原波形)に、まず、バンドパスフィルタによりフィルタ処理を施して3成分の各波形データから20-250Hzの低周波領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形(最初の波長(1波長目))と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出する。次いで、複数の測定データを重ね合わせる所謂スタッキング処理を行ない、同一成分の波形データを重ね合わせて、波形データの分解能を向上させ、このようにして3成分の個々の計測波形から初動波形(最初の波長(1波長目))と同様の特徴を有する一次反射波の波形を抽出する。そして、以上の処理により求めた時間断面を、マイグレーション処理(例えば、ディフラクション・スタック法)により、距離断面に変換して、3成分の各反射波の到来方向及び反射位置を算出し、各反射波の反射点を抽出して反射面を3次元的に予測する。かくして、トンネル掘削時にトンネルT内に上下左右に出現する地質境界面を推定する。
【0025】
以上説明したように、この手法1によれば、地震計1として多成分受振センサー12をトンネルTの坑壁面に設置したものであっても、多成分受振センサー12をトンネルTの坑壁面にロックボルト2及びナット3により圧接して一体的に設置し、この多成分受振センサー12により坑壁Wを伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データをデータ処理して各波形データから低周波領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の波形データに基づいて、取得した各反射波の到来方向及び反射面位置を計測するようにしたので、トンネルT内に地震計1を大掛かりな準備作業を不要として簡易に設置することができ、しかも、この手法1によっても、複数の受振器を坑壁内部に埋設して反射波を計測する例えば手法3などのような従来の手法と3成分の反射波において概ね同様の計測特性を得ることができ、このような地震計1のトンネル坑壁面上への簡易な設置でありながら、従来の手法と同様に、切羽前方の反射面の3次元的な分布状況、すなわち、切羽前方の地質境界面を精度よく推定することができる。
そして、この手法1では、特に、受振センサー12の設置アンカーに支保工に使用するロックボルト2を利用するので、手法3など従来の手法に比べて準備作業を簡易に短時間で行うことができ、また、施工設備を利用して計測するため、測定しやすく安価である。
また、トンネル切羽前方の地質境界面を3次元的に把握できるため、トンネルの掘削時に地質の変化が始まる部位(天端か踏前か、右側か左側か)を予測することができ、トンネルの掘削時の施工管理、安全管理に活用することができる。
【0026】
図4、
図5及び
図6に第2の実施の形態を示している。
図4に示すように、この切羽前方探査方法(以下、手法2という。)は、手法1と同様に、弾性波反射法を利用したもので、トンネルT内に地震計1を設置し、トンネルT内で地震波を発生させてトンネルTの切羽前方の地質境界面で反射した反射波を地震計1により受振し、反射波の波形データを既知の解析処理により解析を行って反射波の反射面位置を計測することにより、切羽前方の地質境界面を推定する。
【0027】
この手法2では、
図5に示すように、地震計1として、複数の受振センサー13と、これらの受振センサー13で取得した波形データを記録する記録装置(図示省略)とを用いる。また、これらの受振センサー13をトンネルT内に設置するために、NATM工法の支保工において岩盤に打ち込むロックボルト2に着目し、ロックボルト2を受振センサー13の設置アンカーとして使用する。
複数のロックボルト2は、各受振センサー13の設置位置とするトンネルTの坑壁Wの坑壁面所定の位置にそれぞれロックボルト2の一端から相互に異なる方向に打ち込み、ロックボルト2の他端側の一部を坑壁面上に残してロックボルト2の他端面を受振センサー取付部22とする。
各受振センサー13は、坑壁面に打ち込んだ各ロックボルト2の受振センサー取付部22にロックボルト2の長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして取り付ける。ロックボルト2は後述するとおり長軸方向に振動しやすい性質を有することから、受振センサー13をロックボルト2の挿入方向の単成分センサーとして取り扱い、複数の受振センサー13を組み合わせることで、多成分受振センサーとして機能させることが可能である。そして、各受振センサー13に通信ケーブルを介して又は無線により記録装置を接続し、この記録装置をトンネルT内に設置する(図示省略)。
この手法2では、トンネル断面が探査範囲に対して十分小さく無視できる場合、反射波を3次元的に計測するには、
図4(a)に示すように、複数のロックボルト2を少なくともトンネルTの坑壁Wの天端、左右側壁にそれぞれ坑壁面に対して直交又は斜交(好ましくは側壁に対して±45°方向に斜交)させて打ち込み、複数の受振センサー13を各ロックボルト2を介して少なくともトンネルTの坑壁Wの天端、左右側壁に設置することが好ましい。なお、ロックボルト2を坑壁面に斜交させて打ち込む場合は、ロックボルト2の一端(先端)を切羽方向に向けて打ち込むことが望ましい。また、
図4(b)に示すように、3本以上の複数のロックボルト2をトンネルTの坑壁面の同一地点に各ロックボルト2を相互に直交させて打ち込み、複数の受振センサー13を各ロックボルト2を介してトンネルTの坑壁面の同一箇所に設置するようにしてもよい。このようにすることにより全体として多成分受振センサーとして取り扱うことが可能である。なお、この場合も、ロックボルト2を坑壁面にロックボルト2の一端(先端)を切羽方向に向けて打ち込むことが望ましい。
【0028】
このようにして、
図4に示すように、手法3と同様に、トンネルT内の切羽において切羽掘削のための発破、ブレーカー、掘削ドリル等で振動を与え、地震波を発生させる。
そして、各受振センサー13によりトンネルTの坑壁Wに打ち込まれた各ロックボルト2を伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データをデータ処理して各波形データから特定の低周波領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時(到来時間)から当該各反射波の走時差(到来時間の時間差)を算出し、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測する。
【0029】
さて、本願発明者等は、手法2のように、ロックボルト2をトンネルTの坑壁面に打ち込んでロックボルト2の頭部(ロックボルト2の他端部の端面)にz方向の単成分受振センサー13を取り付ける受振センサーの設置形式でも、受振センサー13でロックボルト2の振動を取り、得られるロックボルト2の長軸方向の一成分の波形データについて、波形データをバンドパスフィルタに掛けることによって得られるある周波数領域に限っては、岩盤内部の多成分受振センサーで取得されるz方向の一成分の波形データに近似する波形データを取ることができることを見出した。手法2及び手法3の両手法による計測特性は基礎実験により確認済みであり、その結果を
図7、
図9に示している。なお、この場合、ロックボルト2の頭部周囲に、第1の実施の形態と同様に、x方向、y方向の受振センサー13を併せて取り付けてある。
【0030】
図7(手法2)に
図4(a)に示す手法2による計測データの周波数特性を示している。この周波数分析により、地震波の原波形に含まれる周波数成分を調べる。
図7(手法2)に示すように、手法2による計測データの周波数特性は、x方向、y方向、z方向のどの波形データも他の手法1、3のものより大きく表れ、ピークの形も特徴的で、100Hz付近に中心周波数があり、特にz方向の波形データに最も大きな反応が見られる。そこで、この手法2でもまた、この100Hzを中心周波数として20-250Hzくらい(好ましくは、50-200Hzくらい)をターゲットとする。なお、手法2の周波数特性には500Hz当たりに手法3の周波数特性には見られないピークがある。これはロックボルト2の共振(300Hz-500Hz)によるものとみられる。この手法2では、ターゲットとしている周波数帯域と異なるため、ロックボルト2の共振は大きく影響しない。
そして、第1の実施の形態と同様に、手法2、手法3によるx方向、y方向及びz方向の3成分の反射波の実際の計測データからバンドパスフィルタで20-250Hzの周波数帯の計測波形を取り出したところ、手法2では、x方向の成分、y方向の成分は適正に取れない結果となったが、z方向の波形データは手法3のz方向の波形データと概ね同様の動きが見られ、とりわけ、両手法2、3の計測波形の初動波形の最初の2分の1波長内の範囲に同じような波形が取れており、z方向の反応は適正に取れることが分かった。この初動波形はP波であり、手法2の波形でも手法3の波形でも同じ揺れ方をし、この後に続く後続波の波形にはS波や表面波が混在されているが、後続のP波も同じ動きを取り、反射波のP波成分、すなわち、一次反射波もまた同じ動きをするものと考えられる。そこで、この手法2では、特に地震波の2分の1波長目にくるP波を前方探査のソースとする。
【0031】
図9(手法2)は手法2及び手法3のx方向、y方向及びz方向の計測波形から抽出した初動波形(1波長目の波形)の軌跡を描いたリサージュ図形で、これらの波形が手法2及び手法3の計測特性を表している。
図9において、実線で表した波形が手法2の波形、破線で表した波形が手法3の波形であり、手法2と手法3とではx成分、y成分ともに異なる波形になっているものの、どちらもz成分については同じような波形が見られ、手法2がz成分(ロックボルトの長軸方向の成分)で手法3と同様の挙動が得られていることが分かる。
このように手法2による計測波形はz成分については手法3による計測波形に比べて遜色がなく、ロックボルト2頭部の受振センサー13で、ロックボルト2の振動の伝播特性を使って、z方向(ロックボルトの長軸方向)の波形データを計測できることを確認した。
【0032】
したがって、既述の低周波領域の個々の計測波形から初動波形を取り出し、同個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する後続波を抽出することで、反射波を推定することができる。つまり、初動波形と同様の特徴を有する後続波が一次反射波となる。これらの一次反射波は、
図4(a)に示すように、異なる計測位置の受振センサ13で計測されるので、反射面から戻ってくる時間が異なり、各反射波間で到来時間の差が生じる。この時間差、つまり走時差を利用して、各一次反射波の到来方向及び位置を求めることができる。
また、
図4(b)に示すように、複数のロックボルト2を同一地点において異なる方向に打ち込む場合でも同様で、各反射波の各受振センサー13に到達する時間が違うので、この時間差から、各反射波の到来方向及び位置を求めることができる。この場合、例えば、切羽前方の右側に地質境界面があると見込まれるときは、複数のロックボルト2を右側の坑壁Wに集中してそれぞれ異なる方向に向けて打ち込み、各ロックボルト2の頭部に受振センサー13を取り付けておけば、各反射波の到来方向及び位置をより適切に求めることができる。また、この場合、各ロックボルト2をトンネルTの坑壁Wに切羽方向に向けて差し込むことで、より強い反応を取ることができる。
【0033】
かくして既述の低周波領域の個々の計測波形から初動波形を取り出して、同個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する後続波、つまり一次反射波の波形を抽出し、これら一次反射波の異なる走時からこれら一次反射波の走時差を算出すれば、各一次反射波の走時差に基づいて、各一次反射波の反射面位置を計測することができる。
【0034】
そこで、この手法2では、
図6に示すように、複数の受振センサー13により坑壁Wに打ち込まれた各ロックボルト2を伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データをフィルタ処理して各波形データから20-250Hzの特定の低周波領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する一次反射波の波形を抽出して、これら一次反射波の走時から各一次反射波の走時差を算出し、各一時反射波の走時差に基づいて、各一次反射波の反射位置を計測し、各反射波の反射点を抽出して反射面を予測する。かくして、トンネルTの掘削時にトンネルT内に上下左右に出現する地質境界面を推定する。
【0035】
以上説明したように、手法2によれば、地震計1として複数の受振センサー13をロックボルト2を介してトンネルTの坑壁面に設置したものであっても、トンネルTの坑壁面所定の位置に複数のロックボルト2を相互に異なる方向に打ち込み、複数の受振センサー13を坑壁面上に残したロックボルト2他端の他端面の受振センサー取付部22にロックボルト2の長軸方向の指向性を有する単成分センサーとして取り付けて、各受振センサー13により各ロックボルト2を伝播する地震波を捉え、取得した各地震波の波形データをデータ処理して各波形データから特定の低周波領域の計測波形を取り出し、当該個々の計測波形から初動波形と同様の特徴を有する反射波の波形を抽出して、当該各反射波の走時差に基づいて、当該各反射波の反射面位置を計測するようにしたので、トンネルT坑内に地震計1を大掛かりな準備作業を不要として簡易に設置することができ、しかも、この手法2によっても、複数の受振器13を岩盤内部に埋設して反射波を計測する例えば手法3などのような従来の手法とロックボルトの長軸方向の成分の反射波において概ね同様の挙動が得ることができ、このような地震計1のトンネルTの坑壁面上への簡易な設置でありながら、従来の手法と同様に、切羽前方の反射面の3次元的な分布状況、すなわち、切羽前方の地質境界面を精度よく推定することができる。
そして、この手法2においても、特に、受振センサー13の設置アンカーに支保工に使用するロックボルト2を利用するので、手法3など従来の手法に比べて準備作業を簡易に短時間で行うことができ、また、施工設備を利用して計測するため、測定しやすく安価である。
また、トンネル切羽前方の地質境界面を3次元的に把握できるため、トンネルの掘削時に地質の変化が始まる部位(天端か踏前か、右側か左側か)を予測することができ、トンネルの掘削時の施工管理、安全管理に活用することができる。
【符号の説明】
【0036】
T トンネル
W 坑壁
1 地震計
10 ロックボルト挿通部
11 ケース
12 受振センサー(多成分受振センサー)
12U 受振ユニット
13 受振センサー(Z方向の単成分受振センサー)
2 ロックボルト
21 受振ユニット取付部
22 受振センサー取付部
3 ナット