(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車両用液圧ブレーキ装置の機能性の検査方法
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20221207BHJP
B60T 8/88 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60T17/22
B60T8/88
(21)【出願番号】P 2021502865
(86)(22)【出願日】2019-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2019063555
(87)【国際公開番号】W WO2020025188
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】102018212850.2
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】メルゲンタラー,ロルフ-ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ブスマン,オトマル
(72)【発明者】
【氏名】ジェシー,ティム-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】テイエレエル,カールステン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,ペーター
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0162338(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016224057(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 15/00-17/22
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用液圧ブレーキ装置の機能性の検査方法であって、車両用ブレーキ装置は、いずれも少なくとも1つの液圧車輪ブレーキ(1)に接続されたマスタブレーキシリンダ(3)と外力式ブレーキ圧力発生器(5)とを備え、前記マスタブレーキシリンダ(3)には該マスタブレーキシリンダを前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)及び前記少なくとも1つの車輪ブレーキ(1)から液圧的に分離可能である分離弁(6)が割当てられているものにおいて、前記マスタブレーキシリンダ(3)が動作していない状態で前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)が起動され、前記車両用液圧ブレーキ装置内の圧力及び/又は前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)の移動が測定され評価され
、
前記車両用ブレーキ装置は、1つずつの外力弁(25)を介して前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)に接続される複数のブレーキ回路(I,II)を備え、前記外力弁(25)のうち1つを相次いで開放することで各ブレーキ回路(I,II)について検査が実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)の移動中に、前記分離弁(6)を閉塞することで前記マスタブレーキシリンダ(3)が前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)から液圧的に分離されることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの車輪ブレーキ(1)に、該車輪ブレーキ(1)を前記マスタブレーキシリンダ(3)及び前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)から液圧的に分離可能である吸込弁(26)が割当てられており、前記車両用ブレーキ装置が液溜め弁(13)を介して前記マスタブレーキシリンダ(3)に結合されたブレーキ液溜め(12)と、シミュレータ弁(9)を介して前記マスタブレーキシリンダ(3)に接続されるペダルストロークシミュレータ(11)とを備えることと、前記液溜め弁(13)及び前記シミュレータ弁(9)が閉塞されて前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)が起動され、前記車両用ブレーキ装置内の圧力及び/又は前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)の移動が測定され評価されることを特徴とする請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液溜め弁(13)又は前記シミュレータ弁(9)が開放されることを特徴とする請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
車両用液圧ブレーキ装置の機能性の検査方法であって、車両用ブレーキ装置は、いずれも少なくとも1つの液圧車輪ブレーキ(1)に接続されたマスタブレーキシリンダ(3)と外力式ブレーキ圧力発生器(5)とを備え、前記マスタブレーキシリンダ(3)には該マスタブレーキシリンダを前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)及び前記少なくとも1つの車輪ブレーキ(1)から液圧的に分離可能である分離弁(6)が割当てられているものにおいて、前記マスタブレーキシリンダ(3)が動作していない状態で前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)が起動され、前記車両用液圧ブレーキ装置内の圧力及び/又は前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)の移動が測定され評価され、
前記車両用ブレーキ装置は、前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)を前記マスタブレーキシリンダ(3)及び前記少なくとも1つの液圧車輪ブレーキ(1)から液圧的に分離可能である外力弁(25)を備えており、前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)が前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)の方向に流路確保可能である逆止弁(23)を通してブレーキ液溜め(12)に接続されていることと、前記外力弁(25)を開放した時に前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)によってブレーキ液が送出され、次いで前記外力弁(25)を閉塞した後に、ブレーキ液が吸込まれ、その後前記外力弁(25)が更に閉塞された時に再度送出され、前記車両用ブレーキ装置内の圧力及び/又は前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)の移動が測定され評価されることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記外力式ブレーキ圧力発生器(5)は、圧力生成用の外力による駆動装置を具備するピストンシリンダユニット(15)を備えることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、該方法によって前記車両用ブレーキ装置から生成される騒音が認識可能ではない騒音中に限り実行されることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文の技術的特徴を有し、マスタブレーキシリンダと外力式ブレーキ圧力発生器とを備える車両用液圧ブレーキ装置の機能性の検査方法に関する。
【0002】
マスタブレーキシリンダは特に、筋力又はアシスト力で動作可能であるマスタブレーキシリンダであって、後者は、通常負圧式ブレーキ倍力装置によって又は例えば電気機械式ブレーキ倍力装置によっても倍力させて筋力でマスタブレーキシリンダを動作させることを意味する。
【0003】
外力式ブレーキ圧力発生器は、外力制動用のブレーキ圧増圧、スリップコントロール中のブレーキ圧増圧及び/又はブレーキ液供給に使用される。かかるスリップコントロールは、例えばアンチロックコントロール、トラクションコントロール及び/又はビークルダイナミクスコントロール、或いは横滑り防止装置であり、これらは日常語ではスキッドコントロールとも呼ばれる。これらのスリップコントロールには、ABS、ASR、FDR又はESPという略語も常用される。スリップコントロールは筋力又はアシスト力制動時、外力制動時、或いは制動なしでも実行することができる。外力制動時には、マスタブレーキシリンダは外力によって生成されるブレーキ圧用の設定点調節器として使用される。
【0004】
外力式ブレーキ圧力発生器は、特にそのピストンがブレーキ圧増圧及び/又はブレーキ液供給のために、例えば電動機の外力によってネジ駆動装置を介してシリンダ内でスライド可能であるピストンシリンダユニットを備える。外力式ブレーキ圧力発生器として使用可能なものには例えば液圧ポンプ、例えばピストンポンプ又は(内接)歯車ポンプもあり、ピストンシリンダユニットをピストンポンプとして理解することもできる。
【0005】
本発明の方法は、1、2及び多系統車両用ブレーキ装置に適用可能であり、2及び多系統車両用ブレーキ装置用の変更を含む。
【0006】
本発明は、通常制動時には何ら影響を及ぼさないので通常は気づかないが、他の不具合の発生時には状況に応じてブレーキ挙動を悪化させる影響を及ぼすことがあるいわゆる「隠れた不具合」を検出するために設けられる。
【背景技術】
【0007】
特許文献1では、それぞれ2つの液圧車輪ブレーキを具備する2つのブレーキ回路を備える液圧外力式車両用ブレーキ装置を開示し、2つのブレーキ回路が外力式ブレーキ圧力発生器及び筋力で動作可能な2系統マスタブレーキシリンダに接続される。これに2つのブレーキ回路が液圧的に外力式ブレーキ圧力発生器に並列に接続されるので、公知の車両用ブレーキ装置はマスタブレーキシリンダ、外力式ブレーキ圧力発生器又はこの両者によって選択的に動作させることができる。公知の車両用ブレーキ装置の外力式ブレーキ圧力発生器はピストンシリンダユニットを備え、そのピストンは電動機を用いて、回転並進切換駆動装置、例えばネジ駆動装置を介してシリンダ内でスライド可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開パンフレット2012/150120A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
請求項1の技術的特徴を有する本発明の方法は、上述のとおり車両用液圧ブレーキ装置の機能性の検査、特に通常は制動時に気づかないいわゆる「隠れた不具合」を検出するために設けられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従ってマスタブレーキシリンダが動作しない時は、外力式ブレーキ圧力発生器は起動させられ、車両用ブレーキ装置における圧力及び/又は外力式ブレーキ圧力発生器の移動が測定され評価される。移動として外力式ブレーキ圧力発生器のピストンのスライド、電動機の回転又はその他を測定することができる。
【0011】
圧力及び/又は移動が通常又は予想される値又は変化を有するかどうか評価される。値が通常又は予想されるものとは相違する場合に、これが不具合を推定させるので、車両用ブレーキ装置を検査して必要に応じて修理する必要がある。
【0012】
マスタブレーキシリンダが動作しない時は、外力式ブレーキ圧力発生器は、マスタブレーキシリンダを経由してブレーキ液溜めまでブレーキ液を押出す又は送出し、(目立った)ブレーキ圧増圧は発生せず、外力式ブレーキ圧力発生器は妨害されずに移動する。ブレーキ圧が上昇する又は外力式ブレーキ圧力発生器の移動が制動された場合、不具合、例えば予期せず閉塞された分離弁によって車両用ブレーキ装置がマスタブレーキシリンダから液圧的に分離されたと推定される。
【0013】
車両用ブレーキ装置が複数のブレーキ回路を備える場合には、各ブレーキ回路を相前後させて個別に外力式ブレーキ圧力発生器に液圧結合することで、どのブレーキ回路で不具合が発生したか確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法の実行時にブレーキ圧増圧が車両ブレーキに発生しない限り、本発明の方法は停止状態でも走行モード時でもいつでも車両ドライバに気づかれずに実行することができる。方法は走行開始前に、例えば車両ドアの開錠若しくは開放、プラグの点火又はエンジンの起動時に実行することができる。機能検査時に少なくとも1つの車輪ブレーキにおいて圧力が増圧した場合には、本発明の方法は好ましくは車両の停止時に実行される。外力式ブレーキ圧力発生器は、例えばマスタブレーキシリンダが動作せず、外力式ブレーキ圧力発生器がマスタブレーキシリンダを経由してブレーキ液溜めまでブレーキ液を押出す又は送出する場合には、圧力を増圧させない。本発明の方法を実行するために、車輪ブレーキにおいて圧力を増圧させないことでこれが動作しないように車輪ブレーキの吸込弁を閉塞することもできる。
【0015】
従属請求項は独立請求項に記載された発明の変形例及び有利な形態を目的とする。
【0016】
明細書及び図面に記載された全ての技術的特徴は、本発明の実施形態においてそれ自体が個別に又は原則的に任意の組合せで実行することができる。請求項の全てではなく、本発明の1又は若干の技術的特徴のみを有する本発明の実施形態は原則的に可能である。
【0017】
本発明は以下において、図面に示した実施形態に基づいてより詳細に説明される。唯一の図は、本発明の方法を説明するための、2つのブレーキ回路を備える外力式車両用ブレーキ装置の液圧回路図である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の方法を説明するための、2つのブレーキ回路を備える外力式車両用ブレーキ装置の液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面はスリップコントロールとそれぞれ2つの液圧車輪ブレーキ1を具備する2つのブレーキ回路I,IIとを備える液圧外力式車両用ブレーキ装置を示す。車両用ブレーキ装置は、ブレーキペダル2で動作可能である2系統マスタブレーキシリンダ3と、外力式ブレーキ圧力発生器5とを備える。マスタブレーキシリンダ3には、それぞれ分離弁6を介して2つのブレーキ回路I,IIが接続される。2つのブレーキ回路のうち1つIIにおいて、圧力センサ7がマスタブレーキシリンダ3に接続される。更にマスタブレーキシリンダ3は、ブレーキペダル2の移動又はマスタブレーキシリンダ3のピストンロッド若しくはピストンのスライドストロークが測定可能であるペダルストロークセンサ8を含む。
【0020】
マスタブレーキシリンダ3の2つのブレーキ回路のうち1つIには、シミュレータ弁9を介して、バネ負荷が加えられたピストン10を備えるピストンシリンダユニットがペダルストロークシミュレータ11として接続される。
【0021】
マスタブレーキシリンダ3は3つのチャンバを具備する無圧のブレーキ液溜め12を含み、マスタブレーキシリンダ3の2つのブレーキ回路は、ブレーキ液溜め12の3つのチャンバのうち2つに接続される。ペダルストロークシミュレータ11がマスタブレーキシリンダ3に接続されるブレーキ回路Iにおいて、ブレーキ液溜め12とマスタブレーキシリンダ3との間に、マスタブレーキシリンダ3の方向に流路確保可能である逆止弁14が液圧的に並列に接続される液溜め弁13が配置される。
【0022】
外力式ブレーキ圧力発生器5は、そのピストン16が電動機17によってネジ駆動装置18を介してピストンシリンダユニット15のシリンダ19内でスライド可能であるピストンシリンダユニット15を備える。外力式ブレーキ圧力発生器5の電動機17は、電動機17の電力消費量を測定するための電流センサ20と、電動機17の回転角を測定するための回転角センサ21とを含む。外力式ブレーキ圧力発生器5のピストンシリンダユニット15のシリンダ19には、圧力センサ22が接続される。
【0023】
外力式ブレーキ圧力発生器5のピストンシリンダユニット15のシリンダ19は、シリンダ19の方向に流路確保可能である逆止弁23を通してマスタブレーキシリンダ12のブレーキ液溜め12の3つのチャンバのうち1つ、即ちマスタブレーキシリンダ3が接続されないチャンバに接続される。更に外力式ブレーキ圧力発生器5のピストンシリンダユニット15のシリンダ19は、ブレーキ管24を通して弁を介設せずにブレーキ液溜め12に直接接続される。外力式ブレーキ圧力発生器5のピストン16はそのスライドの開始時に、このブレーキ管24の開口を経由してピストンシリンダユニット15のシリンダ19に入り込むので、外力式ブレーキ圧力発生器5のピストンシリンダユニット15は、外力式ブレーキ圧力発生器5の動作時にブレーキ液溜め12から液圧的に分離される。
【0024】
外力式ブレーキ圧力発生器5のピストンシリンダユニット15のシリンダ19、したがって外力式ブレーキ圧力発生器5は、1つずつの外力弁25を介して車両用ブレーキ装置の2つのブレーキ回路I,IIに接続される。車両用ブレーキ装置のブレーキ回路I,IIは液圧的に並列にマスタブレーキシリンダ3と外力式ブレーキ圧力発生器5とに接続されるので、車両用ブレーキ装置はマスタブレーキシリンダ3及び/又は外力式ブレーキ圧力発生器5で選択的に動作可能である。
【0025】
常用制動は外力式ブレーキ圧力発生器5を用いた外力制動として行なわれる。このため、ブレーキ圧は外力式ブレーキ圧力発生器5によって生成され、外力弁25が開放されるので、外力式ブレーキ圧力発生器5は車両用ブレーキ装置に液圧結合される。マスタブレーキシリンダ3は分離弁6を閉塞することで車両用ブレーキ装置から液圧的に分離される。これは外力式ブレーキ圧力発生器5並びに車輪ブレーキ1の吸込弁26及び排出弁27によって調節されるブレーキ圧用の設定点調節器として使用される。調節されるブレーキ圧は、圧力センサ7及びペダルストロークセンサ8によって測定されるマスタブレーキシリンダ3内の液圧及び/又はマスタブレーキシリンダ3のピストンストロークに左右される。シミュレータ弁9は常用制動時には開放されるので、マスタブレーキシリンダ3はブレーキ液をペダルストロークシミュレータ11内に押出すことができ、マスタブレーキシリンダ3におけるピストンストローク及びペダルストロークが実現可能になる。
【0026】
外力式ブレーキ圧力発生器5の障害又は故障時には、マスタブレーキシリンダ3を動作させることで二次制動が実現可能になり、分離弁6は開放され外力弁25は閉塞されたままとなる。
【0027】
各車輪ブレーキ1は吸込弁26及び排出弁27に割当てられる。吸込弁26を介して、車輪ブレーキ1は分離弁6と外力弁25との間で2つのブレーキ回路I,IIのうち1つに接続される。排出弁27を介して、車輪ブレーキ1はブレーキ液溜め12に、具体的には本発明の図示及び説明された実施形態においては、外力式ブレーキ圧力発生器5が接続され、マスタブレーキシリンダ3が接続されないチャンバに接続される。各ブレーキ回路I,II及び/又は各車輪ブレーキ1は圧力センサを備えることができる。本発明の図示及び説明された実施形態においては、マスタブレーキシリンダ3及び外力式ブレーキ圧力発生器5の圧力センサ7,22のみが存在する。
【0028】
吸込弁26及び排出弁27は、車両用ブレーキ装置のブレーキ圧制御及び各車輪ブレーキ1における車輪別のブレーキ圧制御が個々に実現可能になる車輪ブレーキ制御弁アセンブリを形成する。こうしてスリップコントロールが実現可能になる。かかるスリップコントロールは、アンチロックコントロール、トラクションコントロール及びビークルダイナミクスコントロール、又は横滑り防止装置であり、これらは日常語ではスキッドコントロールとも呼ばれる。これらのスリップコントロールには、ABS、ASR、FDR又はESPという略語も常用される。かかるスリップコントロールは公知であって、ここでは詳細には説明しない。
【0029】
本発明の図示及び説明された実施形態においては、分離弁6、シミュレータ弁9、液溜め弁13、外力弁25、吸込弁26及び排出弁27は2/2方電磁弁であり、分離弁6、液溜め弁13及び吸込弁26はそれらの電源が切れた基本位置では開放され、シミュレータ弁9、外力弁25及び排出弁27はそれらの電源が切れた基本位置では閉塞される。車輪ブレーキ1における車輪ブレーキ圧の制御可能性を高めるために、吸込弁26は比例サーボ弁である。本発明はこれ以外の実施形態を排除しない。比例サーボ弁とは、吸込弁26が開位置と閉位置ばかりでなく、開位置と閉位置以外に各中間位置を開位置と閉位置との間に実現可能であることを意味する。これ以外の弁6,9,13,25,27は、中間位置なしで開位置と閉位置のみを有する切換弁である。
【0030】
分離弁6の本発明に従う機能性の検査のために、これらは開放したままとし、2つの外力弁25のうち1つは開放され、もう一方の外力弁25は閉塞されたままとする。吸込弁26は開放したままとすることも閉塞されることもできる。電動機17によってネジ駆動装置18を介してピストン16が外力式ブレーキ圧力発生器5のピストンシリンダユニット15のシリンダ19内でスライドすることで、ブレーキ液がシリンダ19から押出される。電動機17による、ピストンシリンダユニット15のシリンダ19内でのピストン16のスライドは、一般的には外力式ブレーキ圧力発生器5の起動又は動作として理解することができる。シリンダ19から押出されるブレーキ液は開放された外力弁25を通って割当てられたブレーキ回路I,IIに、ブレーキ回路I,IIの開放された分離弁6と動作していないマスタブレーキシリンダ3を通ってブレーキ液溜め12に流れ込む。2つのブレーキ回路のうち1つIにおいてブレーキ液は、マスタブレーキシリンダ3から開放された液溜め弁13を通ってブレーキ液溜め12に流れ込む。ブレーキ液溜め12が無圧であるため、生成されるブレーキ圧は全くない又は流れ抵抗のためにいずれにしても無視できる程度であり、これがマスタブレーキシリンダ3に接続された圧力センサ7及び/又は外力式ブレーキ圧力発生器5のシリンダ19に接続された圧力センサ22によって測定される。電動機10、ネジ駆動装置18及びピストン16は制動されずに移動し、これが回転角センサ21によって測定される。更に電動機10の電力消費が電流センサ20によって測定される。圧力が増圧されないので、電動機10がほとんど無抵抗で回転し、その電力消費が小さくなる。ブレーキ圧が増圧し、電動機10の電力消費が上昇し、かつ/又は電動機10が過度に低速で回転すると、最初の高速の回転の後、より低速になる又は停止することもあり、分離弁6は閉塞されるか、又はいずれにしても完全には開放されない。不具合は外力弁25又は液溜め弁13にあると所在する可能性がある。いずれにしても外力制動時に車両用ブレーキ装置の機能性を無条件で損なうわけではないので気づかれないままであるいわゆる「隠れた不具合」は存在する。外力式ブレーキ圧力発生器5の故障時にマスタブレーキシリンダ3によって二次制動すると、閉鎖された分離弁6は深刻な影響を及ぼすことになる。
【0031】
ピストン16のスライド並びに電動機17及びネジ駆動装置18の回転は、一般的には外力式ブレーキ圧力発生器5の移動として理解することができる。
【0032】
もう一方のブレーキ回路II,Iについては、最初開放されていた外力弁25が閉鎖され、最初閉鎖されていた外力弁25が開放されることで検査が繰り返される。
【0033】
分離弁6の機能性の検査は、1つ又は2つの分離弁6が不具合のため閉塞されなければ、増圧が発生しないために車輪ブレーキ1が動作しないため、停止状態でも走行モード時でもいつでも実行することができる。検査の前提条件はマスタブレーキシリンダ3が動作しないことである。
【0034】
補足的に、外力式ブレーキ圧力発生器5のピストンシリンダユニット15のシリンダ19内でのピストン16のスライド中は、その外力弁25が開放されるので、外力式ブレーキ圧力発生器5のシリンダ19に液圧結合されるブレーキ回路I,IIにおいて分離弁6を閉塞することができる。もう一方のブレーキ回路II,Iの分離弁6は開放したまま又は同じく閉塞することができる。ここでこれ以上ブレーキ液を外力式ブレーキ圧力発生器5のシリンダ19からマスタブレーキシリンダ3を通してブレーキ液溜め12内まで押出すことができないことから、シリンダ19内において液圧が増圧され、ピストン16及び電動機17は停止するまで制動される。増圧は、外力式ブレーキ圧力発生器5の圧力センサ22によって、外力式ブレーキ圧力発生器5の電動機17の移動又は制動は、回転角センサ21によって測定可能である。更に電動機10の電力消費が上昇すると、これは電流センサ20によって測定可能である。増圧が発生せず電動機17が制動されないと、分離弁6は閉塞しない。外力制動時に、外力式ブレーキ圧力発生器5によって生成されたブレーキ圧は分離弁6が開放されている場合にはマスタブレーキシリンダ3においても作用するため、不具合が認識されないこともあるので、これもいわゆる「隠れた不具合」となることがある。分離弁6が開放されてマスタブレーキシリンダ3が動作していない時には、外力式ブレーキ圧力発生器5はブレーキ圧力を増圧させることができないので、マスタブレーキシリンダ3を動作させずに外力制動が発生することになれば、不具合が影響を及ぼすことになる。この場合、外力式ブレーキ圧力発生器5はマスタブレーキシリンダ3を通してブレーキ液をブレーキ液溜め12内まで押出す。
【0035】
この検査も、2つのブレーキ回路I,IIにおける分離弁6と外力弁25との相前後した切換によって実行される。検査が走行中に実行されることになれば、吸込弁26が閉塞されることで車輪ブレーキ1が車両用ブレーキ装置から液圧的に分離される。検査が車両の停止状態で実行される場合には、吸込弁26は開放されたままとする又は閉塞することができる。
【0036】
シミュレータ弁9及び液溜め弁13の機能性の検査のために、ペダルストロークシミュレータ11が接続される及び/又は液溜め弁13が配置されるブレーキ回路Iの外力弁25は開放され、シミュレータ弁9及び液溜め弁13は閉塞される。もう一方の外力弁25は閉塞されたままである。検査が走行中に行なわれる場合には、ペダルストロークシミュレータ11が接続されるブレーキ回路Iの吸込弁26は閉塞される。停止状態では吸込弁26は開放されたままとする又は閉塞することができる。ここでブレーキ液を外力式ブレーキ圧力発生器5のシリンダ19から押出すことができないことから、外力式ブレーキ圧力発生器5が起動された場合、外力式ブレーキ圧力発生器5は圧力を生成し、そのピストン16及び電動機17はほとんど移動しない。圧力が増圧されない、電動機10が移動しない及び/又は電動機10が低い電力消費を有する場合には、シミュレータ弁9又は液溜め弁13は開放されている。ペダルストロークシミュレータ11が増圧中には限られたブレーキ液量を収容することから、外力式ブレーキ圧力発生器5のピストン16及び電動機17はここからわずかに移動し、制動されて、シミュレータ弁9が開放されている場合には、外力式ブレーキ圧力発生器5による増圧が少し持続する。分離弁13が開放されている場合には、外力式ブレーキ圧力発生器5がブレーキ液をブレーキ液溜め12内まで押出し、ブレーキ圧が増圧せず、外力式ブレーキ圧力発生器のピストン16及び電動機17は制動されない。シミュレータ弁9又は液溜め弁13が閉塞されていないかどうか確認するために、これら2つの弁9,13を交互に開放することができる。
【0037】
外力式ブレーキ圧力発生器5が戻りストローク時にブレーキ液をブレーキ液溜め12から再度充填しているかどうかの検査のために、外力式ブレーキ圧力発生器5が起動され、外力弁25のうち少なくとも1つが開放されるので、外力式ブレーキ圧力発生器がブレーキ液を開放された分離弁6と動作していないマスタブレーキシリンダ3を通して液溜め12内まで押出す。次いで2つの外力弁25が閉塞され、外力式ブレーキ圧力発生器5が逆方向に移動し、即ちピストン16が容積拡張及び吸込みの方向にシリンダ19内をスライドする。外力弁25が閉塞されているために、外力式ブレーキ圧力発生器5が逆方向への移動時に逆止弁23を通してブレーキ液をブレーキ液溜め12から吸込む。例えば逆止弁23が開放されないと、これが外力式ブレーキ圧力発生器5のシリンダ19内の圧力低下並びに外力式ブレーキ圧力発生器のピストン16及び電動機17の遅れ又は停止によって検知可能となる。ブレーキ液溜め12からブレーキ液を再度充填することは、ブレーキパッド摩耗を補うため又はピストン16が外力式ブレーキ圧力発生器5のシリンダ19内で複数回前後にスライドされる比較的長時間のスリップコントロール時及びこれが車輪ブレーキ1内に押出し、スリップコントロール時に排出弁27を通ってブレーキ液溜め12内に流れ込むブレーキ液を補充するために必要である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の車両用ブレーキ装置の機能性の検査は、好ましくは外力式ブレーキ圧力発生器5の動作が認識されないほど大音量である走行時、エンジン及び/又は周囲の騒音があるところに限り実行される。
【符号の説明】
【0039】
1 車輪ブレーキ
3 マスタブレーキシリンダ
5 外力式ブレーキ圧力発生器
6 分離弁
9 シミュレータ弁
11 ペダルストロークシミュレータ
12 ブレーキ液溜め
13 液溜め弁
23 逆止弁
25 外力弁
I,II ブレーキ回路