IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロッテ ケミカル コーポレーションの特許一覧

特許7190040圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器
<>
  • 特許-圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器 図1
  • 特許-圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器 図2
  • 特許-圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器 図3
  • 特許-圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器 図4
  • 特許-圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器 図5
  • 特許-圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器 図6
  • 特許-圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器 図7
  • 特許-圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/16 20060101AFI20221207BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F17C1/16
F16J12/00 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021529361
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 KR2019016634
(87)【国際公開番号】W WO2020111840
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0152329
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ グン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キョ ミン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ヨン グァン
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-137433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0144866(US,A1)
【文献】特開2018-004072(JP,A)
【文献】国際公開第2018/002788(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017201672(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の内外部を連結する通孔が形成されたボスボディ;および
前記ボスボディの外面を取り囲んで半径方向の外側に延び、外側面がライナーの開口面に面接触して接合されるボス接合部であって、前記外側面が、前記ボス接合部の上面と下面を連結する3個以上の線分で構成され、膨らんだコーナーと凹んだコーナーをそれぞれ少なくとも1つ以上含む断面形状を有するボス接合部;を含み、
前記外側面は、互いに離隔した側面部分と前記側面部分の間を連結する段差面で構成された階段式断面を具備することを特徴とする、圧力容器用ボス。
【請求項2】
前記側面部分それぞれはテーパーがつけられるように形成されることを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項3】
前記ボス接合部の下面側の第1側面部分と前記ボス接合部の上面側の第2側面部分は互いに反対方向にテーパーがつけられることを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項4】
記第1側面部分は前記第2側面部分より中心線から大きな離隔距離を有することを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項5】
前記第1側面部分は前記ボス接合部の下面側に行くほど中心線からの半径方向の距離が減少する形態にテーパーがつけられることを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項6】
前記ライナーの開口面と前記ボス接合部の外側面が接合された界面のうち少なくとも一部はレーザー融着されることを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項7】
前記ボスボディは金属材で形成され、
前記ボス接合部はプラスチック素材またはプラスチック複合材であることを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項8】
前記ボス接合部と前記ボスボディを互いに固定するための固定溝と固定突起方式の物理的結合部をさらに有することを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項9】
前記ボスボディは下面側から前記ボス接合部の下面に沿って半径方向に拡張形成され、複数の前記固定溝が備えられたフランジ部が形成され、
前記ボス接合部には、前記固定溝を通じて突出し、端部が半径方向に拡張されて前記フランジ部に係止される前記固定突起が備えられたことを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項10】
前記フランジ部は少なくとも前記ボス接合部の下面を覆うことができる大きさで形成されることを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項11】
前記ボス接合部はプラスチック素材に炭素繊維またはガラス繊維が補強された繊維強化複合材で形成されることを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項12】
前記ボス接合部のプラスチック素材は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリアミド系樹脂のうち少なくとも一つを含む複合樹脂であることを特徴とする、請求項に記載の圧力容器用ボス。
【請求項13】
圧力容器の内外部を連結する通孔が形成されたボスボディ;および
前記ボスボディの外面を取り囲んで半径方向の外側に延び、外側面がライナーの開口面に面接触して接合されるボス接合部であって、前記外側面が、前記ボス接合部の上面と下面を連結する3個以上の線分で構成され、膨らんだコーナーと凹んだコーナーをそれぞれ少なくとも1つ以上含む断面形状を有するボス接合部;を含み、
前記ボスボディの外周面を取り囲み、前記ボス接合部の内部に延びた金属リングが備えられることを特徴とする、圧力容器用ボス。
【請求項14】
プラスチック素材のライナー;
通孔が形成された金属材のボスボディと;プラスチック素材またはプラスチック複合材で形成され、前記ボスボディの外面を取り囲んで半径方向の外側に延長形成され、外側面が前記ライナーの開口面に面接触して接合され、前記外側面は下面側の第1側面部分と上面側の第2側面部分と前記第1および第2側面部分の間を連結する段差面を具備した断面を有するものの、前記第1側面部分は下面側に行くほど通孔の中心線からの半径方向への距離が減少するようにテーパーがつけられ、前記第2側面部分は前記第1側面部分と反対方向にテーパーがつけられ、前記ボスボディとの物理的固定のための物理的結合部を具備し、前記ボスボディと一体に成形されるボス接合部;を含むボス;および
前記ライナーの外周面を取り囲む複合材シェルを含むことを特徴とする、圧力容器。
【請求項15】
前記ライナーは、前記ボス接合部の外側面と前記ライナーの開口面が面接触して接合されるように、ブロー成形を通じて前記ボスと一体に成形されたことを特徴とする、請求項14に記載の圧力容器。
【請求項16】
前記第2側面部分と、前記第1側面部分と前記第2側面の間に位置する前記段差面のうち少なくともいずれか一か所はレーザー融着されることを特徴とする、請求項14または請求項15に記載の圧力容器。
【請求項17】
前記ボスボディは前記ボス接合部の下面に沿って半径方向に延長形成されたフランジ部を具備し、
前記物理的結合部は、前記フランジ部に形成された複数の固定溝と;前記ボス接合部を前記ボスボディと一体に成形する時に形成され、前記固定溝を通じて突出し、端部が半径方向に拡張されて前記フランジ部に係止される固定突起を含むことを特徴とする、請求項14に記載の圧力容器。
【請求項18】
前記フランジ部は外側端部が前記ライナーと接するように延長形成されたことを特徴とする、請求項17に記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力容器に関し、さらに詳細には、高圧ガスの貯蔵などに使われる圧力容器でポートを形成する圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力容器は、内部に酸素、天然ガス、窒素、水素、プロパンおよびその他の燃料の加圧流体を貯蔵するために一般的に使われる。
【0003】
圧力容器は使用材料と複合材料の強化方式によって一般的に4つのTYPEに分類される。このうち、TYPE-4の圧力容器は、プラスチック素材のライナーに樹脂を含浸させた炭素繊維やガラス繊維を円周方向と長さ方向に巻いて作った複合材圧力容器であって、プラスチック素材のライナーは荷重をほとんど負担せず、ガスが漏れることを防止する役割をする。このようなTYPE-4の圧力容器は、軽量化、安定性、および性能面で優秀であるため圧縮天然ガス自動車用燃料貯蔵タンクとしてすでに広く使われており、最近は水素燃料電池自動車の燃料タンクとして開発されて大きく注目を浴びている。
【0004】
このような圧力容器において、内部と連通する部分であるポートは燃料注入口をなしているが、ポートは金属素材で製作されるレギュレータまたはバルブとの堅固な結合およびねじ山の損傷防止が可能であるように、従来には金属材のボス(boss)をプラスチック素材のライナーと結着してポートを形成していた。
【0005】
ところが、プラスチック素材のライナーと金属材のボスは互いに異種の材質であるため、接着剤を使って結合するのが難しい。このような理由で、例えば、200~700barの高圧の気体燃料を圧力容器に貯蔵する場合、高い圧力によってプラスチック素材のライナーと金属材のボスの結合部分でガスが漏れたり(leak)、ボスがライナーから離脱する恐れがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ライナーとの界面接合力が向上した構造の圧力容器用ボスおよびこれを具備した圧力容器を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明はプラスチック素材で形成されたライナーと接合する部分がプラスチックまたは繊維強化プラスチックで形成されて、ライナーとの界面接合力が向上した圧力容器ボスおよびこれを具備した圧力容器を提供することを他の目的とする。
【0008】
また、本発明は金属材のボスボディとプラスチックまたは繊維強化プラスチックで形成されたボス接合部が一体型に形成された、圧力容器ボスおよびこれを具備した圧力容器を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、圧力容器の内外部を連結する通孔が形成されたボスボディ;および前記ボスボディの外面を取り囲んで半経方向の外側に延び、外側面がライナーの開口面に面接触して接合されるボス接合部であって、前記外側面が、ボス接合部の上面と下面を連結する3個以上の線分で構成され、膨らんだコーナーと凹んだコーナーをそれぞれ少なくとも1つ以上含む断面形状を有するボス接合部;を含む圧力容器用ボスを提供する。
【0010】
本発明の一側面によると、前記外側面は互いに離隔した側面部分と前記側面部分の間を連結する段差面で構成された階段式断面を具備する。
【0011】
本発明の一側面によると、前記側面部分のそれぞれはテーパーがつけられるように形成される。
【0012】
本発明の一側面によると、前記ボス接合部の下面側の第1側面部分は上面側の第2側面部分より中心線から大きな離隔距離を有する。
【0013】
本発明の一側面によると、前記第1側面部分と前記第2側面部分は互いに反対方向にテーパーがつけられるが、前記第1側面部分は前記ボス接合部の下面側に行くほど中心線からの半経方向の距離が減少する形態でテーパーがつけられる。
【0014】
本発明の一側面によると、前記ライナーの開口面と前記ボス接合部の外側面が接合された界面のうち少なくとも一部はレーザー融着され、第2側面と段差面がレーザー融着され得る。
【0015】
本発明の一側面によると、前記ボスボディは金属材で形成され、前記ボス接合部はプラスチック素材またはプラスチック複合材を射出して前記ボスボディと一体に成形され、前記複合材はプラスチック材料に炭素繊維またはガラス繊維が補強された繊維強化複合材で形成され得、前記ボス接合部のプラスチック素材は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはポリアミド系樹脂のうち少なくとも一つを含む複合樹脂で形成され得る。
【0016】
本発明の一側面によると、前記ボス接合部および前記ボスボディは固定溝と固定突起方式の物理的結合部を通じて追加で固定されるように一体に射出され、このために、前記ボスボディは下面側から前記ボス接合部の下面に沿って半径方向に拡張形成され、複数の前記固定溝が形成されたフランジ部を具備し、前記ボス接合部は前記固定溝を通じて突出し、端部が半径方向に拡張されて前記フランジ部に係止される固定突起が備えられるように射出される。
【0017】
本発明の一側面によると、前記ボスボディの外周面を取り囲み、前記ボス接合部の内部に延びた金属リングが備えられる。
【0018】
本発明の他の側面によると、プラスチック素材のライナー;通孔が形成された金属材のボスボディと;プラスチック素材またはプラスチック複合材で形成され、前記ボスボディの外面を取り囲んで半経方向の外側に延長形成され、外側面が前記ライナーの開口面に面接触して接合され、前記外側面は下面側の第1側面部分と上面側の第2側面部分と前記第1および第2側面部分の間を連結する段差面を具備した断面を有するものの、前記第1側面部分は下面側に行くほど通孔の中心線からの半径方向への距離が減少するようにテーパーがつけられ、前記第2側面部分は前記第1側面部分と反対方向にテーパーがつけられ、前記ボスボディとの物理的固定のための物理的結合部を具備し、前記ボスボディと一体に成形される、ボス接合部;を含むボス;および前記ライナーの外周面を取り囲む複合材シェルを含む圧力容器を提供する。
【0019】
本発明の他の側面によると、前記ライナーは、前記ボスの外側面と前記ライナーの開口面が面接触して接合するようにブロー成形を通じて前記ボスと一体に成形される。
【0020】
本発明の他の側面によると、前記第2側面部分と前記第1側面部分と前記第2側面の間に位置する段差面のうち少なくともいずれか一か所にはレーザー融着が遂行されてレーザー融着界面が形成される。
【0021】
本発明の他の側面によると、前記物理的結合部は前記ボスボディの下面から前記ボス接合部の下面に沿って半径方向に延長形成されたフランジ部に形成された複数の固定溝と;前記ボス接合部を前記ボスボディと一体に成形する時に形成され、前記固定溝を通じて突出し、端部が半径方向に拡張されて前記フランジ部に係止される固定突起で形成される。
【0022】
本発明の他の側面によると、前記フランジ部は少なくとも前記ボス接合部の下面と同一またはより大きく形成されて前記ボス接合部の下面を覆うように形成され得る。また好ましくは、前記フランジ部が外側端部が前記ライナーと接して前記ライナーとの間に段差が形成されないように延長形成され得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、圧力容器において、ライナーとボスの界面接合力が向上してライナーと圧力容器ボスの界面でのガス漏れ(leak)遮断効果が優秀な圧力容器を提供することができる。
【0024】
本発明によると、プラスチック素材で形成されたライナーと接合するボスがプラスチックまたは繊維強化プラスチックで形成されたボス接合部を具備して、ライナーとボス接合部間の同種素材の接合がなされるため界面接合力が向上し、レーザー融着を通じて追加的な界面接合力の向上効果を有することができる。
【0025】
本発明によると、ボスが物理的結合部を有する異種素材射出で形成されるため、ボスが異種素材射出で形成されても構造的に安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例に係る圧力容器の部分断面図である。
【0027】
図2】本発明に係る圧力容器の部分断面斜視図である。
【0028】
図3】本発明の実施例に係る圧力容器でライナーとボスの融着界面を説明するための図面である。
【0029】
図4】本発明の実施例に係るボスでフランジ部の一変形例を説明するための図面である。
【0030】
図5】本発明の実施例に係るボスでフランジ部の他の変形例を説明するための図面である。
【0031】
図6】本発明の実施例に係る圧力容器でボス接合部の外側面の形状による、ライナーとボスの接合界面での結合力を対比した構造解析結果を示す図面である。
【0032】
図7】本発明の実施例に係る圧力容器で複合材シェルが適用された状態での構造解析結果を説明するための図面である。
【0033】
図8】本発明の実施例に係る圧力容器用ボスでレーザー融着界面の効果を確認するための構造解析結果を示すための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、実施例を本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。各図面の説明において、類似する参照符号を類似する構成要素に対して使用した。本発明で構成要素を指称する用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使われる。本出願で使った用語は単に特定の実施例を説明するために使われたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。
【0035】
以下、添付された図面を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0036】
図1は本発明の実施例に係る圧力容器の部分断面図であり、図2は本発明に係る圧力容器の部分断面斜視図である。
【0037】
本発明の実施例に係る圧力容器1は、中空のライナー10と、前記ライナー10の開口12に提供されて圧力容器のポートを形成するボス20を含む。また、圧力容器1はライナー10の外周面にガラス繊維層または炭素繊維層で形成された複合材シェル30(図1では複合材シェルの一部のみを図示する)を含む。
【0038】
本発明の実施例によると、ライナー10はプラスチック素材で形成され得、圧力容器1の内部に収容された高圧のガスが漏れることを防止する。
【0039】
図面に図示された通り、本発明の実施例に係るボス20はライナー10の開口12に配置されてポートを形成する。本発明の実施例に係る圧力容器の製造方法によると、ボス20が提供され、ブロー成形(blow molding)等を通じてライナー10が形成されながらボス20とライナー10は一体に成形され得る。
【0040】
ボス20はボスボディ210とボス接合部260を含む。本発明の実施例によると、ボスボディ210は金属材で形成され、ボス接合部260はプラスチック素材またはプラスチック素材を含む繊維強化複合材で形成され得、異種素材射出を通じてボスボディと一体に成形され得る。すなわち、金属材のボスボディ210をインサート金型内に配置し、ボス接合部260を形成する素材を射出するインサート射出を通じて一体に成形され得る。
【0041】
ボスボディ210は、圧力容器1の外側に位置する上面211と圧力容器1の内側に位置する下面212の間で、中心部に長さ方向に通孔230が形成された円筒の形状を具備する。本明細書で上部および下部は、図1に図示された圧力容器1を、ボス20が上側に位置するように立てた状態を前提とするものであり、図1を基準として右側が圧力容器1の上部側となり、左側が圧力容器1の下部側となる。
【0042】
通孔230は圧力容器1の内外部を連結して圧力容器1の内部に貯蔵されるガスの流動経路となる、水素燃料電池自動車の場合には、ボスボディ210にレギュレータまたはバルブなどが結合されて燃料電池に水素燃料が供給され得る。
【0043】
ボス接合部260はボスボディ210の下部でボスボディ210の外周面を取り囲んで半経方向の外側に延びて形成される。ボス接合部260はライナー10の開口12面に面接触する外側面270を有する円形プレートの形態または多角形プレートの形態で形成される。
【0044】
ボス接合部260は外側面270が上面と下面を連結する3個以上の線分で構成され、膨らんだコーナー274aと凹んだコーナー274bを少なくとも1つ以上含む断面形状を有する。外側面270は互いに離隔した少なくとも2個の側面部分272、276と前記少なくとも2個の側面部分272、276の間を連結する段差面274を含むことができ、これによって外側面270は側面部分272、276と段差面274で形成される階段式断面を有する。
【0045】
側面部分272、276はテーパーがつけられるように形成され得る。したがって、側面部分272、276はある一側から反対側の他側に中心線から半経方向の距離が変更されるように傾斜して形成される。また、側面部分272、276は通孔230を貫通する中心線から半径方向への離隔距離が互いに異なるように形成され得る。本明細書でテーパーがつけられた側面部分272、276の離隔距離は、断面上で中心線から半径方向への距離が最も遠い地点までの距離と定義される。図1を参照すると、第1側面部分272の離隔距離は中心線から膨らんだコーナー274aまでの距離であり、第2側面部分274の離隔距離は中心線から凹んだコーナー274bまでの距離である。段差面274は断面において膨らんだコーナー274aと凹んだコーナー274bを結ぶ線分と定義される。ボス接合部260は各側面272、276の半径方向への離隔距離および側面部分のテーパーがつけられた方向を異ならせて多様な形態の外側面を有することができる。
【0046】
図面を参照すると、本発明の実施例による外側面270は、下面側に位置した第1側面部分272と上面側に位置する第2側面部分276を含む。第1側面部分272が第2側面部分276より中心線から大きな離隔距離を有して配置され、第1側面部分272と第2側面部分276の間の段差面274を通じて連結される。また、第1側面部分272と第2側面部分276は互いに反対方向にテーパーがつけられる。この時、第1側面部分272は下面側に向かって中心線からの距離が減少するようにテーパーがつけられ、第2側面部分276は上面側に向かって中心線からの距離が減少するようにテーパーがつけられることが好ましい。これによって、第1側面部分272と第2側面部分276は互いに反対となる傾斜を有する円錐または角錐の外周面をなすことができる。このため、図1の断面図から見る時、第1側面部分272と第2側面部分276は互いに反対となる傾斜を有する斜面を形成する。しかし、本発明は第1側面部分272および第2側面部分276の中心線からの距離が次第に階段式に減少するようにテーパーがつけられることを排除しない。この場合、第1および第2側面部分276の階段形態の輪郭を有する。
【0047】
本発明の実施例によると、圧力容器1において、ボスボディ210の上面211側から下面212側にボス20を透視的に観察する時、ボス接合部260の第2側面部分276と段差面274が観察され得る。
【0048】
圧力容器1の製造時にライナー10はボス20と、例えば、ブロー成形(blow molding)を通じて、一体に成形され得る。ライナー10と一体にボス20を成形する過程で、ライナー10の開口12面と、ここで面接触するボス接合部260の外側面270は一体に接合される。また、ボス接合部260の下面はライナー10の内部端部側の表面と並んでおり、ボス接合部260の上面はライナー10の外部端部側の表面と並んでいるように形成される。
【0049】
本発明の実施例に係る圧力容器において、互いに接合されるライナー10の開口12面とボス接合部260の外側面270はいずれもプラスチック素材であるため、一体に成形する工程で、界面の間で堅固な接合を形成することが可能となる。
【0050】
図3の(a)と(b)は、本発明の実施例に係る圧力容器のポートでライナーとボス接合部の間のレーザー融着界面を説明するための図面である。
【0051】
本発明の実施例によると、ボス接合部260とライナー10の接合界面に接着力を向上させるために、融着界面を形成する。このために、レーザー融着、熱融着、圧着融着などが遂行され得る。図3はライナー10とボス接合部260の接合界面のうち、第2側面部分276と段差面274にレーザーを利用してレーザー融着界面が形成された実施例を示す。
【0052】
前述した通り、本発明の一実施例によると、第2側面部分276および段差面274がボスボディ210の上面側に向かう表面を有するようになるため、レーザーの浸透が容易である。したがって、ボスボディ210の上面側でレーザーを利用して、第2側面部分276および段差面274での接合界面に融着界面279を容易に形成することができる。これによってライナー10とボス20の接合力を向上させる。レーザー融着界面279は第2側面部分276、段差面274を含んでライナー10とボス接合部260が接するすべての界面に形成することができ、第2側面部分276および段差面274に限定されないが、少なくとも第2側面部分276および段差面274のうちいずれか一つ、より好ましくは、少なくとも第2側面部分276および段差面274にレーザー融着界面を形成する。
【0053】
図3の(b)は、本発明の実施例により、レーザー融着界面279がボス20のボス接合部260とライナー10の界面に沿って形成されたものを示す。ライナー10とボス接合部260の間に形成されるレーザー融着界面279は、ライナー10の外側の表面から10mm以内の深さで形成されることが好ましい。すなわち、段差面274はライナー10の外側の表面から10mm以内で形成されることが好ましい。これを通じてレーザーの浸透性能を向上させてレーザー融着界面279を通じてさらに堅固に形成することができる。
【0054】
再び図1および図2を参照すると、前述した通り、本発明の実施例によるボスボディ210とボス接合部260は異種素材で形成され、インサート射出を通じて一体に形成され得る。
【0055】
ボスボディ210はアルミニウム素材を切削加工して形成され得る。
【0056】
ボス接合部260はプラスチック素材またはプラスチック素材に繊維が補強された繊維強化複合材で形成される。ここで、プラスチック素材は、ポリオレフィン系樹脂(例えば、HDEP、PPなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、PA6、PA66等)またはこれらを含む複合プラスチック素材であり得る。
【0057】
繊維強化複合材は前記のようなプラスチック素材に炭素繊維(CF)またはガラス繊維(GF)が含まれた短繊維繊維強化複合材(SFT、Short-Fiber reinforced thermoplastic)、または長繊維繊維強化複合材(LFT、Long-Fiber reinforced Thermoplastic)で形成されることが好ましい。
【0058】
本発明の実施例によると、ボス接合部260が繊維強化複合材で形成される場合、ここに含まれる炭素繊維またはガラス繊維はボス接合部260の全体重量対比5~60wt%が含まれることが好ましい。
【0059】
本発明の実施例によると、ライナー10はプラスチック素材で形成され、ライナー10の開口面に面接触して結合されるボス20のボス接合部260が同種の素材であるプラスチック素材またはプラスチック素材を含む繊維強化複合材であるため、ライナー10とボス20の間の界面接合は同種素材間の界面接合を形成する。したがって異種素材接合界面で発生し得る結合力の低下およびガス漏れ(leak)の遮断性能を向上させるのにより有利である。ライナー10とボス20の間の界面の破損および高圧気体の漏れを抑制できるようになる。また、前述した通り、レーザー融着界面279がさらに備えられる場合、より好ましい。
【0060】
ボスボディ210の外周面を取り囲むボス接合部260の内部には、ボスボディ210を取り囲んで金属リング290が設置されてボスボディ210とボス接合部260の間のシーリング性能が強化されるようにする。本発明の実施例によると、金属リング290はアルミニウム素材(Al6061)で製作された。
【0061】
本発明の実施例によると、ボスボディ210とボス接合部260は、固定溝222と固定突起262によって物理的結合部を有する形態で一体に射出される。したがってボス20が金属材と、複合樹脂または繊維強化複合材の異種射出で形成されても結合力を向上させることができる。
【0062】
図1および図2に図示された通り、ボスボディ210は下面からボス接合部260の下面に沿って半径方向に拡張された円形プレート状のフランジ部220を含む。フランジ部220は圧力容器の長さ方向の圧力に対する抵抗力を増大させる。また、フランジ部220には複数個の貫通孔の形態の固定溝222が形成されて環状に配置される。そして、それぞれの固定溝222を貫通してボス接合部260から延びた固定突起262が突出する。固定突起262は端部が外側に拡張されて係止部を形成することによって固定突起262が固定溝222から離脱することを防止する。
【0063】
本発明の実施例によると、ボス製作時に、インサート射出を通じてボスボディ210とボス接合部260が一体に成形され、固定溝222と固定突起262を形成させて物理的に互いに拘束されるように製造される。成形過程でボスボディ210とボス接合部260の接合と物理的結合が同時に形成されながら一体に成形されるため、ボスボディ210とボス接合部260は堅固に一体性を維持することができる。
【0064】
図4および図5は、本発明の実施例に係るボスボディ210でフランジ部220の変形例を説明するための圧力容器の部分断面図である。
【0065】
図4を参照すると、ボスボディ210のフランジ部220は図1に図示された実施例と対比して、ボス接合部260の下面に対応する大きさで拡張形成されてボス接合部260の下面を覆うように形成される。フランジ部220の半径方向の外側端部がボス接合部260の第1側面部分と並んで形成される。フランジ部220に形成される固定溝222は通孔230を中心に2列の同心円に沿って形成されて固定突起262が結合される。フランジ部220がボス接合部260に対応して拡張形成されるため、固定溝222および固定突起262が2列の同心円配置をなしながら物理的結合部を形成するのに有利であり、ボス20自体の内圧安定性を向上させることが可能である。
【0066】
また、金属材のフランジ部220が異種射出されたプラスチック素材またはプラスチック素材を含む複合材で形成されたボス接合部260を覆って形状を支えることになるため、圧力容器の内部に水素ガスの充填/倍出時の圧力差によるボス接合部260の形状の変形を抑制できる長所がある。
【0067】
図5を参照すると、ボスボディ210のフランジ部220は図4に図示された変形例と対比してさらに大きく拡張形成されて、フランジ部220の外側端部がライナー10と接触して接するように形成される。フランジ部220が半径方向にライナー10と接するように拡張形成されることによって、ライナー10とフランジ部220に段差が発生することを防止することができる。ライナー10とフランジ部220の間に段差がある場合、該当部分に応力が集中する可能性があるが、図5に図示された変形例による場合、このような可能性を遮断することができる。また、図5に図示された変形例による場合、高い圧力が作用してもボス接合部260とライナー10間の広がりをさらに防止することができる。したがって、ボス20の内圧安定性がさらに向上する。
【0068】
図6は圧力容器でボス接合部の外側面形状による、ライナーとボス界面間の結合力を比較実験した構造解析結果を示す図面である。
【0069】
図6の(a)~(c)でボスボディはAl6061素材で製作され、ボス接合部はガラス繊維が20wt%、残りはポリプロピレン(PP)からなる長繊維強化プラスチック(LFT)で製作された。ライナーはPA6樹脂を利用してブロー成形で成形方式で製作されるものを例にした。実施例1である図6の(a)および比較例1および2である図6の(b)および(c)ではレーザー融着界面が形成されていない状態で実験された。
【0070】
図6の(a)~(c)を互いに対比すると、同一の内圧条件(1,925bar)下で、実施例1はボス接合部とライナー間で一部に広がりが発生してはいるものの、ボスの離脱は発生していないことを確認することができる。しかし、ボス接合部の外側面が均一な側面形態の比較例1と、ボスボディの外側方向にテーパーがつけられた単一面で形成された比較例2で、ボスがライナーから離脱する結果を確認した。これから本発明の実施例に係る外側面の形状がライナーとの結合強度を向上させるということを確認することができる。
【0071】
図6の(a)の実施例1においてもボス接合部とライナー間の界面に一部の広がりが発生したが、図6のテストはライナーの外部にボスとライナーを取り囲む複合材シェルを形成していない状態で遂行されたものであって、図7のように、複合材シェルを形成する場合、ライナーとボス間の界面の破壊を防止することができる。
【0072】
図7は、図6の(a)で例示された実施例1に複合材シェルを適用して構造解析した結果を示す図面である。図7の構造解析ではライナーの外面およびライナーの外部に導き出されたボスボディの外周面を複合材シェルが取り囲む。複合材シェルは炭素繊維強化複合材(Toray T770)で形成されたものを例にした。図7のテストは1、925barの設計破裂圧を加えて解析された結果である。
【0073】
図7の実施例1の結果を見ると、炭素繊維層で形成された複合材シェル周辺の応力値は最大2、732Mpaが導き出されたが、設計破裂圧まで到達する条件でも実施例1のボスが圧力容器から離脱したり破損する部分は表れなかった。
【0074】
図8は、本発明の実施例に係る圧力容器用ボスでレーザー融着界面の効果を確認するための構造解析結果を示すための図面である。実施例2では図3に図示された通り、レーザー融着界面を形成した。この場合、ライナーとボスの結合状態でも、内部圧によってボス接合部とライナーの界面の間で広がりが抑制されることを確認することができる。すなわち、レーザー融着界面の形成はライナーとボスの間の接合強度をより向上させることができ、これを通じてガスの漏れ防止性能がより向上し得ることを確認することができる。
【0075】
以下の[表1]は本発明の実施例に係る圧力容器用ボスでの軽量化効果を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例3は、ボスボディはアルミニウム素材(Al6061)で製作し、PA樹脂にガラス繊維が強化されたGF LFT(20%)でボス接合部を異種射出を通じて一体に製作した場合であり、実施例4は、実施例3と対比して、炭素繊維が強化されたCF LFT(20%)でボス接合部を異種射出を通じて一体に製作した場合であり、実施例5は、実施例3と対比して、PA樹脂でボス接合部を異種射出を通じて一体に製作した場合であり、比較例3は、アルミニウム素材(Al6061)でボスとボス接合部を一体に成形した例に関するものである。[表1]によると、100%アルミニウム素材で形成されたボス(比較例3)と対比して、実施例3~実施例5において25~27%の軽量化効果を達成できることを確認することができる。したがって、ボスボディとボス接合部を異種素材射出によって一体に成形した実施例の場合、容器製品の重量効率を高める効果をさらに達成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8