IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7190045自動化されたパーキングブレーキを運転するための方法並びに相応の装置
<>
  • 特許-自動化されたパーキングブレーキを運転するための方法並びに相応の装置 図1
  • 特許-自動化されたパーキングブレーキを運転するための方法並びに相応の装置 図2
  • 特許-自動化されたパーキングブレーキを運転するための方法並びに相応の装置 図3
  • 特許-自動化されたパーキングブレーキを運転するための方法並びに相応の装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】自動化されたパーキングブレーキを運転するための方法並びに相応の装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20221207BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60T7/12 A
B60T13/74 G
B60T13/74 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021534348
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2019082691
(87)【国際公開番号】W WO2020126361
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】102018221953.2
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ズセク,ウルリヒ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-130857(JP,A)
【文献】特開2005-247306(JP,A)
【文献】特開2014-051202(JP,A)
【文献】特開2005-067409(JP,A)
【文献】特開平09-191688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0224647(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0025169(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0356330(US,A1)
【文献】国際公開第2017/097510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-17/22
H02P 4/00
H02P 25/08-25/098
H02P 29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の締付力を設定するための電気式のアクチュエータ(2)を有する、自動車用の自動化されたパーキングブレーキ(13)を運転するための方法において、
前記方法が少なくとも、
・前記電気式のアクチュエータ(2)の惰性回転を算出するステップと、
・前記所定の締付力を前記電気式のアクチュエータ(2)の算出された惰性回転を考慮して設定するステップと、
を含有している、自動化されたパーキングブレーキ(13)を運転するための方法。
【請求項2】
前記方法がさらに、
・惰性回転による締付力上昇を算出するステップ、
・惰性回転の終了後に所定の締付力を得るために前記電気式のアクチュエータ(2)を制御終了する時点を算出するステップ、
のうちの少なくとも1つのステップを含有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記電気式のアクチュエータ(2)の制御終了を、前記所定の締付力が得られる前に行う、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記電気式のアクチュエータ(2)の制御終了を、前記所定の締付力が前記電気式のアクチュエータ(2)の惰性回転に基づいて得られるように行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記電気式のアクチュエータ(2)を制御終了するための時点を算出し、前記時点を、前記電気式のアクチュエータ(2)の惰性回転が得られた後に前記所定の締付力が設定されるように決定する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記算出された惰性回転に基づいて締付力上昇の算出を行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記電気式のアクチュエータ(2)の惰性回転による締付力上昇の算出を、
・モータ抵抗(RM)、
・モータ定数(KM)、
・ブレーキキャリパ剛性(Stiff)、
・アイドリング電流
のファクターのうちの少なくとも1つを考慮して行う、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記モータ抵抗(RM)の算出を、前記パーキングブレーキ(13)のスイッチオン過程中に電流値および/または電圧値を評価することによって行う、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記モータ定数(KM)の算出を、前記パーキングブレーキ(13)のスイッチオン過程中に電流値および/または電圧値を評価することによって行う、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキキャリパ剛性(Stiff)の算出を、前記パーキングブレーキ(13)の締付過程中に行う、請求項7記載の方法。
【請求項11】
複数の所定の締付力段階を、前記パーキングブレーキ(13)の締付過程中に設定する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法の使用法において、
・車両がブレーキテスタモードにあるときの状況、
・前記パーキングブレーキ(13)によって車両の減速が実行されるときの状況、
のうちの少なくとも1つの状況における、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法の使用法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実行するために設計された装置(1,9,13,15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の締付力を設定するための電気式のアクチュエータを有する、自動車用の自動化されたパーキングブレーキを運転するための方法に関し、この方法は、少なくとも、
・電気式のアクチュエータの惰性回転を算出するステップと、
・所定の締付力を電気式のアクチュエータの算出された惰性回転を考慮して設定するステップと、を含有している。さらに本発明は、この方法の使用法、並びにこの方法を実行するために設計された装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、例えば電気機械式のパーキングブレーキが公知である。このシステムは、例えばホイールブレーキに電気機械式の調整器を有している。電動機を介してトルクが生ぜしめられ、このトルクはさらに伝動装置ユニットおよびスピンドルユニットを介して締付力に変換される。電動機の電流は、パーキングブレーキの運転中に測定される。電動機の電流は得られた締付力に直接に比例する。所望の締付力のために必要な電流が得られると、モータは短絡を介して停止状態まで制動される。この時間中、モータ電圧およびモータ電流は(VDA305-100の規定に従って)測定できない。モータの制動にも拘わらず、既に得られた締付力に左右されてモータのスイッチオフによって締付力のさらなる上昇が発生する。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0003】
これに対して好適には、本発明による方法は、所望の締付力を精確に設定することができる。特にこの方法は、ブレーキの小さい制動力および予備位置調整を、温度変化および電圧変化を介して一様に良好に設定することができる。
【0004】
これは、本発明に従って、独立請求項に記載した特徴によって可能である。本発明のその他の実施態様は従属請求項の対象である。
【0005】
所定の締付力を設定するための電気式のアクチュエータを有する、自動車用の自動化されたパーキングブレーキを運転するための本発明による方法は、少なくとも、
・電気式のアクチュエータの惰性回転を算出するステップと、
・所定の締付力を前記電気式のアクチュエータの算出された惰性回転を考慮して設定するステップと、を含有している。
【0006】
所定の締付力の設定とは、特に所定の締付力形成と解釈されるべきである。このような意味において、この方法は、例えば所定の制動力を得るために、特にパーキングブレーキの閉鎖過程中に使用され得る。惰性回転(スイッチオフとも呼ばれる)という用語は、制動時におけるパーキングブレーキの電気式のアクチュエータ(電動機)の惰走であると解釈されるべきである。制動は、特に短絡によって停止まで行われる。これは、さらに惰性回転距離若しくは惰走距離とも解釈されるべきである。この方法において、惰性回転が算出つまり演算または推定され、この惰性回転は、制動が例えば短絡によって現在の時点で開始されたときに、設定される。このようにして算出された惰性回転は、実際の制動開始時に、所望の締付力を-惰性回転後に-できるだけ正確にとらえ、それによりシステム内で設定するために、考慮される。
【0007】
本発明は、惰性回転による締付力の予測されたさらなる上昇の算出を可能にする。これにより、締付力形成中に実際に提供された締付力に関する予測を得ることができる。これは、例えばブレーキテスタモード中の小さい締付力段階を提供する際に、または機械的な減速(IFA)において特に有利である。これにより、モータは相応に早期に遮断され得る。
【0008】
さらに、制動中の走行距離が算出され、それにより例えばHAP操作(Highly Autonomous Parking「高度自律駐車」)のためのアクチュエータの予備位置調整時に、短縮された締付ストロークの設定時における比較的高い精度が得られる。
【0009】
制動されたモータは、減衰されたスプリングマスシステムと解釈されてよい。第1のエネルギ蓄積器は例えば回転する可動子である。その他のエネルギ蓄積器は、例えば剛性に比例するばね定数を有するブレーキキャリパである。減衰はモータ抵抗によって決定される。このシステムの初期状態は、制動短絡の開始時点におけるモータの回転数から得られる。低下する回転数が算出され、ピストンストロークに積分される。このピストンストロークはシステムの剛性を介して締付力に換算され得る。この予測が締付力形成時に相応に考慮されると、高い精度を有する所望の締付力が設定され得る。
【0010】
この方法の好適な実施例では、この方法がさらに、
・惰性回転による締付力上昇を算出するステップ、
・惰性回転の終了後に所定の締付力を得るために、前記電気式のアクチュエータを作動停止するための時点を算出するステップ、
のうちの少なくとも1つのステップを含有している。
【0011】
このことは、制動時における電動機の惰性回転に基づいて得られる若しくは惰性回転中に得られる締付力上昇が算出されるかまたは少なくとも推定されることであると解釈される。この締付力上昇は、例えば算出された惰性回転ストロークによって並びにブレーキキャリパの剛性によって演算され得る。
【0012】
作動は電気式のアクチュエータのアクティブな制御と解釈されるべきである。これに対する反対は作動停止であると解釈されるべきである。作動停止は例えば制御の終了と解釈されるべきである。さらに作動停止は、特に短絡の印加による、特に電気式のアクチュエータの停止までの制動とも解釈されるべきである。
【0013】
この方法の可能な実施形態では、パーキングブレーキの電気式のアクチュエータの作動中、つまりパーキングブレーキの運転中、特にパーキングブレーキの締付過程の実行中に、
・電気式のアクチュエータの惰性回転を算出するステップ、
・惰性回転による締付力上昇を算出するステップ、
・惰性回転に続いて所定の締付力を設定するために電気式のアクチュエータを作動停止する時点を算出するステップ、
のうちの少なくとも1つのステップが実行される。
【0014】
この方法の好適な実施例では、電気式のアクチュエータの作動停止が、前記所定の締付力が得られる前に行われる。
【0015】
このことは、電動機の制御は、所望の締付力が実際に得られる前に既に終了される、ということである。最終締付力の形成、つまり所定の締付力の設定は、電動機の惰性回転の終了とともにはじめて行われる。
【0016】
この方法の選択的な発展形態では、電気式のアクチュエータの作動停止は、所定の締付力が電気式のアクチュエータの惰性回転に基づいて得られるように行われる。
【0017】
このことは、算出された惰性回転に基づいて、設定された締付力上昇が推定される、ということである。このために、例えばブレーキキャリパの算出された剛性に比例するばね定数が用いられ得る。短絡による電気式のアクチュエータの制動は、惰性回転がこの時点で必要な締付力の上昇を可能とする形式で行われる。
【0018】
この方法の好適な実施形態では、電気式のアクチュエータを作動停止するための時点を算出し、この場合、この時点は、電気式のアクチュエータの惰性回転が行われた後に所定の締付力が設定されるように決定されている。
【0019】
このことは、作動停止がある時点で行われ、それによってシステムの一般的な技術的特性(特にモータ抵抗、モータ定数およびブレーキキャリパの剛性)に基づいて、並びにシステムの最新の状況(特にモータの最新の回転数、パーキングブレーキの位置)を考慮して、所望の締付力が、得られた惰性回転の終わりに設定されるということである。
【0020】
この方法の可能な実施例では、締付力上昇の算出が、算出された惰性回転に基づいて行われる。このことは、電気式のアクチュエータの今の作動停止において目前に迫っている惰性回転によって、将来的な締付力上昇の算出が行われる、ということである。
【0021】
この方法の好適な発展形態では、電気式のアクチュエータの惰性回転による締付力上昇の算出が、
・モータ抵抗、
・モータ定数、
・ブレーキキャリパ剛性、
・アイドリング電流、
のファクターのうちの少なくとも1つを考慮して行われる。
【0022】
算出されたパラメータは、好適には電気式のアクチュエータの惰性回転の演算時若しくは惰性回転による締付力上昇の演算時に使用され得る。
【0023】
この方法の選択的な実施例では、モータ抵抗の算出が、パーキングブレーキのスイッチオン過程中に電流値および/または電圧値を評価することによって行われる。この方法の可能な実施形態では、モータ定数の算出が、パーキングブレーキのスイッチオン過程中に電流値および/または電圧値を評価することによって行われる。この方法の好適な発展形態では、ブレーキキャリパ剛性の算出が、パーキングブレーキの締付過程中に行われる。
【0024】
この方法の選択的な実施例では、複数の所定の締付力段階が、パーキングブレーキの締付過程中に設定される。
【0025】
このことは、パーキングブレーキ過程中に所定の締付力だけが設定されるのではなく、複数の異なる締付力が設定される、ということである。特にこの場合、複数の締付力段階は次第に上昇する高さで設定される。例えばまず最大力の10%、次いで最大力の20%、最終的に最大力まで設定される。このような形式の締付力段階の設定は、“Incremental Force Application(IFA)「インクリメンタルフォースアプリケーション」”とも呼ばれる。好適には、このような方法は減速された制動力発生を可能にする。これは例えば、特により高い速度からパーキングブレーキによって車両を減速する際に好適である。このような方法は、車両がブレーキテスタ上にあるときに使用されることも可能である。
【0026】
この方法の好適な実施形態では、車両がブレーキテスタ内にあるかどうかが算出される。この方法の選択的な実施形態では、車両の減速がパーキングブレーキによって実行されているかどうかが算出される。例えば、走行中にパーキングブレーキスイッチの所定の手動操作が行われたかどうかが点検される。
【0027】
本発明によればさらに、前記方法の使用法が意図されており、この使用法は、
・車両がブレーキテスタモードにあるときの状況、
・パーキングブレーキによって車両の減速が実行されるときの状況、
のうちの少なくとも1つの状況において意図される。
【0028】
ここに紹介された提案によればさらに、装置が提供されており、この装置は、ここに紹介された方法の変化例のステップを相応のデバイスで実施、制御若しくは実行するために構成されている。本発明による装置の形の変化実施例によっても、本発明の基礎となる課題が素早くかつ効果的に解決され得る。
【0029】
装置とは、ここでは、センサ信号を処理し、かつこのセンサ信号に依存して制御および/またはデータ信号をアウトプットする電気機器であると解釈されてよい。装置はインターフェースを有していてよく、このインターフェースはハードウエア的におよび/またはソフトウエア的に構成されていてよい。ハードウエア的な構成では、インターフェースが例えば、装置の様々な機能を含有するいわゆるシステムASICの部分であってよい。しかしながら、インターフェースは、固有の集積回路であるかまたは少なくとも部分的に離散素子より成っていてもよい。ソフトウエア的な構成において、インターフェースは、例えばマイクロコントローラ上にその他のソフトウエアモジュールと並んで設けられたソフトウエアモジュールであってよい。装置として、特にブレーキ装置および/またはコントロールユニットおよび/または電気機械式のパーキングブレーキおよび/またはブレーキ装置が理解される。
【0030】
機械読み取り可能な担体または記憶媒体、例えば半導体記憶装置、ハードディスクスペースまたは光学記憶装置等に記憶され得る、特にプログラム製品またはプログラムがコンピュータまたは装置で実行されるときに、前記実施例のいずれか1つによる方法のステップを実施、実行および/または制御するために使用されるプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品またはコンピュータプログラムも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】自動式の“モーターオンキャリパー”構造形式のパーキングブレーキを備えたブレーキ装置の側面図である。
図2】制動された電動機のための等価回路図である。
図3】電動機の惰性回転時の電圧変化を示す図である。
図4】方法実施の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
明細書中に個別に記載した特徴は、技術的に有意義な任意の形式で互いに組み合わせられてよく、本発明の別の実施形態を開示するものであることを指摘しておく。本発明のその他の特徴および有効性は、添付の図面を用いて複数の実施例の説明から得られる。
【0033】
図1は、車両のためのブレーキ装置1の概略的な断面図を示す。この場合、ブレーキ装置1は自動化されたパーキングブレーキ13(自動式のパーキングブレーキ、電気機械式のパーキングブレーキまたは自動化された駐車ブレーキ、短縮してAPBとも呼ばれている)を有しており、このパーキングブレーキは電気機械式のアクチュエータ2(電動機)によって車両を固定するための締付力を加えることができる。このために、図示のパーキングブレーキ13の電気機械式のアクチュエータ2は、軸方向に支承されたスピンドル3、特にねじ山付きスピンドルを駆動する。スピンドル3は、そのアクチュエータ2とは反対側の端部にスピンドルナット4を備えており、このスピンドルナット4は自動化されたパーキングブレーキ13の締め付けられた状態でブレーキピストン5に当接する。このような形式でパーキングブレーキ13は力をブレーキライニング8,8′若しくはブレーキディスク7に伝達する。この場合、スピンドルナットはブレーキピストン5の内側の端面(ブレーキピストン底部または内側のピストン底部の後ろ側とも呼ばれる)に当接する。スピンドルナット4は、アクチュエータ2の回転運動およびその結果発生したスピンドル3の回転運動時に軸方向に移動せしめられる。スピンドルナット4およびブレーキピストン5は、ブレーキディスク7をペンチ状に把持するブレーキキャリパ6内に支承されており、ブレーキピストン5は周囲に対してピストンシールリング12によってシールされている。
【0034】
自動化されたパーキングブレーキ13は、図示のように例えば“モーターオンキャリパー”システムとして構成されていて、フットブレーキ14と組み合わされている。フットブレーキ14は、図1では液圧システムとして構成されており、この場合、液圧式のアクチュエータ10は、ESPポンプまたは電気機械式のブレーキ倍力装置(例えば“Bosch iBooster”「ボッシュ社、電気油圧ブースタ」)によって支援されるかまたはこれによって実行され得る。アクチュエータ10の別の実施例、例えばいわゆるIPB(Integrated Power Brake「インテグレーテッドパワーブレーキ」)の形も考えられる。
【0035】
ブレーキアクチュエータ2および10の制御は、単数または複数のアウトプット、つまりコントロールユニット9によって行われる。このコントロールユニット9は、例えばエレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)等のビークルダイナミックシステムのコントロールユニットまたはその他のコントロールユニットであってよい。車両のブレーキシステム15は、フットブレーキと1つのホイールを制動するための電気式のパーキングブレーキとから成る少なくとも1つのブレーキ装置1、好適には4つのホイールを制動するためのフットブレーキ並びに2つのホイールを制動するための2つのパーキングブレーキを含む。
【0036】
図2は、制動された電動機のための電気等価回路図を示す。この電気等価回路図から、上昇する負荷を伴う制動中の電動機の電流変化および電圧変化を導き出すことができる。スイッチオンピーク中に、モータ抵抗Rおよびモータ定数Kが決定される。ブレーキキャリパの剛性Stiffは、直前の締め付け過程中に算出される。慣性質量J、変速比VGear、伝達効率ηおよびスピンドルピッチSpPitchは、既知であることを前提とする。Iは、制動開始時のモータの負荷電流である。この等価回路図から、スイッチオフされるモータの発電機式の電圧uのための微分方程式が導き出される。
【数1】
【0037】
システムの電圧変化uは、数式1の解から、負荷電流の成分だけ補われた、減衰された振動として得られる。
【数2】
【0038】
は、初期電圧(初期回転数に比例する)である。時定数τおよび角振動数ωは次のように算出される。
【数3】
【数4】
【0039】
典型的な値は、τに対して概ね10...20ms、ωに対して概ね10s-1である(例えばf=1.5Hz)。従って、時定数の影響が優勢的であり、コサインは無視されてよい(その他の詳細は、図3の説明に記載されている)。
【数5】
【0040】
図3は、電動機の惰性回転時の発電機的な電圧変化を示す。図示の電圧変化uは次のように算出されている。
-(1)u_num、(実線)、数値的な解
-(2)u_solv2,(破線)
-(3)u_solv1、(一点鎖線)
初期値は、u0=14.3VおよびIL=0.7Aである。u_numのステップ幅は100μsである。ステップ幅が小さければ小さいほど、(1)は(2)に近くなる。
【0041】
u=Kωは回転するモータの角振動数ωといえるので、
【数6】
【0042】
ωの積分を介して、残りのスピンドルストロークsが得られる。
【数7】
【0043】
offは、モータがスイッチオフされるまでの時間である。これは前記[数5]でu=0として算出される。
【数8】
【0044】
これにより、[数7]および[数8]からストロークを簡単に算出することができる。
【数9】
【0045】
これにより、制動時における追加的な締付力dFclが得られる。
【数10】
【0046】
図4には、本発明の一実施例の方法ステップの図が示されている。この場合、第1のステップS1で方法の開始が行われる。次いで、ステップS2で必要なパラメータの算出が行われる。これらのパラメータは、例えばモータ抵抗、モータ定数および/またはブレーキキャリパの剛性である。ステップS3で、惰走距離、つまり電動機の惰性回転の算出が行われる。これに基づいて、ステップS4でこの惰走距離による締付力上昇の算出が行われる。算出のために、ブレーキキャリパの剛性も考慮されてよい。締付力上昇を算出することによって、電動機が最新の時点で短絡によって制動されるべきである場合のために、電動機の惰性回転に基づいて発生した最新の締付力の将来的な上昇の推定若しくは演算が得られる。ステップS5で、電動機の惰走後にパーキングブレーキで所望の締付力を設定するために、電動機の制御および制動を実際に遮断する。ステップS6は、この方法の終了を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 ブレーキ装置
2 アクチュエータ
3 スピンドル
4 スピンドルナット
5 ブレーキピストン
6 ブレーキキャリパ
7 ブレーキディスク
8,8′ ブレーキライニング
9 コントロールユニット
10 ブレーキアクチュエータ
12 ピストンシールリング
13 パーキングブレーキ
14 フットブレーキ
15 ブレーキシステム
制動開始時のモータの負荷電流
J 慣性質量
モータ定数
モータ抵抗
S1、S2、S3、S4、S5、S6 ステップ
Stiff ブレーキキャリパ剛性
SpPitch スピンドルピッチ
off モータがスイッチオフされるまでの時間
u 電圧、電圧変化
初期電圧
Gear 変速比
τ 時定数
η 伝達効率
ω 角振動数
ω モータの角振動数
図1
図2
図3
図4