(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/16 20160101AFI20221207BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20221207BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20221207BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20221207BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20221207BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20221207BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20221207BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60W20/16 ZHV
B60K6/46
B60K6/24
B60W10/06 900
B60W20/00 900
F02D29/06 D
F02D29/06 J
F01N3/10
F01N3/08 A
(21)【出願番号】P 2021537521
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2019001264
(87)【国際公開番号】W WO2021024011
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】越後 亮
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025860(JP,A)
【文献】特開2006-307649(JP,A)
【文献】特開2010-007518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
F02D 29/06
F01N 3/08- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の駆動力のみで走行する走行モードを有するハイブリッド車両に搭載され、理論空燃比よりもリーンとなる空燃比で運転可能な内燃機関の制御方法であって、
内燃機関の排気通路に設けられたNOx浄化触媒のNOx吸着率を考慮して運転中の内燃機関を停止するか否かを判定し、
上記NOx吸着率が高いほど内燃機関の停止を許可する判定条件を緩和し、
上記NOx吸着率が高いほど大きくなる電力閾値を設定し、上記ハイブリッド車両の
走行に必要な電力量である消費電力が上記電力閾値より小さいとき内燃機関の停止を許可する内燃機関の制御方法。
【請求項2】
上記電力閾値は、上記ハイブリッド車両の車速と上記電動機に電力を供給するバッテリのSOCと上記NOx吸着率とに応じて設定される請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項3】
上記NOx吸着率が所定の第1NOx吸着率閾値以上になると内燃機関を停止する請求項1または2に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項4】
内燃機関の始動時に、上記NOx吸着率が所定の第1NOx吸着率閾値以上の場合には、空燃比を理論空燃比よりもリーンとするリーン運転を禁止する請求項1~3のいずれかに記載の内燃機関の制御方法。
【請求項5】
内燃機関の始動時に、上記NOx吸着率が所定の第1NOx吸着率閾値以上の場合には、内燃機関の始動時に上記NOx浄化触媒に吸着されたNOxを除去するために空燃比を少なくとも理論空燃比よりもリッチにする請求項3または4に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項6】
始動時に空燃比を理論空燃比または理論空燃比よりもリッチな空燃比とする必要がある場合、上記NOx吸着率が上記第1NOx吸着率閾値よりも小さい所定の第2NOx吸着率閾値以上であれば、空燃比を理論空燃比よりもリッチにして内燃機関を始動し、上記NOx浄化触媒に吸着されたNOxを除去する請求項4または5に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項7】
上記電力閾値は、上記車速が低く、上記バッテリのSOCが高く、上記NOx吸着率が高い所定の閾値変化領域において設定される値が、上記車速が低く、上記バッテリのSOCが高く、上記NOx吸着率が低い所定の通常領域において設定される値と異なる請求項2に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項8】
上記閾値変化領域は、内燃機関を早く停止させて始動時に空燃比を理論空燃比よりもリッチにしてNOx浄化触媒に吸着されたNOxを除去することで燃費が向上する領域である請求項7に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項9】
上記ハイブリッド車両の消費電力が上記閾値変化領域の電力閾値以下になることによって内燃機関を停止した場合には、内燃機関の始動時に空燃比を理論空燃比よりもリッチにして、上記NOx浄化触媒に吸着されたNOxを除去する請求項7または8に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項10】
電動機の駆動力のみで走行する走行モードを有するハイブリッド車両に搭載され、理論空燃比よりもリーンとなる空燃比で運転可能な内燃機関と、上記内燃機関を制御する制御部と、を有し、
上記制御部は、内燃機関の排気通路に設けられたNOx浄化触媒のNOx吸着率を考慮して運転中の内燃機関を停止するか否かを判定し、上記NOx吸着率が高いほど内燃機関の停止を許可する判定条件を緩和し、上記NOx吸着率が高いほど大きくなる電力閾値を設定し、上記ハイブリッド車両の
走行に必要な電力量である消費電力が上記電力閾値より小さいとき内燃機関の停止を許可する内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に搭載された内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関とモータジェネレータとの少なくとも一方の出力で車両の駆動力を発生させて走行可能なハイブリッド車両が従来から知られている。
【0003】
例えば、特許文献1のハイブリッド車両は、排気空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸着し、吸着したNOxを排気空燃比がリッチのときに脱離還元浄化するNOxトラップ触媒を有している。
【0004】
この特許文献1のハイブリッド車両は、内燃機関の運転と停止が、車両駆動力とバッテリの充電残量に基づく運転要否判断に基づいて制御されている。
【0005】
また、特許文献1のハイブリッド車両は、内燃機関の運転中にNOxトラップ触媒に吸着されたNOx吸着量が所定の吸着限界量を超えると、排気空燃比をリッチにして還元雰囲気にすることで吸着したNOxを脱離還元浄化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、この特許文献1のハイブリッド車両においては、NOxトラップ触媒のNOx吸着量が吸着限界量に近いときに運転要否判断に基づいて内燃機関を停止させてしまうと、内燃機関の再始動後に排気空燃比がリーンとなるような運転するとすぐにNOx吸着量が所定の吸着限界量を超えることになる。そのため、特許文献1においては、内燃機関の再始動後に、排気空燃比がリーンとなるような運転をしてもすぐに排気空燃比がリッチとなるような運転に切り替えなければならない場合がある。
【0008】
つまり、特許文献1は、内燃機関再始動後のリーン空燃比で運転中に、空燃比をリッチ空燃比へ切り替え、NOx除去後に空燃比をリーン空燃比へ戻すといった空燃比の切り替えが行われる可能性があり、燃費や排気性能が悪化してしまう虞がある。
【0009】
本発明の内燃機関は、電動機の駆動力のみで走行する走行モードを有するハイブリッド車両に搭載され、理論空燃比よりもリーンとなる空燃比で運転可能である。そして、運転中の内燃機関は、内燃機関の排気通路に設けられたNOx浄化触媒のNOx吸着率を考慮して停止するか否かを判定する。
【0010】
これによって、例えばNOx吸着率が高いとき内燃機関を停止させ易くするなどの方策を取ることが可能になり、停止した内燃機関の再始動時にNOxを除去すれは良いので、理論空燃比よりもリーンとなる空燃比で運転中に理論空燃比よりもリッチとなる空燃比に切り替え、NOx除去後に再びリーン空燃比に戻すような空燃比切り替えの発生を抑制することが可能となる。その結果、内燃機関は、総じて燃費や排気性能の悪化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明が適用される車両の駆動システムの概略を模式的に示した説明図。
【
図2】本発明に係る内燃機関のシステム構成の概略を模式的に示した説明図。
【
図3】比較例における内燃機関の動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図4】本発明に係る内燃機関の動作の一例を示すタイミングチャート。
【
図5】NOx吸着率毎に用意された電力閾値算出マップの一例を示す説明図。
【
図6】本発明に係る内燃機関の制御の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明が適用される車両1の駆動システムの概略を模式的に示した説明図である。
図2は、本発明に係る内燃機関10のシステム構成の概略を模式的に示した説明図である。
【0014】
車両1は、例えばハイブリッド車両であって、駆動輪2を駆動する駆動ユニット3と、駆動輪2を駆動するための電力を発電する発電ユニット4と、を有している。
【0015】
駆動ユニット3は、駆動輪2を回転駆動する電動機としての駆動用モータ5と、駆動用モータ5の駆動力を駆動輪2に伝達する第1ギヤトレーン6及びディファレンシャルギヤ7と、を有している。駆動用モータ5には、発電ユニット4で発電された電力等が充電されたバッテリ8から電力が供給される。
【0016】
発電ユニット4は、駆動用モータ5に供給する電力を発電する発電機9と、発電機9を駆動する内燃機関10と、内燃機関10の回転を発電機9に伝達する第2ギヤトレーン11と、を有している。
【0017】
本実施例の車両1は、内燃機関10を動力としては使用しないいわゆるシリーズハイブリッド車両である。すなわち、本実施例の車両1は、内燃機関10が発電専用であり、駆動用モータ5が駆動輪2を駆動して走行する。車両1は、例えば、バッテリ8のバッテリ残量が少なくなると、バッテリ8を充電するために内燃機関10を駆動して発電機9で発電する。つまり、車両1は、駆動用モータ5の駆動力のみで走行する走行モードを有するものである。
【0018】
駆動用モータ5は、車両1の直接的な駆動源であり、例えばバッテリ8からの交流電力により駆動する。駆動用モータ5は、例えば、ロータに永久磁石を用いた同期型モータからなっている。
【0019】
また、駆動用モータ5は、車両1の減速時に発電機として機能する。すなわち、駆動用モータ5は、車両減速時の回生エネルギーを電力としてバッテリ8に充電可能な発電電動機である。
【0020】
第1ギヤトレーン6は、駆動用モータ5の回転を減速し、モータトルクを増大して走行駆動トルクを確保するものである。
【0021】
第1ギヤトレーン6は、例えば2段減速によるギヤトレーンであり、駆動ユニット第1ギヤ13を備えたモータ軸14と、駆動ユニット第2ギヤ15及び駆動ユニット第3ギヤ16を備えた第1アイドラー軸17と、を有している。モータ軸14は、駆動用モータ5の回転軸である。
【0022】
駆動ユニット第1ギヤ13は、駆動ユニット第2ギヤ15と噛み合わされている。
【0023】
駆動ユニット第3ギヤ16は、ディファレンシャルギヤ7の入力側に設けられた入力側ギヤ18と噛み合わされている。
【0024】
ディファレンシャルギヤ7は、第1ギヤトレーン6から入力側ギヤ18を介して入力された駆動トルクを、左右のドライブシャフト19、19を介して左右の駆動輪2、2に伝達する。ディファレンシャルギヤ7は、左右の駆動輪2、2の回転数差を許容しつつ、左右の駆動輪2、2に同じ駆動トルクを伝達することができる。
【0025】
発電機9は、例えば、ロータに永久磁石を用いた同期型モータからなっている。発電機9は、内燃機関10に発生した回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、例えばバッテリ8を充電する。また、発電機9は、内燃機関10を駆動する電動機としての機能も有しており、内燃機関10の始動時にスタータモータとして機能する。つまり、発電機9は、発電電動機であり、発電した電力をバッテリ8に供給可能で、かつバッテリ8からの電力により回転駆動可能である。
【0026】
なお、発電機9で発電した電力は、運転状態に応じて、例えばバッテリ8に充電するのではなく駆動用モータ5に直接供給するようにしてよい。また、内燃機関10は、例えば、発電機9とは異なる専用のスタータモータにより始動するようにしてもよい。
【0027】
第2ギヤトレーン11は、内燃機関10と発電機9とを連結するギヤトレーンである。第2ギヤトレーン11は、発電ユニット第1ギヤ23を備えたエンジン軸24と、発電ユニット第2ギヤ25を備えた第2アイドラー軸26と、発電ユニット第3ギヤ27を備えた発電機入力軸28と、を有している。
【0028】
第2ギヤトレーン11は、発電運転時には、内燃機関10の回転数を増速して発電機9に必要なエンジントルクを伝達する。第2ギヤトレーン11は、発電機9がスタータとして機能するときには、発電機9の回転数を減速して内燃機関10に必要なモータトルクを伝達する。
【0029】
エンジン軸24は、内燃機関10のクランクシャフト(図示せず)と同期回転する。発電機入力軸28は、発電機9のロータ(図示せず)と同期回転する。
【0030】
発電ユニット第1ギヤ23は、発電ユニット第2ギヤ25と噛み合わされている。発電ユニット第3ギヤ27は、発電ユニット第2ギヤ25と噛み合わされている。つまり、発電ユニット第2ギヤ25には、発電ユニット第1ギヤ23及び発電ユニット第3ギヤ27が噛み合わされている。
【0031】
内燃機関10は、空燃比を変更可能なものである。内燃機関10は、例えば、車両1のフロント側に位置するエンジンルーム内に配置されるガソリンエンジンである。
【0032】
図2に示すように、内燃機関10の排気通路31には、上流側排気浄化触媒32とNOx浄化触媒としての下流側排気浄化触媒33が設けられている。
【0033】
上流側排気浄化触媒32は、例えば、三元触媒からなっている。三元触媒は、内燃機関10から排出された排気を浄化するものであり、空気過剰率が略「1」のとき、すなわち排気空燃比が略理論空燃比となるときに、流入する排気中のHC、CO、NOxの三成分の浄化率が揃って高くなるものである。
【0034】
下流側排気浄化触媒33は、上流側排気浄化触媒32よりも下流側に位置している。下流側排気浄化触媒33は、NOxトラップ触媒(LNT;Lean NOx Trap Catalyst)からなっている。NOxトラップ触媒は、空燃比が理論空燃比よりリーンの運転時に排気中のNOxを吸着し、空燃比が理論空燃比よりリッチとなる運転時にNOxを脱離、還元(浄化)するものである。換言すると、NOxトラップ触媒は、排気空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸着し、吸着したNOxを排気空燃比がリッチのときに排気中のHC(ハイドロカーボン)、COを還元剤として用いて脱離還元浄化するものである。
【0035】
上流側排気浄化触媒32と下流側排気浄化触媒33との間には、上流側NOxセンサ42aが配置されている。下流側排気浄化触媒33の下流側には、下流側NOxセンサ42bが配置されている。つまり、下流側排気浄化触媒33の前後には、NOxセンサ42が配置されている。上流側NOxセンサ42a及び下流側NOxセンサ42bは、排気中のNOx濃度を検出するものである。上流側NOxセンサ42a及び下流側NOxセンサ42bの検出信号は、コントロールユニット41に入力されている。
【0036】
コントロールユニット41は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。
【0037】
コントロールユニット41には、吸入空気量を検出するエアフローメータ43、クランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ44、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ45、車速を検出する車速センサ46、内燃機関10の冷却水温度を検出する水温センサ47、内燃機関10の潤滑油温度を検出する油温センサ48等の各種センサ類の検出信号が入力されている。クランク角センサ44は、内燃機関10の機関回転数を検出可能なものである。
【0038】
コントロールユニット41は、アクセル開度センサ45の検出値を用いて、車両走行に必要な電力量である消費電力を算出する。なお、車両の消費電力は、駆動用モータ5が消費する電力とその他の補機類が消費する電力の和であるが、予め離散的に設定してある複数の電力設定値のうち、この和に近い電力設定値を選択して車両の消費電力としても良い。また、コントロールユニット41は、バッテリ8の充電容量に対する充電残量の比率であるSOC(State Of Charge)を検出可能となっている。
【0039】
コントロールユニット41は、下流側排気浄化触媒33に吸着されているNOx吸着量から下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率を算出している。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、下流側排気浄化触媒33に吸着可能なNOx量の最大値(吸着限界値)に対するNOx吸着量の比率である。
【0040】
コントロールユニット41は、上流側NOxセンサ42aの検出値と下流側NOxセンサ42bの検出値の差分を用いて下流側排気浄化触媒33に吸着されているNOx吸着量を算出している。
【0041】
なお、コントロールユニット41は、例えば内燃機関10の機関回転数及び燃料噴射量をパラメータとして予めコントロールユニット41のROMに記憶してある所定のデータ等から検索して、単位時間当たりのNOx吸着量を求め、これを積算して下流側排気浄化触媒33のNOx吸着量を算出するようにしてもよい。また、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着量は、上記以外の公知の各種方法で算出するようにしてもよい。
【0042】
コントロールユニット41は、各種センサ類の検出信号に基づいて、内燃機関10の点火時期、吸入空気量等を最適に制御するとともに、内燃機関10の空燃比を制御している。つまり、コントロールユニット41は、内燃機関10の運転を制御する制御部に相当する。
【0043】
コントロールユニット41は、内燃機関10を運転する際に、基本的には空燃比をリーン空燃比(理論空燃比よりもリーンとなる空燃比)となるように制御し、リーン空燃比では燃焼安定性が確保できないような場合は空燃比を理論空燃比または理論空燃比よりもリッチとなる空燃比となるよう制御する。また、コントロールユニット41は、後述するリッチスパイクを実施する場合には、空燃比を理論空燃比よりもリッチとなる空燃比となるよう制御する。
【0044】
そして、コントロールユニット41は、内燃機関10の運転中に所定の停止要求が発生すると内燃機関10を停止(自動停止)し、車両1の走行中で内燃機関10の停止中に所定の始動要求が発生すると内燃機関10を再始動(自動再始動)する。
【0045】
コントロールユニット41は、内燃機関10の運転中に、車両の消費電力が、車速とバッテリ8のSOCと下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率に応じて設定される電力閾値以下になった場合や、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が予め設定された所定の第1NOx吸着率閾値A1以上になった場合に、停止要求が発生したと判定している。
【0046】
電力閾値は、例えば、NOx吸着率毎に用意された複数の電力閾値算出マップ(後述)を用いて算出される。電力閾値は、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が高くなるほど大きくなるよう設定されている。これによって、内燃機関10は、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が高くなるほど停止しやすくなる。
【0047】
第1NOx吸着率閾値A1は、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率の限界(NOx吸着率100%)に近い値であり、本実施例では例えばNOx吸着率95%に設定している。
【0048】
そして、コントロールユニット41は、車両1の運転中で内燃機関10の停止中に、車両の消費電力が電力閾値よりも大きくなった場合や、バッテリ8のSOCが所定のSOC下限値以下になった場合に、始動要求が発生したと判定している。
【0049】
下流側排気浄化触媒33は、内燃機関10の空燃比をリーン空燃比として運転するとNOx吸着率が増加するため、吸着されたNOxを脱離還元させるNOxパージを行う必要がある。
【0050】
そこで、コントロールユニット41(内燃機関10)は、下流側排気浄化触媒33のNOxパージを行う場合に、例えば内燃機関10の燃料噴射量を一時的に増量して空燃比を理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比とするリッチスパイクを実施する。
【0051】
図3は、比較例における内燃機関10の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図3に示す比較例では、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が吸着限界(100%)に達したタイミングで下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを脱離還元している。
【0052】
比較例では、
図3の時刻t1のタイミングで内燃機関10の停止要求が発生し、リーン空燃比で運転中の内燃機関10を停止している。
【0053】
内燃機関10は、
図3の時刻t2のタイミングで内燃機関10の始動要求が発生したため、
図3の時刻t2のタイミングで再始動し、リーン空燃比による運転を再開している。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、内燃機関10が停止している
図3の時刻t1~t2の間は増減していない。
【0054】
内燃機関10は、
図3の時刻t3のタイミングで内燃機関10の停止要求が発生したため、
図3の時刻t3のタイミングで停止している。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、
図3の時刻t2のタイミングで始動してから時刻t3のタイミングで内燃機関10が停止するまで増加している。
【0055】
内燃機関10は、
図3の時刻t4のタイミングで内燃機関10の始動要求が発生したため、
図3の時刻t4のタイミングで再始動し、リーン空燃比による運転を再開している。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、内燃機関10が停止している
図3の時刻t3~t4の間は増減していない。
【0056】
そして、下流側排気浄化触媒33のNO吸着率は、
図3の時刻t4のタイミングから増加し、
図3の時刻t5のタイミングで吸着限界(100%)に達している。そのため、コントロールユニット41(内燃機関10)は、
図3の時刻t5のタイミングからリッチスパイクを開始する。このリッチスパイクは、下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxが全て脱離還元するように実施される。つまり、リッチスパイクは、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が0%になるまで実施される。
【0057】
内燃機関10は、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着量が「0」となった
図3の時刻t6のタイミングで、リッチスパイクを終了し、リーン空燃比による運転を再開している。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、
図3の時刻t6のタイミングから増加している。
【0058】
図3に示す比較例においては、内燃機関10をリーン空燃比で運転中にNOxパージが必要になるため、「リーン空燃比→リッチ空燃比→リーン空燃比」と内燃機関10の運転中に空燃比の切り替えを2回行う必要がある。ここで、リーン空燃比からリッチ空燃比への切り替えや、リッチ空燃比からリーン空燃比への切り替えは、内燃機関10の燃費性能や排気性能を悪化させる要因となる。
【0059】
そこで、本実施例では、内燃機関10の始動時にNOxパージを実施することで、運転中の内燃機関10における空燃比の切り替え回数を減少させる。そのために、内燃機関10は、リーン空燃比で運転中に下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が吸着限界(100%)とならないように、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が高くなると停止する。
【0060】
具体的には、内燃機関10をリーン空燃比で運転中に下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が吸着限界(100%)とならないように、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が限界に達する前に内燃機関10を停止させておき、内燃機関10の始動要求が発生したタイミングでNOxパージを実施する。
【0061】
詳述すると、コントロールユニット41は、車両の消費電力が車速とバッテリ8のSOCと下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率とに応じて設定される電力閾値以下になると、停止要求が発生したものとして内燃機関10を停止する。換言すると、コントロールユニット41は、車両1の車速と、バッテリ8のSOCと、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率と、を用いて運転中の内燃機関10を停止するか否かを判定する。
【0062】
また、コントロールユニット41は、内燃機関10の運転中に、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第1NOx吸着率閾値A1以上になった場合にも停止要求が発生したものとして内燃機関10を停止する。
【0063】
これによって、内燃機関10は、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着量が限界に達する前に停止することが可能となる。そのため、内燃機関10は、下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを除去するために、理論空燃比よりもリーンとなる空燃比で運転中に理論空燃比よりもリッチとなる空燃比に切り替えずにすませることが可能となる。
【0064】
つまり、内燃機関10は、下流側排気浄化触媒33のNOx除去のために、リーン空燃比で運転中に空燃比をリッチ空燃比へ切り替え、NOx除去後に空燃比をリーン空燃比へ戻すといった一連の空燃比の切り替えをせずにすませることが可能となり、運転中の空燃比切り替え回数を上述した比較例に対して減少させることが可能となる。その結果、内燃機関10は、総じて燃費や排気性能の悪化を抑制することが可能となる。
【0065】
また、コントロールユニット41は、内燃機関10の始動時に、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第1NOx吸着率閾値A1値以上の場合には、空燃比を理論空燃比よりもリーンとするリーン運転を禁止する。
【0066】
これにより、下流側排気浄化触媒33は、内燃機関10がリーン空燃比で運転中に、NOx吸着率が吸着限界に達してしまうことを回避することが可能となる。
そのため、内燃機関10は、排気性能の悪化を抑制することができる。
【0067】
そして、コントロールユニット41は、車両の消費電力が後述する閾値変化領域Cの電力閾値より小さくなって内燃機関10を停止した後の始動時である場合、下流側排気浄化触媒33のNOxパージを実施するために空燃比を少なくとも理論空燃比よりもリッチにする。また、内燃機関10の始動時に下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第1NOx吸着率閾値A1以上の場合、下流側排気浄化触媒33のNOxパージを実施するために空燃比を少なくとも理論空燃比よりもリッチにする。
【0068】
これによって、内燃機関10は、始動時に下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを除去することが可能となり、リーン空燃比で運転中に下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを除去するために空燃比をリッチ空燃比に切り替えないようにできる。つまり、内燃機関10は、リーン空燃比で運転中に、下流側排気浄化触媒33のNOxを除去するためにリッチ空燃比での運転に変更し、下流側排気浄化触媒33のNOxを除去後にリーン空燃比での運転に変更するといった空燃比の切り換えが不要となる。
【0069】
また、コントロールユニット41は、内燃機関10の始動時にリーン空燃比では燃焼安定性を確保できない場合、すなわち内燃機関10の始動時に空燃比を理論空燃比または理論空燃比よりもリッチな空燃比とする必要がある場合、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第1NOx吸着率閾値A1よりも小さい所定の第2NOx吸着率閾値A2以上であれば、空燃比を理論空燃比よりもリッチにして内燃機関10の始動し、下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを除去する。
【0070】
このように、内燃機関10の始動時にリーン空燃比で運転できないような場合にNOxパージを実施することで、効率良く下流側排気浄化触媒33のNOxを除去することができる。
【0071】
なお、内燃機関10の始動時に空燃比を理論空燃比または理論空燃比よりもリッチとする必要がある場合、すなわち内燃機関10の始動時に空燃比をリーン空燃比にできない場合としては、内燃機関10の始動直後に空燃比をリーン空燃比としない運転領域で運転する場合、内燃機関10の冷却水温度が低い場合、内燃機関10の潤滑油温度が低い場合等がある。また、第2NOx吸着率閾値A2は、第1NOx吸着率閾値A1よりも小さい値であればよく、本実施例では例えばNOx吸着率30%に設定している。なお、第2NOx吸着率閾値A2は、NOx吸着率0%として設定することも可能である。
【0072】
図4は、上述した本発明の実施例に係る内燃機関10の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図4に示す本実施例では、内燃機関10の始動時にNOxパージを実施することで、運転中の内燃機関10における空燃比の切り替え回数を減少させる。
【0073】
本実施例の内燃機関10では、
図4の時刻t1のタイミングで内燃機関10の停止要求が発生し、リーン空燃比で運転中の内燃機関10を停止している。
【0074】
内燃機関10は、
図4の時刻t2のタイミングで内燃機関10の始動要求が発生したため、
図4の時刻t2のタイミングで再始動し、リーン空燃比による運転を再開している。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、内燃機関10が停止している
図4の時刻t1~t2の間は増減していない。
【0075】
内燃機関10は、
図4の時刻t3のタイミングで車両の消費電力が閾値変化領域Cの電力閾値よりも小さくなって内燃機関10の停止要求が発生したため、
図4の時刻t3のタイミングで停止している。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、
図4の時刻t2のタイミングで始動してから時刻t3のタイミングで内燃機関10が停止するまで増加している。
【0076】
内燃機関10は、
図4の時刻t4のタイミングで内燃機関10の始動要求が発生したため、
図4の時刻t4のタイミングで再始動する。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、内燃機関10が停止している
図4の時刻t3~t4の間は増減していない。
【0077】
そして、コントロールユニット41(内燃機関10)は、
図4の時刻t4のタイミングで車両の消費電力が閾値変化領域Cの電力閾値より小さくなって内燃機関10を停止した後の始動であるため、
図4の時刻t4のタイミングからリッチスパイクを開始する。このリッチスパイクは、下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxが全て脱離還元するように実施される。つまり、リッチスパイクは、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が0%になるまで実施される。
【0078】
内燃機関10は、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着量が「0」となった
図4の時刻t5のタイミングで、リッチスパイクを終了し、リーン空燃比による運転を再開している。下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率は、
図4の時刻t6のタイミングから増加している。
【0079】
図4に示す上述した実施例においては、内燃機関10をリーン空燃比で運転中にNOxパージが必要となることを回避することができる。つまり、下流側排気浄化触媒33のNOxパージは、停止中の内燃機関10を始動する際に実施される。そのため、上述した実施例におけるNOxパージに伴う内燃機関10の空燃比の切り替えは、リッチ空燃比からリーン空燃比への切り換えのみとなる。つまり、内燃機関10の運転中に空燃比の切り替えを1回行うことで、下流側排気浄化触媒33のNOxパージが可能となるため、内燃機関10の燃費性能や排気性能の悪化を抑制することができる。
【0080】
また、内燃機関10の始動時にリッチスパイクを行うことで、始動時増量のHCを利用しつつNOxパージが可能となる。
【0081】
なお、車両1は、バッテリ8の容量を大きくすれば、SOCバランスが次回始動後の充電で容易に確保可能となる。
【0082】
図5は、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率(LNT吸着率)毎に用意された複数の電力閾値算出マップの一例を示したものである。なお、電力閾値算出マップは、図示した以外のNOx吸着率(LNT吸着率)に対応したマップを数多く用意しておいてもよい。
【0083】
図5には、NOx吸着率(LNT吸着率)0%の電力閾値算出マップ、NOx吸着率(LNT吸着率)70%の電力閾値算出マップ、NOx吸着率(LNT吸着率)80%の電力閾値算出マップ、NOx吸着率(LNT吸着率)90%の電力閾値算出マップを示している。なお、各マップにおいては、便宜上、バッテリ8のSOCが低い領域については具体的な数値の表示を省略し、バッテリ8のSOCが高い領域の閾値のみ具体的な数値を表示している。各マップにおいて、具体的な数値が表示されていない領域にも、実際には電力閾値が設定されている。電力閾値は、例えば、車速が同一であれば、バッテリ8のSOCが低くなるほど小さい値が設定される。
【0084】
各電力閾値算出マップは、基本的には、車両1の車速とバッテリ8のSOCとが同じ条件であれば下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率によらず他の電力閾値算出マップと同じ電力閾値が設定されている。ただし、NOx吸着率が高い電力閾値算出マップは、車両1の車速が低くバッテリ8のSOCが高い所定の閾値変化領域Cにおいて、NOx吸着率が低い電力閾値算出マップとは異なる電力閾値が設定されている。換言すると、各電力閾値算出マップのうちNOx吸着率が高い電力閾値算出マップは、NOx吸着率が低い電力閾値算出マップと異なる値が設定された所定の閾値変化領域Cを有している。
【0085】
閾値変化領域Cに設定された電力閾値は、閾値変化領域Cが設定されないNOx吸着率が低い電力閾値算出マップにおける同一条件(車両1の車速とバッテリ8のSOC)の電力閾値よりも大きい値が設定されている。換言すると、電力閾値は、車両1の車速が低く、バッテリ8のSOCが高く、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が高い、所定の閾値変化領域Cにおいて設定される値が、車両1の車速が低く、バッテリ8のSOCが高く、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が低い、所定の通常領域において設定される値と異なっている。
【0086】
閾値変化領域Cは、本実施例では、
図5中のNOx吸着率80%の電力閾値算出マップ及びNOx吸着率90%の電力閾値算出マップに設定されている。また、閾値変化領域Cは、本実施例では、
図5中のNOx吸着率70%の電力閾値算出マップ及びNOx吸着率0%の電力閾値算出マップに設定されていない。
【0087】
閾値変化領域Cは、具体的には、
図5中のNOx吸着率80%の電力閾値算出マップ及びNOx吸着率90%の電力閾値算出マップの太線に囲まれた領域である。詳述すると、NOx吸着率80%の電力閾値算出マップにおける閾値変化領域Cは、車速10km、バッテリ8のSOCが80%及び85%の領域と、車速20km、バッテリ8のSOCが80%及び85%の領域と、を合わせた領域である。また、NOx吸着率90%の電力閾値算出マップにおける閾値変化領域Cは、車速10km、バッテリ8のSOCが75%、80%及び85%の領域と、車速20km、バッテリ8のSOCが85%の領域と、を合わせた領域である。
【0088】
閾値変化領域Cは、内燃機関10を早く停止させて始動時にNOxパージ(空燃比を理論空燃比よりもリッチにして下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを除去)することで燃費が向上する領域である。換言すると、NOx吸着率の高い電力閾値算出マップは、内燃機関10を早く停止させて始動時に空燃比を理論空燃比よりもリッチにして下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを除去することで燃費が向上する領域(閾値変化領域C)の電力閾値の値を高く設定している。
【0089】
なお、NOx吸着率0%の電力閾値算出マップとNOx吸着率70%の電力閾値算出マップとは、同一となっている。つまり、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が0%から70%までは、車両1の車速とバッテリ8のSOCが同一条件であれば、全ての領域で下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率によらず電力発閾値は同じ値となっている。
【0090】
内燃機関10は、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が高くなると早く停止させて始動時にNOxパージをすることで燃費が向上する場合がある。
【0091】
そのため、電力閾値は、車両1の車速が低くバッテリ8のSOCが高い閾値変化領域Cにおいて、通常領域とは異なる値が設定されている。また閾値変化領域Cは、NOx吸着率が高くなるほど広くなる。
【0092】
そこで、閾値変化領域Cに設定されている電力閾値を用いた結果により内燃機関10を停止した場合には、始動時に空燃比を理論空燃比よりもリッチにして下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを除去している。つまり、車両の消費電力が閾値変化領域Cの電力閾値以下になることによって内燃機関10を停止した場合には、内燃機関10の始動時に空燃比を理論空燃比よりもリッチにして、下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxを除去している。
【0093】
なお、
図5に示す電力閾値算出マップの電力閾値の値は、実機に応じて適宜設定されるものであり、
図5に例示した値に限定されるものではない。
【0094】
そして、閾値変化領域Cの範囲は、
図5に例示した範囲に限定されるものではなく、実機によって拡大あるいは縮小させてもよい。また、閾値変化領域Cは、実機によっては、例えばNOx吸着率80%以下のマップに設定される可能性がある。
【0095】
図6は、上述した実施例における内燃機関10の制御の流れの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、車両1の走行中に、コントロールユニット51により所定時間毎(例えば、10ms毎)に繰り返し実行される。
【0096】
ステップS1では、内燃機関10が運転中であるか否かを判定する。ステップS1で内燃機関10の運転中であると判定した場合は、ステップS2へ進む。ステップS1で内燃機関10の運転中でないと判定した場合は、ステップS5へ進む。
【0097】
ステップS2では、車両1の車速、バッテリ8のSOC、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率等の各種パラメータを読み込んでいる。
【0098】
ステップS3では、内燃機関10の停止要求が発生したか否かを判定する。ステップS3で内燃機関10の停止要求が発生した判定した場合には、ステップS4へ進み、運転中の内燃機関10を停止する。ステップS3で内燃機関10の停止要求が発生していないと判定した場合には、今回のルーチンを終了する。
【0099】
ステップS5では、内燃機関10の始動要求が発生したか否かを判定する。ステップS5で内燃機関10の始動要求が発生した判定した場合には、ステップS6へ進む。ステップS5で内燃機関10の始動要求が発生していないと判定した場合には、今回のルーチンを終了する。
【0100】
ステップS6では、現在内燃機関10が停止しているのは閾値変化領域Cにて車両の消費電力が電力閾値以下になった結果であるか否かを判定する。ステップS6で内燃機関10が閾値変化領域Cにて車両の消費電力が電力閾値以下になった結果停止していると判定した場合には、ステップS7へ進む。ステップS6で内燃機関10が閾値変化領域Cにて車両の消費電力が電力閾値以下になった結果停止しているのではないと判定した場合には、ステップS8へ進む。
【0101】
ステップS7では、内燃機関10の始動時に下流側排気浄化触媒33のNOxパージを実施している。すなわち、内燃機関10は、空燃比を理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比として始動し、下流側排気浄化触媒33に吸着されたNOxが全て脱離還元するまでこのリッチ空燃比を維持する。つまり、ステップS7では、内燃機関10の始動時に下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が0%になるまでリッチスパイクを実施する。
【0102】
ステップS8では、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第1NOx吸着率閾値A1以上であるか否かを判定する。ステップS8で下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第1NOx吸着率閾値A1以上と判定した場合には、ステップS7へ進む。ステップS8で下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第1NOx吸着率閾A1値未満であると判定した場合には、ステップS9へ進む。
【0103】
ステップS9では、内燃機関10が冷機状態であるか否かを判定する。具体的には、内燃機関10の冷却水温度が予め設定された所定の水温閾値(温度閾値)以下であるか否か、または内燃機関10の潤滑油温度が予め設定された所定の油温閾値(温度閾値)以下であるか否かを判定する。内燃機関10の冷却水温度及び潤滑油温度の少なくとも一方が温度閾値以下であれば内燃機関10が冷機状態であると判定する。なお、内燃機関10の冷却水温度及び潤滑油温度の双方が温度閾値以下のとき内燃機関10が冷機状態であると判定してもよい。
【0104】
ステップS9で内燃機関10が冷機状態と判定した場合には、ステップS10へ進む。ステップS9で内燃機関10が冷機状態ではないと判定した場合には、ステップS11へ進む。
【0105】
ステップS10では、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第2NOx吸着率閾値A2以上であるか否かを判定する。ステップS10で下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第2NOx吸着率閾値A2以上と判定した場合には、ステップS7へ進む。ステップS10で下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が第2NOx吸着率閾値A2未満であると判定した場合には、ステップS12へ進む。
【0106】
ステップS11では、空燃比をリーンとしない運転領域であるか否かを判定している。具体的には、例えばアクセル開度が全開となり始動直後から最高出力で内燃機関を運転するような場合に、空燃比をリーンとしない運転領域であると判定する。ステップS11で空燃比をリーンとしない運転領域と判定した場合には、ステップS10へ進む。ステップS11で空燃比をリーンとしない運転領域ではないと判定した場合には、ステップS13へ進む。
【0107】
ステップS12では、内燃機関10を理論空燃比または理論空燃比よりもリッチな空燃比で始動している。ステップS12では、始動時増量等を行った場合、内燃機関10を空燃比が理論空燃比よりもリッチになる。
【0108】
ステップS13では、内燃機関10をリーン空燃比で始動している。
【0109】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0110】
例えば、内燃機関10は、上述した実施例においてはガソリンエンジンであったが、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0111】
また、上述した実施例では、内燃機関10がシリーズハイブリッド車両に搭載されているが、本発明は、シリーズハイブリッド車両への適用に限定されるものではなく、電動機の駆動力のみで走行する走行モード(例えばEVモード)を有するハイブリッド車両に適用することも可能である。
【0112】
例えば、パラレルハイブリッド車両に本発明を適用した場合には、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が高くなるほど電力閾値が大きくなるよう設定されているので、下流側排気浄化触媒33のNOx吸着率が高くなるほどEVモードになりやすくなる。
【0113】
上述した実施例は、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関するものである。