(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】運搬装置
(51)【国際特許分類】
B62D 61/12 20060101AFI20221207BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20221207BHJP
B62B 5/02 20060101ALI20221207BHJP
B66F 7/28 20060101ALI20221207BHJP
B66F 11/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B62D61/12
B62B3/02 H
B62B5/02 D
B66F7/28 Z
B66F11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021540662
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2020026767
(87)【国際公開番号】W WO2021033449
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2019149279
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519298891
【氏名又は名称】太田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 寛
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-262484(JP,A)
【文献】特開2003-146218(JP,A)
【文献】特開昭60-155385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/12
B62B 3/02
B62B 5/02
B66F 7/28
B66F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を搭載して移動方向に移動する運搬装置であって、
荷物を搭載する荷台と、
前記荷台の重量の一部を個別に受けることができる4本の脚部と、
前記脚部を個別に移動させて前記荷台に対する相対位置を個別に変化させる移動部と、
前記移動部を、前記4本の脚部について個別に制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記4本の脚部のうちの3本の脚部を頂点とする水平な三角形の輪郭よりも内側に前記荷台の重心が位置する範囲内で前記4本の脚部のうちの少なくとも1本の前記荷台に対する相対位置を変化させて、前記3本の脚部により前記荷台を支持させ、他の1本の脚部を前記荷台の支持から解放する運搬装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記3本の脚部により前記荷台を支持させる場合に、前記3本の脚部のうちの少なくとも1本を移動させて、前記荷台の重心を、前記三角形の中心に近づける請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記4本の脚部のうちの1本を重力方向について上昇させることにより、前記4本の脚部の他の3本により前記荷台を支持させる請求項2に記載の運搬装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記移動方向の前方に段差が存在する場合に、前記4本の脚部のうちの3本で前記荷台を支持した状態で、前記4本の脚部のうちの他の1本を床面から離れる方向に移動させ、且つ、前記荷台の移動方向について前方に移動させて、前記段差を超えた位置に前記他の1本の脚部を降着させた後、前記4本の脚部に対して前記荷台を前記前方に移動させて、前記3本の脚部のうちの2本の脚部と、前記他の1本の脚部との3本の脚部により前記荷台を支持させる請求項1から3のいずれか一項に記載の運搬装置。
【請求項5】
前記脚部に個別に設けられ、前記制御部の制御の下に走行方向および走行速度を個別に変更できる走行部を更に備える請求項1から4のいずれか1項に記載の運搬装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記運搬装置の移動方向を変更する場合に、旋回軸に近い側の走行部は前記移動方向に走行させず、旋回軸から遠い側の走行部を前記移動方向に駆動させて、前記荷台を信地旋回させる請求項5に記載の運搬装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記旋回軸から遠い側の一対の脚部を、前記移動方向について互いに離れた位置に配し、前記旋回軸に近い側の一対の脚部の少なくとも一方を前記移動方向について中央に配して、少なくとも3本の脚部で荷台を支持した状態で、前記三角形に沿って、前記荷台の旋回方向と逆に廻る順番で、前記三角形の頂点を順次旋回軸にして前記荷台を信地旋回させる請求項6に記載の運搬装置。
【請求項8】
前記荷台に対して、前記荷台の移動方向に摺動自在な一対のレール部材を更に備え、
前記4本の脚部は、前記一対のレール部材に対して、前記一対のレール部材の延在方向に摺動自在に結合され、前記一対のレール部材を介して前記荷台を支持する請求項1から7のいずれか一項に記載の運搬装置。
【請求項9】
前記一対のレール部材の各々は、前記荷台に対して摺動した場合に、前記荷台の移動方向について前記荷台よりも前方または後方に突出して、前記荷台よりも前方または後方で前記脚部のいずれかを支持する請求項8に記載の運搬装置。
【請求項10】
前記一対のレール部材の各々は、互いに平行に延在する2条の嵌合部を介して前記荷台に対して結合される請求項8または9に記載の運搬装置。
【請求項11】
前記4本の脚部は、重力方向について下側から前記荷台を支持する請求項1から10のいずれか一項に記載の運搬装置。
【請求項12】
重力方向について下側から前記4本の脚部が支持する枠体を更に備え、
前記荷台は、前記枠体から吊り下げた状態で支持される請求項1から10のいずれか一項に記載の運搬装置。
【請求項13】
移動において前記荷台を水平に保つ請求項1から12のいずれか一項に記載の運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物または人を荷台に載せて走行する運搬装置がある。(例えば、特許文献1から4および非特許文献を参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2001-233600号公報
[特許文献2] 特開2003-146218号公報
[特許文献3] 特開昭60-155385号公報
[特許文献4] 特開2007-153521号公報
[非特許文献]機械学会関東支部 第24期総会・講演会 講演論文集 OS0401「回り階段も移動可能な直交4脚車輪ロボットの開発」
【0003】
運搬装置が段差を超える場合は一部の脚部が荷台を支持しなくなるので、安定性が低下する。
【0004】
本発明の一態様において、運搬装置は、荷物を搭載して移動方向に移動してよい。上記運搬装置は、荷物を搭載する荷台を備えてよい。上記運搬装置は、荷台の重量の一部を個別に受けることができる4本の脚部を備えてよい。上記運搬装置は、脚部を個別に移動させて荷台に対する相対位置を個別に変化させる移動部を備えてよい。上記運搬装置は、移動部を、4本の脚部について個別に制御する制御部を備えてよい。
【0005】
上記運搬装置において、制御部は、4本の脚部のうちの3本の脚部を頂点とする水平な三角形の輪郭よりも内側に荷台の重心が位置する範囲内で4本の脚部のうちの少なくとも1本の荷台に対する相対位置を変化させてもよい。上記運搬装置において、制御部は、3本の脚部により荷台を支持させ、他の1本の脚部を荷台の支持から解放してもよい。
【0006】
上記運搬装置において、制御部は、3本の脚部により荷台を支持させる場合に、3本の脚部のうちの少なくとも1本を移動させて、荷台の重心を、三角形の中心に近づけてもよい。上記運搬装置において、制御部は、4本の脚部のうちの1本を重力方向について上昇させることにより、4本の脚部の他の3本により荷台を支持させてもよい。
【0007】
上記運搬装置において、制御部は、移動方向の前方に段差が存在する場合に、4本の脚部のうちの3本で荷台を支持した状態で、4本の脚部のうちの他の1本を床面から離れる方向に移動させ、且つ、荷台の移動方向について前方に移動させて、段差を超えた位置に他の1本の脚部を降着させてもよい。上記運搬装置において、制御部は更に、4本の脚部に対して荷台を前方に移動させて、3本の脚部のうちの2本の脚部と、他の1本の脚部との3本の脚部により荷台を支持させてもよい。
【0008】
上記運搬装置は、脚部に個別に設けられた走行部を更に備えてもよい。上記搬送装置において、脚部は、制御部の制御の下に走行方向および走行速度を個別に変更できてもよい。
【0009】
上記運搬装置において、制御部は、運搬装置の移動方向を変更する場合に、旋回軸に近い側の走行部は移動方向に走行させず、旋回軸から遠い側の走行部を移動方向に駆動させて、荷台を信地旋回させてもよい。上記運搬装置において、制御部は、旋回軸から遠い側の一対の脚部を、移動方向について互いに離れた位置に配し、旋回軸に近い側の一対の脚部の少なくとも一方を移動方向について中央に配してもよい。上記運搬装置において、制御部は、少なくとも3本の脚部で荷台を支持した状態で、三角形に沿って、荷台の旋回方向と逆に廻る順番で、三角形の頂点を順次旋回軸にして荷台を信地旋回させてもよい。
【0010】
上記運搬装置は、荷台に対して、荷台の移動方向に摺動自在な一対のレール部材を更に備えてもよい。上記運搬装置において、4本の脚部は、一対のレール部材に対して、一対のレール部材の延在方向に摺動自在に結合され、一対のレール部材を介して荷台を支持してもよい。
【0011】
上記運搬装置において、一対のレール部材の各々は、荷台に対して摺動した場合に、荷台の移動方向について荷台よりも前方または後方に突出して、荷台よりも前方または後方で脚部のいずれかを支持してもよい。上記運搬装置において、一対のレール部材の各々は、互いに平行に延在する2条の嵌合部を介して荷台に対して結合してもよい。
【0012】
上記運搬装置において、4本の脚部は、重力方向について下側から荷台を支持してもよい。上記運搬装置は、重力方向について下側から4本の脚部が支持する枠体を更に備えてよい。上記運搬装置において、荷台は、枠体から吊り下げた状態で支持されてもよい。
【0013】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これら特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施例に係る運搬装置101の模式的斜視図である。
【
図2】運搬装置101の制御系を示すブロック図である。
【
図3】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図4】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図5】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図6】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図7】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図8】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図9】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図10】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図11】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図12】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図13】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図14】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図15】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図16】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図17】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図18】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図19】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図20】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図21】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図22】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図23】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図24】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図25】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図26】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図27】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図28】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図29】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図30】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図31】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的斜視図である。
【
図32】運搬装置101が段差を通過する動作を説明する模式的平面図である。
【
図33】運搬装置101の旋回時の状態を示す模式的斜視図である。
【
図34】運搬装置101の旋回時の状態を示す模式的平面図である。
【
図35】運搬装置101の旋回時の動作を説明する模式的平面図である。
【
図36】運搬装置101の旋回時の動作を説明する模式的平面図である。
【
図37】運搬装置101の旋回時の状態を示す模式的斜視図である。
【
図38】運搬装置101の旋回時の状態を示す模式的平面図である。
【
図39】運搬装置101の旋回時の状態を示す模式的斜視図である。
【
図40】運搬装置101の旋回時の状態を示す模式的平面図である。
【
図41】運搬装置101の旋回時の動作を説明する模式的平面図である。
【
図42】運搬装置101の旋回時の動作を説明する模式的平面図である。
【
図43】運搬装置101の旋回時の動作を説明する模式的平面図である。
【
図44】運搬装置101の旋回時の動作を説明する模式的平面図である。
【
図45】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図46】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図47】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図48】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図49】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図50】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図51】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図52】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図53】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図54】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図55】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図56】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図57】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図58】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図59】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図60】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図61】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図62】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図63】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図64】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図65】通路240を通過する運搬装置101の模式的平面図である。
【
図66】他の実施例に係る運搬装置102の模式的斜視図である。
【
図67】他の実施例に係る運搬装置103の模式的斜視図である。
【
図68】他の実施例に係る運搬装置104の部分拡大断面図である。
【
図69】他の実施例に係る運搬装置105の
模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではない。下記の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、一実施例に係る運搬装置101の模式的斜視図である。運搬装置101は、荷台110、レール部120、移動ユニット131、132、133、134、および脚部141、142、143、144を備える。
【0017】
荷台110は、平坦で水平な搭載面を上面に有し、搭載面上に運搬する荷物が搭載される。荷物は、一般貨物の他、人が座った車椅子等であってもよい。なお、図中で、搭載面に表された矢印Aは、運搬装置101の仮の進行方向を示している。以降の説明においては、矢印Aが示す方向を、運搬装置101が前方に直進する場合の進行方向Aとする。
【0018】
レール部120は、荷台110の図中下側に位置する、互いに平行な一対の固定レール121、123を、第1のレールの一例として有する。固定レール121、123は、荷台110の図中下面において、荷台110の進行方向と平行に、荷台110の両側端に沿って配され、荷台110に対して固定されている。
【0019】
レール部120は、固定レール121、123に嵌合する一対の移動レール122、124を、第2のレールの一例として有する。移動レール122は固定レール121に対して、それぞれ摺動可能に嵌合して、荷台110の側端部に沿って、荷台110の外側に配される。これにより、移動レール122、124は、荷台110の進行方向について、荷台110から前方または後方に突き出すように変位する。
【0020】
なお、レール部120は、移動レール122、124を、固定レール121、123に対して摺動させる駆動力を発生する駆動部(不図示)を、移動レール122、124のそれぞれに対応して個別に有する。駆動部は、例えば電気モータにより移動レール122、124を固定レール121、123に対して摺動させる。また、駆動部は、移動レール122、124が固定レール121、123に対して摺動していない場合は、移動レール122、124の摺動を制動して規制する。移動レール122、124の摺動および固定は、電気信号等によりレール部120の外部から個別に制御できる。
【0021】
移動ユニット131、132、133、134は、移動部の一例であり、
図1に示した状態では、荷台110の四隅近傍に配置され、1対の移動ユニット131、133が、一方の移動レール122に、もう1対の移動ユニット132、134が他方の移動レール124に、それぞれ個別に嵌合している。移動ユニット131、132、133、134のそれぞれは、嵌合する移動レール122、124に沿って、移動レール122、124の延在方向に摺動する。
【0022】
移動ユニット131、132、133、134のそれぞれは、電気モータ等の原動機を個別に有して、移動レール122、124に沿って移動する。これにより、移動ユニット131、132、133、134は、移動レール122、124に沿って、すなわち、図中に矢印Bで示すように水平方向に移動できる。また、移動ユニット131、132、133、134が移動レール122、124に対して摺動していない場合は、移動ユニット131、132、133、134は移動レール122、124に対する摺動を規制される。これにより、レール部120および荷台110に対する移動ユニット131、132、133、134の水平方向の相対位置を、電気信号等によりレール部120の外部から個別に制御できる。
【0023】
脚部141、142、143、144は、それぞれ、移動ユニット131、132、133、134に側方から保持され、移動ユニット131、132、133、134、移動レール122、124、および固定レール121、123を介して荷台110に連結されている。脚部141、142、143、144のそれぞれは、移動ユニット131、132、133、134に対して側方から嵌合しており、移動ユニット131、132、133、134に対して、図中に矢印Cで示すように垂直に摺動できる。
【0024】
移動ユニット131、132、133、134のそれぞれは電気モータ等の原動機を個別に有し、脚部141、142、143、144を移動レール122、124に対して移動させる。これにより、脚部141、142、143、144の各々は、移動ユニット131、132、133、134に沿って、すなわち、図中垂直方向に移動できる。
【0025】
また、脚部141、142、143、144が移動ユニット131、132、133、134に対して摺動していない場合、移動ユニット131、132、133、134は、脚部141、142、143、144の摺動を規制する。これにより、レール部120および荷台110に対する脚部141、142、143、144の垂直方向の相対位置を、移動ユニット131、132、133、134の外部から個別に変更できる。
【0026】
なお、図示の例では、脚部141、142、143、144は、運搬装置101を平面視した場合に、荷台110およびレール部120の組立体の外側に位置する。これにより、移動ユニット131、132、133、134による脚部141、142、143、144の昇降が荷台110およびレール部120に妨げられることがなくなり、脚部141、142、143、144の垂直方向の移動量を大きくしやすくなる。
【0027】
更に、脚部141、142、143、144の各々は、その下端に、走行部を形成する走行ユニット151、152、153、154を個別に有する。走行ユニット151、152、153、154の各々は、図中に矢印Dで示すように回転し、または停止する駆動輪を有する。
【0028】
また、走行ユニット151、152、153、154は、駆動力が生じていない駆動輪の回転を規制して、当該走行ユニット151、152、153、154が設けられた脚部141、142、143、144の走行を制動する。更に、151、152、153、154の各々は、図中に矢印Eで示すように垂直な軸の周りに回転して、駆動輪による駆動力を作用させた脚部141、142、143、144の進行方向を変更できる。これら、駆動輪の回転および制動と、駆動輪による走行方向とは、走行ユニット151、152、153、154毎に、個別に制御できる。
【0029】
図2は、運搬装置101に設けることができる制御部160の構成を模式的に示すブロック図である。図示のように、制御部160は、レール部120と脚部141、142、143、144との各々に関して、個別に指示を伝える。
【0030】
更に、制御部160は、レール部120において、進行方向Aに向いた場合の左側の移動レール122の荷台110に対する相対位置と、右側の移動レール124の荷台110に対する相対位置とを、個別に指定できる。これにより、移動ユニット131、132、133、134を介して移動レール122、124に嵌合する脚部141、142、143、144の荷台110に対する相対位置を、荷台110の左右で個別に指定できる。また、見方を変えると、ひとつの配置に固定された脚部141、142、143、144に対する荷台110の相対位置を、進行方向Aに平行な方向に変更することができる。
【0031】
また更に、制御部160は、移動ユニット131、132、133、134に個別に指示を与えることにより、脚部141、142、143、144の各々の荷台110に対する水平方向および垂直方向の位置を、脚部141、142、143、144毎に個別に指示できる。これら、レール部120および移動ユニット131、132、133、134への指示を組み合わせることにより、制御部160は、荷台110に対する脚部141、142、143、144の相対位置を、広い範囲で任意に設定できる。
【0032】
更に、制御部160は、脚部141、142、143、144の各々について、走行ユニット151、152、153、154毎に、個別に走行速度と走行方向を指定することにより、対応する移動ユニット131、132、133、134および走行ユニット151、152、153の各々に対して、停止および制動状態を含む走行速度の指定と、走行方向の指定とを、脚部141、142、143、144毎に個別に与えることができる。
【0033】
図3は、運搬装置101が、途中に段差223がある通路220を走行する状態を示す図である。また、
図4は、
図3と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0034】
なお、以降の説明においては、図中に示すように、運搬装置101の移動方向Aについて前方を「前」、後方を「後」とし、前方に向いた場合の左右側方を、それぞれ「右」、「左」と記載する。この記載は、以降の他の図の説明においても同様である。
【0035】
通路220は、下段221および上段222の間に、垂直な蹴上げを形成する段差223を有する。運搬装置101は、当初は下段221に位置し、図中右方に移動する。また、移動の過程で段差223を越える。
【0036】
制御部160は、
図1に示した状態と同様に、また、
図3に示すように、4本の脚部141、142、143を荷台110の四隅近傍に配置している。よって、荷台110は、脚部141、142、143、144の4本により4箇所で支持される。荷台110の中心に位置する重心Gは、4本の脚部141、142、143、144から略等距離に位置し、荷台110の支持は安定している。
【0037】
また、制御部160は、走行ユニット151、152、153、154の駆動輪を、すべて移動方向Aと平行に向ける。この状態で、制御部160は、走行ユニット151、152、153、154の全ての駆動輪を同じ方向に回転させて、通路220に沿って運搬装置101を直進させる。やがて、運搬装置101は段差223の直前に到着する。
【0038】
図5は、通路220において運搬装置101が段差223を乗り越える昇段動作を説明する図である。また、
図6は、
図5と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0039】
次に、制御部160は、3本の脚部141、142、143の走行ユニット151、152、153を停止させた状態で、右後の4本目の脚部144の移動ユニット134を動作させて、図中に矢印M1で示すように、脚部144の荷台110に対する相対位置を水平方向に変化させる。これにより、脚部144は、移動方向Aについて荷台110の中央付近に移動する。
【0040】
脚部144を移動させる場合に、制御部160は、走行ユニット154の駆動輪も前進方向に回転させて、移動ユニット134と協働させてもよい。これにより、脚部144を円滑に移動できる。
【0041】
脚部144が移動方向Aについて荷台110の中央に位置している場合、荷台110の重心Gは、
図6に三角形Fで示すように、3本の脚部141、143、144を頂点とする三角形の内側であって、当該三角形の中央付近に位置する。よって、3本の脚部141、142、143を用いて、水平方向に異なる3箇所で、荷台110を安定に支持できる。
【0042】
図7は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図8は、
図7と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0043】
制御部160は次に、右前の移動ユニット132を動作させて、右前の脚部142を、図中に矢印M2で示すように上昇させる。これにより、脚部142の走行ユニット152は、少なくとも通路220の上段222の床面よりも高い位置に達するまで、荷台110に対する垂直方向の相対位置を変化する。そして、図中に破線で示すように、右前の脚部142は、荷台110を支持する役割から解放される。
【0044】
なお、
図8に示すように、荷台110は、脚部142以外の3本の脚部141、143、144により支持されている。従って、上記の動作により脚部142が下段221の床面から離れても、荷台110は、3本の脚部141、142、143により安定に支持される。
【0045】
図9は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図10は、
図9と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0046】
制御部160は次に、移動ユニット132を介して脚部142に結合している移動レール124を、図中に矢印M3で示すように移動方向Aについて前方に移動させる。また、制御部160は、移動レール124が前方に移動する間、移動ユニット134を移動ユニット132と反対向きに同じ速度で動作させる。これにより、移動レール124が前方に向かって移動しても、右後の脚部144は、移動方向Aについて荷台110の中央の位置に留まり続ける。
【0047】
これら一連の動作により、移動レール124は、その後端が脚部144の位置に達するまで前進する。このとき、移動レール124の先端は、脚部142を保持しつつ、荷台110よりも前方まで延伸する位置に移動して、脚部142を通路220の上段222の上方まで移動させる。
【0048】
なお、制御部160は、脚部142が段差223を越えるまでは、走行ユニット152を上段222の床面よりも高い位置に保ち、脚部142が上段222の上方に差しかかった後に走行ユニット152を上段222の床面に接地させてもよい。これにより、脚部142が前方に移動する過程で、走行ユニット152が段差223に接触する等の事故を未然に防止できる。
【0049】
図11は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図12は、
図11と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0050】
制御部160は次に、固定レール121に対して移動レール122を移動させる駆動部と、固定レール123に対して移動レール124を移動させる駆動部とを同時に同じ速度で動作させて、固定レール121、123に支持された荷台110を、図中に矢印M4で示すように、移動方向Aについて前方に移動させる。これにより移動方向Aについて前進した荷台110は、通路220の上段222に差しかかり、移動ユニット132を介して脚部142に結合された移動レール124の前端近傍まで移動する。
【0051】
こうして荷台110の位置が前方に移動したことにより、荷台110による荷重は、運搬装置101の前側に位置する3本の脚部141、142、144にかかる。また、最後方に位置する左後の脚部143は、荷台110を支持する役割から解放される。しかしながら、
図11に示すように、荷台110は依然として3本の脚部141、142、144により支持されており、荷台110の重心Gは、移動方向Aについて前側に位置する3本の脚部141、142、144を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置し、荷台110の支持は安定している。
【0052】
このように、制御部160は、いわば、荷台110を脚部141、142、143、144に対して相対移動させることにより、運搬装置101全体の重心を移動して、4本の脚部141、142、143、144のうちで荷台110を支持する3本の組み合わせを切り換えることができる。
【0053】
図13は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図14は、
図13と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0054】
制御部160は次に、左後の脚部143の移動ユニット133を動作させて、図中に矢印M
5で示すように、移動方向Aについて後方に残った脚部143を、脚部141に隣接する位置まで移動レール122に沿って移動させる。これにより、荷台110の右側で移動レール124の両端近傍に位置する一対の脚部142、144と、荷台110の左側で移動方向Aについて中央で隣接する一対の脚部141、143とによって、
図14に三角形Fで示すように、3箇所で荷台110が支持される。
【0055】
なお、
図13、14に示した状態の運搬装置101において、荷台110の左側の脚部141、143は互いに隣接している。よって、荷台110は三角形Fを形成する配置にある3本の脚部141、142、144により支持され、荷台110における重心Gの位置は殆ど変化しない。このため、脚部141、142、143、144による荷台110の支持は安定している。
【0056】
図15は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図16は、
図15と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0057】
制御部160は次に、左前の移動ユニット131を動作させて、左前の脚部141を、図中に矢印M6で示すように上昇させる。これにより、脚部141の走行ユニット151は、少なくとも通路220の上段222の床面よりも高い位置に達するまで、荷台110に対する垂直方向の相対位置を変化する。
【0058】
なお、
図16に示す通り、荷台110の左側では、脚部141、143が隣接した位置にある。よって、脚部141が上昇して荷台110を支持しなくなっても、荷台110は3本の脚部142、143、144により支持されている。よって、荷台110の重心Gは、脚部142、143、144を頂点とする三角形Fの中心付近に位置し、荷台110の支持は安定している。
【0059】
図17は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図18は、
図17と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0060】
制御部160は次に、固定レール121に対して移動レール122を移動させる駆動部を動作させて、移動ユニット131を介して脚部141に結合している移動レール122を、図中に矢印M7で示すように移動方向Aについて前方に移動させる。また、制御部160は、移動レール122が前方に移動する間、移動ユニット133を移動ユニット131と反対向きに同じ速度で動作させる。これにより、移動レール122が前方に向かって移動しても、左後の脚部143は、移動方向Aについて荷台110の中央の位置に留まり続ける。
【0061】
これら一連の動作により、移動レール122は、その後端が脚部143の位置に達するまで前進する。このとき、移動レール122の先端は、脚部141を保持しつつ移動して、脚部144を段差223の上段222において、右前の脚部142よりも前方であって荷台110よりも前方に延伸する位置まで移動する。
【0062】
なお、上記の動作において、制御部160は、脚部141が段差223を越えるまでは、走行ユニット151を上段222の床面よりも高い位置に保ち、脚部141が上段222の上方に差しかかった後に走行ユニット151を上段222の床面に接地するように制御してもよい。これにより、脚部141が前方に移動する過程で、走行ユニット151が段差223に接触する等の事故を未然に防止できる。
【0063】
図19は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図20は、
図19と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0064】
制御部160は次に、固定レール121に対して移動レール122を移動させる駆動部と、固定レール123に対して移動レール124を移動させる駆動部とを同時に同じ速度で動作させて、固定レール121、123に支持された荷台110を、図中に矢印M8で示すように、移動方向Aについて前方に移動させる。これにより前進した荷台110は、前方に突出している移動レール122の前端近傍まで移動する。
【0065】
こうして荷台110の位置が前方に移動したことにより、荷台110による荷重は、運搬装置101の前側に位置する3本の脚部141、142、143にかかる。また、最後方に位置する右後の脚部144は、荷台110を支持する役割から解放される。しかしながら、
図20に示すように、荷台110は依然として3本の脚部141、142、143により支持されており、荷台110における重心Gの位置は、荷台110の略中心から殆ど移動しない。よって、荷台110の支持は安定している。このように、制御部160は、いわば、荷台110を脚部141、142、143、144に対して相対移動させることにより、運搬装置101全体の重心を移動して、4本の脚部141、142、143、144のうちで荷台110を支持する3本の組み合わせを切り換えることができる。
【0066】
図21は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図22は、
図21と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0067】
制御部160は次に、右後の移動ユニット134を動作させて、右後の脚部144を、図中に矢印M9で示すように上昇させる。これにより、脚部144の走行ユニット154は、段差223よりも高い位置に達するまで、荷台110に対する垂直方向の相対位置を変化する。
【0068】
なお、
図21に示す通り、荷台110が前方に移動すると、荷台110は、3本の脚部141、142、143により支持される。このため、脚部144が上昇して荷台110を支持しなくなっても、荷台110の重心Gは、3本の脚部141、142、143を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置し、荷台110の支持は安定している。
【0069】
図23は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図24は、
図23と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0070】
制御部160は次に、右後の移動ユニット134を動作させて、右後の脚部144を、図中に矢印M10-1で示すように、移動方向Aについて前方に移動させる。これにより、脚部144の走行ユニット154は、荷台110の中央付近まで移動して右前の脚部142に隣接すると共に、段差223の上段222の上方に移動する。従って、右後の脚部144を上段222に降着させることにより、右前の脚部142を荷台110の支持から解放できる状態になる。
【0071】
図25は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図26は、
図25と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0072】
制御部160は次に、移動ユニット132を介して脚部142に結合している移動レール124を、図中に矢印M10-2で示すように移動方向Aについて前方に移動させる。また、制御部160は、移動レール124が前方に移動する間、移動ユニット134を移動ユニット132と反対向きに同じ速度で動作させる。これにより、移動レール124が前方に向かって移動しても、右後の脚部144は、移動方向Aについて荷台110の中央の位置に留まり続ける。
【0073】
これら一連の動作により、移動レール124は、その後端が脚部144の位置に達するまで前進する。このとき、移動レール124の先端は、脚部142を保持しつつ、荷台110よりも前方まで延伸する位置に移動して、脚部142を通路220の上段222の上方まで移動させた後、右前の走行ユニット152を上段222の床面に降着させる。
【0074】
図27は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図28は、
図27と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0075】
制御部160は次に、固定レール121に対して移動レール122を移動させる駆動部と、固定レール123に対して移動レール124を移動させる駆動部とを同時に同じ速度で動作させて、固定レール121、123に支持された荷台110を、図中に矢印M11で示すように、移動方向Aについて前方に移動させる。これにより前進した荷台110は、前方に突出して脚部142を保持する移動レール122の前端近傍まで移動する。
【0076】
こうして荷台110の位置が前方に移動したことにより、荷台110による荷重は、運搬装置101の前側に位置する3本の脚部141、142、144にかかる。また、最後方に位置する右後の脚部143は、荷台110を支持する役割から解放される。
【0077】
しかしながら、
図28に示すように、荷台110は依然として3本の脚部141、142、144により支持されており、荷台110における重心Gの位置は、平面図において脚部141、142、144が形成する三角形の略中心から殆ど移動しない。よって、荷台110の支持は安定している。このように、制御部160は、いわば、荷台110を脚部141、142、143、144に対して相対移動させることにより、運搬装置101全体の重心を移動して、4本の脚部141、142、143、144のうちで荷台110を支持する3本の組み合わせを切り換えることができる。
【0078】
図29は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図30は、
図29と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0079】
制御部160は次に、左後の移動ユニット133を動作させて、左後の脚部143を、図中に矢印M12で示すように上昇させる。これにより、脚部143の走行ユニット153は、段差223の上段222の床面よりも高い位置に達するまで、荷台110に対する垂直方向の相対位置を変化する。
【0080】
なお、
図28に示した通り、荷台110が前方に移動すると、荷台110は3本の脚部141、142、144により支持される。このため、脚部143が上昇して荷台110を支持しなくなっても、荷台110の重心Gと、3本の脚部141、142、144を頂点とする三角形の中央付近に位置し、荷台110の支持は安定している。
【0081】
図31は、運搬装置101の昇段動作の次の段階を説明する図である。また、
図32は、
図31と同じ状態の運搬装置101を見下ろす視点から示す模式的平面図である。
【0082】
制御部160は次に、右側の固定レール121に対して移動レール122を、図中に矢印M
13で示すように、移動方向Aについて前方に向かって移動させる。このとき、移動レール122の両端に保持された一対の脚部141、143も、移動レール122と共に、移動方向Aについて前方に移動する。移動レール122は、ここでは、その前端が他方の移動レール124の前端の位置に到達するまで移動する。こうして、運搬装置101は、
図1および
図3に示したように4本の脚部141、142、143、144で荷台110を支持した状態で、段差223の上段222への昇段動作を完了する。
【0083】
なお、上記の動作においても、制御部160は、脚部143が段差223を越えるまでは、走行ユニット153を上段222の床面よりも高い位置に保ち、脚部143が上段222の上方に差しかかった後に走行ユニット153を上段222の床面に接地するように制御してもよい。これにより、脚部143が前方に移動する過程で、走行ユニット153が段差223に接触する等の事故を未然に防止できる。
【0084】
また、上記の例では、1つの段差223を越えるまでの一連の動作を説明したが、階段のように複数の段差223が連続する場合、制御部160は、これら一連の昇段動作を繰り返せばよい。また、住宅の階段のように踏込み寸法が短い通路を昇段する場合は、3段以上の段差にまたがって昇段動作を行うこともできる。
【0085】
更に、昇段動作を例にあげて説明したが、運搬装置101が段差を降りる降段動作も、昇段動作と同様に、4本の脚部141、142、143、144のうちの3本で荷台110を支持しつつ、荷台を支持する役割から解放されたいずれかの脚部141、142、143、144の荷台110に対する相対位置を水平方向または垂直方向に変化させる動作を繰り返すことにより実行できる。また、運搬装置101は、段差に限らず、傾斜面や不整地における運搬にも使用できる。
【0086】
図69は、他の運搬装置105の形態を示す図である。運搬装置105は、脚部141、142、143、144の各々が、走行ユニット151、152、153、154を備えていない点で、運搬装置101と構成が異なる。また、荷台113が、進行方向Aの前側で開いた形状を有する点でも、運搬装置101と構成が異なる。
【0087】
先に説明した運搬装置101が段差223を越える一連の動作は、走行ユニット151、152、153、154を用いることなく完遂できる。すなわち、4本の脚部141、142、143、144のうちの3本を床面に着けた状態で残る1本を上昇させて床から離すことにより、走行ユニット151、152、153、154を用いることなく、移動レール122、124に沿って脚部141、142、143、144を順次前進させることができる。従って、
図69に示した運搬装置105であっても、段差223を乗り越えて直進することができる。
【0088】
また、運搬装置105は、段差223を越える動作に準じて脚部141、142、143、144を順次移動させることにより、平坦な床の上を直進することもできる。更に、例えば、車椅子、台車等のようにそれ自体が走行できるものを、運搬装置105の荷台113と結合することにより、運搬装置105と共に走行することが可能になる。すなわち、段差223を越える場合は、運搬装置105の脚部141、142、143、144を適宜接地させ、平坦な床を移動する場合は、脚部141、142、143、144を4本とも上昇させた状態で車椅子等の車輪で走行する。
【0089】
これにより、車椅子等により平坦な床を効率よく走行する機能と、運搬装置105により段差223を乗り越える機能とを兼ね備えることができる。また、リフトが設置されていない階段等に運搬装置105を配置して、リフトの代替として一時的に用いる使い方もできる。
【0090】
既に説明したように、脚部141、142、143、144の各々に設けられた走行ユニット151、152、153、154は、個別に走行方向を変更できる。従って、制御部160は、移動方向Aについて例えば前側または後側の一対の走行ユニット151、152を右または左に向けることにより、運搬装置101の移動方向を変更できる。
【0091】
しかしながら、運搬装置101が走行する通路が、例えば側壁に挟まれている場合、前側または後側の車輪による操舵では曲がれない場合がある。また、前側の一対の走行ユニット151、152と、後側の一対の走行ユニット153、154とを、互いに反対の方向に向けることにより、運搬装置101の回転半径を縮小することができる。しかしながら、そのような旋回方法であっても、運搬装置101自体の横幅よりも相当に広い通路幅が必要になる。
【0092】
図33は、運搬装置101が移動方向を変更する場合の旋回動作について説明する図である。また、
図34は、
図33に示した状態の運搬装置101を見下ろした様子を示す模式的平面図である。
【0093】
図示の運搬装置101において、制御部160は、脚部141、142、143、144を荷台110の四隅に配している。しかしながら、運搬装置101の左前で、前後の走行ユニット151、153において駆動輪の走行方向を、移動方向Aと同じ方向に設定しているのに対して、運搬装置101の右側では、走行ユニット152、154の走行方向を、運搬装置101の移動方向Aに対して略直交させている。
【0094】
図35は、上記の状態にある運搬装置101が、曲がり角を有する通路210で方向転換をする場合の動作を説明する模式的平面図である。なお、図面を簡潔に表示する目的で、運搬装置101を、一点鎖線で示す荷台110と、黒丸により示す走行ユニット151、152、153、154の位置により表している。
【0095】
図示の運搬装置101において、制御部160は、運搬装置101の左前および左後の走行ユニット151、153を、いずれも移動方向Aに向かって駆動している。また、制御部160は、運搬装置101の右前の走行ユニット152の走行方向が旋回方向になるように駆動輪を駆動させる一方、右後の走行ユニット154の走行方向は、右前の走行ユニット152と走行方向が反対になるように駆動輪を駆動させている。
【0096】
制御部160は、各走行ユニット151、152、153、154を上記のように制御することにより、通路の曲がり角の内側を旋回軸Pとして、運搬装置101を信地旋回させている。これにより、運搬装置101の旋回に必要な通路210の幅を縮小できる。ただし、例えば、回り階段のように、通路210の曲がり角に段差がある場合は、信地旋回の途中で走行方向Aを変更しつつ段差を越えることは難しい。
【0097】
図36は、段差と曲がり角とを有する通路230における、運搬装置101の旋回動作の手順を説明する平面図である。図示の通路230は、
図35に示した通路210と同じ幅および平面形状を有する。ただし、通路230は、その曲がり角に、運搬装置101の移動方向Aに従って上昇する段差234、235を有する。このため、運搬装置101は、互いに高さが異なる下段231、中段232、上段233を順次移動する。
【0098】
運搬装置101の下段231から中段232への移動、または、中段232から上段233への移動については、
図3から
図32を参照して既に説明した通り、段差223を有する直線状の通路220と同じ手順で、運搬装置101を移動させることができる。図示の段階では、運搬装置101は、下段231から移動してきた方向で、中段232に位置している。また、次に説明するように、旋回方向について右側の走行ユニット152、154(脚部142、144)の位置が変わっている。
【0099】
図37は、
図36に示した状態の運搬装置101を示す斜視図である。運搬装置101が、いわば踊り場である中段232で旋回を開始する場合、制御部160は、進行方向Aに対して右側で、一対の脚部142、144を移動レール124に沿って移動し、進行方向Aについて略中央で互いに隣接した状態にする。また、運搬装置101の左前側では、走行ユニット151の駆動輪が垂直軸の廻りに略90°回転する。
【0100】
図38は、
図37に示した状態の運搬装置101の模式的平面図である。運搬装置101は、進行方向Aについて、左側の前後両端と、右側の中央との3箇所で、脚部141、142、143が荷台110を支持している。図中に破線Fで示すように、荷台110の重心Gは、脚部141、142、143を頂点とする三角形の内側中央付近に位置しており、脚部141、142、143による荷台110の支持は安定している。
【0101】
また、図示のように、運搬装置101の左側の走行ユニット151では、矢印W1により示す駆動輪の向きは、移動方向Aと略直角をなす。また、運搬装置101の右側の走行ユニット152、154では、矢印W2、W4により示す駆動輪の向きは、移動方向Aと略平行である。更に、走行ユニット153では、矢印W3で示す駆動輪の向きは、三角形Fにおいて脚部141と脚部142とを結ぶ辺と略直交している。
【0102】
ここで、図中に矢印で示すように、制御部160は、少なくとも左前側の走行ユニット151の駆動輪を、脚部141が運搬装置10の右側に向かって移動する方向に回転駆動する。また、制御部160は、右側の一対の走行ユニット152、154の駆動輪を、脚部142、144が、後方やや右寄りに向かって移動する方向に回転駆動する。
【0103】
再び
図36を参照すると、制御部160は、
図37および
図38に示した状態に変形させた運搬装置101に対して、
図38を参照して説明した通りの方向に走行ユニット151、152、153を駆動させる。また、図中丸Hで囲んで示す走行ユニット153に関して、制御部160は、少なくとも駆動輪の回転を停止させ、脚部143の水平方向の移動を規制する。
【0104】
これにより、運搬装置10は、脚部143を旋回軸として固定し、三角形Fにおいて脚部141、142、144に挟まれた辺を運搬装置101の旋回方向に移動させる信地旋回をする。この信地旋回は、脚部143を旋回軸として、運搬装置101が30°旋回するまで継続する。
【0105】
上記の動作において旋回軸となる脚部143の走行ユニット153では、駆動輪の向きW3が、脚部141、142の移動方向Aと略直交している。このため、走行ユニット153の駆動輪の制動力以上に、旋回軸としての脚部143の移動を強く規制する。
【0106】
図39は、旋回動作を継続する運搬装置101の次の状態を模式的に示す斜視図である。運搬装置101が、最初の30°の信地旋回を終えると、制御部160は、走行ユニット151、152、153、154の設定を変更する。すなわち、運搬装置101の左側では、運搬装置101の前端および後端に位置する脚部141、143において、走行ユニット151、153の駆動輪の方向が、移動方向Aと平行に近い方向に変更される。また、運搬装置101の右側では、互いに隣接した状態にある一対の脚部142、144において、走行ユニット152、154の駆動輪の方向が、移動方向Aと直交する方向に変更される。
【0107】
図40は、
図39に示した状態の運搬装置101の模式的平面図である。運搬装置101の左側の走行ユニット151、153では、矢印W
1、W
3により示す通り、駆動輪が、後述する旋回軸Pを中心とする円の円周に沿った方向に向く。また、走行ユニット151、153の駆動輪は、進行方向Aに対して脚部141、143が前進するように順方向に回転する。
【0108】
運搬装置101の右側の走行ユニット152、154では、矢印W2、W4により示す駆動輪の向きは、移動方向Aと直交する。また、走行ユニット152、154の駆動輪の向きは、前側の走行ユニット152の駆動輪が右向きであり、後側の走行ユニット154の駆動輪が左向きである。
【0109】
図41は、
図39および
図40に示した状態の運搬装置101の動作を模式的に示す平面図である。上記のように設定された運搬装置101では、右側の走行ユニット151、153の駆動輪の回転により脚部141、143が移動方向Aに向かって移動した場合に、右側の走行ユニット152、154の駆動輪は、全く回転していなくても脚部142、144の移動を規制する。よって、制御部160は、丸Hで囲った走行ユニット152の駆動輪を旋回軸として固定し、運搬装置101に、三角形Fにおいて脚部141、143に挟まれた辺を運搬装置101の旋回方向に移動させる信地旋回をさせる。この信地旋回は、運搬装置101が30°旋回するまで継続する(
図42参照)。
【0110】
上記の動作において旋回軸となる脚部142、144の走行ユニット152、154では、駆動輪の向きW2、W4の向きが、脚部141、143の走行ユニット151、153の走行方向と略直交している。このため、走行ユニット152、154の駆動輪の制動力よりも大きな力で、旋回軸としての脚部142、144の移動を強く規制する。
【0111】
図42は、運搬装置101の旋回動作における次の段階を模式的に示す平面図である。この段階は、制御部160が、運搬装置101に、脚部141を旋回軸とした信地旋回させる。このため、走行ユニット152、153、154の駆動輪による脚部142、143、144の移動方向に対して、図中丸Hで囲んだ脚部141の走行ユニット151の駆動輪の回転が制動される。
【0112】
また、走行ユニット152、154の駆動輪は、脚部142、144を、斜め左後方に移動させる方向に向けられ、回転方向を設定される。また、走行ユニット153の駆動輪は、移動方向Aに対し左側に向かって脚部143を移動させる向きと回転方向を設定される。制御部160により上記のように設定された運搬装置10は、脚部141を旋回軸として、運搬装置101に残る30°を信地旋回させる(
図43参照)。
【0113】
このように、運搬装置101の制御部160は、4本の脚部141、142、143、144のうちの少なくとも3本を用いて3箇所で荷台110を支持しつつ、1箇所では走行ユニット151、152、153、154により脚部141、142、143、144の移動を制動し、他の2箇所では走行ユニット151、152、153、154により脚部141、142、143、144を移動させる。これにより生じる信地旋回で、運搬装置101を限られた面積で方向転換させる。従って、運搬装置101は、側壁等に囲まれた狭い通路210であっても、方向転換しつつ走行できる。
【0114】
次に、制御部160は、
図43に示すように、運搬装置101の移動方向Aに対して右側の走行ユニット152、154を保持する脚部142、144を移動レール122、124に沿って、移動レール122、124の両端近傍まで移動させる。こうして、
図44に示すように、運搬装置101は、狭い通路210内で、90°の方向転換を完了する。
【0115】
このように、制御部160は、段差と曲がり角とを有する通路230で運搬装置101の移動方向Aを変更する場合に、水平方向について異なる3箇所で荷台110を支持する脚部141、142、143、144が頂点となる三角形に沿って、荷台110を含む運搬装置101の旋回方向と逆に廻る順番で、上記三角形の頂点に位置する脚部141、142、143、144を順次旋回軸として少しずつ運搬装置101を信地旋回させる。
【0116】
これにより運搬装置101が旋回する場合に必要な通路の幅が過大になることが防止できる。また、旋回方向について内側の脚部142、144を、進行方向Aについて隣接させた状態で旋回することにより、運搬装置101は、踊り場である中段232の範囲で、段差234、235を越える昇段動作抜きに方向転換を完遂できる。
【0117】
いうまでもなく、運搬装置101の方向転換は、右旋回あるいは90°に限られるわけではない。また、上記の例では、90°の方向転換に対して30°ずつ3回の信地旋回により方向転換を完遂したが、1回の信地旋回の旋回量および信地旋回の回数が上記の例と同じ旋回量および回数に限定されるわけではない。
【0118】
なお、走行ユニット151、152、153、154は、駆動方向を360°変更できる。このため、例えば通路210の角に突き当たった状態で、全ての走行ユニット151、152、153、154の向きを90°変えて、荷台110を方向転換することなく移動方向Aに対して側方に移動することもできる。
【0119】
しかしながら、運搬装置101に人間が搭乗している場合は、側方への走行は不安感を与える。また、運搬装置101が移動方向Aに対して側方に走行した場合は、前述した段差を乗り越える動作ができない。よって、通路210が屈曲している場合も、運搬装置101の移動方向と移動方向Aとを一致させることが好ましい。
【0120】
図45から
図65は、段差と曲がり角とを有する通路240における、運搬装置101の旋回動作の手順を説明する図である。これらの図における通路240は、
図36に示した通路220と同じ幅および平面形状を有する。ただし、通路240は、その曲がり角の踊り場に、他の段差245、247に対して45°傾いた、さらにひとつの段差246を有する。このため、運搬装置101は、移動方向Aに従って順次上昇する下段241、中段下側242、中段上側243、および上段244を順次移動する。
【0121】
通路240の下段241までの運搬装置101の移動、および、上段244から先の移動については、
図3から
図32を参照して既に説明した通り、段差223を有する直線状の通路220と同じ手順で、運搬装置101を移動させることができる。そこで、ここでは、
図45に示すように、運搬装置101が下段241まで到達した状態から、
図64に示すように、運搬装置101が上段244に到達するまでの間の動作について説明する。
【0122】
なお、
図45から
図65までの図面において、荷台110を示す矩形の側部に配された白丸は、運搬装置101の移動方向Aについて後側の走行ユニット153、154を、同じく黒丸は移動方向Aについて前側の走行ユニット151、152を、それぞれ示す。また、図中において丸Hにより囲んだ走行ユニット151、152、153、154は、駆動輪に制動がかかったユニットであることを示す。更に、図中で四角Uにより囲んだ走行ユニット151、152、153、154は、対応する脚部141、142、143、144が荷台110の支持から解放されているユニットであることを示す。
【0123】
まず、
図46に示すように、制御部160は、前側の1対の走行ユニット151、152と、後右側の走行ユニット154の駆動輪に制動えかけた状態で、後左の走行ユニット153を前進させて、移動方向Aについて荷台110の中央に移動する。これにより、荷台110の重心Gが、脚部141、143、144に形成された三角形Fの内側に位置するようになるので、荷台110は、3本の脚部141、143、144により安定に支持される。従って、左前の脚部141を、荷台110の支持から解放できる状態になる。
【0124】
次に、
図47に示すように、制御部160は、左前の脚部141を上昇させて、左前の走行ユニット151を上昇させる。更に、制御部160は、左側の移動レール122を、荷台110よりも前方に延伸させて、左前の脚部141を、中段上側243の上方まで移動させる。その後、制御部160は、脚部142の走行ユニット152を中段上側243に降着させる。これにより、左前の脚部141も、荷台110の支持を担うことができる状態になる。
【0125】
次に、
図48に示すように、制御部160は、全ての走行ユニット151、152、153、154の駆動輪に制動をかけた状態で、脚部141、142、143、144に対して荷台110を前方に移動させる。これにより、荷台110の前端は、中段下側242に差しかかり、荷台110の支持は、前側に位置する3本の脚部141、142、143の3本に切り換わる。このとき、荷台110の重心Gは、脚部141、142、143を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置するので、荷台110の支持は安定している。
【0126】
なお、
図48に示した状態では、荷台110の右前の隅部が中段上側243に至る段差246を越えている。よって、制御部160は、荷台110が段差246に当接しないように、後側に位置する脚部142、143、144においても荷台110を、中段上側243の床面よりも高い位置に上昇させる。
【0127】
次に、
図49に示すように、制御部160は、左側前後の走行ユニット151、153の駆動輪に制動をかけた状態で右後の脚部144を前方(図中左方)に移動させて、移動方向Aについて荷台110の中央付近において、脚部144が右前の脚部142に隣接した状態にする。これにより、荷台110の支持が、右前の脚部142から右後の脚部144に受け渡されるので、脚部141を荷台110の支持から解放できる状態になる。
【0128】
次に、
図50に示すように、制御部160は、右前の脚部142を上昇させた状態で、右側の移動レール124を、荷台110よりも前方まで延伸させる。また、右前の脚部142を、中段下側242の奥まで移動させ、走行ユニット152を中段下側242の床面に降着させる。これにより、右前の脚部142が、荷台110の支持を担うことができる状態になる。
【0129】
次に、
図51に示すように、制御部160は、全ての走行ユニット151、152、153、154の駆動輪に制動をかけた状態で、脚部141、142、143、144に対して荷台110を前方に移動させる。これにより、荷台110の前端は、中段上側243に差しかかり、荷台110の支持は、前側に位置する3本の脚部141、142、144の3本に切り換えられる。よって、後方に残った左後の脚部143は、荷台110の支持から解放できる状態になる。このとき、荷台110の重心Gは、前側に位置する脚部141、142、144を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置するので、荷台110の支持は安定している。
【0130】
次に、
図52に示すように、制御部160は、左側前後の走行ユニット152、154において駆動輪を制動し、且つ、左後の脚部143を、下段241の床面から上昇させた状態で、中段下側242の上方まで移動させ、左前の脚部141に隣接した状態にする。その後、制御部160は、走行ユニット153を中段下側242の床面に降着させて、左後の脚部143が、荷台110の支持の担うことができる状態にする。このとき、荷台の重心Gは、3本の脚部142、143、144により図中に形成された三角形Fの内側に位置するので、荷台110の支持は安定している。
【0131】
次に、
図53に示すように、制御部160は、荷台110を支持している脚部142、143、144の走行ユニット152、153、154において駆動輪を制動した状態で、左側の移動レール122を前方に延伸すると共に、左前の脚部141を床面から上昇させた状態で、中段上側243の上方まで走行ユニット151を移動させる。更に、制御部160は、中段上側243の上方まで移動した走行ユニット151を、中段上側243の床面に降着させる。これにより、左前の脚部141は、荷台110の支持を担うことができる状態になる。
【0132】
次に、
図54に示すように、制御部160は、全ての走行ユニット151、152、153、154の駆動輪を制動させた状態で、脚部141、142、143、144に対して荷台110を前進させる。これにより、荷台110は、中段上側243上の脚部141、142と、中段下側242上の脚部143の3本に支持された状態になり、右後の脚部144を、荷台110の支持から解放できる状態になる。このとき、荷台110の重心Gは、前側に位置する脚部141、142、143を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置するので、荷台110の支持は安定している。
【0133】
次に、
図55に示すように、制御部160は、荷台110を支持する走行ユニット151、152、153の駆動輪を制動し、且つ、右後の脚部144を上昇させた状態で、右側移動レール124を前進させる。これにより、右後の走行ユニット154が中段下側242まで到達すると、制御部160は、走行ユニット154の移動を停止させる。ただし、この段階では、走行ユニット154を、を中段下側242の床面に降着させなくてもよい。従って、荷台110は、依然として、脚部141、142、143の3本により支持される。
【0134】
次に、
図56に示すように、制御部160は、左後の走行ユニット153の駆動輪を制動して、脚部143を旋回軸とした状態で、左前の走行ユニット151と右前の走行ユニット152との駆動輪を、図中に矢印P、Qで示すように中段上側243上で駆動して、運搬装置101を30°まで信地旋回させる。これにより、
図57に示すように、右後側の走行ユニット154は、下段241上で浮いた状態になる。しかしながら、荷台110は、3本の脚部141、142、143で支持されており、荷台110の重心Gは、脚部141、142、143を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置しているので、荷台110の支持は安定している。
【0135】
次に、
図57に併せて示すように、制御部160は、右前の走行ユニット152の駆動輪を中段上側243上で制動した状態で、中段上側243上で左前の走行ユニット151を、図中に矢印T、Wで示すように中段下側242上で左後の走行ユニット153の駆動輪をそれぞれ駆動して、運搬装置101を更に30°信地旋回する。これにより、
図58に示すように、左前の走行ユニット151は、段差247の直前まで到達する。
【0136】
次に、
図58に併せて示すように、制御部160は、下段241の上方に浮いていた右後の脚部144を、荷台110の側面に沿って前進させることにより、右後の走行ユニット154を、中段下側242の床面に再び降着させる。次いで、左前の走行ユニット151の駆動輪を制動した状態で、中段下側242上で、図中に矢印X、Yで示すように:左後の走行ユニット153の駆動輪と右後の走行ユニット154の駆動輪とを駆動して、運搬装置101を更に30°信地旋回する。
【0137】
これにより、
図59に示すように、運搬装置の移動方向Aは、当初曲がり角に進入したときの状態と比較すると、移動方向を90°変えたことになる。このとき、右前の走行ユニット152は、中段上側243上から中段下側242の上方に移動して宙に浮いた状態になる。しかしながら、荷台110は、中段上側243上に降着した左前の脚部141と、中段下側242に降着した後側の脚部143、144により支持されており、荷台の重心Gは、脚部141、143、144を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置しているので、荷台110の支持は安定している。
【0138】
次に、
図60に示すように、制御部160は、左側前後の走行ユニット151、153の駆動輪を制動した状態で、浮いている右前の脚部142を更に上昇させると共に、右側の移動レール124と共に荷台110よりも前方まで前進させる。次いで、制御部160は、走行ユニット152を、通路240の上段244の床面に降着させる。これにより、右前の脚部142は、荷台110を支持できる状態になる。
【0139】
次に、
図61に示すように、制御部160は、全ての走行ユニット151、152、153、154の駆動輪を制動した状態で、脚部141、142、143、144に対して荷台110を前方に移動する。これにより、荷台110の前端は、上段244に差しかかる。これにより、荷台110の支持は、相対的に前側に位置する3本の脚部141、142、144に切り換わる。このとき、荷台110の重心Gは、脚部141、142、144を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置するので、荷台110の支持は安定している。また、左後の脚部143が、荷台110の支持から解放できる状態になる。
【0140】
次に、
図62に示すように、制御部160は、右側前後の走行ユニット152、154の駆動輪を制動した状態で、移動方向Aについて荷台110の中央付近まで左後の脚部143を前方に移動させて、脚部143を左前の脚部141に隣接した状態にする。これにより、荷台110の支持を、左前の脚部141から左後の脚部143に受け渡して、脚部141を荷台110の支持から解放できる状態になる。
【0141】
次に、
図63に示すように、制御部160は、荷台110を支持する脚部142、143、144の走行ユニット152、153、154の駆動輪を制動し、且つ、左前の脚部141を上昇させた状態で、左側の移動レール122を、荷台110よりも前方まで延伸させる。次いで、左前の脚部141を、上段244の上方まで移動させ、走行ユニット151を上段244の床面に降着させる。これにより、左前の脚部141は、荷台110の支持を担うことができる状態になる。
【0142】
次に、
図64に示すように、制御部160は、全ての走行ユニット151、152、153、154の駆動輪を制動した状態で、脚部141、142、143、144に対して荷台110を前方に移動する。これにより、荷台110の前端は、概ね全体に上段244に差しかかり、荷台110の支持は、前側に位置する3本の脚部141、142、143に切り換えられる。よって、右後の脚部144は、荷台110の支持から解放できる状態になる。このとき、荷台110の重心Gは、脚部141、142、143を頂点とする三角形Fの内側中央付近に位置するので、荷台110の支持は安定している。
【0143】
次に、
図65に示すように、制御部160は、荷台110を支持する脚部141、142、143の走行ユニット151、152、153の駆動輪を制動し、且つ、右後の脚部144を上昇させた状態で、右側の移動レール124を前方に移動させて、右後の脚部144を、中段上側243の上方まで移動させる。その後、制御部160は、走行ユニット154を中段上側243に降着させて、右後の脚部144が、荷台110の支持を担うことができる状態にする。なお、この段階で、右後の脚部144を、中段上側243を飛ばして、上段244まで一気に移動させてもよい。
【0144】
図65に示した段階以降は、
図3から
図32を参照して既に説明したように、段差223を有する直線状の通路220と同じ手順で、運搬装置101を移動させることができる。このように、運搬装置101は、曲がり角の途中に段差246を有する通路240においても、幅をとらずに方向転換しつつ、段差を越えて移動できる。
【0145】
なお、上記の例に係る運搬装置101では、脚部141、142、143、144を移動レール122、124に対して垂直に摺動させることにより、走行ユニット151、152、153、154の各々を床面から離間させる構造となっている。しかしながら、走行ユニット151、152、153、154を床面から離間させる構造は、上記の例に限られず、運搬装置101が段差223、234、235、245、246、247を越えて移動する場合の妨げにさえならなければ、例えば脚部141、142、143、144の一部または全部が水平な軸の回りに回転する等、他の構造であってもよい。
【0146】
図66は、他の運搬装置102の構成を示す斜視図である。運搬装置102において運搬装置101と共通の構成要素については、同じ参照番号を付して説明を省く。
【0147】
運搬装置102は、脚部141、142、143、144の上端に移動レール122、124が載せられ、更に、移動レール122、124の上に固定レール121、123が載せられた構造を有する。荷台110は、固定レール121、123により重力方向について下方から支持されている。このように、重力方向について、脚部141、142、143、144、移動レール122、124、固定レール121、123、および荷台110を、重力方向について下側から順次積み重ねた構造とすることにより、簡潔な構造で荷台110の荷重を確実に支持でき、運搬装置102の機械的強度を容易に確保できる。
【0148】
なお、運搬装置102においても、脚部141、142、143、144は、移動レール122、124に沿って、移動方向Aと平行に、荷台110に対する相対位置を変えることができる。しかしながら、移動レール122、124が上端に載っているので、脚部141、142、143、144の荷台110に対する垂直方向の相対位置を変更できない。
【0149】
そこで、運搬装置102の脚部141、142、143、144の各々は、伸縮部171、172、173、174を下端に有する。これにより、走行ユニット151、152、153、154は、伸縮部171、172、173、174の各々の下端に配されている。このように、運搬装置102において、脚部141、142、143、144ば、それぞれの長さを個別に変えることにより、荷台110に対する相対位置を変化させる機能を代替している。
【0150】
図67は、他の運搬装置103の構成を示す斜視図である。運搬装置102と共通の構成要素に対しては、同じ参照番号を付して説明を省く。
【0151】
運搬装置103は、固定レール121、123が重力方向下側から支持する枠体111を有し、荷台110は、枠体111から吊り具112により吊り下げられた構造を有する点において、運搬装置102と異なる構造を有する。これにより、荷台110に荷物を搭載した場合の、運搬装置103全体の重心が低くなり、運搬装置103の安定性が向上する。
【0152】
図68は、また他の構造を有する運搬装置104の部分拡大断面図である。運搬装置104は、運搬装置103と同様に、脚部141の上端に、移動レール122、固定レール121、および枠体111を順次積層した構造を有する。
【0153】
運搬装置104は、脚部141と移動レール122とが、2条のアリ溝構造181、182により嵌合している点に固有の構造を有する。これにより、脚部141の移動レール122に対する取り付け強度を向上させ、運搬装置104としての耐荷重性能を向上できる。
【0154】
運搬装置104は、移動レール122と固定レール121とが、2条のアリ溝構造183、184により嵌合している点に固有の構造を有する。これにより、移動レール122の固定レール121に対する取り付け強度を向上させ、運搬装置104としての耐荷重性能を向上できる。
【0155】
上記のような複数のアリ溝構造による嵌合は、脚部141および移動レール122の接続に限られるわけではなく、他の脚部142、143、144と移動レール122、124の接続にも適用可能であることはもちろんである。また、あり溝構造の数も2条に限られるわけではなく、また、嵌合構造の断面形状も、既知のものから選択できる。
【0156】
同様に、複数のアリ溝構造による嵌合は、移動レール122および固定レール121の接続に限られるわけではなく、他方の移動レール124および固定レール123の接続にも適用可能である。更に、あり溝構造の数が2条に限られるわけではなく、また、嵌合構造の断面形状も変更可能であることは、脚部141、142、143、144の場合と同様である。
【0157】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0158】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0159】
101、102、103、104、105 運搬装置、110、113 荷台、111 枠体、112 吊り具、120 レール部、121、123 固定レール、122、124 移動レール、131、132、133、134 移動ユニット、141、142、143、144 脚部、151、152、153、154 走行ユニット、160 制御部、171、172、173、174 伸縮部、181、182、183、184 アリ溝構造、210、220、230、240 通路、221、231、241 下段、222、233、244 上段、232 中段、223、234、235、245、246、247 段差、242 中段下側、243 中段上側