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▶ 博雅▲緝▼因(北京)生物科技有限公司の特許一覧

<図1>
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図1
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2A
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2B
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2C
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2D
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2E
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2F
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2G
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2H
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2I
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図2J
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図3
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図4
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図5
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図6
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図7
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図8
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図9A
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図9B
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図9C
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図10
  • 特許-遺伝子編集T細胞及びその使用 図11
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】遺伝子編集T細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20221208BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61K31/7088
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020537277
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 CN2018106237
(87)【国際公開番号】W WO2019052577
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】201710842264.5
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710841323.7
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520047082
【氏名又は名称】博雅▲緝▼因(北京)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】EDIGENE BIOTECHNOLOGY INC.
【住所又は居所原語表記】Life Science Park,Floor 2,Building 2,22 KeXueYuan Road,Changping District,Beijing 102206,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲鵬▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】于 玲玲
(72)【発明者】
【氏名】董 曦
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106191062(CN,A)
【文献】国際公開第2014/191128(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/152015(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/106537(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/073955(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第103820454(CN,A)
【文献】国際公開第2016/069283(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/160721(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/164356(WO,A1)
【文献】Cell Research,2016年12月02日,(2017)27,p.154-157
【文献】Clin Cancer Res.,2017年05月01日,23(9),p.2255-2266
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞中の
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域、及
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域
をCRISPR/Cas9遺伝子編集技術によってインビトロで破壊することを含み、
(i)前記TRACゲノム領域の標的ヌクレオチド配列は、配列番号の配列と相補的であり、
(ii)前記B2Mゲノム領域の標的ヌクレオチド配列は、配列番号の配列と相補的であり、及
(iii)前記PD-1ゲノム領域の標的ヌクレオチド配列は、配列番号15の配列と相補的である、
遺伝子改変T細胞の調製方法。
【請求項2】
(i)前記TRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、
(ii)前記B2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及
(iii)前記PD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号15の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びPD-1を標的とするsgRNAを同時に当該T細胞に導入することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記sgRNAは、2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオにより修飾されたものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
記修飾は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、または3つの塩基、または3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体による修飾である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記sgRNAとCas9をコードするヌクレオチド配列を一緒に当該T細胞に導入する、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記sgRNAと、Cas9をコードするヌクレオチド配列とをエレクトロポレーションによって一緒に当該T細胞に導入し、前記エレクトロポレーション条件には、150~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;及び250V、0.5msから選択されるいずれかが含まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子編集されたT細胞から、TRAC、B2M及び/またはPD-1の発現量の低いT細胞をスクリーニングすることをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
RAC、B2M、及びPD-1遺伝子の同時ノックアウト効率が65%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
T細胞は健康な被験者に由来する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2017年9月18日に提出された中国特許出願201710842264.5および201710841323.7の優先権を享有することを主張する。当該中国特許出願の開示内容は、その全体が参照により本出願に取り込まれる。
【0002】
本発明はT細胞に関し、特に、ユニバーサルT細胞、CAR-T細胞及びTCR-T細胞を含む、遺伝子編集された単一遺伝子、二重遺伝子、及び三重遺伝子ノックアウトT細胞、及びその調製方法と使用に関する。
【背景技術】
【0003】
悪性腫瘍は、体の健康と命の安全を深刻に脅かす疾患となっており、腫瘍の治癒はずっと人類の夢であった。近年来、腫瘍免疫療法は広範に注目されており、特にCAR-T(Chimeric Antigen Receptor T Cells)技術の現れにより、腫瘍制御において画期的な発展が遂げられた。1989年にCAR-T技術が初めて適用され、2012年にペンシルベニア大学のCarl June教授が率いるチームによりEmily Whiteheadが治癒され、そして、2017年にFDA腫瘍薬物専門家諮問委員会(ODAC)が10:0の圧倒的な投票結果で、若年性進行B細胞性急性リンパ性白血病(r/rAll)の治療におけるノバルティスCAR-T薬CTL019の使用を推奨・承認した。
【0004】
一般的には、従来のCAR-T技術のT細胞は主に患者自身に由来し、GMP環境下で、インビトロでT細胞の分離、活性化、CAR導入、培養増殖を経て、最後に品質管理して患者の体内に再注入する。患者自身の状況の影響により、採血が不適切である、または採血してT細胞を単離した後に増殖が困難になる問題が起こる。患者の病状が危篤状態になった場合、T細胞の分離からCAR-Tの再注入まで、プロセス全体の待ち時間は、自体再注入のために面する重大な問題でもある。これらの問題は、CAR-T技術の広範な応用を制限してしまう。そのため、現在、CAR-T細胞療法の一つの重要な研究の方向は、健康な献血者のT細胞を使用して大量のCAR-T細胞を調製して患者の臨床使用を満足することである。この技術の確立は、CAR-T療法のコストを大幅に削減し、均一に調製された細胞の品質をより確実に保証し、患者が必要な時にすぐにCAR-T細胞を取得して治療することができる。
【0005】
本明細書全文でいくつかの文献が引用されている。ここで、各文献(いずれのジャーナル文章または要約、公開済みまたは未公開の特許出願、登録した特許、メーカーの仕様書、プロトコルなどを含む)は言及により本文に取り込まれる。しかしながら、ここに引用された文献が実際に本発明の既存技術であると認めるわけではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、本分野に存在する上記問題を解決するためになされた。本発明は、CRISPR/Cas9システムを利用してT細胞に対して単一遺伝子(TRAC、B2MまたはPD-1)、二重遺伝子(TRACとB2M)、及び三重遺伝子(TRAC、B2M及びPD-1)ノックアウトを行い、ノックアウト効率はそれぞれ90%(単一遺伝子)、81%(二重遺伝子)、及び67%(三重遺伝子)にも達している。これらの遺伝子編集されたT細胞は、異なる標的をターゲットとするCARまたはTCRにユニバーサルT細胞を提供し、腫瘍及びウイルス感染性疾患(例えば、HIV/AIDS)の治療における養子免疫と組み合わせた遺伝子編集技術を確立する方法を提供し、関連疾患の治療に関する研究に確かな技術基盤を築いた。それとともに、遺伝子改変されたT細胞(ユニバーサルT細胞、CAR-T及びTCR-Tを含む)は薬剤として、それを必要とする患者にいつでも使用できる。
【0007】
従って、一の態様において、本発明は、遺伝子編集技術を利用し、例えば、CRISPR/Cas9システムを利用してT細胞に対して効率的な単一遺伝子(TRAC、B2MまたはPD-1)、二重遺伝子(TRACとB2M)、または三重遺伝子(TRAC、B2M及びPD-1)ノックアウトを行うことにより、TCR、またはTCR/HLA、またはTCR/HLA/PD-1を発現しないユニバーサルT細胞を得る方法を提供している。それとともに、ユニバーサルT細胞を、必要なCARまたはTCRにいつでも結合可能にさせ、ユニバーサルCAR-TまたはTCR-Tを調製し、薬剤としてそれを必要とする患者にいつでも使用できる。さらに、新しい効果的な遺伝子標的の研究をサポートし、臨床免疫治療にタイムリー且つ効果的に応用できる。
【0008】
一つの態様では、本発明は、T細胞中の
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域(配列番号23に示される)、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域(配列番号24に示される)、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域(配列番号25に示される)、または2番染色体上の242795009から242795051番目のPD-1ゲノム領域(配列番号26に示される)を遺伝子編集技術によって破壊することを含む、遺伝子改変T細胞の調製方法を提供する。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域、B2Mゲノム領域、及びPD-1ゲノム領域はいずれも編集された。一部の実施形態では、遺伝子編集技術は、ジンクフィンガーヌクレアーゼに基づく遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術またはCRISPR/Cas9遺伝子編集技術、例えば、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術である。
【0009】
一部の実施形態では、本発明は、T細胞中の
(i)配列番号2~5から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列、
(ii)配列番号6~13から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列、及び/または
(iii)配列番号14~22から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるPD-1ゲノムの標的ヌクレオチド配列を遺伝子編集技術によって破壊することを含む、遺伝子改変T細胞の調製方法を提供する。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域、B2Mゲノム領域、及びPD-1ゲノム領域はいずれも編集された。一部の実施形態では、前記遺伝子編集技術は、ジンクフィンガーヌクレアーゼに基づく遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術またはCRISPR/Cas9遺伝子編集技術、例えば、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術である。
【0010】
一部の実施形態では、本発明は、T細胞中の、
(i)配列番号2または配列番号3から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列、
(ii)配列番号7または配列番号8から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列、及び/または
(iii)配列番号14または配列番号15から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるPD-1ゲノムの標的ヌクレオチド配列をCRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって破壊することを含む、遺伝子改変T細胞の調製方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、本発明は、T細胞中の、
(i)配列番号2と相補的であるTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列、
(ii)配列番号8と相補的であるB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列、及び/または
(iii)配列番号14と相補的であるPD-1ゲノムの標的ヌクレオチド配列をCRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって破壊することを含む、遺伝子改変T細胞の調製方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、本発明は、T細胞中の、
(i)配列番号2と相補的であるTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列、
(ii)配列番号8と相補的であるB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列、及び/または
(iii)配列番号15と相補的であるPD-1ゲノムの標的ヌクレオチド配列をCRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって破壊することを含む、遺伝子改変T細胞の調製方法を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、本発明は、T細胞中の、
(i)配列番号3と相補的であるTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列、
(ii)配列番号7と相補的であるB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列、及び/または
(iii)配列番号15と相補的であるPD-1ゲノムの標的ヌクレオチド配列をCRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって破壊することを含む、遺伝子改変T細胞の調製方法を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、本発明は、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2~5から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号6~13から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号14~22から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入する、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子改変T細胞を調製する方法を提供する。
【0015】
一部の実施形態では、本発明は、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2または配列番号3から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号7または配列番号8から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号14または配列番号15から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入する、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子改変T細胞を調製する方法を提供する。
【0016】
一部の実施形態では、本発明は、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2の配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号8の配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号15の配列を含むsgRNAをT細胞に導入する、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子改変T細胞を調製する方法を提供する。
【0017】
一部の実施形態では、本発明は、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2の配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号8の配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号14の配列を含むsgRNAをT細胞に導入する、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子改変T細胞を調製する方法を提供する。
【0018】
一部の実施形態では、本発明は、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号3の配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号7の配列を含むsgRNAをT細胞に導入し、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号15の配列を含むsgRNAをT細胞に導入する、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術によって遺伝子改変T細胞を調製する方法を提供する。
【0019】
一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNAを単独に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、B2Mを標的とするsgRNAを単独に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、PD-1を標的とするsgRNAを単独に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNAと、B2Mを標的とするsgRNAとを同時に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNAと、PD-1を標的とするsgRNAとを同時に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、B2Mを標的とするsgRNAと、PD-1を標的とするsgRNAとを同時に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNAと、B2Mを標的とするsgRNAと、PD-1を標的とするsgRNAとを同時に当該T細胞に導入する。
【0020】
一部の実施形態では、前記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとを含む)は、2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオ化により修飾されたものである。一部の実施形態では、前記化学修飾は、前記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとを含む)の5’末端の最初の1つ、2つ、及び/または3つの塩基及び/または3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体による修飾である。
【0021】
一部の実施形態では、上記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとを含む)をエレクトロポレーションによって前記T細胞に導入する。一部の実施形態では、上記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとを含む)と、Cas9をコードするヌクレオチド(例えば、mRNA)とをエレクトロポレーションによって一緒にT細胞に導入する。一部の実施形態では、前記エレクトロポレーション条件には、150~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;及び250V、0.5msから選択されるいずれかが含まれる。
【0022】
一部の実施形態では、遺伝子編集されたT細胞から、TRAC、B2M及び/またはPD-1の発現量の低いT細胞をスクリーニングすることをさらに含む。例えば、遺伝子編集されたT細胞における前記TRAC、B2M、またはPD-1の発現量は、遺伝子編集されていないT細胞における発現量の1/10である。
【0023】
一部の実施形態では、単一遺伝子ノックアウト効率(TRAC、B2M、またはPD-1)は80%以上、例えば、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上である;二重遺伝子の同時ノックアウト効率(例えば、TRACとB2M)は65%以上、例えば、65%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上である;TRAC、B2M、及びPD-1遺伝子の同時ノックアウト効率が50%以上、例えば、55%~100%、60%~100%、65%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、95%~100%、55%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上である。ここで、すべての数字は、数字自体と当該数字の間のあらゆる整数と小数をカバーする。ここでいうノックアウト効率は、TRAC遺伝子、B2M遺伝子、及びPD-1遺伝子から選択されるいずれか一つがノックアウトされる、二つが同時にノックアウトされる、三つが同時にノックアウトされる場合のノックアウト効率をカバーする。
【0024】
一部の実施形態では、前記T細胞は健康な被験者、腫瘍、またはウイルス感染患者(例えば、HIV感染患者)に由来する。一部の実施形態では、前記T細胞は、異なる分化段階の幹細胞、または前駆細胞から分化したT細胞である。
【0025】
一つの態様では、本発明は、上記方法によって調製された、遺伝子改変されたT細胞に係る。
【0026】
一つの態様では、本発明は、遺伝子改変されたT細胞であって、前記T細胞中の、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の1つ以上の部位が遺伝子編集技術によって破壊され、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の1つ以上の部位が遺伝子編集技術によって破壊され、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の1つ以上の部位が遺伝子編集技術によって破壊された、遺伝子改変されたT細胞に係る。一部の実施形態では、前記T細胞は、本願に記載のいずれかの方法によって調製されたものである。
【0027】
一つの態様では、本発明は、遺伝子改変されたT細胞であって、前記T細胞中の、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域は、表Dと表Eに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域は、表Bと表Cに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域は、表Fに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域は、表Gに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有する、遺伝子改変されたT細胞に係る。一部の実施形態では、前記T細胞は、本願に記載のいずれかの方法によって調製されたものである。
【0028】
一つの態様では、本発明は、養子細胞治療T細胞の調製のための、上記遺伝子改変されたT細胞の使用に係る。一部の実施形態では、前記養子細胞治療T細胞がCAR-T細胞またはTCR-T細胞である。
【0029】
一つの態様では、本発明は、キラメ抗原受容体(CAR)またはそれをコードするヌクレオチド、もしくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR、engineered T cell receptor)またはそれをコードするヌクレオチドを上記いずれか一つの遺伝子改変されたT細胞に導入することを含む、CAR-T細胞またはTCR-T細胞の調製方法に係る。
【0030】
一つの態様において、本発明は、
(i)TRACゲノム領域を破壊するように、14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノムを標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(ii)B2Mゲノム領域を破壊するように、15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域を標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(iii)PD-1ゲノム領域を破壊するように、2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域を標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び
(iv)キラメ抗原受容体(CAR)またはそれをコードするヌクレオチド、もしくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することを含む、CAR-TまたはTCR-T細胞の調製方法に係る。一部の実施形態では、前記方法は、CAS9またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することをさらに含む。
【0031】
一部の実施形態では、前記CAR-TまたはTCR-T細胞の調製方法はさらに、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2~5から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号6~13から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号14~22から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び
(iv)キラメ抗原受容体(CAR)またはそれをコードするヌクレオチド、もしくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、前記方法は、CAS9またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することをさらに含む。
【0032】
一部の実施形態では、前記CAR-TまたはTCR-T細胞の調製方法はさらに、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2または配列番号3から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号7または配列番号8から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号14または配列番号15から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び
(iv)キラメ抗原受容体(CAR)またはそれをコードするヌクレオチド、もしくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、前記方法は、CAS9またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することをさらに含む。
【0033】
一部の実施形態では、前記CAR-TまたはTCR-T細胞の調製方法はさらに、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号8の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号15の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び
(iv)キラメ抗原受容体(CAR)またはそれをコードするヌクレオチド、もしくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、前記方法は、CAS9またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することをさらに含む。
【0034】
一部の実施形態では、前記CAR-TまたはTCR-T細胞の調製方法はさらに、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号8の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号14の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び
(iv)キラメ抗原受容体(CAR)またはそれをコードするヌクレオチド、もしくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、前記方法は、CAS9またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することをさらに含む。
【0035】
一部の実施形態では、前記CAR-TまたはTCR-T細胞の調製方法はさらに、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号3の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号7の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号15の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び
(iv)キラメ抗原受容体(CAR)またはそれをコードするヌクレオチド、もしくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、前記方法は、CAS9またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入することをさらに含む。
【0036】
一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNAとB2Mを標的とするsgRNAを同時にT細胞に導入する。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びPD-1を標的とするsgRNAを同時にT細胞に導入する。
【0037】
一部の実施形態では、前記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとを含む)は、2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオ化により修飾されたものである。一部の実施形態では、前記化学修飾は、前記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとを含む)の5’末端の最初の1つ、2つ、及び/または3つの塩基及び/または3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体による修飾である。
【0038】
一部の実施形態では、上記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとを含む)をエレクトロポレーションによって前記T細胞に導入する。一部の実施形態では、上記sgRNA(TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとを含む)と、Cas9をコードするヌクレオチド(例えば、mRNA)とをエレクトロポレーションによって一緒に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、前記エレクトロポレーション条件には、150~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;及び250V、0.5msから選択されるいずれかが含まれる。
【0039】
一部の実施形態では、前記方法はさらに、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA及び/またはPD-1を標的とするsgRNAとCARまたはそれをコードするヌクレオチド、若しくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドとを同時に当該T細胞に導入することを含む。
【0040】
一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA及び/またはPD-1を標的とするsgRNAより、CARまたはそれをコードするヌクレオチド、若しくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドを先にT細胞に導入し、または、B2Mを標的とするsgRNA及び/またはPD-1を標的とするsgRNAを導入した後に、CARまたはそれをコードするヌクレオチド、若しくは遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)またはそれをコードするヌクレオチドを当該T細胞に導入する。
【0041】
一つの態様において、本発明は、上記方法によって調製されたCAR-T細胞またはTCR-T細胞に係る。
【0042】
一つの態様において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する上記遺伝子改変されたT細胞を含む、CAR-T細胞に係る。
【0043】
一つの態様では、本発明は、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域は、表Dと表Eに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域は、表Bと表Cに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域は、表Fに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域は、表Gに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有する、CAR-T細胞に係る。
【0044】
一つの態様において、本発明は、遺伝子操作されたTCRを発現する上記遺伝子改変されたT細胞を含む、TCR-T細胞に係る。
【0045】
一つの態様では、本発明は、
(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域は、表Dと表Eに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、
(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域は、表Bと表Cに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、及び/または
(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域は、表Fに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有し、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域は、表Gに記載のいずれか一つの遺伝子配列改変を有する、TCR-T細胞に係る。
【0046】
本発明の上記記載で言及されたTRACゲノム領域、B2Mゲノム領域、PD-1ゲノム領域の位置情報は、データベース:GRCh37(hg19)の遺伝子の野生型の配列位置情報を参考にして確定された。当業者は、その他のデータベースを参考にして上記ゲノム領域の対応する位置情報を取得する方法を知っている。
【0047】
一部の具体的な実施形態では、14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の野生型のヌクレオチド配列は、配列番号23(tatccagaaccctgaccctgccgtgtaccagctgagagactct)に示される。一部の具体的な実施形態では、15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の野生型のヌクレオチド配列は、配列番号24(atgtctcgctccgtggccttagctgtgctcgcgctactctctct)に示される。一部の具体的な実施形態では、2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域の野生型のヌクレオチド配列は、配列番号25(agcccagttgtagcaccgcccagacgactggccagggcgcctg)に示される。一部の具体的な実施形態では、2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の野生型のヌクレオチド配列は、配列番号26(cagtttagcacgaagctctccgatgtgttggagaagctgcagg)に示される。
【0048】
一つの態様において、本発明はさらに、上記遺伝子改変されたT細胞、CAR-T細胞またはTCR-T細胞を含む組成物(例えば、薬剤の組み合わせ)、キット、及び医療製品に係る。
【0049】
一つの態様において、本発明は、有効量の上記CAR-T細胞またはTCR-T細胞を被験者に投与することを含む、被験者の疾患を治療する方法に係る。一部の実施形態では、前記疾患は腫瘍である。一部の実施形態では、前記腫瘍は血液腫瘍である。一部の実施形態では、前記腫瘍はリンパ腫または白血病である。一部の実施形態では、前記CARは、本明細書の表Aに示される抗原(例えばCD19)などのような腫瘍特異的抗原(TSA)及び/または腫瘍に関連する抗原(TAA)を標的とする。
【0050】
一つの態様において、本発明は、配列番号2~22のいずれか一項を含むsgRNAまたはそのベクターに係る。一部の実施形態では、前記sgRNAは化学修飾されたものであり、前記化学修飾は、例えば、2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオ化による修飾である。一部の実施形態では、化学修飾は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/または3つの塩基及び/または3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体による修飾である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】化学修飾されたsgRNAと化学修飾されていないsgRNAを1回のエレクトロポレーションした後、対応する部位のノックアウト効率の比較を示す図である。
図2A-2J】図2Aは、修飾された異なるsgRNAとCRISPR/Cas9遺伝子ノックアウトツールとを組み合わせてHLAにおけるB2Mをノックアウトし、ノックアウト後、B2M遺伝子に対する各sgRNAのノックアウト効率を分析することを示す図である。図2Bおよび図2Cは、INDEL解析ソフトウェアを利用して、修飾された異なるsgRNAによりB2M遺伝子がノックアウトされた後のT細胞ゲノムのINDEL解析を行い、T細胞中でINDELが発生する効率を得たことを示す図である。図2Dは、修飾された異なるsgRNAとCRISPR/Cas9遺伝子ノックアウトツールとを組み合わせてTCRにおけるTRACをノックアウトし、ノックアウト後、TRAC遺伝子に対する各sgRNAのノックアウト効率を解析することを示す図である。図2E及び図2Fは、INDEL解析ソフトウェアを利用して、修飾された異なるsgRNAによりTRAC遺伝子がノックアウトされた後のT細胞ゲノムのINDEL解析を行い、T細胞中でINDELが発生する効率を得たことを示す図である。図2Gは、修飾された異なるsgRNAとCRISPR/Cas9遺伝子ノックアウトツールとを組み合わせてPD-1をノックアウトし、ノックアウト後、PD-1遺伝子に対する各sgRNAのノックアウト効率を解析することを示す図である。図2H図2I及び図2Jは、INDEL解析ソフトウェアを利用して、修飾された異なるsgRNAによりPD-1遺伝子がノックアウトされた後のT細胞ゲノムのINDEL解析を行い、T細胞中でINDELが発生する効率を得たことを示す図である。 図2Aは、インビトロ転写(IVT)を利用し、修飾により最適化されたsgRNAとCRISPR/Cas9遺伝子ノックアウトツールとの組み合わせを利用し、同じエレクトロポレーション条件下でT細胞中のB2Mをノックアウトし、ノックアウト後、解析した結果、B2M遺伝子に対する各sgRNAのノックアウト効率はそれぞれ、B1:27.88%、B2:86.17%、B3:64.69%、B4:1.06%、B5:2.91%、B6:0.17%、B7:41.87%、及びB8:3.14%である。図に示すように、ノックアウト効率の良いsgRNAを選択することができる。選択したsgRNAに対して2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオによる最適化修飾を行い、効率的な二重/三重遺伝子ノックアウト(図3に示す)を可能にした。図2B及び図2Cは、INDEL解析ソフトウェアを利用して、異なるsgRNAによりB2M遺伝子がノックアウトされた後のT細胞ゲノムのINDEL解析を行い、T細胞中でINDELが発生する効率を得たことを示す図である。図2Dは、インビトロ転写(IVT)を利用し、修飾により最適化されたsgRNAとCRISPR/Cas9遺伝子ノックアウトツールとの組み合わせを利用し、同じエレクトロポレーション条件下でT細胞中のTRACをノックアウトし、ノックアウト後、解析した結果、TRAC遺伝子に対する各sgRNAのノックアウト効率はそれぞれ、T2:77.84%、T3:85.86%、T4:2.59%、及びT6:34.78%である。図に示すように、ノックアウト効率の良いsgRNAを選択することができる。選択したsgRNAに対して上記最適化修飾を行い、効率的な単一/二重/三重遺伝子ノックアウト(図3に示す)を可能にした。図2E及び図2Fは、INDEL解析ソフトウェアを利用して、異なるsgRNAによりTRAC遺伝子がノックアウトされた後のT細胞ゲノムのINDEL解析を行い、T細胞中でINDELが発生する効率を得たことを示す図である。図2Gは、インビトロ転写(IVT)を利用し、上記最適化修飾されたsgRNAとCRISPR/Cas9遺伝子ノックアウトツールとの組み合わせを利用し、同じエレクトロポレーション条件下でT細胞中のPD-1をノックアウトし、ノックアウト後、解析した結果、PD-1遺伝子に対する各sgRNAのノックアウト効率はそれぞれ、P1:21.15%、P2:36.99%、P4:23.03%、P5:25.6%、P6:3.1%、P7:22.49%、P8:23.07%、P9:31.18%、及びP10:24.48%である。図に示すように、ノックアウト効率の良いsgRNAを選択することができる。選択したsgRNAに対して上記最適化修飾を行い、効率的な三重遺伝子ノックアウト(図3に示す)を可能にした。図2H図2I及び図2Jは、INDEL解析ソフトウェアを利用して、異なるsgRNAによりPD-1遺伝子がノックアウトされた後のT細胞ゲノムのINDEL解析を行い、T細胞中でINDELが発生する効率を得たことを示す図である。
図3】最適化されたsgRNA及びCRISPR/Cas9遺伝子編集技術を利用し、T細胞に対してTRAC、TRAC/B2M(Double Knock-Out,DKO)及びTRAC/B2M/PD-1(Triple Knock-Out,TKO)ノックアウトをした結果の解析を示す図である。sgRNAを化学修飾してから、化学修飾されたsgRNAとCas9を、さらに最適化されたエレクトロポレーション条件により、初代T細胞に送達して関連遺伝子ノックアウトを行った。その結果は図に示される。単一遺伝子、すなわち、TRACのノックアウト効率は90.42%に上昇し、二重遺伝子、すなわち、TRACとB2Mのノックアウト効率は81.39%に上昇し、三重遺伝子、すなわちTRAC、B2M及びPD-1のノックアウト効率は67.91%(82.70%+15.76%)*68.98%)に上昇した。
図4】TRAC、TRAC/B2M(DKO)及びTRAC/B2M/PD-1(TKO)ノックアウトされたT細胞をスクリーニング及び精製した後の表現型解析を示す図である。後期の精製条件の最適化により、精製回数(4~5回)およびそれに対応する抗体量(3mg/mL)を増やした。その結果は図に示される。最適化された二重ノックアウト、すなわち、TRACとB2Mの二重遺伝子のノックアウトの純度は99.72%に上昇し、三重遺伝子、すなわち、TRAC、B2MおよびPD-1のノックアウトの純度は98.62%に上昇した。
図5】TRAC-sgRNA3(T2)、B2M-sgRNA2(B3)、およびPD-1-sgRNA2(P2)のオフターゲット検出結果を示す図である。図は、ディープシーケンスおよびINDEL解析ソフトウェアにより、T2、B3、P2sgRNAとCRISPR/Cas9との組み合わせによって編集されたT細胞におけるINDEL効率を得たことを示す。
図6】最適化されたsgRNAおよびCRISPR/Cas9遺伝子編集技術を利用して、T細胞に対してTCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1ノックアウトした後の表現型、およびTCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1ノックアウトしたT細胞をスクリーニングおよび精製した後の表現型の解析を示す図である。横軸はCS3であり、縦軸はTCR、B2MおよびPD-1である。
図7】T細胞、CAR-T、TCRneg CAR-T、DKO CAR-T及びTKO CAR-T細胞の殺傷機能の検証と結果の比較を示す図である。この実験では、RajiおよびK562を標的細胞とし、T、CAR-T、DKO CAR-T及びTKO CAR-Tをエフェクター細胞とし、10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.625:1のエフェクター細胞と標的細胞との比率でインビトロ殺傷実験を行った。
図8】T細胞、CAR-T、TCRneg CAR-T、DKO CAR-T及びTKO CAR-Tサイトカイン放出を示す図である。この実験では、RajiおよびK562を標的細胞とし、T、CAR-T、DKO CAR-T及びTKO CAR-Tをエフェクター細胞とし、10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.625:1のエフェクター細胞と標的細胞との比率でインビトロ共培養後、上澄みを取り、その中のIL-2およびIFN-γを検出した。
図9A-9C】生理食塩水、CAR-T、TCRneg CAR-T、DKO CAR-T(TCRneg\B2Mneg-CAR-T)およびTKO CAR-T(TCRneg\B2Mneg\PD-1neg-CAR-T)細胞を注射した後、NPGマウス体内の腫瘍抑制および殺傷効果の比較を示す図である。図9A及び図9Bは、5X10^5の腫瘍細胞/匹で尾静脈注射によりNSGマウスに注射した後、生理食塩水群、T細胞群、TCR/CD3neg\CD19-CAR-T細胞群、DKO CD19-CAR-T細胞群およびTKO CD19-CAR-T細胞群の4つの群にランダムに分け、そして、5X10^6の対応する細胞を尾静脈注射により4つの群のマウスに注射し、生理食塩水群を対照群とした。プラチナエルマーイメージャーで取得した写真でマウスの体内腫瘍負荷を解析した。図9Cは、プラチナエルマーイメージャーで取得した写真によるマウスの体内腫瘍負荷の解析を示し、横軸はマウスの細胞飼育日数であり、縦軸は単位表面積の1秒あたりの輻射シグナルである。
図10】生理食塩水、CAR-T、TCRneg CAR-T、DKO CAR-T(TCRneg\B2Mneg-CAR-T)およびTKO CAR-T(TCRneg\B2Mneg\PD-1neg-CAR-T)の5つの群のマウスの生存率の比較を示す図である。横軸は、エフェクター細胞を注射した後のマウスの飼育日数であり、縦軸はマウスの生存率である。
図11】生理食塩水、CAR-T、TCRneg CAR-T、DKO CAR-T(TCRneg\B2Mneg-CAR-T)およびTKO CAR-T(TCRneg\B2Mneg\PD-1neg-CAR-T)細胞を注射した後、マウスの体重変化の結果の比較を示す図である。NPGマウスの体重をモニタリングし、横軸は、エフェクター細胞を注射した後のマウスの飼育日数であり、縦軸はマウスの体重百分比(n=4)である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
定義
本出願で使用されたように、「CRISPR/Cas」は遺伝子編集技術であり、例えば、CRISPR/Cas9システムのような、自然に存在するまたは人工的に設計された様々なCRISPR/Casシステムを含むが、これらに限られていない。自然に存在するCRISPR/Casシステム(Naturally occurring CRISPR/Cas system)は、細菌と古細菌が長期的な進化中に形成した適応性免疫防御であり、侵入するウイルスおよび外因性DNAと対抗することができる。例えば、CRISPR/Cas9の作動原理は、crRNA(CRISPR-derived RNA)が塩基対を通してtracrRNA(trans-activating RNA)と結合してtracrRNA/crRNA複合体を形成し、この複合体は、ヌクレアーゼCas9タンパク質をガイドしてcrRNAとペアになっている配列標的部位で二本鎖DNAを切断する。tracrRNAとcrRNAを人工的に設計することにより、ガイド作用を有するsgRNA(single guide RNA)を改変形成し、Cas9がDNAを部位特異的に切断することをガイドするようにすることができる。RNA指向性dsDNA結合タンパク質として、Cas9エフェクターヌクレアーゼは、RNA、DNA、およびタンパク質に共局在化することができるため、巨大な改変可能性を有する。CRISPR/Casシステムには、クラス1、クラス2、またはクラス3のCasタンパク質が使用可能である。本発明の一部の実施形態では、前記方法にはCas9が使用される。その他の適用されるCRISPR/Casシステムは、国際公開第2013/176772号、国際公開第2014/065596、国際公開第2014/018423、米国特許第8,697,359号明細書に記載されているシステムと方法を含むが、これらに限られていない。
【0053】
本発明において、「sgRNA(single guide RNA」と「gRNA(guide RNA)」、または、「シングルガイドRNA」、「合成されたガイドRNA」または「ガイドRNA」は、置き換えて使用できる。本発明のsgRNAは、目標配列を標的とするガイド配列(guide sequence)を含む。
【0054】
「T細胞受容体(TCR)」は、CD3と結合してTCR-CD3複合体を形成する、すべてのT細胞の表面上の特徴的なマーカーである。TCRはαとβとの2つのペプチド鎖からなり、各ペプチド鎖はさらに、可変領域(V領域)、定常領域(C領域)、膜貫通領域、及び細胞質領域に分けられる。TCR分子は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、その抗原特異性はV領域に存在する。V領域(Vα、Vβ)にはそれぞれ3つの超可変領域、すなわち、CDR1、CDR2、CDR3があり、その中で、CDR3の変異が最も大きくて、TCRの抗原結合特異性を直接に決定する。TCRがMHC-抗原ペプチド複合体を認識する時、CDR1とCDR2は、MHC分子抗原結合溝の側壁を認識して結合し、CDR3は抗原ペプチドに直接に結合する。TCRは、TCR1とTCR2との2類に分けられ、TCR1は、γとδとの2つの鎖で構成され、TCR2は、αとβとの2つの鎖で構成される。末梢血では、T細胞の90%~95%はTCR2を発現し、いずれのT細胞は、TCR2とTCR1のいずれか1つのみを発現する。
【0055】
「β2ミクログロブリン(B2M)」は、細胞表面のヒト白血球抗原(HLA)のβ鎖(軽鎖)部分であり、分子量が11800であり、99個のアミノ酸からなる単鎖ポリペプチドである。
【0056】
「プログラム細胞死受容体1(PD-1)」は、アポトーシスマウスのT細胞ハイブリドーマ2B4.11から最初にクローンされた268アミノ酸残基の膜タンパク質である。PD-1とPD-L1の組み合わせにより、T細胞のプログラム細胞死が起動され、これによって、腫瘍細胞が免疫逃避するので、重要な免疫抑制分子である。
【0057】
本出願で使用されるように、「Indel」は、挿入/欠失、すなわち、突然変異の挿入と欠失と呼ばれる。
【0058】
「移植片対宿主反応(GVHD)」とは、ドナーと受容体の間に免疫遺伝学的差異が存在するため、例えば、一方で、免疫活性を有するドナーのTリンパ球のようなドナー細胞が受容体である患者の体内に入ってある程度までに増殖した後、受容体である患者の正常な細胞または組織を標的と誤認して攻撃して起こった反応を指す。もう一方では、異系細胞として、受容体体内の正常な免疫系は、それらをクリアして「宿主対移植片反応((HVGR)」を起こすこともある。
【0059】
HVGRとGVHRの関連遺伝子は、TCR、HLA分子の関連遺伝子を含み、これらの遺伝子から同時にノックアウトされたTリンパ球を同種異系患者に再注入する時、移植片対宿主病(GVHD)を引き起こさないため、「ユニバーサルT細胞」と呼ばれることができる。例えば、単一のTRAC遺伝子は、TCRα鎖をコードする遺伝子と、TCRβをコードする2つのTRBC遺伝子とから形成された完全且つ機能的なTCR複合体であり、TRACをノックアウトするとTCRの不活性化を引き起こす可能性があり、B2MはMHC|関連遺伝子である。これら2つの遺伝子が同時にノックアウトされたTリンパ球は、同種異系患者に再注入する時に移植片対宿主病(GVHD)を引き起こすことはない。
【0060】
「CAR-T」は「キラメ抗原受容体T細胞」の短縮形であり、キラメ抗原受容体(CAR)はCAR-Tのコアコンポーネントであり、HLAに依存しない方法で標的細胞(例えば、腫瘍)の抗原を認識する能力をT細胞に付与し、これによって、CARにより改変されたT細胞は、自然のT細胞の表面上の受容体TCRよりも広い範囲の目標を認識することができる。一部の実施形態では、腫瘍を標的とするCARの設計には、1つの腫瘍関連抗原(tumоr-assоciated antigen、TAA)結合領域(例えば、通常はモノクローナル抗体の抗原結合領域に由来するscFVセグメント)、1つの細胞外ヒンジ領域、1つの膜貫通領域、及び1つの細胞内シグナル領域を含む。目標抗原の選択は、CARの特異性と有効性、および遺伝子改変されたT細胞自体の安全性にとって肝心な決定要素である。
【0061】
「ユニバーサルCAR-T細胞」とは、特異的な標的細胞(例えば、腫瘍)に関連するマーカーを標的とし、細胞表面のTCRとMHCの機能が不活性化になり、同種異系細胞治療によって引き起こされる免疫拒絶反応を低くすることができるCAR-T細胞をいう。
【0062】
自己細胞のCAR-T治療では、採血して患者自身のTリンパ球を分離する必要があり、一方、患者自身の病状およびTリンパ球の状態が異なるため、CAR-Tの製造過程に影響を与える要因が多くて製造を標準化できず、安全性を影響する。もう一方、一部の患者の自己Tリンパ球は、化学療法後の活性と数量が不十分であり、あるいは腫瘍環境の影響を受けてTリンパ球の活性と増殖能力が制限されてしまい、このような細胞はCAR-Tの調製時にとても困難であり、治療の安全性と有効性も影響される。あるいは、CAR-T細胞の調製過程では、突然の状況が発生して、準備された細胞をタイムリーに患者に再注入することができない場合、治療効果に影響を与えてしまい、甚だしきに至っては自己Tリンパ球の状態によって影響されて一部の腫瘍患者は自己CAR-T細胞の養子治療を受け入れなくなる。同種異系治療に使用可能なユニバーサルCAR-TまたはユニバーサルTリンパ球は、上記状況において大きな優勢を持っている。
【0063】
TCR-T(T細胞受容体(TCR)キメラ-T細胞)とは、遺伝子操作されたT細胞受容体(engineered TCR)、または人工T細胞受容体(artificial TCR)を発現するT細胞のことである。遺伝子操作されたT細胞受容体または人工T細胞受容体は遺伝子改変され、目的抗原を標的とする構造をもつようになるとともに、TCRシグナル伝達経路のドメインおよび/またはアクセサリー分子も保持されている。一部の実施形態では、TCR-TはTCRシグナル伝達経路中のすべてのアクセサリー分子を保持しているので、少量の抗原で刺激すると、完全に活性化された状態が発生し、標的細胞に殺傷効果をもたらす。CAR-Tと比べて、これらのTCR-TはTCRシグナル伝達経路上のすべてのアクセサリー分子を保持して適用したため、低濃度、低コピー数の抗原に対するTCR-Tの認識感度は、一部のCAR-Tより高く、治療の潜在力が非常に大きい。
【0064】
一部の実施形態では、TCR-T細胞は、部分的な遺伝子改変によって対応する抗原(例えば、TAA)に対するTCRの親和性を改善したため、「遺伝子改変されたTCR」の技術は、「親和性が増強されたTCR」の技術(Affinity-Enhanced TCR)とも呼ばれる。例えば、『Nature-Medical』誌で報道されたAdaptimmune社が共同で開発した「遺伝子改変されたTCR」には、いくつかの主要なアミノ酸を改変した後、これらの遺伝子改変されたTCRは、一般的な癌TAA、NY-ESO-1との親和性を大幅に高めた。これによって、多発性骨髄腫(Multiple Myeloma)などのNY-ESO-1の過剰発現が伴われる癌を攻撃するために使用することができる。
【0065】
養子細胞療法(Adoptive cellular therapy,ACT)、腫瘍養子免疫療法(Tumor adoptive immunotherapy)のような養子免疫療法(Adoptive immunotherapy)とは、免疫細胞をインビトロで処理し、例えば、特異的な抗原を加えて免疫細胞により発現される分子を改変し、またはサイトカインを利用してそれを刺激するなどの方法を利用して、特異性の高い標的細胞(例えば、腫瘍)殺傷性免疫エフェクター細胞をスクリーニングして大量に増殖させ、そして患者に注入して標的細胞(例えば、腫瘍)を殺す治療方法であり、受動免疫療法である。
【0066】
T細胞を効率的に編集する方法
本発明は一つの態様では、T細胞中の:(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域(例えば、配列番号23に示される)、(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域(例えば、配列番号24に示される)、及び/または(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域(例えば、配列番号25に示される)、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域(例えば、配列番号26に示される)を遺伝子編集技術によって破壊することを含む、遺伝子編集T細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)の調製方法を提供する。一部の実施形態では、この方法の遺伝子編集技術は、ジンクフィンガーヌクレアーゼに基づく遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術またはCRISPR/Cas9遺伝子編集技術である。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域、B2Mゲノム領域、またはPD-1ゲノム領域は編集された。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域とB2Mゲノム領域はいずれも編集された。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域とPD-1ゲノム領域はいずれも編集された。一部の実施形態では、前記B2Mゲノム領域とPD-1ゲノム領域はいずれも編集された。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域、B2Mゲノム領域、及びPD-1ゲノム領域はいずれも編集された。
【0067】
一部の実施形態では、T細胞中の:(i)配列番号2~5から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列、(ii)配列番号6~14から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列、及び/または(iii)配列番号15~22から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるPD-1ゲノムの標的ヌクレオチド配列を遺伝子編集技術によって破壊することを含む、遺伝子編集T細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)の調製方法が提供される。一部の実施形態では、この方法の遺伝子編集技術は、ジンクフィンガーヌクレアーゼに基づく遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術またはCRISPR/Cas9遺伝子編集技術である。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域、B2Mゲノム領域、またはPD-1ゲノム領域は編集された。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域とB2Mゲノム領域はいずれも編集された。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域とPD-1ゲノム領域はいずれも編集された。一部の実施形態では、前記B2Mゲノム領域とPD-1ゲノム領域はいずれも編集された。一部の実施形態では、前記TRACゲノム領域、B2Mゲノム領域、及びPD-1ゲノム領域はいずれも編集された。
【0068】
一部の実施形態では、T細胞のTRAC、B2Mおよび/またはPD-1遺伝子を破壊するように、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAをT細胞に導入することを含む、遺伝子編集T細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)の調製方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、Cas9またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0069】
一部の実施形態では、sgRNAは、TCR2のαおよび/またはβ鎖の定常領域をコードする遺伝子を標的とし、それによってT細胞の表面上のTCRの構造を破壊し、当該分子に機能を失わせる。
【0070】
一部の実施形態では、sgRNAは、β2ミクログロブリン(B2M)をコードする遺伝子を標的とし、例えば、B2Mタンパク質をコードする遺伝子の最初のエクソン領域を標的とし、それによってB2Mの構造を破壊し、当該分子に機能を失わせる。
【0071】
一部の実施形態では、sgRNAは、PD-1をコードする遺伝子を標的とし、例えば、PD-1タンパク質をコードする遺伝子の最初のエクソン領域を標的とし、それによってPD-1の構造を破壊し、当該分子に機能を失わせる。
【0072】
一部の実施形態では、(i)前記TRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2~5から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、(ii)前記B2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号6~14から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または(iii)前記PD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号15~22から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入することを含む、遺伝子編集T細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)の調製方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、Cas9またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0073】
一部の実施形態では、本発明は、TRACを標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNAをT細胞に導入することに係る。本発明の一部の実施形態では、本発明は、B2Mを標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNAをT細胞に導入することに係る。本発明の一部の実施形態では、本発明は、PD-1を標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNAをT細胞に導入することに係る。一部の実施形態では、この方法は、Cas9またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0074】
一部の実施形態では、本発明は、TRACを標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNA、及び/または、B2Mを標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNA、及び/または、PD-1を標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNA、及びCas9またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することに係る。
【0075】
一部の実施形態では、本発明は、TRACを標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNAと、B2Mを標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNAと、PD-1を標的とする表2に示すものから選択されるいずれか一つのsgRNAとをT細胞に導入することに係る。一部の実施形態では、この方法は、Cas9またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0076】
本発明の一部の実施形態では、(i)前記TRACゲノム領域の編集を実現するように、TRAC-sg3 sgRNAをT細胞に導入すること、(ii)前記B2Mゲノム領域の編集を実現するように、B2M-sg2 sgRNAをT細胞に導入すること、及び、(iii)前記PD-1ゲノム領域の編集を実現するように、PD-1-sg2 sgRNAをT細胞に導入することを含む、ユニバーサルT細胞を調製する方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、Cas9またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0077】
本発明の一部の実施形態では、(i)前記TRACゲノム領域の編集を実現するように、配列番号2または3の配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、(ii)前記B2Mゲノム領域の編集を実現するように、配列番号7または11から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAをT細胞に導入すること、及び、(iii)前記PD-1ゲノム領域の編集を実現するように、配列番号14または15から選択される配列を含むsgRNAをT細胞に導入することを含む、ユニバーサルT細胞を調製する方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、Cas9またはそれをコードするヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0078】
一部の実施形態では、上記sgRNAは、化学修飾されたものである。例えば、2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオにより修飾されたものである。一部の実施形態では、前記化学修飾は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/または3つの塩基及び/または3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体による修飾である。
【0079】
一般に、sgRNAの中のガイド配列は、標的ポリヌクレオチド配列と十分な相補性を有し、標的配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体と標的配列との配列特異的結合をガイドする任意のポリヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、適切なアラインメントアルゴリズムを使用して最適なアラインメントを行う場合、ガイド配列およびそれに対応する標的配列間の相補程度は約80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97.5%以上、99%以上またはそれ以上である。最適なアラインメントは、配列をアラインするための任意の適切なアルゴリズムを使用して決定でき、その非限定的な例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wimschアルゴリズム、Burrows-Wheeler Transformに基づいたアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustai X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies,ELAND(Illumina,San Diego,CA))、SOAP(sоap.genоmics.оrg.cnで入手可能)およびMaq(maq.sourceforge.netで入手可能)が含まれる。一部の実施形態では、ガイド配列の長さは、約10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、28以上、29以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、またはそれ以上のヌクレオチドであってもよい。一部の実施形態では、ガイド配列の長さは、約75未満、70未満、65未満、60未満、55未満、50未満、45未満、40未満、35未満、30未満、25未満、20未満、15未満、12未満、またはそれより少ないヌクレオチドであってもよい。CRISPR複合体と標的配列の配列特異的結合をガイドするガイド配列の能力は、任意の適切な測定方法により評価することができる。例えば、対応する標的配列を有する宿主細胞に、CRISPR複合体を形成するには十分なCRISPRシステムのコンポーネント(テストされるガイド配列を含む)を提供してもよく、例えば、CRISPR配列コンポーネントをコードするベクターを使用してトランスフェクションし、そして標的配列内の優先的な切断を評価することで行うことができる。同様に、標的ポリヌクレオチド配列の切断は、試験管内で、標的配列、CRISPR複合体(テストされるガイド配列と、ガイド配列と異なる対照ガイド配列とを含む)のコンポーネントを提供し、標的配列へのテストと対照ガイド配列の結合または切断率を比較して評価することができる。また、当業者に既知の他の測定方法を使用して上記測定と評価を行うことができる。
【0080】
一部の実施形態では、前記TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNA、及び/またはCas9をコードするヌクレオチド(例えば、mRNA)をエレクトロポレーションによってT細胞に導入する。例えば、150~250V、0.5~2ms;180~250V、0.5~2ms;150V、2ms;160V、2ms;170V、2ms;180V、2ms;190V、1ms;200V、1ms;210V、1ms;220V、1ms;230V、1ms;240V、1ms;及び250V、0.5msのエレクトロポレーション条件でT細胞に導入する。一部の実施形態では、前記TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、PD-1を標的とするsgRNA、及びCas9をコードするヌクレオチドをエレクトロポレーションによって一緒にT細胞に導入する。
【0081】
一部の実施形態では、Cas9をコードするヌクレオチドはmRNAであり、例えば、ARCAキャップを含むmRNAである。一部の実施形態では、前記Cas9をコードするヌクレオチドはレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターにある。一部の実施形態では、前記Cas9をコードするヌクレオチドは、例えば、配列番号1の配列を含む。一部の実施形態では、前記TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNA、及びCas9をコードするヌクレオチドは同一のベクターにある。
【0082】
一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びPD-1を標的とするsgRNAを同時にT細胞に導入する。具体的な実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びPD-1を標的とするsgRNAを同時にT細胞に導入する場合、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びPD-1を標的とするsgRNAのそれぞれの量は、互いに近いか、同等であってもよい。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及びPD-1を標的とするsgRNAは任意の適切な順で一つずつT細胞に導入する。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNA、及びCas9をコードするヌクレオチドを同時にT細胞に導入する。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、及び/またはPD-1を標的とするsgRNAより、Cas9をコードするヌクレオチドを先にT細胞に導入する。一部の実施形態では、T細胞は、Cas9をコードするヌクレオチドまたはCas9タンパク質を含む。
【0083】
一部の実施形態では、T細胞は健康なヒトに由来する。一部の実施形態では、T細胞は患者に由来し、例えば、化学療法または放射線療法を受ける前の癌患者などの癌患者である。一部の実施形態では、T細胞は、臍帯血、骨髄、または末梢血単核球(Peripheral blood mononuclear cell,PBMC)などに由来する。一部の実施形態では、T細胞は幹細胞に由来し、例えば、各分化段階の造血幹細胞に由来する。本出願に記載の調製方法は、例えば、PBMCまたは幹細胞にTRAC、B2M、及び/またはPD-1をノックアウトし、さらに培養・分化し、及び/または対応する遺伝子改変されたT細胞を精製することに使用することができる。
【0084】
既存技術と比べて、本発明のT細胞遺伝子ノックアウト方法によって、高い遺伝子ノックアウト効率が得られ、例えば、単一遺伝子(TRAC)、二重遺伝子(TRACとB2M)、及び三重遺伝子(TRAC、B2M、及びPD-1)ノックアウトのノックアウト効率はそれぞれ、少なくとも90%、81%、及び67%に達している。
【0085】
「ノックアウト効率」は、遺伝子レベルで遺伝子ノックアウトのINDELが発生した効率を用いて表すことができる。また、細胞レベルで、その遺伝子ノックアウトによって遺伝子によって発現されたタンパク質が消失する、または有意に減少する細胞の百分比を用いて表すこともできる。本発明において、「ノックアウト効率」とは、後者に基づいて算出したノックアウト効率をいう。高いノックアウト効率が目標細胞の収量を増加させ、生産コストおよび治療コストを削減できることは、当業者が理解することができる。
【0086】
一部の実施形態では、遺伝子編集されたT細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)をさらにスクリーニングしてより高純度の単一遺伝子(TRAC)、二重遺伝子(TRACとB2M)、及び三重遺伝子(TRAC、B2M、及びPD-1)ノックアウトT細胞を取得する。例えば、TRAC、B2M、及び/またはPD-1の発現量の低い遺伝子編集されたT細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)をFACSでスクリーニングすることができる。
【0087】
一部の実施形態では、本発明のユニバーサルT細胞のTCRおよび/またはHLAおよび/またはPD-1遺伝子はノックアウトされる。
【0088】
一部の具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子はノックアウトされる。B2Mおよび/またはPD-1のコード領域はノックアウトされる。TRAC、B2M、およびPD-1は、すべてノックアウトされてもよいし、3つの中の1つ、または2つがノックアウトされてもよい。
【0089】
一部の具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子はノックアウトされる。例えば、具体的な実施形態では、本発明のTCRのα鎖定常コード領域の遺伝子は、前記細胞導入されたTRAC-sg2、3、4、6分子の1つ(表2参照)およびCas9分子によりノックアウトされる。好ましくは、前記TCRのα鎖定常コード領域の遺伝子は、細胞に導入されたTRAC-sg2とCas9分子またはTRAC-sg3とCas9分子によりノックアウトされる。
【0090】
別の一部の具体的な実施形態では、前記HLAの定常コード領域B2M遺伝子はノックアウトされる。例えば、具体的な実施形態では、本発明のB2M定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたB2M-sgの1~8分子の1つ(表2参照)およびCas9分子によりノックアウトされる。好ましくは、前記B2Mの定常コード領域の遺伝子は、細胞に導入されたB2M-sg2またはB2M-sg6およびCas9分子によりノックアウトされる。
【0091】
別の一部の具体的な実施形態では、前記PD-1の定常コード領域の遺伝子はノックアウトされる。例えば、具体的な実施形態では、本発明のPD-1定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたPD-1-sg1~2、PD-1-sg4~10分子の1つ(表2参照)およびCas9分子によりノックアウトされる。好ましくは、前記PD-1の定常コード領域の遺伝子は、細胞に導入されたPD-1-sg1またはPD-1-sg2およびCas9分子によりノックアウトされる。
【0092】
別の一部の具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子およびB2M遺伝子はノックアウトされる。例えば、具体的な実施形態では、本発明のTRACおよびB2M遺伝子は、前記細胞に導入されたTRAC-sg3およびB2M-sg2分子(表2参照)およびCas9分子によりノックアウトされる。
【0093】
別の一部の具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子、B2M遺伝子、およびPD-1の定常コード領域の遺伝子はノックアウトされる。例えば、具体的な実施形態では、本発明のTCR、HLA、およびPD-1定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたTRAC-sg3、B2M-sg2、およびPD-1-sg2分子(表2参照)およびCas9分子によりノックアウトされる。具体的な実施形態では、本発明のTCR、HLA、およびPD-1定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたTRAC-sg2、B2M-sg6、およびPD-1-sg1分子(表2参照)およびCas9分子によりノックアウトされる。具体的な実施形態では、本発明のTCR、HLA、およびPD-1定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたTRAC-sg2、B2M-sg6、およびPD-1-sg2分子(表2参照)およびCas9分子によりノックアウトされる。
【0094】
一部の実施形態では、本発明は、
sgRNA分子とCas9分子をT細胞に導入するステップを含む、T細胞を効率的に編集する方法を提供する。
【0095】
一部の実施形態では、前記sgRNA分子は、TCRからのα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子、B2M遺伝子、およびPD-1の定常コード領域の遺伝子標的領域に相補的な標的ドメインを含む。
【0096】
一部の実施形態では、前記sgRNA分子は、ノックアウトされる遺伝子の標的領域に相補的な標的ドメインを含む核酸配列を指し、標的DNA配列を認識でき、Cas9分子による標的部位の切断をガイドでき、対応する部位のノックアウトをワンステップで効率的に実現できる(ノックアウト効率は85%以上である)。
【0097】
一部の実施形態では、前記sgRNA分子に含まれる標的ドメインの配列は、表2の中の1つに示されている。
【0098】
一部の好ましい実施形態では、前記標的ドメインの配列は、T2、B3およびP1に示されている。
【0099】
一部の好ましい実施形態では、前記sgRNA分子と、Cas9分子をコードするmRNAをエレクトロポレーション技術によってT細胞に導入する。
【0100】
一部の具体的な実施形態では、上記方法で使用されるT細胞は、健康なヒト、例えば、健康な成人の末梢血、または自然に出産した健康なヒトの臍帯血に由来する。
【0101】
一部の実施形態では、本発明の第三態様は、特定の修飾後、高い編集効率を有するsgRNA配列(表2)を提供する。
【0102】
一部の具体的な実施形態では、化学方法でsgRNAを合成して修飾し、これによって、sgRNAは、通常のインビトロ転写(IVT)によって得られたsgRNAよりも安定且つ高い編集効率を有する。好ましくは、エレクトロポレーション方法を利用してT細胞を1回エレクトロポレーションし、化学的に合成して修飾されたsgRNA遺伝子編集効率は、通常のIVTによって得られたsgRNAの10倍以上である。
【0103】
一部の実施形態では、疾患(例えば、腫瘍)を治療する薬剤を調製するための、本発明に記載のユニバーサルT細胞の使用が提供される。
【0104】
一部の具体的な実施形態では、前記TCRのα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子、HLAの定常コード領域のB2M遺伝子、およびPD-1の定常コード領域の遺伝子はノックアウトされる。例えば、具体的な実施形態では、本発明のTCRのα鎖定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたTRAC-sg2分子により、本発明のB2M定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたB2M-sg6分子により、本発明のPD-1定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたPD-1-sg1分子(表2参照)およびCas9分子により、好ましくは、前記TCRのα鎖定常コード領域遺伝子は、前記細胞に導入されたTRAC-sg2により、B2M定常コード領域遺伝子は細胞に導入されたB2M-sg6により、PD-1定常コード領域遺伝子は、細胞に導入されたPD-1-sg1分子およびCas9分子によりそれぞれノックアウトされる。
【0105】
効率的に編集されたT細胞またはユニバーサルT細胞
本発明は、本発明の上記方法によって調製されたTRAC単一遺伝子ノックアウトT細胞(TRACnegative)、TRAC/B2M二重遺伝子ノックアウト(DKO)T細胞、およびTRAC/B2M/PD-1三重遺伝子ノックアウト(TKO)T細胞に係る。
【0106】
既存技術と比べて、本発明の単一遺伝子ノックアウトT細胞(TRACnegative)、TRAC/B2M二重遺伝子ノックアウト(DKO)T細胞、およびTRAC/B2M/PD-1三重遺伝子ノックアウト(TKO)T細胞の遺伝子ノックアウト効率は大幅に向上した。
【0107】
本発明により調製された単一遺伝子ノックアウトT細胞(TRACnegative)、TRAC/B2M二重遺伝子ノックアウト(DKO)T細胞、およびTRAC/B2M/PD-1三重遺伝子ノックアウト(TKO)T細胞は、T細胞よりさらに改変された前駆細胞として、またはユニバーサルT細胞として、CAR-T細胞やTCR-T細胞など、さまざまな遺伝子修飾されたT細胞を調製するために使用できる。
【0108】
本発明の一部の実施形態では、T細胞中の:(i)14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノム領域の1つ以上の部位が遺伝子編集技術によって破壊され、(ii)15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域の1つ以上の部位が遺伝子編集技術によって破壊され、及び/または(iii)2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域の1つ以上の部位が遺伝子編集技術によって破壊される、遺伝子改変されたT細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)が提供される。一部の実施形態では、前記T細胞は、(i)配列番号2~5から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるTRACゲノムの標的ヌクレオチド配列が遺伝子編集技術によって破壊され、(ii)配列番号6~14から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるB2Mゲノムの標的ヌクレオチド配列が遺伝子編集技術によって破壊され、及び/または(iii)配列番号15~22から選択されるいずれか一つの配列と相補的であるPD-1ゲノムの標的ヌクレオチド配列が遺伝子編集技術によって破壊される。
【0109】
本発明の一部の実施形態では、T細胞において、(i)そのTRACゲノム領域は、表Dと表Eに記載のいずれか一つの配列を含み、(ii)そのB2Mゲノム領域は、表Bと表Cに記載のいずれか一つの配列を含み、及び/または(iii)そのPD-1ゲノム領域は、表Fまたは表Gに記載のいずれか一つの配列を含む、遺伝子改変されたT細胞(ユニバーサルT細胞)が提供される。
【0110】
本発明は一つの態様において、その遺伝子改変されたT細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)、CAR-T細胞、またはTCR-T細胞を含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。
【0111】
さらに、本発明は一つの態様において、本発明に記載の遺伝子改変されたT細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)を含むキットまたは製品を提供する。このキットまたは製品は、CAR-T、TCR-T、またはその他の養子細胞治療組成物の調製に使用できる。
【0112】
CAR-T細胞を調製する方法
本発明は一つの態様において、CAR-T細胞(例えば、ユニバーサルCAR-T細胞)を調製する方法を提供する。一部の実施形態では、この方法は、CARまたはそれをコードするヌクレオチドまたはベクターを本発明に記載のいずれかの遺伝子改変されたT細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)に導入することを含む。
【0113】
一部の実施形態では、
(i)TRACゲノム領域を破壊するように、14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノムを標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(ii)B2Mゲノム領域を破壊するように、15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域を標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(iii)PD-1ゲノム領域を破壊するように、2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域を標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び
(iv)キラメ抗原受容体(CAR)またはそれをコードする核酸を当該T細胞に導入することを含む、CAR-T細胞の調製方法が提供される。
【0114】
CARまたはそれをコードする核酸、およびTRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAおよび/またはPD-1を標的とするsgRNA、およびCARまたはそれをコードするヌクレオチドは、任意の適切な順序でT細胞に導入することができる。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAおよび/またはPD-1を標的とするsgRNA、およびCARまたはそれをコードするヌクレオチドを同時に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAおよび/またはPD-1を標的とするsgRNAより、CARまたはそれをコードするヌクレオチドを先に当該T細胞に導入する。一部の実施形態では、CARまたはそれをコードするヌクレオチドを、遺伝子編集されたT細胞に導入し、そのT細胞のTRAC、B2Mおよび/またはPD-1ゲノム領域はすでに編集によって破壊された。一部の実施形態では、この方法はさらに、Cas9またはそれをコードするヌクレオチドを前記sgRNAと一緒に当該T細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、本発明のユニバーサルCAR-T細胞によって発現されるCARは、T細胞がヒト白血球抗原‐非依存的な方法で細胞表面抗原を認識して殺傷の役割を発揮するようにすることができる限り、本分野の既知の任意のCARであってもよい。例えば、米国発明特許出願US20140271635A1に開示されているCARを使用することができ、本発明の具体的な実施形態で使用されるCARは、当該発明特許出願の公開明細書(US20140271635A1)を参照することができる。一部の実施形態では、本発明のCAR-T細胞におけるCARは、下記の腫瘍と関連抗原に対応する表Aに記載されている抗原を認識するCARである。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
一部の実施形態では、本発明のCAR-T細胞で発現されるCARは、順に接続されるシグナルペプチド、細胞外結合領域、ヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞内シグナル領域を含む。本文で使用される用語の「シグナルペプチド」とは、新しく合成したタンパク質の分泌経路への移動をガイドする短い(例えば、5~30のアミノ酸長)ペプチド鎖をいう。本発明では、人体内の様々なタンパク質のシグナルペプチド、例えば、体内で分泌されるサイトカインタンパク質や白血球分化抗原(CD分子)のシグナルペプチドを使用することができる。
【0118】
一部の実施形態では、前記シグナルペプチドはCD8シグナルペプチドであり、例えば、そのアミノ酸配列は、発明特許出願US20140271635A1に示されている通りである。
【0119】
一部の実施形態では、前記ヒンジ領域は、異なる抗体または抗原受容体のヒンジ領域、特にCD分子のヒンジ領域を使用することができる。一つの具体的な実施形態では、前記ヒンジ領域は、CD8またはCD28などのタンパク質のヒンジ領域から選択することができる。CD8またはCD28は、T細胞の表面の自然なマーカーである。
【0120】
本発明では、人体におけるタンパク質の様々な膜貫通領域、特に異なる抗原受容体の膜貫通領域を使用することができる。好ましく使用される膜貫通領域は、CD分子の膜貫通領域である。一実施形態では、前記膜貫通領域は、CD8またはCD28または4-1BBなどのタンパク質の膜貫通領域から選択されていてもよい。
【0121】
一部の実施形態では、前記ヒンジ領域は、CD8αヒンジ領域(CD8-hinge)であり、そのアミノ酸配列は、米国特許出願公開第2014/0271635号明細書A1に示されている通りである。
【0122】
前記「細胞外結合領域」とは、標的抗原を特異的に認識する領域を含む。一部の実施形態では、当該細胞外結合領域は、標的腫瘍細胞表面抗原を特異的に認識する領域を含む。例えば、この領域は、scFvまたはその他の抗体の抗原結合フラグメントであってもよい。本文で使用される用語の「scFv」とは、リンカー(linker)によって接続される重鎖可変領域(variable region of heavy chain,VH)と軽鎖可変領域(variable region of light chain,VL)の組換えタンパク質をいい、リンカーによってこの2つのドメインが関連し、最終的に抗原結合部位を形成する。scFvは通常、ひとつのヌクレオチド鎖によってコードされるアミノ酸配列である。上記scFvはさらにその誘導体を含むことができる。
【0123】
本発明で使用されるCARおよびその様々なドメインは、アミノ酸の欠失、挿入、置換、付加、および/または組換え、および/またはその他の修飾方法など、本分野で既知の通常技術を単独または組み合わせて使用することによりさらに修飾することができる。ある抗体のアミノ酸配列に基づいてそのDNA配列にそのような修飾を導入する方法は、当業者にとって公知である(例えば、Sambrook,Molecular Cloning:An Experimental Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)N.Y.参照)。この修飾は好ましくは核酸レベルで行われる。
【0124】
本文で使用される用語の「特異的認識」とは、本発明の抗原認識領域が、目的抗原以外のいかなるポリペプチドと交差反応しない、または基本的に交差反応しないことを意味する。その特異性の程度は、イムノブロッティング、イムノアフィニティークロマトグラフィー、フローサイトメトリーなどを含むが、これらに限られていない免疫学的技術によって判断することができる。
【0125】
一部の実施形態では、前記細胞外結合領域は、scFvのような、CD19、CEA、EGFR、GD2、CD7またはCD138などを特異的に認識する抗原結合領域を含む。
【0126】
一部の実施形態では、前記細胞外結合領域は、CD19を特異的に認識するヒト化改変されたscFvを含む。一部の実施形態では、当該CD19を特異的に認識するscFvのアミノ酸配列は、米国特許出願公開第2014/0271635号明細書A1に示されている通りである。
【0127】
本発明において、人体における各種のタンパク質の細胞内シグナル領域、特に各種の異なる抗原受容体の細胞内シグナル領域を使用することができる。好ましく使用される細胞内シグナル領域は、CD分子の細胞内シグナル領域である。具体的な実施形態では、前記細胞内シグナル領域は、CD3ζ、FcεRIγ、CD28、CD137(4-1BB)、CD134タンパク質の細胞内シグナル領域、およびそれらの組み合わせから選択されることができる。CD3分子は5つのサブユニットからなり、その中で、CD3ζサブユニット(CD3zetaとも呼ばれ、ζと略称する)は3つのITAMモチーフを含み、このモチーフは、TCR-CD3複合体における重要なシグナル変換領域である。FcεRIγは主にマスト細胞と好塩基球の表面に分布しており、構造、分布および機能ではCD3ζと類似しているITAMモチーフを含む。また、前述のように、CD28、CD137、CD134は、共刺激シグナル分子であり、それぞれのリガンドに結合した後、その細胞内シグナルセグメントの共刺激効果により、T細胞の継続的な増殖を引き起こし、T細胞がIL-2とIFN-γなどのサイトカインを分泌するレベルを上昇させることができるとともに、CAR-T細胞のインビボ生存サイクルと抗腫瘍効果を改善することができる。
【0128】
一部の実施形態では、TCR単独で生成したシグナルは、自然なT細胞を完全に活性化するのに十分ではなく、TCRによる抗原依存の初期活性化の配列(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)、および抗原非依存的な方法で作用して共刺激シグナルを提供する配列(共刺激ドメイン)が必要である。一次シグナル伝達ドメインは、TCR複合体の初期活性化を刺激的または抑制的に調節する。刺激的に作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)と呼ばれるシグナル伝達モチーフを含んでもよい。本発明に適するITAMを含む一次細胞質シグナル伝達配列の例として、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dが挙げられる。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、修飾されたITAMドメインを含み、例えば、自然のITAMドメインと比較して活性が変更(例えば、増加または低下)した突然変異ITAMドメイン、または短く切断されたITAMの一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ以上のITAMモチーフを含む。
【0129】
共刺激シグナル伝達ドメインは、TCRの中の、共刺激分子細胞内ドメインを含む部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。これらの分子の例として、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD1、ICOS、リンパ球機能関連抗原‐1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。
【0130】
一部の実施形態では、本発明はCAR-T細胞を調製する方法を提供し、例えば、ユニバーサルCAR-T細胞を調製する方法を提供し、この方法は、下記のステップを含む:
1)sgRNA分子とCas9分子をT細胞に導入するステップ;
一部の実施形態では、前記sgRNA分子は、TCRからのα鎖定常コード領域(すなわち、TRAC)遺伝子、HLA定常コード領域B2M遺伝子、およびPD-1の定常コード領域の遺伝子標的領域に相補的な標的ドメインを含む。
2)CAR分子を前記T細胞に導入するステップ;
一部の実施形態では、前記sgRNA分子は、ノックアウトされる遺伝子の標的領域に相補的な標的ドメインを含む核酸配列を指し、標的DNA配列を認識でき、Cas9分子による標的部位の切断をガイドでき、対応する部位のノックアウトをワンステップで効率的に実現できる(ノックアウト効率は85%以上である)。
【0131】
一部の実施形態では、前記Cas9分子は、Cas9 mRNAを指し、sgRNAのガイドの下で標的部位を切断することができる。
【0132】
一部の具体的な実施形態では、前記sgRNA分子に含まれる標的ドメインの配列は、表2の中の1つに示されている。
【0133】
一部の好ましい実施形態では、前記標的ドメインの配列は、T2、B3およびP1に示されている(表2)。
【0134】
一部の好ましい実施形態では、前記sgRNA分子と、Cas9分子をコードするmRNAをエレクトロポレーション技術によって前記T細胞に導入する。
【0135】
一部の実施形態では、前記CAR分子を、例えば、レンチウイルストランスフェクション技術によって前記T細胞に導入する。
【0136】
一部の具体的な実施形態では、健康なヒト、例えば、健康な人の末梢血または臍帯血に由来するT細胞を単離および/活性化するステップを含む。好ましくは、その方法は、上記ステップ2)の後に、ユニバーサルCAR-T細胞を選別するステップをさらに含む。より好ましくは、選別後、得られたCAR-T細胞、たとえな、ユニバーサルCAR-T細胞、を機能的に検証する。
【0137】
一部の実施形態では、本発明は、疾患(例えば、腫瘍)の治療における上記CAR-T細胞の使用を提供する。
【0138】
本発明は一つの態様において、有効量の本発明に記載のCAR-T細胞を被験者に投与することを含む、被験者の疾患を治療する方法を提供する。本発明に記載の治療方法は、癌とHIV/AIDSを含むが、これらに限られていない。一部の実施形態では、前記疾患は腫瘍であり、リンパ腫または白血病のような血液腫瘍を含む。一部の実施形態では、前記CARは表Aに示す抗原を標的とし、その疾患は、表Aにおける当該標的抗原に対応する腫瘍である。一部の実施形態では、前記T細胞は被験者から得られたものではなく、例えば、前記T細胞は、健康なドナーに由来することができる。
【0139】
本発明に係るCAR-T細胞は、静脈注入経路など、細胞成分を含む医薬品を投与するために従来使用されている経路を通じて、それを必要とする被験者に投与されることができる。投与量は、被験者の病状および一般的な健康状況に基づいて具体的に決定することができる。
【0140】
TCR-T細胞の調製方法
本発明は、TCR-T細胞とも呼ばれる、遺伝子操作されたTCRを発現するT細胞を提供する。本発明はまた、遺伝子操作されたTCRまたはそれをコードするヌクレオチドまたはベクターを本発明に記載のいずれかの遺伝子改変T細胞(例えば、ユニバーサルT細胞)に導入することを含む、TCR-T細胞の調製方法を提供する。
【0141】
一部の実施形態では、
(i)TRACゲノム領域を破壊するように、14番染色体上の23016448番目から23016490番目のTRACゲノムを標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(ii)B2Mゲノム領域を破壊するように、15番染色体上の45003745番目から45003788番目のB2Mゲノム領域を標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び/または
(iii)PD-1ゲノム領域を破壊するように、2番染色体上の242800936番目から242800978番目のPD-1ゲノム領域、または2番染色体上の242795009番目から242795051番目のPD-1ゲノム領域を標的とするsgRNAをT細胞に導入すること、及び
(iv)遺伝子操作されたTCRまたはそれをコードする核酸をT細胞に導入することを含む、TCR-T細胞の調製方法が提供される。
【0142】
TCRまたはそれをコードする核酸、およびTRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAおよび/またはPD-1を標的とするsgRNA、およびTCRまたはそれをコードするヌクレオチドは、任意の適切な順序でT細胞に導入することができる。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAおよび/またはPD-1を標的とするsgRNA、およびTCRまたはそれをコードするヌクレオチドを同時にT細胞に導入する。一部の実施形態では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNAおよび/またはPD-1を標的とするsgRNAより、TCRまたはそれをコードする核酸を先にT細胞に導入する。一部の実施形態では、TCRまたはそれをコードするヌクレオチドを、遺伝子編集されたT細胞に導入し、そのT細胞のTRAC、B2Mおよび/またはPD-1ゲノム領域はすでに編集によって破壊された。一部の実施形態では、この方法はさらに、Cas9またはそれをコードするヌクレオチドを前記sgRNAと一緒に当該T細胞に導入することを含む。
【0143】
一部の実施形態では、本発明のTCR-T細胞によって発現される遺伝子操作されたTCRは、T細胞がヒト白血球抗原‐非依存的な方法で細胞表面抗原を認識して殺傷の役割を発揮するようにすることができる限り、本分野の既知の任意の遺伝子操作されたTCRであってもよい。例えば、本発明のTCR-T細胞における遺伝子操作されたTCRは、表Aに記載されている抗原を認識する遺伝子操作されたTCRであってもよい。
【0144】
本文で使用されているように、「遺伝子操作改変されたTCR分子」、「遺伝子操作されたTCR分子」、または「人工TCR分子」は、TCRを構成する様々なポリペプチドに由来する組換えポリペプチドを含み、この組換えポリペプチドは一般にi)標的細胞上の表面抗原に結合することができ、ii)T細胞の中または表面上に共局在化した場合、完全なTCR複合体のその他のポリペプチド成分と相互作用することができる。
【0145】
具体的な実施形態では、本発明の遺伝子操作されたTCRは、抗原結合ドメインとも呼ばれる標的特異的結合要素を含む。選択可能な抗原結合ドメインは、たとえば特定の病状に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとしての標的抗原を認識する。具体的な実施形態では、前記標的抗原は、例えば、上記表Aの抗原である。具体的な実施形態では、前記標的抗原は、例えば、ウイルス感染、自己免疫疾患などに関連する標的抗原である。遺伝子工学による操作によって、抗原結合ドメインを、TCRを構成する様々なポリペプチドと組み合わせることができ、これによって、TCRを介したT細胞応答を注目される抗原に対するものにすることができる。
【0146】
具体的な実施形態では、本発明の遺伝子操作されたTCRは膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、天然源または組換え源に由来することができる。供給源が天然源である場合、ドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来することができる。一つの態様では、膜貫通ドメインは、遺伝子操作されたTCRが標的に結合すれば、細胞内ドメインにシグナル伝達することができる。本発明に特に適する膜貫通ドメインは、少なくとも、例えば、T細胞受容体α、β、またはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の膜貫通ドメインを含むことができる。
【0147】
場合によって、膜貫通ドメインは、ヒンジ、例えば、ヒトタンパク質に由来するヒンジを通して遺伝子操作されたTCRの細胞外領域、例えば、遺伝子操作されたTCRの抗原結合ドメインに接続することができる。例えば、一実施形態では、ヒンジは、IgG4ヒンジ、またはCD8aヒンジなどのようなヒト免疫グロブリン(Tg)ヒンジであってもよい。
【0148】
具体的な実施形態では、本発明の遺伝子操作されたTCRは、膜貫通ドメインと細胞質領域を接続するリンカーを含む。任意に、リンカーは、長さが2~50アミノ酸の短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーである。グリシン‐セリンペアは、特に適切なリンカーを提供する。
【0149】
具体的な実施形態では、本発明の遺伝子操作されたTCRは、細胞質ドメインを含む。細胞内シグナル伝達ドメインは一般的に、遺伝子操作されたTCRが導入された免疫細胞の少なくとも1つの正常なエフェクター機能の活性化を担当する。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性または補助活性であってもよい。したがって、用語の「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、タンパク質内の、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞に専門的な機能を実行するようにガイドする部分を指す。通常は、完全な細胞内シグナル伝達ドメインを使用することができるが、多くの場合、完全鎖を使用する必要はなく、短く切断された部分がエフェクター機能シグナルを伝達する限り、完全鎖の代わりにこの短く切断された部分を使用することができる。よって、用語の細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短く切断された部分を含もうとする。
【0150】
ある実施形態では、前記遺伝子操作されたTCR分子は、遺伝子操作されたTCRαとTCRβ鎖を含む。ある実施形態では、前記遺伝子操作されたTCR分子は、T細胞に発現されるCD3分子とζ鎖および/またはその他の共刺激分子に結合する。
【0151】
一部の実施形態では、本発明は、疾患(例えば、腫瘍)の治療における上記TCR-T細胞の使用を提供する。
【0152】
本発明は一つの態様において、有効量の本発明に記載のTCR-T細胞を被験者に投与することを含む、被験者の疾患を治療する方法を提供する。本発明に記載の治療方法は、癌とHIV/AIDSを含むが、これらに限られていない。一部の実施形態では、前記疾患は腫瘍であり、リンパ腫または白血病のような血液腫瘍を含む。一部の実施形態では、前記遺伝子操作されたTCRは表Aに示す抗原を標的とし、その疾患は、当該標的抗原に対応する表Aの腫瘍である。一部の実施形態では、前記T細胞は被験者から得られたものではなく、例えば、前記T細胞は、健康なドナーに由来することができる。
【0153】
本発明に係るTCR-T細胞は、静脈注入経路など、細胞成分を含む医薬品を投与するために従来使用されている経路を通じて、それを必要とする被験者に投与されることができる。投与量は、被験者の病状および一般的な健康状況に基づいて具体的に決定することができる。
【0154】
T細胞源
増殖と遺伝子修飾をする前に、被験者からT細胞源が得られる。用語の「被験者」は、免疫応答を誘発することができる生物(例えば、哺乳動物)を含もうとする。被験者の例には、ヒトが含まれている。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、腫瘍など、さまざまなソースから取得可能である。本発明のT細胞はまた、各分化段階にある造血幹細胞に由来することができる。方向性分化培養条件下で、造血幹細胞はT細胞に分化する。本発明のある態様では、本分野で獲得可能な複数のT細胞株を使用することができる。
【0155】
本発明のある態様では、T細胞は、熟練技術者に既知の様々な技術、例えば、FicollTMを利用して被験者から採取された血液から単離して得てもよいし、アフェレーシス(apheresis)によって個体の循環血液から細胞を得てもよい。アフェレーシスの産物は通常、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、血小板を含むリンパ球を含む。一つの態様では、アフェレーシスによって採取された細胞を洗浄して血漿部分を除去し、後続の加工ステップのために細胞を適切な緩衝液または媒質に入れてもよい。
【0156】
赤血球を溶解し、例えばPERCOLLTM勾配遠心分離または向流遠心分離によって単球をパニングして枯渇させ、末梢血リンパ球からT細胞を分離することができる。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+およびCD45RO+T細胞などの特定のT細胞サブセットは、陽性または陰性選択技術によってさらに分離することができる。例えば、一つの態様では、T細胞は、DYNABEADSTMM-450CD3/CD28Tなどの抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)結合ビーズと一緒に、所望のT細胞に対して陽性選択するのに十分な時間でインキュベーションすることで分離する。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を腫瘍組織から分離することができる。
【0157】
sgRNA
本発明の一つの態様では、TRACを標的とするsgRNA、B2Mを標的とするsgRNA、およびPD-1を標的とするsgRNAが提供される。前記sgRNAは、配列番号2~22から選択されるいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、前記sgRNAは化学修飾されたものである。
【0158】
本発明はさらに、本発明に係るsgRNAまたはそのベクターを含む、sgRNA組成物、キットまたは製品を含む。一部の実施形態では、そのキットは、i)配列番号2~5から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNA、(ii)配列番号6~14から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNA、及び/または(iii)配列番号15~22から選択されるいずれか一つの配列を含むsgRNAを含む。一部の実施形態では、そのキットは、(i)配列番号3の配列を含むsgRNA、(ii)配列番号16の配列を含むsgRNA、及び(iii)配列番号7の配列を含むsgRNAを含む。一部の実施形態では、そのキットはさらに、Cas6をコードする核酸またはそのベクターを含む。一部の実施形態では、前記sgRNAは化学修飾されたものである。
【0159】
一部の実施形態では、本発明のT細胞遺伝子改変方法は、化学修飾されたsgRNAを使用する。本発明者らが使用した化学修飾されたsgRNAは、以下の2つの利点を有すると考えられる。第一に、sgRNAは一本鎖RNAであり、半減期が非常に短いため、細胞に入ると急速に分解する(最長12時間)が、Cas9タンパク質とsgRNAとが結合して遺伝子編集の役割を発揮するには少なくとも48時間がかかる。そのため、化学修飾されたsgRNAは細胞に入った後、安定して発現し、Cas9タンパク質に結合した後、効率的にゲノムを遺伝子編集してIndelsを生成することができる。第二に、未修飾のsgRNAは細胞膜を透過する能力が低く、細胞または組織に効果的に入って対応する機能を発揮することができない。化学修飾されたsgRNAは細胞膜を透過する能力が一般的に強化されている。本発明において、本分野で常用の化学修飾方法を使用することができ、sgRNAの安定性(半減期を延長する)と細胞膜への侵入能力を向上させることができる限り、いずれも使用できる。実施例に使用されている具体的な化学修飾の他に、例えば、Deleavey GF1,Damha MJ.Designing chemically modified oligonucleotides for targeted gene silencing.Chem Biol.2012 Aug 24;19(8):937-54、およびHendel et al.Chemically modified guide RNAs enhance CRISPR-Cas genome editing in human primary cells.Nat Biotechnol.2015 Sep;33(9):985-989の文献に報告された化学修飾方法など、その他の修飾方法を含む。
【0160】
本発明において、化学修飾されたsgRNAおよびCas9コード遺伝子を共にエレクトロポレーションによってT細胞に導入し、効率的な遺伝子編集効率(例えば、Indels%で表される)を生成し、sgRNAの化学修飾は本発明の肝心な要素の一つである。実施例のデータによって、Cas9 mRNAと一緒にエレクトロポレーションしたのは、化学修飾されていないsgRNAである場合、そのIndels効率は、化学修飾されたsgRNAをエレクトロポレーションした時に得られたIndels効率よりはるかに低いことは示されている。
【0161】
次は具体的な実施例により本発明の内容を説明する。以下の具体的な実施例は、例示のみを目的としており、本発明の内容が具体的な実施例に限定されることを意味するものではないことを理解されたい。
【0162】
本明細書全文でいくつかの文献が引用されている。ここで、各文献(いずれのジャーナル文章または要約、公開済みまたは未公開の特許出願、登録した特許、メーカーの仕様書、プロトコルなどを含む)は言及により本文に取り込まれる。しかしながら、ここに引用された文献が実際に本発明の既存技術であると認めるわけではない。
【実施例
【0163】
実施例1:ユニバーサルT細胞の調製
1.健康なドナーのT細胞の単離と活性化
健康なドナーからの臍帯血の採取:血液バンクから臍帯血を採取した後、4℃の冷蔵庫に一時に保管し、24時間以内に、T細胞単離のために、恒温装置を備えた輸送車を介してGMPラブに輸送した。
1.1 臍帯血単球の調製:ステップ(1)で輸送された臍帯血に生理食塩水をピペットで吸い取って加え、臍帯血と生理食塩水を1:1(V/V)に希釈し、血球希釈液をリンパ球分離チューブにゆっくり加え、800gで20分間遠心分離した後、リンパ球分離液の上にある白い膜層の細胞を吸い取り、新しい50ml遠心分離チューブに移し、T細胞培養培地を加え、400gで5分間遠心分離してから上澄みを捨て、遠心分離チューブの底部の細胞ペレットを残して末梢血単球を得た。
【0164】
1.2 T細胞の単離と活性化:得られた臍帯血単球をセルカウンターでカウントした後、T細胞選別を行った。具体的なステップは下記通りである:
1.2.1.細胞ペレットをEasy buffer(メーカー:StemCell、型番:16F72331)で密度が5*10/mlになるように調整し、5mlピペットを使用して細胞を5mlフローチューブに移した;
1.2.2.T細胞単離試薬を添加し、濃度は50ul/mlとし、添加した後、室温で5分間インキュベーションした;
1.2.3.選別磁気ビーズを加え、30秒以内に磁気ビーズを均一に混合し、仕上げ濃度は40μl/mlであった;
1.2.4.Easy bufferを使用して細胞液を2.5mlに補足し、その後直接に磁気カラム上に置き、3分間後に、細胞を15ml遠心分離チューブに注ぎ、T細胞を得た;
1.2.5.選別後、1000μlのピペットで均一に混合してカウントし、遠心分離(400G、5分間)して上澄みを除去し、T細胞ピペットを得た。
T細胞の培養培地にT細胞ピペットを再懸濁した。そして、1:1の比率でT細胞活性化因子を添加し、この時、T細胞は活性化状態にあり、T細胞をインキュベーターに入れて増殖培養を続けた。
【0165】
2.エレクトロポレーション条件の最適化
上記培養したT細胞を50mlの遠心分離チューブに収集し、300gで7分間遠心分離し、上澄みを捨て、DPBS溶液(メーカー:Gibco、型番:1924294)で2回洗浄し、そしてエレクトロポレーション試薬を用いて細胞密度を2.5×10細胞/mLに調整した。HISCRIBETMT7 ARCA mRNA Kit(テール付き)(メーカー:NEB、型番:cat#E2060S)を使用して調製したGFP mRNA(具体的なステップについて3.3を参照)をT細胞と均一に混合し、その最終濃度が100μL当たり2.5×10細胞と6μgのGFP mRNAを含むようにした。エレクトロポレーターBTX Agile pulse MAX(メーカー:BTX、型番:47-0200NINT)を使用してGFP mRNAをT細胞に導入した。電圧とパルス時間の変更によってそれぞれエレクトロポレーションシステムを最適化し、表1に示すように、電圧は180ボルトから400ボルトに順次増加し、パルス時間は2msから0.5msに順次に減少した。細胞の成長状態を毎日観察し、エレクトロポレーションされたT細胞を1日おきに数えて液を補充し、フローサイトメトリー(メーカー:ACEA、型番:ACEA NovoCyte)を使用して遺伝子編集されたT細胞に対して表現型解析を行った結果、表1に示すように、150~250V、0.5~2msのエレクトロポレーション条件下で、細胞生存率とGFPエレクトロポレーション効率が最も良かった。
【0166】
【表3】
【0167】
3.T細胞の遺伝子ノックアウト
CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を利用して、ステップ1.2で得られたT細胞におけるTRAC、B2M、PD-1遺伝子をノックアウトした。具体的なステップは下記通りである:
3.1 TCRのα鎖定常コード領域(すなわちTRAC)遺伝子、HLA定常コード領域B2M遺伝子、およびPD-1の定常コード領域遺伝子に対するsgRNA設計およびプラスミド構築。
TRAC、B2M、およびPD-1コード領域のすべてのコード配列について設計したsgRNAは、いずれもCRISPR RGEN Toolsによって設計され、最高のスコアに従って選択されたsgRNA配列を表2に示す。
【0168】
【表4】
【0169】
ここで、TはTRACに対するsgRNA配列を表し、PはPD-1コード領域に対するsgRNA配列を表し、BはB2Mに対するsgRNA配列を表す。
3.2 化学方法でsgRNAを2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオにより修飾し、ノックアウト効率と安定性の高いsgRNAを調製した。
3.3 Cas9プラスミドとGFPプラスミドを取り、Xbal(メーカー:NEB、型番:cat#R0145S)、cutsmart buffer(メーカー:NEB、型番:cat#B7204s)で酵素消化して線形化させ、50μl反応系は下記通りである:
【0170】
【表5】
【0171】
37℃で4時間水浴し、酵素の消化産物2μlを、電圧が110Uとしたアガロースゲル電気泳動に30分間かけ、ゲルイメージャーで単一のバンドが観察され、これは、酵素消化が完了し、すべてのプラスミドが線形化されたことを示している。
上記反応生成物を取り、洗浄し精製した。
精製された生成物を取り、HISCRIBETM T7 ARCA mRNA Kit(メーカー:NEB、型番:cat#E2060S)を用いてインビトロ転写(すなわちIVT)を行い、20μlシステムは下記通りである:
【0172】
【表6】
【0173】
上記反応系をPCR機において37℃で4時間反応させた。4時間後、2μlのDNase 1を反応系に加え、37℃で20分間反応させた。
上記反応生成物を取り、次の操作をした:
【0174】
【表7】
【0175】
上記反応系をPCR機において2時間反応させた。
上記反応生成物を洗浄し精製して、後ほどの使用のために‐80度の冷蔵庫に置いた。
【0176】
3.4 エレクトロポレーション技術を利用して、sgRNAとCas9 mRNAをT細胞に導入し、抗原スクリーニングの原理を利用して、TCRおよび/またはB2Mおよび/またはB2Mおよび/またはPD1陰性およびCD4とCD8陽性なT細胞をスクリーニングしてユニバーサルT細胞を得た。
上記細胞を取り、TIANamp Genomic DNA Kit(メーカー:TIAN GEN、型番:cat#DP304-03)を用いて細胞ゲノムを抽出した。合成プライマーを利用して、上記抽出された細胞ゲノムを取り、2*Esay Taq Super Mix(+dye)(メーカー:TRANS、型番:Code#AS111)を用いて、TRAC、B2MおよびPD-1の、対応するsgRNAを含むゲノム領域をそれぞれPCRで増幅し、50μl反応系は下記通りである:
【0177】
【表8】
【0178】
反応条件は下記通りである:
95℃ 3分間
95℃ 30秒 35サイクル
Variable 30秒
72℃
【0179】
3.5 反応後のPCR生成物を取り、Sangerシーケンスを行い、TCR、HLA、PD-1のノックアウト効率を分子レベルで検証した。その結果は図2A図2Jに示す。このシステムでは、CRISPR/Cas9技術を利用して、TCRのTRAC遺伝子、HLAのB2M遺伝子、PD-1の定常コード領域をうまく編集することができ、挿入変異と欠失変異を含み、どちらもフレームシフト変異を引き起こし(詳細は下記表B~Gを参照)、遺伝子レベルでTCR、HLA、PD-1の発現を抑制した。
【0180】
【表9】
【0181】
【表10】
【0182】
【表11】
【0183】
【表12】
【0184】
【表13】
【0185】
【表14】
【0186】
3.6 同時に、TRAC-sg3(T2、T3)、B2M-sg2(B2、B3)およびPD-1-sg2(P1、P2)のヒトゲノム全体の潜在的なオフターゲット部位を予測し、予測されたその他の遺伝子発現を影響し得るオフターゲット部位について増幅解析を行った。その目的は、TRAC、B2M、PD-1のノックアウトがオフターゲット(оff‐target)の非特異的遺伝子のノックアウトを導入しなかったことを分子レベルで確認することである。結果を表3と図5に示す。
【0187】
【表15】
【0188】
【表16】
【0189】
表3から、TRAC、B2MおよびPD-1の遺伝子は何ら変異もしなかったことが分かる。これは、当該システムが遺伝子編集特異性に対する要求を満たしたことを示している。
上記結果から分かるように、TRAC-sg2(T2)、TRAC-sg3(T3)、B2M-sg2(B2)、B2M-sg3(B3)、およびPD-1-sg1(P1)、PD-1-sg2(P2)をsgRNAとしてT細胞の遺伝子編集を完了させてからスクリーニングして得られたユニバーサルT細胞の中のTRAC、B2M、PD-1遺伝子は完全にノックアウトされたと共に、潜在的なオフターゲット部位での遺伝子変異が見つからなかった。
【0190】
4.遺伝子編集T細胞の増殖
選別されたT細胞をサイトカインによって活性化させ、T細胞培養培地で細胞密度を1×10細胞/mLに調整した。72時間後、細胞の状態を観察し、細胞懸濁液を収集し、300gで7分間遠心分離し、上澄みを捨て、DPBS(Gibco)で2回洗浄し、そしてエレクトロポレーション試薬培地で細胞密度を2.5×10細胞/mLに調整した。HISCRIBETMT7 ARCA mRNA Kit(メーカー:NEB、型番:cat#E2060S)を使用して調製したCas9 mRNAおよび合成されたsgRNAをT細胞とRNAと均一に混合し、最終濃度が100μL当たり2.5×10細胞と8μgのRNA(Cas9 mRNAとsgRNAをそれぞれ4μg含む)を含むようにした。そして、エレクトロポレーターBTX Agile pulse MAXを使用してRNAをT細胞に導入して培養した。細胞の成長状態を毎日観察し、1日おきに細胞を数えて液を補充し、遺伝子編集されたT細胞に対して表現型解析を行った結果、表3に示すように、TCRのみをノックアウトする効率は約90.42%であり、TCRおよびB2M(DKO)をノックアウトする効率は約81.39%であり、三つの遺伝子を同時にノックアウト(TKO)する効率は67.91と高かった。細胞培養の8日後、得られたT細胞に対して品質管理モニタリングをした。
【0191】
5.CRISPR/Cas9遺伝子編集効率の検出
細胞培養の8日目にサンプリングし、ヒトゲノム抽出キット(メーカー:TIAN GEN、型番:cat#DP304-03)を利用してサンプルからゲノムを抽出すると共に、対応するシーケンシングプライマーを設計し、PCR技術を用いて目的フラグメントを調製し、目的フラグメントと、対応するプライマーとに対してsingerシーケンシングをした。TIDEソフトウェアを使用してシーケンシング結果を解析し、その結果を図2A、2D、2Gに示す。好ましく選択されたsgRNAは、対応する遺伝子を効率的にノックアウトすることができる。
【0192】
6.目的細胞のスクリーニング
TCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1陰性、CD4とCD8陽性なT細胞を下記の方法でスクリーニングした。
免疫磁気ビーズを利用してTCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1陰性かつCD4とCD8陽性なT細胞をスクリーニングし、編集されたT細胞の状態をT細胞生存率によってモニタリングした。
【0193】
第1ステップでは、12~14日目に、エレクトロポレーションされたT細胞を収集し、400Gで5分間遠心分離し、上澄みを捨て、Easy bufferを用いて細胞を1×10/mlにメスアップしてから、細胞を5mlフローチューブに移した。スクリーニング試薬を利用して、T細胞中の、TCR、B2M、PD-1細胞を依然として発現している細胞を除去し、スクリーニングして最終的な製品、すなわちユニバーサルT細胞を得た。
【0194】
第2ステップでは、少量のT細胞を取ってフローサイトメトリー検出をすると共に、TCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1細胞表面のバイオマーカーを染色した。TCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1の陽性率は1%未満である場合、次のステップに進むことができる。本実施例では、図4に示すように、TCR陽性率は1%であり、TCRとB2M DKOのT細胞陽性率は0.79%未満であり、TCR、B2M、およびPD-1 TKOのT細胞陽性率は1%未満である。表4に示すように、精製後のT細胞生存率は明らかな影響を受けておらず、すべて85%以上であった。
【0195】
【表17】
【0196】
7.オフターゲット解析
7.1.1×10のT細胞を収集し、ゲノムを抽出した(メーカー:QIAGEN、型番:Cat#69504)。
7.2.抽出されたゲノムをインビトロでCas9消化反応させた。
Cas9インビトロ消化反応系は下記通りである:
【0197】
【表18】
【0198】
7.3.ピペットチップでピペットし、穏やかに混合したあと、37℃で15分間インキュベーションした;
7.4.1μlのプロテイナーゼK(メーカー:Tiangen、型番:Cat#RT403)を加え、穏やかに混合した後、室温で10分間インキュベーションした;
7.5.5ulのサンプルを取ってゲル電気泳動を行い、Cas9インビトロ消化反応の効果を検出した;
7.6.残りのサンプルについてヒトゲノムリシーケンスをした。
その結果は図5に示され、オフターゲット現象は見つからなかった。
【0199】
実施例2:ユニバーサルT細胞の調製
ユニバーサルCAR-T細胞の調製と増殖
選別されたT細胞をサイトカインによって活性化させ、T細胞培養培地を利用して細胞密度を1×10細胞/mLに調整した。72時間後、細胞の状態を観察し、細胞懸濁液を収集し、300gで7分間遠心分離し、上澄みを捨て、DPBS(メーカー:Gibco、型番:1924294)で2回洗浄し、そしてエレクトロポレーション試薬培地で細胞密度を2.5×10細胞/mLに調整した。HISCRIBETMT7 ARCA mRNA Kit(テール付き)(メーカー:NEB、型番:cat#E2060S)を使用して調製したCas9 mRNAおよび合成されたsgRNAをT細胞とRNAと均一に混合し、最終濃度が100μL当たり2.5×10細胞と8μgのRNA(Cas9 mRNAとsgRNAをそれぞれ4μg含む)を含むようにした。そして、エレクトロポレーターBTX Agile pulse MAXを使用してRNAをT細胞に導入して培養した。細胞の成長状態を毎日観察し、1日おきに細胞をカウントして液を補充し、5日目にMOI=2-10の比率で、CAR(抗CD19scFv、リンカー(Linker)、CD8 alphaヒンジ領域(CD8 alpha hinge)、CD8膜貫通領域(CD8 transmembrane dоmain)、4-11BBシグナル領域(4-11BB signaling domain)およびCD3 zetaを含み、具体的な構造についてUS20140271635A1を参照)がパッケージングされたレンチウイルスを加えた。
【0200】
ユニバーサルCAR-T細胞のスクリーニング
TCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1陰性、CD4とCD8陽性なT細胞を下記の方法でスクリーニングした。
免疫磁気ビーズを利用してTCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1陰性、かつCD4とCD8陽性なT細胞をスクリーニングし、編集されたT細胞の状態をT細胞生存率によってモニタリングした。具体的なステップは下記通りである:
【0201】
第1ステップでは、12~14日目に、エレクトロポレーションされたT細胞を収集し、400Gで5分間遠心分離し、上澄みを捨て、Easy bufferを用いて細胞を1×10/mlにメスアップしてから、細胞を5mlフローチューブに移した。スクリーニングビーズを利用して、T細胞中の、TCR、B2M、PD-1細胞を依然として発現している細胞を除去し、スクリーニングして最終的な製品、すなわちユニバーサルT細胞を得た。
【0202】
第2ステップでは、少量のT細胞を取ってフローサイトメトリー検出をすると共に、TCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1細胞表面のバイオマーカーを染色した。TCRおよび/またはB2Mおよび/またはPD-1の陽性率は1%未満である場合、次のステップに進むことができる。本実施例では、表5と図6に示すように、TCR陽性率は1%であり、TCRとB2M DKOのT細胞陽性率は0.79%未満であり、TCR、B2M、およびPD-1 TKOのT細胞陽性率は1%未満である。精製後のT細胞生存率は明らかな影響を受けておらず、すべて85%以上であった。
【0203】
【表19】
【0204】
実施例3:ユニバーサルCAR-Tの機能検証
実施例2で得られたユニバーサルCAR-T細胞(すなわち、エフェクター細胞)の、B細胞急性リンパ球性白血病細胞に対する殺傷効果が観察された。
一、特異的腫瘍細胞に対するインビトロ殺傷効果
本発明の実験ステップは下記通りである:
【0205】
ステップ1:標的細胞の標識
CELL TRACETM Far Red Cell Proliferation Kit(メーカー:Gibco、型番:1888569)を用いて標的細胞(ヒトBurkitt’sリンパ腫細胞Raji、K562、すべての細胞はATCCに由来)を標識した。
1. CELL TRACETM Far Red Cell Proliferationを再蒸留水で1mmоlの溶液に希釈した;
2. 1×10個の標的細胞を取り、400gで5分間遠心分離して上澄みを除去した;
3. 1μlのCELL TRACETM Far Red Cell Proliferation溶液を加え、37℃の暗所で20分間インキュベーションした;
4. 細胞をT細胞培養培地に加え、37℃で5分間インキュベーションした;
5. 400gで5分間遠心分離した後、上澄みを除去し、標識を完了した。
【0206】
ステップ2:標的細胞に対するエフェクター細胞の殺傷の検出
標識された標的細胞を2×10個の細胞/mLの密度でR1640+10%FBS培養液で再懸濁し、500μLを取って48ウェルプレートに加えた。適切なエフェクター細胞と標的細胞との比率(2.5:1、1.25:1、0.6:1)で、各ウェルに500μlのエフェクター細胞を加えると共に、T細胞と健康なヒト臍帯血CAR-T細胞(T細胞培養の2日目に、CAR(具体的な構造について、US20140271635A1を参照)がパッケージングされているレンチウイルスをMOI(感染多重度)=2~10の比率で加えて得られたCAR-T)を対照細胞として、各群に3つが平行し、個別の標的細胞群を設計し、その死亡率を検出した。37℃、5%CO2で12~16時間培養し、400gで5分間遠心分離し、細胞ペレットを取り、150μlのDPBS(メーカー:Gibco、型番:1924294)で再懸濁した。PI(メーカー:Sigma;型番:P4170)で染色した後、フローサイトメトリーで標的細胞の死亡率を検出した。その結果を図7に示す。その他のCAR-T細胞と比べて、ユニバーサルCAR-T細胞は、特異的細胞に対する殺傷効果が基本的に同じであり、効果はT細胞よりも優れている。また、非特異的な標的細胞に対して殺傷効果はほとんどない。
【0207】
ステップ3:ELISAによるサイトカイン放出の検出
標識された標的細胞を2×10個の細胞/mLの密度でRPMI 1640+10%FBSで再懸濁し、500μLを取って48ウェルプレートに加えた。適切なエフェクター細胞と標的細胞との比率(10:1)で、各ウェルに500μlのエフェクター細胞を加えると共に、T細胞と健康なヒト臍帯血CAR-T細胞を対照細胞として、各群に3つが平行し、個別の標的細胞群を設計した。37℃、5%CO2で12~16時間培養し、各ウェルから100μlの培養上澄みを取り、400gで5分間遠心分離して細胞ペレットを除去し、上澄みを取ってからLEGEND MAXTM Human IL-2/IFN-gama(メーカー:Biolegend、型番:431807、430108)キットを用いて、プロトコルに従ってサイトカイン放出を検出した。
【0208】
得られた結果は図8に示す。図8から分かるように、Raji細胞に対するユニバーサルCAR-Tの殺傷能力は、通常のCAR-Tの殺傷能力と基本的に同じか、通常のCAR-Tの殺傷能力よりわずかに優れており、特にTCRnegCAR-T IFN-rの放出量は、通常のCAR-Tよりはるかに高く、どちらもK562に対する殺傷力が低いため、サイトカイン放出は比較的に少ない。
【0209】
二、特異的腫瘍細胞に対するユニバーサルCAR-Tのインビボでの殺傷効果
1.細胞株:人リンパ腫細胞株
Rajitg(luciferase-GFP)/Bcgen細胞は、ヒトBurkitt’sリンパ腫細胞株であり、そのCD19発現は陽性であり、CAR-T細胞の標的細胞とすることができる。Rajiluc-GFPは修飾されてGFPとluciferaseを同時に発現する。尾静脈注射によってマウスのヒトリンパ腫モデルを構築することができ、XenoLight D-Luciferin、Potassium Salt(メーカー:PerkinElmer、型番:122799)と小動物ライブイメージャーの協働で呈する蛍光を通して腫瘍形成面積を統計することができる。
【0210】
2.Rajitg(luciferase-GFP)/Bcgen細胞培養
Rajitg(luciferase-GFP)/Bcgen細胞株は懸濁細胞株であり、10%FBSを含むRPMI 1640培地で急速に増殖できる。細胞密度が2~3×10/mLの場合、継代が必要である。継代時に、細胞懸濁液を遠心分離チューブに入れ、300gで6分間遠心分離し、上澄みを捨てた。細胞密度を1×10細胞/mlに調整し、培養を続けた。正常な成長条件では、一日おきに継代し、細胞密度を0.8~1×10細胞/mLに維持すればよい。
【0211】
3.マウスのモデリング
7~10週齢のNPGメスマウス25匹に、腫瘍細胞(Rajitg(luciferase-GFP)/Bcgen)5×10細胞/匹で尾静脈注射により1回注射し、一日おきに体重を計り、毎日1回観察し、腫瘍細胞を播種してから3~5日後、XenoLight D-Luciferin、Potassium Salt(メーカー:PerkinElmer、型番:122799)と小動物ライブイメージャーの協働で呈する腫瘍形成面積および腫瘍の濃縮程度を指標としてランダムに6つの群、すなわち、生理食塩水群、T細胞群、CAR-T細胞群、TCRnegCAR-T群、DKO-CAR-T群、TKO-CAR-T群に分けた。
【0212】
4.マウスリンパ腫モデルの薬剤投与
モデルを構築した日をD0として記録した。尾静脈注射によって生理食塩水200μL、ヒトT細胞200μL(合計2×10細胞/匹)、CAR-T細胞200μL(合計2×10細胞/匹)、TCRnegCAR-T細胞200μL(合計2×10細胞/匹)、DKO-CAR-T細胞200μL(合計2×10細胞/匹)、TKO-CAR-T細胞200μL(合計2×10細胞/匹)を細胞に注射し、すべてのマウスに単回投与を行った。その結果を図9A~9Cおよび図10に示す。図から分かるように、本発明によって提供されるユニバーサルCAR-Tは、初期段階では腫瘍細胞を抑制および殺傷する良好な効果を有し、CAR-T細胞とほぼ同じであり、後期段階では、一般的なCAR-Tより、腫瘍細胞に対する抑制効果が明らかである。
【0213】
5.投与後のマウスモニタリング
マウスの体重、皮膚の完全度、毛髪、精神状態、活動頻度、および活動協調度などを含み、投与後のマウスに対して毎日モニタリングし、2日ごとにマウスの体重を記録し、連続して37日間観察した。腫瘍面積の消去および腫瘍濃縮の低減をエフェクター細胞の機能の評価指標として、皮膚完全度、毛髪、精神状態、活動頻度および活動協調度によってユニバーサルCAR-Tの安全性を評価した。図11に示すように、マウスの体重は低減していなく、皮膚の毛髪は完全であり、精神的に活発であり、活動も協調しており、GVHD応答はなかった。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
【配列表】
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