(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】蓄電素子及び蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221208BHJP
H01M 50/466 20210101ALI20221208BHJP
H01G 11/22 20130101ALI20221208BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20221208BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20221208BHJP
H01M 10/0583 20100101ALN20221208BHJP
H01M 6/10 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/466
H01G11/22
H01G11/86
H01G11/52
H01M10/0583
H01M6/10 Z
(21)【出願番号】P 2019065912
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】針長 右京
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 明彦
(72)【発明者】
【氏名】森 澄男
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-038711(JP,A)
【文献】特開2014-035998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/40
H01G 11/22
H01G 11/86
H01G 11/52
H01M 10/0583
H01M 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極と、該第一の電極と極性の異なる第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に配置されるセパレータとを有する電極体を備え、
前記第一の電極は、第一方向において対向する一対の第一延在部と、前記一対の第一延在部の延びる方向であると共に前記第一方向と直交若しくは略直交する第二方向における前記一対の第一延在部の一方側の端部同士を接続する第一ターン部とを有し、
前記セパレータは、前記第一方向において前記一対の第一延在部のうち一方の第一延在部を間に挟むと共に、前記一方の第一延在部に沿い且つ前記第二方向に直交若しくは略直交する第三方向に延びる一対の第二延在部と、前記一対の第二延在部の第三方向における一方側の端部同士を接続すると共に、前記一方の第一延在部の第三方向における一方側の端縁を覆う第二ターン部とを有
し、
前記一方の第一延在部は、矩形状の本体と、該本体の前記第三方向における他方側の端縁から前記第三方向における他方側に延びるタブと、を有し、
前記一対の第二延在部のそれぞれは、前記本体の前記第二方向における全体を覆うとともに、前記一方の第一延在部の本体の前記第三方向における他方側の端縁と前記タブとの境界よりも、前記第三方向における他方側に延び、
前記第二ターン部は、前記一方の第一延在部の第三方向における一方側の端縁の前記第二方向における全体を覆う、ことを特徴とする蓄電素子。
【請求項2】
前記第二の電極は、枚葉状であり、
前記セパレータは、前記第一方向において前記第二の電極を間に挟んだ状態で固定する第一セパレータ及び第二セパレータを含む、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
第一の電極と、該第一の電極と極性の異なる第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に配置されるセパレータとを有する電極体を備える蓄電装置の製造方法であって、
第一方向において対向する一対の第一延在部と、前記一対の第一延在部の延びる方向であると共に前記第一方向と直交若しくは略直交する第二方向における前記一対の第一延在部の一方側の端部同士を接続する第一ターン部とを有するように前記第一の電極を折り曲げることと、
前記第一方向において前記一対の第一延在部のうち一方の第一延在部を間に挟むと共に、前記一方の第一延在部に沿い且つ前記第二方向に直交若しくは略直交する第三方向に延びる一対の第二延在部と、前記一対の第二延在部の第三方向における一方側の端部同士を接続すると共に、前記一方の第一延在部の第三方向における一方側の端縁を覆う第二ターン部とを有するように前記セパレータを折り曲げることと、を含
み、
前記一方の第一延在部は、矩形状の本体と、該本体の前記第三方向における他方側の端縁から前記第三方向における他方側に延びるタブと、を有し、
前記一対の第二延在部のそれぞれは、前記本体の前記第二方向における全体を覆うとともに、前記一方の第一延在部の本体の前記第三方向における他方側の端縁と前記タブとの境界よりも、前記第三方向における他方側に延び、
前記第二ターン部は、前記一方の第一延在部の第三方向における一方側の端縁の前記第二方向における全体を覆う、ことを特徴とする蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極とセパレータとを有する電極体を備えた蓄電素子、及び、蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極及び負極がセパレータを介して配置されたリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」と称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、この電池は、
図18に示すように、複数の負極121と複数の正極122とを組み合わせて構成された積層体を備える。
【0003】
負極121は、矩形シート状であり、負極集電体と負極活物質層とにより構成される。隣り合う一対の負極121は、平行若しくは略平行に延在している。この一対の負極121の間には、正極122が配置されている。正極122は、矩形シート状であり、正極集電体と正極活物質層とにより構成される。
【0004】
負極121と正極122との間には、セパレータ124が配置されている。セパレータ124は、一方側を開放した状態で正極122を覆うように折り曲げられている。このように、正極122を覆うセパレータ124が、一対の負極121の間に配置されることにより、セパレータ124は、負極121を挟むことになる。
【0005】
ところで、前記積層体を備えた電池では、セパレータ124には、負極121に対する折り目と直交する方向における相対移動を規制するような構成が何ら存在しないため、セパレータ124の負極121に対するこのような相対移動は規制されない。これにより、前記電池では、振動等によって、セパレータ124と負極121との相対位置が想定された位置からずれることがある。例えば、セパレータ124が負極121に対して折り目と直交する方向においてずれると、負極121と正極122とが短絡するおそれがある。
【0006】
また、それぞれ帯状の正極板と負極板とのうち、少なくともいずれか一方の極板を袋状のセパレータに収納し、セパレータに収納した極板とセパレータに収納しない極板とをほぼ直角方向に交差するように載置し、両極板を交互に折り返して積層させた極板群が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-117291号公報
【文献】実開昭61-124965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記極板群においては、帯状の両極板を折り返す際に、互いに他の極板を折り返すときの位置決めを行う事が可能であるが、折り返しの構造上、正極板および負極板の耳部(集電タブ)を、帯状の端部近傍にしか設けることができない。このため、正極と負極の長尺方向端部の近傍からのみ、外部端子への電流が流れる構成となるので、電流を効率的に取り出すことができず、集電性が低下するという課題があった。つまり、帯状の極板群の積層においては、集電性の低下を抑制することと、位置決めを行いながら極板群を積層することとを両立させることは、当業者にとって困難な課題であった。
【0009】
そこで、本実施形態は、第一の電極が一対の延在部を有し、且つ、この延在部をセパレータが挟むと共に、セパレータの第一の電極に対する位置ずれを抑制することができる。さらに、集電性の低下を抑制する蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の蓄電素子は、
第一の電極と、該第一の電極と極性の異なる第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に配置されるセパレータとを有する電極体を備え、
前記第一の電極は、第一方向において対向する一対の第一延在部と、前記一対の第一延在部の延びる方向であると共に前記第一方向と直交若しくは略直交する第二方向における前記一対の第一延在部の一方側の端部同士を接続する第一ターン部とを有し、
前記セパレータは、前記第一方向において前記一対の第一延在部のうち一方の第一延在部を間に挟むと共に、前記一方の第一延在部に沿い且つ前記第二方向に直交若しくは略直交する第三方向に延びる一対の第二延在部と、前記一対の第二延在部の第三方向における一方側の端部同士を接続すると共に、前記一方の第一延在部の第三方向における一方側の端縁を覆う第二ターン部とを有する。
【0011】
かかる構成によれば、第二ターン部が一方の第一延在部の第三方向における一方側の端縁を覆うことにより、セパレータの第一の電極に対する第三方向における他方側への移動が規制されているため、セパレータが第一の電極に対して位置ずれしにくい。
【0012】
前記蓄電素子では、
前記第二の電極は、枚葉状であり、
前記セパレータは、前記第一方向において前記第二の電極を間に挟んだ状態で固定する第一セパレータ及び第二セパレータを含んでもよい。
【0013】
かかる構成によれば、仮にセパレータが第一の電極に対して位置ずれしたとしても、第二の電極がセパレータと共に位置ずれするため、第一の電極と第二の電極との間にセパレータが配置される構成を維持することができ、第一の電極と第二の電極との短絡を抑えることができる。
【0014】
本実施形態の蓄電素子の製造方法は、
第一の電極と、該第一の電極と極性の異なる第二の電極と、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に配置されるセパレータとを有する電極体を備える蓄電装置の製造方法であって、
第一方向において対向する一対の第一延在部と、前記一対の第一延在部の延びる方向であると共に前記第一方向と直交若しくは略直交する第二方向における前記一対の第一延在部の一方側の端部同士を接続する第一ターン部とを有するように前記第一の電極を折り曲げることと、
前記第一方向において前記一対の第一延在部のうち一方の第一延在部を間に挟むと共に、前記一方の第一延在部に沿い且つ前記第二方向に直交若しくは略直交する第三方向に延びる一対の第二延在部と、前記一対の第二延在部の第三方向における一方側の端部同士を接続すると共に、前記一方の第一延在部の第三方向における一方側の端縁を覆う第二ターン部とを有するように前記セパレータを折り曲げることと、を含む。
【0015】
かかる構成によれば、第二ターン部が一方の第一延在部の第三方向における一方側の端縁を覆うことにより、セパレータの第一の電極に対する第三方向における他方側への移動が規制されているため、セパレータが第一の電極に対して位置ずれしにくい蓄電素子を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本実施形態の蓄電素子によれば、第一の電極が一対の延在部とこの延在部を接続するターン部とを有し、且つ、この延在部をセパレータが挟むと共に、セパレータの第一の電極に対する位置ずれが抑制された蓄電素子、及び前記蓄電素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III位置における断面図である。
【
図4】
図4は、前記蓄電素子における電極体を説明するための斜視図である。
【
図5】
図5は、前記電極体における負極を説明するための斜視図である。
【
図6】
図6は、前記負極の折り返し部を説明するための斜視図である。
【
図7】
図7は、前記負極を説明するための図である。
【
図8】
図8は、前記電極体における正極及びセパレータを説明するための図である。
【
図9】
図9は、前記正極を説明するための図である。
【
図10】
図10は、前記電極体の製造方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、前記電極体の製造方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、前記電極体の製造方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、前記電極体の製造方法を説明するための図である。
【
図14】
図14は、前記電極体の製造方法を説明するための図である。
【
図15】
図15は、前記電極体の製造方法を説明するための図である。
【
図16】
図16は、前記電極体の製造方法を説明するための図である。
【
図17】
図17は、前記蓄電素子を含む蓄電装置の斜視図である。
【
図18】
図18は、従来の電極体を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、
図1~
図13を参照しつつ説明する。本実施形態に係る蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。以下では、先ず、本実施形態に係る製造方法によって製造される蓄電素子の構成を説明し、その後、蓄電素子の製造方法について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0019】
本実施形態に係る蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0020】
蓄電素子は、
図1~
図3に示すように、電極体2と、電極体2を収容するケース3と、少なくとも一部がケース3の外部に露出する外部端子4と、電極体2と外部端子4とを導通させる集電体5と、を備える。この蓄電素子1は、電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材6等も、備える。
【0021】
電極体2は、
図4に示すように、第一の電極21と、第一の電極21と極性の異なる第二の電極22と、第一の電極21及び第二の電極22の間に配置されるセパレータ24とを有する。第一の電極21は、負極であり、第二の電極22は、正極である。電極体2においてリチウムイオンが負極21と正極22との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0022】
本実施形態の電極体2では、負極21は、長尺の帯状をしており、折り返された折り返し部23を有する。また、正極22は、枚葉状(短冊状)である。正極22は、折り返し部23の内側に配置されている。セパレータ24は、長尺の帯状をしている。尚、各図においては、構造を示すために、電極体2を構成する電極等の厚さを誇張して表す等、電極体2の構成を模式的に表している。
【0023】
負極21は、
図5及び
図6に示すように、第一方向において互いに対向する一対の第一延在部233と、第一延在部233の延びる方向であると共に一対の第一延在部233の対向する方向と直交若しくは略直交する第二方向における第一延在部233の一方側の端部同士、若しくは、第二方向における第一延在部233の他方側の端部同士を接続する第一ターン部234とを含む折り返し部23を有する。本実施形態の折り返し部23では、第一延在部233は略平坦な部位であり、第一ターン部234は湾曲した部位である。本実施形態の負極21は、複数の折り返し部23を有するつづら折り状態(蛇腹状)に折り畳まれている。換言すると、負極21は、第一ターン部234を反対に向けると共に隣り合う折り返し部23同士がその一部を共通させた状態で連続するつづら折り状態である。尚、折り返し部23の内側には、正極22が配置されているため、一対の第一延在部233の間に正極22が挟まれる。
【0024】
以下では、第一方向を直交座標系のX軸とし、第二方向を直交座標系のY軸とし、第一延在部233に沿い且つ第二方向に直交若しくは略直交する第三方向を直交座標系のZ軸とする。
【0025】
本実施形態の負極21は、長尺方向において所定間隔で交互に折り返されることによって、第一延在部233と第一ターン部234とが交互に形成されたつづら折り状態となる。換言すると、この負極21では、複数の折り返し部23が、一対の第一延在部233の延びる方向をY軸方向に揃えた状態で、X軸方向に並んで設けられる。具体的に、一対の第一延在部233は、谷折り面231及び山折り面232(即ち、谷折り面231と反対側の面)をそれぞれ有し且つ谷折り面231同士を対向させている(
図5参照)。また、一つの折り返し部(第一折り返し部)23Aに着目したときに、第一折り返し部23Aと、その隣(
図5における後ろ側)の折り返し部(第二折り返し部)23Bとでは、第一折り返し部23Aの第一ターン部234Aと、第二折り返し部23Bの第一ターン部234Bとの間の第一延在部233A、233Bが共通している。これにより、第一折り返し部23Aと第二折り返し部23Bとは、Y軸方向(第一延在部233が延びる方向)における反対側に配置されている。
【0026】
複数の第一延在部233のそれぞれは、矩形状の負極本体2331と、負極本体2331の矩形状の輪郭を構成する一辺から突出する(本実施形態の例では、Z軸方向の端縁からZ軸方向に延びる)負極タブ214と、を有する(
図6参照)。本実施形態の第一延在部233の負極本体2331は、Y軸方向に長い矩形状である。負極タブ214は、Z軸方向に長い矩形状である。
【0027】
つづら折り状態の負極21において、各第一延在部233の負極タブ214は、X軸方向から見て重なっている。本実施形態の負極21では、各負極タブ214は、負極本体2331のZ軸方向の他方(
図6における上側)の端縁におけるY軸方向の他方(
図6における右側)の端部からZ軸方向に延びている。この複数の負極本体2331のそれぞれから延びている負極タブ214は、束ねられ、集電体5を介して外部端子4と接続されている(
図3参照)。本実施形態の負極タブ214の束は、集電体5に溶接されている。
【0028】
複数の第一ターン部234のそれぞれは、つづら折り状態の負極21において、Z軸方向に延びる第一ターン軸S1(
図5参照)周りで帯状の負極21が旋回(方向転換)している部位である。換言すると、複数の第一ターン部234のそれぞれは、湾曲している部位である。本実施形態の第一ターン部234は、負極21の湾曲の開始位置よりも外側の部位である。
【0029】
負極21は、
図7(折り返し前の負極21の模式図)に示すように、金属箔211と、金属箔211の両面のそれぞれに重ねられる負極活物質層212と、を有する。即ち、負極21は、一つの金属箔211と一対の負極活物質層212とを有する。本実施形態の金属箔211は、例えば、銅箔である。
【0030】
負極活物質層212は、負極活物質と、バインダーと、を有する。
【0031】
負極活物質は、例えば、グラファイト、難黒鉛化炭素、及び易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極活物質は、グラファイトである。
【0032】
負極活物質層212に用いられるバインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0033】
負極活物質層212は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層212は、導電助剤を有していない。
【0034】
本実施形態の負極21は、
図7に示す長手方向に所定間隔で交互に設定された山折り線21Aの位置と谷折り線21Bの位置とで山折りと谷折りとが交互に繰り返されることによって、つづら折り状態となる。また、本実施形態の負極21では、負極本体2331において、金属箔211の両面が負極活物質層212に覆われている。また、負極タブ214において、金属箔211が露出している。即ち、負極タブ214は、負極活物質層212を有していない。
【0035】
セパレータ24は、折れ曲がっている(
図4参照)。また、セパレータ24は、X軸方向において一対の第一延在部233のうち一方の第一延在部233を間に挟むと共に、Z軸方向に延びる一対の第二延在部253と、一対の第二延在部253のZ軸方向における一方側の端部同士を接続する第二ターン部254とを有する。第二ターン部254は、第二延在部253の間に挟まれる第一延在部233のZ軸方向における一方側の端縁235を覆っている。
【0036】
本実施形態のセパレータ24は、複数の第二延在部253と複数の第二ターン部254とを有する。複数の第二延在部253のそれぞれは、平行若しくは略平行に並び、複数の第二ターン部254のそれぞれは、隣り合う第二延在部253のZ軸方向における一方側の端部同士を接続している。
【0037】
本実施形態の第二延在部253は、Y軸方向に長い矩形状である。第二延在部253は、第一延在部233よりも、Z軸方向における他方側の外側に延びている。
【0038】
複数の第二ターン部254のそれぞれは、Y軸方向に延びる第二ターン軸S2(
図8参照)周りで帯状のセパレータ24が旋回(方向転換)している部位である。換言すると、複数の第二ターン部254のそれぞれは、湾曲している部位である。本実施形態の第二ターン部254は、セパレータ24の湾曲の開始位置よりも外側(Z軸方向における一方側)の部位である。尚、本実施形態の一対の第二延在部253は、セパレータ24のうち第二ターン部254を除く部位、換言すると、セパレータ24の湾曲の開始位置より内側(Z軸方向における他方側)の部位である。尚、各第二ターン部254は、第一延在部233よりも、Z軸方向における一方側の外側に延びている。
【0039】
本実施形態のセパレータ24は、
図8に示すように、正極22の一方の面に重ねられる長尺状の第一セパレータ24Aと、正極22の他方の面(X軸方向において一方の面に対して反対側に位置する反対の面)に重ねられる長尺状の第二セパレータ24Bとを有する。本実施形態のセパレータ24では、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bは、それぞれ、別体として形成されている。
【0040】
第一セパレータ24Aは、長尺の帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態の第一セパレータ24Aは、SiO2粒子、Al2O3粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層を、多孔質膜によって形成された基材の上に設けることで形成されている。本実施形態の第一セパレータ24Aの基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。本実施形態の第一セパレータ24Aの無機層の材料は、例えば、無機粒子を接着剤に混合させたものである。尚、本実施形態のセパレータ24では、第一セパレータ24Aの構成(形状や材料等)と、第二セパレータ244の構成とは同じである。
【0041】
第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bは、X軸方向において正極22を間に挟んだ状態で固定する。また、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bは、いずれも、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、第一セパレータ24Aや第二セパレータ24Bを挟んで対向する負極21と正極22との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0042】
第一セパレータ24Aは、第二ターン部254において、折り曲げられている。また、第一セパレータ24Aは、例えば、外側に位置する(正極22に接触しない)基材層と、内側に位置する(正極22に接触する)無機層とを含む。本実施形態のセパレータ24では、第一セパレータ24AのZ軸方向における他端側の端縁240Aは、例えば、他の部分よりも強度が弱い易破断部において破断されて形成された端面であり、第一セパレータ24Aの他の端縁(例えば、第一セパレータ24AのY軸方向における一方側の端縁241A)は、例えば、刃物等により切断されて形成された端面である。そのため、端縁240Aは、第一セパレータ24Aの他の端縁(例えば、端縁241A)よりも粗い面となっている。尚、端縁240Aが端縁241Aよりも粗いとは、端縁240Aにおける表面粗さが端縁241Aにおける表面粗さよりも大きいことである。また、端縁240AのY軸方向における幅は、負極タブ214や正極タブ222のY軸方向における幅よりも大きい。
【0043】
第二セパレータ24Bは、第二ターン部254において、折り曲げられている。第二セパレータ24Bは、例えば、内側に位置する(正極22に接触しない)基材層と、外側に位置する(正極22に接触する)無機層とを含む。第二セパレータ24BのZ軸方向における他端側の端縁240Bは、端縁240Aと同様に、強度が弱い易破断部において破断されて形成された端面であり、第二セパレータ24Bの他の端縁(例えば、第二セパレータ24BのY軸方向における一方側の端縁241B)は、端縁241A等と同様に、例えば、刃物等により切断されて形成された端面である。そのため、端縁240Bは、第二セパレータ24Bの他の端縁(例えば、端縁241B)よりも粗い面となっている。また、端縁240BのY軸方向における幅も、負極タブ214や正極タブ222のY軸方向における幅よりも大きい。尚、第二セパレータ24Bの内面のうち第二ターン部254を構成する領域は、第一延在部233の端縁235と当接している。
【0044】
本実施形態の正極22は、矩形状の正極本体221と、正極本体221の矩形状の輪郭を構成する一辺から突出する(本実施形態の例では、Z軸方向の端縁からZ軸方向に延びる)正極タブ222と、を有する。この正極22は、つづら折り状態の負極21において、X軸方向に隣り合う第一延在部233間のそれぞれに配置されている。このため、本実施形態の電極体2は、複数の正極22を有している。また、本実施形態の正極22は、セパレータ24に対して固定されている。
【0045】
また、本実施形態の正極22は、
図9に示すように、金属箔223と、金属箔223の両面のそれぞれに重ねられる正極活物質層224と、を有する。即ち、正極22は、一つの金属箔223と一対の正極活物質層224とを有する。本実施形態の金属箔223は、例えば、アルミニウム箔である。
【0046】
正極活物質層224は、正極活物質と、バインダーと、を有する。
【0047】
本実施形態の正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、LiaMebOc(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(LiaCoyO2、LiaNixO2、LiaMnzO4、LiaNixCoyMnzO2等)、LiaMeb(XOc)d(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiaFebPO4、LiaMnbPO4、LiaMnbSiO4、LiaCobPO4F等)である。本実施形態の正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2である。
【0048】
正極活物質層224に用いられるバインダーは、負極活物質層212に用いられたバインダーと同様のものである。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0049】
正極活物質層224は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の正極活物質層224は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
【0050】
本実施形態の正極22では、正極本体221において、金属箔223の両面が正極活物質層224に覆われている。また、正極タブ222において、金属箔223が露出している。即ち、正極タブ222は、正極活物質層224を有していない。
【0051】
正極本体221の正極活物質層224は、X軸方向に対向する(詳しくは、セパレータ25を介して対向する)第一延在部233の負極活物質層212よりY-Z面方向において小さい(
図4参照)。即ち、正極本体221の正極活物質層224は、全域において第一延在部233の負極活物質層212と対向し、第一延在部233の負極活物質層212は、周縁部を除いた領域において正極本体221の正極活物質層224と対向する。
【0052】
電極体2において、各正極22の正極タブ222は、X軸方向から見て重なっている。本実施形態の正極22では、各正極タブ222は、正極本体221のZ軸方向の一方(
図4における上側)の端縁におけるY軸方向の一方(負極本体2331に対する負極タブ214の位置とは反対側:
図4における左側)の端部からZ軸方向に延びている。この複数の正極本体221のそれぞれから延びている正極タブ222は、束ねられ、集電体5を介して外部端子4と接続されている。本実施形態の正極タブ222の束は、負極タブ214の束と同様に、集電体5に溶接されている(
図3参照)。
【0053】
以下、本実施形態の電極体2の製造方法の主要な工程を説明する。
【0054】
まず、
図10及び
図11に示すように、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bに正極22が挟まれる。本実施形態の電極体2では、長尺状の第一セパレータ24Aの一方の面に、第一セパレータ24Aの長尺方向に並んだ状態で、複数の正極22が配置される。このとき、隣り合う正極22は、第一セパレータ24Aの長尺方向において正極タブ222が対向する(長尺方向と直交する方向において正極タブ222の位置が揃う)状態で配置される。さらに、長尺状の第二セパレータ24Bが、その長尺方向と第一セパレータ24Aの長尺方向とを揃えた状態で、正極22が配置された第一セパレータ24Aの上に配置される。これにより、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bは、正極22を間に挟むことになる。このとき、正極22の全領域が、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bにより覆われている。
【0055】
本実施形態の電極体2では、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bは、基材層と無機層とを含む。また、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bの無機層は、無機粒子と接着剤とを含み、正極22と接触するように配置される。これにより、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bは、正極22を間に挟んだ状態で固定することになる。換言すると、本実施形態の正極22は、セパレータ24に対して固定されている。
【0056】
次に、正極22を挟んだセパレータ24において、正極タブ222の正極本体221に隣接する部位を除く部位を覆う被覆領域240と、それ以外の部位(正極タブ222の正極本体221に隣接する部位及び正極本体221)を覆う領域との境界Cに易破断部が形成される。易破断部は、他の部分よりも強度が低い部位であり(部分的に強度を低くした部位であり)、尚、易破断部は、被覆領域240を引っ張った場合に境界Cにおいてセパレータ24が破断され、且つ、セパレータ24を折りたたんだ場合にセパレータ24が破断されない程度の強度を有する。
【0057】
本実施形態のセパレータ24の易破断部は、例えば、ミシン目である。このミシン目は、例えば、セパレータ24における境界Cに、250℃程度に加熱したハンダを間欠的に押し当てたり、針を間欠的に突き刺したりすることで、セパレータ24に貫通孔を空けることで形成される。
【0058】
さらに、負極21は、
図12に示すように、その端部である第一部位21αを、正極22を挟んだセパレータ24の端部である第一部位24α上に重ねた状態で配置される。この状態で、
図13に示すように、セパレータ24が山折り線24Cで折り曲げられることで、
図14に示すように、セパレータ24の第一部位24α及び第一部位24αに隣接する第二部位24βが、負極21の第一部位21αを挟むことになる。さらに、負極21が、
図15に示すように、セパレータ24の第一部位24αの外側に位置する山折り線21A(
図12参照)で折り曲げられることで、負極21の第一部位21α及び第一部位21αに隣接する第二部位21βがセパレータ24の第二部位24βを挟むことになる(
図14参照)。このように、セパレータ24の折り曲げとこれに続く負極21の折り曲げとが繰り返されることにより、
図16に示すように、つづら折りの負極21につづら折りのセパレータ24が組み合わせられた電極群2Aが形成される。この電極群2Aにおいて、被覆領域240は、第一延在部233のZ軸方向における他方側の端縁236よりもZ軸方向における他方側(外側)に位置している。具体的に、セパレータ24における被覆領域240とそれ以外の領域との境界Cは、セパレータ24のうち負極21のZ軸方向における他端側の端縁と重なる位置よりも外側(Z軸方向における他端側)であり且つ負極タブ214や正極タブ222の外側(Z軸方向における他方側)の端縁よりも内側(Z軸方向における一方側)に位置する。
【0059】
この電極群2Aから、セパレータ24の被覆領域240が取り除かれることにより、負極タブ214及び正極タブ222がセパレータ24から露出した電極体2が形成される。具体的に、被覆領域240(セパレータ24における境界Cよりも外側の部位(Z軸方向における他方側に位置する部位))を外側に引っ張ることで、境界Cに形成された易破断部においてセパレータ24が破断されて、セパレータ24から被覆領域240が取り除かれる。このように、セパレータ24のZ軸方向における一方側の端部がY軸方向における全域で取り除かれるため、各正極タブ222は、正極本体221のZ軸方向の一方(
図4における上側)の端縁におけるY軸方向における端部以外の位置に容易に設けられる。
【0060】
以上のように、負極21、正極22、及びセパレータ24が配置され、負極21やセパレータ24が折り曲げられた後に、負極タブ214や正極タブ222がセパレータ24から露出することで、電極体2が形成される。
【0061】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する(
図1及び
図2参照)。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0062】
ケース3は、
図1~
図3に示すように、ケース本体31の開口周縁部34と、蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3では、ケース本体31と蓋板32とによって内部空間が画定されている。
【0063】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0064】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0065】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0066】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。このケース本体31には、負極21の各第一延在部233が長壁部313と平行(略平行)となる(即ち、各第一ターン部234が短壁部314と対向すると共に、各第二ターン部254が閉塞部311と対向するように、電極体2が収容される(
図2参照)。
【0067】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32の輪郭は、ケース本体31の開口周縁部34に対応した形状である。本実施形態の蓋板32は、X軸方向に長い矩形状の板状である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように該ケース本体31に当接する。より具体的には、蓋板32が開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される。これにより、ケース3が構成される。
【0068】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。本実施形態の外部端子4は、蓋板32に取り付けられる。
【0069】
絶縁部材6は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。具体的に、絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって蓋板32側が開口した袋状に形成されている(
図2参照)。本実施形態の絶縁部材6は、ケース本体31に沿った形の袋状である。この袋状の絶縁部材6には、折り返し部23の第一延在部233、正極22、及び、第二延在部253が絶縁部材6における長壁部313と対応する部位(X軸方向に対向する壁状の部位)と略平行となり、各第一ターン部234が絶縁部材6における短壁部314と対応する部位(Y軸方向に対向する壁状の部位)と対向し、且つ、各第二ターン部254が絶縁部材における閉塞部311と対向するように電極体2が収容される。
【0070】
以上の蓄電素子1によれば、第二ターン部254が第一延在部233のZ軸方向における一方側の端縁235を覆うことにより、セパレータ24の負極21に対するZ軸方向における他方側への移動が規制されており、セパレータ24が負極21に対して位置ずれしにくい。しかも、この蓄電素子1では、第二セパレータ24Bの内面のうち第二ターン部254を構成する領域が、第一延在部233の端縁235と当接しているため、セパレータ24が負極21に対してZ軸方向における他方側へ移動することがなく、セパレータ24の負極21に対する位置ずれをさらに抑制できる。
【0071】
以上の蓄電装置1の製造方法によれば、第二ターン部254が第一延在部233のZ軸方向における一方側の端縁235を覆うことにより、セパレータ24の負極21に対するZ軸方向における他方側への移動が規制されており、セパレータ24が負極21に対して位置ずれしにくい蓄電素子1を製造することができる。
【0072】
本実施形態の蓄電素子1の製造方法では、第二ターン部254が第一延在部233のZ軸方向における一方側の端縁235を覆うと共に、セパレータ24の被覆領域240が取り除かれるまで、被覆領域240が第一延在部233のZ軸方向における他方側の端縁236よりもZ軸方向における外側に位置している。これにより、この製造過程において、セパレータ24の負極21に対するZ軸方向における移動(Z軸方向における一方側への移動及びZ軸方向における他方側への移動)が規制されているため、セパレータ24が負極21に対して位置ずれしにくい。
【0073】
また、本実施形態の蓄電素子1では、仮にセパレータ24が負極21に対して位置ずれしたとしても、正極22がセパレータ24に固定されていることで(正極22が第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bの間で固定された状態で挟まれていることで)、正極22とセパレータ24とが共に位置ずれするため、負極21と正極22との間にセパレータ24が配置される構成を維持することができ、負極21と正極22との短絡を抑えることができる。
【0074】
さらに、本実施形態の蓄電素子1では、金属箔211の両面のそれぞれに負極活物質層212が重ねられているが、金属箔223の両面のそれぞれに正極活物質層224が重ねられているため、一対の第一延在部233の間に一つの正極22が挟まれた構成であっても、金属箔211の両面に重ねられた負極活物質層212を用いて充放電を行うことができる。これにより、蓄電素子1では、一対の第一延在部233の間に、金属箔223の一方の面に正極活物質層224が重ねられた正極22が二枚挟まれた構成と比べて、エネルギー密度を向上することができる。
【0075】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0076】
例えば、第二セパレータ24Bの内面のうち第二ターン部254を構成する領域が、第一延在部233の端縁235と当接していたが、第二ターン部254が第一延在部233の端縁235を覆っていれば、第一延在部233の端縁235と離間していてもよい。この場合においても、第二ターン部254が第一延在部233の端縁235を覆っているため、セパレータ24の負極21に対するZ軸方向における他方側への移動が規制されており、セパレータ24が負極21に対して位置ずれしにくい。
【0077】
上記実施形態の製造方法では、境界Cに易破断部としてミシン目を形成したセパレータ24と負極21とが組み合わせられた電極群2Aにおいて、セパレータ24の後に、セパレータ24の被覆領域240をZ軸方向における外側に引っ張ることで被覆領域240が取り除かれたが、セパレータ24の境界Cにミシン目以外の易破断部(例えば、境界Cに沿ったハーフカット(切れ込み)で構成される易破断部や、部分的に材料を異ならせて形成した易破断部等)を用いてよい。また、この電極群2Aにおける被覆領域240に対してX軸方向における両側から熱をかけた状態で、被覆領域240をZ軸方向に引っ張ることにより、被覆領域240が取り除かれてもよい。
【0078】
また、上記実施形態の製造方法では、負極21とセパレータ24とが折りたたまれて電極群2Aを構成した後に、被覆領域240を取り除いたが、セパレータ24を折りたたむ前に被覆領域240を取り除いてもよい。また、易破断面は、折りたたまれる前のセパレータ24に形成されていたが、負極21とセパレータ24とが折りたたまれた電極群2Aに形成されてもよい。
【0079】
上記実施形態の電極体2では、第一セパレータ24Aと第二セパレータ24Bとが別体として形成されていたが、これらが一体的に形成されていてもよい。また、第一セパレータ24A及び第二セパレータ24Bが、接着剤を含む無機層を正極22に接触させた状態で正極22を挟むことで、セパレータ24が正極22を固定していたが、セパレータ24に袋状の部位が形成され、この袋状の部位が正極22を固定してもよい。
【0080】
尚、セパレータ24と正極22との接着は、接着剤を含む無機層を用いる代わりに、セパレータ24と異なる接着剤を用いて行ってもよい。この場合、接着剤は、セパレータ24の全面、セパレータ24における正極本体221の全体と重なる領域、及び、セパレータ24における正極22の周縁と重なる領域といった領域に塗布されていてもよい。また、接着剤は、このような領域の全面に塗布されていてもよいし、間欠的(例えば、ドット状)に塗布されていてもよい。
【0081】
上記実施形態の電極体2では、負極21が長尺の帯状であり、正極22が枚葉状であったが、負極21が枚葉状であり、正極22が長尺の帯状であってもよい。また、長尺の帯状の負極21と、長尺の帯状のセパレータ24(第一セパレータ24A及び第二セパレータ24B)とが折りたたまれることにより、電極群2Aが形成されたが、それぞれ一対の延在部と延在部の端部同士を接続するターン部を有するV字状の負極21やセパレータ24が組み合わされることにより、電極群2Aが形成されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0083】
蓄電素子(例えば電池)1は、
図17に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0084】
1…蓄電素子、2…電極体、2A…電極群、21…負極、211…金属箔、212…負極活物質層、214…負極タブ、22…正極、221…正極本体、222…正極タブ、223…金属箔、224…正極活物質層、23…折り返し部、233…第一延在部、2331…負極本体、234…第一ターン部、24…セパレータ、24α…第一部位、24β…第二部位、240…被覆領域、24A…第一セパレータ、24B…第二セパレータ、253…第二延在部、254…第二ターン部、3…ケース、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、34…開口周縁部、4…外部端子、5…集電体、11…蓄電装置、12…バスバ部材、121…負極、122…正極、124…セパレータ、S1…第一ターン軸、S2…第二ターン軸、C…境界