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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/24 20060101AFI20221208BHJP
   B60R 19/52 20060101ALI20221208BHJP
   B62D 65/16 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60R19/24 D
B60R19/52 D
B62D65/16 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020055133
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021154799
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏二
(72)【発明者】
【氏名】増島 雄三
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-35032(JP,A)
【文献】特開2017-81223(JP,A)
【文献】特開2012-214153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/24,19/52
B62D 65/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向の一側の端部にバンパ側取付部を有し、車両の前端部で車幅方向に延びるバンパと、
前記バンパ側取付部よりも車幅方向内側に配置されるグリル側係止部を有し、前記バンパに固定されるグリルと、
前記バンパ側取付部が取り付けられる車体側取付部と、前記車体側取付部よりも車幅方向内側に配置されて前記グリル側係止部を係止する車体側係止部とを有し、前記バンパの後方の車幅方向外端部に配置される車体パネルと、を備え、
前記バンパ及び前記グリルを前記車体パネルに対して前方から組み付ける際に、前記グリル側係止部が前記車体側係止部に係止された状態で、前記バンパ側取付部が前記車体側取付部に取り付けられ、
前記車体側係止部は、前記グリル側係止部を係止した状態で、前記車体パネルに対する前記バンパ及び前記グリルの後方への移動を許容するとともに、前記車体パネルに対する車幅方向外側への前記グリルの移動を規制する
ことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の前部構造であって、
前記車体側係止部及び前記グリル側係止部の一方の係止部は、前後方向に延びる係止孔であり、
前記車体側係止部及び前記グリル側係止部の他方の係止部は、前後方向に延びて前記係止孔に挿入可能な係止ピンである
ことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の前部構造であって、
前記グリルは、前記バンパ側取付部よりも車幅方向内側に配置される第2のグリル側係止部を有し、
前記車体パネルは、前記車体側取付部よりも車幅方向内側に配置されて前記第2のグリル側係止部を係止する第2の車体側係止部を有し、
前記バンパ及び前記グリルを前記車体パネルに対して前方から組み付ける際に、前記第2のグリル側係止部が前記第2の車体側係止部に係止された状態で、前記グリル側係止部が前記車体側係止部に係止され、
前記第2の車体側係止部は、前記第2のグリル側係止部を係止した状態で、前記車体パネルに対する前記バンパ及び前記グリルの後方への移動を許容するとともに、前記車体パネルに対する車幅方向外側への前記グリルの移動を規制する
ことを特徴とする車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両前部構造が記載されている。バンパサイドブラケットは、フェンダパネルの前部下縁に固定される。バンパフェイスの左右両方の端部上縁には、内向きに形成された係止フィンを備える。係止フィンは、バンパサイドブラケットとフェンダパネルとの間に差し込まれる。バンパフェイスの前側上縁端の部分にはリインフォースが固定される。リインフォースの外側端は、バンパサイドブラケットの前端に設けられた係合部に嵌合するピンを備える。バンパサイドブラケットの係合部は、進行方向に沿って貫通するピン孔と、このピン孔から外側へ切欠かれた挿入口とを有している。バンパフェイスをフェンダパネルに合わせる場合、バンパフェイス側のピンがフェンダパネル側のピン孔に外側から装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-297708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両によっては、バンパをフェンダパネル(車体パネル)側へ組み付ける前に、車両の前端の空気取入口に設けられるグリルをバンパに対して予め取り付け、その後、一体化したバンパ等(グリルを含む)を車体パネル側へ組み付ける場合がある。この場合、特許文献1に記載の車両のように、バンパの車幅方向の一端部を車体パネル側へ車幅方向外側から取り付けるために、バンパの一端側を車幅方向外側へ広げるように一時的に変形させると、バンパに固定されているグリルの一端側もバンパと共に車幅方向外側へ変形してしまい、グリルの周囲に配置される他の部品(例えば、ランプ等)にグリルが当たって、他の部品を傷つけてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、バンパとグリルとを予め一体化した状態で車体パネル側へ組み付ける場合のグリルの変形を抑えることが可能な車両の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の車両の前部構造は、バンパとグリルと車体パネルとを備える。バンパは、車幅方向の一側の端部にバンパ側取付部を有し、車両の前端部で車幅方向に延びる。グリルは、バンパ側取付部よりも車幅方向内側に配置されるグリル側係止部を有し、バンパに固定される。車体パネルは、バンパ側取付部が取り付けられる車体側取付部と、車体側取付部よりも車幅方向内側に配置されてグリル側係止部を係止する車体側係止部とを有し、バンパの後方の車幅方向外端部に配置される。バンパ及びグリルを車体パネルに対して前方から組み付ける際に、グリル側係止部が車体側係止部に係止された状態で、バンパ側取付部が車体側取付部に取り付けられる。車体側係止部は、グリル側係止部を係止した状態で、車体パネルに対するバンパ及びグリルの後方への移動を許容するとともに、車体パネルに対する車幅方向外側へのグリルの移動を規制する。
【0007】
上記構成では、バンパ及びグリルを車体パネルに対して前方から組み付ける際に、グリル側係止部が車体側係止部に係止された状態で、バンパ側取付部が車体側取付部に取り付けられる。すなわち、バンパに対して予めグリルを固定し、バンパ及びグリルを車体パネルに対して前方から組み付ける場合、バンパのバンパ側取付部が車体パネルの車体側取付部に到達する前に、グリルのグリル側係止部が車体パネルの車体側係止部に係止される。そして、車体側係止部は、グリル側係止部を係止した状態で、車体パネルに対する車幅方向外側へのグリルの移動を規制する。このため、バンパのバンパ側取付部を車体パネルの車体側取付部に取り付ける際にバンパの一側の端部を車幅方向外側へ一時的に広げるように弾性変形させる場合であっても、グリルの一側の端部がバンパとともに車幅方向外側へ変形して(広がって)しまうことを防止することができる。
【0008】
また、車体側係止部は、グリル側係止部を係止した状態で、車体パネルに対するバンパ及びグリルの後方への移動を許容するので、グリル側係止部を車体側係止部に係止し、車体パネルに対する車幅方向外側へのグリルの移動を規制した状態で、バンパ及びグリルを後方へ移動させて車体パネルへ組み付けることができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の車両の前部構造であって、車体側係止部及びグリル側係止部の一方の係止部は、前後方向に延びる係止孔である。車体側係止部及びグリル側係止部の他方の係止部は、前後方向に延びて係止孔に挿入可能な係止ピンである。
【0010】
上記構成では、車体側係止部及びグリル側係止部の一方の係止部が、前後方向に延びる係止孔であり、他方の係止部は、前後方向に延びて係止孔に挿入可能な係止ピンであるので、係止ピンが係止孔に挿入されて係止された状態で、車体側係止部は、前後方向と交叉する方向への車体パネルに対するグリルの移動を規制する。このため、車体側係止部とグリル側係止部との係止によって、車体パネルに対するグリルの前後方向と交叉する方向の位置決めをすることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様の車両の前部構造であって、グリルは、バンパ側取付部よりも車幅方向内側に配置される第2のグリル側係止部を有する。車体パネルは、車体側取付部よりも車幅方向内側に配置されて第2のグリル側係止部を係止する第2の車体側係止部を有する。バンパ及びグリルを車体パネルに対して前方から組み付ける際に、第2のグリル側係止部が第2の車体側係止部に係止された状態で、グリル側係止部が車体側係止部に係止される。第2の車体側係止部は、第2のグリル側係止部を係止した状態で、車体パネルに対するバンパ及びグリルの後方への移動を許容するとともに、車体パネルに対する車幅方向外側へのグリルの移動を規制する。
【0012】
上記構成では、バンパ及びグリルを車体パネルに対して前方から組み付ける際に、第2のグリル側係止部が第2の車体側係止部に係止された状態で、グリル側係止部が車体側係止部に係止される。すなわち、バンパに対して予めグリルを固定し、バンパ及びグリルを車体パネルに対して前方から組み付ける場合、グリル側係止部が車体側係止部に係止される前に、第2のグリル側係止部が第2の車体側係止部に係止される。そして、第2の車体側係止部は、第2のグリル側係止部を係止した状態で、車体パネルに対する車幅方向外側へのグリルの移動を規制する。このため、バンパのバンパ側取付部を車体パネルの車体側取付部に取り付ける際に、グリル側係止部が車体側係止部に係止される前に、バンパの一側の端部を車幅方向外側へ弾性変形させた場合であっても、グリルの一側の端部がバンパとともに車幅方向外側へ変形して(広がって)しまうことを防止することができる。
【0013】
また、第2の車体側係止部は、第2のグリル側係止部を係止した状態で、車体パネルに対する車幅方向外側へのグリルの移動を規制するので、車体側係止部に対するグリル側係止部の車幅方向外側への移動を規制することができる。このため、係止孔に対する係止ピンの車幅方向へのズレを抑えることができるので、係止ピンを係止孔に確実に案内することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、バンパとグリルとを予め一体化した状態で車体パネル側へ組み付ける場合のグリルの変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両の前部の斜視図であって、バンパ及びグリルを車体側へ組み付ける前の状態を示す。
図2図1のバンパとグリルとを分解した状態を示す斜視図である。
図3】バンパ及びグリルとフェンダパネルとの取り付け部分の車幅方向内側からの斜視図であって、組み付け前の状態を示す。
図4図3に対応する斜視図であって、バンパ等組付状態を示す。
図5図4のV部分の拡大図である。
図6】バンパ及びグリルをフェンダパネルへ組み付ける際の上方からの概略図であって、(a)は組み付け前の状態を、(b)は第1係止状態を、(c)は第2係止状態を、(d)は組み付け後の状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、車幅方向外端部の前輪(図示省略)の周囲に設けられるフェンダパネル(車体パネル)2と、車両1の前端部で車幅方向に延びるバンパ3と、車両1の前端部のラジエータ(図示省略)等への空気取入口に配置されるグリル4とを有する。バンパ3とグリル4とは、互いに固定されて予め一体化された状態でフェンダパネル2側へ組み付けられる。
【0018】
図2及び図3に示すように、バンパ3は、樹脂製のパネルであって、車両1の前端下部で車幅方向に延びる。バンパ3の車幅方向両端側は、緩やかに湾曲して後方へ延びる。バンパ3の車幅方向両側の外端縁部(一側の端部)3aには、フェンダパネル2側へ取り付けられるバンパ側取付部5が設けられる。本実施形態では、バンパ側取付部5は、バンパ3の外端縁部3aから車幅方向内側へ曲折した状態でバンパ3の外端縁部3aに沿って前上方から後下方へ延び、バンパ側取付部5には、複数の爪部(図示省略)が設けられる。
【0019】
グリル4は、バンパ3の車幅方向の中央部の上方に露出するグリル本体部4aと、グリル本体部4aから車幅方向両側へ延びる左右の延設部4bとを有し、バンパ3に対して後方から取り付けられる。グリル4の左右の延設部4bは、バンパ3の上端部に沿って車幅方向外側へ延びる。グリル4の左右の延設部4bの車幅方向外端部6(以下、単に「グリル4の車幅方向外端部6」という。)は、バンパ3のバンパ側取付部5の車幅方向内側の近傍に配置される。グリル4の車幅方向外端部6の後面11には、係る後面11から後方へ突出する係止ピン(グリル側係止部)7が設けられる。係止ピン7は、左右の延設部4bの車幅方向外端部6から後方へ先細る形状に形成される。係止ピン7は、バンパ3のバンパ側取付部5よりも前方(前後方向の一側)に配置される。グリル4の車幅方向外端部6の下面12には、係る下面12から下方へ突出する左右1対の係止壁部(第2のグリル側係止部)8が設けられる。左右の係止壁部8は、車幅方向と交叉する板状に形成されて前後方向に延び、係止ピン7よりも前方で互いに左右に離間して配置される。
【0020】
図1に示すように、フェンダパネル2は、前輪(図示省略)の周囲の樹脂製の外装パネルであるフェンダパネル本体17と、フェンダパネル本体17の前端部に固定されるバンパリテーナ9とを有する。フェンダパネル2の前端部には、バンパ3のバンパ側取付部5が取り付けられるフェンダ側取付部(車体側取付部)10が設けられる。本実施形態では、フェンダ側取付部10は、バンパリテーナ9の後端縁とフェンダパネル本体17との間で、車幅方向外側へ開口した状態で前上方から後下方へ延びる溝状に形成される(図6参照)。フェンダ側取付部10の溝内には、バンパ側取付部5の複数の爪部(図示省略)を係止可能な複数の係止部(図示省略)が設けられる。すなわち、バンパ3のバンパ側取付部5をフェンダパネル2のフェンダ側取付部10に車幅方向外側から挿入し、バンパ側取付部5の複数の爪部をフェンダ側取付部10の複数の係止部に係止することによって、バンパ3のバンパ側取付部5をフェンダパネル2のフェンダ側取付部10に取り付け可能となっている(図5及び図6(d)参照)。
【0021】
図3図6に示すように、バンパリテーナ9は、フェンダパネル本体17の前端部に固定される固定部14と、固定部14から前方へ延びるグリル支持部(第2の車体側係止部)13と、前後方向と交叉する板状に形成されてグリル支持部13の上面から上方へ起立する上壁部15とを有する。グリル支持部13及び上壁部15は、フェンダパネル2のフェンダ側取付部10よりも前方に配置される。
【0022】
グリル支持部13は、バンパ3及びグリル4(以下、「バンパ3等」という。)をフェンダパネル2側へ組み付けた状態(以下、「バンパ等組付状態」という。)で、グリル4の車幅方向外端部6の左右の係止壁部8間に配置される車幅位置に配置され、且つ、グリル4の車幅方向外端部6の下面12を下方から支持する高さ位置に配置される。すなわち、グリル支持部13は、フェンダパネル2のフェンダ側取付部10よりも車幅方向内側に配置され、グリル支持部13の車幅方向の長さL1は、グリル4の車幅方向外端部6の左右の係止壁部8間の距離L2よりも短い(図6(a)参照)。本実施形態では、グリル4の車幅方向外端部6の左右の係止壁部8は、グリル支持部13の前端部に係止される。
【0023】
上壁部15は、グリル支持部13の前端13aから後方へ離間した位置に配置される。上壁部15には、前後方向に貫通する係止孔(車体側係止部)16が形成される。係止孔16は、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7を挿入可能な大きさに形成され、フェンダパネル2のフェンダ側取付部10よりも車幅方向内側に配置される。係止孔16は、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7を挿入した状態で車幅方向に遊びを有する横長状に形成される。係止孔16は、バンパ等組付状態で、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7を挿入可能な前後位置、上下位置、及び車幅位置に配置される。グリル支持部13の前端13aから上壁部15までの前後距離(前後方向の離間距離)L3は、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7の先端(後端)から左右の係止壁部8の後端までの前後距離L4よりも長い(図6(a)参照)。すなわち、グリル4の係止ピン7の先端(後端)と左右の係止壁部8の後端との間の前後距離L4は、バンパ3等をフェンダパネル2側へ前方から組み付ける際に、グリル4の係止ピン7がフェンダパネル2の上壁部15の係止孔16に挿入される前に、グリル4の左右の係止壁部8がグリル支持部13に係止される距離に設定される。また、フェンダパネル2のフェンダ側取付部10から上壁部15の係止孔16までの前後距離L5は、バンパ3のバンパ側取付部5からグリル4の係止ピン7の先端(後端)までの前後距離L6よりも長い(図6(a)参照)。すなわち、バンパ3のバンパ側取付部5からグリル4の係止ピン7の先端(後端)までの前後距離L6は、バンパ3等をフェンダパネル2側へ前方から組み付ける際に、バンパ3のバンパ側取付部5がフェンダパネル2のフェンダ側取付部10に到達する前に、グリル4の係止ピン7がフェンダパネル2の上壁部15の係止孔16に挿入される距離に設定される。
【0024】
次に、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際の組み付け前から組み付け後までの各状態について説明する。なお、図6(a)はバンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける前の状態を、図6(b)は後述する第1係止状態を、図6(c)は後述する第2係止状態を、図6(d)はバンパ等組付状態をそれぞれ示す。
【0025】
バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際には、上述したように、先ず、バンパ3に対してグリル4を固定し、バンパ3とグリル4とを予め一体化し(図2参照)、一体化したバンパ3等を車体の前方から後方のフェンダパネル2側へ移動させる(図6(a)参照)。バンパ3等をフェンダパネル2に対して後方へ移動させると、バンパ3の外端縁部3aのバンパ側取付部5がフェンダパネル2の前端部のフェンダ側取付部10に到達する前に、グリル4の車幅方向外端部6の左右の係止壁部8間にバンパリテーナ9のグリル支持部13が挿入されて、グリル4の左右の係止壁部8がバンパリテーナ9のグリル支持部13に係止された第1係止状態となる(図6(b)参照)。第1係止状態では、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7は、フェンダパネル2のバンパリテーナ9の係止孔16の前方に位置し、係止孔16に未だ挿入されていない。すなわち、グリル4の左右の係止壁部8は、係止ピン7がバンパリテーナ9の係止孔16に挿入される前に、バンパリテーナ9のグリル支持部13に係止される。第1係止状態では、バンパリテーナ9のグリル支持部13がグリル4の車幅方向外端部6の下面12(図5参照)を前後方向にスライド移動可能に下方から支持する。第1係止状態では、バンパリテーナ9のグリル支持部13は、バンパリテーナ9に対するグリル4の車幅方向外端部6の車幅方向、及び下方への移動を規制するとともに、フェンダパネル2に対するバンパ3等の後方への移動を許容する。第1係止状態からバンパ3等をフェンダパネル2に対して更に後方へ移動させる際には、バンパ3の外端縁部3a側を車幅方向外側へ広げて一時的に弾性変形させた状態で、バンパ3等を後方へ移動させる。第1係止状態からバンパ3等をフェンダパネル2に対して更に後方へ移動させると、バンパ3の外端縁部3aのバンパ側取付部5がフェンダパネル2の前端部のフェンダ側取付部10に到達する前に、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7がフェンダパネル2のバンパリテーナ9の係止孔16に挿入された第2係止状態となる(図6(c)参照)。第2係止状態では、グリル4の車幅方向外端部6の左右の係止壁部8及び係止ピン7がフェンダパネル2のバンパリテーナ9のグリル支持部13及び係止孔16に係止されている。フェンダパネル2のバンパリテーナ9の係止孔16は、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7が挿入された状態で、フェンダパネル2のバンパリテーナ9に対するグリル4の車幅方向外端部6の前後方向と交叉する方向(車幅方向及び上下方向)への移動を規制するとともに、フェンダパネル2に対するバンパ3等の後方への移動を許容する。第2係止状態からバンパ3等をフェンダパネル2に対して更に後方へ移動させると、バンパ3の外端縁部3aのバンパ側取付部5が、フェンダパネル2の前端部のフェンダ側取付部10に到達し、フェンダ側取付部10に対して車幅方向外側から挿入されて係止される。これにより、バンパ3のバンパ側取付部5が、フェンダパネル2のフェンダ側取付部10に取り付けられ、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付けたバンパ等組付状態となる。バンパ等組付状態では、グリル4の左右の係止壁部8及び係止ピン7がフェンダパネル2のバンパリテーナ9のグリル支持部13及び係止孔16に係止されている。
【0026】
上記のように構成された車両1では、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際に、バンパ3の外端縁部3aのバンパ側取付部5がフェンダパネル2の前端部のフェンダ側取付部10に到達する前に、グリル4の左右の係止壁部8がバンパリテーナ9のグリル支持部13に係止された第1係止状態となる。第1係止状態では、バンパリテーナ9のグリル支持部13は、バンパリテーナ9に対するグリル4の車幅方向外端部6の車幅方向、及び下方への移動を規制する。すなわち、第1係止状態では、フェンダパネル2のバンパリテーナ9に対するグリル4の車幅方向外端部6の車幅方向外側への移動が規制されるので、バンパ3の外端縁部3a側を車幅方向外側へ広げるように一時的に弾性変形させても、グリル4の車幅方向外端部6がバンパ3とともに車幅方向外側へ変形して(広がって)しまうことを防止することができる。
【0027】
また、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際に、グリル4の係止ピン7がバンパリテーナ9の係止孔16に挿入される前に、グリル4の左右の係止壁部8がバンパリテーナ9のグリル支持部13に係止された第1係止状態となる。すなわち、グリル4の係止ピン7がバンパリテーナ9の係止孔16に挿入されるよりも早期にグリル4の左右の係止壁部8をバンパリテーナ9のグリル支持部13に係止することができる。このため、グリル4の係止ピン7がバンパリテーナ9の係止孔16に挿入されるよりも前に、バンパ3の外端縁部3a側を車幅方向外側へ弾性変形させた場合であっても、グリル4の車幅方向外端部6がバンパ3とともに車幅方向外側へ変形して(広がって)しまうことを防止することができる。
【0028】
また、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際に、グリル4の係止ピン7がバンパリテーナ9の係止孔16に挿入される前に、グリル4の左右の係止壁部8がバンパリテーナ9のグリル支持部13に係止され、バンパリテーナ9に対するグリル4の車幅方向外端部6の車幅方向、及び下方への移動を規制する。このため、バンパリテーナ9の係止孔16に対するグリル4の係止ピン7の車幅方向へのズレを抑えることができるので、係止ピン7を係止孔16に確実に案内することができる。
【0029】
また、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際に、バンパ3の外端縁部3aのバンパ側取付部5がフェンダパネル2の前端部のフェンダ側取付部10に到達する前に、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7がフェンダパネル2のバンパリテーナ9の係止孔16に挿入された第2係止状態となる。フェンダパネル2のバンパリテーナ9の係止孔16は、グリル4の車幅方向外端部6の係止ピン7が挿入された状態で、フェンダパネル2のバンパリテーナ9に対するグリル4の車幅方向外端部6の前後方向と交叉する方向(車幅方向及び上下方向)への移動を規制する。すなわち、第2係止状態ではフェンダパネル2のバンパリテーナ9に対するグリル4の車幅方向外端部6の車幅方向外側への移動が規制されるので、バンパ3の外端縁部3a側を車幅方向外側へ広げるように一時的に弾性変形させても、グリル4の車幅方向外端部6がバンパ3とともに車幅方向外側へ変形して(広がって)しまうことを防止することができる。
【0030】
また、第1係止状態及び第2係止状態ではバンパ3の外端縁部3a側を車幅方向外側へ広げて一時的に弾性変形させることができるので、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際に、バンパ3の外端縁部3aのバンパ側取付部5とフェンダパネル2のバンパリテーナ9との干渉を回避することができる。
【0031】
また、第1係止状態及び第2係止状態ではフェンダパネル2に対するバンパ3等の後方への移動が許容されるので、フェンダパネル2のバンパリテーナ9に対するグリル4の車幅方向外端部6の車幅方向外側への移動を規制した状態で、バンパ3等をフェンダパネル2に対して後方へ移動させて組み付けることができる。
【0032】
また、バンパ等組付状態ではグリル4の係止ピン7がバンパリテーナ9の係止孔16に挿入されているので、フェンダパネル2に対するバンパ3等の前後方向と交叉する方向の位置決めをすることができる。
【0033】
従って、本実施形態によれば、バンパ3とグリル4とを予め一体化した状態でフェンダパネル2側へ組み付ける場合のグリル4の変形を抑えることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、グリル4の車幅方向外端部6に左右の係止壁部(第2のグリル側係止部)8を設け、左右の係止壁部8間に挿入可能なグリル支持部(第2の車体側係止部)13をバンパリテーナ9に設けたが、第2のグリル側係止部及び第2の車体側係止部の形状はこれに限定されるものではない。第2のグリル側係止部及び第2の車体側係止部は、グリル4の係止ピン7がバンパリテーナ9の係止孔16に挿入される前に、互いに係止してフェンダパネル2に対するグリル4の車幅方向外側への移動を規制し、且つフェンダパネル2に対する後方へのバンパ3等の移動を許容する構成であれば、他の形状であってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、グリル4の係止ピン7がバンパリテーナ9の係止孔16に挿入される前に、互いに係止する左右の係止壁部(第2のグリル側係止部)8及びグリル支持部(第2の車体側係止部)13を、グリル4及びバンパリテーナ9に設けたが、これに限定されるものではなく、第2のグリル側係止部及び第2の車体側係止部を設けなくてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、グリル4に係止ピン(グリル側係止部)7を設け、バンパリテーナ9に係止孔(車体側係止部)16を設けたが、グリル側係止部及び車体側係止部の形状はこれに限定されるものではない。グリル側係止部及び車体側係止部の形状は、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際に、バンパ3のバンパ側取付部5がフェンダパネル2のフェンダ側取付部10に到達する前に、互いに係止してフェンダパネル2に対するグリル4の車幅方向外側への移動を規制し、且つフェンダパネル2に対する後方へのバンパ3等の移動を許容する構成であれば、他の形状であってもよい。例えば、グリル4に係止孔(グリル側係止部)を設け、係る係止孔に挿入されて係止可能な係止ピン(車体側係止部)をバンパリテーナ9に設けてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、グリル4の係止ピン7をバンパ3のバンパ側取付部5よりも前方に配置したが、これに限定されるものではない。例えば、グリル4の係止ピン7をバンパ3のバンパ側取付部5と同じ前後位置に配置してもよいし、或いは、グリル4の係止ピン7をバンパ3のバンパ側取付部5よりも後方に配置してもよい。この場合であっても、グリル4の係止ピン(グリル側係止部)7の先端の前後位置は、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際に、バンパ3のバンパ側取付部5がフェンダパネル2のフェンダ側取付部10に到達する前に、グリル4の係止ピン7がフェンダパネル2の係止孔16に挿入される前後位置に設定される。
【0038】
また、本実施形態では、グリル4の左右の係止壁部8を係止ピン7よりも前方に配置したが、これに限定されるものではない。例えば、グリル4の左右の係止壁部8を係止ピン7と同じ前後位置に配置してもよいし、或いは、グリル4の左右の係止壁部8を係止ピン7よりも後方に配置してもよい。この場合であっても、グリル4の左右の係止壁部(第2のグリル側係止部)8の後端の前後位置は、バンパ3等をフェンダパネル2側へ組み付ける際に、グリル4の係止ピン7がフェンダパネル2の係止孔16に挿入される前に、グリル4の左右の係止壁部8がフェンダパネル2のグリル支持部13に係止される前後位置に設定される。
【0039】
また、本実施形態では、バンパ3等を車両1の前輪(図示省略)の周囲に設けられるフェンダパネル(車体パネル)2に対して組み付けたが、バンパ3等を組み付ける車体パネルはフェンダパネルに限定されるものではなく、バンパ3の車幅方向外端部の後方に配置される車体側のパネル(車体パネル)であればよい。
【0040】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示に係る車両の前部構造は、バンパとグリルとを予め一体化した状態で車体パネル側へ組み付ける車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:車両
2:フェンダパネル(車体パネル)
3:バンパ
3a:バンパの外端縁部(一側の端部)
4:グリル
5:バンパ側取付部
7:係止ピン(グリル側係止部)
8:左右の係止壁部(第2のグリル側係止部)
10:フェンダ側取付部(車体側取付部)
13:グリル支持部(第2の車体側係止部)
16:係止孔(車体側係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6