IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒューグルエレクトロニクス株式会社の特許一覧

特許7190129イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム
<>
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図1
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図2
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図3
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図4
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図5
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図6
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図7
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図8
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図9
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図10
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図11
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図12
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図13
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図14
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図15
  • 特許-イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】イオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/60 20060101AFI20221208BHJP
   G01R 29/24 20060101ALI20221208BHJP
   H05F 3/04 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
G01N27/60 D
G01R29/24 Z
H05F3/04 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018186418
(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公開番号】P2020056642
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591252781
【氏名又は名称】ヒューグルエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】徳永 哲也
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-513429(JP,A)
【文献】特開2000-314650(JP,A)
【文献】国際公開第2018/118893(WO,A1)
【文献】特開2004-053555(JP,A)
【文献】特開2006-019650(JP,A)
【文献】登録実用新案第3079001(JP,U)
【文献】特開2017-116288(JP,A)
【文献】特開2008-039518(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152210(WO,A1)
【文献】特表2017-526165(JP,A)
【文献】特表2008-505044(JP,A)
【文献】国際公開第2017/173042(WO,A2)
【文献】[NCC株式会社],静電気可視化モニター,YouTube [online] [video],2018年02月27日,URL、https://www.youtube.com/watch?v=grcNy2JRG30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-G01N 27/24
G01N 27/60-G01N 27/61
G01R 29/24
H05F 3/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン発生源としてのイオナイザから放射された正イオンまたは負イオンを捕集して帯電するセンサと、前記センサにより捕集した正イオンまたは負イオンの濃度を検出する検出回路と、前記検出回路により検出した正イオン濃度が所定値以上である時に発光する正イオン用発光素子と、前記検出回路により検出した負イオン濃度が所定値以上である時に発光する負イオン用発光素子と、によりイオン分布可視化ユニットを構成し、
前記イオン分布可視化ユニットの構成要素のうち、少なくとも、前記センサ、前記正イオン用発光素子及び前記負イオン用発光素子を並べて配置したものを一組として、その複数組を基板の同一の表面に配置したことを特徴とするイオン分布可視化装置。
【請求項2】
請求項1に記載したイオン分布可視化装置において、
前記センサが、正イオン及び負イオンを捕集して帯電する正負イオン共通のセンサであることを特徴とするイオン分布可視化装置。
【請求項3】
請求項1に記載したイオン分布可視化装置において、
前記センサが、正イオンを捕集して帯電する正イオン用センサと、負イオンを捕集して帯電する負イオン用センサと、に分離されていることを特徴とするイオン分布可視化装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載したイオン分布可視化装置において、
前記基板が、除電対象物の表面形状に合致した形状を有することを特徴とするイオン分布可視化装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載したイオン分布可視化装置において、
前記検出回路を前記基板の裏面に配置したことを特徴とするイオン分布可視化装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載したイオン分布可視化装置において、
前記検出回路に電源を供給する電源回路を前記基板の表面端部に配置したことを特徴とするイオン分布可視化装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載したイオン分布可視化装置における前記検出回路の出力信号をディジタル処理し、情報処理装置により前記正イオン用発光素子または前記負イオン用発光素子の発光状態を示す画像データまたはテキストデータを生成すると共に、前記画像データまたはテキストデータを表示または保存することを特徴としたイオン分布可視化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生源から放射された正イオン及び負イオンの分布状態やイオン濃度を視覚的に把握するためのイオン分布可視化装置、及び、その出力をディジタル処理してディスプレイ上に画像表示するイオン分布可視化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン濃度を視覚的に把握可能とした従来技術として、特許文献1に記載されたイオン風可視化装置が知られている。
図12は、このイオン風可視化装置の主要部を示す斜視図である。図12において、101はフレーム、102はフレーム101の上面を矢印方向に移動可能な第1移動体、103は第1移動体102の上面を矢印方向に移動可能な第2移動体、104はイオン計測装置、105はLED、106はディジタルカメラ、107は支持枠、111はフレーム101の側方に配置されたマーカー、120はイオン発生源としてのドライヤーである。
【0003】
上記従来技術によるイオン風の可視化方法を、図13を参照しつつ説明する。
図13において、ドライヤー120からイオン風を送風した状態で、第1移動体102及び第2移動体103を平面内で移動させながらイオン計測装置104がイオンを計測し、その量に応じてLED105の輝度を変化させつつ点灯させる。同時に、図12のディジタルカメラ106によって点灯状態のLED105を撮像することにより、例えば、LED105を中心とした範囲a,b,cの画像a,b,cを得る。
これらの画像a,b,cを、フレーム101のマーカー111を基準にして画像処理ソフトにより合成して画像dを作成し、この画像dをイオン風の分布画像としてディスプレイに表示するものである。
【0004】
また、他の従来技術として、特許文献2に記載されたイオンチェッカーが知られている。
図14は、このイオンチェッカーの構成図であり、200はイオン発生源としてのクラスタユニット、210は正イオン発生部、220は負イオン発生部、310P,310Nはイオンセンサ、311は正イオンまたは負イオンの電荷を検出する集電電極、321,322は発光色が異なるLED、350は電源である。また、図15は上記イオンセンサ310P,310Nの内部構成図であり、313は保護電極、314は集電電極311による検出電荷量(検出イオン量)を測定するオペアンプ、315は検出イオン量に応じた電圧信号を出力すると共に電源電圧が供給される端子部である。
【0005】
図16は、イオンチェッカーの変形例を示している。この変形例は、前述したイオンセンサ310P,310Nの出力により多数のLED321,322の点灯表示を可能にしたものであり、320は多数のLED321,322からなる点灯表示部、330は制御部、331はマイコン、332はLEDドライバIC、340は点灯表示部320及び制御部330等が搭載された表示基板である。
【0006】
このイオンチェッカーでは、イオンセンサ310P,310Nによりそれぞれ検出した正負のイオン量に応じた数の正イオン側LED321、負イオン側LED322を点灯させるように、マイコン331及びLEDドライバIC332が点灯表示部320を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-120234号公報(段落[0089]~[0122]、図1図4図6等)
【文献】特開2017-116288号公報(段落[0020]~[0049]、図1図2図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のイオン風可視化装置では、イオン計測装置104及びLED105を平面内で移動させるための駆動機構が複雑かつ大型であり、コスト高になる。また、複数の画像を撮像した後にこれらの画像を合成して最終的な可視化画像を得る方式であるため、イオンの分布を視覚によって即座に把握することができなかった。
更に、このイオン風可視化装置では、目的とする場所におけるイオンの平面的な分布状態を測定したい場合でも、装置全体の構造や大きさに起因して測定できないことがあった。
【0009】
また、特許文献2に記載のイオンチェッカーによれば、正イオン及び負イオンをそれぞれ可視化できるが、図16に示した構成では、イオン量に応じて点灯されるLED321,322の数が変化するだけであり、発生した正イオン及び負イオンが空間的にどのように分布しているかを表示できるものではない。
【0010】
更に、空間のイオン濃度やイオンバランスを測定するにはチャージプレートモニタや表面電位センサを使用することが考えられる。しかし、これらの装置を用いた測定作業には多くの時間がかかるため、測定中にイオン濃度やイオンバランスが変化してしまう恐れがある。
加えて、測定器を様々な場所に設置するにつれてイオンの流れが変わってしまい、正確な測定が難しい。
【0011】
以上まとめると、特許文献1や特許文献2に記載された従来技術では、例えば、イオナイザにより正負イオンを発生させて半導体ウェハ等を除電する場合に、その除電対象物に到達する正イオン、負イオンの分布状態やイオン濃度を簡単かつ迅速に把握することが困難であり、チャージプレートモニタや表面電位センサ等を用いる場合についても同様であった。
【0012】
そこで、本発明の解決課題は、イオン発生源から除電対象物に向けて放射された正負イオンの分布状態やイオン濃度を短時間で容易に把握可能としたイオン分布可視化装置及びイオン分布可視化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係るイオン分布可視化装置は、イオン発生源としてのイオナイザから放射された正イオンまたは負イオンを捕集して帯電するセンサと、前記センサにより捕集した正イオンまたは負イオンの濃度を検出する検出回路と、前記検出回路により検出した正イオン濃度が所定値以上である時に発光する正イオン用発光素子と、前記検出回路により検出した負イオン濃度が所定値以上である時に発光する負イオン用発光素子と、によりイオン分布可視化ユニットを構成し、
前記イオン分布可視化ユニットの構成要素のうち、少なくとも、前記センサ、前記正イオン用発光素子及び前記負イオン用発光素子を並べて配置したものを一組として、その複数組を基板の同一の表面に配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係るイオン分布可視化装置は、請求項1に記載したイオン分布可視化装置において、前記センサが、正イオン及び負イオンを捕集して帯電する正負イオン共通のセンサであることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係るイオン分布可視化装置は、請求項1に記載したイオン分布可視化装置において、前記センサが、正イオンを捕集して帯電する正イオン用センサと、負イオンを捕集して帯電する負イオン用センサと、に分離されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係るイオン分布可視化装置は、請求項1~3の何れか1項に記載したイオン分布可視化装置において、前記基板が、除電対象物の表面形状に合致した形状を有することを特徴とする。
【0017】
請求項5に係るイオン分布可視化装置は、請求項1~4の何れか1項に記載したイオン分布可視化装置において、前記検出回路を前記基板の裏面に配置したことを特徴とする。
【0018】
請求項6に係るイオン分布可視化装置は、請求項1~5の何れか1項に記載したイオン分布可視化装置において、前記検出回路に電源を供給する電源回路を前記基板の表面端部に配置したことを特徴とする。
【0019】
請求項7に係るイオン分布可視化システムは、請求項1~6の何れか1項に記載したイオン分布可視化装置における前記検出回路の出力信号をディジタル処理し、情報処理装置により前記正イオン用発光素子または前記負イオン用発光素子の発光状態を示す画像データまたはテキストデータを生成すると共に、前記画像データまたはテキストデータを表示または保存することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のイオン分布可視化装置によれば、LED等の発光素子やセンサを移動させることなく、イオン発生源から所定の距離を隔ててイオン分布可視化装置の主要部(発光素子及びセンサ)を配置して測定するだけで、その位置における正負イオンの平面的な分布状態やイオン濃度の高低を視覚的に把握することができる。このため、イオナイザ等の性能評価や除電対象物に到達するイオンの分布状態、空間的なイオンバランス等の確認を容易かつ短時間で実行可能である。
また、イオンの分布状態を発光素子によって可視化するだけでなく、イオン分布可視化システムとして、検出回路の出力信号をパソコンや携帯情報端末等の情報処理装置によりディジタル処理して画像データまたはテキストデータをディスプレイに表示し、あるいは記憶装置に保存することにより、利便性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明におけるイオン分布可視化ユニットの一実施例の構成図である。
図2図1のイオン分布可視化ユニットの回路構成図である。
図3】本発明のイオン分布可視化装置の第1実施形態を示す構成図である。
図4】本発明のイオン分布可視化装置の第2実施形態を示す構成図である。
図5】本発明のイオン分布可視化装置の第3実施形態を示す構成である。
図6】本発明のイオン分布可視化装置の使用状態を示す概念的な平面図である。
図7】本発明のイオン分布可視化装置の使用状態を示す概念的な側面図である。
図8】本発明におけるイオン分布可視化ユニットの他の実施例の構成図である。
図9図8のイオン分布可視化ユニットにおける正イオン検出・点灯回路の構成図である。
図10図8のイオン分布可視化ユニットにおける負イオン検出・点灯回路の構成図である。
図11】本発明のイオン分布可視化システムの機能ブロック図である。
図12】特許文献1に記載されたイオン風可視化装置の主要部を示す斜視図である。
図13図12のイオン風可視化装置によるイオン風の可視化方法の説明図である。
図14】特許文献2に記載されたイオンチェッカーの構成図である。
図15図14におけるイオンセンサの内部構成図である。
図16】特許文献2に記載されたイオンチェッカーの変形例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は、本発明を構成するイオン分布可視化ユニットの一実施例を示している。このイオン分布可視化ユニットDPUは、正イオンを負イオンより多く検出した時に点灯する正イオン用のLED 1Pと、負イオンを正イオンより多く検出した時に点灯する負イオン用のLED 1Nと、正イオン及び負イオンを捕集する共通の帯電電極としてのセンサ2と、センサ2の出力信号に基づいてLED 1P,1Nを点灯(発光)させるための検出回路3と、を備えている。なお、検出回路3に電源を供給する電源回路については図示を省略してある。
上記構成において、例えばLED 1Pは赤色、LED 1Nは青色というように、発光色が異なっている。
【0023】
図2は、イオン分布可視化ユニットDPUの回路構成図である。図2において、10は非反転増幅器を構成するオペアンプであり、その非反転入力端子にはセンサ2が接続されている。オペアンプ10の反転入力端子には一端が接地された抵抗Rの他端が接続され、オペアンプ10の出力端子と反転入力端子との間には、抵抗Rが接続されている。オペアンプ10の出力端子と接地点との間には、LED 1Pと抵抗Rとの直列回路と、LED 1Nと抵抗Rとの直列回路とが、互いに並列に接続されている。なお、20Pは正電源、20Nは負電源を示す。
【0024】
良く知られているように、非反転増幅器としてのオペアンプ10の入力電圧Vinと出力電圧Voutとの間には、Vout=Vin(R+R)/Rという関係がある。また、上記の入力電圧Vinの大きさはセンサ2により検出された正イオンまたは負イオンの濃度(量)に比例し、入力電圧Vinの極性は、正イオンまたは負イオンのうちイオン濃度が高い方の極性に依存する。
【0025】
このため、正イオン濃度が高い場合には入力電圧Vin及び出力電圧Voutが正になり、出力電圧Voutが抵抗Rによって決まる所定値を超えるとLED 1Pが点灯する。同様に、負イオン濃度が高い場合には入力電圧Vin及び出力電圧Voutが負になり、出力電圧Voutが抵抗Rによって決まる所定値を超えるとLED 1Nが点灯する。ここで、LED 1P,1Nは、例えば、オペアンプ10の入力電圧Vinの大きさが±50[V]、あるいは±100[V]を超えた時に点灯するように、抵抗R~Rの抵抗値等を設定すれば良い。もちろん、これらの閾値はあくまで例示的な値であり、本発明を何ら限定するものではない。
【0026】
また、入力電圧Vinひいては出力電圧Voutは検出されるイオン濃度に応じて大きくなり、LED 1P,1Nの明るさ(輝度)は出力電圧Voutの大きさに依存するので、LED 1P,1Nが明るく光るほど、対応する極性のイオン濃度が高いと判断できる。
従って、図1に示したイオン分布可視化ユニットDPUを後述する基板4等の表面に多数配置し、図示されていない電源回路から電源を供給することにより、個々のイオン分布可視化ユニットDPUの配置箇所における正負イオンの分布状態やイオン濃度の高低を視覚的に表示することができる。
【0027】
次に、図3は本発明に係るイオン分布可視化装置の第1実施形態を示している。
このイオン分布可視化装置DP1においては、LED 1P,1Nとセンサ2とを交互に配置して形成した直線状のセンサ/表示部6を、矩形の基板4の表面に複数並置すると共に、基板4の端部に電源回路5を配置して構成されている。なお、検出回路3は、基板4の裏面に配置するか、表面側のセンサ/表示部6の相互間に配置される。また、電源回路5は、基板4上のイオン分布可視化装置DP1とは別置き(別体)に構成しても良く、このことは第2実施形態以降の各実施形態でも同様である。
【0028】
図4は、本発明に係るイオン分布可視化装置の第2実施形態を示している。
このイオン分布可視化装置DP2は、LED 1P,1Nとセンサ2とを一組にして矩形の基板4の表面に隙間なく高密度に配置すると共に、基板4の端部に電源回路5を配置して構成される。なお、検出回路3は、基板4の裏面に配置されている。
ここで、センサ2は、正負イオン用に共通のものでも良いし、後述する図8のように、正イオン用センサと負イオン用センサとが分離されていても良い。
【0029】
図5は、本発明に係るイオン分布可視化装置の第3実施形態を示している。
このイオン分布可視化装置DP3は、LED 1P,1Nとセンサ2とを一組にして円形の基板4の表面に隙間なく高密度に配置し、基板4の裏面に検出回路3を配置して構成されている。図示されていないが、電源回路は基板4の裏面の適宜な位置に配置すれば良い。
前述したごとく、センサ2は、正負イオン用に共通のものでも良いし、正イオン用センサと負イオン用センサとが分離されていても良い。
【0030】
図3図5に示した実施形態はあくまで例示的なものであり、本発明のイオン分布可視化装置は、任意の外形を有する基板の表面に少なくともLED 1P,1Nとセンサ2とを組み合わせたものを一組として多数組、配置し、検出回路3を基板4の表面または裏面に配置して構成される。また、電源回路5は基板4の表面または裏面に配置するか、基板4とは別個独立して形成される。
【0031】
例えば、イオナイザのユーザが、イオナイザにより発生させたイオンを半導体ウェハ等の除電対象物に放射して除電する場合には、除電対象物の表面におけるイオンの分布状態やイオンバランスを視覚的に把握することが必要である。
このような場合、ユーザの要求に応じて製造された所定の平面形状(A5,A4,A3等の四角形、または円形など)を有する基板4の表面に、多数のLED 1P,1Nやセンサ2を配置すると共に、検出回路3及び電源回路5を適宜設けてイオン分布可視化装置を構成すれば良く、この可視化装置を除電対象物の表面に載置してLED 1P,1Nの点灯状態を観測すれば、イオンの平面的な分布状態やイオン濃度の高低を確認することができる。
【0032】
次いで、図6は、本発明のイオン分布可視化装置の使用状態を概念的に示した平面図である。図6において、30はイオン発生源としてのイオナイザであり、イオン分布可視化装置DP4の表面に対向するように、正イオン発生用の電極31Pと負イオン発生用の電極31Nとが交互に配置されている。
イオン分布可視化装置DP4は、前述した図3図4の実施形態のように構成されており、図示は省略するが、多数のLED 1P,1Nやセンサ2等がイオナイザ30側に配置されている。
【0033】
このため、図6によって概念的に示すように、電極31Pから正イオンを発生させると、電極31Pの直下の領域AP1においてセンサ2が正イオンを検出して例えば赤色のLED 1Pを点灯させ、また、電極31Nから負イオンを発生させると、電極31Nの直下の領域AN1においてセンサ2が負イオンを検出して青色のLED 1Nを点灯させることができる。なお、正イオンと負イオンとは、所定の時間間隔で交互に発生させる。
【0034】
また、図7は、本発明のイオン分布可視化装置の使用状態を概念的に示した側面図である。この例は、イオナイザ30の電極31P,31Nから放射されるイオンの進行方向とイオン分布可視化装置DP5の表面とが平行になるように、イオン分布可視化装置DP5を配置した場合を示している。
【0035】
図6の場合と同様に、正イオンと負イオンとを電極31P,31Nから所定の時間間隔で交互に発生させると、図7に示す如く、電極31P,31Nからの距離Lに応じてセンサ2に到達するイオンの量が異なるため、領域AN2,AP2,AN3,……のように発光色が異なるLED 1N,1Pがイオン濃度に応じて点灯する。なお、距離Lを時間軸tに対応させると、例えば、電極31Nから前回発生させた負イオンによるLED 1Nの点灯領域AN2と、今回発生させた負イオンによるLED 1Nの点灯領域AN3とを、それぞれ分離して形成することができる。
【0036】
次に、図8は、本発明を構成するイオン分布可視化ユニットの他の実施例を示している。このイオン分布可視化ユニットDPU’は、LED 1Pに対応して正イオンを検出する帯電電極としてのセンサ2Pと、LED 1Nに対応して負イオンを検出する帯電電極としてのセンサ2Nと、これらのセンサ2P,2Nの出力信号に基づいてLED 1P,1Nを点灯させるための検出回路3と、を備えている。なお、検出回路3に電源を供給する電源回路については図示を省略してある。
【0037】
図9は、図8のイオン分布可視化ユニットDPU’に適用される正イオン検出・点灯回路の構成図であり、10Pはオペアンプ、20Pは正電源、R1P,R2Pは抵抗である。この回路によれば、センサ2Pにより検出された正イオン濃度に比例して入力電圧Vinが発生し、この入力電圧Vinに応じた出力電圧VoutによってLED 1Pが点灯する。
また、図10は、図8のイオン分布可視化ユニットDPU’に適用される負イオン検出・点灯回路の構成図であり、10Nはオペアンプ、20Nは負電源、R1N,R2Nは抵抗である。この回路によれば、センサ2Nにより検出された負イオン濃度に比例して入力電圧Vinが発生し、この入力電圧Vinに応じた出力電圧VoutによってLED 1Nが点灯する。
【0038】
図9図10のように、正イオン検出・点灯回路と負イオン検出・点灯回路とを分離すると、図8のイオン分布可視化ユニットDPU’におけるセンサ2P,2Nや検出回路3の構成部品数が増加する反面、センサ2P,2Nの分解能が向上する。従って、このイオン分布可視化ユニットDPU’を多数用いてイオン分布可視化装置を構成すれば、一層高精度に正負イオンの分布状態やイオン濃度の高低を検出することができる。
【0039】
図示されていないが、本発明に係るイオン分布可視化装置は、ゴムや合成樹脂等のフレキシブル基板の表面に多数のセンサやLEDを配置し、これらに接続される検出回路や電源回路を上記基板の外部に配置して構成しても良い。これにより、イオンの分布状態を測定したい除電対象物の表面が平面でなく曲面その他の三次元的な面である場合も、当該表面にイオン分布可視化装置のフレキシブル基板を密着させて重ねた状態で測定することができる。
また、立方体または直方体に形成された箱状容器の内部に検出回路や電源回路を収納すると共に、イオンの分布状態を測定したい領域に合わせて、箱状容器の一または複数の表面に多数のセンサやLEDを配置してイオン分布可視化装置を構成しても良い。
【0040】
次に、図11(a),(b)は、本発明のイオン分布可視化装置の応用例であるイオン分布可視化システムの機能ブロック図である。なお、これらの図面は回路や装置が有する機能をブロックとして示したものに過ぎず、各ブロックは、必ずしも物理的に別個に構成されていることを意味していない。
【0041】
このイオン分布可視化システムは、これまで説明したイオン分布可視化装置DP1~DP5(図11(a),(b)では、これらを纏めて符号DPを付してある)における検出回路の出力信号を情報処理装置50に取り込み、イオンの分布状態やイオン濃度の高低を示す静止画または動画の画像データやテキストデータ(数値データを含む)等を生成して、情報処理装置50のディスプレイに表示し、または記憶装置に保存するようにしたものである。情報処理装置50には、パソコンや各種の携帯情報端末(タブレット、携帯電話等)が含まれるが、一般にディジタルデータを処理して表示や保存が可能な装置、端末等であれば、その種類や名称は特に限定されない。
【0042】
図11(a)において、イオン分布可視化装置DPの出力信号(図2図9図10において検出回路を構成するオペアンプ10,10P,10Nの出力電圧Vout)は、LED 1P,1Nを点灯させる一方で、アナログ出力回路41により適宜、増幅された後、A/D変換回路42によりディジタル信号に変換される。このディジタル信号は、ディジタル出力回路43によりLED 1P,1Nのアドレスと対応させて情報処理装置50に入力される。
【0043】
情報処理装置50では、実際のイオン分布可視化装置DPのLED 1P,1Nの点灯状態に対応させた画像データを作成し、静止画としてディスプレイに表示する。あるいは、一定時間内に変化するLED 1P,1Nの点灯状態を動画としてディスプレイに表示すると共に、これらの静止画または動画の画像データをハードディスク等の記憶装置に保存、蓄積する。更に、上述した画像データに代えて、または画像データと共に、イオンの分布状態やイオン濃度の高低を示すテキストデータを作成して表示または保存するようにしても良い。
【0044】
なお、図11(b)は、図11(a)におけるディジタル出力回路43と情報処理装置50との間のデータ伝送手段を無線通信手段により構成した例である。この図11(b)における無線通信回路44,45は、例えば無線LAN(Wi-Fi)やBluetooth(登録商標)、赤外線通信等の通信技術を用いて、ディジタル出力回路43と情報処理装置50との間で各種のデータや制御指令を送受信するように構成すれば良い。
図11(b)に示したシステムによれば、イオン分布可視化装置DPから離れた場所においても、イオンの分布状態等を情報処理装置50のディスプレイ上で確認することができる。
【0045】
図示されていないが、図11(a),(b)においてA/D変換回路42から出力されたディジタルデータを各種の記憶装置に直接、格納することにより、イオン分布可視化装置DPの出力データの保存のみを行うシステムを構成しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1P,1N:LED
2,2P,2N:センサ
3:検出回路
4:基板
5:電源回路
6:センサ/表示部
10,10P,10N:オペアンプ
20P:正電源
20N:負電源
30:イオナイザ
31P,31N:電極
41:アナログ出力回路
42:A/D変換回路
43:ディジタル出力回路
44,45:無線通信回路
50:情報処理装置
DPU,DPU’:イオン分布可視化ユニット
DP,DP1,DP2,DP3,DP4,DP5:イオン分布可視化装置
AP1,AP2,AN1,AN2,AN3:領域
,R1P,R1N,R,R2P,R2N,R,R:抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16