(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】紙葉類識別装置および紙葉類識別方法
(51)【国際特許分類】
G07D 7/183 20160101AFI20221208BHJP
G07D 7/162 20160101ALI20221208BHJP
【FI】
G07D7/183
G07D7/162
(21)【出願番号】P 2018227547
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】佐田 隆史
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-210731(JP,A)
【文献】特開平05-046842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00 - 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部で搬送される紙葉類の2次元画像データを取得する第1センサと、
前記第1センサと異なる位置に配置され、前記紙葉類の特徴を示す特徴情報を取得する第2センサと、
前記第1センサにより取得された複数枚分の紙葉類の2次元画像データを記憶する画像用メモリと、
前記第2センサにより取得された特徴情報を記憶するリングバッファと、
前記第1センサにより取得された2次元画像データをもとにサンプリング区間を決定し、該サンプリング区間に基づいて前記リングバッファから前記特徴情報を抽出する制御部と
を具備
し、
前記制御部は、
前記2次元画像データが、一部が重なり合った複数枚の紙葉類の2次元画像データである場合に、
先行の紙葉類の外形を、後続の紙葉類の重なり部分を含んで検出し、当該外形に基づいて先行する紙葉類のサンプリング区間を決定し、
先行の紙葉類の画像領域のマスク処理をし、
前記マスク処理後の後続する紙葉類の2次元画像データより後続の紙葉類の外形を検出し、当該外形に基づいて後続の紙葉類のサンプリング区間を決定し、
それぞれの紙葉類のサンプリング区間に基づいて前記リングバッファからそれぞれの紙葉類の前記特徴情報を抽出し、
前記2次元画像データと抽出した前記特徴情報とをもとに紙葉類を識別する
ことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
基準画像を判定基準データとして記憶する記憶部をさらに有し、
前記制御部は、
前記マスク処理により後続する紙葉類の2次元画像データの欠けた領域を前記基準画像から補完することを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記第1センサは、
前記搬送部で搬送される紙葉類の一側面の2次元画像データおよび前記紙葉類の他側面の2次元画像データを取得可能であり、
前記制御部は、
前記マスク処理により後続する紙葉類の2次元画像データの欠けた領域を前記紙葉類の一側面の2次元画像データまたは前記紙葉類の他側面の2次元画像データから補完することを特徴とする請求項
1記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記マスク処理により後続する紙葉類の2次元画像データの欠けた領域がある場合、
前記紙葉類の一側面の2次元画像データまたは前記紙葉類の他側面の2次元画像データのうち先行の紙葉類と重なりのない前記2次元画像データを用いて紙葉類の外形を検出することを特徴とする請求項3記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記搬送部は、
紙葉類を正逆両方向に搬送可能であり、
前記制御部は、
前記搬送部の正方向搬送時および逆方向搬送時の両方において、前記第1センサにより取得された2次元画像データをもとにサンプリング区間を決定し、該サンプリング区間に基づいて前記リングバッファから前記特徴情報を抽出することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
搬送部で搬送される紙葉類の2次元画像データを取得する2次元画像データ取得ステップと、
前記2次元画像データ以外の前記紙葉類の特徴を示す特徴情報を取得する特徴情報取得ステップと、
取得した複数枚分の紙葉類の2次元画像データを記憶するステップと、
前記特徴情報を記憶する記憶ステップと、
前記2次元画像データ取得ステップで取得した2次元画像データをもとにサンプリング区間を決定するサンプリング区間決定ステップと、
該サンプリング区間決定ステップで決定した前記サンプリング区間に基づいて、前記記憶ステップで記憶した前記特徴情報を抽出する特徴情報抽出ステップと、
前記2次元画像データと抽出した前記特徴情報とをもとに紙葉類を識別するステップと、
を含
み、
前記2次元画像データが、一部が重なり合った複数枚の紙葉類の2次元画像データである場合に、
前記サンプリング区間決定ステップは、
先行の紙葉類の外形を、後続の紙葉類の重なり部分を含んで検出し、当該外形に基づいて先行する紙葉類のサンプリング区間を決定し、
先行の紙葉類の画像領域のマスク処理をし、
前記マスク処理後の後続する紙葉類の2次元画像データより後続の紙葉類の外形を検出し、当該外形に基づいて後続の紙葉類のサンプリング区間を決定し、
前記特徴情報抽出ステップは、
それぞれの紙葉類のサンプリング区間に基づいてそれぞれの紙葉類の前記特徴情報を抽出する
ことを特徴とする紙葉類識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類識別装置および紙葉類識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙葉類識別装置において、搬送路に沿って移動する紙葉類を検知するために、光学式紙葉類検知センサを利用する場合がある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、光学式紙葉類検知センサの検知状態が、透光状態から遮光状態に変化すると、到着した紙葉類の先端を検知し、遮光状態から透光状態に変化すると、紙葉類の後端を検知する。この情報を、各種センサのサンプリング用トリガとして使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、透明部分を有する紙葉類は、透明部分で光が透過してしまうことから、光学式紙葉類検知センサでは、不透明部分の透明部分側の端部を紙葉類の端部と誤検知してしまうことがある。このように誤検知に基づいて紙葉類の識別を行うと、当然のことながら良好な識別ができなくなってしまう。また、透過型の光学式紙葉類検知センサを利用する場合は、隣り合って搬送される紙葉類同士の間に隙間があっても、これらが近接していると、紙葉類の斜行度合いによっては1枚分の紙葉類を区別することができず、識別ができないため、処理を中断しなければならない。
【0005】
本発明は、良好な識別が可能な紙葉類識別装置および紙葉類識別方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の紙葉類識別装置は、搬送部で搬送される紙葉類の2次元画像データを取得する第1センサと、前記第1センサと異なる位置に配置され、前記紙葉類の特徴を示す特徴情報を取得する第2センサと、前記第1センサにより取得された複数枚分の紙葉類の2次元画像データを記憶する画像用メモリと、前記第2センサにより取得された特徴情報を記憶するリングバッファと、前記第1センサにより取得された2次元画像データをもとにサンプリング区間を決定し、該サンプリング区間に基づいて前記リングバッファから前記特徴情報を抽出する制御部とを具備し、前記制御部は、前記2次元画像データが、一部が重なり合った複数枚の紙葉類の2次元画像データである場合に、先行の紙葉類の外形を、後続の紙葉類の重なり部分を含んで検出し、当該外形に基づいて先行する紙葉類のサンプリング区間を決定し、先行の紙葉類の画像領域のマスク処理をし、前記マスク処理後の後続する紙葉類の2次元画像データより後続の紙葉類の外形を検出し、当該外形に基づいて後続の紙葉類のサンプリング区間を決定し、それぞれの紙葉類のサンプリング区間に基づいて前記リングバッファからそれぞれの紙葉類の前記特徴情報を抽出し、前記2次元画像データと抽出した前記特徴情報とをもとに紙葉類を識別することを特徴とする。
【0007】
上記第1の態様によれば、制御部は、第1センサにより取得された紙葉類の2次元画像データをもとにサンプリング区間を決定し、このサンプリング区間に基づいて、第2センサで取得されリングバッファに記憶された紙葉類の特徴情報を抽出することになる。このように紙葉類の2次元画像データを用いるため、透明部分を有する紙葉類であっても外形を良好に検出できることになり、隣り合って搬送される紙葉類同士が近接していても外形を良好に検出できることになる。よって、良好な識別が可能となる。また、第2センサで取得された紙葉類の特徴情報をリングバッファに記憶するため、第1センサによる紙葉類の2次元画像データの取得タイミングよりも前に第2センサにより取得された紙葉類の特徴情報に基づいても紙葉類を識別することができる。よって、第1センサと第2センサとの位置関係の制約を減らすことができる。
【0008】
本発明に係る第2の態様の紙葉類識別装置は、上記第1の態様において、基準画像を判定基準データとして記憶する記憶部をさらに有し、前記制御部は、前記マスク処理により後続する紙葉類の2次元画像データの欠けた領域を前記基準画像から補完することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第3の態様の紙葉類識別装置は、上記第1の態様において、前記第1センサは、前記搬送部で搬送される紙葉類の一側面の2次元画像データおよび前記紙葉類の他側面の2次元画像データを取得可能であり、前記制御部は、前記マスク処理により後続する紙葉類の2次元画像データの欠けた領域を前記紙葉類の一側面の2次元画像データまたは前記紙葉類の他側面の2次元画像データから補完することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る第4の態様の紙葉類識別装置は、上記第3の態様において、前記制御部は、前記マスク処理により後続する紙葉類の2次元画像データの欠けた領域がある場合、前記紙葉類の一側面の2次元画像データまたは前記紙葉類の他側面の2次元画像データのうち先行の紙葉類と重なりのない前記2次元画像データを用いて紙葉類の外形を検出することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る第5の態様の紙葉類識別装置は、上記第1乃至第4のいずれか一態様において、前記搬送部は、紙葉類を正逆両方向に搬送可能であり、前記制御部は、前記搬送部の正方向搬送時および逆方向搬送時の両方において、前記第1センサにより取得された2次元画像データをもとにサンプリング区間を決定し、該サンプリング区間に基づいて前記リングバッファから前記特徴情報を抽出することを特徴とする。
【0017】
上記第5の態様によれば、第2センサで取得された紙葉類の特徴情報をリングバッファに記憶することから、制御部は、搬送部の正方向搬送時および逆方向搬送時の両方において、第1センサにより取得された2次元画像データをもとにサンプリング区間を決定し、該サンプリング区間に基づいてリングバッファから特徴情報を抽出することで、正方向搬送時および逆方向搬送時において第1センサと第2センサとの位置関係が逆転しても、良好な識別が可能となる。
【0018】
本発明に係る第6の態様の紙葉類識別方法は、搬送部で搬送される紙葉類の2次元画像データを取得する2次元画像データ取得ステップと、前記2次元画像データ以外の前記紙葉類の特徴を示す特徴情報を取得する特徴情報取得ステップと、取得した複数枚分の紙葉類の2次元画像データを記憶するステップと、前記特徴情報を記憶する記憶ステップと、前記2次元画像データ取得ステップで取得した2次元画像データをもとにサンプリング区間を決定するサンプリング区間決定ステップと、該サンプリング区間決定ステップで決定した前記サンプリング区間に基づいて、前記記憶ステップで記憶した前記特徴情報を抽出する特徴情報抽出ステップと、前記2次元画像データと抽出した前記特徴情報とをもとに紙葉類を識別するステップと、を含み、前記2次元画像データが、一部が重なり合った複数枚の紙葉類の2次元画像データである場合に、前記サンプリング区間決定ステップは、先行の紙葉類の外形を、後続の紙葉類の重なり部分を含んで検出し、当該外形に基づいて先行する紙葉類のサンプリング区間を決定し、先行の紙葉類の画像領域のマスク処理をし、前記マスク処理後の後続する紙葉類の2次元画像データより後続の紙葉類の外形を検出し、当該外形に基づいて後続の紙葉類のサンプリング区間を決定し、前記特徴情報抽出ステップは、それぞれの紙葉類のサンプリング区間に基づいてそれぞれの紙葉類の前記特徴情報を抽出することを特徴とする。
【0019】
上記第6の態様によれば、2次元画像データ取得ステップで取得された紙葉類の2次元画像データをもとに、サンプリング区間決定ステップでサンプリング区間を決定し、このサンプリング区間に基づいて、特徴情報取得ステップで取得され記憶ステップで記憶された特徴情報を抽出することになる。このように紙葉類の2次元画像データを用いるため、透明部分を有する紙葉類であっても外形を良好に検出できることになり、隣り合って搬送される紙葉類同士が近接していても外形を良好に検出できることになる。よって、良好な識別が可能となる。また、紙葉類の特徴情報をリングバッファに記憶するため、2次元画像データ取得ステップによる紙葉類の2次元画像データの取得タイミングよりも前に特徴情報取得ステップにより取得された紙葉類の特徴情報に基づいても紙葉類を識別することができる。よって、2次元画像データ取得ステップおよび特徴情報取得ステップの実行タイミングの制約を減らすことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良好な識別が可能な紙葉類識別装置および紙葉類識別方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の紙葉類識別装置の構成を示す側面図である。
【
図2】本発明に係る第1実施形態の紙葉類識別装置の制御基板に実装されるソフトウェアを含む構成のブロック図である。
【
図3】本発明に係る第1実施形態の紙葉類識別装置の制御内容を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】本発明に係る第1実施形態の紙葉類識別装置の制御内容を示すフローチャートである。
【
図5】本発明に係る第1実施形態の紙葉類識別装置の制御内容を説明するための図である。
【
図6】本発明に係る第1実施形態の紙葉類識別装置の制御内容を説明するための図である。
【
図7】本発明に係る第2実施形態の紙葉類識別装置の制御内容を示すフローチャートである。
【
図8】本発明に係る第2実施形態の紙葉類識別装置の制御内容を説明するための図である。
【
図9】本発明に係る第2実施形態の紙葉類識別装置の制御内容を説明するための図である。
【
図10】本発明に係る第2実施形態の紙葉類識別装置の変形例1の制御内容を説明するための図である。
【
図11】本発明に係る第2実施形態の紙葉類識別装置の変形例1の制御内容を説明するための図である。
【
図12】本発明に係る第2実施形態の紙葉類識別装置の変形例1の制御内容を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態の紙葉類識別装置および紙葉類識別方法を
図1~
図6を参照して以下に説明する。
【0023】
第1実施形態の紙葉類識別装置11は、紙葉類Sを搬送する搬送部12を有しており、搬送部12で搬送中の紙葉類Sを識別する。ここで、紙葉類識別装置11には、例えば紙幣である紙葉類Sがその短辺部を入出方向に沿わせる姿勢で入出されることになり、搬送部12は、紙葉類Sをその短辺部を搬送方向に沿わせる姿勢で搬送する。勿論、紙葉類識別装置11は、紙葉類Sがその長辺部を入出方向に沿わせる姿勢で入出され、搬送部12が、紙葉類Sをその長辺部を搬送方向に沿わせる姿勢で搬送するものであっても良い。
【0024】
搬送部12は、紙葉類Sを挟持しつつ回転することより搬送する複数対、具体的には4対の搬送ローラ対15A,15B,15C,15Dと、これらを駆動する図示略の駆動モータと、搬送ローラ対15Aの回転量および回転速度を検出するロータリエンコーダ17とを有している。ここで、搬送ローラ対15A,15B,15C,15Dは同一の搬送速度で紙葉類Sを搬送することになり、ロータリエンコーダ17は、紙葉類Sの搬送部12による搬送距離および搬送速度を検出する。ロータリエンコーダ17は、搬送ローラ対15A以外の搬送ローラ対15B,15C,15Dに設けることも可能である。
【0025】
搬送ローラ対15A~15Dは、紙葉類識別装置11内で位置固定であり、紙葉類Sを挟持する挟持位置が同一平面となるように、搬送ローラ対15A,15B,15C,15Dの順に配置され、紙葉類Sを同一平面で移動させるようになっている。搬送部12は、搬送ローラ対15A~15Dによって紙葉類Sを正逆両方向に搬送可能である。ここでは、これら搬送ローラ対15A~15Dのうち、一端の搬送ローラ対15Aから、搬送ローラ対15B、搬送ローラ対15C、他端の搬送ローラ対15Dの順に紙葉類Sを搬送する搬送方向を正方向とし、他端の搬送ローラ対15Dから、搬送ローラ対15C、搬送ローラ対15B、一端の搬送ローラ対15Aの順に紙葉類Sを搬送する搬送方向を逆方向とする。
【0026】
搬送部12における紙葉類Sの搬送方向である紙葉類搬送方向の略中央には、搬送部12で搬送される紙葉類Sの一側面に対向可能にイメージセンサ21(第1センサ)が設けられており、また、紙葉類Sの他側面に対向可能にイメージセンサ22(第1センサ)が設けられている。これらイメージセンサ21,22は、紙葉類識別装置11内で位置固定であり、いずれも、搬送ローラ対15A~15Dのうち中央2対の搬送ローラ対15B,15Cの間に設けられている。これらイメージセンサ21,22は、紙葉類搬送方向の位置を重ね合わせている。
【0027】
これらイメージセンサ21,22は、搬送部12で搬送される紙葉類Sのそれぞれ対向する面の2次元画像データを取得する。イメージセンサ21,22は、例えば、LED等の光源と受光レンズとCMOSイメージセンサ等のイメージセンサ本体との組みを、紙葉類搬送方向に対して直交する方向であって搬送部12で搬送される紙葉類Sに平行な方向に一列状に多数並べて構成されるコンタクトイメージセンサ(CIS)である。
【0028】
搬送部12の正方向での搬送時のイメージセンサ21,22よりも上流側には、紙葉類Sの特徴を示す特徴情報を取得する要素センサとして、紙葉類Sの特徴情報である厚さを検知して取得する厚さ検知センサ31(第2センサ)が設けられている。厚さ検知センサ31は、搬送部12で搬送される紙葉類Sを挟持するベースローラ32および可動ローラ33と可動ローラ33を支持する支持アーム35とを有している。ベースローラ32および可動ローラ33は、回転可能であり、搬送ローラ対15A,15Bの間に設けられている。
【0029】
ベースローラ32は、紙葉類識別装置11内で位置固定である。支持アーム35は、紙葉類識別装置11内で位置固定の支持軸36を中心に回動可能であり、支持軸36から搬送部12の正方向での搬送時の下流側に延出している。支持アーム35は、その支持軸36とは反対側に可動ローラ33を回転可能に支持しており、この可動ローラ33をベースローラ32に当接可能としている。ベースローラ32および可動ローラ33は、紙葉類Sを挟持する挟持位置が、搬送ローラ対15A~15Dの紙葉類Sの挟持位置と同一平面となるように配置されている。
【0030】
可動ローラ33は、ベースローラ32との間を紙葉類Sが通過する際には、支持アーム35を支持軸36を中心に揺動させながらベースローラ32からその径方向に離れるように移動する。可動ローラ33は、ベースローラ32との間を通過する紙葉類Sの厚さに応じてベースローラ32に対する径方向の距離が変化する。厚さ検知センサ31は、可動ローラ33のベースローラ32とは反対側に配置されて可動ローラ33の移動距離を検知することにより紙葉類Sの厚さを検知する近接センサ等の厚さ検知センサ本体38を有している。厚さ検知センサ31は、イメージセンサ21,22とは異なる位置に配置されて、イメージセンサ21,22で取得する紙葉類Sの2次元画像データとは異なる紙葉類Sの特徴を示す特徴情報である厚さ情報をセンサデータとして取得する。
【0031】
搬送部12の正方向での搬送時のイメージセンサ21,22よりも下流側には、搬送部12で搬送される紙葉類Sの一側面に対向可能にUVセンサモジュール41(第2センサ)が設けられており、また、紙葉類Sの他側面に対向可能にUVセンサモジュール42(第2センサ)が設けられている。これらUVセンサモジュール41,42は、紙葉類搬送方向の位置を合わせて、搬送ローラ対15C,15Dの間に設けられている。
【0032】
これらUVセンサモジュール41,42は、いずれも紙葉類Sの特徴情報を取得する要素センサであり、それぞれ紙葉類Sの対向する面に紫外線を照射してその反射光、すなわち紙葉類Sの特徴情報である紫外線反射情報を取得する。これらUVセンサモジュール41,42は、いずれもイメージセンサ21,22とは異なる位置に配置されて、イメージセンサ21,22で取得する紙葉類Sの2次元画像データとは異なる紙葉類Sの特徴を示す特徴情報である紫外線反射情報をセンサデータとして取得する。
【0033】
搬送部12の正方向での搬送時のUVセンサモジュール41,42よりも下流側には、搬送部12で搬送される紙葉類Sの一側面に対向可能に磁気センサアレイ51(第2センサ)が設けられており、また、紙葉類Sの他側面に対向可能であって紙葉類Sを磁気センサアレイ51に近づける押圧ローラ52が設けられている。これら磁気センサアレイ51および押圧ローラ52は、搬送ローラ対15C,15Dの間に設けられている。
【0034】
磁気センサアレイ51は、紙葉類Sの特徴情報を取得する要素センサであり、紙葉類Sの特徴情報である磁気情報を取得する。磁気センサアレイ51は、イメージセンサ21,22とは異なる位置に配置されて、イメージセンサ21,22で取得する紙葉類Sの2次元画像データとは異なる紙葉類Sの特徴を示す特徴情報である磁気情報をセンサデータとして取得する。
【0035】
紙葉類識別装置11は、その各部を制御するソフトウェアが実装された制御基板61を有しており、制御基板61が、イメージセンサ21、イメージセンサ22、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41、UVセンサモジュール42および磁気センサアレイ51により取得された情報をもとに紙葉類Sの識別処理を行う。
【0036】
制御基板61は、例えばCPU基板やDSP基板等により構成される。
図2は、制御基板61に実装されるソフトウェアを含む構成のブロック図である。制御基板61は、制御部62および判定部63を有し、制御部62は、画像用メモリ部71、複数のリングバッファ72,73,74および判定用メモリ部81を有している。
【0037】
画像用メモリ部71は、イメージセンサ21,22で取得された2次元画像データを記憶する。画像用メモリ部71は、イメージセンサ21,22で取得された紙葉類Sの一枚分を所定量超える範囲の2次元画像データを記憶可能なメモリ領域を有するリングバッファからなっている。判定用メモリ部81は、識別対象の紙葉類データ、厚さ情報、紫外線反射情報、および磁気情報を記憶する。判定部63は、紙葉類Sの金種、真偽、損傷の程度(正損)等を識別するための判定用の閾値や基準画像等の判定基準データを記憶している。
【0038】
リングバッファ72は、要素センサである厚さ検知センサ31で取得された紙葉類Sの特徴情報である厚さ情報を記憶する。リングバッファ72は、紙葉類Sの一枚分を所定量超える範囲の厚さ情報を記憶可能なメモリ領域を有している。
【0039】
リングバッファ73は、要素センサであるUVセンサモジュール41,42で取得された紙葉類Sの特徴情報である紫外線反射情報を記憶する。リングバッファ73は、紙葉類Sの一枚分を所定量超える範囲の紫外線反射情報を記憶可能なメモリ領域を有している。
【0040】
リングバッファ74は、要素センサである磁気センサアレイ51で取得された紙葉類Sの特徴情報である磁気情報を記憶する。リングバッファ74は、紙葉類Sの一枚分を所定量超える範囲の磁気情報を記憶可能なメモリ領域を有している。
【0041】
制御部62には、ロータリエンコーダ17から回転量に関する信号(タイミングパルス)が入力される。制御部62は、イメージセンサ21,22の検出結果から紙葉類Sについてのイメージセンサ21,22でのサンプリング区間を決定し、ロータリエンコーダ17により取得された回転量から紙葉類移動量を演算して、これらサンプリング区間および紙葉類移動量をもとに、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれの同じ紙葉類Sについてのサンプリング区間を決定する。
【0042】
すなわち、制御部62は、例えば、搬送部12による正方向搬送時に、
図3(a)に示すように、イメージセンサ21,22の出力から、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検出しているサンプリング区間を決定し、このサンプリング区間に対し、
図3(b)に示すように、その前にデータ取得が行われている、同じ紙葉類Sについての厚さ検知センサ31のサンプリング区間を、イメージセンサ21,22と厚さ検知センサ31との間の紙葉類移動量からこの紙葉類移動量分を遡って決定して、このサンプリング区間の厚さ情報をリングバッファ72から抜き出すことになる。
【0043】
ここで、制御部62は、紙葉類Sについてのイメージセンサ21,22のサンプリング区間決定に対し、
図3(c)に示すように、その後にデータ取得が行われる、イメージセンサ21,22よりも下流側にあるUVセンサモジュール41,42については、同じ紙葉類Sについてのサンプリング区間を、イメージセンサ21,22とUVセンサモジュール41,42との間の紙葉類移動量から決定することで、UVセンサモジュール41,42での紫外線反射情報を制御部62が直接サンプリングすることができる。
【0044】
また、制御部62は、紙葉類Sについてのイメージセンサ21,22のサンプリング区間決定に対し、
図3(d)に示すように、その後にデータ取得が行われる、同じくイメージセンサ21,22よりも下流側にある磁気センサアレイ51については、同じ紙葉類Sについてのサンプリング区間を、イメージセンサ21,22と磁気センサアレイ51との間の紙葉類移動量から決定することで、磁気センサアレイ51での磁気情報を制御部62が直接サンプリングすることができる。
【0045】
なお、これら紫外線反射情報および磁気情報については、リングバッファ73,74に記憶する必要はないものの、制御部62は、これらについても一旦リングバッファ73,74に記憶してリングバッファ73,74から抜き出すようになっている。
【0046】
また、制御部62は、搬送部12による逆方向搬送時に、イメージセンサ21,22の出力から、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検出しているサンプリング区間を決定し、このサンプリング区間に対し、その前にデータ取得が行われている、同じ紙葉類Sについての磁気センサアレイ51のサンプリング区間を、イメージセンサ21,22と磁気センサアレイ51との間の紙葉類移動量からこの紙葉類移動量分を遡って決定して、このサンプリング区間の磁気情報をリングバッファ74から抜き出すことになる。
【0047】
また、制御部62は、搬送部12による逆方向搬送時に、紙葉類Sについてのイメージセンサ21,22のサンプリング区間の決定に対し、その前にデータ取得が行われている、同じ紙葉類SについてのUVセンサモジュール41,42のサンプリング区間を、イメージセンサ21,22とUVセンサモジュール41,42との間の紙葉類移動量からこの紙葉類移動量分を遡って決定して、このサンプリング区間の紫外線反射情報をリングバッファ73から抜き出すことになる。
【0048】
イメージセンサ21,22よりも下流側にある厚さ検知センサ31については、同じ紙葉類Sについてのサンプリング区間を、イメージセンサ21,22と厚さ検知センサ31との間の紙葉類移動量から決定して厚さ情報を直接サンプリングすることができるが、制御部62は、これも一旦リングバッファ72に記憶してリングバッファ72から抜き出す。
【0049】
制御部62は、
図4に示すように、紙葉類Sを計数する紙葉類計数モード中処理として、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知したか否かを所定の一定間隔で判定する(ステップSa1)。ここで、イメージセンサ21,22のライン上で予め設定された長さ(または画素数)以上暗くなる部分があれば、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知したと判定し(ステップSa1:YES)、イメージセンサ21,22で予め設定された長さ(または画素数)以上暗くなる部分がなければ、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知していないと判定する(ステップSa1:NO)。
【0050】
また、制御部62は、厚さ検知センサ31については所定の一定間隔でデータのサンプリング処理を行わせてリングバッファ72に記憶させ(ステップSa2)、UVセンサモジュール41,42についても所定の一定間隔でデータのサンプリング処理を行わせてリングバッファ73に記憶させ(ステップSa3)、磁気センサアレイ51についても所定の一定間隔でデータのサンプリング処理を行わせてリングバッファ74に記憶させる(ステップSa4)。ステップSa2~Sa4は、2次元画像データ以外の紙葉類Sの特徴を示す特徴情報を取得する特徴情報取得ステップおよびこのように取得した特徴情報を記憶する記憶ステップとなる。
【0051】
ステップSa1において、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知していないと判定すると(ステップSa1:NO)、制御部62は、他の処理を行って(ステップSa5)、ステップSa1に戻る。ステップSa1において、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知したと判定すると(ステップSa1:YES)、制御部62は、イメージセンサ21,22により取得した画像データを画像用メモリ部71に記憶するサンプリング処理を行うことになり、イメージセンサ21,22が、この紙葉類Sを検知しなくなると、イメージセンサ21,22により取得した画像データを画像用メモリ部71に記憶するサンプリング処理を停止する(ステップSa6)。このステップSa6は、搬送部12で搬送される紙葉類Sの2次元画像データを取得する2次元画像データ取得ステップとなっている。
【0052】
ステップSa6によってイメージセンサ21,22により取得された2次元画像データから、この紙葉類Sの外形(エッジ)を検出し、検出された外形に相当する紙葉類Sの2次元画像データを画像用メモリ部71から抽出し、判定用メモリ部81に記憶する(ステップSa7)。
【0053】
イメージセンサ21,22では、例えば、イメージセンサ21,22のセットで1つとなる透過の2次元画像データと、イメージセンサ21での一側面の反射の2次元画像データと、イメージセンサ22での他側面の反射の2次元画像データとの3種類の2次元画像データが取得可能である。ここでは、透過の2次元画像データを用いて外形検出を行う場合を例にとり説明するが、一側面の反射の2次元画像データや他側面の反射の2次元画像データでも外形検出は可能である。
【0054】
イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データから、紙葉類Sの外形(エッジ)を検出する方法の一例について説明する。
【0055】
イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データは、
図5(a)に示すようなデータで構成されており、紙葉類Sの画像データ領域101と、紙葉類Sよりも外側部分の画像データ領域102とからなる。イメージセンサ21,22の延在方向にx座標をとり、紙葉類Sの搬送方向にy座標をとる。
【0056】
まず、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データの紙葉類Sの画像データ領域101の外側から、
図5(b)に示すように、紙葉類Sの搬送方向下流側の辺部のエッジラインを検出する。すなわち、まず、y方向に、搬送方向下流側の辺部の外側から2次元画像データを検索することになる。このとき、2次元画像データのスキャンエリアは、x座標の中央位置を基準として予め設定された所定の範囲、例えばx座標の中央位置から±50mmの範囲を検索するものとする。このとき、x座標のデータ検索位置の間隔は予め設定された所定の間隔、例えば5mm間隔とすれば21ポイントの検索点を検索することになる。スキャンエリアや検索位置の間隔は、任意に選択可能であり、この間隔を狭くすることで精度を上げることができる。
【0057】
次に、すべての検索点についての、すべての2点の組み合わせで一次直線の傾きを算出する。例えば、
図5(c)に示すように(x1,y1)のA点座標と、(x2,y2)のB点座標とから、一次直線y=ax+bを求め、その傾きaを、a=(y2-y1)/(x2-x1)で求める。このとき、傾きが所定の角度、具体的には15°以上のデータは無効として排除する。これは、傾きが所定のリジェクト角度、具体的には10°以上の場合は、斜行紙葉類として、この紙葉類識別装置11が組み込まれた紙葉類処理装置においてリジェクトされることになり、また、破れや穴があった場合には、傾きが大きくなり、このような場合も、紙葉類処理装置においてリジェクトされることになるためである。
【0058】
すべての検索点から、一次直線が有効な傾きとなる座標を選択し、選択した座標で最小二乗法を利用して、紙葉類Sの搬送方向下流側の辺部のエッジラインに近似する一次直線を算出し、これを搬送方向下流側の辺部のエッジラインとしてその角度を斜行角度aとする。
【0059】
次に、
図5(d)に示すように、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データの紙葉類Sの画像データ領域101から紙葉類Sの搬送方向上流側の辺部のエッジラインを検出して、上記と同様にして、その近似の一次直線を算出する。すなわち、搬送方向上流側の辺部の外側から2次元画像データを検索して、搬送方向上流側の辺部のエッジラインに近似する一次直線を算出する。このとき、x座標のデータ検索位置の間隔は予め設定された所定の間隔で所定数、具体的には5ポイントの検索点を検索する。また、このとき、搬送方向上流側の辺部のエッジラインの傾きは、搬送方向下流側の辺部のエッジラインの斜行角度aを使用する。
【0060】
次に、
図6(a)に示すように、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データの紙葉類Sの画像データ領域101から紙葉類Sの進行方向左側および進行方向右側にある辺部のエッジラインを検出して、上記と同様にして、それぞれの近似の一次直線を算出する。すなわち、イメージセンサ21,22の延在方向であるx方向に2次元画像データを外側から検索して、進行方向左側にある辺部のエッジラインに近似する一次直線を算出するとともに進行方向右側にある辺部のエッジラインに近似する一次直線を算出する。
【0061】
このとき、上記のように検出した搬送方向下流側の辺部のエッジラインの座標でyの値が一番小さい座標を検索し、これをA点座標とする。また、搬送方向上流側の辺部のエッジラインの座標でyの値が一番大きい座標を検索し、これをB点座標とする。そして、A点のy座標とB点のy座標と上記した斜行角度aとから、進行方向左側および進行方向右側にある辺部のエッジラインの検出範囲を決定し、この範囲を進行方向左側および進行方向右側にある辺部のそれぞれの外側から検索する。このとき、検索の間隔は、所定の等分した間の所定数の検索点を検索する。具体的には、5等分した間の3点で、搬送方向下流側の辺部のエッジラインの斜行角度aを90°回転した傾きa’に変え、切片を演算する。進行方向左側および進行方向右側にある辺部のそれぞれについて3つの切片を算出し中央の値を採用する。
【0062】
以上のようにして得られた紙葉類Sの画像データ領域101の四辺の一次直線の式から紙葉類Sの画像データ領域101の4頂点の座標を算出する。例えば、
図6(b)に示すように、搬送方向下流側の辺部の一次直線の式がy=ax+bであり、進行方向左側にある辺部の一次直線の式がy=cx+dである場合、これらで形成される頂点のx座標およびy座標は、以下の式で求められる。
x=(d-b)/(a-c)
y=a(ad-cb)/(a-c)
【0063】
制御部62は、
図4に示すように、ステップSa7において決定した、イメージセンサ21,22により検出された紙葉類Sの画像データ領域101の4頂点の位置から、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知しているサンプリング区間を決定すると共に、このサンプリング区間と、イメージセンサ21,22と各要素センサである厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれとの位置関係(搬送方向の距離)と、搬送部12の搬送速度とに基づいて、紙葉類Sが厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれの検出位置を通っている期間となるサンプリング区間を決定する(ステップSa8)。
【0064】
そして、それぞれのサンプリング区間のセンサデータをリングバッファ72~74から抽出し、判定用メモリ部81に記憶する(ステップSa9)。
【0065】
ステップSa7,Sa8は、ステップSa6の2次元画像データ取得ステップで取得した2次元画像データをもとに、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のサンプリング区間を決定するサンプリング区間決定ステップであり、ステップSa9は、ステップSa8のサンプリング区間決定ステップで決定したサンプリング区間に基づいて、ステップSa2~Sa4の記憶ステップで記憶した厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51の特徴情報を抽出する特徴情報抽出ステップとなる。
【0066】
つまり、制御部62は、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データをもとに、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれのサンプリング区間を決定し、それぞれのサンプリング区間に基づいてリングバッファ72~74から紙葉類Sの特徴情報である厚さ情報、紫外線反射情報および磁気情報を抽出する。
【0067】
具体的に、制御部62は、ステップSa7において決定した、イメージセンサ21,22により検出された紙葉類Sの画像データ領域101の4頂点の位置から、イメージセンサ21,22が、この紙葉類Sを検知しているサンプリング区間を決定すると共に、このサンプリング区間と、イメージセンサ21,22と要素センサである厚さ検知センサ31との位置関係と、搬送部12の搬送速度とに基づいて、この紙葉類Sが厚さ検知センサ31の検知位置を通っている期間となる厚さ情報用のサンプリング区間を決定し(ステップSa8)、この厚さ情報用のサンプリング区間において厚さ検知センサ31で検出した厚さ情報のセンサデータをリングバッファ72から抽出し、判定用メモリ部81に記憶する(ステップSa9)。
【0068】
また、制御部62は、ステップSa7において決定した、イメージセンサ21,22により検出された紙葉類Sの画像データ領域101の4頂点の位置から、イメージセンサ21,22が、この紙葉類Sを検知しているサンプリング区間を決定すると共に、このサンプリング区間と、イメージセンサ21,22と要素センサであるUVセンサモジュール41,42との位置関係と、搬送部12の搬送速度とに基づいて、この紙葉類SがUVセンサモジュール41,42の検出位置を通っている期間となる紫外線反射情報用のサンプリング区間を決定し(ステップSa8)、この紫外線情報用のサンプリング区間のUVセンサモジュール41,42の紫外線反射情報のセンサデータをリングバッファ73から抽出し、判定用メモリ部81に記憶する(ステップSa9)。
【0069】
また、制御部62は、ステップSa7において決定した、イメージセンサ21,22により検出された紙葉類Sの画像データ領域101の4頂点の位置から、イメージセンサ21,22が、この紙葉類Sを検知しているサンプリング区間を決定すると共に、このサンプリング区間と、イメージセンサ21,22と要素センサである磁気センサアレイ51との位置関係と、搬送部12の搬送速度とに基づいて、この紙葉類Sが磁気センサアレイ51の検出位置を通っている期間となる磁気情報用のサンプリング区間を決定し(ステップSa8)、この磁気情報用のサンプリング区間の磁気センサアレイ51の磁気情報のセンサデータをリングバッファ74から抽出し、判定用メモリ部81に記憶する(ステップSa9)。
【0070】
そして、判定部63が、判定メモリ部81に記憶された、イメージセンサ21,22により検出された2次元画像データの紙葉類Sの画像データ領域101のデータと、この紙葉類Sに対してそれぞれ抽出した、厚さ情報、紫外線反射情報および磁気情報とをもとに、判定部63に記憶されたそれぞれの判定基準データとの一致および不一致を判定して、この紙葉類Sの識別処理を行う(ステップSa10)。判定部63は、例えば、この紙葉類Sが紙幣である場合、この紙幣のイメージセンサ21,22により検出された2次元画像データの画像データ領域101のデータと、この紙幣に対してそれぞれ抽出した、厚さ情報、紫外線反射情報および磁気情報とが、いずれも同一金種の判定基準データと一致すると判定できる場合、この紙幣をこの金種であると判定する。いずれか一つでも同一金種の判定基準データと一致すると判定できない場合、この紙幣をこの金種以外であると判定する。
【0071】
ここで、搬送部12は、正逆両方向で紙葉類Sを搬送可能であるが、搬送部12の正方向搬送時および逆方向搬送時の両方において、制御部62は、上記のように、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データをもとに、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれのサンプリング区間を決定し、それぞれのサンプリング区間に基づいてリングバッファ72~74から紙葉類Sの特徴情報である厚さ情報、紫外線反射情報および磁気情報を抽出して、これらと、それぞれの判定基準データとの一致および不一致を判定して、紙葉類Sの識別処理を行う。
【0072】
以上に述べた第1実施形態の紙葉類識別装置11によれば、制御部62が、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データをもとに、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれのサンプリング区間を決定し、それぞれのサンプリング区間に基づいてリングバッファ72~74から紙葉類Sの特徴情報である厚さ情報、紫外線反射情報および磁気情報を抽出することになる。このように紙葉類Sの2次元画像データを用いるため、あらゆる位置や大きさの透明部分を有する例えばポリマー紙幣と呼ばれる紙葉類Sや部分的な破れや穴を有する損傷紙葉類Sであっても外形を良好に検出できることになる。よって、この外形に基づいて、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれのサンプリング区間を決定し、それぞれのサンプリング区間に基づいてリングバッファ72~74から紙葉類Sの特徴情報である厚さ情報、紫外線反射情報および磁気情報を抽出することで、紙葉類Sの良好な識別が可能となる。
【0073】
また、従来の透過型の光学式紙葉類検知センサを不要にできる。
【0074】
また、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれで取得された紙葉類Sの特徴情報をリングバッファ72~74に記憶するため、イメージセンサ21,22による紙葉類Sの2次元画像データの取得タイミングよりも前に厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のいずれかによって紙葉類Sの特徴情報が取得されていても、紙葉類Sを識別することができる。よって、イメージセンサ21,22と、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51との位置関係の制約を減らすことができる。
【0075】
すなわち、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれで取得された紙葉類Sの特徴情報をリングバッファ72~74に記憶するため、制御部62は、搬送部12の正方向搬送時および逆方向搬送時の両方において、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データをもとに、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれのサンプリング区間を決定し、それぞれのサンプリング区間に基づいてリングバッファ72~74から特徴情報である厚さ情報、紫外線反射情報および磁気情報を抽出することで、正方向搬送時および逆方向搬送時において、イメージセンサ21,22と、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51との位置関係が逆転しても、良好な識別が可能となる。
【0076】
以上に述べた第1実施形態の紙葉類識別方法によれば、2次元画像データ取得ステップ(ステップSa6)で取得された紙葉類Sの2次元画像データをもとに、サンプリング区間決定ステップ(ステップSa7,Sa8)でサンプリング区間を決定し、このサンプリング区間に基づいて、特徴情報取得ステップ(ステップSa2~Sa4)で取得され記憶ステップ(ステップSa2~Sa4)で記憶された特徴情報を抽出することになる。このように紙葉類Sの2次元画像データを用いるため、例えばポリマー紙幣と呼ばれる透明部分を有する紙葉類Sおよび部分的な破れや穴を有する損傷紙葉類Sであっても外形を良好に検出できることになる。よって、良好な識別が可能となる。
【0077】
また、厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれで取得された紙葉類Sの特徴情報をリングバッファ72~74に記憶するため、2次元画像データ取得ステップ(ステップSa6)による紙葉類Sの2次元画像データの取得タイミングよりも前に特徴情報取得ステップ(ステップSa2~Sa4)により取得された紙葉類Sの特徴情報に基づいても紙葉類Sを識別することができる。よって、2次元画像データ取得ステップ(ステップSa6)および特徴情報取得ステップ(ステップSa2~Sa4)の実行タイミングの制約を減らすことができる。
【0078】
[第2実施形態]
本発明に係る第2実施形態の紙葉類識別装置および紙葉類識別方法を、主に
図7~
図9を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。
【0079】
第2実施形態の紙葉類識別装置11は、画像用メモリ部71が、イメージセンサ21,22により取得された紙葉類Sの2次元画像データを所定の複数枚分サンプリング可能なメモリ領域を有しており、例えば、紙葉類Sの3枚分または4枚分の2次元画像データを保存可能な十分な大きさのリングバッファで構成されている。言い換えれば、画像用メモリ部71は、イメージセンサ21,22により取得された、複数枚分の紙葉類Sの2次元画像データを記憶可能となっている。また、第2実施形態の紙葉類識別装置11は、制御部62の制御内容が第1実施形態とは一部相違している。
【0080】
制御部62は、第1実施形態と同様、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知したか否かを所定の一定間隔で判定する(ステップSa1)。また、制御部62は、厚さ検知センサ31については所定の一定間隔でデータのサンプリング処理を行わせてリングバッファ72に記憶させ(ステップSa2)、UVセンサモジュール41,42についても所定の一定間隔でデータのサンプリング処理を行わせてリングバッファ73に記憶させ(ステップSa3)、磁気センサアレイ51についても所定の一定間隔でデータのサンプリング処理を行わせてリングバッファ74に記憶させる(ステップSa4)。さらに、制御部62は、所定の一定間隔で、紙葉類Sの2次元画像データがあるか否かを判定する(ステップSb1)。
【0081】
ステップSa1において、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知していないと判定すると(ステップSa1:NO)、制御部62は、第1実施形態と同様に他の処理を行って(ステップSa5)、ステップSa1に戻る。ステップSa1において、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知したと判定すると(ステップSa1:YES)、制御部62は、イメージセンサ21,22により取得した画像データを画像用メモリ部71に記憶するサンプリング処理を行うことになり(ステップSb2)、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを継続して検知している状態で(ステップSb3:YES)、サンプリング長さが斜行を考慮した紙葉類一枚分のサンプリングが完了したと判定すると(ステップSb4:YES)、紙葉類データありフラグをオンにする(ステップSb5)。ここで、制御部62は、イメージセンサ21,22のサンプリング処理において、一の紙葉類Sのサンプリング開始後、この紙葉類Sと次の紙葉類Sとの間の隙間が検出される(紙葉類Sが検出されない状態が一定区間継続する)まで一続きのサンプリングを行う。ステップSb5の後、ステップSb2に戻り、イメージセンサ21,22により取得した画像データを画像用メモリ部71に記憶するサンプリング処理を継続することになる。
【0082】
ステップSb5において、紙葉類データありフラグがオンされると、ステップSb1において、紙葉類Sの一枚分の2次元画像データがあると判定し(ステップSb1:YES)、紙葉類データありフラグをオフするとともに、ステップSb2によってイメージセンサ21,22により取得された2次元画像データから、この一枚の紙葉類Sの外形(エッジ)を第1実施形態と同様に検出する(ステップSa7)。
【0083】
制御部62は、ステップSa7において決定したイメージセンサ21,22により検出された紙葉類Sの画像データ領域101の4頂点の位置から、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知しているサンプリング区間を決定すると共に、このサンプリング区間と、イメージセンサ21,22と各要素センサである厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれとの位置関係(搬送方向の距離)と、搬送部12の搬送速度とに基づいて、紙葉類Sが厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれの検出位置を通っている期間となるサンプリング区間を決定し(ステップSa8)、それぞれのサンプリング区間のセンサデータをリングバッファ72~74から抽出する(ステップSa9)。
【0084】
そして、制御部62は、2次元画像データの紙葉類Sの画像データ領域101のデータと、この紙葉類Sについて抽出した厚さ情報と、この紙葉類Sについて抽出した紫外線反射情報と、この紙葉類Sについて抽出した磁気情報とをもとに、それぞれの判定基準データとの一致および不一致を判定して、この紙葉類Sの識別処理を行う(ステップSa10)。一方、ステップSb2で一続きでサンプリングされている後続の紙葉類Sについて、イメージセンサ21,22が、この紙葉類Sを検知しなくなると(ステップSb3:NO)、紙葉類Sの2次元画像データがあることを示す紙葉類データありフラグをオンにし(ステップSb6)、その結果、この紙葉類Sについて、ステップSb1において、この紙葉類Sの2次元画像データがあると判定し(ステップSb1:YES)、この紙葉類Sの一枚分の2次元画像データを用いてステップSa7~Sa10を行って識別を行うことになる。この紙葉類Sに一続きでサンプリングされているさらに後続の紙葉類Sがある場合、ステップSb3はYESとなる。
【0085】
すなわち、
図8(a)に示すように、画像用メモリ部71が、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データの紙葉類Sの画像データ領域101を複数枚分記憶している場合に、
図8(b)に示すように、先行の一枚分の紙葉類Sの画像データ領域101を含む2次元画像データを切り出し、
図8(c)に太破線で示すように、先行の一枚分の紙葉類Sの画像データ領域101の外形を検出して、
図8(d)に太実線で示すように、先行の一枚分の紙葉類Sの画像データ領域101について、イメージセンサ21,22が検知しているサンプリング区間を決定すると共に、このサンプリング区間から、先行の一枚分の紙葉類Sに対する厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれのサンプリング区間を決定して、センサデータをリングバッファ72~74から抽出して、先行の一枚分の紙葉類Sに対する識別処理を第1実施形態と同様に行う。
【0086】
その後、
図9(a)に二点鎖線で示すように、先行の一枚分の紙葉類Sの画像データ領域101をマスクして、
図9(b)に示すように、後続の一枚分の紙葉類Sの画像データ領域101を含む2次元画像データを切り出し、
図9(c)に太破線で示すように、後続の一枚分の紙葉類Sの画像データ領域101の外形を検出して、
図9(d)に太実線で示すように、この後続の一枚分の紙葉類Sの画像データ領域101について、イメージセンサ21,22が紙葉類Sを検知しているサンプリング区間を決定すると共に、このサンプリング区間から、この後続の一枚分の紙葉類Sに対する厚さ検知センサ31、UVセンサモジュール41,42および磁気センサアレイ51のそれぞれのサンプリング区間を決定して、センサデータをリングバッファ72~74から抽出して、後続の一枚分の紙葉類Sに対する識別処理を第1実施形態と同様に行う。
【0087】
以上に述べた第2実施形態の紙葉類識別装置11によれば、画像用メモリ部71が、イメージセンサ21,22により取得された複数枚分の紙葉類Sの2次元画像データの画像データ領域101を記憶可能であり、制御部62が、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データが、複数枚の紙葉類Sの2次元画像データである場合に、紙葉類Sの搬送順にそれぞれの紙葉類Sのサンプリング区間を決定し、それぞれの紙葉類Sのサンプリング区間に基づいてリングバッファ72~74からそれぞれの紙葉類Sの特徴情報を抽出する。このため、隣り合って搬送される紙葉類S同士が近接していても、先行する紙葉類Sの画像データ領域101をもとにサンプリング区間を決定し、このサンプリング区間に基づいて、先行する紙葉類Sに対し厚さ検知センサ31で取得されリングバッファ72に記憶された紙葉類Sの特徴情報である厚さ情報、UVセンサモジュール41,42で取得されリングバッファ73に記憶された紙葉類Sの特徴情報である紫外線反射情報および磁気センサアレイ51で取得されリングバッファ74に記憶された紙葉類Sの特徴情報である磁気情報を抽出することができ、その後、後続の紙葉類Sの画像データ領域101をもとにサンプリング区間を決定し、このサンプリング区間に基づいて、後続の紙葉類Sに対し厚さ検知センサ31で取得されリングバッファ72に記憶された紙葉類Sの特徴情報である厚さ情報、UVセンサモジュール41,42で取得されリングバッファ73に記憶された紙葉類Sの特徴情報である紫外線反射情報および磁気センサアレイ51で取得されリングバッファ74に記憶された紙葉類Sの特徴情報である磁気情報を抽出することができる。このように隣り合って搬送される紙葉類S同士が近接していても外形を良好に検出できることになる。よって、隣り合って搬送される紙葉類S同士が近接していても紙葉類Sの良好な識別が可能となる。
【0088】
すなわち、紙幣検知センサを用いる従来の方式では、紙葉類S同士の隙間があっても紙葉類Sの斜行度合いで1枚分の紙葉類Sを区別することができず処理を中断しなければならない。また、紙幣検知センサ上に2つの穴があった場合、紙葉類Sの2次元画像データを小さいサイズに誤認識してしまい処理中断となるが、第2実施形態の方式によれば、紙葉類Sの2次元画像データを誤認識すること無く、処理を継続することが可能となる。
【0089】
特に、近接する紙葉類Sのいずれかが、紙葉類群と紙葉類群とを仕切るディビジョンカード(仕分けカード)である場合、ディビジョンカードの識別に失敗すると連続搬送される紙葉類群の区切りが認識できないため、紙葉類群と紙葉類群とを仕分けることができなくなってしまう。これに対して、第2実施形態によれば、ディビジョンカードが近接搬送された場合でも、認識可能となり、紙葉類群と紙葉類群とを正しく仕分けることが可能となる。なお、例えば、近接する紙葉類Sを識別する機能のオン/オフを切り替え可能としてもよい。この切り替えは、オペレータが手動により設定できるようにしてもよいし、ディビジョンカード運用モード時は、自動で近接する紙葉類Sを識別する機能をオンにするように制御することも可能である。
【0090】
以上の第2実施形態を以下の変形例1のように変更することが可能である。
【0091】
変形例1は、第2実施形態において、
図10(a)に示すように近接搬送されてきた紙葉類Sが一部重なっている場合の検知方法である。すなわち、制御部62は、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データが、一部が重なり合った複数枚の紙葉類Sの2次元画像データである場合に、それぞれの紙葉類Sのサンプリング区間を決定し、それぞれの紙葉類Sのサンプリング区間に基づいてリングバッファ72~74からそれぞれの紙葉類Sの特徴情報を抽出する。
【0092】
制御部62は、
図10(a)に示すように、画像用メモリ部71が記憶しているイメージセンサ21,22により取得された2次元画像データが、一部が重なり合った複数枚の紙葉類Sの画像データ領域101を含む場合に、
図10(b)に示すように、先行の紙葉類Sの画像データ領域101を含む2次元画像データを切り出し、
図10(c)に示すように、先行する紙葉類Sの外形検出において、まず、紙葉類Sの搬送方向下流側の辺部を紙葉類Sの外側から検出し、紙葉類Sの搬送方向に対する傾き(紙葉類Sの斜行角度)を算出する。そして、
図10(d)に示すように紙葉類Sの搬送方向上流側の辺部を検出する際に、紙葉類Sの内側から上記算出した斜行角度の辺部と一致する直線を検出する(紙葉類S同士が一部重なっていて搬送方向上流側の辺部が短かったり断続していても、一致割合が高い辺部を検出する)。
【0093】
図11(a)に示すように、紙葉類Sの進行方向左側および進行方向右側にある辺部の検出においては、紙葉類Sの搬送方向上流側の辺部と同様に、紙葉類Sの内側から進行方向左側および進行方向右側にある辺部が一致する直線を検出する(紙葉類S同士が一部重なっていて紙葉類Sの進行方向左右の辺部が短かったり断続していても、一致割合が高い辺部を検出する)。
【0094】
先行する紙葉類Sについて、全ての辺部から紙葉類Sの外形を検出する。この場合の先行紙葉類Sの搬送方向上流側の辺部、進行方向左側の辺部および進行方向右側の辺部の検出は、紙葉類Sの内側からデータを検索して検出するが、外側からデータを検索して検出しても良い。先行する紙葉類Sについて、全ての辺部から紙葉類Sの外形を検出すると、イメージセンサ21,22のサンプリング区間を決定して、
図11(b)に太実線で示すように、サンプリング区間の2次元画像データの画像データ領域101について、上記同様に、紙葉類Sの識別を行う。
【0095】
その後、
図11(c)に二点鎖線で示すように、処理済みの先行の紙葉類Sの2次元画像データの画像データ領域101をマスクした状態で、
図11(d)に示すように、後続の紙葉類Sの2次元画像データの画像データ領域101を切り出し、
図12(a)に示すように、後続の紙葉類Sの搬送方向下流側の辺部をこの紙葉類Sの外側から検出し、後続の紙葉類Sの搬送方向上流側の辺部および進行方向左右の辺部をこの紙葉類Sの内側から検出して、
図12(b)に示すように、後続の紙葉類Sの外形を検出する。このとき、例えば、先行紙葉類の後端y座標(搬送方向の最大値)と、この紙葉類の後端x座標と同じx座標の後続紙葉類の先端y座標(搬送方向の最小値)とを比べて、後続紙葉類の先端y座標が先行紙葉類の後端y座標より小さければ重なりが発生していることが判断できる。但し、先行の紙葉類Sの外形は確定しているので確定している部分の2次元画像データをマスクすると、後続の紙葉類Sの一部が欠ける状態となってしまう。搬送方向下流側の辺部が半分以上欠けると、この辺部は検出できず、後続の紙葉類Sは検出不可となる。なお、搬送方向左側の辺部および搬送方向右側の辺部から斜行角度を検出し、搬送方向下流側の辺部を検出することは可能である。搬送方向下流側の辺部が全部、先行の紙葉類Sに重なっていた場合は検出不可とする。後続の紙葉類Sの外形が検出できたら、後続の紙葉類Sについて、イメージセンサ21,22のサンプリング区間を決定して、上記同様に、識別を行う。
【0096】
ここで、後続の紙葉類Sについて以降の識別処理を適切に行うために、欠けた領域を判定基準データとして記憶された基準画像や画像メモリ部71に記憶されたデータで補完するようにしてもよい。ここでも、イメージセンサ21,22では、例えば、透過、紙葉類Sの一側面の反射、紙葉類Sの他側面の反射の3種類の画像を取得することが可能であり、紙葉類Sの一側面の反射画像または紙葉類Sの他側面の反射画像を用いることで、後続の紙葉類Sの外形が確定した後、画像判定用データを処理する際は、
図12(c)に示すように、欠けた領域105を基準画像または紙葉類Sの一側面あるいは他側面の反射画像から補完することで後続の紙葉類Sについて欠けていない画像データを作成し識別処理を行うことが可能である。制御部62が、このように後続の紙葉類Sの識別を行う場合に、先行の紙葉類Sが重なり合った部分を補完することにより、一部が重なり合った複数枚の紙葉類Sのそれぞれについて良好な識別が可能となる。
【0097】
また、後続の紙葉類Sの識別処理において、欠けた領域105が無い方の紙葉類Sの一側面の反射画像または紙葉類Sの他側面の反射画像を優先して判定するようにしてもよい。すなわち、イメージセンサ21,22が、搬送部12で搬送される紙葉類Sの一側面の2次元画像データおよびこの紙葉類Sの他側面の2次元画像データを取得可能であることから、制御部62は、後続の紙葉類Sの識別に用いるデータとして、この紙葉類Sの一側面の2次元画像データおよびこの紙葉類Sの他側面の2次元画像データのいずれかを優先して判定する。このため、後続の紙葉類Sの2次元画像データとして、先行の紙葉類Sとの重なりのない2次元画像データを用いることができる。よって、先行の紙葉類Sと一部重なりあった後続の紙葉類Sについて良好な識別が可能となる。これにより、複数の紙葉類Sの一部が重なって搬送された場合でも、各紙葉類Sを識別することが可能である。
【0098】
変形例1によれば、制御部62は、イメージセンサ21,22により取得された2次元画像データが、一部が重なり合った複数枚の紙葉類Sの2次元画像データである場合に、それぞれの紙葉類Sのサンプリング区間を決定し、それぞれの紙葉類Sのサンプリング区間に基づいてリングバッファ72~74からそれぞれの紙葉類Sの特徴情報を抽出するため、紙葉類Sが一部重なって搬送された場合でも、それぞれの紙葉類Sを識別可能になる。特に、ディビジョンカードを含む場合は、ディビジョンカードを確実に識別できるようになる点で有利である。
【符号の説明】
【0099】
11 紙葉類識別装置
12 搬送部
21 イメージセンサ(第1センサ)
22 イメージセンサ(第1センサ)
31 厚さ検知センサ(第2センサ)
41,42 UVセンサモジュール(第2センサ)
51 磁気センサアレイ(第2センサ)
62 制御部
71 画像用メモリ部
72~74 リングバッファ