(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】汚染土壌の改良と上載構造物の基礎を同時に施工する方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20221208BHJP
B09C 1/08 20060101ALI20221208BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20221208BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
E02D3/12 102
B09C1/08 ZAB
C09K17/10 H
C09K103:00
(21)【出願番号】P 2019013573
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】511232341
【氏名又は名称】サン・アンド・シイ・コンサルタント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000233262
【氏名又は名称】日立建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513288540
【氏名又は名称】株式会社大平建工
(73)【特許権者】
【識別番号】593010132
【氏名又は名称】株式会社テノックス九州
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岡林 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】田上 實
(72)【発明者】
【氏名】大木 則男
(72)【発明者】
【氏名】松尾 弘二
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-008365(JP,A)
【文献】特開2004-041942(JP,A)
【文献】特開2007-222694(JP,A)
【文献】特開2018-178672(JP,A)
【文献】特開2015-020924(JP,A)
【文献】特開2001-348571(JP,A)
【文献】特開2015-025137(JP,A)
【文献】特開2010-159347(JP,A)
【文献】特開2012-046704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
B09C 1/08
C09K 17/10
C09K 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌の改良と上載構造物を支持する基礎の構築とを同時に行う施工方法であって、
汚染土壌に対して、高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏を主成分として含
み、前記高炉スラグが35重量%~47.5重量%、前記ポルトランドセメントが35重量%~47.5重量%および前記石膏が5重量%~30重量%の範囲で配合されている土壌改良材を投入し
て混合攪拌し、その後、前記汚染土壌を囲むように防水壁を施工する土壌改良工程、および、
前記土壌改良材によって、地中に、杭状のソイルセメントコラムからなる基礎を構築する基礎構築工程
を含むことを特徴とする施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌の改良と上載構造物を支持する基礎の構築とを同時に行う施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば六価クロムなどの重金属に汚染された土壌を改良するための各種の方法が提案されている(例えば、特許文献1、2など)。一方で、腐植土や火山灰質粘性土などの軟弱な地盤を安定化させ、上載構造物を支持する基礎を構築するための地盤改良剤や工法が数多く開発されている(例えば、特許文献3-6)。具体的には、例えば、地盤に深く掘削されたボーリング孔内に、固化材(地盤改良材)を水で溶いたセメントミルク(スラリー)を注入し、地盤とセメントミルクとを攪拌混合して固化する深層混合処理工法が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-85716号公報
【文献】特開2000-120059号公報
【文献】特開昭58-194977号公報
【文献】特開平4-238908号公報
【文献】特開平11-217563号公報
【文献】特開2006-57050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、汚染土壌を含む土地に上載構造物を建設する場合、現状では、例えば特許文献1、2などのような方法で汚染土壌を改良(無害化)した後、上載構造物の基礎を設計して、改めてその基礎を構築している。このため、施工期間が長期化するとともに、施工コストを抑制することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、改良処理が必要とされる汚染土壌に上載構造物を支持する基礎を構築する場合において、施工期間を短縮でき、施工コストを抑制することが可能な施工方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、汚染土壌の改良と上載構造物を支持する基礎の構築とを同時に行う施工方法であって、
汚染土壌に対して、高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏を主成分として含む土壌改良材を投入し、混合攪拌する土壌改良工程、および、
前記土壌改良材によって、地中に、杭状のソイルセメントコラムからなる基礎を構築する基礎構築工程
を含むことを特徴としている。
【0007】
この施工方法では、前記土壌改良材は、高炉スラグが35重量%~47.5重量%、ポルトランドセメントが35重量%~47.5重量%および石膏が5重量%~30重量%配合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の施工方法によれば、改良処理が必要とされる汚染土壌に上載構造物を支持する基礎を構築する場合において、施工期間を短縮でき、施工コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の施工方法の一実施形態の概要を例示した断面図である。
【
図3】本発明の施工方法の別の実施形態の概要を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の施工方法の一実施形態について説明する。
【0011】
この施工方法は、汚染土壌の改良(無害化)と上載構造物を支持する基礎の構築とを同時に行うものである。そして、この施工方法は、
汚染土壌に対して、高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏を主成分として含む土壌改良材を投入し、混合攪拌する土壌改良工程、および、
土壌改良材によって、地中に、杭状のソイルセメントコラムからなる基礎を構築する基礎構築工程
を含む。
【0012】
ここで、上述した「同時に行う」とは、土壌改良工程の後に基礎を設計する工程などを経ることなく、土壌改良工程と基礎構築工程とが順次連続して実施される形態や、無害化工程と基礎構築工程とが実質的に同時に進行する形態などを言う。
【0013】
以下、本発明の施工方法の各工程について説明する。
【0014】
土壌改良工程では、汚染土壌に対して、高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏を主成分として含む土壌改良材を投入し、混合攪拌することで汚染土壌を改良する。
【0015】
この施工方法が対象とする土壌は、例えば腐植土(ピート、高有機質土など)、火山灰質粘性土(関東ローム、黒ぼく、赤ぼくなど)などの軟弱な地盤を例示することができる。
【0016】
この施工方法が対象とする土壌は、例えば六価クロム、カドミウム(Cd)など重金属に汚染されており、土壌改良処理(無害化処理)が必要とされているものである。また、この施工方法では、重金属のみならず、例えば、ダイオキシンなどの有機物からなる汚染物質を含んでいる汚染土壌も対象とすることができる。汚染されている土壌の範囲も特に限定されず、例えば、地盤の浅層(例えば深さ1~2m)でもよいし、地盤の深層(例えば3m以上)でもよい。
【0017】
高炉スラグは、溶融スラグを加圧水により急冷、粒状化(水砕)したもの(急冷高炉スラグ)であることが好ましい。高炉スラグの比表面積はブレーン値で3000~12000cm2/gの範囲を好ましく例示することができる。また、高炉スラグの配合量は、土壌改良材全体に対して35重量%~47.5重量%の範囲を好ましく例示することができる。
【0018】
ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントなどを例示することができる。ポルトランドセメントの配合量は、土壌改良材全体に対して35重量%~47.5重量%の範囲を好ましく例示することができる。
【0019】
石膏(硫酸カルシウム・2水和物(CaSO4・2H2O))は、例えば天然石膏でもよいし、原材料に何らかの処理を行った際に副産物として発生する石膏などであってもよい。また、無水石膏に、半水石膏、二水石膏、粘土鉱物などの不純物が混入したものでもよい。石膏の配合量は、土壌改良材全体に対して5重量%~30重量%の範囲を好ましく例示することができる。
【0020】
使用する土壌改良材の量や、土壌改良材に含まれる高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏の配合は、汚染土壌に含まれる汚染物質の種類や量に応じて、適宜設計することができる。
【0021】
土壌改良材は、高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏以外の添加物を含んでいてもよい。例えば、生石灰、消石灰、フライアッシュなどのポゾラン材、アルミナセメント、ジェットセメントなどの特殊な成分の強度増進材、硫酸ソーダなどのセメントの水和反応の刺激材などを例示することができる。
【0022】
汚染土壌への土壌改良材の添加形態は特に限定されないが、例えばセメントミルクのように、土壌改良材を適量の水で溶いたスラリーとして土壌に添加することができる。また、 地盤と土壌改良材との攪拌混合方法は特に限定されず、例えば、回転式の攪拌翼を利用する方法、地盤改良材を地盤中にジェット噴射する方法、バックホウなどを利用して攪拌する方法などを適宜採用することができる。さらに、土壌改良材の汚染土壌への添加回数は1回または、複数回(2回以上)でもよい。
【0023】
土壌改良工程では、汚染土壌中の六価クロムなどの重金属(汚染物質)が土壌改良材と反応し、汚染物質が無害のエトリンガイトに変化するため、汚染土壌を改良(無害化)することができる。
【0024】
基礎構築工程では、土壌改良材と土壌との混合物によって、地中に、杭状のソイルセメントコラムからなる基礎を構築する。
【0025】
土壌改良材は、高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏を主成分として含むため、上述したように土壌改良効果を発揮するとともに、この土壌改良材と土壌との混合物は、固化状態において、上載構造物を支持する基礎の構築するための十分な強度を有している。したがって、深層混合処理工法によって、地盤に深く掘削されたボーリング孔内に、例えば水で溶いた土壌改良材(スラリー)を注入し、攪拌混合することで固化させ、杭状のソイルセメントコラムを形成することができる。ソイルセメントコラムは、施工領域全体に形成することもできるし、支持する上載構造物を考慮して、所定の間隔で形成することもできる。
【0026】
このように、本発明の施工方法では、土壌改良材が、高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏を主成分として含むため、汚染土壌の改良と同時に上載構造物を支持するソイルセメントコラムを構築することができる。したがって、改良処理が必要とされる汚染土壌に上載構造物を支持する基礎を構築する場合において、施工期間を短縮でき、かつ、施工コストを抑制することができる。
【0027】
特に、高炉スラグの配合量が土壌改良材全体に対して35重量%~47.5重量%、ポルトランドセメントの配合量が土壌改良材全体に対して35重量%~47.5重量%の範囲であり、石膏の配合量が土壌改良材全体に対して5重量%~30重量%の範囲である場合は、良好な土壌改良効果とソイルセメントコラム(基礎)の強度を実現することができる。
【0028】
さらに、図面を用いて本発明の施工方法の一実施形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の施工方法の一実施形態の概要を例示した断面図であり、
図2は、
図1に示した実施形態の平面図である。
図1および
図2は、地上から1m程度の地層が六価クロムなどの重金属で汚染されている例を示している。
【0030】
図1、
図2に例示したように、地表面から約1mの深さまで重金属に汚染されたA層(汚染土壌)がある場合は、急冷高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏を主成分として含む土壌改良材(固化剤)をA層(汚染土壌)に投入し、バックホウなどを使用して混合攪拌して反応させる。この反応によって、汚染物質が無害の鉱物エトリンガイトに変化するため、汚染土壌を改良(無害化)することができる(土壌改良工程)。次に、例えば、汚染物質が地下水の移動により拡散するのを防ぐために、例えば、深層混合処理工法を用いて防水壁Bを汚染区域を囲むように施工する。さらに、同様の施工機械を使用した深層混合処理工法によって、土壌改良工程で使用した土壌改良剤によって上載構造物を支持することができる基礎として杭状のソイルセメントコラムCを地中に施工することができる(基礎構築工程)。
【0031】
図3は、本発明の施工方法の別の実施形態の概要を例示した断面図であり、
図4は、
図3に示した実施形態の平面図である。
図3および
図4は、地表面からかなりの深さまで重金属により土壌が汚染されている例を示している。
【0032】
この実施形態においても、例えば、深層混合処理工法を用いて防水壁Bを汚染区域を囲むように施工することができる。そして、急冷高炉スラグ、ポルトランドセメントおよび石膏を主成分として含む土壌改良材(固化剤)を汚染土壌に投入し、深層混合処理工法によって、汚染土壌を改良するとともに杭状のソイルセメントコラムCを地中に施工することができる(土壌改良工程、基礎構築工程)。
【0033】
本発明の施工方法は、以上の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、汚染土壌中に、ダイオキシンなどの有機物の汚染物質が多く含まれるような場合は、深層混合処理機を使用して最初に公知の吸着剤によってダイオキシンなどを吸着させる工程を含むことができる。