(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】鉄道模型用回路基板及び鉄道模型
(51)【国際特許分類】
A63H 19/20 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A63H19/20
(21)【出願番号】P 2018151938
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】513291827
【氏名又は名称】株式会社ポポンデッタ
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】上林 潤平
【審査官】神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-082726(JP,A)
【文献】特許第5745875(JP,B2)
【文献】実開昭57-017693(JP,U)
【文献】特開平08-182317(JP,A)
【文献】特開2015-050787(JP,A)
【文献】特開2009-071595(JP,A)
【文献】特開2009-004345(JP,A)
【文献】実開昭57-090197(JP,U)
【文献】iruchan,KATO DD54の前照灯回路の改良~常点灯対応,逆向き点灯防止~,craftな毎日,iruchan,2011年06月05日,インターネット<URL:https://iruchan.blog.ss-blog.jp/2011-06-05>,[令和4年6月14日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
H02M 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールから電源が供給される端子と、
前記端子からの電流を整流する整流回路と、
前記整流回路を経た電流が供給されるスナバ回路と、
前記整流回路を経た電流が
前記スナバ回路を介して供給される発光素子と
を備え、
前記スナバ回路は、
前記発光素子と並列に接続されたキャパシタ
、及び
、切替スイッチによって選択され
た一部が前記発光素子と直列に接続される
複数の抵抗から構成され、前記発光素子のちらつきを防止する
ことを特徴とする鉄道模型用回路基板。
【請求項2】
前記整流回路を経た電流が供給されるレギュレータを備え、
前記レギュレータは、前記スナバ回路を構成する抵抗
と並列して前記発光素子に電流を供給する
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道模型用回路基板。
【請求項3】
請求項1、または、請求項2記載の鉄道模型用回路基板を車両内の天井部に備え、
前記発光素子は、前記車両内を照明する
ことを特徴とする鉄道模型。
【請求項4】
請求項1、または、請求項2記載の鉄道模型用回路基板を台車に備え、
前記発光素子は、車両の前方、または、後方を照明する
ことを特徴とする鉄道模型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体内外の照明のちらつき(点滅)を防止するための鉄道模型用回路基板及びこの回路基板を用いた鉄道模型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車内照明の照度を変更できるようにした鉄道模型が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された鉄道模型は、照明(LED)への電流量をボリュームによって無段階に調節できるようにしている。この鉄道模型では、ボリュームを調節することによって、所望の照明の明るさを探すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ボリュームの調節は煩雑であり、該ボリューム調節によって、照明を所望の明るさにするのは容易ではない。また、複数の車両について、それぞれボリューム調節をしなければならないので、例えば16両編成の列車については、16個ものボリュームを全て等しい設定に調整しなければならず、極めて煩雑で困難である。
【0006】
また、鉄道模型においては、照明の電源は、該鉄道模型が走行する二本のレール(線路)を介して車輪から供給されているが、上記レール及び車輪の汚れや腐蝕に起因する接触不良により、上記照明がちらつく(点滅する)場合がある。特に、小型で軽量のNゲージでは、上記照明のちらつきが発生することが多い。
【0007】
なお、特許文献1に記載された鉄道模型には、スナバ回路は搭載されていないが、大きなレイアウトやトンネル、駅の部分などでは、レールの清掃は困難であるので、従来、スナバ回路(Snubber circuit)を用いて、ちらつきを防止することが提案されている。
【0008】
上記スナバ回路においては、該スナバ回路を構成するコンデンサ(キャパシタ)の容量と、抵抗の抵抗値とのバランスにより、照明の明るさ及びちらつきの状態が変わる。抵抗値を大きくした場合には電流が減り、照明は暗くなるがちらつきは少なくなる。これとは逆に、上記抵抗値を小さくすると電流が増え、照明は明るくなるがちらつきは多くなる。
【0009】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、容易な操作によって車体内外の照明のちらつき(点滅)を防止することができ、複数の車両について容易に設定を揃えることができる鉄道模型用回路基板及びこの回路基板を用いた鉄道模型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)に係る鉄道模型用回路基板は、以下の構成を有するものである。
〔構成1〕
レールから電源が供給される端子と、前記端子からの電流を整流する整流回路と、前記整流回路を経た電流が供給されるスナバ回路と、前記整流回路を経た電流が前記スナバ回路を介して供給される発光素子とを備え、前記スナバ回路は、前記発光素子と並列に接続されたキャパシタ、及び、切替スイッチによって選択された一部が前記発光素子と直列に接続される複数の抵抗から構成され、前記発光素子のちらつきを防止することを特徴とするものである。
【0011】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)に係る鉄道模型用回路基板は、以下の構成を有するものである。
〔構成2〕
上記構成1を有する鉄道模型用回路基板において、前記整流回路を経た電流が供給されるレギュレータを備え、前記レギュレータは、前記スナバ回路を構成する抵抗と並列して前記発光素子に電流を供給することを特徴とするものである。
【0012】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係る鉄道模型は、以下の構成を有するものである。
〔構成3〕
上記構成1、または、上記構成2を有する鉄道模型用回路基板を車両内の天井部に備え、前記発光素子は、前記車両内を照明することを特徴とするものである。
【0013】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)に係る鉄道模型は、以下の構成を有するものである。
〔構成4〕
構成1、または、構成2を有する鉄道模型用回路基板を台車に備え、前記発光素子は、車両の前方、または、後方を照明することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る鉄道模型用回路基板においては、上記構成1を有することにより、複数の抵抗のうちの一部が切替スイッチによって選択されて回路に接続されるので、切替スイッチの容易な操作によって車体内外の照明のちらつき(点滅)を防止することができ、複数の車両について容易に設定を揃えることができる。
【0015】
また、上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係る鉄道模型用回路基板においては、上記構成2を有することにより、抵抗値の異なる2個乃至5個の抵抗の1個が切替スイッチによって選択されるので、切替スイッチの容易な操作によって車体内外の照明のちらつき(点滅)を防止することができ、複数の車両について容易に設定を揃えることができる。
【0016】
また、上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係る鉄道模型においては、上記構成3を有することにより、切替スイッチの容易な操作によって車内灯のちらつき(点滅)を防止することができ、複数の車両について容易に設定を揃えることができる。
【0017】
また、上記第4の発明(請求項4記載の発明)に係る鉄道模型においては、上記構成4を有することにより、切替スイッチの容易な操作によって前照灯、または、尾灯のちらつき(点滅)を防止することができ、複数の車両について容易に設定を揃えることができる。
【0018】
すなわち、本発明は、容易な操作によって車体内外の照明のちらつき(点滅)を防止することができ、複数の車両について容易に設定を揃えることができる鉄道模型用回路基板及びこの回路基板を用いた鉄道模型を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る鉄道模型用回路基板を備えた鉄道模型の構成を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明に係る鉄道模型用回路基板を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る鉄道模型用回路基板及び鉄道模型の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
この実施の形態は、電気機関車又はディーゼル機関車等の機関車に引かれる客車の鉄道模型に本発明を適用したものであるが、本発明は、客車に限られず、あらゆる種類の車両の鉄道模型に適用することができる。
【0022】
図1は、本発明に係る鉄道模型用回路基板を備えた鉄道模型の構成を示す分解斜視図であり、本発明に係る鉄道模型は、この
図1に示すように、車輪2を備えた台車3と、この台車3に着脱可能に組み付けられ該台車3とともに車両1を構成する車体4等とから構成されている。上記台車3は長方形状の板体として構成あれ、上記車体4は、上記台車3側が開口した直方体状に形成されている。
【0023】
また、上記台車3及び車体4は、それぞれ樹脂又は金属を素材として成形されてなるものであり、該台車3又は車体4に一体形成された弾性変形可能な係止フック(係止爪)を他方側に形成された係止部に係止させることにより、または、ネジ止めにより、上記車体4が台車3に組み付けられるものである。
【0024】
また、上記車体4の天井部には、車両1の前後方向に延びる帯状の回路基板5が配設されている。この回路基板5には、
図2に示すように、レール(線路)9から電源が供給される端子10,11と、これらの端子10、11からの電流を整流する整流回路12と、レギュレータ13と、整流回路12を経た電流が供給され
図2中において一点鎖線で示すスナバ回路8、及び、整流回路12を経た電流が供給され車両1内を照らす室内灯となる複数の発光素子であるLED6がそれぞれ実装されている。
【0025】
なお、上記回路基板5上に実装された各電子素子は、リフロー方式により回路基板5に直接ハンダ付けされていることが好ましい。また、上記回路基板5は、可撓性を有するフレキシブル基板としてもよい。なお、回路基板5は、端子部分を挟んだり、端子部分を溝に差し込むなどの方式で支持されている。また、回路基板5は、接着剤や両面テープ等を用いた固着手段によって上記車体4の内面に固着してもよい。
【0026】
また、上記それぞれの端子10,11は、金属製の車輪2を介して金属製のレール9に導通される。このレール9から供給される電源により、各LED6への電力供給がなされる。
【0027】
なお、上記回路基板5は、台車3の上面または下面に配設してもよい。また、LED6は、車両1の前方を照明する前照灯、または、後方を照明する尾灯としてもよい。
【0028】
また、
図2は、本発明に係る鉄道模型用回路基板を示す回路図であり、本発明に係る鉄道模型用回路基板(回路基板5)は、この
図2に示すように、上記レール9から端子10、11に電源が供給されると、これらの端子10、11からの電流は、上記整流回路12に供給され、整流される。なお、上記整流回路12は、例えば、ブリッジダイオード等であるが、その他種々の整流回路であってもよい。そして、上記整流回路12を経た電流は、レギュレータ13を経て、スナバ回路8に供給される。このスナバ回路8は、複数の抵抗R1、R2・・・と、キャパシタC1、C2・・・から構成されている。このスナバ回路8は、車輪2とレール9との接触不安定により電源が断続するような場合にも、LED6に供給される電流を安定させるものである。
【0029】
また、上記複数の抵抗R1、R2・・・は、互いに抵抗値の異なる2個乃至5個の抵抗であって、レギュレータ13のVout端子とADJ端子との間に並列に接続されており、これらのうちの一部(1個)が切替スイッチ7によって選択されて回路に接続される。ただし、上記抵抗R1、R2・・・の総個数及び抵抗値や、切替スイッチ7によって選択される数は、それぞれ限定されるものではない。また、上記キャパシタC1、C2・・・は、レギュレータ13のVin端子とグランド(接地)との間に、複数が並列に接続されている。キャパシタC1、C2・・・の個数及び容量は、限定されない。なお、上記キャパシタC1、C2・・・は、レギュレータ13のADJ端子とグランド(接地)との間に複数を並列に接続してもよい。
【0030】
そして、上記複数のLED6は、レギュレータ13のADJ端子とグランドとの間に並列に接続され、整流回路12を経た電流が供給される。
【0031】
この回路基板5においては、上記切替スイッチ7の切替えにより、上記LED6の明るさとちらつきの状態を切替えることができる。なお、上記切替スイッチ7は、シンプルなスライド式であり、容易に切替え操作ができる。この切替スイッチ7による2通り乃至5通りの選択式の容易な切替え操作により、上記2通り乃至5通りの調整が可能となる。なお、上記2通り乃至5通りの抵抗値及びキャパシタの容量は、種々の鉄道模型における実験を通じて最適な抵抗・容量を定めることができる。なお、上記レギュレータ13が設けられていることにより、車速が変化しても、LED6の照度は、切替スイッチ7により設定した照度に保持される。
【0032】
以上のように、本発明に係る鉄道模型用回路基板及びこの回路基板を用いた鉄道模型においては、上記LED6の明るさとちらつきとが最適となる抵抗値に容易に切替えることができ、複数の車両についてそれぞれ切替操作をすれば、容易に各車両の照明を等しい設定にすることができる。例えば16両編成の列車についても、16個の切替スイッチ7を同じポジションに切替えればよく、従来の鉄道模型に比べて操作は極めて容易なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、車体内外の照明のちらつき(点滅)を防止するための鉄道模型用回路基板及びこの回路基板を用いた鉄道模型に適用される。
【符号の説明】
【0034】
1 車両
2 車輪
3 台車
4 車体
5 回路基板
6 LED
7 切替スイッチ
8 スナバ回路
9 レール
10 端子
11 端子