(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20221208BHJP
C09D 123/26 20060101ALI20221208BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221208BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20221208BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D123/26
C09D5/00 D
C09D7/20
(21)【出願番号】P 2019141524
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】西田 英夫
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-311038(JP,A)
【文献】特開2001-181574(JP,A)
【文献】特開2012-219101(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131104(WO,A1)
【文献】特開平01-004661(JP,A)
【文献】国際公開第2018/035712(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂及びポリエステル変性エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種の変性エポキシ樹脂と、アクリル変性ポリオレフィン樹脂及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも一種の変性ポリオレフィン樹脂と、極性溶剤と、非極性溶剤とを含み、
前記極性溶剤の含有量が、変性エポキシ樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂の合計量に対して45~230質量%であり、
更に、酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも一種の環状炭化水素ケトン化合物を含むことを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
前記酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン
及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも一種の環状炭化水素ケトン化合物を、プライマー組成物に対して30~90質量%の割合で含む請求項1記載のプライマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上塗り塗膜を形成するためのプライマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂成型品や金属成型品等の被塗布物に塗料を塗布する前に、塗膜の付着性、密着性を向上させるため、被塗布物の表面にプライマーが塗布される。液体のプライマー組成物に関し、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂に対する密着性が高いものとして、アクリル変性塩素化ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂用組成物がある(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-309161号公報
【文献】特許第4225318号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、特許文献2に記載のポリオレフィン系組成物は、その用途に適合して非極性で結晶性のポリオレフィン樹脂に対する密着性は高い。しかし、ポリオレフィン樹脂に専用のコーティング組成物であるが故に、極性がある他の樹脂や金属成型品に対する密着性は十分でなかった。ポリオレフィン系組成物を塗布後に加熱をすれば、極性がある樹脂や金属成型品であってもある程度の密着性を得ることができるが、加熱をするための時間やエネルギー、設備のコストが嵩むし、そもそも塗料を塗布する現場においては、加熱設備を設けることが困難な場合もあった。極性がある他の樹脂や金属成型品に対する密着性が高いプライマー組成物としてエポキシ系組成物があるが、エポキシ系組成物は、ポリオレフィン樹脂に対する密着性が低い。このように従来のプライマー組成物は、被塗布物の種々の材質に対応して複数の組成物のものが用意されていた。
一つのプライマー組成物で、アルミニウム成形品のような極性の被塗布物や、ポリプロピレン成形品のような非極性の被塗布物にと広範囲に対応できるものがあれば、複数種類のプライマー組成物を用意する必要がなくなり、利便性が向上する。しかしながら、ポリレフィン系組成物と、エポキシ系組成物とを単に混合してなるプライマー組成物は、相溶性が良好でなかった。
【0005】
そこで本発明は、常温で極性の被塗布物及び非極性の被塗布物の両方に対して高い密着性を有するプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、プライマー組成物、なかでもポリレフィン系組成物と、エポキシ系組成物との相溶性を高めたプライマー組成物の研究を鋭意進めた結果、アクリル変性エポキシ樹脂と、アクリル変性ポリオレフィン樹脂と、極性溶剤と、非極性溶剤とを含む組成物であって、更に酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも一種の環状炭化水素ケトン化合物を少なくとも含むものが、常温で極性の被塗布物及び非極性の被塗布物の両方に対して高い密着性を有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
上記知見に基づく本発明のプライマー組成物は、アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂及びポリエステル変性エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種の変性エポキシ樹脂と、アクリル変性ポリオレフィン樹脂及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも一種の変性ポリオレフィン樹脂と、極性溶剤と、非極性溶剤とを含み、
前記極性溶剤の含有量が、変性エポキシ樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂の合計量に対して45~230質量%であり、
更に、酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも一種の環状炭化水素ケトン化合物を少なくとも含むことを特徴とする。
【0008】
本発明のプライマー組成物においては、上記環状炭化水素ケトン化合物の配合割合は、プライマー組成物に対して30~90質量%とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極性の被塗布物及び非極性の被塗布物の両方に対して高い密着性を有するプライマー組成物を提供することができ、ひいては種々の被塗布物に対して複数種類のプライマー組成物を用意する必要がなくなり、利便性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のプライマー組成物を、より具体的に説明する。
本発明のプライマー組成物は、アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂及びポリエステル変性エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種の変性エポキシ樹脂と、アクリル変性ポリオレフィン樹脂及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも一種の変性ポリオレフィン樹脂と、極性溶剤と、非極性溶剤とを含み、更に、酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも一種の環状炭化水素ケトン化合物を含む。
【0011】
一般に、エポキシ樹脂を含むプライマー組成物は、アルミニウム成形品のような極性を有する被塗布物に対して密着性が高い。しかし、ポリオレフィン樹脂成型品のような非極性の被塗布物に対して密着性が低い。かかるポリオレフィン樹脂成型品のような非極性の被塗布物に対しては、側鎖に官能基を有するポリオレフィン樹脂を含むプライマー組成物が、密着性が高い。なかでも、アクリル変性ポリオレフィン樹脂は、密着性に優れている。
しかし、エポキシ樹脂とアクリル変性ポリオレフィン樹脂とを含む組成物は、相溶性が悪い。したがって、プライマー組成物の用途には、相溶性を高めた組成が肝要である。
【0012】
相溶性を高めるために、本発明は、エポキシ樹脂に、アクリル変性ポリオレフィン樹脂と同様又は異なる官能基を有する変性エポキシ樹脂を用いるとともに、適切な溶剤を選択する。本発明者の知見により、アクリル変性エポキシ樹脂の溶剤に用いられる極性溶剤と、アクリル変性ポリオレフィン樹脂の溶剤に用いられる非極性溶剤とを含み、更に、酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも一種の環状炭化水素ケトン化合物を含有する組成により、相溶性が高く、プライマー組成物として実用に供することができる。
【0013】
本発明のプライマー組成物の成分について説明する。
[変性エポキシ樹脂]
変性エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂に、変性剤を用いて高分子量化、高機能化したものである。アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂及びポリエステル変性エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種の変性エポキシ樹脂を用いることができる。後述する変性ポリオレフィン樹脂にアクリル変性ポリオレフィン樹脂を用いる場合には、変性エポキシ樹脂に、アクリル変性エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
なお、アクリル変性エポキシ樹脂の市販品としては、モデピクス301、モデピクス302、モデピクス303、モデピクス401、KA-1828、KA-1550(以上、荒川化学株式会社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明のプライマー組成物中のアクリル変性エポキシ樹脂の含有量は、変性エポキシ樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂の合計量に対して25~70質量%とすることが好ましい。
【0016】
[変性ポリオレフィン樹脂]
本発明における変性ポリオレフィン樹脂は、アクリル変性ポリオレフィン樹脂及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも一種の変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。アクリル変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィンに(メタ)アクリル酸系モノマーがグラフト重合された樹脂である。好ましくは、酸変性ポリオレフィンに、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させた後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することにより得られるものである。
酸変性ポリオレフィンは限定的ではないが、ポリプロピレン及びプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフト共重合することにより得られるものが好ましい。
【0017】
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを1種又は数種用いることができる。これらのα-オレフィンの中では、エチレン、1-ブテンが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のプロピレン成分とα-オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0018】
α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸、無水イタコン酸がより好ましい。グラフト共重合する量は、0.1~10重量%が好ましく、1~5重量%がより好ましい。
【0019】
ポリプロピレン又はプロピレン-α-オレフィン共重合体にα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物をグラフト共重合する方法としては、溶液法や溶融法などの公知の方法が挙げられる。
本発明で用いる酸変性ポリオレフィンは、更に塩素化されていてもよい。即ち、酸変性塩素化ポリオレフィンとして用いてもよい。
【0020】
本発明では、アクリル変性ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィン(酸変性塩素化ポリオレフィンの概念も含む。以下同じ。)に、酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させた後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することにより得る。
【0021】
酸変性部分と反応する官能基を有する不飽和結合含有化合物を反応させることにより、酸変性ポリオレフィンに二重結合を導入し、それにより後続の(メタ)アクリル酸系モノマーのグラフト共重合を容易に進行させることができる。本発明では、不飽和結合含有化合物としては、官能基として水酸基を含有する不飽和結合含有化合物及びエポキシ基を含有する不飽和結合含有化合物が好ましい。
【0022】
本発明では、水酸基を含有する不飽和結合含有化合物としては、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等を用いることが好ましい。また、エポキシ基を含有する不飽和結合含有化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を用いることが好ましい。これらの不飽和結合含有化合物は、酸変性ポリオレフィンに対して10~90重量%程度用いることが好ましい。
【0023】
なお、不飽和結合含有化合物を反応させる際は、酸変性ポリオレフィンの良溶媒である反応溶媒としては特に限定されず、例えば、後述の(メタ)アクリル酸系モノマーを、不飽和結合含有化合物を反応させる際の反応溶媒として好適に使用できる。この場合、不飽和結合含有化合物により酸変性ポリオレフィンに二重結合が導入された後は、反応溶媒として用いた(メタ)アクリル酸系モノマーを酸変性ポリオレフィンにグラフト共重合させることができるため、工程を簡略化することができる。反応溶媒として用いる(メタ)アクリル酸系モノマーとしてはメタクリル酸n-ブチルなどが好ましい。
【0024】
不飽和結合含有化合物を反応させて酸変性ポリオレフィンに二重結合を導入した後は、(メタ)アクリル酸系モノマーのグラフト共重合を行うことにより、酸変性ポリオレフィンにアクリル変性部分(極性基部分)を導入する。
【0025】
(メタ)アクリル酸系モノマーのグラフト共重合の方法は、二重結合が導入された酸変性ポリオレフィンを融点以上に加熱させて重合させる方法、又は有機溶媒に溶解させて反応させる重合のいずれでもよく、前述のα,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物から選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合させる反応の場合と同様の方法及び装置で行うことができる。
【0026】
(メタ)アクリル酸系モノマーのグラフト共重合においては、グラフト共重合された状態において、酸変性ポリオレフィンと(メタ)アクリル酸系モノマーの重量比が50:50~10:90となるようにするのが好ましい。即ち、(メタ)アクリル酸系モノマーを50~90重量%グラフト共重合するのが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーが50重量%未満では、非水分散液の調製が困難となるおそれがあり、90重量%を超えるとポリオレフィン基材に対する接着性が低下する傾向がある。
【0027】
グラフト共重合は、例えば、反応液の温度を維持し、(メタ)アクリル酸系モノマーとラジカル発生剤の混合物を、二重結合が導入された酸変性ポリオレフィン溶液中に滴下させて行うことができる。
【0028】
グラフト共重合させる(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸系モノマーは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0029】
ラジカル発生剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2-アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物を使用できる。
【0030】
本発明のプライマー組成物中のアクリル変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、変性エポキシ樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂の合計量に対して30~70質量%とすることが好ましい。
【0031】
[極性溶剤}
溶剤は、少なくとも1種の極性溶剤と、少なくとも1種の非極性溶剤とを含む。
極性溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール;アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、ペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン、酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン等のケトン系溶剤;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ペンチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤等を挙げることができる。
【0032】
本発明のプライマー組成物中の極性溶剤の含有量は、変性エポキシ樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂の合計量に対して45~230質量%とすることが好ましい。
【0033】
[非極性溶剤}
非極性溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ミネラルスピリット、ナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ジメチルグリコール及びジメチルジグリコール等のジアルキルグリコールエーテル系溶媒等を挙げることができる。これらは単独でも複数の組み合わせとしても利用することができる。
【0034】
本発明のプライマー組成物中の非極性溶剤の含有量は、変性エポキシ樹脂及び変性ポリオレフィン樹脂の合計量に対して165~1130質量%程度とすることが好ましい。
【0035】
上述した極性溶剤及び非極性溶剤に加えて、溶剤として、酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン及びから選択される少なくとも一種の環状炭化水素ケトン化合物を含む。酢酸シクロヘキシル、メチルシクロヘキサノン、フェンコン、シクロヘプタノン、3,5-ジメチルピペリシン及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも一種の環状炭化水素ケトン化合物を含むことにより、本発明のプライマー組成物の組成において、高い相溶性が得られる。
環状炭化水素ケトン化合物は、好ましくは30~90質量%含む。
【0036】
本発明は、溶剤として、上述した極性溶剤、非極性溶媒及び環状炭化水素ケトン化合物以外の溶剤の少なくとも一種を、更に含むことができる。
【0037】
本発明のプライマー組成物は、上述した樹脂及び溶剤の他に、必要に応じて、酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛などの遷移金属化合物、カーボンブラック等の顔料、揺変剤、増粘剤、ロジン樹脂・テルペン樹脂などの粘着付与剤、消泡剤、表面調整剤、沈降防止剤、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、光安定剤、顔料分散剤、帯電防止剤などの塗料用添加剤を、本発明のプライマー組成物の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0038】
本発明のプライマー組成物は、上述した各成分を所定量で混合することにより調製することができる。また、樹脂及び溶剤の一部を含む主剤と、前記溶剤の残部を含む溶剤成分とを用意して、この主剤と溶剤成分とを混合することによって調製することもできる。そうすれば主剤を溶剤成分で希釈することによりプライマー組成物を調製することができるので、原料の保管がし易く、また、調製時の作業性がよい。
【実施例】
【0039】
以下に実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
表1に示す成分組成を含むプライマー組成物を調製した。表1に示された各比較例及び各実施例における各成分の数値は質量%で示される配合割合である。また、表1のアクリル変性エポキシ樹脂の欄及びアクリル変性ポリオレフィン樹脂の欄において、下段の数値は、アクリル変性エポキシ樹脂及びアクリル変性ポリオレフィン樹脂の合計量に対するアクリル変性エポキシ樹脂又はアクリル変性ポリオレフィン樹脂の質量百分率の値である。
【0040】
【0041】
表1中、アクリル変性エポキシ樹脂は荒川化学工業株式会社製KA-1550である。アクリル変性ポリオレフィン樹脂は、東洋紡株式会社製ハードレンタイプ:NP-3002である。
極性溶剤及びその内訳は、次のとおりである。
(*1)…2-ブタノール:3.6質量%
(*2)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:50質量%、2-ブタノール:1.92質量%
(*3)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:0.72質量%、2-ブタノール:1.92質量%、メトキシ2プロパノール:80質量%
(*4)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:2.1質量%、2-ブタノール:1.0質量%
(*5)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:1.3質量%、イソプロピルアルコール:2.1質量%
(*6)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:0.675質量%、2-ブタノール:1.2質量%
(*7)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:0.72質量%、2-ブタノール:1.92質量%
(*8)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:0.72質量%、2-ブタノール:1.92質量%
(*9)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:0.72質量%、2-ブタノール:1.92質量%
(*10)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:1.2質量%、2-ブタノール:1.6質量%
(*11)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:1.2質量%、2-ブタノール:1.6質量%
(*12)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:1.2質量%、2-ブタノール:1.6質量%
(*13)…プロピレングリコールモノメチルエーテル:7質量%、2-ブタノール:4質量%
非極性溶剤及びその内訳は次のとおりである。
(*14)…酢酸n-プロピル:8.4質量%、メチルシクロヘキサン:12質量%
(*15)…メトキシプロピルアセテート:1.8質量%、酢酸n-プロピル:33.4質量%、シクロヘキサノン:0.48質量%、メチルシクロヘキサン:6.4質量%
(*16)…メトキシプロピルアセテート:0.72質量%、酢酸n-プロピル:4.96質量%、シクロヘキサノン:0.48質量%、メチルシクロヘキサン:6.4質量%
(*17)…メトキシプロピルアセテート:2.0質量%、酢酸n-プロピル:3.8質量%、シクロヘキサノン:1.4質量%、メチルシクロヘキサン:3.4質量%
(*18)…メトキシプロピルアセテート:1.3質量%、酢酸n-プロピル:0.9質量%、酢酸n-ブチル:20質量%
(*19)…メトキシプロピルアセテート:0.675質量%、酢酸n-プロピル:3.25質量%、シクロヘキサノン:0.45質量%、メチルシクロヘキサン:4質量%
(*20)…メトキシプロピルアセテート:0.72質量%、酢酸n-プロピル:4.96質量%、シクロヘキサノン:0.48質量%、メチルシクロヘキサン:6.4質量%
(*21)…メトキシプロピルアセテート:0.72質量%、酢酸n-プロピル:4.96質量%、シクロヘキサノン:0.48質量%、メチルシクロヘキサン:6.4質量%
(*22)…メトキシプロピルアセテート:0.72質量%、酢酸n-プロピル:4.96質量%、シクロヘキサノン:0.48質量%、メチルシクロヘキサン:6.4質量%
(*23)…メトキシプロピルアセテート:1.2質量%、酢酸n-プロピル:4.5質量%、シクロヘキサノン:0.8質量%、メチルシクロヘキサン:5.3質量%
(*24)…メトキシプロピルアセテート:1.2質量%、酢酸n-プロピル:4.5質量%、シクロヘキサノン:0.8質量%、メチルシクロヘキサン:5.3質量%
(*25)…メトキシプロピルアセテート:1.2質量%、酢酸n-プロピル:4.5質量%、シクロヘキサノン:0.8質量%、メチルシクロヘキサン:5.3質量%
(*26)…メトキシプロピルアセテート:7質量%、酢酸n-プロピル:29.7質量%、シクロヘキサノン:0.5質量%、メチルシクロヘキサン:17質量%
【0042】
各実施例及び各比較例について、ポリプロピレンへの密着性、アルミニウムへの密着性を調べた。この密着性試験は、碁盤目試験方法(クロスカット試験)「JIS K8000 8.5.2碁盤目試験」に基づき、1mm幅の碁盤目を塗膜上にカッターで切り、セロハンテープを貼った後、セロハンテープを剥がした際、塗膜が基盤に残る個数を数えて、評価した。剥離がない場合は、100/100と記載し、全て剥離した場合は、0/100と記載した。
【0043】
表1から、プライマー組成物中にアクリル変性エポキシ樹脂を含んでいない比較例1は、アルミニウムへの密着性が悪かった。また、環状炭化水素ケトン化合物を含んでいない比較例2、3は、ポリプロピレンへの密着性が悪かった。また、これに対して、プライマー組成物中にアクリル変性エポキシ樹脂及びアクリル変性ポリオレフィン樹脂を含み、かつ、酢酸シクロヘキシル又はフェンコンを含む実施例1~10は、アルミニウム及びポリプロピレンの両方に対して優れた密着性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明を利用することで、塗料の塗装性を向上させることができる。