(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置およびこれを用いた測定方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20221208BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20221208BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20221208BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20221208BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221208BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/6837 Z
C12Q1/70
G01N33/543 521
G01N33/543 501A
G01N33/53 M
G01N33/569 L
(21)【出願番号】P 2020158772
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0034017
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519249701
【氏名又は名称】プレシジョンバイオセンサー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 智 慧
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲ヒョン▼ 貞
(72)【発明者】
【氏名】黄 奎 淵
(72)【発明者】
【氏名】朴 鍾 勉
(72)【発明者】
【氏名】金 漢 信
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-078358(JP,A)
【文献】特開2015-014618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0322212(US,A1)
【文献】国際公開第2014/084260(WO,A1)
【文献】特表2014-531206(JP,A)
【文献】特開2018-078806(JP,A)
【文献】特開2009-240207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/00
G01N 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一な現場の同一なテスト試料に対して少なくとも2種以上のノロウイルス遺伝子群を同時に独立して検出可能である一つのノロウイルス側方流動分析装置において、
一つのノロウイルス側方流動分析装置は、上部および下部ケースの間に配置され、かつ、一つの多孔性膜に対して幅方向に平行に隔離配置される、第1ノロウイルス遺伝子群を検出するための第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと、第2ノロウイルス遺伝子群を検出するための第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールとを含み、
前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールはそれぞれ、前記多孔性膜上に幅方向に平行に配置され、約1μsより長い蛍光放出寿命を有する蛍光標識が結合された第1および第2固相検出ラインに対して励起光を照射して少なくとも2種以上のノロウイルス遺伝子群を同時に独立して検出測定し、
前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールとは、サンプル試料が投入されるサンプルパッドと、前記サンプルパッドに投入されたサンプル試料に存在する第1および第2ノロウイルス遺伝子群に結合されるプローブを有する吸着パッドと、前記吸着パッドと流体連通して前記第1および第2ノロウイルス遺伝子群と前記プローブの結合による第1および第2ノロウイルス遺伝子群複合体をそれぞれ固定する検出ラインと矯正ラインを有する前記多孔性膜を含み、
前記吸着パッドは前記第1および第2ノロウイルス遺伝子群複合体を形成する結合物質が標識された捕獲抗体を提供する第1吸着パッドと、前記第1および第2ノロウイルス遺伝子群複合体を形成する蛍光
物質で標識された検出抗体、前記第1および第2ノロウイルス遺伝子群に非特異的な蛍光物質
で標識された抗体を提供する第2吸着パッドを含
み、
前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールの間を離隔遮断するための離隔空間を有する遮断モジュールをさらに含む、時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置。
【請求項2】
前記遮断モジュールは、前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールを収容する、請求項1に記載のノロウイルス側方流動分析装置。
【請求項3】
前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールは、前記サンプルパッドをそれぞれ独立して備えるかまたは前記サンプルパッドを一つを共有して、前記サンプルパッド上の前記テスト試料から前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールそれぞれの前記吸着パッドと前記多孔性膜に移動させる、請求項1に記載の時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置。
【請求項4】
前記結合物質はビオチンで前
記捕獲抗体に標識されて前記検出ラインに塗布されたストレプトアビジンと特異結合し、前記蛍光物質はユウロピウムである、請求項3に記載の時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置。
【請求項5】
前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールは、第3ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと交替可能であり、
前記第1ノロウイルス遺伝子群はGI遺伝子群であり、前記第2ノロウイルス遺伝子群はGII遺伝子群であり、第3ノロウイルス遺伝子群はGIV遺伝子群である、請求項1に記載の時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置。
【請求項6】
請求項1~5のうちのいずれか一項による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置を用いたノロウイルス検出測定方法において、
GI、GII遺伝子群を含むサンプル試料を準備する段階と、前記準備されたサンプル試料を側方流動分析装置のサンプルパッドに注入する段階と、
前記サンプルパッドに隣接した吸着パッドに移動させながら蛍光物質が標識された第1ノロウイルス遺伝子群複合体と、蛍光物質が標識された第2ノロウイルス遺伝子群複合体を形成して前記吸着パッドに流体連動する多孔性膜に毛細管移動させる段階と、
前記第1
ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと
前記第2
ノロウイルス遺伝子群分析モジュール全ての検出ラインと矯正ラインに時間分解蛍光検査機を用いて光照射する段階と、
前記検出ラインと矯正ラインとの第1ノロウイルス遺伝子群に対するそれぞれの蛍光信号を比較してサンプル試料の第1ノロウイルス遺伝子群を検出し、かつ、前記検出ラインと矯正ラインとの第2ノロウイルス遺伝子群に対するそれぞれの蛍光信号を比較してサンプル試料の第2ノロウイルス遺伝子群を検出する段階であって、サンプル試料の第1ノロウイルス遺伝子群と第2ノロウイルス遺伝子群とをそれぞれを独立して検出する段階を含む、ノロウイルス
検出測定方法。
【請求項7】
前記抗体は蛍光標識と結合物質にそれぞれ結合し、前記蛍光標識はユウロピウムであり、前記結合物質はビオチンを使用し、前記検出ラインには前記結合物質と特異結合するストレプトアビジンが固定された、請求項6に記載のノロウイルス
検出測定方法。
【請求項8】
GI遺伝子群ノロウイルスの抗原濃度が50pg/ml以上である場合と、GII遺伝子群ノロウイルスの抗原濃度が10pg/ml以上である場合に対して、GI遺伝子群ノロウイルスとGII遺伝子群ノロウイルスの検出が可能である、請求項6に記載のノロウイルス
検出測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置およびこれを用いた測定方法に関するものであって、より詳しくは、少なくとも2種以上のノロウイルス遺伝子群GI、GII、GIVを分離して独立に時間分解蛍光分析を用いて検出測定することによって微量の少なくとも2種以上のノロウイルス遺伝子群GI、GII、GIVに対しても高敏感度に分析することができる時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置およびこれを用いた測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノロウイルス(Norovirus)は食品および水質媒介病原体であって、飲食物や水などを通じて摂取するようになる場合、人に感染性胃腸炎を起こす腸管系ウイルス(Enteric virus)の一種類である。
【0003】
図1に示したように、ノロウイルスはRNAウイルスで7つ(GI~GVII)の遺伝子群に分類され、これらのうち、人体感染は主に遺伝子群GIの8個遺伝子型、GIIの17個遺伝子型によると知られている。
【0004】
ノロウイルスは粒子100個程度のみ摂取してもヒトに下痢、腹痛、嘔吐などの症状を誘発することがあり、前記症状によって排出される嘔吐物や排泄物などに約1億個のノロウイルス粒子が含まれていて、強力な感染力および速い伝染速度を有している。よって、食品や水質に存在することがある微量のノロウイルスを高敏感度に検出および予防することができる技術がさらに要求されている。
【0005】
一般的なノロウイルス検出方法として電子顕微鏡、EIA、ELISA方法が使用されてきたが、最も一般的な検出方法としてはRT-PCR、NASBA、サザンブロット(Southern blot)などが広範囲に用いられている。
【0006】
電子顕微鏡を使用して確認する場合、約106particles/mL、EIAとELISAの場合、約105-106particles/mLまで検出が可能である。これに反し、RT-PCRを使用して検出する場合、約20-100molecules/reactionのLOD(limit of detection)効率を有し、これらは多様で複雑な試料前処理技術が要求され、検出まで多くの時間と費用がかかるという問題点があり、高価の特殊装備使用でセンサー装置を小型化しにくく現場でリアルタイムに使用しにくい。
【0007】
また、食品内に汚染されたノロウイルス検出時、低濃度に存在するノロウイルスを検出するのに限界があった。
【0008】
また、ノロウイルスの迅速診断キット(rapid kit)で抗原-抗体反応を用いた免疫検査方式があるが、ゴールドを信号発現物質として使用して肉眼検査を行う方式である。
【0009】
このようなゴールド基盤の迅速診断キットは敏感度に限界があって、
図2に示されているように、ゴールド基盤の迅速診断キットを用いてノロウイルスを検出すれば、GIに対して検出ラインがG1遺伝子群抗原濃度が1000pg/mL程度になるように検出されなく、GIIに対しては検出ラインがGII遺伝子群抗原濃度が1000pg/mLになった場合に信号が発現されるなど人体感染を主に起こす遺伝子群GIとGIIに対してさえも低濃度に存在する場合には検出できないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題点を解決しようと案出されたものであって、本発明の目的は、食品や水質に存在することがあるノロウイルスGIに対して0.05ng/mL濃度で、GIIに対しては0.01ng/mL濃度で存在しても高敏感度を有して現場で急速に検出することができる時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による少なくとも2種以上のノロウイルス遺伝子群を同時に独立して検出測定する一つのノロウイルス側方流動分析装置は、第1ノロウイルス遺伝子群を検出するための第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュール;および第2ノロウイルス遺伝子群を検出するための第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールを含み、前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュールと第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュールはそれぞれ互いに異なる多孔性膜上に約1μsより長い蛍光放出寿命を有する蛍光標識が結合された第1および第2固相検出ラインに対して光を照射し所定時間以後蛍光信号を測定して少なくとも2種以上のノロウイルス遺伝子群を同時に独立して検出測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置およびその製造方法によれば、食品や水質に存在することがある少量のノロウイルスに対しても高敏感度を有して現場で急速に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ノロウイルスの多様な遺伝子群を示す分類表である。
【
図2】従来ゴールド基盤の迅速診断キットを用いたノロウイルス遺伝子群GI、GII抗原濃度による検出有無写真である。
【
図3a】本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置の概略的な概念図である。
【
図3b】本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置の分析原理を示す図である。
【
図3c】本発明の変形実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置の概略的な概念図である。
【
図4a】それぞれ本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置の遮断モジュールを示す図である。
【
図4b】それぞれ本発明の変形実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置の遮断モジュールを示す図である。
【
図5】ノロウイルス遺伝子群GI、GII分離単独測定時と、ノロウイルス遺伝子群GI、GII混合測定時の敏感度の比較グラフである。
【
図6】本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置検査順序を説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置のノロウイルス遺伝子群GI、GII検出敏感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置およびその製造方法について図面を参照して詳しく説明する。
【0015】
本発明の一実施形態は、本発明を説明するために提供され、本発明を限定しようとするのではない。事実上、当該技術分野の通常の技術者には、本発明の思想や範囲から逸脱しないながら発明に多様な修正と変更を行うことができるという点が明白なはずである。
【0016】
本明細書において、“ノロウイルス”は、例えば人のような動物を感染させるノロウイルスの任意の菌株、血清型または分離菌であり得る。ノロウイルスは、遺伝子型GI、GIIおよびGIVまたは任意の他の遺伝子型(例えば、GIIIまたはGV)のような人間宿主で一般に発見される遺伝子型であり得る。
【0017】
また、“テスト試料(test sample)”は、ノロウイルスを含有することの疑われる物質をいう。テスト試料は、供給源から得られたそのまままたは試料の特性をろ過、沈殿、希釈、蒸留、濃縮、干渉成分の不活性化および試薬の添加などによって改質する前処理後に使用することができる。
【0018】
図3a~
図4bを参照して、本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置について説明する。
【0019】
図3a~
図3cは本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置の概略的な概念図、その分析原理を示す図、および本発明の変形実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置の概略的な概念図であり、
図4aおよび
図4bはそれぞれ本発明の一実施形態と変形実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置の遮断モジュールを示す図である。
【0020】
本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置1は、テスト試料に存在するノロウイルスの存在を検出するための多孔性膜基盤デバイスで励起された蛍光標識によって生成された信号を時間分解蛍光を使用してノロウイルスを検出する。
【0021】
本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置1は、パルス発光ダイオード(LED)およびイメージングカメラを含む蛍光検査機50によって光を照射して蛍光標識を刺激し蛍光を検出する。
【0022】
図3a~
図4bに示されているように、本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置1は、第1ノロウイルス遺伝子群(GI)を検出するための第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10と、第2ノロウイルス遺伝子群(GII)を検出するための第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール100をそれぞれ備え、前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10と前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール100の間を分離するための離隔空間40を有する遮断モジュール200を含むことができる。
【0023】
図4aに示されているように、前記遮断モジュール200は前記離隔空間40を置いて、前記第1および第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10、100を収容するための上部および下部ケース201、203を含むことができ、前記離隔空間40に前記第1および第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10、100を遮断分離するための遮断ウォール41をさらに有することができ、前記多孔性膜18、118の検出領域20、120に対応して部分的に突出した突出部43をさらに含んでもよい。
【0024】
前記上部ケース201には、前記多孔性膜18、118の検出領域20、120を露出させるための開口205から前記検出領域20、120に向かって突出し、前記開口205周囲に形成されるフランジ湾曲部243がさらに形成されて、前記多孔性膜18、118上のテスト試料の毛細管移動を助け、前記第1または第2ノロウイルス遺伝子群検出のための試薬またはノロウイルスサンプルの汚染を防止することができる。
【0025】
前記遮断ウォール41に対応して、遮断空間241が前記検出領域20、120を分離離隔するためにさらに備えられてもよい。
【0026】
前記遮断モジュール200は前記遮断空間241を中間に置いてそれぞれ少なくとも2種以上の収容空間201a、201bを並んで備え、前記少なくとも2種以上の収容空間201a、201b内に前記第1および第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10、100を収容することができ、第3ノロウイルス遺伝子群分析モジュールで交替することもできる。
【0027】
前記遮断モジュール200に追加の収容空間がさらに形成される場合に、第3~第4のノロウイルス遺伝子群分析モジュールが収容されてGIVノロウイルスに対しても同時に分析を行うことができる。
【0028】
本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置1において、このように前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10と前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール100を分離して備える理由について
図5および実験例1を参照して説明する。
【実施例】
【0029】
[実験例1]
前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10と前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール100に対してそれぞれ約1μsより長い蛍光放出寿命を有する蛍光標識を結合させて互いに異なる第1および第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10、100に対して光を照射して少なくとも2種以上のノロウイルス遺伝子群を分離して単独測定した場合と、ノロウイルス遺伝子群GI、GIIを一つの分析モジュールに混合測定した場合に対して、抗原濃度別蛍光信号検出強度を実験した。
【0030】
図5は、ノロウイルス遺伝子群GI、GII分離単独測定時と、ノロウイルス遺伝子群GI、GII混合測定時との敏感度の比較グラフである。
【0031】
図5に示されているように、GI抗原に対してGI抗体を単独で使用した場合とGI抗体とGII抗体を混合した場合のGIノロウイルス抗原濃度による蛍光検出強度を見てみれば、GI抗体とGII抗体を混合した場合にはGI抗原が低濃度区間0-100pg/mLで測定された蛍光信号強度傾きが平らな程度であるが、GI抗体のみ分離して独立に使用した場合にはGI抗原低濃度である0-100pg/mL対しても蛍光信号強度の傾きが急であるのが分かり、このような現象は低濃度信号区分力が増加したということを意味する。
【0032】
同様に、GII抗原に対してGII抗体を単独で使用した場合とGII抗体とGI抗体を混合した場合のGIIノロウイルス抗原濃度による測定された蛍光信号強度を見てみれば、GI抗体とGII抗体を混合した場合よりGII抗体のみ分離して独立に使用した場合にGII抗原低濃度0-100pg/mL区間の蛍光信号強度傾きが増加することが分かった。
【0033】
即ち、本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置1を用いて、前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10と前記第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール100を用いてGI抗原に対してGI抗体を単独で使用して検出し、GII抗原に対してGII抗体を単独で使用してGIとGIIをそれぞれ分けて検出することが低濃度に対して高敏感度を有してGIとGIIを測定できるのが分かる。
【0034】
以下、再度
図3a~
図4bを参照して、本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置1の第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10と第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール100の細部構成について詳細に説明する。
【0035】
本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置1において、前記第1ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10と第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール100それぞれは独立してノロウイルスを含むテスト試料が塗布されるサンプルパッド14、114(
図3aにない)と、前記サンプルパッド14、114下流に設置されて前記サンプルパッド14、114から移動するテスト試料中のGI~GIVノロウイルスと混合されて検出領域20、120の検出ライン21、121で検出が可能なノロウイルス複合体を形成するプローブが含まれている吸着パッド16、116と、前記吸着パッド16、116に対して流体連通して前記ノロウイルス複合体を検出領域20、120に移動させるための多孔性膜18、118を含む。
【0036】
前記サンプルパッド14、114は、
図3aおよび
図4aに示されているように、前記第1および第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール10、100それぞれに独立して含まれてもよく、
図3cおよび
図4bに示されているように、前記サンプルパッド14、114一つを共有して前記サンプルパッド14、114一つから前記吸着パッド16、116に連結されて、前記テスト試料を同時に同一に前記一つのサンプルパッド14、114に投入した後、前記一つのサンプルパッド14、114から分岐させてそれぞれの多孔性膜18、118に流れるようにすることができる。
【0037】
このように前記サンプルパッド14、114一つを共有して前記サンプルパッド14、114一つから前記吸着パッド16、116それぞれに連結することによって分析しようとするテスト試料の同一性と同時性を確保することもできる。
【0038】
ここで、“プローブ”とは、ノロウイルスと特異的に結合する抗体、前記抗体に標識されて結合座を形成する結合物質、前記抗体に標識されて蛍光信号を発生させる蛍光物質、ノロウイルスに非特異的な抗体を含むことができる。
【0039】
前記吸着パッド16、116は少なくとも2種以上のプローブが独立して順次に提供される第1および第2吸着パッド15、115、16、116に分けられ、前記ノロウイルス複合体を形成する結合物質が標識された抗体(捕獲抗体)を提供する第1吸着パッド15、115と、前記複合体を形成する蛍光標識された抗体(検出抗体)、ノロウイルス非特異的な蛍光物質標識された抗体を提供する第2吸着パッド16、116を含むことができる。
【0040】
前記検出領域20、120には、前記ノロウイルス複合体と化学的および物理的結合を形成することができる固定化された捕獲試薬が塗布された検出ライン21、121とノロウイルスに非特異的な抗体と結合を形成することができる固定化された捕獲試薬が塗布された矯正ライン23、123が形成できる。
【0041】
前記固定化された捕獲試薬には、前記結合物質に特異的に結合できる抗体を含有することができる。
【0042】
また、前記吸着パッド16、116は、結合物質なく蛍光標識された抗体(検出抗体)を含むことができる。このような場合、検出ライン21、121にはノロウイルス捕獲抗体を捕獲試薬で固定化させて、ノロウイルス-検出抗体複合体と反応するようにする。
【0043】
前記サンプルパッド14、114は、前記多孔性膜18、118と直接接触せず前記吸着パッド16、116によって連結されて前記サンプルパッド14、114を通じて投入されたテストサンプルが前記吸着パッド16、116を過ぎて前記多孔性膜18、118と流体連通するように構成できる。
【0044】
前記サンプルパッド14、114には一つ以上の分析前処理試薬を含んでもよく、前記サンプルパッド14、114と吸着パッド16、116はテスト試料が通過できる多孔性ガラス繊維材質から形成できる。
【0045】
前記検出ライン21、121と前記矯正ライン23、123をますます多くの流体が通過することによって蛍光信号大きさが変化される。前記矯正ライン23、123は、蛍光物質で標識されたノロウイルスと反応しない非特異抗体と反応し、ノロウイルス存在有無と関係なく蛍光信号が発現されて当該テストが有効であるのを立証する。
【0046】
前記検出ライン21、121は、結合物質に特異的な捕獲試薬あるいはノロウイルス特異抗体を含有してノロウイルス複合体のみを捕獲する。テスト試料は矯正ライン23、123を通過した後、最終目的地として吸収パッド24、124に到達する。前記吸収パッド24、124は、毛細管作用および流体流れを促進させることを助け、廃棄物収集器として作用する。
【0047】
本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置10において、前記検出ライン21、121には捕獲試薬としてストレプトアビジンを使用し、前記プローブの特異的結合物質であるビオチンに対して特異結合できて好ましい。
【0048】
前記時間分解蛍光検査機50は、前記検出ライン21、121および前記矯正ライン23、123に対して同時にパルス光を放出するように構成されて、前記検出ライン21、121および前記矯正ライン23、123で蛍光物質から放出された蛍光信号を同時に受信することができる。
【0049】
前記時間分解蛍光検査機50は、パルス化励起源および光検出器を用いることができる。
【0050】
本明細書において、蛍光物質は1マイクロ秒以上の長い放出寿命を有するものであって、散乱光および自体蛍光のような多くの原因からの背景妨害が実質的に除去されるように比較的に長い放出寿命と比較的大きなストークスシフトを全て有するサマリウム(Sm(III))、ジスプロシウム(Dy(III))、ユウロピウム(Eu(III))、およびテルビウム(Tb(III))のランタン族キレートを用いることができる。
【0051】
したがって、前記時間分解蛍光検査機50は、簡単で高くないデザインを有することができる。例えば、パルス発光ダイオード(LED)およびイメージングカメラを用いて蛍光物質を正確に励起させてモノクロメータまたは狭い放出帯幅光学フィルターのような高価の部品を使用しなくても検出ライン21、121および矯正ライン23、123の蛍光を検出することができる。
【0052】
以下、
図6および
図7および実験例2を参照して、本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置を用いたノロウイルス測定方法およびその効果について説明する。
【0053】
図6は本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置検査方法を説明するフローチャートであり、
図7は本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置のノロウイルス遺伝子群GI、GII識別敏感度を示すグラフである。
<実験例2>
図6に示されているように、本発明の一実施形態による時間分解蛍光分析を用いたノロウイルス側方流動分析装置を用いたノロウイルス測定方法において、まず、サンプル試料を準備することができる(S10)。
【0054】
サンプル試料は、50mM HEPES緩衝液にノロウイルス遺伝子群GI、GII抗原濃度を異にしながら製作した。
【0055】
その次に、準備されたサンプル試料を第1側方流動分析モジュール10と第2側面流動分析モジュール100のサンプルパッド10、110に80μL注入する(S20)。
【0056】
前記サンプルパッド10、110一つを共有してサンプル試料が一度に提供されてもよく、前記サンプルパッド10、110それぞれにサンプル試料が独立して提供されてもよい。
【0057】
ここで、前記第1側方流動分析モジュール10と第2側方流動分析モジュール100はそれぞれ吸着パッド16、116に同一な蛍光物質と結合物質を有し、第1ノロウイルス遺伝子群と第2ノロウイルス遺伝子群に対するそれぞれの捕獲-検出抗体対を適用分離塗布している。
【0058】
次いで、前記吸着パッド16、116を過ぎながら形成された蛍光標識されたノロウイルス遺伝子群GI複合体と、蛍光標識されたノロウイルス遺伝子群GII複合体がそれぞれの多孔性膜に毛細管移動する(S30)。
【0059】
この時、前記第1側方流動分析モジュール10と第2側方流動分析モジュール100それぞれの検出ライン21、121と矯正ライン23、123に時間分解蛍光検査機50を用いて光照射して蛍光標識された第1ノロウイルス遺伝子群複合体と、蛍光標識された第2ノロウイルス遺伝子群複合体を励起させて第1ノロウイルス遺伝子群と第2ノロウイルス遺伝子群それぞれに対する蛍光信号を発生させることができる(S40)。
【0060】
前記検出ライン21、121と矯正ライン23、123の第1ノロウイルス遺伝子群と第2ノロウイルス遺伝子群に対するそれぞれの蛍光信号を比較してサンプル試料内に存在する第1および第2ノロウイルス遺伝子群をそれぞれ検出することができる(S50)。
【0061】
本発明の一実施形態によるノロウイルス流動免疫分析デバイスを用いたノロウイルス測定方法は、側方流動分析法および時間分解蛍光技術を使用して試料でノロウイルス粒子を検出することである。
【0062】
したがって、i)検出領域20、120に近接して時間分解蛍光検査機50を配置する段階であって、前記蛍光検査機はパルス励起源およびタイムゲーティングされた検出器を含む、段階;ii)パルス励起源で検出領域20、120で蛍光標識を励起させて前記ノロウイルスGI、GIIの蛍光標識が蛍光信号を放出するようにする段階;およびiii)タイムゲーティングされた検出器で蛍光信号の強度を検出、分析する段階をさらに含むことができる。
【0063】
一方、
図7に示されているように、本発明の一実施形態によるノロウイルス測定方法によれば、ノロウイルス遺伝子群GI抗原濃度が0と50pg/mlの蛍光強度差が大きいためGI抗原50pg/mlを容易に検出することができる。
【0064】
また、ノロウイルス遺伝子群GII抗原濃度0と10pg/mlで蛍光強度差が大きいため遺伝子群GIIを容易に検出することができる。
【符号の説明】
【0065】
10、100:第1および第2ノロウイルス遺伝子群分析モジュール
15、115:第1吸着パッド
16、116:第2吸着パッド
18、118:多孔性膜
20、120:検出領域
21、121:検出ライン
23、123:矯正ライン
40:離隔空間
50:蛍光検査機