(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】パイプ試験方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/12 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
G01N3/12
(21)【出願番号】P 2020520836
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 GB2018051699
(87)【国際公開番号】W WO2018234782
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-16
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519455508
【氏名又は名称】ヴァーダーグ パイプ テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、アラステア
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-530957(JP,A)
【文献】実開昭56-157655(JP,U)
【文献】米国特許第04192194(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底パイプラインの製造に使用するパイプから切断されたリングを試験する装置であって、
一緒に接続されたときに試験リングを収容するための試験室を画定する第1および第2の試験室部分と、
前記試験室に取り付けられたときに前記リングに対してシールを形成するためのシール手段と、
前記第1および第2の試験室部分を一緒に接続して前記試験室を形成し、前記試験室に取り付けられたときに前記試験リングに対して前記シール手段を係合して、前記リングの内側と前記リングの外側との間に耐圧シールを形成する手段と、
加圧流体を前記試験リングの外側の前記試験室に流入させるための前記試験室部分の1つにある流体入口と、
前記試験室に取り付けられたときに前記試験リングの内面に力を加えるための液圧ラムと、
前記液圧ラムによって前記試験リングに加えられる力を測定する少なくとも1つのセンサと、
前記試験リングの移動を測定する少なくとも1つのセンサと、
前記試験リングの歪みおよび変形を測定する少なくとも1つのセンサと
を含む装置。
【請求項2】
前記液圧ラムに流体を圧送する手段を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液圧ラムに流体を圧送する前記手段が、ニードルポンプである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記試験リングの移動を測定する前記少なくとも1つのセンサが、変位変換器である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、前記試験装置に対する前記試験リングの移動を測定する少なくとも2つのセンサを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記液圧ラムによって前記試験リングに加えられる力を測定する前記少なくとも1つのセンサが、力計である、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1および第2の試験室部分間に配置され、前記試験リングを収容する前記試験室を画定するために前記第1および第2の試験室部分で使用されているスペーサリングをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
海底パイプラインの製造に使用するパイプを試験する試験室内に試験リングが正しく組み立てられているかどうかを判定する方法であって、前記試験リングが、前記海底パイプラインの製造に使用されるタイプのパイプから切断され、前記試験リングの端部に平らで実質的に平行な表面を有する方法において、前記方法が、
i)前記試験リングの両端が圧力室の対向する面とシールを形成して、前記試験リングの内側を外側から隔離するように、前記試験リングを前記圧力室に取り付ける工程と、
ii)前記試験リングの変位を測定する手段を提供する工程と、
iii)前記試験リングの内面に加えられる力を測定する手段を提供する工程と、
iv)前記試験リングの内面に力を加える工程と、
v)前記試験リングの変位を測定し、前記内面に加えられる前記力を測定する工程と、
vi)前記変位の測定値と前記力の測定値とを使用して、前記試験リングが前記圧力室に正しく取り付けられているかどうかを判定する工程と
を含む、方法。
【請求項9】
前記試験リングが、所定の距
離だけ変位すると、前記試験リングの内面に加えられる力を停止することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試験リングの内面に力を加えるときに、前記圧力室に、0MPaより大きく、予想される崩壊圧力より小さい圧力を提供することを含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、工程i)~v)を実施する前に、許容可能な拘束力の範囲を決定することをさらに含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記圧力室内に前記試験リングを保持することと、前記試験リング上で外圧崩壊試験を実施することとをさらに含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記外圧崩壊試験が、
前記試験リングの歪みおよび変形を測定する手段を提供することと、
前記試験リングの外側の圧力を増加させ、圧力の増加に伴う前記試験リングの歪みおよび変形を測定することと、
前記試験リングの外部崩壊圧力を決定することと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記試験リングの外部崩壊圧力を決定することが、前記リングの外側に加えられる圧力と測定される最大歪みとの比較を決定して、圧力の増加に伴うリング直径の非線形減少の加速の開始を検出することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
海底パイプラインの製造に使用するパイプを試験する方法であって、
前記海底パイプラインの製造に使用されるタイプのパイプからリングを切断する工程と、
前記リングの端部に平らで実質的に平行な表面を形成して、試験リングを提供する工程と、
前記試験リングの両端が圧力室の対向する壁とシールを形成して、前記試験リングの内側を外側から隔離するように、前記試験リングを前記圧力室に取り付ける工程と、
前記試験リングの変位を測定する手段を提供する工程と、前記試験リングの内面に加えられる力を測定する手段を提供する工程と、
前記試験リングの内面に力を加える工程と、
前記試験リングの変位を測定し、前記内面に加えられる前記力を測定する工程、および前記変位の測定値と前記力の測定値とを使用して、前記試験リングが前記圧力室に正しく組み立てられているかどうかを判定する工程と、
前記試験リングの歪みおよび変形を測定する手段を提供する工程と、
前記試験リングの外側の圧力を増加させ、圧力の増加に伴う前記試験リングの歪みおよび変形を測定する工程と、
前記試験リングの外側に加えられる圧力と測定される最大歪みとの比較を決定して、圧力の増加に伴う試験リング直径の非線形減少の加速の開始を検出する工程と、
を含む、方法。
【請求項16】
前記試験リングの内面に力を加える工程が、前記試験リングに加えられた前記力が横方向の抵抗力を超えるまで前記力を加えることを含む、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記試験リングの内面に力を加える工程が、前記試験リングの内面に力を加える手段を提供することを含む、請求項8~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記試験リングの内面に力を加える手段を提供する工程が、液圧ラムを提供することを含み、前記液圧ラムが、前記液圧ラムに流体を供給するポンプに接続されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試験リングの内面に力を加える工程が、約0
.002kN/分~約0
.04kN/分の速度で力を加えることを含む、請求項8~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試験リングの内面に力を加える前記手段が、前記試験リングの外側の圧力を増加させる工程が実施される前に、前記試験リングから取り外される、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~7のいずれか一項に記載の装置を使用して実施される、請求項8~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項8~21のいずれか一項に記載の方法を実施するパイプ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中パイプラインの形成に使用されるようなパイプの試験に使用する方法および装置に関する。
【発明の概要】
【0002】
オイルおよびガス産業において、オイルおよび/またはガスの深海貯留層にアクセスするための、超深海での設置および運用に適した海底パイプラインの製造は、過去20年にわたり、着実に発展してきた。現在、直径約16インチ(約40.6cm)の小径パイプが、3000mの深海に設置されている。直径最大32インチ(81.1cm)の大径パイプが、最大2500mの水深に設置されている。将来のプロジェクトでは、最大3500m、おそらくはさらに深くパイプを設置および運用する必要が生じる可能性がある。
【0003】
パイプラインは、通常、空の状態で、すなわち、周囲圧力の空気を充填した状態で設置され、設置完了後にはじめて、圧力下でオイルまたはガスが充填される。これらの深海パイプラインの設置中に経験する主なリスクは、水によって加えられる圧力に起因し、パイプが最初の略丸い形状から略平らな形状に変形することである。これは、外圧崩壊と呼ばれ、制御されない場合、パイプライン全体の損傷につながる可能性がある。したがって、寸法、すなわち直径および壁厚、ならびにある程度だが深海パイプラインの材料特性が、外圧崩壊の可能性を決定する主な要因である。これは、壁厚が外圧ではなく輸送する流体からの内圧に抵抗するように寸法決めされている従来の浅水または陸上パイプラインの設計とは対照的である。
【0004】
超深海、すなわち水深2000m以上で運用されるパイプラインを製造するための厚肉パイプを設計および製造するために、DNV OS 101の設計指針を利用することができ、この指針では、パイプライン設置中の圧力崩壊損傷に起因する安全性が、安全率を使用して判定される。安全率は、荷重抵抗係数設計(LRFD)法を使用して、DNV指針が作成された時点で利用可能な崩壊圧力試験結果と比較して較正されている。超深海への設置中に非常に長いパイプラインが損傷することによる経済的影響が大きいため、DNV情報と併せてさらに特定のパイプ継手崩壊試験に基づいて、そのようなパイプラインの設計を行うことが慣行となっている。しかしながら、実規模のパイプ継手の圧力試験は、適切な圧力室を必要とする高価な手順である。超深海に相当する圧力をかけることができる圧力室は世界でも数が少なく、パイプミルから適切な試験施設へのパイプの輸送は不便で高価な場合がある。
【0005】
パイプ設計、特にパイプ壁厚の最適化を支援する代替的な手法が開発され、実規模のパイプ試験に代わるようになった。国際公開第2008/114049号に手法が記載されており、海底パイプラインの製造に使用するパイプを試験する方法および装置が記載され、この試験には、製造されたパイプ継手から切断および機械加工されたリング試験片に対する外圧崩壊試験が含まれる。
【0006】
本発明は、たとえば、国際公開第2008/114049号に記載されている試験などの、リング試験片で実施される外圧崩壊試験の精度を向上させる方法および装置に関する。
【0007】
本発明は、深海の海底環境用のパイプラインの製造に使用されるパイプ試験に使用する装置および方法を提供する。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、海底パイプラインの製造に使用するパイプから切断されたリングを試験する装置であって、
一緒に接続されたときに試験リングを収容するための試験室を画定する第1および第2の試験室部分と、
試験室に取り付けられたときにリングに対してシールを形成するためのシール手段と、
第1および第2の試験室部分を一緒に接続して試験室を形成し、試験室に取り付けられたときに試験リングに対してシール手段を係合して、リングの内面とリングの外面との間に耐圧シールを形成する手段と、
加圧された流体をリングの外側の試験室に流入させるための第1および第2の試験室部分の1つにある流体入口と、
試験室に取り付けられたときにリングの内面に力を加えるための液圧ラムと、
液圧ラムによってリングに加えられる力を測定する少なくとも1つのセンサと、
リングの移動を測定する少なくとも1つのセンサと、
リングの歪みおよび変形を測定する少なくとも1つのセンサと
を備える装置を含む。
【0009】
使用中、試験リングは、第1および第2の試験室部分の間に配置され、シール手段と係合していて、リングの内面はリングの外面から隔離されている。リングの内面は、大気条件にさらされている。リングの外面は、室内の加圧流体にさらされる可能性がある。
【0010】
装置は、液圧ラムに流体を圧送する手段を備えることができる。好ましくは、液圧ラムに流体を圧送する手段は、ニードルポンプである。
【0011】
好ましくは、装置は、試験リングの移動を測定する少なくとも2つのセンサを備える。試験リングの移動を測定するセンサは、変位変換器であることが好ましい。センサは、試験リングが取り付けられている室部分に対する試験リングの移動を測定する。
【0012】
液圧ラムによって試験に加えられる力を測定するセンサは、力計であることが好ましい。
【0013】
試験室部分の対向面には、少なくとも1つの円周溝が設けられている。シール手段は、各溝に配置されている。好ましくは、各試験部分は、上記面に2つの円周溝が設けられている。シール手段は、エラストマー製のOリングであることが好ましい。
【0014】
装置は、第1および第2の部分間に配置されたスペーサリングをさらに備えることができる。第1および第2の部分で使用されるスペーサリングは、リングを収容する試験室を画定することができる。
【0015】
本発明のさらなる態様は、海底パイプラインの製造に使用されるパイプを試験する試験室内に試験リングが正しく組み立てられているかどうかを判定する方法であって、試験リングが、海底パイプラインの製造に使用されるタイプのパイプから切断され、試験リングの端部に平らで実質的に平行な表面を有する方法において、
i)試験リングの両端が圧力室の対向する面とシールを形成して、試験リングの内側を外側から隔離するように、試験リングを圧力室に取り付ける工程と、
ii)試験リングの変位を測定する手段を提供する工程と、
iii)試験リングの内面に加えられる力を測定する手段を提供する工程と、
iv)試験リングの内面に力を加える工程と、
v)試験リングの変位および加えられる力を測定する工程と、
vi)変位の測定値および力の測定値を使用して、試験リングが圧力室に正しく取り付けられているかどうかを判定する工程と
を含む、方法を含む。
【0016】
所定の時間にわたる、所定の速度での試験中、試験リングの内面に加える力を増加させる。変位の測定値および力の測定値により、シール手段によって加えられる拘束力が力の許容範囲外にあることが示された場合、その後の試験リングでの圧力崩壊試験は続行されない。測定結果により拘束力が許容範囲内にあることが示された場合、圧力崩壊試験を続行することができる。
【0017】
最大許容力は、試験リングの外径によって異なる。たとえば、外径が約30インチ(76.2cm)のリングの場合、液圧ラムによって加えられる最大許容力は、0.1kN~6.5kNの範囲であることが好ましい。ただし、許容可能な力の範囲は、圧力室内の圧力にも依存する。圧力室に圧力が加えられていない場合、外径が約30インチ(76.2cm)のリングの最大許容力は、0.1~0.4kNの範囲であることが好ましく、好ましくは約0.25kNである。圧力室が、たとえば27MPaの圧力で加圧される場合、最大許容力は、4.5~6.5kNの範囲、好ましくは約5.0kNになるだろう。直径が30インチ(76.2cm)以外の場合、最大許容力は、試験の前に決定することができる。
【0018】
試験リングの内面に力が加えられると、圧力室内の圧力は、約0MPaになることがある。好ましくは、試験リングの外側円筒面に圧力がかかるように、加圧された室で試験を実施することができる。この場合、圧力室内の圧力が0MPaより大きいが、パイプラインの予想される崩壊圧力よりも小さい状態で試験を実施する。試験は、圧力試験室内の圧力が0MPaより大きく30MPa以下の範囲、好ましくは約0MPaより大きく15MPa以下の範囲で実施することができる。圧力室内の圧力は、パイプラインの予想される崩壊圧力の0~0.7倍、好ましくは予想される崩壊圧力の0.5~0.7倍の範囲であり得る。
【0019】
本方法は、試験リングが所定の距離まで変位すると、試験リングの内面に加えられた力を停止する工程をさらに含むことができ、すなわち、試験リングが所定の距離まで変位すると、工程iv)は停止する。好ましくは、所定の距離は、約1mm~2mm、好ましくは約1mmである。センサが、試験リングが所定の距離まで変位したことを検出すると、液圧ラムへの流体の圧送を停止し、得られた測定値を使用して、試験リングが試験室に正しく取り付けられているかどうかを判定することができる。
【0020】
試験リングの内面に力を加える工程と、試験リングの変位および加えられた力を測定する工程とを繰り返すことができ、リングの内面に力が加えられるとき、試験リングの外側円筒面は、最初とは異なる圧力を受ける。
【0021】
本方法を実施する前に、同じ装置を使用した試験を実施して、許容可能な拘束力の範囲を決定することができる。したがって、本発明の一実施形態では、試験は、工程i)~vi)を実施する前に許容可能な拘束力の範囲を決定する工程をさらに含むことができる。
【0022】
上記試験では、力の印加および測定の工程は、複数回、好ましくは毎回新しい試験リングで実施され得る。力を加える工程を繰り返す場合、本方法は、圧力室に第2の圧力を提供する工程を含むことができ、試験リングの内面に圧力を加えるとき、第2の圧力は0MPaより大きく、予想される崩壊圧力より小さい。上記工程はさらに繰り返すことができ、その場合、本方法は、圧力室に第3の圧力を提供する工程をさらに含み、試験リングの内面に力を加えるとき、第3の圧力は、0MPaより大きく、予想される崩壊圧力より小さく、第1および第2の圧力とは異なる。
【0023】
実施された試験の結果を使用して、試験装置と試験リングとの間に許容可能な拘束力があるかどうかを確認することができる。拘束力は、リングの形状、すなわちリングの直径および幅、ならびに圧力室内の圧力に依存する。しかしながら、いくつかの実施形態では、許容可能な拘束力は、0.1kN~30kNの範囲にある。リング圧力室内の圧力が約0MPaである場合、好ましくは、許容可能な力は、0.1kN~0.4kNの範囲、好ましくは約0.2kNであった。室内の圧力が約27.6MPaである場合、好ましくは、許容可能な拘束力は、4.5~6.5kNの範囲、好ましくは約5.0kNであった。
【0024】
本方法は、圧力室内に試験リングを保持する工程と、試験リング上で外圧崩壊試験を実施する工程とをさらに含む。外圧崩壊試験は、
試験リングの歪みおよび変形を測定する手段を提供する工程と、
リングの外側の圧力を増加させ、圧力の増加に伴う試験リングの歪みおよび変形を測定する工程と、
試験リングの外部崩壊圧力を決定する工程と
を含むことができる。
【0025】
試験リングの崩壊圧力を決定する工程は、試験リングの外側に加えられる圧力と測定される最大歪みとの比較を決定して、圧力の増加に伴うリング直径の非線形減少の加速の開始を検出する工程を含む。
【0026】
圧力室にリングを取り付ける前に、本方法は、
パイプラインの製造に使用されるタイプのパイプからリングを切断する工程と、
リングの端部に平らで実質的に平行な表面を形成する工程と
をさらに含むことができる。
【0027】
本発明のさらなる態様は、海底パイプラインの製造に使用されるパイプを試験する方法であって、
海底パイプラインの製造に使用されるタイプのパイプからリングを切断する工程と、
リングの端部に平らで実質的に平行な表面を形成する工程と、
リングの両端が圧力室の対向する壁とシールを形成して、試験リングの内面を外面から隔離するように、リングを圧力室に取り付ける工程と、
試験リングの変位を測定する手段を提供する工程と、
試験リングの内面に加えられる力を測定する手段を提供する工程と、
試験リングの内面に力を加える工程と、
試験リングの変位を測定し、内面に加えられた力を測定する工程と、
変位の測定値と力の測定値とを使用して、試験リングが圧力室に正しく組み立てられているかどうかを判定する工程と、
リングの歪みおよび変形を測定する手段を提供する工程と、
リングの外側の圧力を増加させ、圧力の増加に伴うリングの歪みおよび変形を測定する工程と、
リングの外側に加えられる圧力と測定される最大歪みとの比較を決定して、圧力の増加に伴うリング直径の非線形減少の加速の開始を検出する工程と
を含む、方法を含む。
【0028】
試験リングの内面に力を加える工程は、試験リングに加えられた力がシール手段と試験リングとの間の横方向の抵抗力を超えるまで力を加える工程を含む。試験リングの内面に力を加える手段が設けられている。好ましくは、試験リングの内面に力を加えるために、液圧ラムが設けられている。液圧ラムは、液圧ラムに流体を供給するポンプに接続されている。好ましくは、ポンプは、ニードルポンプである。好ましくは、圧力室の対向する壁にはそれぞれ、シール手段が設けられ、リングの両端が対向するシール手段と係合して、リングの内面がリングの外面から隔離されるようになっている。
【0029】
流体をラムに供給して、試験リングの内面に加えられる力を増大させる。試験中、加えられる力の速度は、約0.002kN/分~約0.04kN/分である。好ましくは、力は、30分間~4時間、好ましくは1~3時間、より好ましくは1~2時間の期間にわたって、試験リングの内面に加えられる。
【0030】
試験リングの内面に力を加える手段は、リングの外側の圧力を増加させる工程が実施される前に、試験リングから取り外される。
【0031】
好ましくは、本方法は、上述の装置を使用して実施する。
【0032】
本発明のさらなる態様は、上述の試験方法を実施するパイプ試験装置である。
【0033】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明による試験に使用されるタイプのパイプラインを示す。
【
図2】
図1のパイプから切断された試験リングの断面を示す。
【
図4】
図3の線B-B上の断面を示し、試験装置は試験段階にセットアップされている。
【
図5】試験リングが内部に取り付けられた試験装置の概略図を示す。
【
図6】準備段階にセットアップされた、
図3の線B-B上の断面を示す。
【
図7】準備段階にセットアップされた試験装置および試験リングの上面図を示す。
【
図8】準備段階にセットアップされた試験装置および試験リングの概略図を示す。
【
図9】3つの異なる圧力レベル(a)0MPa、(b)13
.8MPa、および(c)27
.6MPaで実施した押出し試験の結果を示す。グラフは、摩擦抵抗力および変位の時間履歴結果を示し、Lino1(48)およびLino2(50)は、試験装置に対するリングの移動を測定する2つの別個の位置の線形変位変換器を表す。
【
図10】3つの異なる圧力(a)0MPa、(b)13
.8MPa、および(c)27
.6MPaで実施した押出し試験の結果を示す。グラフは、摩擦抵抗力とリングの横方向の変位との関係を示し、Lino1(48)およびLino2(50)は、リングの移動を測定する2つの別個の位置の線形変位変換器を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
個々のパイプ継手の長区間の試験では、外部崩壊につながる変形がパイプ長さに沿って実質的に均一であることが示されている。この観察結果は、理論的研究、実地試験および数値モデリングによって支持されている。外圧崩壊の発生は、純粋な外部圧力にさらされた、パイプから切断されたリングとパイプをつないだ全長とで同じになることが示唆される。したがって、国際公開第2008/114049号に記載されているように、パイプから短区間を切断し、リングを均一な長さに機械加工することに基づく試験手法が開発されてきた。しかしながら、このような圧力崩壊試験を実施する前に、試験リングを試験装置に正しくセットアップすることが重要である。
【0036】
「圧力崩壊試験」などの同等の試験は、リングが崩壊する圧力を決定するために、試験リング試験片が増加する圧力にさらされる試験、たとえば国際公開第2008/114049号、またはSelker et al,Proceedings of the Twenty-fourth(2014)International Ocean and Polar Engineering Conference,vol.2,p.88~95に記載された試験を意味する。
【0037】
リングの2つの切断面と、その間にリングが締め付け固定される2つの室部分との間のシールリングの目的は、試験リングの外側に圧力試験室を構築するのを助けることである。圧力室は、試験リングの外面と試験装置の表面とによって画定される。試験の第2の段階では、室内の圧力がリングを変形させるが、これは、加えられた圧力によって引き起こされるリングの周囲の圧縮応力に起因する。室内の圧力が上昇すると、最終的にリングは崩壊する。高圧作動流体の漏れを防止するのに十分なシールを形成するには、シールリングと試験リング表面との間の界面でシールリングが適切に高い圧力を受ける必要がある。
【0038】
界面圧力は、リングと試験装置との間に摩擦拘束力を引き起こす効果がある。室内の圧力が変化すると、拘束力も変化する。試験開始時に潤滑剤をゴムと鋼との界面、すなわちシールリングと試験リング表面との間に塗布することにより、拘束力を低減することができる。界面圧力、したがって拘束力の初期設定は、リング試験装置とシールリングに加えられる界面圧力の程度とによって決定することができる。拘束力と最終的な崩壊圧力とは、潤滑剤の塗布方法と装置のセットアップ中のリング位置とによっても影響を受ける可能性がある。
【0039】
試験装置の初期セットアップ中の拘束力の変動により、圧力崩壊試験ごとに一貫性のない結果が生じる可能性がある。さらに、シールリングと試験リング表面との間の拘束力により、リングが崩壊する圧力レベルが上昇する場合がある。したがって、各圧力崩壊試験では、試験リングが試験装置に正しく組み立てられているかどうかを判定するために、初期試験が実施される。
【0040】
したがって、本発明による海底パイプラインの製造に使用するパイプを試験する試験方法は、第1の試験段階(S1)および第2の試験段階(S2)の2つの試験段階を含む。第1の試験段階は、試験リングが試験装置に正しくセットアップされているかどうかを判定するセットアップ試験段階(S1)である。第2の試験段階は、パイプの崩壊圧力を決定するための圧力崩壊試験段階(S2)である。
【0041】
セットアップ試験段階では、試験リングの内面に力を加え、試験リングの変位を測定して、試験リングが装置に正しくセットアップされているかどうかの判定を支援する。第2の圧力崩壊試験段階(S2)では、リングの外側表面に加える圧力を増加させ、パイプの崩壊圧力を決定する。この段階で得られた歪みおよび変形の測定値を使用して、パイプの適切な壁厚を決定することができる。第2の試験段階(S2)は、第1の試験段階の結果により、試験リングが試験装置に正しくセットアップされていることが示された後にのみ実施される。
【0042】
図1は、海底パイプラインで使用されるパイプ10を示す。通常の例では、長さが約12
.2m、外径が508mm、壁厚が35mmである。試験リング12(
図2にも示す)は、パイプの一端から切断され、通常の長さは50mmで、すなわち壁厚よりも大きい。この長さのリングが切断された後でも、パイプは、なおパイプラインの建設に使用することができる。リングの両端面は、実質的に平行で平らになるように、すなわち、実際と同等の滑らかな表面に機械加工されている。実質的に平らで平行とは、リング全長の公差が±0
.01mmであることを意味する。粗度係数は、ISOグレードN6を超えないことが望ましい。
【0043】
パイプから切断され、リングの両端面が機械加工された試験リングは、少なくとも2つの部分とシール手段とを有する剛性フレームに取り付けられ、圧力室が形成される。シール手段により、試験リングの機械加工面を装置に対してシールすることができ、室が加圧されると、リングの外側円筒面のみに圧力が加えられる。リングの内側の円筒面は、大気圧に維持される。
【0044】
リングの機械加工された平らな両表面のシールは、第2の段階(S2)でリングの円形面の変形が妨げられるようになっている。リングの平らな両表面のシールは、試験中に、圧力がリングの外側の円形面のみに、かつ平らな機械加工された両表面の小さな領域のみに制限されるようになっている。シールは、リングが機械加工された平らな両表面に平行な比較的小さい力を受けるため、試験段階(S2)中のリングの半径方向の変形が妨げられるようになっている。
【0045】
試験手順の第1の段階(S1)は、
i)試験リングの外面と試験装置とによって室が画定されるように所定の位置にシールを設けて、試験装置に試験リングを取り付ける工程であって、この試験リングはパイプから切断されていて、その両端は規定の公差内に平らで平行に機械加工されている工程と、
ii)試験リングの変位を測定する手段を取り付ける工程と、
iii)試験リングの内面に力を加える手段を取り付ける工程と、
iv)リングの内面に力を加え、試験リングに加えられた力と試験装置に対する試験リングの変位とを記録する工程と
を含み、
工程iii)とiv)との間に、リングの外側円筒面に圧力を加え、シールが有効かつ効果的であることを確認する工程を実行することもできる。
【0046】
液圧ラムは、リングの内面に力を加えるために、試験リングの内面の片側に接触するように試験装置に組み込まれている。力計は、ラムの端部と試験リングの内面との間に配置される。変位変換器は、試験リングに取り付けられ、試験装置に対する試験リングの移動を測定する。
【0047】
液圧ラムは、圧力下でラムに作動流体または水などの他の適切な流体を注入するニードルポンプに接続されている。圧力レベルの増加に伴ってラムは伸長し、試験リングの内面に接触し、内面に力を加える。ラム内の圧力は、ニードルポンプの連続的なポンピングによって非常に遅い速度で増加する。圧力が増加すると、ラムによってリングに加えられる力も増加し、これは力計によって測定される。力は、最終的に(現在まで)知られていない拘束力を超え、リングは横方向に動く。試験リングの移動は、変位変換器によって測定される。試験リングの移動は、1mmに制限することが望ましいだろう。試験リングが約1mm移動したことが確認されると、ラムへの流体の圧送は停止する。
【0048】
一定の時間間隔で、ニードルポンプは、少量の流体をラム室に注入し、非常に遅い速度で試験リングに加えられる力を増加させる。好ましくは、液圧ラムによって加えられる力の増加によって引き起こされる変位の速度は、0.01~0.05mm/分の範囲であり、より好ましくは、変位の速度は、約0.01~0.03mm/分の範囲である。
【0049】
好ましくは、試験の第1の段階(S1)は、試験の第2の段階(S2)が実施されるのと実質的に同じ期間にわたって実施される。ラムへの圧力、およびしたがってリングの内面に加えられる力は、約30分間~約4時間の期間にわたって、好ましくは約1~約2時間の期間にわたって増加させることができる。液圧ラムによる試験リングの内面への力の印加速度は、約0.002kN/分~約0.04kN/分の範囲であり得る。
【0050】
力がリングの内面に加えられるとき、圧力は、圧力室内で所定の圧力に維持される。第1の段階は、室内の圧力を0MPaにして実施することができる。あるいは、室を加圧した状態で試験を実施することもできる。室は、予想される崩壊圧力よりも小さい圧力まで加圧することができる。試験は、圧力室内の圧力が0MPaより大きく30MPa以下、好ましくは約0MPaより大きく15MPa以下、より好ましくは0MPaより大きく6MPa以下の範囲で実施することができる。好ましくは、試験で使用することができる室内の最大圧力は、予想される崩壊圧力試験の0.5~0.7倍である。
【0051】
試験リングが試験装置に適切に取り付けられているか、続いて圧力崩壊試験を実施するかどうかを判定するためにセットアップ試験を実施する前に、初期試験を実施して、使用する特定のセットアップの拘束力効果を判定する。これらの初期調整試験は、S1試験に関して実施される。初期調整試験でラムによって加えられた力の測定値を数値モデリングに使用して、上記力が過度に大きい崩壊圧力をもたらすかどうかを判定する。たとえば、初期調整試験手順は、
【0052】
i)試験リングの外面と試験装置とによって室が画定されるように所定の位置にシールを設けて、試験装置に試験リングを取り付ける工程であって、この試験リングはパイプから切断されていて、その両端は規定の公差内に平らで平行に機械加工されている工程と、
ii)試験リングの試験リングに対する変位を測定する手段を取り付ける工程と、
iii)試験リングの内面に力を加える手段を取り付ける工程と、
iiia)試験リングの外側円筒面に第1の圧力を加える工程と、
iv)試験リングの内面に力を加え、試験リングに加えられた力と試験装置に対する試験リングの変位とを記録する工程と
を含んで実施することができる。
【0053】
第1の試験結果が得られたら、工程i)~iv)を繰り返し、工程iiia)で第2の圧力を加える。工程iiia)でさらに第3の圧力を加えて、試験を繰り返してもよい。第1、第2および第3の圧力は、互いに異なる。これらの試験結果を使用して、許容可能な拘束力の範囲を決定することができる。
【0054】
初期調整試験および数値モデリングの結果として、許容可能な拘束力の範囲が確立され、これは、セットアップ試験S1で、試験リングが試験装置で許容可能な様式で組み立てられているかどうか、したがってリングの崩壊試験を続行することができるかどうかを判定するために使用される。
【0055】
セットアップ試験S1で、シールリングによって加えられた拘束力が力の許容範囲外にあることが示された場合、試験は続行されない。装置を分解し、リングを検査する必要がある。その後、初期セットアップ試験を繰り返すために、試験装置で試験リングを再度組み立てることができる。
【0056】
試験リングが試験装置に正しくセットアップされていることが確認されると、装置内の試験リングの位置を乱すことなく、液圧ラムおよび変位センサを装置から取り外すことができ、試験手順の第2の段階、すなわち圧力崩壊試験を開始することができる。
【0057】
試験段階(S2)、すなわち崩壊圧力試験は、国際公開第2008/114049号に記載されているように実施して試験リングの崩壊圧力を決定することができ、上記試験は、
アタッチメントを取り付けて、所定の位置にシールを有するフレームに配置されたリングに対する、リングの歪みおよび変形を測定する工程と、
リングの外側に加える圧力を増加させて、歪みおよび変形の測定値を記録する工程と、
最大値に達するまで、つまり外圧崩壊が発生するまで圧力を増加し続ける工程と
を含むことができる。
【0058】
また、測定された最大歪みに対する加えられた圧力の曲線をプロットして、シールを通過する作動流体の漏れに依存しない圧力の増加に伴うリング直径の非線形減少の加速の開始を検出することも有用であり得る。
【0059】
本試験方法の第1の段階では、リングの外側の円形面に力を加えてリングの変位を測定するために使用される装置を外面に取り付ける。第2の段階では、内側円筒面に力を加えて変位を測定するために使用される装置を取り外し、リングの外側円筒面への圧力によって引き起こされる歪みおよび変形を測定するための装置をリングの内面に取り付ける。
【0060】
本試験方法では、2つのポンプを使用する。1つのポンプが液圧ラムに流体を供給し、ラムに試験リングの内面に力を加えさせる。他のポンプ、たとえばさらなる液圧ポンプが、圧力室、たとえばリングの外面を囲む空間に加圧流体を提供する。
【0061】
外部ポンプによって圧力を加え、特定量の流体をリングの外側円形面を囲む空間に追加する、またはその空間から減じることによって圧力が増加または減少するようにする。この構成によって、外側円筒面への圧力によって引き起こされるリングの半径方向の変形を、制御された様式で、大きくまたは小さくすることができる。圧力の増加に伴って、最大圧力に達するまで、歪みおよび変形の測定値が記録される。
【0062】
図3に示すように、本試験方法の実施に使用することができる本発明による試験装置14は、第1の円筒形部分16と、第2の円筒形部分18とを備え、両円筒形部分の間にスペーサリング部分20が配置されており、試験リング12を取り付けることができる装置を画定する。第1および第2の部分は、それぞれ装置の上部および底部部分を形成することができる。第1の部分の外径は、第2の部分の外径に実質的に対応する。
【0063】
第1の部分は、リング状であることができ、中央開口部42を有する。第1の部分の中央開口部は、センサおよび液圧ラムの取り付けのために、試験装置の中心と試験リングの内面とにアクセス可能である。第2の部分も、リング状であることができ、中央開口部を有する。第2の部分の開口部直径は、第1の部分の開口部直径に実質的に対応する。あるいは、第2の部分は、底部が中実板状で上部がリング状の円筒形部分の形態であることができ、その結果、第2の部分は中央に空隙を有する。中央の空隙は、第1の円筒形部分の中央開口部に実質的に対応する。第2の部分の空隙直径は、第1の部分の開口部直径に実質的に対応する。
【0064】
第1および第2の部分の対向面、すなわち、第1の部分の底面および第2の部分の上面は、段差を有し、それぞれ第1の部分16の底部および第2の部分18の上部の縁周りに円周方向に延びる肩部44を形成している。これにより、肩部と各部分の開口部との間に突出した環状段付き部分46が設けられる。各部分の肩部44は、支持面を備え、各支持面の間にスペーサリング20が配置されている。一方、第1および第2の部分の各環状段付き部分46は、支持面を備え、各支持面に試験リング12が取り付けられている。環状段付き部分の外径は、スペーサリング20の内径に実質的に対応する。
【0065】
スペーサリング20は、2つの部分16、18の間に、各部分の外側縁部に配置されている。スペーサリングの縁部は、各部分の肩部44に当接し、スペーサリング20の内周面は、環状段付き部分46の側面に当接する。スペーサリング20は、第1および第2の部分の2つの面の間の距離を調整するのに役立つ。スペーサリング、ならびに第1および第2の部分は、一緒になって、試験される試験リング12を保持するフレームを形成する。スペーサリング20の内径は、第1および第2の部分16、18の外径よりも小さく、それぞれの開口部および空隙の直径よりも大きい。スペーサリング20の外径は、第1および第2の部分16、18の外径よりも大きい。
【0066】
図4~
図8を参照すると、試験リングが装置内に配置されると、試験圧力室26が、底部部分の上面と上部部分の底面との間、スペーサリングの内側側面と試験リングの外側円筒面40との間に画定される。本装置には、加圧流体を圧力室26に供給するための入口38が設けられている。
【0067】
第1および第2の部分の各々は、各々の対向面にシール手段24を保持する少なくとも1つの円周溝22を有する。
図4および
図6に示すように、各部分は、第1および第2の部分16、18の環状段付き部分46の対向面に設けられたシールリングを保持する2つの同心溝を有する。試験リングは、溝22に配置されたシール手段24と係合する。好ましくは、試験リングは、シール手段24と係合するが、第1および第2の部分の対向面には接触しない。スペーサリング20と第1および第2の部分16、18の環状段付き部分46の側面との間に追加のシール手段28が設けられている。いくつかの実施形態では、スペーサリング20の上面と第1の部分16の下面との間、およびスペーサリング20の下面と第2の部分18の上面との間にシム(図示せず)を使用して、構成要素の位置を調整している。シムは、金属製シム、たとえば真鍮製シムであってもよい。シムは、試験中にリングが第1および第2の部分に接触しないようにし、シールリングと試験リングとの間の圧力を、試験中の漏れを防ぐのに十分であるが、試験リングに過度の摩擦拘束力が加えられないようにできるだけ低くするために役立つ。
【0068】
図4および
図5は、崩壊圧力試験(S2)を実施する試験リング12をセットアップした本発明による装置14の一実施形態を示している。
図6~
図8は、初期セットアップ試験(S1)を実施する試験リング12をセットアップした本発明による装置14の一実施形態を示している。試験リング12は、上部部分16と下部部分18との間に取り付けられ、この両部分は、スペーサリング20と共に試験室26を画定する。ゴム製Oリングの形態のシール手段24が、上部および底部部分の面の円周溝に設けられている。2つのシール手段24の第1のセットが、上部部分と試験リングとの間に設けられており、2つのシール手段24の第2のセットが底部部分と試験リングとの間に設けられている。
【0069】
使用中、Oリングまたは上部部分の底面と底部部分の上面に設けられた、圧力を加えられた圧力保持シールは、試験リングと係合して、対向するスペーサリングの内側円筒側面と試験リングの外側円筒側面とによって、および対向する底部部分の上面と上部部分の底面とによって画定される環を形成する。画定された環は、加圧作動流体を導入することができる圧力室を提供する。装置の中央の空隙は、大気圧に開放されており、試験中にリングの外面は大気圧にさらされている。
【0070】
上部および底部部分は、たとえばねじ(図示せず)などの機械的シール手段によって一緒に保持される。装置の外側縁部周りに、ねじは、上部部分16の穴30およびスペーサリング20を通って延び、底部部分18の穴30と係合する。装置の中心付近で、追加の固定手段が、上部部分の環状段付き部分46の穴30を通って延び、底部部分18の環状段付き部分46の穴と係合してもよい。各部分を一緒に適切に締め付け固定するために、任意の数の固定手段を使用することができる。他の適切な固定手段を使用して、液圧ピストン装置など、試験装置の部分を一緒に締め付け固定することができる。
【0071】
上部および底部部分とスペーサリングとを一緒に保持する力は、環を圧力保持シールに対して内側および外側に圧密にするのに十分である。リングをパイプから切断する際の公差は、液圧荷重下でリング外径から半径方向内側への移動による過度の拘束摩擦を回避しながら、環(圧力室)から空隙への漏れが発生しない範囲である。試験装置をセットアップするときに、セットアップ試験(S1)を実施して、拘束力が許容範囲内にあるかどうかを判定する。
【0072】
図6~
図9を参照すると、第1のセットアップ試験段階(S1)の間、試験装置は、試験リングと接触する液圧ラム34を備える。変位変換器36の形態の2つのセンサが、試験中の試験リングの移動を測定するために配置されている。2つの変位変換器が示されているが、任意の適切な数のセンサを使用してもよく、たとえば1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変位変換器を使用してもよい。変位変換器は、線形電圧変位変換器(LVDT,linear voltage displacement transducer)であってもよい。ラム34によって試験リング12の内側円筒面に加えられる力を測定するために、力計(図示せず)が配置されている。ニードルポンプ(P)は、液圧ラムに流体を供給する。ニードルポンプは、ラムによって試験リングに加えられる力を増大させるために、流体を所定の速度で供給する。
【0073】
図4を参照すると、第2の崩壊圧力試験段階(S2)中、液圧ラムおよび関連するセンサは、装置34から取り外される。リングの歪みおよび変形を測定するセンサ(図示せず)が取り付けられ、試験の第2の段階を実施することができる。
【0074】
本発明による方法および装置によって、長い深海パイプラインに必要なすべてのラインパイプ継手から取り出した試験リングの代表サンプルの試験が可能になり、これらの各試験片の外部静水圧崩壊に耐える能力の直接的、物理定量的な証左をもたらし得る。
【0075】
リング圧力崩壊試験の前に初期試験を実施し、試験リングが試験装置に正しく組み立てられていることを確認することにより、崩壊試験の精度が向上する。初期試験の実施は、各崩壊圧力リング試験を互いに整合させ、リング圧力崩壊試験の誤った適用による許容できない結果を防ぐのに役立つ。
【0076】
(実施例)
圧力室内の3つの圧力例、0、13.8、および27.6MPaを使用して、D/t=20.5の鋼製試験リングで試験を実施した。試験リングは、外径32インチ(812.8mm)、壁厚39mmのパイプから切断した。試験リングの長さは、50mmであった。
【0077】
試験リングは、崩壊圧力試験の状況を再現する様式で試験装置に取り付けた。液圧ラムを配置し、試験リングに取り付ける。
【0078】
圧力室内の圧力は、圧力例、0、13.8、および27.6MPaの1つを最初に適用した。その後、ラム内の圧力をゆっくりと上昇させた。ラムによって加えられる力を測定し、リングの横方向の胴体移動を2つの変位変換器によって測定した。各試験では、異なる鋼製リングと新しいゴム製シールリングを使用した。各試験は約120分間続け、時間およびラムへの測定荷重を記録した。力の速度を測定し、試験中に約0.002kN/分~約0.04kN/分に上昇するようにした。
【0079】
結果を
図9および
図10に示す。結果から、シールリングに対する鋼製リングの非常に小さな移動(約0
.1mm)が見られた後、横方向の拘束力(すなわち、ラム力(52))は実質的に一定のままであることが示された(
図9)。また、試験装置に圧力が加えられていない場合、ラム力は非常に小さいことも示された。これにより、本装置を使用する圧力崩壊試験の開始時に、ゴム製シールリングはほとんど変形していないことが確認される。シールリングによって加えられる抵抗力は、試験リングに加えられる圧力が増加するにつれて増加する。
【0080】
当業者であれば、現在開示されている方法および装置は、限定ではなく例として教示していることが理解されよう。したがって、上記の説明に含まれるまたは添付の図面に示される事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されるべきである。添付の特許請求の範囲は、言語の問題としてそれらの中間に属する可能性がある、本明細書に記載されているすべての一般的および特定の特徴、ならびに本方法および装置の範囲のすべての記述を包含することが意図される。