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特許7190228複合材料の分別回収システム及び分別回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】複合材料の分別回収システム及び分別回収方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20221208BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20221208BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20221208BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20221208BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20221208BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08J11/06
B09B3/70
B09B5/00 Q
B09B101:75
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022161634
(22)【出願日】2022-10-06
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2021175264
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507330578
【氏名又は名称】株式会社ダイトク
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】星山 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】澤田 彰太郎
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-212434(JP,A)
【文献】特開2004-098056(JP,A)
【文献】特開2012-025017(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103131042(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103435838(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101054446(CN,A)
【文献】特開2013-103223(JP,A)
【文献】特開平03-001908(JP,A)
【文献】特開昭54-076682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B17/00-17/04
C08J11/00-11/28
B09B1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料から、該合成樹脂と該金属体とを夫々分別回収する複合材料の分別回収システムであって、
前記複合材料を浸漬させて前記合成樹脂を前記金属体から剥離させるための剥離溶液が収容された剥離槽と、
複数の前記複合材料を前記剥離槽に収容された前記剥離溶液に浸漬させた後の混合物であって、剥離された前記合成樹脂と前記金属体とを含んだ混合物を洗浄するための洗浄液が収容された洗浄槽と、
前記洗浄槽に収容された前記洗浄液によって洗浄された前記混合物から水分を除去するための水分除去装置と、
前記混合物に所定の外力を作用させることで該混合物を前記合成樹脂と前記金属体とに分別する分別装置と、
を備え
前記剥離溶液が、ベンジルアルコール水溶液であって、70℃以上の液温の前記剥離溶液中に前記複合材料を浸漬して、前記合成樹脂を前記金属体から剥離させる、
複合材料の分別回収システム。
【請求項2】
所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料から、該合成樹脂と該金属体とを夫々分別回収する複合材料の分別回収方法であって、
剥離溶液に前記複合材料を浸漬させて、前記合成樹脂を前記金属体から剥離させる剥離ステップと、
複数の前記複合材料を前記剥離溶液に浸漬させた後の混合物であって、剥離された前記合成樹脂と前記金属体とを含んだ混合物を洗浄する洗浄ステップと、
洗浄された前記混合物から水分を除去する水分除去ステップと、
前記混合物に所定の外力を作用させることで該混合物を前記合成樹脂と前記金属体とに分別する分別ステップと、
を有し、
前記剥離溶液が、ベンジルアルコール水溶液であって、前記剥離ステップでは、70℃以上の液温の前記剥離溶液中に前記複合材料を浸漬して、前記合成樹脂を前記金属体から剥離させる、
複合材料の分別回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料の分別回収システム及び分別回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カプセルや錠剤、食料品等を包装するために、合成樹脂層と金属箔層からなる包装用多層フィルムが大量に生産・使用されている。また、アルミニウムインゴット等において、金属表面を保護するために、金属表面に貼付される合成樹脂シートが用いられることがある。そして、上記の包装用多層フィルムについて、例えば、カプセル、錠剤を包装する際には、アルミ箔を含むPTPシートが使用されるが、このような包装容器は、使用後、その殆ど全てが廃棄(埋め立て処理や焼却処理)されている。
【0003】
このように合成樹脂層と金属箔層からなる包装用多層フィルムのリサイクル性が乏しい要因は、使用後の包装用多層フィルムから金属箔と合成樹脂とを分別回収することが難しいことにある。そこで、このような包装用多層フィルムのリサイクルを可能にする技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)を主成分とするプラスチック層とアルミニウム層を含む多層フィルムの再生方法が開示されている。この技術では、多層フィルム廃棄物のアルミニウムを選択的に溶解させて層分離を誘導し、比重差を用いてPPとPEとの混合物層とPET層に分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4574543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成樹脂と金属箔とがシート状に積層された複合材料を廃棄(埋め立て処理や焼却処理)することなくリサイクルするためには、使用後に集められた又は製造過程で不良品として集められた上記の複合材料を合成樹脂と金属箔とに分離し、各材料においてリサイクルする必要がある。しかしながら、カプセルや錠剤、食料品等を吸湿、変質から守り清潔な状態を保ってこれらを包装可能にするために用いられる上記の複合材料では、合成樹脂と金属箔とが接着剤で隙間なく接合されているため、各材料に分離することに困難性を伴う。そして、金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料については、例えば、アルミニウムインゴット等の表面に貼付された合成樹脂シートの分別回収においても困難性を伴うことがある。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の技術によれば、粉砕されたアルミニウム層が含まれた多層廃フィルムを反応器に投入し、アルミニウムを溶解させる液体で処理することにより、アルミニウム層を選択的に溶解させることで、プラスチック層とアルミニウム層とを分離することができる。しかしながら、このようにアルミニウム層を溶解させるためには、多層廃フィルムを比較的小さく粉砕する必要があり、処理工程に多くの手間とエネルギーが必要となるばかりか、小さく粉砕された多層廃フィルムの取扱性が悪くなることで該多層廃フィルムのリサイクル性に悪影響を及ぼす虞もある。このように、所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料を優れたリサイクル性で分別回収する技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の複合材料の分別回収システムは、所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料から、該合成樹脂と該金属体とを夫々分別回収する複合材料の分別回収システムである。この複合材料の分別回収システムは、前記複合材料を浸漬させて前記合成樹脂を前記金属体から剥離させるための剥離溶液が収容された剥離槽と、複数の前記複合材料を前記剥離槽に収容された前記剥離溶液に浸漬させた後の混合物であって、剥離された前記合成樹脂と前記金属体とを含んだ混合物を洗浄するための洗浄液が収容された洗浄槽と、前記洗浄槽に収容された前記洗浄液によって洗浄された前記混合物から水分を除去するための水分除去装置と、前記混合物に所定の外力を作用させることで該混合物を前記合成樹脂と前記金属体とに分別する分別装置と、を備える。
【0010】
上記の複合材料の分別回収システムでは、剥離槽に収容された剥離溶液に浸漬させた後の混合物が洗浄液によって洗浄されることで、複合材料から分別回収された合成樹脂と金属体とに剥離溶液由来の臭気が残存することを抑制でき、以て、複合材料に対する優れたリサイクル性を実現することができる。そして、水分除去装置によって洗浄後の上記の混合物から水分が除去されることで、剥離された合成樹脂と金属体とが水分によって密着してしまう事態を抑制することができる。つまり、剥離された合成樹脂と金属体との間に隙間を形成することができる。分別装置は、このようにして形成された隙間を有する上記の混合物に対して外力を作用させることで、好適に合成樹脂と金属体とに分別することができる。ここで、前記複合材料は、前記合成樹脂と金属箔とがシート状に積層されたものであってもよい。この場合、前記分別装置は、前記混合物に含まれる前記合成樹脂又は/及び前記金属箔の一片であって、所定面積以上の大きさを有する一片に対して、前記外力を作用させることで前記合成樹脂と前記金属箔とに分別してもよい。このように、分別装置が所定面積以上の大きさを有する一片に対して外力を作用させることによれば、広い範囲に外力が作用することになり、該一片に対して比較的大きな力を作用させることができる。そのため、合成樹脂と金属箔とを好適に分別することが可能になる。以上により、リサイクル性に優れた分別回収技術を提供することができる。なお、上記の複合材料の分別回収システムは、前記混合物に照射した光の反射に基づいて、該混合物から前記合成樹脂を選別する光学式選別装置を更に備えてもよい。
【0011】
ここで、本開示の複合材料の分別回収システムでは、上記の所定面積以上の大きさを有する一片に対して作用させる外力について、前記分別装置は、前記混合物に風を送る送風機を備え、該混合物に風力を作用させることで分別してもよい。これによれば、剥離された合成樹脂と金属箔との間に形成された隙間に送風機からの風が作用することになり、所定面積以上の大きさを有する一片の広い範囲に風力が作用することで該一片に対して比較的大きな力を作用させることができる。そのため、合成樹脂と金属箔とを好適に分別することが可能になる。
【0012】
また、以上に述べた複合材料の分別回収システムにおいて、前記剥離溶液が、ベンジルアルコール水溶液であって、70℃以上の液温の前記剥離溶液中に前記複合材料を浸漬して、前記合成樹脂を前記金属体から剥離させてもよい。これによれば、複合材料から分別回収された合成樹脂と金属体とに剥離溶液由来の臭気が残存することを好適に抑制できるとともに、剥離工程の時間の短縮化を図ることができる。
【0013】
また、本開示は、複合材料の分別回収方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の複合材料の分別回収方法は、合成樹脂と金属箔とがシート状に積層された複合材料から、該合成樹脂と該金属箔とを夫々分別回収する複合材料の分別回収方法であって、剥離溶液に前記複合材料を浸漬させて、該複合材料を前記合成樹脂と前記金属箔とに剥離させる剥離ステップと、複数の前記複合材料を前記剥離溶液に浸漬させた後の混合物であって、剥離された前記合成樹脂と前記金属箔とを含んだ混合物を洗浄する洗浄ステップと、洗浄された前記混合物から水分を除去する水分除去ステップと、振動を与えながら、前記水分除去ステップで処理された前記混合物を搬送する搬送ステップと、搬送された前記混合物に所定の外力を作用させることで該混合物を前記合成樹脂と前記金属箔とに分別する分別ステップと、を有する。そして、前記分別ステップでは、前記混合物に含まれる前記合成樹脂又は/及び前記金属箔の一片であって、所定面積以上の大きさを有する一片に対して、前記外力を作用させることで前記合成樹脂と前記金属箔とに分別する。
【0014】
そして、本開示の複合材料の分別回収方法において、前記分別ステップでは、前記混合物に風を送る送風機によって該混合物に風力を作用させることで前記合成樹脂と前記金属箔とに分別してもよい。
【0015】
また、本開示の複合材料の分別回収方法は、所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料から、該合成樹脂と該金属体とを夫々分別回収する複合材料の分別回収方法であって、剥離溶液に前記複合材料を浸漬させて、前記合成樹脂を前記金属体から剥離させる剥離ステップと、複数の前記複合材料を前記剥離溶液に浸漬させた後の混合物であって、剥離された前記合成樹脂と前記金属体とを含んだ混合物を洗浄する洗浄ステップと、洗浄された前記混合物から水分を除去する水分除去ステップと、前記混合物に所定の外力を作用させることで該混合物を前記合成樹脂と前記金属体とに分別する分別ステップと、を有し、前記剥離溶液が、ベンジルアルコール水溶液であって、前記剥離ステップでは、70℃以上の液温の前記剥離溶液中に前記複合材料を浸漬して、前記合成樹脂を前記金属体から剥離させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における複合材料の分別回収システムの概略構成を示す図である。
図2】剥離槽を用いたPTPシートの剥離工程を説明するための図である。
図3】水分除去工程後の合成樹脂シートおよびアルミニウム箔について、水分除去を行わない場合と比較して説明するための図である。
図4】分別装置を用いた分別回収工程を説明するための図である。
図5】第1実施形態の変形例における複合材料の分別回収方法の処理フローを示すフローチャートである。
図6】分別装置を用いた分別回収工程の変形例を説明するための第1の図である。
図7】分別装置を用いた分別回収工程の変形例を説明するための第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態における複合材料の分別回収システムの概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における複合材料の分別回収システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る分別回収システム1は、合成樹脂と金属箔とがシート状に積層された複合材料から、該合成樹脂と該金属箔とを夫々分別回収するシステムである。なお、本実施形態では、上記の複合材料が、カプセルや錠剤の包装に用いられるシートであって、合成樹脂シート(例えば、ポリ塩化ビニルのシート)とアルミニウム箔とが接着剤で隙間なく接合されたPTPシートである場合を例にして、以下に説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る分別回収システム1は、剥離溶液100が収容された剥離槽10と、PTPシート2を剥離溶液100に浸漬させた後の混合物を洗浄する洗浄槽20と、前記混合物から水分を除去するための水分除去装置30と、該混合物を搬送するコンベア40と、コンベア40によって搬送された混合物を合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに分別する分別装置50と、備える。
【0021】
また、本実施形態では、分別回収システム1が搬送装置60を有して構成される。搬送装置60は、PTPシート2が収容された金属メッシュ状の搬送容器3を搬送するための装置であって、例えば、建物の天井に設置されたレールに沿って摺動する摺動部と、搬送容器3を保持する保持部と、を備える。そうすると、この搬送装置60を用いて、PTPシート2が収容された搬送容器3を剥離槽10の剥離溶液100に浸漬させた後に該搬送容器3を洗浄槽20に搬送し、更に、該搬送容器3を洗浄槽20から水分除去装置30へと搬送することができる。
【0022】
ここで、分別回収システム1を構成する各構成要素について、以下に詳しく説明する。
【0023】
剥離槽10は、PTPシート2を浸漬させて合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに剥離させるための剥離溶液100を収容する。この剥離槽10を用いたPTPシート2の剥離工程について、図2に基づいて説明する。図2は、剥離槽10を用いたPTPシート2の剥離工程を説明するための図である。
【0024】
図2に示すように、剥離槽10には剥離溶液100が収容されている。そして、剥離槽10には、更に、温調装置11が備えられている。ここで、剥離溶液100は、ベンジルアルコール水溶液であって、70℃以上の液温の剥離溶液100中にPTPシート2が浸漬される。このとき、剥離溶液100の液温は、温調装置11によって調整される。温調装置11は、ヒーターと温度センサとを備えた周知の温調装置であって、温度センサで検出した液温に基づいてヒーターの作動を制御することで、剥離溶液100の液温を目標温度に維持することができる。
【0025】
また、図2(a)に示すように、PTPシート2が搬送容器3に収容されるが、このとき、PTPシート2は、粉砕や破砕されていない状態で搬送容器3に収容される。つまり、PTPシート2は、使用後に集められた又は製造過程で不良品として集められた収集状態から、粉砕や破砕の工程を行うことなく、搬送容器3に収容される。なお、収集状態のPTPシート2は、図2(a)に示すように、一つの錠剤等を収納する空間を形成する単位シートが複数連結されたシート(該シートが有する単位シート毎に錠剤等が収納されることで、該シートに複数の錠剤等が収納されることになる。)の状態や、一つの錠剤等を収納する空間を形成する単位シートの状態である。
【0026】
ここで、従来技術によれば、複合材料から合成樹脂と金属箔とを夫々分別回収するために、粉砕や破砕された複合材料に対して所定の処理が実施される。しかしながら、複合材料を粉砕や破砕するためには、処理工程に多くの手間とエネルギーが必要となるばかりか、小さく粉砕された複合材料の取扱性が悪くなることで該複合材料のリサイクル性に悪影響を及ぼす虞もある。
【0027】
これに対して、本開示の分別回収システムによれば、上記の収集状態の複合材料に対して剥離処理が実施されることで、複合材料の取扱性が悪化しないばかりか、該複合材料の分別回収工程全体での歩留まりが良くなることで該複合材料のリサイクル性が向上する。また、収集状態の複合材料に対して分別回収処理が行われるので、後述する分別装置50において、所定面積以上の大きさを有する合成樹脂又は/及び金属箔の一片に対して外力を作用させることが可能になり、以て、好適に合成樹脂と金属箔とに分別することが可能になる。
【0028】
そして、上述したようなPTPシート2が収容された搬送容器3が、図2(b)に示すように、剥離槽10の剥離溶液100に浸漬される。ここで、上述したように、搬送容器3が金属メッシュで形成されているため、搬送容器3が剥離溶液100に浸漬されることで、PTPシート2が剥離溶液100に浸漬されることになる。
【0029】
このようにPTPシート2が剥離溶液100に浸漬されると、PTPシート2において合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを隙間なく接合する接着剤が溶解され、PTPシート2が、合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに剥離されることになる。なお、上述したように、本実施形態では、剥離溶液100にベンジルアルコール水溶液が用いられる。ここで、剥離溶液100がアミノ系溶剤であっても、PTPシート2において上記の接着剤を溶解させ、合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔と剥離させることが可能である。しかしながら、仮に、剥離溶液100にアミノ系溶剤が用いられると、後述する洗浄工程を実施したとしても、PTPシート2から分別回収された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに剥離溶液100由来の刺激臭が残存してしまうことを本開示人は見出した。これに対して、剥離溶液100にベンジルアルコール水溶液を用いることで、PTPシート2から分別回収された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに剥離溶液100由来の臭気が残存することを抑制できることが新たに見出された。
【0030】
なお、好ましくは、図2に示す剥離工程において、PTPシート2が、80℃の液温の剥離溶液100(ベンジルアルコール水溶液)に3時間浸漬される。これによれば、PTPシート2を合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに好適に剥離させながら、その剥離工程の時間を可及的に短縮することができる。
【0031】
また、上述したように、本開示の分別回収システムによれば、上記の収集状態の複合材料に対して剥離処理が実施される。そのため、上述した剥離工程において、剥離溶液100が攪拌される必要がない。仮に、粉砕や破砕された複合材料に対して剥離処理が実施される場合には、剥離溶液100中で複合材料が密に重なり合うため、該複合材料が剥離溶液100中で十分に移動せしめられる程度に該剥離溶液100が攪拌されないと、剥離溶液100が複合材料に十分に浸透しない虞がある。これに対して、収集状態の複合材料は、所定の大きさを有するため、剥離溶液100中で該複合材料同士が隙間を持って重なり合うことになり、剥離溶液100を攪拌せずとも該剥離溶液100を複合材料に十分に浸透させることができる。これにより、攪拌のためのエネルギーを削減することが可能になる。ただし、剥離溶液100における溶媒と溶質の混合状態を維持することを目的にして、剥離工程において剥離溶液100が攪拌されてもよい。この場合であっても、剥離溶液100中で複合材料を十分に移動させる程度にまで攪拌されないため、攪拌のためのエネルギーを可及的に削減することができる。
【0032】
そして、図1に戻って、洗浄槽20は、複数のPTPシート2を剥離槽10に収容された剥離溶液100に浸漬させた後の混合物であって、剥離された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを含んだ混合物を洗浄するための洗浄液を収容する。そうすると、上記の混合物が収容された搬送容器3が洗浄槽20の洗浄液に浸漬されることで、該混合物が洗浄液に浸漬されることになり、該混合物が洗浄される。このとき、上述した搬送装置60が、PTPシート2が収容された搬送容器3を剥離槽10の剥離溶液100に浸漬させた後に該搬送容器3を洗浄槽20に搬送し、剥離された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを含んだ混合物を洗浄槽20の洗浄液に浸漬させることで、剥離工程と洗浄工程とを連続的に実施することができる。
【0033】
ここで、上記の洗浄液は、例えば、界面活性剤を含んだ洗浄液、剥離溶液100の中和剤を含んだ洗浄液、湯等である。そして、このような洗浄液を用いて上記の混合物を洗浄することで、PTPシート2から分別回収された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに剥離溶液100由来の臭気が残存することを抑制でき、以て、PTPシート2に対する優れたリサイクル性を実現することができる。
【0034】
そして、水分除去装置30は、洗浄槽20に収容された洗浄液によって洗浄された上記の混合物から水分を除去するための装置であって、例えば、脱水装置や乾燥装置等である。このときにも、上述した搬送装置60が、PTPシート2から剥離された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔との混合物が収容された搬送容器3を洗浄槽20の洗浄液に浸漬させた後に該搬送容器3を水分除去装置30に搬送し、該混合物を水分除去装置30に投入することで、水分除去工程を連続的に実施することができる。
【0035】
このような水分除去装置30を用いて上記の混合物の水分除去工程を実施することで、後述する分別装置50において、好適に合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを分別することが可能になる。これについて、図3に基づいて以下に詳しく説明する。
【0036】
図3は、水分除去工程後の合成樹脂シートおよびアルミニウム箔について、水分除去を行わない場合と比較して説明するための図である。ここで、仮に、洗浄後の上記の混合物から水分除去を行わない場合には、図3(a)に示すように、合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とが水分によって密着してしまう。これに対して、水分除去工程が実施されると、図3(b)に示すように、剥離された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔との間に隙間を形成することができる。これにより、後述する分別装置50において、好適に合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを分別することが可能になる。なお、水分除去装置30によって、上記の混合物から可及的に水分が除去されることが望ましいが、該混合物から完全に水分が除去されることまでは要さない。
【0037】
そして、図1に戻って、コンベア40は、水分除去装置30で処理された上記の混合物を搬送するためのコンベアであって、該混合物に振動を与えながら搬送する。ここで、コンベア40は、搬送物に振動を与えながら搬送できるものであればその種類は問わず、例えば、振動モータ(バイブレーター)を備えた周知の振動コンベアである。そして、このようなコンベア40によって、水分除去装置30から分別装置50へと合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔との混合物が搬送される。これによれば、振動を与えながら水分除去装置30から分別装置50へと混合物を搬送できるため、この搬送過程で合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とが重なり合ってしまう事態を抑制することができる。また、仮に、水分除去工程後の合成樹脂シートおよびアルミニウム箔に水分が残っていたとしても、この搬送過程で水分により合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とが密着してしまう事態を抑制することができる。
【0038】
そして、分別装置50は、コンベア40によって搬送された混合物を収容する。そして、分別装置50は、上記の混合物に所定の外力を作用させることで該混合物を合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに分別する。本実施形態では、分別装置50は、上記の混合物に風を送る送風機51を備え、該混合物に風力を作用させることで合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに分別する。なお、送風機51は、羽根車の回転運動によって風を送る装置であって、周知のファン等を用いることができる。
【0039】
ここで、PTPシート2から合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを分別回収する分別回収工程について、図4に基づいて説明する。図4は、分別装置50を用いた分別回収工程を説明するための図である。
【0040】
図4(a)に示すように、分別装置50には、コンベア40によって搬送された複数の混合物(合成樹脂シートとアルミニウム箔とに剥離された複数のPTPシート2)が収容される。そして、分別装置50に収容された上記の混合物に対して、送風機51からの風が供給される。
【0041】
そうすると、図4(b)に示すように、合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔との隙間に風が作用することになる。ここで、本開示の分別回収システム1によれば、上述したように、水分除去工程およびコンベア40による搬送工程によって、剥離された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とが密着してしまう事態が抑制される。そのため、剥離された合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔との間に形成された隙間に送風機51からの風が作用することになる。
【0042】
そして、この分別回収工程では、上記の混合物に含まれる合成樹脂シート(PVCシート)又は/及びアルミニウム箔の一片であって、所定面積以上の大きさを有する一片に対して、送風機51からの風力を作用させることで合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに分別する。ここで、上述したように、本開示の分別回収システム1では、収集状態のPTPシート2に対して、剥離、洗浄、水分除去、分別の処理が実行される。そして、収集状態のPTPシート2は、上述した単位シートが複数連結されたシートの状態や単位シートの状態である。したがって、上記の所定面積以上の大きさを有する一片が、単位シートが複数連結されたシートの大きさを有する一片、または単位シートの大きさを有する一片となる。つまり、本開示の所定面積とは、少なくとも単位シートの大きさによって定義される面積であって、例えば、単位シートが1cm×1cmの大きさを有する場合には、上記の所定面積は1平方cmとなる。
【0043】
このように、所定面積以上の大きさを有する一片に対して風力を作用させることで、該一片に対してより大きな力を作用させることが可能になり、合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを好適に分別することができる。ここで、図4に示す例は、単位シートが複数連結されたシートの大きさを有する一片に対して風力が作用する場合であって、図4(c)に示すように、該一片の広い範囲に風力が作用することで、アルミニウム箔よりも比重が小さい合成樹脂シート(PVCシート)が風によって吹き飛ばされることになり、該合成樹脂シート(PVCシート)が風下側に集められる。このようにして、混合物から合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを分別回収することができる。なお、送風機51からの風量が比較的少なかったとしても、所定面積以上の大きさを有する一片の広い範囲に風力が作用することで該一片に対して比較的大きな力を作用させることができるため、分別回収のためのエネルギーを削減することが可能になる。また、所定面積以上の大きさを有する一片を対象にして分別回収処理を実行することで、複合材料の取扱性が悪化することがなく、更に、粉砕や破砕された複合材料と比較して歩留まり良く分別回収処理を実行できるため、複合材料のリサイクル性が向上する。
【0044】
なお、上述したようにして分別回収されたアルミニウム箔は、例えば、アルミニウムとアルカリ溶液とを反応させて水素を発生させる水素発生装置に投入され、発生した水素を利用して発電が行われることでリサイクルされる。また、合成樹脂シート(PVCシート)は、例えば、破砕された後に任意の形状に成型されてリサイクルされる。
【0045】
以上に述べた分別回収システム1によれば、合成樹脂と金属箔とがシート状に積層された複合材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することができる。
【0046】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例について、図5に基づいて説明する。本変形例は、合成樹脂と金属箔とがシート状に積層された複合材料から、該合成樹脂と該金属箔とを夫々分別回収する複合材料の分別回収方法である。
【0047】
そして、図5は、本変形例における複合材料の分別回収方法の処理フローを示すフローチャートである。
【0048】
本フローでは、先ず、S101において、剥離ステップが実行される。S101の処理では、剥離溶液に上記の複合材料を浸漬させて、該複合材料を合成樹脂と金属箔とに剥離させる。なお、この剥離ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。
【0049】
次に、S102において、洗浄ステップが実行される。S102の処理では、複数の複合材料を上記の剥離溶液に浸漬させた後の混合物であって、剥離された合成樹脂と金属箔とを含んだ混合物を洗浄する。なお、この洗浄ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。
【0050】
次に、S103において、水分除去ステップが実行される。S103の処理では、洗浄された上記の混合物から水分を除去する。なお、この水分除去ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。
【0051】
次に、S104において、搬送ステップが実行される。S104の処理では、振動を与えながら、水分除去ステップで処理された混合物を搬送する。なお、この搬送ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。
【0052】
次に、S105において、分別ステップが実行される。S105の処理では、搬送された混合物に所定の外力を作用させることで該混合物を合成樹脂と金属箔とに分別する。なお、この分別ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。そして、S105の処理の後、本フローの実行が終了され、複合材料から合成樹脂と金属箔とが分別回収されることになる。
【0053】
そして、以上に述べた複合材料の分別回収方法によっても、合成樹脂と金属箔とがシート状に積層された複合材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することができる。
【0054】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。上記の実施形態では、PTPシートから合成樹脂シートとアルミニウム箔とを分別回収する例について説明したが、本開示の複合材料の分別回収システムは、例えば、食料品等を包装するフィルムであって、合成樹脂層と金属箔層からなる包装用多層フィルムに用いられてもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、分別装置50に収容された混合物に、送風機51からの風力を作用させることで合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに分別する例について説明したが、本開示の複合材料の分別回収システムにおける分別装置は、このような分別装置50に限定されない。分別回収システム1は、例えば、収容された混合物に磁力や静電気力を作用させることで合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに分別する分別装置を備えてもよい。
【0056】
ここで、図6は、分別装置を用いた分別回収工程の変形例を説明するための第1の図である。図6に示す例における分別装置は、ネオジム磁石52を有する。そして、分別装置に収容された混合物に含まれる合成樹脂シート(PVCシート)又は/及びアルミニウム箔の一片であって、所定面積以上の大きさを有する一片に対して、ネオジム磁石52からの磁力を作用させることで合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに分別する。この場合、図6に示すように、アルミニウム箔がネオジム磁石52に吸引されることで、該アルミニウム箔がネオジム磁石52に集められる。このようにして、混合物から合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを分別回収することができる。なお、所定面積以上の大きさを有する一片の広い範囲に磁力が作用することで該一片に対して比較的大きな力を作用させることができるため、合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とを好適に分別することが可能になる。
【0057】
なお、分別装置が、収容された混合物に静電気力を作用させることで合成樹脂シート(PVCシート)とアルミニウム箔とに分別する場合には、分別装置が、例えば、静電気吸着ボードを有していてもよい。
【0058】
また、本開示の複合材料の分別回収システムは、分別装置として、比重選別装置と、光学式選別装置と、を備えてもよい。図7は、分別装置を用いた分別回収工程の変形例を説明するための第2の図である。図7に示す例における分別装置は、比重選別装置53と、光学式選別装置54と、を有する。ここで、比重選別装置53は、例えば、所定の比重液に混合物を浸漬し、金属と合成樹脂との比重差によってこれらを液中で上層部と下層部に分別することができる。また、光学式選別装置54は、混合物に照射した光の反射に基づいて、該混合物から合成樹脂を選別する装置である。これら装置を備える複合材料の分別回収システムによっても、所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料に対して、高いリサイクル性で分別回収を実施することができる。
【0059】
そして、所定の剥離溶液100が収容された剥離槽10と、洗浄槽20と、水分除去装置30と、分別装置50と、を備えた複合材料の分別回収システムでは、アルミニウムインゴット等の表面に貼付された合成樹脂シートの分別回収も好適に実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・・・分別回収システム
2・・・・・PTPシート
10・・・・剥離槽
100・・・剥離溶液
20・・・・洗浄槽
30・・・・水分除去装置
40・・・・コンベア
50・・・・分別装置
【要約】
【課題】所定の金属体に対して合成樹脂がシート状に積層された複合材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供する。
【解決手段】本開示の複合材料の分別回収システム1は、合成樹脂と金属箔とがシート状に積層された複合材料2から、該合成樹脂と該金属箔とを夫々分別回収するシステムである。この複合材料の分別回収システム1は、剥離溶液100が収容された剥離槽10と、剥離された合成樹脂と金属箔とを含んだ混合物を洗浄する洗浄槽20と、洗浄された混合物から水分を除去する水分除去装置30と、該混合物に所定の外力を作用させることで該混合物を合成樹脂と金属箔とに分別する分別装置50と、を備える。そして、分別装置50は、混合物に含まれる合成樹脂又は/及び金属箔の一片であって、所定面積以上の大きさを有する一片に対して、外力を作用させることで合成樹脂と金属箔とに分別してもよい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7