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特許7190236フッ素および塩素が共ドープされたコア領域を有する低損失光ファイバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】フッ素および塩素が共ドープされたコア領域を有する低損失光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20221208BHJP
   G02B 6/028 20060101ALI20221208BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02B6/02 376A
G02B6/028
G02B6/036
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020216261
(22)【出願日】2020-12-25
(62)【分割の表示】P 2017553901の分割
【原出願日】2016-04-07
(65)【公開番号】P2021067952
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】62/147,777
(32)【優先日】2015-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ダナ クレイグ ブックバインダー
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ジョン イ
(72)【発明者】
【氏名】プシュカー タンドン
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-536190(JP,A)
【文献】特表2010-501894(JP,A)
【文献】特表2007-503028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0114935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/036
6/10
6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバにおいて、
1550nmの波長で0.17dB/km未満の減衰を有するファイバ、
を備え、該ファイバは、
6以上のアルファを有するグレーデッド屈折率プロファイルを有する該ファイバ中のコア領域、および
前記コア領域を取り囲む該ファイバ中の第1のクラッド領域、
を含み、
前記コア領域は、1.2質量%以上で塩素が、0.1質量%と1質量%の間でフッ素が共ドープされたシリカから作られた、光ファイバ。
【請求項2】
前記コア領域が、純粋なシリカと比べて、-0.05%から0%の相対屈折率Δを有する、請求項1記載のファイバ。
【請求項3】
前記第1のクラッド領域が、(a)前記コア領域を取り囲み、相対屈折率Δを有する、内部クラッド領域、及び、(b)前記内部クラッド領域を取り囲み、相対屈折率Δを有する、低下クラッド領域を含み、前記コア領域が、式:Δ≧Δ≧Δを満たす相対屈折率Δを有する、請求項1に記載のファイバ。
【請求項4】
光ファイバにおいて、
1550nmの波長で0.17dB/km未満の減衰を有するファイバ、
を備え、該ファイバは、
6以上のアルファを有するグレーデッド屈折率プロファイルを有する、該ファイバ中のコア領域であって、純粋なシリカと比べて、-0.05%から0%の相対屈折率Δを有するコア領域;および
前記コア領域を取り囲む該ファイバ中の第1のクラッド領域、
を含み、
前記コア領域は、フッ素と1.2質量%以上の塩素が共ドープされたシリカを含み、該ファイバが、1310nmの波長で8.2μmから9.5μmのモードフィールド径(MFD)を有する、光ファイバ。
【請求項5】
前記ファイバが、直径20mmのマンドレル上で、波長1550nmで、1.5dB/turn以下のマクロベンド損失を有する、請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記ファイバが、直径15mmのマンドレル上で、波長1550nmで、5dB/turn以下のマクロベンド損失を有する、請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記ファイバが、直径30mmのマンドレル上で、波長1550nmで、0.025dB/turn以下のマクロベンド損失を有する、請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項8】
光ファイバにおいて、
1550nmの波長で0.17dB/km未満の減衰を有するファイバ、
を備え、該ファイバは、
6以上のアルファを有するグレーデッド屈折率プロファイルを有する、該ファイバ中のコア領域であって、純粋なシリカと比べて、-0.05%から0%の相対屈折率Δを有するコア領域;および
前記コア領域を取り囲む該ファイバ中の第1のクラッド領域、
を含み、
前記コア領域は、フッ素と1.2質量%以上の塩素が共ドープされたシリカを含み、該ファイバが、1550nmの波長で9.0μmから14μmのモードフィールド径(MFD)を有する、光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2015年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/147777号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、データ伝送のための低コストで低減衰の光ファイバに関し、より詳しくは、共ドープされたコア領域を有するファイバ設計に関する。
【背景技術】
【0003】
低減衰(例えば、0.17dB/km以下の減衰値を有するファイバ)は、データを効率的に伝送するように構成された光ファイバの重要な特徴である。
【0004】
ファイバの非線形性も、高速の長距離伝送用途に使用される光ファイバの性能を制限する要因である。一般に、ファイバの非線形性は、ファイバの実効断面積を増加させることによって減少させることができる。これは、出力密度が実効断面積に反比例するからである。単一モード動作のために構成されたファイバ設計のいくつかは、実効断面積の増加に焦点を当ててきたが、これらの設計により達成される実効断面積は、マイクロおよびマクロベンド損失によって制限されてきた。デジタル信号処理(DSP)における最近の進歩により、伝送システムに対する線形障害(例えば、色分散および偏波モード分散(PMD))は重大な問題ではない。それでも、DSPの進歩でさえ、モード分散レベルは、やはり最小にすべきである。
【0005】
多重機構が、光ファイバにおける減衰および損失特徴に寄与し得る。これらの機構としては、レイリー散乱、小角散乱、金属および不純物関連の吸収効果、並びに他のUVおよびIR関連効果が挙げられる。ファイバにおける密度および濃度の変動が、レイリー散乱に寄与し得る。一般に、ファイバ領域(例えば、コアおよびクラッド)の組成、およびそれぞれの加工条件は、これらの機構に影響することがあると理解される。
【発明の概要】
【0006】
本開示の1つの態様は、1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を有する単一モード光ファイバに関する。このファイバは、約5超のアルファを有するグレーデッド屈折率プロファイルを有するコア領域を中に含む。そのファイバは、そのコア領域を取り囲む第1のクラッド領域も中に含む。さらに、そのコア領域は、純粋なシリカと比べて、約-0.10%から約+0.05%の相対屈折率を有する。それに加え、そのコア領域は、約1.2質量%以上で塩素が、約0.1質量%と約1質量%の間でフッ素が共ドープされたシリカから作られている。
【0007】
本開示の別の態様は、1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を有するファイバを含む単一モード光ファイバに関する。そのファイバは、フッ素および塩素が共ドープされたシリカから作られたコア領域;およびそのコア領域を取り囲む第1のクラッド領域を中に含む。さらに、そのコア領域は、5超のアルファを有するグレーデッド屈折率プロファイルを有する。それに加え、第1のクラッド領域は、コア領域の相対屈折率より低い相対屈折率を有する低下領域を含む。
【0008】
特定の態様において、これらのファイバの共ドープコア領域は、約5超かつ約12未満のアルファを有するグレーデッド屈折率プロファイルを有し得る。その共ドープコア領域は、場合によっては、約12超のアルファを有する階段状または段階的屈折率プロファイルを有し得る。
【0009】
先の光ファイバの特定の実施において、第1のクラッド領域は、コア領域の相対屈折率より低い相対屈折率を有する低下領域を含む。例えば、その低下領域の相対屈折率は、コア領域の相対屈折率よりも約0.35%Δだけ小さくあり得る。ある態様によれば、コア領域と第1のクラッド領域との間の相対屈折率差は、0.2%Δと0.5%Δの間である。
【0010】
別の態様において、前記光ファイバは、複数モード(few-mode)動作のために構成されたファイバを含むことがある。そのようなファイバは、フッ素および塩素が共ドープされたシリカから作られたコア領域を中に含む。その複数モードファイバは、純粋なシリカと比べて、約-0.10%から約+0.05%の相対屈折率を有し、約6.0マイクロメートルから約50マイクロメートルの半径を有し、1550nmの波長で2モード超かつ8モード未満で光データを伝送するように構成されたコア領域も含む。そのファイバは、そのコア領域を取り囲む第1のクラッド領域を中にさらに含む。その第1のクラッド領域は、実質的に一定であり、コア領域の相対屈折率より低い相対屈折率を有する低下領域を含む。それに加え、そのファイバは、1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を有する。
【0011】
本開示のさらなる態様において、共ドープコア領域を有する前記光ファイバは、1550nmの波長で測定して、約0.16dB/km未満の減衰を有し得、これらのファイバのあるものは、約0.15dB/km未満ほど低い減衰レベルも有する。これらの共ドープファイバは、ある場合には、約1400℃以下、約1300℃以下、約1200℃以下の仮想温度も有することがある。
【0012】
本開示の特定の態様において、前記共ドープ光ファイバは、質量パーセントのフッ素で割った質量パーセントのフッ素と塩素の合計が約1.5の係数より大きくなるように、フッ素と塩素が共ドープされたシリカコア領域を有する。特定の共ドープファイバ構成において、そのファイバ中のコア領域は、約1.2質量%以上で塩素が、約0.1質量%と約1質量%の間でフッ素が共ドープされたシリカから作られている。他の共ドープファイバ構成において、そのファイバ中のコア領域は、フッ素と塩素が共ドープされたシリカから作られ、その塩素は、約1.2質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、または3質量%以上でドープされ、そのフッ素は、約0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.4質量%以上、0.6質量%以上、0.8質量%以上、約1質量%まででドープされている。
【0013】
追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって認識されるであろう。
【0014】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示に過ぎず、請求項の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。添付図面は、本発明のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施の形態を示しており、説明と共に、様々な実施の形態の原理および動作を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】共ドープコア領域およびクラッドを有する光ファイバに関するファイバ半径の関数としての屈折率を示す概略図
図1A図1に示された光ファイバの断面図
図2】共ドープコア領域、第1のクラッド層および第2のクラッド層を有する光ファイバに関するファイバ半径の関数としての屈折率を示す概略図
図2A図2に示された光ファイバに関するファイバ半径の関数としての1650℃での粘度を示す概略図
図3】共ドープコア領域、第1のクラッド層、第2のクラッド層、および第3のクラッド層を有する光ファイバに関するファイバ半径の関数としての屈折率を示す概略図
図4】共ドープコア領域、内側クラッド、および外側クラッドを有する光ファイバに関するファイバ半径の関数としての屈折率を示す概略図
図5】共ドープ光ファイバに線引きするのに適したコアケイン内の半径方向距離の関数としてのドーパント濃度をプロットしたグラフ
図6】比較の単一ドープコアケインの例および本開示の共ドープコアケインの態様に関する温度の関数としてのコアケイン粘度をプロットしたグラフ
図7】形成したままの状態と、後徐冷した状態の、比較の単一ドープコアケインの例および本開示の共ドープコアケインの態様に関する仮想温度の棒グラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、その例が添付図面に示されている、現在好ましい実施の形態を詳しく参照する。できるときはいつでも、同じまたは同様の部品を指すために、図面に亘り、同じ参照番号が使用される。
【0017】
「屈折率プロファイル」は、屈折率または相対屈折率とファイバの半径との間の関係である。
【0018】
「μm」および「マイクロメートル」という用語は、ここでは、交換可能に使用される。
【0019】
「相対屈折率パーセント」は、下記の式(1)に定義されており:
【0020】
【数1】
【0021】
式中、ncは、未ドープシリカの屈折率であり、niは、光ファイバの特定の領域における地点iでの平均屈折率である。
【0022】
さらにここに用いたように、特に明記のない限り、相対屈折率はΔで表され、その値は「%」の単位で与えられる。Δ、%Δ、Δ%、デルタ屈折率、パーセント屈折率、パーセントデルタ屈折率、および%は、ここでは、交換可能に使用できる。ある領域の屈折率が未ドープシリカの屈折率よりも低い場合、その相対屈折率パーセントは、負であり、低下領域または低下屈折率を有すると称される。屈折率が未ドープシリカの屈折率よりも大きい場合、その相対屈折率パーセントは、正である。「アップドーパント」は、ここでは、純粋な未ドープシリカに対して屈折率を上昇させる傾向を有するドーパントと考えられる。「ダウンドーパント」は、ここでは、純粋な未ドープシリカに対して屈折率を低下させる傾向を有するドーパントと考えられる。アップドーパントの例としては、GeO2、Al23、P25、TiO2、Cl、およびBrが挙げられる。ダウンドーパントの例としては、FおよびBが挙げられる。
【0023】
光ファイバの、ここでは特に明記のない限り「分散」と称される「色分散」は、材料分散および導波路分散の合計である。ゼロ分散波長は、分散の値がゼロである波長である。分散勾配は、波長に関する分散の変化の割合である。
【0024】
「実効断面積」は、以下の式(2)に定義されており:
【0025】
【数2】
【0026】
式中、積分限界は0から∞であり、fは、導波路(すなわち、光ファイバ)内で伝搬する光に関連する電場の横成分であり、rは、ファイバの半径である。ここに用いたように、「実効断面積」または「Aeff」は、特に明記のない限り、1550nmの波長(すなわち、基本モード)での光学的実効断面積を称する。
【0027】
「アルファ」または「α-プロファイル」という用語は、Δ(r)を用いて表される相対屈折率プロファイルを称する。Δ(r)は、rが半径である「%」の単位であり、以下の式(3)にしたがう:
【0028】
【数3】
【0029】
式中、Δ1maxは、ファイバの中心のピーク屈折率変化(すなわち、コアデルタ)であり、r1はコアの半径である。ここに報告されるアルファは1550nmで測定される。α=1は、三角形の相対屈折率プロファイルに相当し、α=2は、放物線プロファイルを記述し、α>12は、ステップ型屈折率プロファイル(すなわち、ここに用いたように、「階段状屈折率プロファイル」)に近づくプロファイルに相当する。したがって、α=∞は、純粋なステップ型屈折率プロファイルに相当する。
【0030】
モードフィールド径(MFD)は、以下の式(4)にしたがって、本開示の分野で理解されるようなピーターマンII法を使用して測定される:
【0031】
【数4】
【0032】
式中、wはモードフィールド半径であり、積分限界は0から∞である。特に明記のない限り、1310nmでのMFDは、それぞれ、本開示によるG.652およびG.654の共ドープ光ファイバ構成について、約8.2μmから約9.5μm、および約9.0μmから約12μmである。1550nmでのMFDは、それぞれ、本開示によるG.652およびG.654の共ドープ光ファイバ構成について、約9.0μmから約11μm、および約9.0μmから約14μmである。
【0033】
所定のモードに関する「理論ファイバカットオフ波長」、「理論ファイバカットオフ」、または「理論カットオフ」は、導波光がそのモードでそれより上では伝搬できない波長である。その数学的定義は、Single Mode Fiber Optics, Jeunhomme, 39-44頁, Marcel Dekker, New York, 1990に見つかり、そこでは、理論ファイバカットオフは、モード伝搬定数が、外側クラッドにおける平面波伝搬定数と等しくなる波長と記載されている。この理論波長は、直径変動のない、無限に長く、完全に真っ直ぐなファイバに相応しい。
【0034】
ファイバカットオフは、「2mファイバカットオフ」または「測定カットオフ」としても知られている「ファイバカットオフ波長」を生成するために、標準2mファイバカットオフ試験であるFOTP-80(EIA-TIA-455-80)によって測定される。このFOTP-80標準試験は、制御された量の曲げを使用してより高次のモードを取り除くか、またはそのファイバのスペクトル応答を多モードファイバのスペクトル応答に正規化させるいずれかのために行われる。
【0035】
ここに用いた「ケーブルカットオフ測定」は、EIA-455-170のCable Cuttoff Wavelength of Single-mode Fiberに記載された標準22m試験、または「FOTP-170」を使用して行われる。
【0036】
ここに特に明記のない限り、光学的性質(分散、減衰など)は、LP01モードについて報告される。
【0037】
「群屈折率」としても知られている「有効群屈折率」(ngeff)は、式(5)により与えられるような、群速度vgに対する光の速度cの比である:
【0038】
【数5】
【0039】
電磁場、屈折率、波長および伝搬定数に関するファイバにおける導光モードのvgの数式は、マクスウェル方程式、またはより詳しくは、スカラー波動方程式から導かれる。群速度vgは、下記の式(6)により定義され:
【0040】
【数6】
【0041】
式中、ωは波の角周波数であり、βは、導光モードの伝搬定数である。相対屈折率とも呼ばれる伝搬定数βは、場の伝搬速度に関連する電磁場パラメータであり、選択された導波路についてスカラー波動方程式を解くことによって見つかる。βは導波路の配置に依存するので、その導波路を曲げるとβが変化すると予測するであろう。例えば、本開示に引用する、米国特許6134367号明細書の第3欄の第14~29行を参照のこと。
【0042】
光ファイバのコア領域(例えば、シリカ系ガラス組成物を含有するコア領域)にドープすると、一般に、個別基準でコア領域に導入される適切なドーパントは、ガラスの粘度を低下させる傾向にあるので、ガラスの仮想温度が低下する。ガラスの仮想温度を低下させるドーパントの多くは、コア領域における濃度変動を増加させる傾向もあり、増加したレイリー散乱効果に寄与する。したがって、いくつかのドーパントを使用するだけで、ドープ光ファイバに正味のより低い減衰が得られるように、濃度変動を著しく導入せずに、ガラスの仮想温度を低下させることができる。
【0043】
本開示で概説された光ファイバ設計は、以下に限られないが、レイリー散乱効果を含む上述した原理および検討事項に鑑みて、低損失光ファイバをもたらす共ドープコア領域で構成される。ここに用いたように、「共ドープ」は、光ファイバのコア領域への2種類以上のドーパントの導入を称する。共ドープコア領域を有する光ファイバ構成、およびそのような共ドープコア領域を生成する方法により、コア領域の粘度、レイリー散乱効果、および最終的に、ファイバ減衰の相当な低下がもたらされる。ここでの共ドープ方法およびファイバ構成により、シリカの相対屈折率に近い相対屈折率がもたらされる;その結果、そのファイバ(例えば、単一モード、複数モードおよび多モード)の目的とする動作に相応しい導波挙動を達成するために、典型的なドープレベルをクラッドに用いることができる。
【0044】
本開示の態様による共ドープファイバに、低減衰レベルが得られる。具体的には、これらのファイバのコア領域を共ドープすることによって、約0.18dB/km未満の、いくつかの実施の形態において、約0.17dB/km未満の、1550nmでの減衰レベルを得ることができる。いくつかの共ドープファイバの実施の形態によれば、約0.16dB/km未満の、また約0.15dB/km未満のさらに低い減衰レベルを得ることができる。フッ素および塩素の両方によるコア領域の共ドープにより、そのコアにおいて低粘度レベルがもたらされる。これらの低粘度レベルは、コア領域内の仮想温度および密度変動の低下に寄与し、それによりレイリー散乱効果が減少する。その上、そのファイバに塩素およびフッ素のドーパントを添加すると、これらのファイバのコア領域内の濃度変動の増加が最小になり、これは、これらの光ファイバに観察される低い減衰レベルに対するさらなる寄与である。それに加え、コア領域にフッ素と塩素の両方を含ませると、純粋なシリカの屈折率に近い相対屈折率がコア領域に生じる傾向にある。このように、クラッドの組成およびドープの調節によって、クラッド内の相対屈折率を制御すると、これらの共ドープファイバ構成に、様々な所望の導波路特性(例えば、単一モード、複数モードおよび多モード)を容易に達成できる。
【0045】
本開示に概説された共ドープ光ファイバ設計は、ファイバ中のGeO2含有量を制限することにより、単一および複数モード構成の両方において、低減衰性能について最適化することができる。さらに、光ファイバ中のゲルマニア制限コアは、レイリー散乱の効果を低下させることによって、その光ファイバの減衰性能を改善することができる。ここに用いた「GeO2制限SiO2コア」により、そのファイバが、単独または組合せで、GeO2またはTiO2を約1.0質量%未満しか含有しないことを意味する。ここに開示された共ドープファイバは、単独または組合せで、GeO2またはTiO2を好ましくは約0.5質量%未満しか、より好ましくは約0.1質量%未満しか含有しない。特定の共ドープ光ファイバの実施において、GeO2および/またはTiO2の濃度は、ゼロに近づき得る、またはゼロに設定できる。
【0046】
いくつかの実施の形態において、前記ファイバの共ドープコア領域は、フッ素および塩素ドープシリカを含む。ここに開示されたファイバのコア領域は、加えて、酸化カリウムおよび五酸化リンの1つ以上を含む。それぞれのコア領域に少量しかGeO2およびTiO2を有さないそのようなファイバは、レイリー散乱のより少ない寄与のために、さらにより低い減衰レベルを示すことができる。
【0047】
本開示の共ドープファイバの外径が、約80マイクロメートルと約150マイクロメートルの間であることが好ましい。いくつかの態様において、その共ドープファイバの外径が、約120マイクロメートルと約130マイクロメートルの間であることがある。そのファイバの特定の好ましい実施の形態は、約125マイクロメートルの外径を有する。
【0048】
GeO2制限SiO2コア中のフッ素および塩素ドーパントプロファイルを最適化することによって、減衰をより改善することができる。減衰性能を改善するために、これらのファイバの共ドープコア領域が、約5超の、ある場合、またさらには約10超のアルファを有する中程度のグレーデッド屈折率プロファイルを有し得ることが好ましい。その共ドープコア領域は、場合により、約12超のアルファを有する階段状または段階的屈折率プロファイルを有し得る。他の態様において、段階的屈折率コアの代わりに、よりグレーデッドの屈折率プロファイルをコアに使用しても差し支えない。特に、そのようなグレーデッドプロファイルは、グレーデッド屈折率を提供するためにGeO2制限コアにドープされたフッ素および塩素により、約0.5から約5のアルファ値を示し得る。必要に応じて、追加の光学的性能の利益のために、段階的、階段状またはグレーデッドコア領域に、K2Oおよび/またはP25ドーパントを導入してもよい。
【0049】
共ドープコア領域の屈折率プロファイル中の様々な漸次的変化レベルにより、コアとクラッドとの間の粘度の不一致を低下させることができる。同様に、中程度から高度のグレーデッド屈折率プロファイル(例えば、0.5から約12のアルファ)も、コア内、およびコアとクラッドとの間の熱膨張係数関連(CTE)不一致を減少させることができる。これらの効果は、共に、コアの内部応力を低下させ、より良好な減衰特性をもたらすことができる。
【0050】
共ドープコアのアルファプロファイル(すなわち、グレーデッド、階段状または段階的屈折率プロファイル)は、様々な方法を使用して達成できる。1つの手法は、グレーデッド屈折率にフッ素をドープするための不均一固結技術による。その不均一固結技術は、外付け(OVD)法および気相軸付け(VAD)法による。第2の手法は、内付け化学的気相成長(MCVD)手法による。第3の手法は、プラズマ支援化学的気相成長(PCVD)手法による。MCVDおよびPCVD手法において、光ファイバのコアは、層毎のガラス堆積により製造され、各層をドープするために使用される過程は、独立して制御することができる。
【0051】
本開示におけるファイバのコア領域は、FおよびClドーパントの両方を含有するので(例えば、フッ素、F、および塩素、Cl)、塩素およびフッ素の両方の濃度が、コアの中心からコアの外半径までの半径方向距離の関数として、おおよそ同じ量で変動することが都合よいことがあり得る。例えば、フッ素および塩素の両方は、コア領域の中心で最高であり、コアの外半径までの半径方向距離の関数として、わずかに減少し得る。各ドーパントが、不均一、グレーデッド、または階段状屈折率プロファイルで、コア中に導入されることも都合よいことがあり得る。具体的には、塩素濃度は、コアの中心で最高であり、コアの外半径でより低くあり得、ドーププロファイルは、フッ素ドーパントにより達成されるグレーデッドまたは階段状プロファイルとほぼ反対である。このように、コアの中心でのフッ素ドーパントの濃度は、比較的低いが、コアの外半径に向かって増加して、グレーデッドまたは階段状屈折率プロファイルを形成することがある。これらの様々な共ドープグレーデッドまたは階段状プロファイルは、コアの焼結段階中、または下方駆動炉内のスート堆積コアの乾燥段階中、もしくはMCVDまたはPCVD加工技術により、形成することができる。塩素ドーパントの供給源前駆体として、Cl2またはSiCl4を使用できる。フッ素ドーパントの供給源前駆体として、SiF4を使用できる。
【0052】
本開示の特定の態様において、前記共ドープ光ファイバは、質量パーセントのフッ素で割った質量パーセントのフッ素と塩素の合計が約1.5の係数より大きくなるような「共ドープ比」で、フッ素と塩素が共ドープされたシリカコア領域を有する。特別な例示の共ドープファイバ構成において、そのファイバ中のコア領域は、それぞれ、約1.5質量%および約0.6質量%で塩素およびフッ素が共ドープされたシリカから作られている。そのような実施の形態は、約3.5の共ドープ比(すなわち、3.5=(約1.5質量%のCl+約0.6質量%のF)/約0.6質量%のF)を有する。いくつかの共ドープファイバの態様において、そのコア領域は、約1.2質量%以上で塩素が、約0.1質量%と約1質量%の間でフッ素が共ドープされている。他の共ドープファイバ構成において、そのファイバ中のコア領域は、フッ素と塩素が共ドープされたシリカから作られ、そのコア領域中の塩素濃度は、約1.2質量%以上、約1.3質量%以上、約1.4質量%以上、約1.5質量%以上、約2質量%以上、約2.5質量%以上、または約3質量%以上であり、そのフッ素は、約0.1質量%以上、約0.2質量%以上、0.4質量%以上、0.6質量%以上、0.8質量%以上、約1質量%までである。このように、その共ドープ光ファイバは、コア領域中のフッ素のそれぞれの濃度レベルよりも高い塩素ドーパント濃度をコア領域中に用いることがある。いくつかの実施の形態において、そのコア領域は、約1.5質量%以上で塩素が、約0.1質量%以上かつ0.6質量%以下でフッ素が共ドープされたシリカから作られている。
【0053】
前記クラッドの組成も、所望の低い減衰特性を達成する上で重要であり得、その屈折率をコア領域の屈折率よりも低くするために、フッ素がドープされることがある。共ドープファイバの特定の態様において、クラッド内の低下領域(例えば、ドープにより達成された)の相対屈折率は、コア領域の相対屈折率よりも、約0.35%Δ以上低くあり得る。同様に、コアと、クラッドの第1のクラッド領域との間の相対屈折率差は、いくつかの実施の形態において、0.2%Δと0.5%Δの間であり得る。必要に応じて、そのクラッドは、三酸化ホウ素および塩素の1つ以上がさらにドープされてもよい。
【0054】
コアとクラッドとの間のステップ屈折率は、本開示による共ドープ光ファイバに許容される。必要に応じて、クラッド中のドーパントとして単独で、またはクラッド中にすでに存在するフッ素ドーパントへの付加物として、塩素および/またはB23を使用しても差し支えない。
【0055】
本開示の光ファイバ設計のいくつかの実施の形態において、コアおよびクラッドは、アルカリ元素(例えば、カリウム)の存在を最小にするか、なくすように構成することができる。比較してみると、アルカリドープは、他のドーパント(例えば、フッ素ドープ)に使用されるドープ過程よりも、費用がかかる。したがって、ここに開示された共ドープの無アルカリ光ファイバ設計は、加工費および製造費を減少させるために特に最適化されている。
【0056】
図1~3は、本開示の態様による、それぞれ、3つの共ドープ光ファイバ300、310および320の設計に関するファイバ半径の関数としての相対屈折率プロファイルを示す。ファイバ300、310および320のこれらの相対屈折率プロファイルは、ゼロと等しいベースライン相対屈折率として純粋な未ドープのSiO2を使用してプロットされている。これら光ファイバ設計300、310および320の各々は、本開示の態様による、1550nmでの単一モードおよび複数モード(すなわち、複数のモード)の動作スキームについて構成されてもよい。これらのファイバの特徴をさらに図示するために、ファイバ300の断面も図1Aに示されている。
【0057】
図1~3に示されるように、各共ドープファイバ300、310および320は、コア101を有する。コア101は、グレーデッドまたは階段状相対屈折率プロファイル1を形成するために、約0.5から約5、約10超、および約20超のアルファプロファイルを有し得る。コア101が約10から約20のアルファプロファイルを示すことが好ましい。コア101の相対屈折率1(Δ1)は、ファイバ半径(r)の関数として変動する。コア101はコア半径100(r1)を有する。コア101は、その中心からその半径100(r1)まで、FおよびClがドープされたSiO2を主に含有する。必要に応じて、コア101に、K2O、およびP25をドープしてもよい。これらのドーパントは、OVD、VAD、MCVD、およびPCVD加工方法により、SiO2コア101に導入してよい。
【0058】
共ドープファイバ300、310および320は、ただ1つのクラッド141(図1および1A)、2つのクラッド層を有するクラッド(図2)、または3つのクラッド層を有するクラッド(図3)を有する。そのクラッド層の全ては、FがドープされたSiO2を主に含むであろう。必要に応じて、Fドーパントに加え、様々なクラッド層中のドーパントとして、Clおよび/またはB23を用いても差し支えない。
【0059】
図1および1Aを参照すると、共ドープ光ファイバ300は、厚さ200および外半径140(r4)を持つクラッド141を有する。クラッド141の相対屈折率4(Δ4)が外半径140(r4)まで実質的に一定であることが好ましい。クラッド141の相対屈折率4は、ステップ型プロファイルであってよく、Δ2minを含む。
【0060】
図2を参照すると、共ドープ光ファイバ310は、2つのクラッド層を持ち、低下したクラッド層の相対屈折率プロファイル3および外側クラッド層の相対屈折率プロファイル4を含むクラッド141を有する。これらのクラッド層の各々は、コア領域101を取り囲む。図2に示されるように、低下したクラッド層は、外側クラッド層の相対屈折率プロファイル4よりも低い屈折率デルタを持つ相対屈折率プロファイル3を有する。これら2つのクラッド層は、合わせて、クラッド141の厚さに相当する全厚200を有する。クラッド141における相対屈折率プロファイル3および4の各々は、ステップ型プロファイルを有してもよい。
【0061】
図2にも示されるように、共ドープファイバ310の低下したクラッド層3の相対屈折率プロファイルは、Δ3minとほぼ等しい値を有することがある。図2において、低下したクラッド層の相対屈折率プロファイル3は、その相対屈折率(Δ3)がコア領域101の相対屈折率および外側クラッド層の相対屈折率(Δ4)(相対屈折率プロファイル4に相当する)よりも低いような幅m1の凹部を示す。図2に示されるように、相対屈折率プロファイル3を持つ低下したクラッド層は、半径110(r3)まで延在する。F、Clおよび/またはB23、またはそれらの組合せが、外側クラッド層(相対屈折率プロファイル4に相当する)に対する幅m1の凹部の形成を促進するために、低下したクラッド層に屈折率低下ドーパントとして含まれることがある。外側クラッド層の相対屈折率4(Δ4)が、その外半径(r4)120まで実質的に一定であることが好ましい。
【0062】
図3を参照すると、共ドープ光ファイバ320は、対応する相対屈折率プロファイル1を持つコア領域101を全てが取り囲む、内側クラッド層の相対屈折率プロファイル2、低下したクラッド層の相対屈折率プロファイル3、外側クラッド層の相対屈折率プロファイル4に対応する、3つのクラッド層を持つクラッド141を有する。相対屈折率プロファイル2、3および4に対応するクラッド層は、合わせて、全厚200を有する。さらに、内側クラッド領域は半径r2(110)まで延在し、低下したクラッド層は半径r2(110)と半径r3(120)の間に延在し、外側クラッド層は半径r3(120)と外半径r4(130)の間に延在する。
【0063】
再び図3を参照すると、その相対屈折率プロファイル3を持つ低下したクラッド層は、相対屈折率Δ3minを示す。その相対屈折率プロファイル4を持つ外側クラッド層は、相対屈折率Δ4を示し、これは、外半径r4(130)まで実質的に一定であり得る。
【0064】
クラッド141を構成するクラッド層の相対屈折率プロファイル2、3、4は、それぞれ、ステップ型プロファイルを有することがある。図3に示されるように、内側クラッド層の相対屈折率プロファイル2は、比較的一定の屈折率を含むことがあり、一方で、低下したクラッド層の相対屈折率プロファイル3は、コア領域101の相対屈折率Δ1より低く、内側クラッド層のΔ2(すなわち、相対屈折率プロファイル2に相当する)より低く、外側クラッド層の相対屈折率Δ4(すなわち、相対屈折率プロファイル4に相当する)より低い相対屈折率Δ3を有する幅wc2の溝部を含むことがある。低下したクラッド層の相対屈折率プロファイル3は、距離wc1(相対屈折率プロファイル2に対応する内側クラッド層の幅に相当する)だけ、コア領域101およびその相対屈折率プロファイル1からずれていることがある。F、Clおよび/またはB23、およびそれらの組合せが、これらのクラッド層の形成を促進するために、クラッド141を構成するクラッド層(すなわち、それぞれ、相対屈折率プロファイル2、3、および4に対応する)のいずれに屈折率低下ドーパントとして添加してもよい。
【0065】
共ドープ光ファイバ300、310および320(図1~3参照)は、単一モード動作のために構成された場合、約10と約20の間のアルファを有し得る。特定の態様において、コア領域101の相対屈折率プロファイル1は、約20以上のアルファを持つ階段状の形状を示し得る。いくつかの追加の態様において、共ドープ光ファイバ300、310および320は、約0.5から約5のアルファを有し得る。そのアルファ値は、約1から約3の範囲内にも設定されることがある。さらに、ファイバ300、310および320のコア101は、約-0.2%から約+0.1%のピーク相対屈折率Δ1maxを有することがある。そのピーク相対屈折率Δ1maxは約-0.05%から約+0.05%にも及ぶことがある。その上、ファイバ300、310および320のコア101は、単一モード動作のために構成された場合、約4から12マイクロメートルのコア半径100(r1)を有し得る。コア101の実効断面積Aeffは、約60μm2から約100μm2に及び得る。
【0066】
単一モード動作のために構成された共ドープ光ファイバ300、310および320は、ゲルマニアを含む他のドーパントの選択肢と比べ、比較的低コストのフッ素および塩素のドーパントを含む。それでも、これらの共ドープ光ファイバ設計は、波長1550nmで、約0.17dB/km未満の、典型的ではなく低い減衰を有する。特定の態様において、その共ドープ光ファイバは、約0.16dB/km未満の、さらには約0.15dB/km未満の非常に低い減衰レベルを示し得る。ファイバ300、310および320は、1550nmでの単一モード動作のために構成された場合、G.652およびG.654光ファイバ用途に特に適している。単一モード動作のために構成されたそのような共ドープ光ファイバ300、310および320は、例えば、1530nm未満、より好ましくは1500nm未満、さらにより好ましくは1260nm未満のケーブルカットオフ、および1300nmと1324nmの間のゼロ分散波長を示すことがある。G.654用途について、そのファイバは、約22ps/nm/km以下の、1550nmでの分散を有するように構成されることがある。
【0067】
共ドープ光ファイバ300、310および320(図1~3参照)は、複数モード伝搬の動作のために構成された場合(すなわち、約1400から約1700nm、より好ましくは約1500から約1625nm、最も好ましくは約1530から約1570nmで複数のモードを伝送できる)、約10以上、約20以上、好ましくは約10と20の間のアルファを有し得る。他の態様において、共ドープ光ファイバ300、310および320は、約0.5から約5に及ぶアルファで、複数モード伝搬における動作のために構成され得る。ここに用いた「複数モード伝搬」および「複数モードを伝送させられる」は、特定の波長で、2より多く8未満のモードの伝搬と定義される。ここに開示されたそのようなファイバは、2と6の間、より好ましくは2と4の間のモードを伝搬することがある。
【0068】
その上、複数モードの共ドープファイバ300、310および320のコア101は、ベースラインとして純粋なSiO2を使用した場合、約-0.2%から約+0.1%のピーク相対屈折率Δ1maxを有することがある。このピーク相対屈折率Δ1maxは、約-0.05%から約+0.05%に及ぶこともある。その上、共ドープファイバ300、310および320のコア101(すなわち、コア領域)は、複数モード動作のために構成された場合、約5マイクロメートルから約50マイクロメートルのコア半径100(r1)を有し得る。そのコア101の実効断面積Aeffは、約90μm2から少なくとも約525μm2に及び得る。
【0069】
複数モード動作のために構成された共ドープ光ファイバ300、310および320は、ゲルマニアを含む他のドーパントの選択肢と比べ、比較的低コストのフッ素および塩素のドーパントを含む。それでも、これらの光ファイバ設計は、波長1550nmで、約0.17dB/km未満の低い減衰を有する。いくつかの態様において、これらの複数モードの共ドープ光ファイバは、1550nmで、約0.16dB/km未満の、またさらには約0.15dB/km未満ほど低い、非常に低い減衰レベルを有する。複数モードに構成されたファイバ300、310および320は、G.652およびG.654光ファイバ用途に適している。それらは、大きいファイバ実効断面積、および多モード動作を必要とする低減衰用途、特に、長距離に亘る高いデータ転送速度を必要とする用途にも、よく適している。
【0070】
フッ素および塩素がドープされた低減衰の共ドープ光ファイバ300、310および320は、それでも、「応力光学」効果を受けやすいであろう。具体的には、これらのファイバは、段階的、階段状、または中程度にグレーデッドの屈折率コアの使用にもかかわらず、光学性能を低下させ得る、その製造に関連する高い内部応力を受け得る。詳しくは、これらのファイバの製造中に生じる内部応力は、それらの光伝送特性を損なう様式でその屈折率プロファイルに影響を与え得る。
【0071】
共ドープ光ファイバ300、310および320(図1~3参照)の変更版が、図4に示された、共ドープ光ファイバ600により例示されている。ファイバ600は、「応力光学」効果を最小にし、単一モードまたは複数のモードで動作するように構成されている。図が示すように、ファイバ600は、半径100(r1)を持つコア101を有する。図4に示されるように、コア101は、約12以上、約20以上、好ましくは約12と20の間のアルファを有するアルファプロファイルを持つ相対屈折率プロファイルを有する。特定の態様において、コア101のアルファプロファイルは、約0.5から約5のアルファを有するより高度なグレーデッドプロファイルを示す。他の態様において、コア101の相対屈折率1(Δ1)は、ファイバ半径(r)の関数として変動する。相対屈折率プロファイル1は、コア半径100でそのピーク屈折率変化(すなわち、コアデルタまたはΔ1max)に到達する。ファイバ600の相対屈折率プロファイルは、ゼロと等しいベースライン相対屈折率として純粋なSiO2を使用して、図4にプロットされていることに留意のこと。
【0072】
さらに、図4に示された共ドープファイバ600のコア101は、その中心からその外半径100(r1)まで、フッ素および塩素が共ドープされたSiO2を主に含有する。コア101が、フッ素および塩素がドープされたGeO制限SiO2を含むことが好ましい。必要に応じて、コア101に、K2O、および/またはP25もドープしてもよい。これらのドーパントは、先に記載されたように、OVD、VAD、MCVD、およびPCVD加工方法により、コア101に導入してよい。
【0073】
さらに図4に示されるように、共ドープファイバ600は、相対屈折率プロファイル2および半径110(r2)を持つ内側クラッドを有する。相対屈折率プロファイル2に対応する内側クラッドの厚さは、半径110とコア101の半径100の間の差である。その内側クラッドが、ステップ型屈折率プロファイル2(Δ2)を形成するためにFがドープされたSiO2を主に含有することが好ましい。共ドープファイバ600のいくつかの態様において、内側クラッドのフッ素濃度F内側クラッドは、コア領域101中のフッ素濃度を超える。さらに、その内側クラッドの相対屈折率プロファイル2の相対屈折率(Δ2)は、コア領域101の最大相対屈折率(Δ1MAX)よりも小さい。特定の態様において、図4に示されるように、内側クラッドの相対屈折率プロファイル2は、コア領域101の相対屈折率プロファイル1の最小相対屈折率以下でもある。必要に応じて、相対屈折率プロファイル2に対応する内側クラッド中のドーパントとして、Clおよび/またはB23を用いても差し支えない。
【0074】
図4に示されるような、共ドープファイバ600は、外半径120(r4)を持つ外側クラッド層も備える。内側クラッドおよび外側クラッドは、合わせて、クラッド141を構成し、それぞれ、相対屈折率プロファイル2および5に対応する。相対屈折率プロファイル5に対応する外側クラッドの厚さは、外半径120(r4)と内側クラッドの外半径110(r3)の間の差である。相対屈折率プロファイル5に対応する外側クラッドは、コア領域101中のフッ素の最小量以下である、フッ素濃度F外側クラッドを有するSiO2を主に含有する。その外側クラッドは、相対屈折率Δ5および外半径r4(120)を有する。外側クラッドの相対屈折率5(Δ5)は、典型的に、それぞれ、コア101および内側クラッド(すなわち、相対屈折率プロファイル2に対応する領域)の相対屈折率Δ1およびΔ2よりも大きい。ファイバ600のいくつかの態様において、クラッド141の外側クラッド部分の相対屈折率5は、0%および純粋なシリカの屈折率を超えることがある(図4参照)。さらに、外側クラッドは、コア領域101中のフッ素の最小濃度とほぼ等しいかまたはそれより低い濃度でフッ素がドープされたシリカから作られることがある。いくつかの実施の形態において、絶対値|Δ1max-Δ5|は、約0.0と約0.5の間であることがあり、他の実施の形態において、|Δ1max-Δ5|は、約0.0と約0.2の間であることがある。
【0075】
本開示の特定の態様において、図4に示された共ドープファイバ600の外側クラッドは、ファイバの加工温度で、その粘度が、コア101および内側クラッド(すなわち、相対屈折率プロファイル2に対応する領域)の粘度より大きいという意味では堅い。外側クラッドがフッ素を実質的に含まないように製造することも好ましい。外側クラッド中の塩素の存在は、外側クラッドを固結させるために使用される過程中に一酸化炭素を導入することにより制限できる。
【0076】
共ドープ光ファイバ600(図4参照)は、約90g未満の線引き張力を有する線引き過程で製造されることがある。その線引き張力は、好ましくは約45g未満に設定され、より好ましくは約30gと約45gの間に設定される。これらの加工パラメータで形成されたファイバ600は、導波路伝搬性能を含むファイバの光伝送特性に有害であり得る線引き誘発応力にさらに左右されない。共ドープ光ファイバ600は、前述のことにしたがって加工され、構成された場合、1550nmの動作波長で、約0.17dB/km未満、約0.16dB/km未満、さらに約0.15dB/km未満の減衰を有すると予測される。
【0077】
堅い外側クラッド部分のない共ドープ光ファイバは、その屈折率プロファイルに悪影響を及ぼし得る線引き誘発応力を有するであろう。したがって、そのようなファイバのコア領域における比較的高い内部引張応力は、ファイバのコアと内側クラッドとの間に屈折率差の減少をもたらし得る。次に、これらの効果は、減少した導波路伝搬性能をもたらし得る。対照的に、堅い外側クラッド(例えば、図4に示された共ドープファイバ600の相対屈折率プロファイル5に対応するような)を、先に記載したように、そのようなファイバに用いることができる。例えば、ファイバ600内に、半径120(r4)を有する外側クラッドが存在する場合、そのファイバは、改善された応力レベルおよび光学特性を示すことができる。コア101内の最大軸方向応力レベルは、堅い外側クラッドが存在する結果として、低下する(例えば、約200MPa~約250MPaから、約100MPa以下へ)。さらに、最大コア屈折率Δ1maxと内側クラッド屈折率Δ2の間の差は、約0.3%Δ以上のレベルに増加し得る。
【0078】
図4に示された共ドープ光ファイバ600は、その光伝送性能特性をさらに改善するために、より低い線引き張力で加工することもできる。より低い線引き張力の結果として、コア101における最大軸方向引張応力レベルは、約50MPa未満の張力レベルに低下し得る。さらに、最大コア屈折率Δ1maxと内側クラッド屈折率Δ2の間の差は、約0.35%Δ以上に増加し得る。
【0079】
図4に示された共ドープファイバ600の外側クラッド(すなわち、相対屈折率プロファイル5に対応するような)は、いくらかのSiO2を酸窒化ケイ素(SiOxy)(式中、1<x<2および0<y<1)に転化させるために、わずかな質量パーセントで窒素(N)がドープされたSiO2を含むように構成されることもある。具体的には、その外側クラッドに、約0.1質量%超のNがドープされることがある。いくつかの実施の形態において、その外側クラッドは、約0.1質量%超から約1.0質量%の窒素を含む。その外側クラッドに窒素をドープすると、その剛性をさらに増加させることができる。その結果、その外側クラッドにSiOxyを使用すると、ファイバについて、それぞれ、共ドープファイバ600内の軸方向引張応力レベル(MPaで表される)を減少させ、相対屈折率(%)対ファイバ半径(μm)を増加させることができる。
【0080】
堅い外側クラッド部分を含有するファイバ600(図4参照)の実施の形態と同様に、本開示の特定の態様は、クラッド141の堅い外側クラッド部分(すなわち、応力緩和層)を有するファイバ300、310および320(図1~3参照)にも関する。詳しくは、ファイバ300、310および320のこれらの態様の応力緩和層は、半径150(r5)とそれぞれの半径140、120または130(r4)の間に延在し、相対屈折率5(図1~3参照)に対応するクラッド141の外側部分であることがある。この外側クラッド部分は、存在する場合(図2および3参照)、相対屈折率プロファイル2および3(例えば、幅m1の凹部または幅wc2の溝)に関連するクラッド141の他の部分と共に、コア領域101の組成および寸法に鑑みて構成される。この応力緩和層は、これらの他の領域(例えば、コア領域101およびクラッド141の他の部分)と比べて、堅い外側クラッド層である。このように、クラッド141内の応力緩和層は、光ファイバの光伝搬部分から応力を緩和し、それゆえ、光ファイバ減衰を低下させる。
【0081】
ファイバ300、310および320の特定の実施の形態において、クラッド141内の堅い外側クラッド部分(すなわち、応力緩和層)(すなわち、r5とr4の間)は、純粋なシリカガラス組成を有する。他の態様において、その堅い外側クラッド部分は、酸窒化ケイ素ガラス組成を有する。特定の実施によれば、クラッド141の堅い外側クラッド部分は、コア領域101の組成内のClおよびFの合計総量(例えば、少ない総モル数のClおよびF)よりも少ないF(例えば、少ないモル数のF)を含む組成を有する。クラッド141の堅い外側クラッド部分は、コア領域101内のClおよびFの合計総モル数よりも少ないモル数のClおよびFも有し得る。追加の実施の形態において、その堅い外側クラッド部分は、コア領域101中のClおよびFの合計総モル数よりも少ないモル数のClを有する。
【0082】
ここに用いたように、クラッド141中の堅い外側クラッド部分(すなわち、応力緩和層)は、光ファイバ300、310および320の他の領域よりも高い、加工中の粘度を有するという意味では「堅い」。したがって、クラッド141の堅い外側クラッド部分は、存在する場合、コア領域101、およびクラッド141の他の部分(例えば、相対屈折率プロファイル2および3に対応するクラッド部分)の少なくとも1つと比べて、1650℃でより高い粘度を有し得る。一例として、図2Aは、堅い外側クラッド部分を有する共ドープ光ファイバ310に関するファイバの半径距離の関数としての粘度を示す。図2Aにおいて、堅い外側クラッド部分(すなわち、相対屈折率プロファイル5に対応する)の粘度は5.3×107ポアズであり、相対屈折率プロファイル3および4に対応するクラッド141の他の部分の粘度は、それぞれ、1.3×107ポアズおよび1.7×107ポアズであり、コア101の粘度は2.6×107ポアズである。いくつかの実施の形態において、コア領域101に対するクラッド141内の堅い外側クラッド部分の粘度比η(外側クラッド/コア)(すなわち、η(外側クラッド/コア)=(応力緩和層の粘度)/(コア領域101の粘度))は、1.1以上である。いくつかの実施の形態において、粘度比η(外側クラッド/コア)≧1.5。いくつかの実施の形態において、粘度比η(外側クラッド/コア)≧2。
【0083】
再びファイバ300、310、320および600(図1~4参照)を参照して、いくつかの実施の形態において、相対屈折率プロファイル5に対応する堅い外側クラッド部分の(1650℃での)粘度と、コア101および相対屈折率プロファイル2、3および4に対応するクラッド141の部分のいずれか1つまたは組合せの(1650℃での)粘度との間の差は、0.1e7ポアズ以上である。いくつかの実施の形態において、相対屈折率プロファイル5に対応する堅い外側クラッド部分の(1650℃での)粘度と、コア101および相対屈折率プロファイル2、3および4に対応するクラッド141の部分のいずれか1つまたは組合せの(1650℃での)粘度との間の差は、0.2e7ポアズ以上である。いくつかの実施の形態において、相対屈折率プロファイル5に対応する堅い外側クラッド部分の(1650℃での)粘度と、コア101および相対屈折率プロファイル2、3および4に対応するクラッド141の部分のいずれか1つまたは組合せの(1650℃での)粘度との間の差は、0.5e7ポアズ以上である。いくつかの実施の形態において、相対屈折率プロファイル5に対応する堅い外側クラッド部分の(1650℃での)粘度と、コア101および相対屈折率プロファイル2、3および4に対応するクラッド141の部分のいずれか1つまたは組合せの(1650℃での)粘度との間の差は、1e7ポアズ以上、特定の実施において、1e8ポアズ以上である。いくつかの追加の態様において、相対屈折率プロファイル5に対応する堅い外側クラッド部分の(1650℃での)粘度と、コア101および相対屈折率プロファイル2、3および4に対応するクラッド141の部分のいずれか1つまたは組合せの(1650℃での)粘度との間の差は、0.1e7ポアズ以上、かつ1.6e8ポアズ以下である。いくつかの他の実施において、相対屈折率プロファイル5に対応する堅い外側クラッド部分の(1650℃での)粘度と、コア101および相対屈折率プロファイル2、3および4に対応するクラッド141の部分のいずれか1つまたは組合せの(1650℃での)粘度との間の差は、0.1e7ポアズ以上、かつ1e8ポアズ以下である。ここに用いたように、「1e7」および「1e8」は、それぞれ、1×107および1×108に対応する科学的記数法である。
【0084】
ファイバ300、310および320のいずれの半径方向位置での局所粘度(1650℃で、ポアズで表される)は、所定のファイバ層について局所ガラス組成の関数として予測される。例えば、局所粘度は、式(7)の以下の関係により与えられる:
【0085】
【数7】
【0086】
式中、logは10を底とする対数であり、[GeO2]、[Cl]、[F]および[SiON]は、それぞれ、ゲルマニア、塩素、フッ素およびSiONドーパントの局所質量%である。それに加え、η0は、純粋なシリカ(すなわち、ドーパントを含まないシリカガラス)の粘度であり、式(8)に与えられる:
【0087】
【数8】
【0088】
式中、TはケルビンKで表された温度である。
【0089】
単一モード動作のために構成された共ドープ光ファイバ300、310、320および600は、低い曲げ損失も有し得る。ここに用いたように、「曲げ損失」は、dB/turnの単位で表された、1550nmで測定された、光ファイバのマクロベンド損失値を称する。いくつかの実施の形態において、ファイバ300として構成された光ファイバ設計は、直径15mmのマンドレル上で5dB/turn以下のマクロベンド損失を有し得る。特定の実施の形態によれば、ファイバのマクロベンド損失は、直径15mmのマンドレル上で2dB/turn以下、直径20mmのマンドレル上で1.5dB/turn以下、直径20mmのマンドレル上で0.5dB/turn以下、直径30mmのマンドレル上で0.025dB/turn以下、そして直径30mmのマンドレル上で0.01dB/turn以下である。いくつかの実施の形態において、ファイバ310および320として構成された光ファイバ設計は、直径10mmのマンドレル上で1.5dB/turn以下、直径10mmのマンドレル上で1dB/turn以下、直径15mmのマンドレル上で1.5dB/turn以下、直径15mmのマンドレル上で1dB/turn以下、直径15mmのマンドレル上で0.5dB/turn以下、直径20mmのマンドレル上で0.5dB/turn以下、直径20mmのマンドレル上で0.2dB/turn以下、直径20mmのマンドレル上で0.1dB/turn以下、直径30mmのマンドレル上で0.025dB/turn以下、そして直径30mmのマンドレル上で0.01dB/turn以下のマクロベンド損失を有し得る。
【0090】
ファイバ300、310、320および600を含む、ここに開示されたファイバは、従来の製造技術を使用して製造された光ファイバプリフォームから、例えば、その明細書がここに引用される、米国特許第7565820号、同第5410567号、同第7832675号、および同第6027062号の各明細書に開示されているように、公知のファイバ線引き方法および装置を使用して線引きされるであろう。具体的には、共ドープ光ファイバ300、310、320および600は、線引き炉内で牽引機により光ファイバプリフォームの基部から引っ張ることができる。線引き炉を出た後、むき出しの光ファイバは、牽引機の速度を調節して、ファイバの直径を一定に維持するために、フィードバック制御ループに使用される信号を提供する直径モニタ(D)を経る。このむき出しの光ファイバは、次に、プリフォームからファイバを引っ張ることにより生じる光ファイバの張力を測定するファイバ張力測定装置(T)を通過する。この張力は、ファイバ線引きの速度、プリフォームの基部の温度と粘度などに応じて増加し得る。ファイバ張力測定装置の一例が、ここに引用される、欧州特許出願公開第0479120A2号明細書に開示されている。ファイバ300、310、320および600を含む、ここに開示された光ファイバは、そのようなプリフォームから線引きし、標準的な一次および二次アクリル酸ウレタン被覆で被覆することができる。
【0091】
ここに開示されたファイバ300、310、320および600の共ドープコア領域101は、必要に応じて、あるレベルのアルカリを含有してもよいが、ここに開示された実施の形態では、アルカリを実質的に含まないコアを利用することがあり、多くの実施の形態において、そのコア領域がアルカリを全く含有しないことが好ましい。
【0092】
図1~4を再び参照すると、共ドープファイバ300、310、320および600の各々は、1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を示すように構成することができる。これらの共ドープファイバは、フッ素および塩素が共ドープされたシリカから作られたコア領域101を中に含む。そのファイバは、コア領域101を取り囲む第1のクラッド領域141もその中に含む。さらに、コア領域101は、純粋なシリカと比べて、約-0.10%から約+0.05%の相対屈折率を有する。その上、第1のクラッド141は、実質的に一定であり、コア領域101の相対屈折率プロファイル1よりも低い相対屈折率を有する低下領域を含み得る。例えば、図1に示された共ドープファイバ300の相対屈折率プロファイル4は、そのような低下領域に相当する。同様に、図2および3に示された共ドープファイバ310および320の相対屈折率プロファイル3は、そのような低下領域に相当する。その上、図4に示された共ドープファイバ600の相対屈折率プロファイル2はそのような低下領域に相当する。
【0093】
図1~4の範囲内の例示の様式で示されるように、共ドープファイバ300、310、320および600の各々は、1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を示すように構成することができる。これらの共ドープファイバは、フッ素および塩素が共ドープされたシリカから作られたコア領域101を中に含む。そのファイバは、コア領域101を取り囲む第1のクラッド領域141も中に含む。さらに、図1~4に示されるようなコア領域101は、約12以上のアルファを有する階段状屈折率プロファイルを有する。その上、第1のクラッド141は、実質的に一定であり、コア領域101の相対屈折率よりも低い相対屈折率(例えば、図1に示された共ドープファイバ300の相対屈折率プロファイル4)を有する低下領域を含み得る。
【0094】
図1~4をさらに参照すると、共ドープファイバ300、310、320および600の各々は、複数モード動作のために構成することができる。そのようなファイバの各々は、フッ素および塩素が共ドープされたシリカから作られたコア領域101を含む。これらの複数モードファイバは、(a)1550nmの波長で、2超かつ8未満のモードで光データを伝送するように構成され、(b)純粋なシリカと比べて、約-0.10%から約+0.05%の相対屈折率を有し、(c)約6.0マイクロメートルから約50マイクロメートルの半径を有するコア領域101も含む。そのファイバは、コア領域101を取り囲む第1のクラッド領域141を中にさらに含む。第1のクラッド141は、実質的に一定であり、コア領域101の相対屈折率よりも低い相対屈折率(例えば、図1に示された共ドープファイバ300の相対屈折率プロファイル4)を有する低下領域を含む。その上、複数モード動作のために構成されたこれらの共ドープファイバは、1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を有する。
【0095】
ここに開示された共ドープファイバ300、310、320および600は、これらの実施の形態にしたがう他の共ドープ光ファイバと共に、約1.2質量%以上の塩素濃度を利用し、これは、いくつかの従来の光ファイバに利用された塩素レベルよりも著しく高い塩素濃度レベルを反映する。ここに開示された共ドープファイバ中のそのような高い塩素レベルは、ここに開示されたファイバ加工方法にしたがって多数の変数を最適化することによって達成できる。例えば、SiCl4液体(例えば、光ファイバのシリカコア領域内に塩素をドープするための前駆体)を気化させるためにより高い温度を使用して、蒸気相中のSiCl4濃度レベルを増加させてもよい。いくつかの実施の形態において、その気化器の温度は、40℃より高く、いくつかの他の実施の形態において、45℃より高い。さらなる態様において、気化器の温度は、50℃より高く、さらに他の実施の形態において、57℃より高い。その結果、固結炉(例えば、ファイバの加工に典型的に利用されるような)内で、増加したSiCl4濃度レベルが利用されることがある。ここに開示された方法のいくつかの実施の形態において、炉への総流量に対する気化器/バブラーを通る気体の分率は、30%より高い;他の実施の形態において、炉への総流量に対する気化器/バブラーを通る気体の分率は、50%より高い;さらに他の実施の形態において、炉への総流量に対する気化器/バブラーを通る気体の分率は、80%より高い。その気体の残りはHeガスであってよい。特定の他の実施の形態において、炉への総流量に対する気化器/バブラーを通る気体の分率は、100%、または100%に近い。
【0096】
ここに開示された共ドープファイバ加工の実施の形態のいくつかにおいて、SiCl4を使用したコア領域の塩素ドープは、焼結過程中に行うことができる。すなわち、スートプリフォームは、スートプリフォームが、細孔が閉じた状態に移行し、1300℃より高い温度でSiCl4の存在下で完全に焼結されたプリフォームとなる時点の前、および/またはその時点まで、ドープされている。他の実施の形態において、塩素ドープは、1375℃より高い温度で行われる。いくつかの追加の実施の形態において、塩素ドープは、1400℃より高い温度で焼結過程中に行われる。
【0097】
ここに開示された共ドープ光ファイバを製造する方法の特定の態様において、高スート表面積プリフォーム(すなわち、従来の光ファイバ加工に使用されるプリフォームの表面積と比べて)を、SiCl4を使用したコア領域のドープに利用することができる。いくつかの実施の形態において、そのスートプリフォームの表面積は、10m2/gより大きい、20m2/gより大きい、25m2/gより大きい、またさらには50m2/gより大きい。特定の他の実施の形態において、そのスートプリフォームの表面積は、90m2/gより大きいことがある。そのプリフォームの表面積は、本開示の術野内で理解されるように、BET表面積特性化技術を使用して測定できる。
【0098】
ここに開示されたファイバのコア領域内にドープされるSiCl4の量は、プリフォームを完全に固結する前に、SiCl4およびH2O(および/またはO2)の混合物への連続暴露の多数のサイクルでシリカスートプリフォームを処理することによって、増加させることもできる。理論により束縛する意図はないが、シリカスート表面をSiCl4で処理すると、シリカスート表面上のOH基の位置に-SiCl3基を結合させることにより、および/またはSi-O-Si基をシリカスート表面と反応させて、SiCl+基およびSiOCl3を形成することにより、塩素がドープされると考えられる。結合した-SiCl3基中のCl分子の各々は、それを水で処理する(または酸素で処理して表面上に別のSiO2分子を形成する)ことにより、OH基に転化させることができ、次に、OH基は、SiCl4ドーパント前駆体との続いての処理の際に、追加の-SiCl3基と結合するための反応場となる。そのプリフォームが多数のサイクルの連続SiCl4およびH2O(および/またはO2)環境に暴露される手順を活用することにより、カスケード構造を作り出し、スート粒子表面に多量の塩素を含ませることが可能である。これにより、以前に文献に報告された、および/または従来の光ファイバ加工方法に用いられた、ドープ塩素レベルと比べて、固結されたガラスにおける塩素ドープレベルが著しく高くなる。
【0099】
ここに開示された高塩素コア領域ドープ方法に用いられるプリフォームのスート表面積を増加させるために使用できる他の方法には、以下が挙げられる:1)低密度スート配置工程、2)高表面積スート加圧工程、および/または3)スートへのゾル・ゲルシリカ(例えば、TEOS、前または後加水分解)またはLudox(登録商標)コロイドシリカなどのナノ粒子シリカの含浸。
【0100】
先に概説した方法を使用することにより、これらの方法のいくつかの実施の形態を使用して、塩素濃度が約1.2質量%以上、約1.3質量%以上、そして約1.4質量%以上の固結ガラス(例えば、共ドープ光ファイバのコア領域として働く)を製造することができる。いくつかの実施の形態において、その固結ガラス中のドープされた塩素濃度は、約1.5質量%以上、約2質量%以上、約2.5質量%以上、またさらには約3質量%以上である。
【0101】
コア領域中にフッ素と共に高レベルの塩素を共ドープするためのここに開示された技術は、低損失光ファイバの製造に顕著な利点を与える。塩素は、コア領域内の濃度変動を増加させずに、密度変動の寄与を低下させることによって、低いレイリー散乱損失をもたらすドーパントである。いくつかの従来の光ファイバ構成において、塩素濃度が1.2質量%未満の(すなわち、唯一のドーパントとして)コア領域が使用されてきた。そのような設計について、光ファイバとして作動するための適切な特性に必要な、コアとクラッドとの間の屈折率差を提供するために、クラッドにフッ素が使用されてきた。しかしながら、コアとクラッドとの間の粘度の不一致が大きいために、線引き時に、著しい応力が誘発される。その応力は、応力光学効果により、コアと内側クラッド領域との間の相対屈折率差を低下させ、またガラス転移領域におけるガラスの構造緩和を妨げることによって、減衰に悪影響を及ぼす。
【0102】
例えば、コア中に1.1質量%(1.8モル%)の塩素を、隣接するクラッド中に1.4質量%(4.4モル%)のフッ素を有する従来の光ファイバは、コアとクラッドとの間に組成による屈折率差を生じ、これは0.505%Δとなる。しかしながら、このファイバは、150gの張力で線引きされると、ファイバにおける相対屈折率差が、応力光学効果のために大幅に減少し、0.296%Δの実際の屈折率デルタパーセントが達成される。この問題は、クラッドガラスよりも堅いコアガラスのためであると考えられる。対照的に、ここに開示された共ドープ光ファイバ構成は、コア領域とクラッドとの間の粘度の不一致を減少させることにより、応力光学効果を最小にするのにより適している。ここに開示された方法により実行可能な共ドープコア領域中のより高い塩素レベルを考えると、フッ素は、従来の光ファイバ中よりも低レベルでクラッドに導入して、光ファイバとして作動するために必要な相対屈折率差を生じることができる。クラッド中に存在するフッ素のレベルがより低いので、コア領域とクラッドとの間の粘度の不一致が減少し、ここに開示された共ドープファイバについて応力光学効果を減少させることができる。
【0103】
図5を参照すると、本開示の態様による共ドープ光ファイバ(例えば、ファイバ300、310、320および600)のコア領域(例えば、コア領域101)に線引きするのに適した共ドープコアケイン内の半径方向距離(μm)の関数としてのドーパント濃度(質量%)のプロットが与えられている。このコアケインは、実施例1に詳述されたように製造したコアケインについて下記に記載されたのと同様の条件にしたがって、加工し、ドープした。
【0104】
図5に示されるように、質量%のCl(「A1-Cl」)およびF(「A1-F」)のドーパント濃度レベルが、コアケインの中心から、約4200μmの外半径まで示されている。Cl濃度レベルは約1.5質量%から約1.4質量%であり、F濃度レベルは約0.6質量%から約0.7質量%である。コアケインの半径方向距離の関数としてのこれらの濃度レベルは、階段状アルファプロファイルを示しており、アルファは12より大きいことも明白である。これらのコアケインドープ濃度では、ファイバの単一モード動作に適した効果的な導波路挙動には、コア領域とクラッドとの間の0.35%Δ差が必要であろうと予測される。
【0105】
図6を参照すると、比較の単一ドープコアケインの比較例(比較例「C1」、「C2」および「C3」)および本開示の共ドープコアケインの態様(「A2」)に関する、温度(℃)の関数としてのコアケインの粘度(log10ポアズ)のプロットが与えられている。図6に用いられたコアケインは、実施例1において製造されたコアケインについて、下記に記載された条件にしたがって、加工し、ドープした。単一ドーパントとしてClを含む比較例C1~C3は、ドーパント源としてCl2およびSiCl4ガスのみで(すなわち、SiF4は存在しなかった)加工されたことを留意のこと。
【0106】
図6が示すように、C1のコアケインの試料は約2.0質量%のClドーパント濃度を有し、C2のコアケインの試料は約1.8質量%のClドーパント濃度を有し、C3のコアケインの試料は約0.41質量%のClドーパント濃度を有する。対照的に、A2のコアケインの試料は、約1.6質量%のClおよび約0.6質量%のFのドーパント濃度の共ドープ構成を反映している。図6に示された粘度データは、比較の塩素ドープコアケインが、共ドープコアケインよりも高い粘度レベルを示すことを明らかにする。その上、この共ドープコアケインは、比較例の内の2つと比べてより低いレベルの塩素を有し、それでもまだ、これらのコアケインよりも低い粘度を示す。共ドープコアケイン(「A2」)に観察されたより低い粘度レベルにより、ファイバ線引き過程中にガラス緩和が増加し、仮想温度がより低くなり、それに対応して、ファイバ減衰レベルが低くなる。
【0107】
図7を参照すると、形成したままの状態と、後徐冷した状態の、図6からの単一ドープコアケインの比較例の内の2つ(「C1」および「C2」)、および本開示の共ドープコアケインの態様(「A3」)に関する仮想温度の棒グラフが与えられている。図7に用いられたコアケインは、下記の実施例1において製造されたコアケインについて記載された条件にしたがって、加工し、ドープした(すなわち、先に述べたように、単一ドープコアケインの比較例については、変更されている)。その上、下記の実施例1において製造したコアケインについて記載した条件にしたがって、コアケインを徐冷した。
【0108】
図7が示すように、塩素とフッ素が共ドープされたコアケインの試料(「A3」)の仮想温度は、単一の塩素ドーパントを有するコアケインの比較試料に観察された仮想温度と比べて、形成されたままの状態と後徐冷した状態の両方で、80℃ほど低かった。共ドープコアケインの試料と、単一ドーパントを有するコアケインの比較試料との間のこれらの観察された仮想温度の差は、ファイバ線引き過程中に増加したガラス緩和レベルに少なくとも基づいて、これらのケインから線引きされた光ファイバにおいても現れるであろうと予測される。
【実施例
【0109】
先のファイバの様々な実施の形態を、モデル化ファイバの以下の実施例によってさらに明白にする。本開示の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を行えることが当業者には明白であろう。下記に列挙された実施例の全ては、62.5マイクロメートルの外半径、および125マイクロメートルのファイバ直径を有する。さらに、下記のモデル化されたファイバに与えられた全ての光学パラメータは、特に明記のない限り、1550nmおよびLP01モードである。
【0110】
本開示の先の態様において記載された共ドープファイバ300、310、320および600の1つ以上による、モデル化された塩素とフッ素が共ドープされたコア、フッ素ドープクラッド、単一モード(SM)および複数モード(FM)の光ファイバの例とその性質が、下記の表1~6に示されている。
【0111】
下記の表1~3には、様々な共ドープSMファイバに関する以下のパラメータおよびファイバ寸法が示されている:コアのΔ1max(%)、コアアルファ、コア中のClおよびFのコアドーパント(質量%)、コアの半径r1(μm)、クラッドの外半径r4(μm)、クラッドデルタ(%)、22メートルケーブルカットオフ波長(nm)、1310nmでのモードフィールド径MFD(μm)、1310nmでの実効断面積Aeff(μm2)、1310nmでの分散(ps/nm/km)および分散勾配(ps/nm2/km)、ゼロ分散波長のラムダゼロ(nm)、1550nmでのモードフィールド径MFD(μm)、1550nmでの実効断面積Aeff(μm2)、1550nmでの分散(ps/nm/km)および分散勾配(ps/nm2/km)、1310および1550nmでの減衰(dB/km)。さらに、表2において、列挙されたファイバの実施例の両方(実施例9および10)について、凹部の半径r3(μm)が与えられており、列挙されたファイバの実施例の一方(実施例10)について、堅い外側クラッド部分の内半径r5(μm)がさらに与えられている。表2は、列挙されたファイバの実施例に適用できるような、コア、凹部、クラッドおよび堅い外側クラッド部分に関する粘度データ(1650℃でのポアズで表されている)も含む。表3において、溝部の内半径と外半径r2およびr3(μm)も与えられている。直径10、15、20および30mmのマンドレルに関する、dB/turnで表された1550nmでの曲げ損失値も、表1~3に含まれている。最後に、「N/A」という表記は、そのパラメータが特定のファイバの実施例には適用できないことを示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
表4~6には、表1~3においてファイバについて与えられた一連のパラメータおよび寸法による様々な複数モード(FM)の光ファイバに関する光学パラメータおよび寸法が列挙されている。その上、表4~6に概説されたFMファイバは、以下の追加のパラメータおよび寸法も含む:LP01カットオフ(μm)、LP11カットオフ(μm)、LP21カットオフ(μm)、LP02カットオフ(μm)、1550nmでのLP01 MFD(μm)、1550nmでのLP01 Aeff(μm2)、1550nmでのLP01分散(ps/nm/km)、1550nmでのLP01勾配(ps/nm2/km)、および1550nmでのLP01減衰(dB/km)。
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
【0119】
表1~3における単一モード(SM)光ファイバの光学的性質は、G.657、G.652およびG.654の仕様に準拠する、低い減衰、優れた曲げ性能および他の性質を示す。表4~6における複数モード(FM)光ファイバの光学的性質は、低い減衰、優れた曲げ性能、大きいモードフィールド径および実効断面積を示す。
【0120】
塩素とフッ素が共ドープされたコアケインに関する、製造および加工条件の例、並びに性質が、下記に詳述されている。これらのコアケインは、以下に限られないが、共ドープ光ファイバ300、310、320および600を含む、本開示の態様による共ドープ光ファイバを線引きするのに適している。
【0121】
実施例1
約0.5g/cm3の密度を有する、1メートル長の3000グラムのシリカスートプリフォームを、シリカハンドルを含む直径10mmの取り外しできるアルミナ製回転ベイトロッド上にシリカスートを火炎堆積させることによって、旋盤内で調製した。このスートプリフォームを、固結炉内に入れ、約45体積%のHe、約12体積%のCl2、約32体積%のSiCl4、および約11体積%のSiF4を有する気体雰囲気内において約1225℃で乾燥させ、ドープした。次いで、このアセンブリを、約44体積%のHe、約41体積%のSiCl4、および約15体積%のSiF4を有する気体雰囲気内において約2.5℃/分の昇温速度で約1500℃のピーク温度を有する高温区域に通して移動させ(下方駆動)、このようにして、完全に緻密化されたClおよびF共ドープシリカガラスコアプリフォームを製造した。
【0122】
ガラス中の溶解Heを放出するために、1000℃に設定されたArパージ済み保持オーブン内にこのプリフォームを約24時間に亘り置いた。次いで、このプリフォームを、約1900℃に設定された前線引き(redraw)炉に入れた。ハンドルを通じて、プリフォームの中心線部分まで、炉を真空に引いて、中心線の孔を潰した。次いで、このプリフォームを、約1メートルの長さで直径約8.5mmの、空隙のないClおよびF共ドープシリカガラスコアケインに前線引きした。
【0123】
結果として得られたコアケインの微小分析により、各ケインが、約1.5質量%のClおよび約0.58質量%のFを有する均一な共ドープ領域を含むことが示された。これらの濃度レベルは、そのケインの直径に亘り均一であると測定された。
【0124】
これらのケインに関する屈折率プロファイルを作成した。得られたプロファイルは、これらのケインに亘り均一に存在する約-0.06%のデルタ屈折率(純粋なシリカに対して)を含んだ。
【0125】
フーリエ変換赤外分光(FTIR)技術によって、これらのケインの仮想温度も測定した。これらケインの各々について、約1100℃の仮想温度が測定された。これらのケインの内の1つに徐冷過程を施した。このケインを炉に入れ、1200℃に加熱し、1200℃で1時間に亘り保持し、次いで、毎時100℃の冷却速度で900℃に冷却した。次いで、このケインを冷却して一晩で約25℃に戻した。徐冷したケインの仮想温度は、図7にも示されているように(「A3-徐冷」)、約890℃であると測定された。
【0126】
先は、例示に過ぎず、請求項に定義されたファイバの性質および特徴を理解するための概要を提供する目的であることを理解すべきである。添付図面は、好ましい実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、説明と共に、原理と動作を説明する働きをする様々な特徴および実施の形態を示している。請求項の性質または範囲から逸脱せずに、ここに記載された好ましい実施の形態に様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。
【0127】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0128】
実施形態1
単一モード光ファイバにおいて、
1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を有するファイバ、
を備え、該ファイバは、
5超のアルファを有するグレーデッド屈折率プロファイルを有する該ファイバ中のコア領域、および
前記コア領域を取り囲む該ファイバ中の第1のクラッド領域、
を含み、
前記コア領域は、純粋なシリカと比べて、約-0.10%から約+0.05%の相対屈折率を有し、
前記コア領域は、約1.2質量%以上で塩素が、約0.1質量%と約1質量%の間でフッ素が共ドープされたシリカから作られた、単一モード光ファイバ。
【0129】
実施形態2
前記第1のクラッド領域は、前記コア領域の相対屈折率より低い相対屈折率を有する低下領域を含む、実施形態1に記載のファイバ。
【0130】
実施形態3
単一モード光ファイバにおいて、
1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を有するファイバ、
を備え、該ファイバは、
フッ素および塩素が共ドープされたシリカから作られた該ファイバ中のコア領域;および
前記コア領域を取り囲む該ファイバ中の第1のクラッド領域、
を含み、
前記コア領域は、5超のアルファを有するグレーデッド屈折率プロファイルを有し、
前記第1のクラッド領域は、前記コア領域の相対屈折率より低い相対屈折率を有する低下領域を含む、単一モード光ファイバ。
【0131】
実施形態4
複数モード光ファイバにおいて、
フッ素および塩素が共ドープされたシリカから作られた前記ファイバ中のコア領域であって、純粋なシリカと比べて、約-0.10%から約+0.05%の相対屈折率、および約6.0マイクロメートルから約50マイクロメートルの半径を有し、1550nmの波長で2モード超かつ8モード未満で光データを伝送するように構成されたコア領域、および
前記コア領域を取り囲む前記ファイバ中の第1のクラッド領域、
を含み、
前記第1のクラッド領域は、前記コア領域の相対屈折率より低い相対屈折率を有する低下領域を含み、
前記ファイバは、1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を有する、複数モード光ファイバ。
【0132】
実施形態5
1550nmの波長で約0.17dB/km未満の減衰を有する、実施形態4に記載のファイバ。
【0133】
実施形態6
前記低下領域の相対屈折率が、前記コア領域の相対屈折率より約0.35%低い、実施形態2から5いずれか1つに記載のファイバ。
【0134】
実施形態7
前記コア領域が、塩素およびフッ素が共ドープされたシリカから作られ、該塩素が約2.5質量%以上である、実施形態1から6いずれか1つに記載のファイバ。
【0135】
実施形態8
前記コア領域と前記第1のクラッド領域との間の相対屈折率差が、0.2%Δと0.5%Δの間である、実施形態1から7いずれか1つに記載のファイバ。
【0136】
実施形態9
前記コア領域が、約1.5質量%以上で塩素が、約0.1質量%と約0.6質量%の間でフッ素が共ドープされたシリカから作られた、実施形態1から8いずれか1つに記載のファイバ。
【0137】
実施形態10
前記コア領域が、質量パーセントのフッ素で割った質量パーセントのフッ素と塩素の合計が約1.5の係数より大きくなるように、フッ素と塩素が共ドープされたシリカから作られた、実施形態2から9いずれか1つに記載のファイバ。
【0138】
実施形態11
1530nm未満の22mケーブルカットオフ波長を特徴とする、実施形態1から10いずれか1つに記載のファイバ。
【0139】
実施形態12
1260nm未満の22mケーブルカットオフ波長を特徴とする、実施形態1から11いずれか1つに記載のファイバ。
【0140】
実施形態13
前記コア領域の仮想温度が約1400℃以下である、実施形態1から12いずれか1つに記載のファイバ。
【0141】
実施形態14
前記コア領域の仮想温度が約1200℃以下である、実施形態1から13いずれか1つに記載のファイバ。
【0142】
実施形態15
前記第1のクラッド領域が堅い外側部分をさらに備え、該堅い外側部分の1650℃での粘度が、前記コア領域および前記低下領域の少なくとも一方の1650℃での粘度より大きい、実施形態1から14いずれか1つに記載のファイバ。
【0143】
実施形態16
前記第1のクラッド領域の前記堅い外側部分、並びに前記コア領域および該第1のクラッド領域の前記低下領域のいずれか1つの1650℃での粘度の差が、1×106ポアズ以上かつ1.6×108ポアズ以下である、実施形態15に記載のファイバ。
【0144】
実施形態17
前記コア領域が、それぞれ、約1.4質量%以上および約1質量%と約0.1質量%の間で、塩素およびフッ素で共ドープされたシリカから作られた、実施形態4に記載のファイバ。
【符号の説明】
【0145】
100 コア半径
101 コア
141 クラッド
200 クラッドの厚さ
300、310、320、600 共ドープ光ファイバ
図1
図1A
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7