(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】圃場作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20221208BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221208BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
A01B69/00 ZYW
G05D1/02 N
G05D1/02 W
(21)【出願番号】P 2021063699
(22)【出願日】2021-04-02
(62)【分割の表示】P 2017207321の分割
【原出願日】2017-10-26
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【氏名又は名称】香山 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100110799
【氏名又は名称】丸山 温道
(74)【代理人】
【識別番号】100206704
【氏名又は名称】西尾 明洋
(72)【発明者】
【氏名】幸 英浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔一
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123829(JP,A)
【文献】特開2016-011024(JP,A)
【文献】特開2015-188423(JP,A)
【文献】特開2016-024541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域と非作業領域とを有する圃場の前記作業領域において所定の作業を行う圃場作業機であって、
前記作業領域と前記非作業領域との境界に終端を有する第1直線状経路、前記非作業領域、および前記作業領域と前記非作業領域との境界に始端を有する第2直線状経路をこの順番で走行する走行機体と、
測位衛星からの測位信号に基づいて、前記圃場作業機の位置を測位情報として出力する測位部と、
前記走行機体が自動で操舵される自動操舵モードと、ユーザが前記走行機体を手動で操舵する手動操舵モードとの間で、ユーザの操作に応じて前記走行機体の操舵モードを切り換える操舵モード切換制御部と、
前記第1直線状経路の終端よりも上流側における前記第1直線状経路上の所定位置に前記走行機体が位置するときの前記走行機体の走行モードが前記自動操舵モードである場合には、前記走行機体の走行を減速させて前記第1直線状経路の終端で前記走行機体を停止させるための停止指令を出力する停止指令出力部とを含み、
前記停止指令の出力によって前記走行機体の走行が減速している間に自動操舵解除操作が行われた場合には、前記走行機体は、停止することなく前記手動操舵モードで走行する、圃場作業機。
【請求項2】
前記第1直線状経路上の前記終端に前記走行機体が接近する以前であり、且つ前記第1直線状経路上で
の前記停止指令の
出力以前に
、前記第1直線状経路の終端に前記走行機体が接近したことをユーザに報知する報知制御部をさらに含む、請求項1に記載の圃場作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の圃場作業機は、走行機体と、圃場に対する農作業を行う圃場作業装置とを含む。圃場作業機は、直線状の作業走行経路を自動走行した後、枕地領域(非作業領域)に進入する。そして、圃場作業機は、運転者の操縦により非作業領域内で旋回し、再び直線状の作業走行経路を自動走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圃場作業機では、圃場作業機が非作業領域を走行中であると非作業走行判別部が判別した場合、自動走行禁止部が自動走行を中断させて走行機体の操縦を運転者に委ねる。そのため、圃場作業機が非作業領域に進入してから運転者が走行機体を操縦できるようになるまでにタイムラグが生じるおそれがある。したがって、圃場作業機は、非作業領域に進入してからしばらく走行した後に、旋回し始める。非作業領域の広さが充分でない場合、非作業領域内で圃場作業機を後進させてから旋回させる必要がある。これでは、圃場作業機がスムーズに旋回できないので、非作業領域を充分に広くする必要がある。
【0005】
しかし、圃場作業機をスムーズに走行させるために非作業領域を広くした場合、その代わりに作業領域が狭くなる。つまり、圃場において圃場作業機が作業する領域が狭くなる。これでは、圃場作業機の作業効率が低下するおそれがある。
そこで、この発明の主たる目的は、非作業領域を狭めることができ、かつ非作業領域をスムーズに旋回できる圃場作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、作業領域と非作業領域とを有する圃場の前記作業領域において所定の作業を行う圃場作業機であって、前記作業領域と前記非作業領域との境界に終端を有する第1直線状経路、前記非作業領域、および前記作業領域と前記非作業領域との境界に始端を有する第2直線状経路をこの順番で走行する走行機体と、測位衛星からの測位信号に基づいて、前記圃場作業機の位置を測位情報として出力する測位部と、前記走行機体が自動で操舵される自動操舵モードと、ユーザが前記走行機体を手動で操舵する手動操舵モードとの間で、ユーザの操作に応じて前記走行機体の操舵モードを切り換える操舵モード切換制御部と、前記第1直線状経路の終端よりも上流側における前記第1直線状経路上の所定位置に前記走行機体が位置するときの前記走行機体の走行モードが前記自動操舵モードである場合には、前記走行機体の走行を減速させて前記第1直線状経路の終端で前記走行機体を停止させるための停止指令を出力する停止指令出力部とを含み、前記停止指令の出力によって前記走行機体の走行が減速している間に自動操舵解除操作が行われた場合には、前記走行機体は、停止することなく前記手動操舵モードで走行する、圃場作業機を提供する。
【0007】
この構成によれば、終端側領域に進入したときの走行機体の操舵モードが自動操舵モードである場合に、停止指令出力部は、走行機体の車速が漸減させて終端側領域内で走行機体を停止させるための停止指令を出力する。ユーザは、車速の変化(減速)によって、操舵モードを手動操舵モードに切り換えるべきタイミングであることを知ることができる。そのため、走行機体が非作業領域に進入する前に、ユーザは、操舵モードを手動操舵モードに切り換える操作を行いやすい。したがって、ユーザは、走行機体が非作業領域に進入した直後に走行機体を旋回させることができる。よって、旋回に必要なだけの幅の非作業領域が設定されていれば、走行機体が非作業領域でスムーズに旋回できる。その結果、非作業領域を狭めることができる。
【0008】
また、仮に、車速の変化にユーザが気付かなかった場合や、車速の変化をユーザが無視した場合であっても、走行機体が非作業領域に進入する前に、終端側領域内で走行機体が停止する。これにより、ユーザは、操舵モードを手動操舵モードに切り換えることを余儀なくされる。したがって、ユーザは、少なくとも直線状経路の終端付近において手動で走行機体を操舵できる。よって、ユーザは、走行機体が非作業領域に進入した直後に、走行機体を旋回させることができる。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記第1直線状経路上で前記停止指令の出力よりも前に前記第1直線状経路の終端に前記走行機体が接近したことをユーザに報知する報知制御部をさらに含む。
この構成によれば、第1直線状経路を走行中の走行機体の操舵モードが自動操舵モードである場合に、報知制御部は、走行機体が終端側領域に進入したことをユーザに報知する。これにより、ユーザは、操舵モードを手動操舵モードに切り換えるべきタイミングであることを知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る田植機の側面図である。
【
図3】
図3は、
図1の田植機が前記圃場内を走行する様子を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、
図1の田植機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、
図4の制御部に備えられた操舵モード切換制御部によるモード切換処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図4の制御部に備えられた切換タイミング認知促進部による切換タイミング認知促進処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1変形例に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第1変形例に係る制御部の切換タイミング認知促進部による切換タイミング認知促進処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2変形例に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2変形例に係る制御部の切換タイミング認知促進部による切換タイミング認知促進処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、操舵モード切換制御部によるモード切換処理の別の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
以下の実施形態では、田植機を圃場作業機の一例として説明する。圃場作業機は、田植機の他、耕耘機等が取り付けられたトラクタ、コンバイン、土木・建設作業車両、除雪車等であってもよい。
図1は、本発明の第1実施形態に係る田植機1の側面図である。
図2は、田植機1の平面図である。
【0012】
図1および
図2を参照して、田植機1は、圃場F内を走行しながら、圃場Fの地面に苗を植え付ける植付作業を行う。田植機1は、走行機体2と、走行機体2の後方に配置された植付部3とを備える。走行機体2は、左右一対の前輪5および左右一対の後輪6を備えており、エンジン10の駆動力によって走行可能である。
走行機体2は、トランスミッション27、フロントアクスル28およびリアアクスル29を含んでいる。トランスミッション27は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル28およびリアアクスル29に伝達する。フロントアクスル28は、トランスミッション27から入力された動力を前輪5に伝達する。リアアクスル29は、トランスミッション27から入力された動力を後輪6に伝達する。
【0013】
走行機体2は、ユーザが搭乗するための運転座席7と、走行機体2の操舵を行うためのステアリングハンドル8と、走行機体2の走行速度を調節するための変速ペダル9とを含む。
ステアリングハンドル8の近傍には、ユーザが各種操作を行うための操作部11(後述する
図4参照)や、ユーザに田植機1の状態を報知する報知部12(後述する
図4参照)が設けられている。
【0014】
報知部12は、警告音を発する警告ブザー等を含む。報知部12は、点灯または点滅する警告ランプを含んでいてもよい。報知部12は、警告ブザーおよび警告ランプの両方を含んでいてもよい。
操作部11としては、切換スイッチや、速度設定ボリュームなどが挙げられる。切換スイッチは、ユーザの操作に応じて、走行機体2の操舵モードを自動操舵モードと手動操舵モードとの間で切り換えるためにユーザが操作するスイッチである。自動操舵モードから手動操舵モードに切り換えるためのユーザの操作を、自動操舵解除操作という。手動操舵モードから自動操舵モードに切り換えるためのユーザの操作を自動操舵開始操作という。
【0015】
自動操舵モードとは、走行機体2が自動で(後述する制御部4によって)操舵される操舵モードである。手動操舵モードとは、ユーザによるステアリングハンドル8の手動操作に応じて、走行機体2が操舵される操舵モードである。
速度設定ダイアルは、走行速度の上限を調節するために操作されるダイアルである。田植機1の走行速度は、変速ペダル9の踏み込み量によって、走行速度の上限を超えない範囲で調整される。
【0016】
植付部3は、昇降リンク機構13を介して走行機体2の後方に連結されている。走行機体2の後部には、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するためのPTO軸14と、植付部3を昇降駆動するための昇降シリンダ15とが配置されている。PTO軸14には、トランスミッション27を介して、エンジン10の駆動力が伝達される。
昇降リンク機構13は、トップリンク18およびロアリンク19からなる平行リンク構造により構成されている。ロアリンク19には、昇降シリンダ15が連結されている。昇降シリンダ15を伸縮動作させることによって、植付部3全体を上下に昇降させることができる。
【0017】
植付部3は、地面に苗を植え付ける複数(本実施形態では3つ)の植付ユニット21と、植付ユニット21を駆動する植付入力ケース20と、苗マット(図示せず)が載置される苗載台22と、苗を植え付ける前の地面を整地する複数のフロート23とを主に備えている。
植付入力ケース20には、昇降リンク機構13が連結されており、複数の植付ユニット21が取り付けられている。
【0018】
各植付ユニット21は、植付伝動ケース24と、一対の回転ケース25と、二対の植付アーム26とを有するロータリ式植付装置である。各植付ユニット21の植付伝動ケース24には、回転ケース25が2つずつ取り付けられており、それぞれの回転ケース25には、植付アーム26が2つずつ取り付けられている。
植付入力ケース20は、PTO軸14からの駆動力が入力されることによって、植付ユニット21を駆動する。植付伝動ケース24には、植付入力ケース20から動力が伝動される。回転ケース25は、植付伝動ケース24からの動力で回転駆動される。これにより、二対の植付アーム26の先端部は、ループ状の回転軌跡を描いて作動する。植付アーム26の先端部は、上から下へ向かって動くときに、苗載台22に載せられた苗マット(図示せず)から苗を掻き取って、苗を圃場Fの地面に植え込む。
【0019】
フロート23は、植付部3の下部に設けられている。フロート23は、下面が圃場Fの地面に接触することができるように配置されている。フロート23が地面に接触することにより、苗を植え付ける前の地面が整地される。
図3は、田植機1が圃場F内を走行する様子を説明するための模式図である。圃場Fは、植付作業が行われる作業領域Wと、植付作業が行われない非作業領域Nとに分けられる。作業領域Wは、たとえば、平面視で矩形状である。作業領域Wには、作業領域Wの長手方向に互いに間隔を空けて並ぶ複数の直線状経路Pが予め設定されている。直線状経路Pは、作業領域Wの短手方向に直線状に延びている。各直線状経路Pの始端Sおよび終端Eは、作業領域Wと非作業領域Nとの境界に位置する。
【0020】
走行機体2は、圃場Fをつづら折り状に走行する。走行機体2は、直線状経路Pを、長手方向における作業領域Wの一端側(
図3の紙面の左側)から順番に走行する。長手方向において最も他端側(
図3の紙面の最も右側)に設定された直線状経路Pを走行機体2が走行し終えることで、作業領域Wにおける走行機体2の走行が終了する。
ある直線状経路Pから隣の直線状経路Pに移動するときの走行機体2の走行の様子について説明する。走行機体2は、ある直線状経路Pの始端Sから終端Eへ向けて走行する。走行機体2は、当該直線状経路Pの終端Eを越えると、非作業領域Nに進入する。その後、走行機体2は、非作業領域Nで旋回して180°の方向転換を行い、先ほどの直線状経路Pの隣の直線状経路Pを、始端Sから終端Eへ向けて走行する。
【0021】
走行機体2の走行方向は、ある直線状経路Pと、その直線状経路Pの隣の直線状経路Pとの間で、互いに逆を向くことになる。以下では、走行機体2の走行方向の前方を「走行方向下流側」ともいい、走行機体2の走行方向の後方を「走行方向上流側」ともいう。
また、以下では、走行機体2が現在走行している直線状経路Pのことを第1直線状経路P1といい、走行機体2が次に走行する直線状経路Pのことを第2直線状経路P2ということもある。走行機体2は、第1直線状経路P1、非作業領域Nおよび第2直線状経路P2をこの順番で走行する。
【0022】
この実施形態では、走行機体2が直線状経路Pを走行するときには、走行機体2が直線状経路Pから外れないように操舵制御する必要があるため、操舵モードが自動操舵モードに設定される。走行機体2が非作業領域Nを走行するときには、ユーザの操舵操作によって走行機体2を旋回させる必要があるため、操舵モードが手動操舵モードに設定される。
図4は、田植機1の電気的構成を示すブロック図である。
【0023】
図4に示すように、田植機1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止および旋回等)、および、走行機体2に装着された植付部3の動作(昇降、駆動および停止等)を制御するための制御部4を備える。制御部4には、田植機1の各部を制御するための複数のコントローラがそれぞれ電気的に接続されている。
複数のコントローラは、エンジンコントローラ31、車速コントローラ32、操向コントローラ33、昇降コントローラ34およびPTOコントローラ35を含む。
【0024】
エンジンコントローラ31は、エンジン10の回転数等を制御するものである。エンジンコントローラ31は、エンジン10に設けられる燃料噴射装置としてのコモンレール装置41と電気的に接続されている。コモンレール装置41は、エンジン10の各気筒に燃料を噴射するものである。この場合、エンジン10の各気筒に対するインジェクタの燃料噴射バルブが開閉制御されることによって、燃料供給ポンプによって燃料タンクからコモンレール装置41に圧送された高圧の燃料が各インジェクタからエンジン10の各気筒に噴射され、各インジェクタから供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。エンジンコントローラ31は、コモンレール装置41を制御することで、エンジン10の回転数等を制御する。エンジンコントローラ31は、コモンレール装置41を制御することで、エンジン10への燃料の供給を停止させ、エンジン10の駆動を停止させることもできる。
【0025】
車速コントローラ32は、走行機体2の車速(田植機1の車速でもある)を制御するものである。具体的には、トランスミッション27(
図1参照)には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置である変速装置42が設けられている。
車速コントローラ32は、変速装置42の斜板の角度をアクチュエータ(図示せず)によって変更することで、トランスミッション27の変速比を変更する。これにより、所望の車速になるまで走行機体2を減速(加速)させたり、走行機体2を停止させたりできる。変速装置42の斜板の角度の変更速度を調整することによって、走行機体2の減速度合を調整することができる。走行機体2の減速度合を調整することによって、走行機体2が減速し始めてから停止するまでの距離を調整することができる。
【0026】
操向コントローラ33は、操舵モードが自動操舵モードであるときに、前輪5の転舵角を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル8の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ43が設けられている。操向コントローラ33は、ステアリングハンドル8の回転角が目標転舵角となるように操向アクチュエータ43を制御する。これにより、走行機体2の前輪5の転舵角が制御される。
【0027】
昇降コントローラ34は、植付部3の昇降を制御するものである。昇降コントローラ34は、制御部4から入力された制御信号に基づいて図略の電磁弁を開閉することにより昇降シリンダ15を駆動し、植付部3を適宜に昇降駆動させる。昇降コントローラ34により、植付部3を、植付作業を行わない非作業高さ、および、植付作業を行う作業高さ等の所望の高さで支持することができる。
【0028】
PTOコントローラ35は、PTO軸14の回転を制御するものである。具体的には、田植機1は、PTO軸14への動力の伝達/遮断を切り換えるためのPTOクラッチ45を備えている。この構成で、PTOコントローラ35は、制御部4から入力された制御信号に基づいてPTOクラッチ45を切り換えて、PTO軸14を介して植付部3の植付入力ケース20を回転駆動したり、この回転駆動を停止させたりできる。
【0029】
制御部4には、位置情報算出部49(測位部)が電気的に接続されている。位置情報算出部49には、衛星信号受信用アンテナ46で受信された測位信号が入力される。衛星信号受信用アンテナ46は、衛星測位システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星からの信号を受信するものである。位置情報算出部49は、走行機体2または植付部3(厳密には、衛星信号受信用アンテナ46)の位置情報を、たとえば緯度・経度情報として算出する。
【0030】
制御部4は、マイクロコンピュータを含んでいる。マイクロコンピュータは、CPU、記憶部(ROM、RAM、不揮発性メモリ、ハードディスク等)60を備えている。記憶部60には、プログラムおよび各種データが記憶される。マイクロコンピュータは、記憶部60に記憶されている所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能する。
【0031】
複数の機能処理部は、操舵モード切換制御部50、切換タイミング認知促進部51等を含む。操舵モード切換制御部50は、自動操舵モードと手動操舵モードとの間で、ユーザの操作(自動操舵開始操作および自動操舵解除操作)に応じて、走行機体2の操舵モードを切り換えるものである。
切換タイミング認知促進部51は、走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである状態で田植機1(少なくとも植付部3)が非作業領域Nに進入しないように、操舵モードを自動操舵モードから手動操舵モードに切り換えるタイミングをユーザに認知させるものである。切換タイミング認知促進部51は、報知制御部52によって構成されている。
【0032】
各直線状経路Pにおいて終端E側の部分には、所定の基準位置CPが設定されている(
図3参照)。基準位置CPは、終端Eよりもたとえば10m走行方向上流側の位置である。基準位置CPから終端Eまでの間の領域を終端側領域EAという。
報知制御部52は、走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合に、走行機体2が終端側領域EAに進入すると、走行機体2が終端側領域EAに進入したことを、報知部12を介してユーザに報知する。「走行機体2が終端側領域EAに進入する」とは、たとえば、走行機体2の先端が基準位置CPよりも走行方向下流側に達することを意味してもよいし、衛星信号受信用アンテナ46が基準位置CPよりも走行方向下流側に達することを意味してもよい。
【0033】
記憶部60は、領域記憶部61、直線状経路記憶部62、および基準位置記憶部63を含む。領域記憶部61には、予め設定された作業領域Wの情報(具体的には、作業領域Wの位置および形状等に関する情報)と、残りの領域である非作業領域Nの情報とが記憶される。直線状経路記憶部62には、作業領域Wに設定される複数の直線状経路Pの位置と、各直線状経路Pの始端Sおよび終端Eの位置とが記憶される。基準位置記憶部63には、各直線状経路P上に設定される基準位置CPを記憶される。
【0034】
以下では、操舵モード切換制御部50および切換タイミング認知促進部51について詳しく説明する。
図5は、制御部4の操舵モード切換制御部50によるモード切換処理の一例を説明するためのフローチャートである。操舵モード切換制御部50が起動されることで、モード切換処理が開始される。ユーザがステアリングハンドル8を操作して、長手方向における作業領域Wの最も一端側(
図3の紙面の最も左側)の直線状経路Pの始端Sに走行機体2を位置させることで、操作部11の切換スイッチが点灯し、ユーザの操作による操舵モードの切り換えが可能となる。
【0035】
図5を参照して、操舵モード切換制御部50は、ユーザによる自動操舵開始操作があったか否か(ステップS1)、およびユーザによる自動操舵解除操作があったか否か(ステップS2)を監視する。自動操舵開始操作があった場合には(ステップS1:YES)、操舵モード切換制御部50は、走行機体2の現在の操舵モードを判別する(ステップS3)。現在の操舵モードが手動操舵モードである場合には(ステップS3:YES)、操舵モード切換制御部50は、操舵モードを自動操舵モードに切り換える(ステップS4)。そして、操舵モード切換制御部50は、ステップS1に戻る。現在の操舵モードが自動操舵モードである場合には(ステップS3:NO)、操舵モード切換制御部50は、ステップS1に戻る。
【0036】
ステップS2において、自動操舵解除操作があった場合には(ステップS2:YES)、操舵モード切換制御部50は、走行機体2の現在の操舵モードを判別する(ステップS5)。現在の操舵モードが自動操舵モードである場合には(ステップS5:YES)、操舵モード切換制御部50は、操舵モードを手動操舵モードに切り換える(ステップS6)。そして、操舵モード切換制御部50は、ステップS1に戻る。ステップS5において、現在の操舵モードが手動操舵モードである場合には(ステップS5:NO)、操舵モード切換制御部50は、ステップS1に戻る。
【0037】
モード切換処理は、長手方向における作業領域Wの最も他端側(
図3の紙面の最も右側)の直線状経路Pを走行し終えるまで継続される。
図6は、制御部4の切換タイミング認知促進部51による切換タイミング認知促進処理の手順を示すフローチャートである。切換タイミング認知促進部51が起動されることで切換タイミング認知促進処理が開始される。
【0038】
図6を参照して、切換タイミング認知促進部51の報知制御部52は、走行機体2が直線状経路P(第1直線状経路P1)の始端Sに達したか否かを判定する(ステップS11)。走行機体2が直線状経路Pの始端Sに達した場合には(ステップS11:YES)、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入しているか否かを判定する(ステップS12)。走行機体2が直線状経路Pの始端Sに達していない場合には(ステップS11:NO)、報知制御部52は、ステップS11に戻る。
【0039】
走行機体2が終端側領域EAに進入している場合には(ステップS12:YES)、報知制御部52は、走行機体2の操舵モードを判別する(ステップS13)。走行機体2が終端側領域EAに進入していない場合には(ステップS12:NO)、報知制御部52は、ステップS12に戻る。
走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合には(ステップS13:YES)、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入したことを、報知部12を介してユーザに報知する(ステップS14)。具体的には、報知部12が警告ブザーである場合、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入したときに、報知部12に警告音を発させる。報知部12が警告ランプである場合、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入したときに、報知部12を点灯または点滅させる。そして、報知制御部52は、ステップS11に戻り、走行機体2が次の直線状経路P(第2直線状経路P2)の始端Sに達したか否かを判定する。
【0040】
ステップS13で走行機体2の操舵モードが手動操舵モードである場合には(ステップS13:NO)、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入したことをユーザに報知することなく、ステップS11に戻り、走行機体2が次の直線状経路P(第2直線状経路P2)の始端Sに達したか否かを判定する。
切換タイミング認知促進処理は、長手方向における作業領域Wの最も他端側(
図3の紙面の最も右側)の直線状経路Pを走行し終えるまで継続される。
【0041】
以上のように、田植機1は、走行機体2と、位置情報算出部49(測位部)と、操舵モード切換制御部50と、報知制御部52とを含む。この構成によれば、直線状経路P(第1直線状経路P1)を走行中の走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合に、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入したことをユーザに報知する。これにより、ユーザは、操舵モードを手動操舵モードに切り換えるべきタイミングであることを知ることができる。そのため、走行機体2が非作業領域Nに進入する前に、ユーザは、操舵モードを手動操舵モードに切り換える操作(自動操舵解除操作)を行いやすい。したがって、ユーザは、走行機体2が非作業領域Nに進入した直後に走行機体2を旋回させることができる。走行機体2が非作業領域Nに進入した直後とは、たとえば植付部3の後端が終端Eに達したときである。よって、旋回に必要なだけの幅の非作業領域Nが設定されていれば、走行機体2が非作業領域Nでスムーズに旋回できる。その結果、非作業領域Nを狭めることができる。
【0042】
次に、第1変形例に係る制御部4Pの切換タイミング認知促進部51Pについて説明する。
図7は、制御部4Pの構成を示すブロック図である。
図7を参照して、制御部4Pは、操舵モード切換制御部50と、切換タイミング認知促進部51Pとを含む。第1変形例の切換タイミング認知促進部51Pは、
図4に示す切換タイミング認知促進部51と異なり、報知制御部52の他に、第1停止指令出力部53をさらに含む。
【0043】
第1停止指令出力部53は、報知制御部52による報知後、終端側領域EA内に設定された所定の指令位置OP(
図3の二点鎖線参照)に走行機体2が達したときの走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合に、走行機体2の走行を停止させるための第1停止指令を出力する。
指令位置OPは、終端Eよりも、たとえば4m走行方向上流側の位置である。指令位置OPは、終端側領域EA内に設定されているため、当然、基準位置CPよりも走行方向下流側に位置する。第1停止指令が出力されることによって、走行機体2が非作業領域Nに進入する前に走行機体2の走行が停止される。「走行機体2が指令位置OPに達する」とは、たとえば、走行機体2の先端が指令位置OPに達することを意味してもよいし、衛星信号受信用アンテナ46が指令位置OPに達することを意味してもよい。
【0044】
第1停止指令が出力されると、車速コントローラ32は、変速装置42の斜板の角度を変更することによって、走行機体2が非作業領域Nに進入する前に走行機体2の走行が停止するように走行機体2の走行を減速させる。第1停止指令によって停止した後、自動操舵解除操作が行われるまでの間、走行機体2は、停止した状態で維持される。そして、自動操舵解除操作が行われると、走行機体2は、再び走行を開始する。走行機体2の減速中に自動操舵解除操作が行われた場合には、走行機体2は、停止することなく手動操舵モードで走行する。
【0045】
各直線状経路Pに設定される指令位置OPは、記憶部60の指令位置記憶部64に記憶されている(
図4の二点鎖線参照)。
図8は、第1変形例の切換タイミング認知促進部51Pによる切換タイミング認知促進処理の手順を示すフローチャートである。切換タイミング認知促進部51Pが起動されることで切換タイミング認知促進処理が開始される。
【0046】
図8を参照して、切換タイミング認知促進部51Pの報知制御部52は、走行機体2が直線状経路P(第1直線状経路P1)の始端Sに達したか否かを判定する(ステップS21)。走行機体2が直線状経路Pの始端Sに達した場合には(ステップS21:YES)、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入しているか否かを判定する(ステップS22)。走行機体2が直線状経路Pの始端Sに達していない場合には(ステップS21:NO)、報知制御部52は、ステップS21に戻る。
【0047】
走行機体2が終端側領域EAに進入している場合には(ステップS22:YES)、報知制御部52は、走行機体2の操舵モードを判別する(ステップS23)。走行機体2が終端側領域EAに進入していない場合には(ステップS22:NO)、ステップS22に戻る。
走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合には(ステップS23:YES)、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入したことを、報知部12を介してユーザに報知する(ステップS24)。具体的には、報知部12が警告ブザーである場合、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入したときに、報知部12に警告音を発させる。報知部12が警告ランプである場合、報知制御部52は、走行機体2が終端側領域EAに進入したときに、警告ランプの点灯または点滅させる。そして、切換タイミング認知促進部51Pは、ステップS25に移行する。
【0048】
ステップS23で走行機体2の操舵モードが手動操舵モードである場合には(ステップS23:NO)、走行機体2が終端側領域EAに進入したことを報知制御部52がユーザに報知することなく、切換タイミング認知促進部51Pは、ステップS25に移行する。 ステップS25では、切換タイミング認知促進部51Pの第1停止指令出力部53は、走行機体2の位置が指令位置OPに位置するか否かを判定する。走行機体2の位置が指令位置OPに達すると(ステップS25:YES)、第1停止指令出力部53は、走行機体2の現在の操舵モードを判別する(ステップS26)。
【0049】
走行機体2の現在の操舵モードが自動操舵モードである場合には(ステップS26:YES)、第1停止指令出力部53は、第1停止指令を出力する(ステップS27)。そして、ステップS26で走行機体2の現在の操舵モードが手動操舵モードである場合には(ステップS26:NO)、第1停止指令出力部53は、第1停止指令が出力せずに、ステップS21に戻る。ステップS21に戻ると、報知制御部52は、走行機体2が次の直線状経路P(第2直線状経路P2)の始端Sに達したか否かを判定する。
【0050】
切換タイミング認知促進部51Pによる切換タイミング認知促進処理は、長手方向における作業領域Wの最も他端側(
図3の紙面の最も右側)の直線状経路Pを走行し終えるまで継続される。
第1変形例によれば、報知制御部52による報知後、指令位置OPに走行機体2が到達したときの走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合に、第1停止指令出力部53が第1停止指令を出力する。
【0051】
そのため、仮に、報知制御部52による報知にユーザが気付かなかった場合や、報知制御部52による報知をユーザが無視した場合であっても、走行機体2が非作業領域Nに進入する前に、終端側領域EA内で走行機体2が停止する。これにより、ユーザは、操舵モードを手動操舵モードに切り換えることを余儀なくされる。したがって、ユーザは、少なくとも直線状経路P(第1直線状経路P1)の終端E付近において手動で走行機体2を操舵できる。よって、ユーザは、走行機体2が非作業領域Nに進入した直後に、走行機体2を旋回させることができる。
【0052】
次に、第2変形例に係る制御部4Qの切換タイミング認知促進部51Qについて説明する。
図9は、切換タイミング認知促進部51Qの構成を示すブロック図である。
図9を参照して、制御部4Qは、操舵モード切換制御部50と、切換タイミング認知促進部51Qとを含む。第2変形例の切換タイミング認知促進部51Qは、
図4に示す切換タイミング認知促進部51と異なり、報知制御部52を含んでおらず、第2停止指令出力部54を含む。
【0053】
第2停止指令出力部54は、走行機体2が終端側領域EAに進入したときの走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合に、走行機体2の車速を漸減させて終端側領域EA内で走行機体2を停止させるための第2停止指令を出力する。
第2停止指令が出力されると、車速コントローラ32は、変速装置42の斜板の角度を変更することによって、走行機体2が非作業領域Nに進入する前に走行機体2の走行が停止するように走行機体2の車速を漸減させる。
図3に示すように、基準位置CPは、指令位置OPよりも走行方向上流側に設定されている。そのため、第2停止指令出力部54から出力される第2停止指令は、第1停止指令出力部53(
図7参照)から出力される第1停止指令よりも、走行機体2の車速を緩やかに漸減させる。
【0054】
第2停止指令によって停止した後、自動操舵解除操作が行われるまでの間、走行機体2は、停止した状態で維持される。そして、自動操舵解除操作が行われると、走行機体2は、再び走行を開始する。走行機体2の減速中に自動操舵解除操作が行われた場合には、走行機体2は、停止することなく手動操舵モードで走行する。
図10は、第2変形例の切換タイミング認知促進部51Qによる切換タイミング認知促進処理の手順を示すフローチャートである。切換タイミング認知促進部51Qが起動されることで切換タイミング認知促進処理が開始される。
【0055】
図10を参照して、切換タイミング認知促進部51の第2停止指令出力部54は、走行機体2が直線状経路P(第1直線状経路P1)の始端Sに達したか否かを判定する(ステップS31)。走行機体2が直線状経路Pの始端Sに達した場合には(ステップS31:YES)、第2停止指令出力部54は、走行機体2が終端側領域EAに進入しているか否かを判定する(ステップS32)。走行機体2が直線状経路Pの始端Sに達していない場合には(ステップS31:NO)、第2停止指令出力部54は、ステップS31に戻る。
【0056】
走行機体2が終端側領域EAに進入している場合には(ステップS32:YES)、第2停止指令出力部54は、走行機体2の操舵モードを判別する(ステップS33)。
走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合には(ステップS33:YES)、第2停止指令出力部54は、第2停止指令を出力する(ステップS34)。そして、第2停止指令出力部54は、ステップS31に戻り、走行機体2が次の直線状経路P(第2直線状経路P2)の始端Sに達したか否かを判定する。走行機体2の現在の操舵モードが手動操舵モードである場合には(ステップS33:NO)、第2停止指令が出力されることなく、ステップS31に戻り、走行機体2が次の直線状経路P(第2直線状経路P2)の始端Sに達したか否かを判定する。
【0057】
切換タイミング認知促進部51Qによる切換タイミング認知促進処理は、長手方向における作業領域Wの最も他端側(
図3の紙面の最も右側)の直線状経路Pを走行し終えるまで継続される。
第2変形例によれば、直線状経路P(第1直線状経路P1)を走行中の走行機体2の操舵モードが自動操舵モードである場合に、第2停止指令出力部54は、終端側領域EA内で走行機体2を停止させるための第2停止指令を出力する。ユーザは、車速の変化(漸減)によって、操舵モードを手動操舵モードに切り換えるべきタイミングであることを知ることができる。そのため、走行機体2が非作業領域Nに進入する前に、ユーザは、操舵モードを手動操舵モードに切り換える操作を行いやすい。したがって、ユーザは、走行機体2が非作業領域Nに進入した直後に走行機体2を旋回させることができる。よって、旋回に必要なだけの幅の非作業領域Nが設定されていれば、走行機体2が非作業領域Nでスムーズに旋回できる。その結果、非作業領域Nを狭めることができる。
【0058】
仮に、車速の変化にユーザが気付かなかった場合や、車速の変化をユーザが無視した場合であっても、走行機体2が非作業領域Nに進入する前に、終端側領域EA内で走行機体2が停止する。これにより、ユーザは、操舵モードを手動操舵モードに切り換えることを余儀なくされる。
次に、制御部4の操舵モード切換制御部50によるモード切換処理の別の例について説明する。
図11は、操舵モード切換制御部50によるモード切換処理の別の例を説明するためのフローチャートである。
図11のモード切換処理は、
図5のモード切換処理と同様に、操舵モード切換制御部50が起動されることで開始される。そして、長手方向における作業領域Wの最も一端側(
図3の紙面の最も左側)の直線状経路Pの始端Sに走行機体2を位置させることで、操作部11の切換スイッチが点灯し、ユーザの操作による操舵モードの切り換えが可能となる。
【0059】
図11を参照して、このモード切換処理では、操舵モード切換制御部50が、ユーザによる自動操舵開始操作があったか否か(ステップS41)、およびユーザによる自動操舵解除操作があったか否か(ステップS42)を監視する。自動操舵開始操作があった場合には(ステップS41:YES)、操舵モード切換制御部50は、走行機体2の現在の操舵モードを判別する(ステップS43)。
【0060】
現在の操舵モードが手動操舵モードである場合には(ステップS43:YES)、操舵モード切換制御部50は、ステップS44に移行する。現在の操舵モードが自動操舵モードである場合には(ステップS43:NO)、操舵モード切換制御部50は、ステップS41に戻る。
ステップS44では、操舵モード切換制御部50は、走行機体2の位置を判別する。走行機体2が終端側領域EA内または非作業領域N内に位置する場合には(ステップS44:YES)、操舵モード切換制御部50は、自動操舵開始操作を無効化する(ステップS45)。そして、操舵モード切換制御部50は、ステップS41に戻る。
【0061】
終端側領域EA内とは、たとえば、走行機体2の先端が直線状経路Pにおいて基準位置CPよりも走行方向下流側に達していることを意味してもよいし、衛星信号受信用アンテナ46が直線状経路Pにおいて基準位置CPよりも走行方向下流側に達していることを意味してもよい。
走行機体2が終端側領域EA内および非作業領域N内のいずれにも位置しない場合、すなわち、走行機体2が直線状経路Pにおいて終端側領域EAよりも走行方向上流側に位置する場合には(ステップS44:NO)、操舵モード切換制御部50は、操舵モードを自動操舵モードに切り換える(ステップS46)。そして、操舵モード切換制御部50は、ステップS41に戻る。
【0062】
ステップS42において、自動操舵解除操作があった場合には(ステップS42:YES)、操舵モード切換制御部50は、走行機体2の現在の操舵モードを判別する(ステップS47)。
現在の操舵モードが自動操舵モードである場合には(ステップS47:YES)、操舵モード切換制御部50は、操舵モードを手動操舵モードに切り換える(ステップS48)。そして、操舵モード切換制御部50は、ステップS41に戻る。現在の操舵モードが手動操舵モードである場合には(ステップS47:NO)、操舵モード切換制御部50は、ステップS41に戻る。
【0063】
このように、操舵モード切換制御部50は、走行機体2が終端側領域EAに進入した後、次の直線状経路P(第2直線状経路P2)の始端Sに達するまでの間、走行機体2の操舵モードを自動操舵モードから手動操舵モードに切り換えるためのユーザの操作入力(自動操舵開始操作)を無効にするように構成されていてもよい。この構成によれば、走行機体2が終端側領域EAに進入した後は、誤って操舵モードが自動操舵モードに切り換えられることを防止することができる。したがって、操舵モードが自動操舵モードの状態で走行機体2が非作業領域Nに進入することが確実に防止される。
【0064】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、
図11に示す操舵モード切換制御部50によるモード切換制御は、
図4に示す制御部4の操舵モード切換制御部50だけでなく、第1変形例に係る制御部4Pの操舵モード切換制御部50や第2変形例に係る制御部4Qの操舵モード切換制御部50によっても行うことができる。
【0065】
また、上述の実施形態では、
図6のステップS11および
図8のステップS21において、切換タイミング認知促進部51の報知制御部52は、走行機体2が直線状経路P(第1直線状経路P1)の始端Sに達したか否かを判定するとした。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、
図6のステップS11および
図8のステップS21において、切換タイミング認知促進部51の報知制御部52が、走行機体2が直線状経路Pにおいて始端Sと基準位置CPとの間の領域(主直線状領域)に位置するか否かを判定するとしてもよい。そうであるならば、たとえば、走行機体2が直線状経路Pの途中に位置するときに
図6や
図8に示す切換タイミング認知促進処理が開始された場合や、直線状経路Pの途中位置から走行機体2が直線状経路に進入した場合であっても、切換タイミング認知促進処理が正常に実行される。
【0066】
なお、主直線状領域には、始端Sと基準位置CPとの間の位置に加えて、始端Sと基準位置CPとが含まれていてもよい。
また、
図10のステップS31においても、上述の実施形態とは異なり、切換タイミング認知促進部51の第2停止指令出力部54が、主直線状領域に位置するか否かを判定するとしてもよい。
【0067】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 :田植機(圃場作業機)
2 :走行機体
49 :位置情報算出部(測位部)
50 :操舵モード切換制御部
52 :報知制御部
53 :第1停止指令出力部
54 :第2停止指令出力部
CP :基準位置
E :終端
EA :終端側領域
F :圃場
N :非作業領域
OP :指令位置
P1 :第1直線状経路
P2 :第2直線状経路
S :始端
W :作業領域