(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】マルチステージポリマー粉末組成物、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C08F 265/00 20060101AFI20221208BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20221208BHJP
C08L 27/00 20060101ALI20221208BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08F265/00
C08F2/44 C
C08L27/00
C08L51/00
(21)【出願番号】P 2016560900
(86)(22)【出願日】2015-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2015057517
(87)【国際公開番号】W WO2015155185
(87)【国際公開日】2015-10-15
【審査請求日】2018-03-13
【審判番号】
【審判請求日】2020-01-14
(32)【優先日】2014-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ピリ, ホザンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】スヒッペル, クリスティアーン アー.
(72)【発明者】
【氏名】ハッジ, フィリップ
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】土橋 敬介
【審判官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-017626(JP,A)
【文献】特開昭58-052368(JP,A)
【文献】特開昭64-051475(JP,A)
【文献】特開昭59-080460(JP,A)
【文献】特開2002-212303(JP,A)
【文献】特開平02-041351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/, 251/- 283
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
60℃から150℃の間のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む
内層(B)を形成する少なくとも一のステージと、
-30℃から20℃の間のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む
外層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
とを含むポリマー粒子の形態のポリマー組成物であって、
上記二層を含む組成物中の
外層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とするマルチステージ法により得られるポリマー組成物において、
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む
外層(A)の重量%での重量比rが、多くとも30重量%であり、
ポリマー(A1)の質量平均分子量Mwが、1000000g/mol未満である、
ポリマー組成物。
【請求項2】
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む
外層(A)の重量%での重量比r
が、以下の式:
[上式中、変数Tは外層(A)のポリマー(A1)のケルビンで表されるガラス転移温度Tgであり、指数a1は少なくとも0.0255であり、係数b1は少なくとも0.0055であり、指数a1は最大で0.028、係数b1は最大で0.007である]
により少なくとも定義されることを特徴とする、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
ポリマー(A1)が、アクリル又はメタクリルモノマー由来の、少なくとも60重量%のモノマーを含む(メタ)アクリルポリマーであることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
ポリマー(B1)が(メタ)アクリルポリマーであることを特徴する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ポリマー(B1)が、C1からC12のアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも70重量%のモノマーを
含むことを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ポリマー(B1)が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びそれらの混合物から選択されるアクリル又はメタクリルモノマーを含むことを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ポリマー(A1)の質量平均分子量Mwが、500000g/mol未
満であることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
ポリマー(B1)の質量平均分子量が、少なくとも300000g/mo
lであることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
以下の工程:
a) モノマー又はモノマー混合物(B
m)の乳化重合により重合させ、60℃から150℃の間のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む
内層(B)を得る工程
b) モノマー又はモノマー混合物(A
m)の乳化重合により重合させ、-30℃から20℃の間のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む一の
外層(A)を得る工程
を含む、ポリマー組成物を製造するための方法であって、
上記二層を含む組成物中の得られた
外層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であり、モノマー混合物(Am)が少なくとも50重量%のエチルアクリレートを含み、
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む
外層(A)の重量%での重量比rが、多くとも30重量%であり、
ポリマー(A1)の質量平均分子量Mwが、1000000g/mol未満である、
方法で
あって、
工程a)が工程b)の前に行われることを特徴とする、方法。
【請求項10】
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む
外層(A)の重量%での重量比r
が、以下の式:
[上式中、変数Tは外層(A)のポリマー(A1)のケルビンで表されるガラス転移温度Tgであり、指数a1は少なくとも0.0255であり、係数b1は少なくとも0.0055であり、指数a1は最大で0.028、係数b1は最大で0.007である]
により少なくとも定義されることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
工程b)が工程a)で得られたポリマー(B)の存在下で実施されることを特徴とする、請求項
9又は10に記載の方法。
【請求項12】
噴霧乾燥による追加の乾燥工程c)を含むことを特徴とする、請求項
9から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
a) ハロゲン化ポリマー、並びに
b) 以下のステージを用いるマルチステージ法により得られるポリマー:
60℃から150℃の間のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む内層(B)を形成する少なくとも一のステージ、及び
-30℃から20℃の間のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む外層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
を含むハロゲン化ポリマー含有組成物であって、
上記二層を含むマルチステージ法により得られるポリマー中の外層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とするハロゲン化ポリマー含有組成物において、
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む
外層(A)の重量%での重量比rが、多くとも30重量%であり、
ポリマー(A1)の質量平均分子量Mwが、1000000g/mol未満である、
ハロゲン化ポリマー含有組成物。
【請求項14】
マルチステージ法により得られるポリマーが請求項
9から
12のいずれか一項に記載の方法に従って製造されることを特徴とする、請求項
13に記載のハロゲン化ポリマー含有組成物。
【請求項15】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の1重量%から20重量%の間のポリマー組成物を含むことを特徴とする、請求項
13又は
14に記載のハロゲン化ポリマー含有組成物。
【請求項16】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のポリマー組成物、又は請求項
9から
12のいずれか一項に記載の方法により得られるポリマー組成物の、ハロゲン化熱可塑性ポリマー含有組成物用の加工助剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非塵状ポリマー粉末形態のポリマー加工助剤、その組成物及びその調製方法に関する。
【0002】
本発明は特に、最終ステージが主要モノマーとしてエチルアクリレートを用いることからなるマルチステージ法により製造される、非塵状ポリマー粉末形態のポリマー加工助剤に関する。
【0003】
より具体的には、本発明は、最終ステージが主要モノマーとしてエチルアクリレートを用いることからなるマルチステージ法により製造される、非塵状ポリマー粉末形態のポリマー加工助剤である改質剤を有するハロゲン化ポリマー含有組成物に関する。
技術的問題
【0004】
特定の特性(いくつかの特性を挙げると、例えばポリマー組成、ガラス転移温度又は特定の分子量範囲)を有するポリマーを含むポリマー粉末は、広く用いられる製品、例えばこのような種々のポリマー若しくはプラスチック樹脂の加工挙動を向上させるため、又はそれらの性能を改善するための、種々のポリマー用の添加剤である。
【0005】
通常、このようなポリマー粉末は、凝集したラテックス粒子の粒で構成されている。凝集は、ポリマーラテックスと水性電解質溶液との混合撹拌下での凝固により、又はポリマーラテックスを噴霧乾燥することにより得ることができる。
【0006】
しかし、該粉末の操作及び取扱いは、高い微粒子含有量のために、安全面及び健康面の観点から不利である。
【0007】
また、該粉末の取り扱いは、粉末の劣った流動性の観点から、困難である。
【0008】
該粉末は、例えばハロゲン化ポリマー並びに発泡性ハロゲン化ポリマー及び配合物など、とりわけポリ塩化ビニル(PVC)のようなハロゲン化ポリマーなどの樹脂の加工を改善するために、いわゆる加工助剤として用いられる。
【0009】
加工助剤は、ブロー成形、射出成形、発泡、及び熱成形時の熱可塑性変形に対する,熱可塑性樹脂の溶融強度を上げるために有用である。
【0010】
本発明の目的は、非塵状のポリマー粉末組成物を提案することである。
【0011】
本発明の目的はまた、低い微粒子含有量を有するポリマー粉末組成物を有することでもある。
【0012】
本発明の別の目的は、あまりにも微細な粉末を回避し、比較的粗い粒子を有するポリマー粉末を得ることである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、それぞれのポリマーのモノマー組成、特にマルチステージ法により得られるポリマー粉末のそれぞれのステージのポリマーのモノマー組成に応じた、ポリマー粉末のポリマー粉末組成の適合である。
【0014】
本発明のさらなる別の目的は、非塵状であり、かつ低微粒子含有量を有するポリマー粉末組成物を製造するための方法である。
【0015】
さらに追加の目的は、低微粒子含有量を有する非塵状のマルチステージポリマーからなるポリマー粉末組成物を調製するため、また該組成に応じたそれぞれのステージのポリマー組成及び比率、並びに最終ステージのポリマーの対応するTgを推定するための方法を有する。
【0016】
またさらなる目的は、マルチステージポリマーで容易に加工可能であるハロゲン化ポリマー組成物を得ることである。
【背景技術】
【0017】
文献 米国特許第3983296号は、PVC発泡体用の改質剤を開示している。該改質剤系は、二のコアシェルポリマーを含む。該コアシェルポリマーのシェルは、実質的にグラフトされていない必要がある。第一のコアシェルポリマーは、150万を超える分子量を有するアクリルポリマーシェルを有する。アクリルシェルは、実施例によれば、エチルアクリレートを含む。第二のコアシェルポリマーは、100000未満の分子量を有するコアと、少なくとも450000の分子量を有するシェルとを有する。
【0018】
文献 欧州特許(EP)第0911358号は、メチルメタクリレート及びC2~C18のアルキルメタクリレートをベースとする単純な高分子量ラテックス又は同じ組成のコアシェル構造である、乳化重合により得られるポリマーを含むPVC発泡性組成物を開示している。
【0019】
文献 米国特許第4892910号は、低微粒子含有量のポリマー粉末及びそれを噴霧乾燥により製造する方法を開示している。前記粉末は、少なくとも二の異なるエマルジョンポリマー(A)及び(B)の粒子を含む水性分散体のポリマー粒子を集めることにより得られる。これは、二の異なるポリマーを別々に調製して特定の比率で混合しなければならず、また二の異なるポリマー粒子が互いに相溶性でなければならないという欠点を有する。
【0020】
文献 国際公開第2008/104701号は、(メタ)アクリルコポリマーである加工助剤について記述している。該コポリマーは乳化重合により製造され、噴霧乾燥により乾燥粉末として回収される。(メタ)アクリルポリマーは、多工程法では得られない単純なポリマーである。
【0021】
文献 米国特許出願公開第2004/0039123号は、プラスチック添加剤として有用な、低いガラス転移温度を有するポリマー組成物を開示している。該ポリマー組成物は、好ましくはエチルアクリレートで形成される第一のポリマーステージを含む。第二のポリマーステージは、少なくとも20℃のガラス転移温度を有するポリマーから形成される。第一のステージのポリマー重量は、少なくとも4x106g/mol、第二のステージのポリマー重量は、1x105g/molを上回る。
【0022】
文献 米国特許出願公開第2012/0142796号は、発泡成形用の加工性改良剤及びそれを含有する塩化ビニル系樹脂組成物を開示している。該加工性改良剤は、異なる分子量の二の(メタ)アクリルポリマーを含むポリマー粒子のためのマルチステージ法により得られる。該方法は、10000から300000の間の重量平均分子量を有する(メタ)アクリルポリマーの調製である第一の段と、第一のステージの存在下で2000000から7000000の間の重量平均分子量を有する(メタ)アクリルポリマーの調製である第二のステージとを有する方法を開示している。
【0023】
文献 米国特許出願公開第2005/0049332号は、改良された粉末特性を有する粉末状の線状ポリマーを製造するための方法を開示している。該方法は、ラテックスの凝固と多層ポリマーの凝固からなる二工程凝固法である。該多層ポリマーは、40℃未満のガラス転移温度を有する線状ポリマーと、高いガラス転移温度を有する別の線状ポリマー(ハードポリマー)とを含む。この凝固法の場合、ハードポリマーが最外層であること、又はガラス転移温度を有するポリマーの多くとも30重量%が最外層に存在し、残りの部分は多層ポリマーの内層であることが重要である。
【0024】
文献 米国特許出願公開第2005/0250880号は、低いガラス転移温度を有するポリマー組成物を開示している。該ポリマー組成物は、高くとも20℃のガラス転移点を有する第一のポリマーステージと、少なくとも30℃のガラス転移点を有する第二のポリマーステージとを含む。該ポリマー組成物は、粉末として分離されており、より具体的には、他のポリマー粒子を添加し、次いで共に全体を共凝固又は共噴霧することより共単離される。
【0025】
先行技術文献のいずれも、少なくとも50重量%のエチルアクリレート単位と1000000g/mol未満の分子量とを有するポリマーを含むステージを含むマルチステージポリマーを開示していない。
【発明の概要】
【0026】
驚くべきことに、
少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を形成する少なくとも一のステージと、
60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
とを含むポリマー粒子の形態のポリマー組成物であって、
上記二層を含む組成物中の層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とするマルチステージ法により得られる組成物が、低微粒子含有量の非塵状ポリマー粉末を生じ、またハロゲン化ポリマー用の加工助剤 として使用されうることが発見されている。
【0027】
驚くべきことに、
少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む内層(B)を形成する少なくとも一のステージと、
60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む外層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
とを含むポリマー粒子の形態のポリマー組成物であって、
上記二層を含む組成物中の外層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とするマルチステージ法により得られる組成物が、ポリマー粉末を形成するためのポリマー粒子の凝集後に低微粒子含有量の非塵状ポリマー粉末を生じること、及びハロゲン化ポリマー用の加工助剤として使用されうることも発見されている。
【0028】
驚くべきことに、また、以下の工程:
a) モノマー又はモノマー混合物(Bm)の乳化重合により重合させ、少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程
b) 工程a)で得られたポリマーの存在下で、モノマー又はモノマー混合物(Am)の乳化重合により重合させ、60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む一の層(A)を得る工程
[ここで、上記二層を含む組成物中の層(A)の重量比rは少なくとも2重量%であり、モノマー混合物(Am)が少なくとも50重量%のエチルアクリレートを含む]
を含むポリマー組成物を製造するための方法が、ポリマー粉末を形成するためのポリマー粒子の凝集後に低微粒子含有量の非塵状ポリマー粉末を生じること、及びハロゲン化ポリマー用の加工助剤として使用されうることも発見されている。
【0029】
驚くべきことに、また、
a) ハロゲン化ポリマー、並びに
b) 以下のステージを用いるマルチステージ法により得られるポリマー
少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む内層(B)を形成する少なくとも一のステージ、及び
60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む外層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
を含み、
上記二層を含むマルチステージ法により得られるポリマー中の外層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とするポリマー組成物が、容易に加工されうることも発見されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
第一の態様によれば、本発明は、
少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を形成する少なくとも一のステージと、
60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
とを含むポリマー粒子の形態のポリマー組成物であって、
上記二層を含む組成物中の層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とするマルチステージ法により得られる組成物に関する。
【0031】
第二の態様によれば、本発明は、
少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む内層(B)を形成する少なくとも一のステージと、
60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む外層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
とを含むポリマー粒子の形態のポリマー組成物であって、
上記二層を含む組成物中の外層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とするマルチステージ法により得られる組成物に関する。
【0032】
第三の態様において、本発明は、以下の工程:
a) モノマー又はモノマー混合物(Bm)の乳化重合により重合させ、少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程
b) 工程a)で得られたポリマーの存在下で、モノマー又はモノマー混合物(Am)の乳化重合により重合させ、60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む一の層(A)を得る工程
を含み、
上記二層を含む組成物中の層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であり、モノマー混合物(Am)が少なくとも50重量%のエチルアクリレートを含む、ポリマー組成物を製造するための方法に関する。
【0033】
第四の態様において、本発明は、
a) ハロゲン化ポリマー、並びに
b) 以下のステージを用いるマルチステージ法により得られるポリマー
少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む内層(B)を形成する少なくとも一のステージ、及び
60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む外層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
を含むポリマー組成物であって、
上記二層を含むマルチステージ法により得られるポリマー中の外層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とするポリマー組成物に関する。
【0034】
使用されている用語「ポリマー粉末」は、ナノメートル範囲の粒子を含む一次ポリマーの凝集により得られる、少なくとも1マイクロメートル(μm)の範囲の粉末粒子を含むポリマーを表す。
【0035】
使用されている用語「一次粒子」は、ナノメートル範囲の粒子を含む球状ポリマーを表す。一次粒子は、好ましくは50nmから500nmの間の重量平均粒径を有する。
【0036】
使用されている用語「非塵状」は、ポリマー粉末が低微粒子含有量を有することと理解される。
【0037】
使用されている用語「低微粒子含有量」は、ポリマー粉末が10μm超の、粒径(D10値)を有することを表す。
【0038】
使用されている用語「粒径」は、球状とみなされる粒子の体積平均直径を表す。
【0039】
使用されている用語「コポリマー」は、少なくとも二の異なるモノマーからなるポリマーを表す。
【0040】
使用されている「マルチステージポリマー」は、マルチステージ重合法によって順次形成されるポリマーを表す。好ましいのは、組成物中に異なる少なくとも二のステージを有し、第一のポリマーが第一ステージポリマーであり、第二のポリマーが第二ステージポリマーである、すなわち第二のポリマーが第一のエマルションポリマーの存在下で乳化重合により形成される、マルチステージ乳化重合法である。
【0041】
使用されている用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルモノマーのすべての種類を表す。
【0042】
使用されている用語「(メタ)アクリルポリマー」は、(メタ)アクリルポリマーの50重量%以上を構成する(メタ)アクリルモノマーを含むポリマーを本質的に含む(メタ)アクリルポリマーを表す。
【0043】
使用されている用語「PVC」は、少なくとも50重量%の塩化ビニルを含むホモポリマー又はコポリマーの形態のポリ塩化ビニルと理解される。
【0044】
凝集により本発明のポリマー粉末を構成する一次粒子である球状ポリマー粒子に関しては、20nmから500nmの間の重量平均粒径を有する。該ポリマーの重量平均粒径は、好ましくは50nmから400nmの間、さらに好ましくは75nmから350nmの間、有利には80nmから300nmの間である。
【0045】
ポリマー粒子は、エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む、60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む少なくとも一の層(A)と、60℃以上のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含むもう一つの層(B)とを含む多層構造を有する。好ましくは、層(A)中の、エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む、60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、多層構造を有するポリマー粒子の外層である。
【0046】
該ポリマー粒子は、二又は三ステージといったマルチステージ法により得られる。好ましくは、層(A)中の、エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む、60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、マルチステージ法の最終ステージで、多層構造を有するポリマー粒子の外面になる。
【0047】
追加の中間層があってもよい。
【0048】
完全なポリマー粒子中の、エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含むポリマー(A1)を含む外層(A)の重量比rは、少なくとも2重量%である。
【0049】
本発明によれば、完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む外層(A)の比率rは、エチルアクリレートと共に使用されるコモノマー(単数又は複数)を考慮し、エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含むポリマー(A1)の正確な組成に基づいて、かつ特にそのガラス転移温度の関数に基づいて適合させる必要がある。
【0050】
好ましくは、エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む本発明のポリマー(A1)は、200Kから333Kの間のガラス転移温度を有する。
【0051】
より具体的には、完全なポリマー粒子中の、エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含むポリマー(A1)を含む外層(A)の重量%での重量比rは、200Kから333Kの間のポリマー(A1)のTgの場合、以下の式(1)により定義される:
上式中、変数Tは外層(A)のポリマー(A1)のケルビンで表されるガラス転移温度Tgであり、指数a1及び係数b1はパラメーターである。
【0052】
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む外層(A)の重量%での最小重量比rについては、指数a1は少なくとも0.0255、係数b1は少なくとも0.0055であり、好ましくは指数aは少なくとも0.0257、係数bは少なくとも0.0056であり、より好ましくは指数aは少なくとも0.026、係数bは少なくとも0.0057である。
【0053】
好ましくは、完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む外層(A)の最大重量比rについては、a1が最大で0.028、b1が最大で0.007であり、好ましくは指数aが最大で0.0275、係数bが最大で0.0065であり、より好ましくは指数aが最大で0.027、係数bが最大で0.0065であり、有利には指数aが最大で0.0265、係数bが最大で0.0065である。
【0054】
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む外層(A)の重量比rは、好ましくは多くとも30%、より好ましくは多くとも29%、有利には多くとも28%である。
【0055】
好ましくは、ポリマー(A1)は、外層(A)の中にのみ存在する。
【0056】
ガラス転移温度Tgは、例えば熱機械分析のような動的な方法により推定することができる。
【0057】
本発明の場合、式(1)に従ってポリマー(A1)の必要量を計算するためには、ポリマー(A1)を形成するためのモノマーを、ポリマー(A1)のガラス転移温度Tgを推定及び測定するためのポリマー(A1)の試料を得る目的で、単独で重合させることができる。ポリマー(A1)のガラス転移温度Tgが既知であるならば、比率rに基づくポリマー(A1)の必要量は、式(1)に従って計算することができる。
【0058】
本発明のポリマー粉末は、粒子の形態である。ポリマー粉末粒子は、マルチステージ法により形成される、凝集した一次ポリマー粒子を含む。
【0059】
本発明のポリマー粉末に関しては、それは 1μmから500μmの間の体積メジアン粒径D50を有する。該ポリマー粉末の体積メジアン粒径は、好ましくは10μmから400μmの間、さらに好ましくは15μmから350μmの間、有利には20μmから300μmの間である。
【0060】
体積粒度分布D10は、少なくとも7μm、好ましくは10μmである。
【0061】
体積粒度分布D90は、最大で500μm、好ましくは400μm、より好ましくは最大で250μmである。
【0062】
ポリマー(A1)に関しては、エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む(メタ)アクリルポリマーである。
【0063】
より好ましくは、ポリマー(A1)は、それが60℃未満のガラス転移温度を有する限り、エチルアクリレートと共重合可能なコモノマー(単数又は複数)を含む。
【0064】
ポリマー(A1)中のコモノマー(単数又は複数)は、好ましくは(メタ)アクリルモノマー及び/又はビニルモノマーから選択される。
【0065】
ポリマー(A1)中の(メタ)アクリルコモノマーは、C1からC12のアルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーを含む。ポリマー(A1)中の(メタ)アクリルコモノマーは、さらに好ましくはC1からC4のアルキルメタクリレートモノマー及び/又はC1からC8のアルキルアクリレートモノマーを含む。
【0066】
ポリマー(A1)のアクリル又はメタクリルコモノマーは、ポリマー(A1)が60℃未満のガラス転移温度を有する限り、最も好ましくはメチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びそれらの混合物から選択される。
【0067】
特定の実施態様において、ポリマー(A1)は、エチルアクリレートのホモポリマーである。
【0068】
エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含むポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、より好ましくは-50℃から50℃の間、さらにより好ましくは-40℃から30℃の間、有利には-30℃から20℃の間である。
【0069】
エチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含むポリマー(A1)の質量平均分子量Mwは、好ましくは1000000g/mol未満、より好ましくは500000g/mol未満、最も好ましくは300000g/mol未満である。
【0070】
ポリマー(B1)に関しては、ビニルモノマー及び/又は二重結合を有するモノマーを含むホモポリマー並びにコポリマーが挙げられる。好ましくは、ポリマー(B1)もまた、(メタ)アクリルポリマーである。
【0071】
好ましくは、ポリマー(B1)は、C1からC12のアルキル(メタ)アクリレートから選択される、少なくとも70重量%のモノマーを含む。さらにより好ましくは、ポリマー(B1)は、少なくとも80重量%の、C1からC4のアルキルメタクリレートモノマー及び/又はC1からC8のアルキルアクリレートモノマーを含む。
【0072】
ポリマー(B1)のアクリルモノマー又はメタクリルモノマーは、ポリマー(B1)が少なくとも60℃のガラス転移温度を有する限り、最も好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0073】
ポリマー(B1)は、有利にはメチルメタクリレート由来の、少なくとも70重量%のモノマー単位を含む。
【0074】
ポリマー(B1)のガラス転移温度Tgは、好ましくは60℃から150℃の間である。ポリマー(B1)のガラス転移温度は、さらに好ましくは80℃から150℃の間、有利には90℃から150℃の間位、さらに有利には100℃から150℃の間である。
【0075】
好ましくは、ポリマー(B1)の質量平均分子量は、少なくとも300000g/mol、好ましくは少なくとも500000g/mol、さらに好ましくは少なくとも750000g/mol、有利には少なくとも1000000g/mol、最も有利には少なくとも1500000g/molである。
【0076】
本発明の場合、ポリマー(B1)単独の質量平均分子量Mwを測定するためには、ポリマー(B1)を形成するためのモノマーを、ポリマー(B1)の試料を得る目的で、単独で重合させることができる。同じことがポリマー(A1)にも当てはまる。
【0077】
本発明によるポリマー組成物を製造するための方法に関しては、それは、以下の工程:
a) モノマー又はモノマー混合物(Bm)の乳化重合により重合させ、少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程、
b) モノマー又はモノマー混合物(Am)の乳化重合により重合させ、60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む一の層(A)を得る工程
を含み、
上記二層を含む組成物中の層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であり、モノマー混合物(Am)が少なくとも50重量%のエチルアクリレートを含む。
【0078】
好ましくは、工程a)は、工程b)の前になされる。さらに好ましくは、工程b)は、工程a)で得られたポリマー(B)の存在下で実施される。
【0079】
有利には、本発明によるポリマー組成物を製造するための方法は、以下の工程:
a) モノマー又はモノマー混合物(Bm)の乳化重合により重合させ、少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程、
b) モノマー又はモノマー混合物(Am)の乳化重合により重合させ、少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程
(ここで、上記二層を含む組成物中の得られた層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であり、モノマー混合物(Am)が少なくとも50重量%のエチルアクリレートを含む)
を順次含むマルチステージ法である。
【0080】
層(A)及び(B)をそれぞれ形成するためのモノマー又はモノマー混合物(Am)及び(Bm)は、ポリマー(A1)及び(B1)をそれぞれ含み、ポリマー(A1)及び(B1)それぞれの特徴は前述の通りである。
【0081】
より具体的には、該製造方法により形成された完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む外層(A)の重量%での重量比rは、200Kから340Kの間のポリマー(A1)のTgの場合、好ましくは200Kから333Kの間のポリマー(A1)のTgの場合、以下の式(2)により定義される:
上式中、変数Tは外層(A)のポリマー(A1)のケルビンで表されるガラス転移温度Tgであり、指数a1及び係数b1はパラメーターである。
【0082】
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む外層(A)の重量%での最小重量比rについては、指数a1は少なくとも0.0255、係数b1は少なくとも0.0055であり、好ましくは指数aは少なくとも0.0257、係数bは少なくとも0.0056であり、より好ましくは指数aは少なくとも0.026、係数bは少なくとも0.0057である。
【0083】
好ましくは、完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む外層(A)の最大重量比rについては、a1は最大で0.028、b1は最大で0.007であり、好ましくは指数aは最大で0.0275、係数bは最大で0.0065であり、より好ましくは指数aは最大で0.027、係数bは最大で0.0065であり、有利には指数aは最大で0.0265、係数bは最大で0.0065である。
【0084】
完全なポリマー粒子中のポリマー(A1)を含む外層(A)の重量比rは、好ましくは多くとも30重量%、より好ましくは多くとも29重量%、有利には多くとも28重量%である。
【0085】
好ましくは、ポリマー(A1)は、外層(A)の中にのみ存在する。
【0086】
本発明によるポリマー組成物を製造するための方法は、ポリマー組成物を回収するための追加の工程c)を任意選択的に含みうる。回収は、凝固により又は噴霧乾燥によりなされる。
【0087】
凝固は、攪拌しながら電解質水溶液を添加することによる乳化重合の終了時の一次ポリマー粒子凝集によりなされる。
【0088】
噴霧乾燥は、本発明によるポリマー粉末組成物の製造方法のための回収及び/又は乾燥にとって好ましい方法である。
【0089】
本発明は、熱可塑性ポリマー中の加工助剤としての、ポリマー粉末の形態の本発明によるポリマー組成物の使用にも関する。該熱可塑性ポリマーは、好ましくはハロゲン含有ポリマーである。
【0090】
加工助剤は、該熱可塑性ポリマーの加工中の問題を回避するため、又はその加工を容易にするため、また溶融物を加工する場合に、熱可塑性ポリマーで形成される最終形状の望ましくない欠陥を回避するために、熱可塑性材料に添加される。
【0091】
本発明によるハロゲン含有ポリマー組成物に関しては、それは、
a) ハロゲン化ポリマー、並びに
b) 以下のステージを用いるマルチステージ法により得られるポリマー:
少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む内層(B)を形成する少なくとも一のステージ、及び
60℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む外層(A)を形成する少なくとも一のステージ[ポリマー(A1)はエチルアクリレート由来のポリマー単位を少なくとも50重量%含む]
を含み、
上記二層を含むマルチステージ法により得られるポリマー中の外層(A)の重量比rが少なくとも2重量%であることを特徴とする。
【0092】
マルチステージ法により得られるポリマー組成物を製造するための方法の好ましくかつ有利な変形例は、前述の通りである。
【0093】
ポリマー(A1)及び(B1)をそれぞれ含む層(A)及び(B)、並びにポリマー(A1)及び(B1)それぞれの特徴は、前述の通りである。
【0094】
ハロゲン含有ポリマーに関しては、
- 塩化ビニル(PVC)及び塩化ビニリデン(PVDC)のホモポリマー並びにコポリマー、構造中に塩化ビニル単位を含むビニル樹脂(例えば塩化ビニルと脂肪酸のビニルエステル(特に酢酸ビニル)とのコポリマー)、塩化ビニルとアクリル酸及びメタクリル酸のエステルとのコポリマー、並びに塩化ビニルとアクリロニトリルとのコポリマー、塩化ビニルとジエン化合物及び不飽和ジカルボン酸又はその無水物とのコポリマー(例えば塩化ビニルとマレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル又は無水マレイン酸とのコポリマー)、塩化ビニルの後塩素化ポリマー及びコポリマー、塩化ビニル及び塩化ビニリデンと不飽和アルデヒド、ケトン他(例えばアクロレイン、クロトンアルデヒド、ビニルメチルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)とのコポリマー;塩化ビニリデンのポリマー、並びに塩化ビニル及び他の重合性化合物と塩化ビニリデンとのコポリマー;
- クロロ酢酸ビニル及びジクロロジビニルエーテルのポリマー;カルボン酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ブチル)の塩素化ポリマー、例えばアクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートのような、ニトリル、アミド、アルキルエステルのアクリル酸及びα-置換アクリル酸(例えばメタクリル酸)の塩素化ポリマーエステル;
- スチレン、ジクロロスチレンなどの芳香族ビニル誘導体のポリマー;塩化ゴム;
- エチレン、プロペン、1-ブテン、(2.2.1)ビシクロヘプテン-2、(2.2.1)ビシクロヘプタ-ジエン-2,5等のオレフィンの塩素化ポリマー;
- クロロブタジエンのポリマー及び後塩素化ポリマー、並びにクロロブタジエンと塩化ビニルとのコポリマー、塩素化天然ゴム及び合成ゴム、さらにこれらのポリマー同士の又は他の重合性化合物との混合物
- ハロゲン含有ポリマーの一部が(メタ)アクリルホモポリマー又はコポリマー上にグラフトされている、グラフト化ハロゲン含有コポリマー(架橋又は非架橋粒子の形態)
が挙げられる。
【0095】
ハロゲン含有ポリマーは、好ましくは熱可塑性ポリマーであって、エラストマーのポリマーではない。熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(示差走査熱量測定による測定)は、少なくとも40℃、好ましくは50℃である。
【0096】
ハロゲン含有ポリマー中のハロゲンは、好ましくはフッ素又は塩素から選択され、有利にはハロゲンは塩素である。
【0097】
塩素含有ポリマーは、塩化ビニル(例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、後塩素化ポリ塩化ビニル)のホモポリマー、及び塩化ビニルモノマーと多くとも40%のコモノマー(例えば酢酸ビニル、酪酸ブチル、塩化ビニリデン、プロピレン、メチルメタクリレート等)との重合により形成されるコポリマー、及び塩素化ポリエチレンなどの他のポリマーを含有する塩素含有ポリマー、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンのターポリマー、メチルメタクリレート、ブタジエン、スチレンのターポリマー;ポリアクリル酸樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、及びアルキルアクリレート、メチル-メタクリレート、ブタジエンのターポリマーの中から選択されるポリマー又はポリマーの混合物から選択され、好ましくは塩素含有ポリマーはポリ塩化ビニル又は後塩素化ポリ塩化ビニルである。
【0098】
塩素含有ポリマーは、少なくとも50重量%のVC単位、好ましくは少なくとも70重量%のVC単位、さらに好ましくは少なくとも80重量%のVC単位、有利には少なくとも85重量%のVC単位;又はその混合物を含む、塩化ビニル(VC)のホモポリマー及びコポリマーから好ましくは選択される。
【0099】
塩化ビニルのコポリマーは、好ましくは1重量%から30重量%の間の酢酸ビニル単位、さらに好ましくは5重量%から20重量%の間の酢酸ビニル単位、有利には10重量%から15重量%の間の酢酸ビニル単位を含む。
【0100】
本発明のハロゲン含有ポリマー組成物は、マルチステージ法により得られる1重量%から20重量%の間のポリマー組成物を含む。
【0101】
[評価方法]
ガラス転移温度
ポリマーのガラス転移点(Tg)は、熱機械分析を実現することができる機器で測定される。Rheometrics社により提案されているRDAII「RHEOMETRICS DYNAMIC ANALYSER」が使用されている。この熱機械分析は、適用される温度、ひずみ又は変形の関数としての試料の粘弾性変化を正確に測定する。使用周波数は1Hzである。この装置は、温度変化の制御プログラムの間中、ひずみを固定したまま、試料の変形を継続的に記録する。
結果は、温度、弾性率(G’)、損失弾性率、及びタン・デルタの関数として、図面により得られる。Tgは、タン・デルタの導関数(derivated)がゼロに等しい場合、タン・デルタ曲線から読み取られる、比較的高い温度値である。
【0102】
分子量
ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定される。
【0103】
粒径分析
マルチステージ重合後の一次粒子の粒径は、MALVERN社のZetasizer Nano S90で測定される。
ポリマー粉末の粒径は、MALVERN社のMalvern Mastersizer 3000で測定される。
重量平均粉末粒径、粒度分布、及び微粒子の比率の推定のため、0,5~880μmの範囲を測定する、300mmレンズを備えたMalvern Mastersizer 3000装置が使用される。
D(v,0.5)(又は短縮してD50)は、試料の50%がそれよりも小さいサイズの粒径を有し、試料の50%がそれよりも大きいサイズの粒径を有するところのその粒径、すなわち50%の累積体積における等体積球相当径である。このサイズは、体積メジアン径としても知られ、粒子の密度による質量メジアン径に関連している(粒子密度に依存しないサイズを想定)。
D(v,0.1)又はD10は、試料の10%がそのサイズよりも小さい粒径であるところのその粒径、すなわち10%の累積体積における等体積球相当径である。
D(v,0.9)又はD90は、試料の90%がそのサイズよりも小さい粒径であるところのその粒径である。
【実施例】
【0104】
略称
MMA - メチルメタクリレート
BA - ブチルアクリレート
EA - エチルアクリレート
【0105】
比較例1及び2は、国際公開第2008/104701号に記載の合成法に従って製造される。
【0106】
比較例1:8500gの水、5.23gのNa2CO3、及び78.20gのラウリル硫酸ナトリウムを撹拌しながら反応器に入れ、その混合物を完全に溶解するまで撹拌した。減圧窒素パージを三回連続で実施し、反応器をわずかな減圧下で放置した。次いで、反応器を加熱した。同時に、4157.2gのメチルメタクリレート、260.95gのスチレン、及び782.85gのn-ブチルアクリレートを含む混合物を30分間窒素脱気した。次に、ポンプを使って、該混合物を素早く反応器に導入した。反応混合物の温度が摂氏55度に達したら、148gの水に溶解した7.8gの過硫酸カリウムを導入した。ラインは、50gの水ですすいだ。反応混合物は、発熱ピークまで温度を上げるために放置した。発熱ピーク後、次いで重合は、完了まで60分間放置された。反応器を30℃に冷却した。次いでポリマーを回収し、ラテックスを噴霧乾燥により乾燥させた。
【0107】
比較例2:8600gの水、5.23gのNa2CO3、及び38.20gのラウリル硫酸ナトリウムを撹拌しながら反応器に入れ、その混合物を完全に溶解するまで撹拌した。減圧窒素パージを三回連続で実施し、反応器をわずかな減圧下で放置した。次いで、反応器を加熱した。同時に、4427gのメチルメタクリレート及び781gのn-ブチルアクリレートを含む混合物を30分間窒素脱気した。次に、ポンプを使って、該混合物を素早く反応器に導入した。反応混合物の温度が摂氏55度に達したら、98.08gの水に溶解した7.81gの過硫酸カリウムを導入した。ラインは、50gの水ですすいだ。反応混合物は、発熱ピークまで温度を上げるために放置した。発熱ピーク後、次いで重合は、完了まで60分間放置された。反応器を摂氏30度に冷却し、ラテックスを回収した。そのラテックスを噴霧乾燥により乾燥させる。
【0108】
比較例3:8600gの水、5.23gのNa2CO3、及び38.20gのラウリル硫酸ナトリウムを撹拌しながら反応器に入れ、その混合物を完全に溶解するまで撹拌した。減圧窒素パージを三回連続で実施し、反応器をわずかな減圧下で放置した。次いで、反応器を加熱した。同時に、4259.58gのメチルメタクリレート、156.57gのn-ブチルアクリレート、及び782.85gのエチルアクリレ-トを含む混合物を30分間窒素脱気した。次に、ポンプを使って、該混合物を素早く反応器に導入した。反応混合物の温度が摂氏55度に達したら、98.08gの水に溶解した7.81gの過硫酸カリウムを導入した。ラインは、50gの水ですすいだ。反応混合物は、発熱ピークまで温度を上げるために放置した。発熱ピーク後、次いで重合は、完了まで60分間放置された。反応器を摂氏30度に冷却し、ラテックスを回収した。そのラテックスを噴霧乾燥により乾燥させる。
【0109】
実施例1:EAをベースとする外層を形成する最終ステージを有する粒子比較例1に従って(ただし噴霧乾燥はしない)、十分量のラテックスを調製した。出発物質は、比較例1に記載のラテックス組成物である。最終工程は20リットル反応器内での重合である。反応器には、固形分38%のラテックスが12000g入っている。減圧窒素パージを三回連続で実施し、反応器をわずかな減圧下で放置した。次いで、反応器を80℃で加熱した。同時に、240gのエチルアクリレート及び1.32gのn-オクチルメルカプタンを含む混合物を30分間窒素脱気した。次に、ポンプを使って、該混合物を素早く反応器に導入した。ラインは、100gの水ですすいだ。反応混合物の温度が80℃に達したら、50gの水に溶解した0.72gの過硫酸カリウムを導入した。ラインは、50gの水ですすいだ。反応混合物は、小さな発熱ピークまで温度を上げるために放置した。次いで、重合は、完了まで60分間放置された。次いで、50gの水に溶解した0.24gの過硫酸カリウムを導入した。ラインは、50gの水ですすいだ。30分の保持時間を待った。反応器を30℃に冷却した。次いでポリマーを回収し、ラテックスを噴霧乾燥により乾燥させた。得られた粒度分布の結果を表1に示す。
【0110】
実施例2及び3は、ラテックス出発物質をそれぞれ比較例2及び3に変えたものの、実施例1に従って行われた。
【0111】
すべての実施例及び比較例の乾燥粉末は、粒度分布を測定し、それぞれD10、D50、及びD90値を推定するために、Malvern Mastersizer 3000で分析される。結果を表1にまとめる。
【0112】
比較例1、2、及び3は、実施例1から3よりかなり小さいD10値を有し、これは比較的小さな粒子の比較的大きな集団、又は比較的多い微粒子含有量を示す。