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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】乳性飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20221208BHJP
   A23L 2/70 20060101ALI20221208BHJP
   A23C 9/154 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A23L2/38 P
A23L2/00 K
A23C9/154
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017177841
(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2018050619
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2016187015
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】鷺谷 敦廣
(72)【発明者】
【氏名】大森 弘之
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-042021(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111356(WO,A1)
【文献】特表平11-502711(JP,A)
【文献】特開2016-168021(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030206(WO,A1)
【文献】特開2021-119748(JP,A)
【文献】特開2021-029167(JP,A)
【文献】特開2013-094154(JP,A)
【文献】特開2014-000019(JP,A)
【文献】特開平09-094060(JP,A)
【文献】特表2004-520851(JP,A)
【文献】特開2005-333877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/38
A23L 2/70
A23C 9/154
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳成分を含有する乳性飲料であって、
無脂乳固形分が1.2~3.9質量%であり、
糖度が1~8(°Brix)であり、
pHが3.7~4.2であり、
クエン酸換算酸度が0.1~0.4質量%であり、
0.1~0.3質量%の安定剤を含有し、
ペクチンを含有せず、
前記安定剤が大豆多糖類を含有する、容器詰め乳性飲料(加温販売用容器詰め飲料を除く。)。
【請求項2】
非炭酸飲料である、請求項1に記載の乳性飲料。
【請求項3】
非アルコール飲料である、請求項1~2のいずれかに記載の乳性飲料。
【請求項4】
ストレート飲料である、請求項1~3のいずれかに記載の乳性飲料。
【請求項5】
乳性飲料を調製する工程と、
前記乳性飲料を熱殺菌する工程と、
前記熱殺菌する工程と同時又はその後に、フィルターに前記乳性飲料を通過させる工程とを有し、
前記乳性飲料が、
1.2~3.9質量%の無脂乳固形分、
1~8(°Brix)の糖度、
3.7~4.2のpH、
0.1~0.4質量%のクエン酸換算酸度、及び
0.1~0.3質量%の安定剤、
を有し、
ペクチンを含有せず、
前記安定剤が大豆多糖類を含有する、
乳性飲料の製造方法。
【請求項6】
前記乳性飲料が非炭酸飲料である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記乳性飲料が非アルコール飲料である、請求項5又は6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳性飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳成分を含有する乳性飲料は、濃厚な味わいが楽しめるのが特徴である。乳性飲料における課題の一つとして、長期保存時に生じる乳蛋白質の凝集及び沈殿の抑制が挙げられる。
例えば、特許文献1(特許第3313104号)には、乳蛋白質懸濁粒子の凝集及び沈殿を抑制するため、乳及び大豆食物繊維を含む乳含有酸性飲料の製造方法において、ペクチンと酸味料とを特定の順番で添加する点が記載されている。
また、特許文献2(特許第2928729号)には、特定含有量の無胞乳固形分、特定含有量の乳能肪、特定濃度のエチルアルコール、有機酸、甘味料、特定のpH、及び特定の吸光度を有するアルコール含有酸性乳飲料が、長期間保存しても溶液の褐変や乳蛋白質の凝集・沈殿がなく、清澄であって、清涼感に優れた乳飲料である点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3313104号
【文献】特許第2928729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、無脂乳固形分濃度が高い乳性飲料を大量生産したところ、加熱殺菌工程において凝集が発生してしまい、異物混入防止フィルターが頻繁に目詰まりしてしまう、という問題があることを見出した。
特許文献1及び2には、長期保管時に乳蛋白質の凝集及び沈殿を抑制するための技術が開示されているが、加熱殺菌工程における凝集の発生は認識されておらず、その解決手段も示されてはいない。
そこで、本発明の課題は、高い無脂乳固形分濃度を有しつつも、加熱殺菌工程においても凝集が発生しない、乳性飲料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、特定の糖度及び特定のpHを採用することにより、無脂乳固形分濃度が高い場合であっても、加熱殺菌工程における凝集を抑制できることを見出した。すなわち、本発明は以下の事項を含んでいる。
〔1〕乳成分を含有する乳性飲料であって、無脂乳固形分が1.2質量%以上であり、糖度が1~8(°Brix)であり、pHが3.7~4.2であり、ペクチンを含有しない、乳性飲料。
〔2〕クエン酸換算酸度が0.1~0.4質量%である、前記〔1〕に記載の乳性飲料。
〔3〕0.1~0.3質量%の安定剤を含有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の乳性飲料。
〔4〕前記安定剤が大豆多糖類を含有する、前記〔3〕に記載の乳性飲料。
〔5〕非炭酸飲料である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の乳性飲料。
〔6〕非アルコール飲料である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の乳性飲料。
〔7〕ストレート飲料である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の乳性飲料。
〔8〕乳性飲料を調製する工程と、前記乳性飲料を熱殺菌する工程と、前記熱殺菌する工程と同時又はその後に、フィルターに前記乳性飲料を通過させる工程とを有し、前記乳性飲料が、1.2質量%以上の無脂乳固形分、1~8(°Brix)の糖度、及び3.7~4.2のpHを有し、ペクチンを含有しない、乳性飲料の製造方法。
〔9〕前記乳性飲料のクエン酸換算酸度が0.1~0.4質量%である、前記〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕前記乳性飲料が、0.1~0.3質量%の安定剤を含有する、前記〔8〕又は〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕前記乳性飲料が非炭酸飲料である、前記〔8〕~〔10〕のいずれかに記載の製造方法。
〔12〕前記乳性飲料が非アルコール飲料である、前記〔8〕~〔11〕のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い無脂乳固形分濃度を有しつつも、加熱殺菌工程においても凝集が発生しない、乳性飲料及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る乳性飲料は、乳成分を含有し、無脂乳固形分(SNF;solid-not-fat)が1.2質量%以上であり、糖度が1~8(°Brix)であり、pHが3.7~4.2である。このような乳性飲料によれば、1.2質量%以上という高い含有量で無脂乳固形分を含んでいるにもかかわらず、加熱殺菌時における凝集を防ぐことができる。これによって、フィルターの目詰まり等を防止できる。
【0008】
(乳成分)
乳成分は、無脂乳固形分を含むものであればよく、その由来及び原料の形態は限定されない。例えば、乳成分は、獣乳及び植物乳の何れを由来とするものであってもよい。獣乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳及び馬乳等が挙げられ、植物乳としては例えば豆乳等が挙げられる。これらの中でも、風味及び入手のし易さの点で、牛乳が好ましい。
乳成分の原料の形態としては、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳蛋白濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳、生クリーム、及び発酵乳が挙げられる。また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。中でも、生乳と脱脂粉乳が好ましく、脱脂粉乳がより好ましい。また、乳原料としては、単一種類の原料を使用しても、複数の種類の原料を使用してもよい。
【0009】
飲料中の無脂乳固形分の含有量は、1.2質量%以上である。このような含有量で無脂乳固形分が含まれていると、加熱殺菌時における凝集が問題となりやすいが、本実施態様によれば、上述のように、糖度及びpHが特定の値になるように調整されているため、問題が解決される。飲料中の無脂乳固形分の含有量は、好ましくは1.2~3.9質量%、より好ましくは1.2~2.9質量%、さらに好ましくは1.2~1.9質量%である。
飲料における乳脂肪分は、1.0w/w%以下であることが好ましく、より好ましくは0.7w/w%以下である。
【0010】
(pH)
本発明に係る飲料のpHは、3.7~4.2であり、好ましくは3.7~4.0である。pHがこのような範囲であれば、加熱殺菌時における凝集の発生を防止できる。
【0011】
(酸度)
本発明に係る飲料のクエン酸換算酸度は、0.1~0.4質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~0.3質量%である。クエン酸換算酸度は、例えば、果実飲料の日本農林規格(平成25年12月24日農水告第3118号)で定められた酸度の測定方法に基づいて、算出することができる。
【0012】
飲料のpH及びクエン酸換算酸度は、例えば、酸味料、及び果汁等を添加することにより、調整することができる。酸味料としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フィチン酸、グルコン酸、コハク酸、フマール酸等の有機酸やリン酸等の無機酸、及びそれらの塩が挙げられる。果汁としては、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁が挙げられる。また、原料として発酵乳を用いる場合、その発酵乳の発酵度を調節することにより、乳性飲料のpHを調整することもできる。これらのpHの調整方法としては、複数の方法が併用されてもよい。
【0013】
(糖度)
本発明に係る飲料の糖度は、1~8(°Brix)である。好ましくは、糖度は、4~7(°Brix)である。糖度がこのような範囲にあることにより、加熱殺菌時における凝集の発生を防止できる。
尚、糖度とは、20℃における糖用屈折計の示度であり、例えばデジタル屈折計Rx-5000(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。
【0014】
糖度は、例えば、糖度調整剤や高甘味度甘味料を添加することにより、調整することができる。
糖度調整剤としては、例えば、ショ糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、オリゴ糖等の糖類;エリスリトール、マルチトール、キシリトール等の糖アルコール;及び難消化性デキストリン等の食物繊維などが挙げられ、好ましくは糖類であり、より好ましくは、ショ糖又は果糖ブドウ糖液糖である。
高甘味度甘味料としては、例えば、スクラロース、ステビア、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルリチン、グリチルリチン酸ジカリウム、アドバンテーム、ネオテーム及びソーマチン等が挙げられる。
【0015】
(安定剤)
本発明に係る飲料には、安定剤が含まれていてもよい。安定剤としては、例えば、大豆多糖類、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジェランガム、グアーガム、タラガム、加工デンプン及びキサンタンガムが挙げられ、これらを単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。好ましくは、安定剤として、大豆多糖類が用いられる。
大豆多糖類とは、大豆製品の製造工程において副成するオカラから抽出精製された多糖類であり、含有されるガラクツロン酸のカルボキシル基に由来して酸性下マイナスに帯電しているものであれば良い。
安定剤を用いることにより、加熱殺菌時における凝集をより確実に防ぐことができる。
但し、本発明では、糖度及びpHにより凝集の発生が抑制されるため、安定剤を大量に使用しなくても、凝集を防止することができる。
安定剤を用いる場合、飲料中における安定剤の含有量は、0.1~0.3質量%、好ましくは0.15~0.27質量%であることが好ましい。
【0016】
(その他成分)
本発明に係る飲料には、上記各成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて他の成分を適宜含有することができる。他の成分としては、例えば、ビタミン、ミネラル、香料、色素が挙げられる。ビタミンとしては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン等が挙げられる。ミネラルとしては、例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムが挙げられる。色素としては、例えば、カロチン、アントシアニン、クチナシ、マリーゴールド、カラメル、合成着色料が挙げられる。
【0017】
本発明に係る飲料は、ストレート飲料(希釈することなくそのまま飲む飲料)であることが好ましい。
また、本発明に係る飲料は、アルコール飲料であっても非アルコール飲料であってもよいが、非アルコール飲料であることが好ましい。
本発明に係る飲料は、炭酸飲料であっても非炭酸飲料であってもよいが、非炭酸飲料であることが好ましい。
【0018】
次に、本発明に係る飲料の製造方法について、一例をあげて説明する。
果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)に、還元脱脂粉乳溶液と、大豆多糖類水溶液とを添加して均一になるように攪拌する。さらに、乳酸水溶液及びクエン酸水溶液を添加して十分に攪拌する。次いで、イオン交換水を加えた後、必要に応じてクエン酸三ナトリウム水溶液等を添加してpHを調整する。更に、イオン交換水を用いて全量を各種成分の濃度を調整する。得られた調合液を加熱殺菌し、加熱殺菌時又はその後に、異物混入防止フィルター(20~200メッシュ)処理を行い、缶にホットパックし、室温まで水冷する。これにより、本発明に係る乳性飲料を得ることができる。尚、通常の乳性飲料では、例えば、80~130℃の加熱殺菌条件で、5~72時間の連続生産した場合に凝集物が徐々に蓄積していくが、本発明によれば凝集物の蓄積を抑制できる。
【0019】
[実施例]
以下の手順に従って、糖度、無脂乳固形分含有量、pH、酸度(クエン酸換算酸度)、及び大豆多糖類含有量が異なる複数のサンプルを調整した。
【0020】
(例1)
果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)930gに、25質量%還元脱脂粉乳溶液540gと、3質量%大豆多糖類水溶液670gを添加して均一になるように攪拌した。さらに、50質量%乳酸35.1gと、クエン酸15.9gを添加して十分に攪拌した。次いで、イオン交換水を用いて全量を9.5kgにとした後に、10質量%クエン酸三ナトリウム水溶液(以下、クエン酸三Na水溶液と略す)でpHを3.8に調整した。続いて、イオン交換水を用いて全量を10kgとして調合液を調製した。得られた調合液を加熱殺菌した後、190ml容の缶にホットパックし、室温まで水冷して、例1に係る容器詰め乳性飲料を得た。尚、脱脂粉乳を使用したため、飲料中における乳脂肪分は、実質的にゼロであった。
【0021】
(例2~例19)
例1と同様の手順により、例2乃至19に係る容器詰め乳性飲料を得た。但し、糖度、無脂乳固形分、クエン酸酸度、pH、及び大豆多糖類の含有量を、それぞれ、果糖ぶどう糖液糖、還元脱脂乳、クエン酸及び乳酸、クエン酸三Na水溶液、並びに大豆多糖類水溶液の添加量を調整することにより、変更した。
【0022】
(凝集性の加速試験)
得られた例1~19に係る容器詰め乳性飲料を、110℃で300分間加熱した。加熱後、水冷して常温にしてから容器を10回転倒させ、均一化させた。その後、内容液全量を適当な大きさのガラス製透明ビーカーに移し、常温で4時間静置した。4時間後の沈殿の高さを測定し、沈殿の高さを内容液の高さで除した値を、「沈殿率」とした。
また、加熱後、水冷して常温にしてから容器を10回以上転倒して均一な状態にした後に、内容液全量を適当な大きさのガラス製透明ビーカーにあけた。均一な状態の内容液の凝集物の粒度分布を、粒度分布測定装置(型式LA-920 堀場製作所製)を用いて測定し、メジアン径を求めた。
【0023】
(結果の考察)
結果を表1~6に示す。なお、糖度、クエン酸酸度、pHは実測値である。
表1に記載されるように、例1及び例2を比較すると、無脂乳固形分が1.2質量%未満である例2では沈殿が生じていなかった(沈殿率0.0%)のに対し、例1では沈殿が生じた。このことから、無脂乳固形分が1.2質量%を超える場合には、加熱殺菌時に凝集が発生する傾向にある事が理解できる。
表2に記載されるように、例3~5を比較すると、例3では沈殿が発生していたのに対し、例4及び5では沈殿が発生していなかった。すなわち、無脂乳固形分が1.2質量%を超える場合であっても、糖度が1~8(°Brix)である場合には、沈殿の発生が抑制された。
また、表3に記載されるように、pHが3.7~4.2である範囲である場合(例8及び例9)において、沈殿の発生が抑制されることが確認された。
【0024】
表4に記載されるように、糖度が約9(°Brix)である場合、安定剤である大豆多糖類の含有量を増量することにより、粒子径を減少させ、沈殿率を減らすことができるが、沈殿の発生を無くすためには、例13に記載されるように、約0.3質量%の安定剤が必要であることが判った。
これに対して、表5に記載されるように、pHが3.7~4.2であり、糖度が1~8(°Brix)の範囲にある場合には、大豆多糖類の含有量を0.14質量%にまで減らしても(例17)、沈殿の発生を防ぐことができていた。すなわち、本発明によれば、大量の安定剤を用いること無く、加熱殺菌時における凝集の発生を防ぐことができる。
【0025】
また、表6に記載されるように、例18及び例19を例3と比べると、酸度を低下させることにより、沈殿率を減少し、酸度が0.16質量%である例19では、沈殿率が0%であった。但し、例19を例14と比較すると、例14の方が格段に粒子径が小さかった。すなわち、本発明によれば、pHを3.7~4.2、糖度を1~8(°Brix)とすることにより、酸度が低い条件においても、粒子径を更に小さくすることができることが確認された。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
(例20)
例1乃至19と同様の手順を用いて、例20に係る飲料を調製した。但し、安定剤として、大豆多糖類に加えて、ペクチンを添加した。得られた飲料について、例1乃至19と同様に、凝集性の加速試験を実施した。例20に係る飲料の組成及び凝集性の測定結果を、表7に示す。
【0033】
【表7】
【0034】
例20と例4(表2参照)とを比較すると、大豆多糖類を含み、ペクチンを含有しない例4の飲料の方が、ペクチンと大豆多糖類とを併用した例20の飲料よりも、沈殿率が低く、メジアン径も小さかった。