(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】包装用容器の蓋体
(51)【国際特許分類】
B65D 43/02 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B65D43/02
(21)【出願番号】P 2018022171
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2021-01-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中川 皓介
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-054609(JP,A)
【文献】実開平03-072653(JP,U)
【文献】特開2015-085954(JP,A)
【文献】特開2015-058952(JP,A)
【文献】特開2017-218199(JP,A)
【文献】特開2016-068980(JP,A)
【文献】特開平11-349031(JP,A)
【文献】特開平1-182269(JP,A)
【文献】米国特許第5114068(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/02 ー 43/12
B65D 51/16
B65D 81/34
B65D 49/12
B65D 55/02
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体を閉蓋するための蓋体であって、
前記蓋体は、立体状のカバー部と、
前記カバー部に周設された平面状のフランジ部とを備え、
前記カバー部は、前記フランジ部に対して相対的に高い位置にある天井部と、
前記天井部の外周縁部から下方へ延びる蓋体側部とを有し、
前記フランジ部は、
前記カバー部の蓋体側部より外方へ離間して配置される蓋体フランジ平面部と、
前記蓋体側部の下方端と
前記蓋体フランジ平面部の内方端との間に設けられ
、下向きに凸形状を有し、前記容器本体の本体側部の上方部分に設けられ外方に突き出た本体段差部と組み合わさるように蓋体を被せることで容器を閉蓋する蓋体フランジ段差部とを有し、
前記蓋体フランジ段差部は、
前記蓋体フランジ平面部が
前記蓋体側部の下方端に対して相対的に高い位置となるように、
前記蓋体フランジ平面部と
前記蓋体側部との間に介在し、
前記蓋体フランジ平面部は、前記
容器の本体側部の上端部分から外方に延出するように周設された平面状の容器本体に接着されるシール部と、
前記シール部を剥がして切り離すために厚みが薄くされた線状のカット部と、
前記カット部を切り離した後に残る付け根部とを有することを特徴とする包装用容器の蓋体。
【請求項2】
少なくとも前記カバー部の天井部分より低い位置に脱気孔を備えていることを特徴とする請求項1に記載の包装用容器の蓋体。
【請求項3】
前記蓋体が、少なくとも基材層とシール層で構成された積層シートにより形成され、
前記シール層には、さらにガスバリア層が積層されており、
前記フランジ部のカット部が、前記基材層の範囲内に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用容器の蓋体。
【請求項4】
前記蓋体が、少なくとも基材層とシール層で構成され積層シートにより形成され、
前記シール層には、さらにガスバリア層が積層されており、
前記フランジ部のカット部が、前記基材層の範囲内に設けられており、
前記脱気孔が、加圧により開放するために厚みが薄くされたカット部を有し、
前記ガスバリア層が、前記シール層の最内層付近に積層してあり、
前記脱気孔のカット部が、前記フランジ部のカット部より深い
ことを特徴とする請求項2に記載の包装用容器の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食品を収容する容器本体の開口部分を閉じる包装用容器の蓋体に関し、さらに詳しくは、シールで開口部分を封止する立体状の包装用容器の蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売される食品の包装用容器には、熱圧着により容器本体の開口部分を容易に封止できるトップシール式の蓋体が採用されていた。しかしながら、トップシール式の蓋体は、一般的に剛性の低いフィルム状のため、加熱時に収縮し変形してしまうことがあった。
【0003】
そこで、フィルム状の蓋体より厚い立体状の蓋体で容器本体の開口部分をトップシールするために、蓋体を構成する基材層に高強度なポリオレフィン系樹脂を含有し、シール層に低結晶性ポリプロピレンを含有する発想が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この発想によれば、一定以上の厚みの蓋体を低温かつ短時間でシールできる効果を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発想を採用した蓋体では、剛性により立体部分が折れ曲がりにくいため、シールを剥がしにくい。一方、力を加えすぎると、シールが一気に剥がれてしまうため、中身が飛散する恐れがある。
【0006】
そこで、発明者等は、従来からフィルム状の蓋体に採用されていたカット技術を、立体状の蓋体に応用する発想にたどり着いた。すなわち、立体状の蓋体に設けたハーフカットにより、立体部分とシールされた部分とを切り離す発想である。
【0007】
ここで、立体状の蓋体の剛性により、ハーフカットに沿って立体部分を切り出しにくく、力を加えすぎると、立体部分が一気に切り出され、中身が飛散する恐れがある。さらに、立体部分を切り出した後そのまま開けっ放しにしておけば、中身の劣化が早まる恐れがある。 また、商品の積載等でシールされた部分が加重されて振動してしまうと、その部分が破損したりシールが弱まったりする恐れがある。また、蓋体の積層構造により、ハーフカットの方向や深さ次第では、ガスバリア性の低下を招く恐れもある。また、トップシールの密閉性により、蒸気の逃げ道がないと、電子レンジ等で加熱すると爆発する恐れもある。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、シールで封止された状態からハーフカットに沿った開封が容易であり、開封後も閉蓋状態を維持できる立体状の包装用容器の蓋体を提供することにある。本発明の第2の目的は、シールされた部分の加重を軽減して密閉性を担保する包装用容器の蓋体を提供することにある。本発明の第3の目的は、密閉性及び加熱時の安全性を担保する蒸気抜き構造を備えた包装用容器の蓋体を提供することにある。本発明の第4の目的は、ガスバリア性が低下しないようにハーフカットされている包装用容器の蓋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による包装用容器の蓋体は、容器本体を閉蓋するために、立体状のカバー部と、上記カバー部に周設された平面状のフランジ部とを備え、上記フランジ部は、上記容器本体に接着されるシール部と、上記シール部を剥がして切り離すために厚みが薄くされたカット部と、上記カット部を切り離した後に残る付け根部とを有することを特徴とする。
【0010】
上記フランジ部が、段差部を介して上記カバー部に設けられていることが望ましい。
【0011】
少なくとも上記カバー部の天井部分より低い位置に脱気孔を備えていることが望ましい。
【0012】
上記積層シートが、少なくとも基材層及びシール層で構成され、上記シール層には、さらにガスバリア層が積層されており、上記フランジ部のカット部が、上記基材層の範囲内に設けられていることが望ましい。
【0013】
上記脱気孔が、加圧により開放するために厚みが薄くされたカット部を有し、上記ガスバリア層が、上記シール層の最内層付近に積層してあり、上記脱気孔のカット部が、上記フランジ部のカット部より深いことが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による包装用容器の蓋体では、シールで封止された状態からハーフカットに沿った開封が容易であり、開封後も閉蓋状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態における包装用容器の蓋体の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す蓋体の長手方向の真ん中から切断した端面図である。
【
図3】(a)及び(b)は、
図1の蓋体のカット部の一部を示す拡大概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図3を参照しつつ、本発明の一実施形態における包装用容器の蓋体(以下、「本包装用容器の蓋体」ともいう。)の構造及び使用方法について説明する。
これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番する場合がある。説明の便宜上、所定の部位やこの引き出し線を破線や想像線(二点鎖線)で示してもよい。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における本包装容器の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本包装用容器の蓋体Mは、容器本体(図示しない)の開口部分を閉じる(閉蓋する)ものであり、平面視で長方形状である。蓋体Mは、天井部1と、天井部1の周端部分から下方に拡開するように周設された蓋体側部2と、蓋体側部2の下端部分から外方に延出するように周設されたフランジ部3(以下、「蓋体フランジ部3」ともいう。)と、加熱時に包装用容器(図示しない)内の蒸気を抜く脱気孔4とを備えている。天井部1及び蓋体側壁部2が、カバー部M1を形成する。
なお、蓋体Mの形状は、平面視で正方形等の矩形、円形、半円形、又は楕円形でもよい。天井部1の周端、蓋体側部2の水平端面、及び蓋体フランジ部3の周端の形状は、蓋体Mと同形でも異形でもよい。
【0018】
図示しないが、蓋体Mにより閉蓋される容器本体について説明をする。容器本体は、食品等を載置する本体底部と、本体底部の周端部分から立ち上がるように周設された本体側部と、本体側部の上端部分から外方に延出するように周設された平面状の本体フランジ部とを備え、本体側部の上端部分付近には外方に突き出た本体側段差部が設けられている。
なお、容器本体の平面視での形状は、蓋体の平面視での形状と同形でも異形でもよい。
【0019】
図2は、
図1に示す蓋体Mの長手方向の真ん中から切断した端面図である。
図2に示すように、蓋体フランジ部3は、閉蓋時に本体フランジ部と面する蓋体フランジ平面部31と、蓋体フランジ平面部31と蓋体側部2の下端部分との間に介在している段差部32(以下、「蓋体フランジ段差部32」ともいう。)と、蓋体フランジ平面部31の先端部分に設けられた摘み部33とを備えている。
なお、蓋体フランジ部3が、蓋体側部2の下端部分から外方に延出するように周設された蓋体フランジ平面部31であってもよい。
【0020】
蓋体フランジ平面部31は、密閉するために本体フランジ部に接着されるシール部31aと、シール部31aを剥がして切り離すために例えば、刃物、レーザで厚みが薄くされた線状のカット部31b(以下、「フランジカット部31b」ともいう。)と、シール部31aを除去した後に残される付け根部31cとを備えている。
なお、蓋体フランジ平面部31の幅は、シール部31a、フランジカット部31b、及び付け根部31cが形成できればよく、限定はない。
【0021】
シール部31a、フランジカット部31b、及び付け根部31cは、蓋体フランジ平面部31の全周に設けられていてもよい。シール部31aは、フランジカット部31bより外側に位置し、付け根部31cは、フランジカット部31bより内側に位置していてもよい。この構成によれば、フランジカット部31bを切りながらシール部31aを剥がせ、シール部31aを除去した後に付け根部31cが本体フランジ部と面しているため、密閉状態を解除した後も閉蓋状態を維持することができる。
なお、フランジカット部31bは、周方向に対して例えば、周方向の半分や一方の短辺部分を除いた周方向全部に設けられてもよい。シール部31aの幅とフランジカット部31bの幅との比率に限定はなく、密閉性を高めるためシール部31aの幅が広くてもよい。
【0022】
蓋体フランジ段差部32は、断面L字状でもよく、閉蓋状態にて本体側段差部と組み合わされる。この構成によれば、蓋体Mに加わる上方からの応力が蓋体フランジ段差部32を介して本体側段差部に逃がせるため、この応力により蓋体フランジ部3が折れ曲がったりハーフカット部31bが切れてしまったりすることを回避することができる。
なお、蓋体フランジ段差部32は、アーチ状に切り欠いた部分を有していてもよく、この部分が蓋体Mを重なり止め(以下、「スタック」ともいう。)として機能してもよく、スタックの上端部分が蓋体フランジ平面部31を超えて脱気孔として機能してもよい。
【0023】
脱気孔4は、天井部1より低く、蓋体フランジ段差部32の下端部分より高い、又は同等な高さ位置に設けられてもよい。脱気孔4は、天井部1から蓋体側部2の所定の高さ位置に渡って湾状に切り欠いたように形成された底部分に設けられる。この構成によれば、脱気孔4が少なくとも天井部1より低い位置にあるため、包装用容器を上下に積み重ねた際に下側の蓋体Mの天井部1に載置された上側の容器本体がこの脱気孔4に接触して潰したり破壊したりする恐れを回避することができる。脱気孔4は、閉じている上述した底部分を例えば、指での押圧、器具の加圧で開放するために刃物またはレーザで厚みが薄くされた十文字状のカット部41(以下、「脱気孔カット部41」ともいう。)を備えている。この構成によれば、未使用時には包装用容器の密閉状態を有し、使用時には容易に開放できるため、異物混入等に対する包装容器内の安全性と消費者の利便性とを兼ねた蒸気の逃げ道を提供することができる。
なお、脱気孔4は、上述した底部分から隆起した部分の天井部分に設けられてもよい。脱気孔4は、自動開放式でもよく、例えば、電子レンジ等での加熱により包装用容器内が所定の温度に達したときに自動的に開放してもよい。
【0024】
フランジカット部31b及び脱気孔カット部41は、蓋体Mを構成する積層構造に応じて設けられる。
図3(a)及び(b)は、
図1の蓋体Mのカット部の一部を示す拡大概念図である。
図3(a)及び(b)に示すように、蓋体Mは、閉蓋時の容器本体に対して外側(蓋体Mの表側)になる基材層S1と、内側(蓋体Mの裏側)になるシール層S2とが積層された積層シートを形成したものである。
図3(a)に示すとおり、フランジカット部31bは、基材層S1の範囲内かつシール層S2の範囲外に設けられ、ガスバリア層がこのシール層S2に積層されている。この構成によれば、シール層S2内のガスバリア層がフランジカット部31bの形成時に傷つけられないため、バリア性の欠如を回避することができる。
一方、
図3(b)に示すとおり、脱気孔カット部41の深さは、フランジカット部31bの深さより深くなる。換言すれば、脱気孔カット部41は、基材層S1を貫通してシール層S2に至っていてもよく、ガスバリア層がこのシール層S2の最も内側(最内層)付近に積層されている。この構成によれば、脱気孔カット部41はフランジカット部31bより容易に開封でき、かつシール層S2内のガスバリア層が脱気孔カット部41の形成時に傷つけられないため、密閉時にバリア性を有することができる。
【0025】
次に、本発明による包装用容器の蓋体Mによる食品の使用方法を説明する。
【0026】
まず、食品等が入った容器本体に対し、蓋体フランジ段差部32が本体側段差部に組み合わさるように蓋体Mを被せる。そして、本体フランジ部に接している蓋体フランジ平面部31のシール部31aに、例えば、170℃~230℃の熱圧着装置を押し当てる。これにより、包装用容器を密閉する。
【0027】
次に、摘み部33からフランジカット部31bを切ってシール部31aを剥がす。換言すれば、摘み部33を摘んでフランジカット部31bに沿って一周するようにシール部31aを剥がす。これにより、包装用容器を開放する。このとき、付け根部31cが本体フランジ部に接したままの状態で蓋体Mが残存される。換言すれば、シール部31aを剥がした後も、蓋体Mで容器本体を閉蓋する。
【0028】
また、密閉された包装用容器を搬送したり陳列したりするとき、下側の蓋体Mに上側の容器本体を組み合わせるように包装用容器を載せても、この蓋体Mの脱気孔4にこの容器本体が干渉していない。密閉された包装用容器を電子レンジ等で加熱する前に、脱気孔カット部41を指で押圧して脱気孔4を開放する。
【0029】
なお、本実施形態における蓋体Mやこの蓋体Mで閉蓋する容器本体は、例えば真空成型、熱板圧空成型、真空圧空成型、両面真空成型等のシート成型で、合成樹脂シートを熱成型することにより形成される。合成樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂で、単層や多層のシートを使用してもよい。樹脂としては、例えば、発泡樹脂を使用すれば、軽量かつ断熱性があり好ましい。さらに、シートの表面または裏面を合成樹脂フィルムで覆ってもよく、表面を覆った場合は印刷を施してもよい。合成樹脂シートの厚みは特に制限はない。
【0030】
基材層S1を構成する熱可塑性樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂でもよく、好ましくはポリプロピレン系樹脂でもよく、無機フィラーが含有されたものでもよい。シール層S2を構成する熱可塑性樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂でもよく、ポリオレフィン系樹脂の配合比率が50%以上の範囲で複数樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)を混合したイージーピール性樹脂でもよく、適宜ポリスチレン系樹脂や各種添加剤を混合してもよい。シール層S2は、基材層S1の全部のみならず、いわゆるパートコートにより、この基材層S1のうち本体フランジ部に対応する部分のみに積層してもよい。基材層S1、又は基材層S1とシール層S2との間には、ガスバリア層、印刷層、ドライラミ接着層などの他層が積層されてもよい。基材層S1の厚みは150μm~350μm、シール層S2の厚みは10μm~100μmでもよい。
【0031】
フランジカット部31b及び脱気孔カット部41は、蓋体Mの成型前の積層シートに、所定のプレス機に搭載した刃先の直線性が高い切断刃の例えば、刃先が直線で100mm延びた場合に許容される誤差の範囲が0.1mmの刃で形成される。
【符号の説明】
【0032】
M 蓋体
M1 カバー部
3 フランジ部(蓋体フランジ部)
31a シール部
31b カット部(フランジカット部)
31c 付け根部
32 段差部(蓋体フランジ段差部)
4 脱気孔
41 カット部(脱気孔カット部)
S1 基材層
S2 シール層