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特許7190263超音波診断装置および自動保存制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】超音波診断装置および自動保存制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018104698
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019208591
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴志
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022279(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033502(WO,A1)
【文献】特開2010-094275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0099988(US,A1)
【文献】特開2015-131100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0164482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0140281(US,A1)
【文献】特開2013-223792(JP,A)
【文献】特開2012-217769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0037168(US,A1)
【文献】特開2011-104194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波の送受信を行う超音波プローブが、静止した状態か否かを解析する動き解析部と、
前記超音波プローブの受信信号にもとづいて画像データを生成する画像生成部と、
前記超音波プローブが静止した状態で所定時間が経過すると、前記所定時間の経過時に前記画像生成部により生成された前記画像データを記憶部に保存させる自動保存動作を行う保存動作制御部と、
前記画像データのうち少なくとも関心領域が含まれると予想される中央領域を含み前記画像データの上端領域を除く領域を離脱解析領域に設定し、この離脱解析領域の輝度のばらつきが閾値以下であると前記超音波プローブが前記被検体の体表から離れていると解析する離脱解析部と、
を備え、
前記保存動作制御部は、
前記超音波プローブが前記被検体の体表から離れていると、前記超音波プローブが静止した状態であっても、前記自動保存動作を行わない、
超音波診断装置。
【請求項2】
前記保存動作制御部は、
前記超音波プローブが静止した状態のとき、前記自動保存動作までの前記所定時間に対応するカウンタを減算し、前記カウンタがゼロになると前記自動保存動作を実行する一方、前記超音波プローブが前記被検体の体表から離れていると、前記カウンタをリセットすることにより前記自動保存動作を禁止する、
請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記離脱解析部は、
前記画像データのうち、深さ方向において最も深い位置から当該最も深い位置の7割の深さの位置までの深さ幅を有し、幅方向において中央を中心に前記画像データの最大横幅の5割の横幅を有する領域を前記離脱解析領域に設定する、
請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記離脱解析部は、
前記画像データのうちの一部のみがディスプレイに拡大されて表示されている場合であっても、前記画像データの全体に対して設定した前記離脱解析領域の輝度のばらつきに基づいて前記超音波プローブが前記被検体の体表から離れているか否かを解析する、
請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波プローブに設けられ、前記超音波プローブの3次元空間上の位置に応じた信号を出力する位置センサ、
をさらに備え、
前記離脱解析部は、
前記超音波プローブが前記被検体の体表から離れているか否かを、前記位置センサの出力にもとづいて解析する、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記動き解析部は、
前記画像データの上部近傍の領域を動き解析領域に設定し、現在より前のフレームと現在のフレームの前記画像データとの間で前記動き解析領域の各画素の動きベクトルを求め、求めた動きベクトルにもとづいて前記超音波プローブが静止した状態か否かを解析する、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
コンピュータに、
被検体に対して超音波の送受信を行う超音波プローブが、静止した状態か否かを解析するステップと、
前記超音波プローブの受信信号にもとづいて画像データを生成するステップと、
前記超音波プローブが静止した状態で所定時間が経過すると、前記所定時間の経過時に生成された画像データを記憶部に保存させる自動保存動作を行うステップと、
前記画像データのうち少なくとも関心領域が含まれると予想される中央領域を含み前記画像データの上端領域を除く領域を離脱解析領域に設定し、この離脱解析領域の輝度のばらつきが閾値以下であると前記超音波プローブが前記被検体の体表から離れていると解析するステップと、
前記超音波プローブが前記被検体の体表から離れると、前記超音波プローブが静止した状態であっても、前記自動保存動作を行わないステップと、
を実行させるための自動保存制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置および自動保存制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、超音波診断装置の超音波プローブのユーザの利便性を高めるよう、ユーザの両手が塞がった状態でも超音波プローブを保持する手で入力操作を行うための技術が開発されている。この種の技術によれば、超音波プローブ自体の動きの条件に応じてあらかじめ操作を割り当てておくことにより、ユーザは超音波プローブを動かすだけで様々な操作を入力することができる。
【0003】
たとえば、超音波プローブが静止して所定時間経過した場合には、ユーザが注目する部位がディスプレイに表示されている可能性が高いと考えられる。そこで、超音波プローブが静止して所定時間経過するという条件に対して、ディスプレイに表示されている超音波画像を自動的に記憶部に記憶させるという操作を割り当てておくとよい。しかし、ユーザが注目する部位がディスプレイに表示されていないにもかかわらず超音波プローブが静止していると判定されてしまうと、ユーザが全く所望していない画像が次々に記憶部に記憶されてしまい、非常に不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-094275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、不要な画像の保存を行うことなく超音波プローブの動きに応じて画像を自動保存することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波診断装置は、動き解析部と、画像生成部と、保存動作制御部とを備える。動き解析部は、被検体に対して超音波の送受信を行う超音波プローブが、静止した状態か否かを解析する。画像生成部は、超音波プローブの受信信号にもとづいて画像データを生成する。保存動作制御部は、超音波プローブが静止した状態で所定時間が経過すると、所定時間の経過時に画像生成部により生成された画像データを記憶部に保存させる自動保存動作を行う。また、保存動作制御部は、超音波プローブが被検体の体表から離れていると、動き解析部による解析結果によらず、自動保存動作を禁止する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る超音波診断装置および超音波プローブの一構成例を示すブロック図。
図2】超音波プローブが静止した状態か否かの解析を行う様子の一例を示す説明図。
図3】離脱解析領域の設定例を示す説明図。
図4】超音波画像データの一部のみがディスプレイに拡大されて表示される場合における離脱解析領域について説明するための図。
図5図1に示す処理回路のプロセッサにより、不要な画像の保存を行うことなく超音波プローブの動きに応じて画像を自動保存する際の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置および自動保存制御プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブが静止して所定時間経過すると超音波画像を自動的に記憶部に記憶させる機能を備えた超音波診断装置に適用することができる。
【0010】
図1は、一実施形態に係る超音波診断装置10および超音波プローブ30の一構成例を示すブロック図である。以下の説明では、超音波診断装置10と超音波プローブ30とが互いにデータ送受信可能に無線接続される場合の例を示す。
【0011】
超音波診断装置10は、ディスプレイ21、入力インターフェース22、位置情報取得装置23、および超音波プローブ30と接続されて用いることができる。なお、超音波診断装置10は、図1に示すようにディスプレイ21および入力インターフェース22を備えてもよいし、超音波プローブ30を備えてもよいし、位置情報取得装置23を備えてもよい。超音波診断装置10は、タブレット型やスマートフォン型であってもよい。
【0012】
超音波診断装置10は、図1に示すように、送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13、画像生成回路14、画像メモリ15、記憶回路16、通信回路17、および処理回路19を有する。
【0013】
送受信回路11は、送信回路および受信回路を有する。送受信回路11は、処理回路19に制御されて、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、図1には送受信回路11が超音波診断装置10に設けられる場合の例について示したが、送受信回路11は超音波プローブ30に設けられてもよいし、超音波診断装置10と超音波プローブ30の両方に設けられてもよい。
【0014】
送信回路は、パルス発生器、送信遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波振動子に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波振動子から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサ回路は、レートパルスにもとづくタイミングで、超音波振動子に駆動パルスを印加する。送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波ビームの送信方向を任意に調整する。
【0015】
受信回路は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波振動子が受信したエコー信号を受け、このエコー信号に対して各種処理を行なってエコーデータを生成する。アンプ回路は、エコー信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正されたエコー信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理されたエコー信号の加算処理を行なってエコーデータを生成する。加算器の加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0016】
Bモード処理回路12は、受信回路からエコーデータを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。ドプラ処理回路13は、受信回路から受信したエコーデータから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動態情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0017】
画像生成回路14は、超音波プローブ30が受信したエコー信号にもとづいて超音波画像データを生成する。たとえば、画像生成回路14は、Bモード処理回路12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路14は、ドプラ処理回路13が生成した2次元のドプラデータから移動態情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、または、これらの組み合わせ画像としての2次元のカラードプラ画像の画像データを生成する。
【0018】
画像メモリ15は、処理回路19が生成した2次元超音波画像を記憶する記憶回路である。
【0019】
記憶回路16は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。記憶回路16の記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介した通信によりダウンロードされてもよいし、光ディスクなどの可搬型記憶媒体を介して記憶回路16に与えられてもよい。
【0020】
記憶回路16は、処理回路19に制御されて、超音波プローブ30が静止した状態で所定時間が経過すると、そのときに画像生成回路14により生成された画像データを記憶する。なお、記憶回路16に記憶される情報の一部または全部は、外部の記憶回路や超音波プローブ30の図示しない記憶回路などの記憶媒体の少なくとも1つに分散されて記憶され、あるいは複製されて記憶されてもよい。
【0021】
通信回路17は、近距離無線通信用の種々のプロトコルを実装し、超音波プローブ30の通信回路31とネットワークを介さずに直接にデータ送受信することができる。
【0022】
タイマ18は、処理回路19により制御され、所定時間をセットされて起動されると、所定時間に応じたカウント値をカウンタにセットする。タイマ18は、計時を開始すると、クロックパルスの数に応じてカウンタを減算し、所定時間が経過すると、処理回路19に対してタイムアウト信号を出力し計時を停止する。また、タイマ18は、処理回路19からリセットすべき旨の指示を受けると、所定時間に応じたカウント値にカウンタをリセットする。
【0023】
処理回路19は、超音波診断装置10を統括制御する機能を実現する。また、処理回路19は、記憶回路16に記憶された自動保存制御プログラムを読み出して実行することにより、不要な画像の保存を行うことなく超音波プローブ30の動きに応じて画像を自動保存するための処理を実行するプロセッサである。
【0024】
ディスプレイ21は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、処理回路19の制御に従って各種情報を表示する。なお、超音波診断装置10は、ディスプレイ21および入力インターフェース22の少なくとも一方を備えずともよい。
【0025】
入力インターフェース22は、たとえばトラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、光学センサを用いた非接触入力回路、および音声入力回路等などの一般的な入力装置により実現され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を処理回路19に出力する。
【0026】
また、超音波診断装置10がタブレット型やスマートフォン型の超音波診断装置10である場合は、ディスプレイ21と入力インターフェース22は一体としてタッチパネルを構成してもよい。
【0027】
超音波診断装置10は、図1に示すように、位置情報取得装置23の出力信号を取得してもよい。位置情報取得装置23は、たとえば磁気センサ、赤外線センサ、光学センサ、または加速度センサなどを用いて構成することができる。また、位置情報取得装置23は、超音波プローブ30の筐体にマーカが設けられている場合、このマーカを複数のカメラにより撮像した複数方向からの画像にもとづいて、超音波プローブ30の位置情報を求めてもよい。この場合、あらかじめ、マーカと振動子配列面または超音波プローブ30の筐体の所定位置との距離がオフセット情報として記憶回路16に記憶されているとよい。
【0028】
たとえば、位置情報取得装置23がトランスミッタ、位置センサとしての磁気センサ、および制御装置を有する場合、トランスミッタは、基準信号を送信する。具体的には、トランスミッタは、任意の位置に配置され、トランスミッタを中心として外側に向かって磁場を形成する。位置センサとしての磁気センサは、基準信号を受信することにより、3次元空間上の位置情報を取得する。具体的には、位置センサとしての磁気センサは、超音波プローブ30の表面に装着され、トランスミッタによって形成された3次元の磁場を検出して、検出した磁場の情報を信号に変換して、制御装置に出力する。
【0029】
また、この場合、制御装置は、磁気センサから受信した信号にもとづいて、トランスミッタを原点とする3次元座標における磁気センサの座標および向きを算出し、算出した座標および向きを超音波プローブ30の位置情報として処理回路19に出力する。
【0030】
超音波プローブ30は、音響レンズ、整合層、複数の超音波振動子(圧電振動子)により構成される振動子群、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材、およびこれらを内包するケースなどを有する。
【0031】
超音波プローブ30としては、スキャン方向(アジマス方向)に複数の超音波振動子が配列されるとともにレンズ方向(エレベーション方向)にも複数の素子が配列された2次元アレイプローブを用いることができる。この種の2次元アレイプローブとしては、たとえば1.5Dアレイプローブ、1.75Dアレイプローブや、2Dアレイプローブなどを用いることができる。
【0032】
なお、超音波プローブ30は、ボリュームデータを取得可能に構成されてもよい。この場合、2次元アレイプローブである超音波プローブ30により被検体を3次元でスキャンしてもよいし、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ30により被検体を2次元でスキャンするまたはこれら複数の超音波振動子を回転させることで被検体を3次元でスキャンしてもよいし、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動してもよい。
【0033】
また、超音波プローブ30は、図1に示すように通信回路31を有する。超音波プローブ30の通信回路31の構成および作用は、超音波診断装置10の通信回路17の構成および作用と実質的に異ならないため、説明を省略する。
【0034】
また、超音波プローブ30は、処理回路および記憶回路を有してもよい。この場合、超音波診断装置10の処理回路19の機能の一部または全部は、超音波プローブ30の処理回路が超音波プローブ30の記憶回路に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実行されてもよい。
【0035】
また、図1には超音波診断装置10と超音波プローブ30が無線接続される場合の例を示したが、この無線接続は、超音波プローブ30にケーブルを介して接続された無線通信機能を備えた通信アダプタにより実現されてもよい。この場合、通信アダプタは超音波プローブ30の筐体とプラグ等により接続されてもよく、この場合ケーブルは不要である。また、超音波診断装置10と超音波プローブ30は有線接続されてもよい。有線接続される場合、超音波プローブ30は、ケーブルおよび接続コネクタを介して、超音波診断装置10と着脱自在に接続される。なお、接続コネクタが超音波プローブ30の筐体に一体的に設けられている場合は、ケーブルは不要である。
【0036】
続いて、本実施形態に係る処理回路19のプロセッサによる実現機能例について説明する。図1に示すように、処理回路19のプロセッサは、保存動作設定機能41、離脱解析機能42、動き解析機能43、および保存動作制御機能44を実現する。これらの各機能41-44は、それぞれプログラムの形態で記憶回路16に記憶されている。
【0037】
保存動作設定機能41は、ユーザによる入力インターフェース22を介した入力に応じて、または初期設定により、超音波プローブ30が静止した状態で所定時間が経過すると、所定時間の経過時に画像生成回路14により生成された画像データを記憶部に保存させる動作(以下、自動保存動作という)を有効に設定する。自動保存動作が有効に設定されている場合、ユーザは、保存したい画像が表示された状態で超音波プローブ30を所定時間静止させるだけで、他の操作を一切必要とせずに、自動的に当該画像を記憶回路16に保存させることができる。また、入力インターフェース22を用いて保存指示する場合に生じうる超音波プローブ30のずれを未然に防ぐことができ、確実に所望の画像を保存することができる。
【0038】
図2は、超音波プローブ30が静止した状態か否かの解析を行う様子の一例を示す説明図である。なお、図2にはBモード画像が扇形で表示される場合の例を示したが、Bモード画像は四角形や台形で表示されてもよい。本実施形態に係る超音波プローブ30は超音波プローブ30を移動させながら所定のフレームレートで撮影可能なものであればよく、コンベックス型やリニア型などの型式および圧電振動子の配置形状に制限はない。
【0039】
超音波画像にもとづいて超音波プローブ30が静止した状態か否かの解析(以下、動き解析という)を行なう場合、たとえば、超音波画像データの所定領域を動き解析の対象領域(以下、動き解析領域という)51に設定し、現在より前のフレーム(たとえば1つ前のフレーム)の超音波画像データと現在のフレームの超音波画像データとの間で、動き解析領域51の各画素の動きベクトルを求めるとよい。
【0040】
一般に、ユーザは、被検体の関心領域(ROI)がBモード画像データの中心付近に位置するように超音波プローブ30を操作する。ROIは、心臓等の動く部位である場合があり、この場合、動き解析領域51にROIが含まれてしまうと、動き解析領域51の動きベクトルは超音波プローブ30の移動量および移動方向を示すものとはならない。
【0041】
このため、動き解析領域51にROIが含まれないように、動き解析領域51は、画像データのうち少なくともROIが含まれると予想される中央領域(以下、ROI予想領域という)を避けるように画像データの各角部近傍に設けることが好ましい。また、画像データの角部のうち、画像データの上部近傍の領域は、輝度が高いことが多いため、動き解析領域51としてより好ましい。さらに、画像データの上部の動き解析領域51のうち、特に輝度値が高い高輝度領域52を解析対象として動きベクトルを求めることで、超音波プローブ30の移動量および移動方向を安定して求めることができると考えられる(図2参照)。また、動き解析領域51を複数箇所設定することにより、超音波プローブ30の移動量および移動方向をより正確に求めることができる。
【0042】
ところが、画像データの上部の動き解析領域51のエコーデータは、超音波プローブ30の表面に塗布された音響インピーダンス整合用のゼリーの影響を受ける場合がある。この場合、ゼリーをつけてスキャンを行わずに超音波プローブ30を被検体の体表から離して空中に放置している状態にも、図2に示すように画像データの上部の動き解析領域51は高輝度を示す場合がある。この場合、画像データの上部の動き解析領域51を用いて動きベクトルを求めると、超音波プローブ30が静止していると判定されて、自動保存動作が実行されてしまい、画像中央に何も現れていない不要な画像データが次から次へと記憶回路16に保存されてしまうことになる。
【0043】
そこで、本実施形態に係る処理回路19は、超音波プローブ30が被検体の体表から離れている場合には、超音波プローブ30が静止しているか否かによらず、自動保存動作を禁止することで、不要な画像データが保存されることを未然に防ぐ。
【0044】
このため、離脱解析機能42は、画像データのうち少なくともROI予想領域を含む領域を離脱解析領域61に設定し、この離脱解析領域61の輝度のばらつき(散布度、たとえば標準偏差、分散など)が閾値以下であると、超音波プローブ30が被検体の体表から離れていると解析する。なお、この閾値は、ユーザにより自由に設定されてもよい。
【0045】
図3は、離脱解析領域61の設定例を示す説明図である。離脱解析領域61は、ROI予想領域を含み、かつゼリーの影響を受けない位置に設定されることが好ましい。ROI予想領域を含めることにより、超音波プローブ30が被検体の体表に接している場合には、離脱解析領域61には被検体の構造物が含まれる可能性が高まり、離脱解析領域61の輝度のばらつきが大きくなると予想される。
【0046】
この種の位置としては、角部近傍を避けた領域が好ましく、たとえば画像データの中央下部が挙げられる。より好ましくは、画像データのうち、深さ方向Dでは、最も深い位置から当該最も深い位置の7割の深さの位置までの深さ幅を有し、幅方向Wでは、中央を中心に画像データの最大横幅の5割の横幅を有する領域を離脱解析領域61に設定するとよい(図3参照)。なお、離脱解析領域61は、ユーザにより変更されてもよい。
【0047】
図4は、超音波画像データの一部のみがディスプレイ21に拡大されて表示される場合における離脱解析領域61について説明するための図である。
【0048】
離脱解析機能42は、ディスプレイ21に表示されている画像の中央下部を離脱解析領域61に設定すればよい。しかし、超音波画像データの一部のみがディスプレイ21に拡大されて表示される場合には、ディスプレイ21に表示されている画像にROI予想領域が含まれないことがある。そこで、拡大表示されている場合には、元の画像データ全体の中央下部に離脱解析領域61を設定し、この離脱解析領域61を用いてバックグラウンドで超音波プローブ30が被検体の体表から離れているか否かを解析するとよい。
【0049】
また、超音波診断装置10が位置情報取得装置23を備えるなどして位置情報取得装置23の出力信号を取得可能に構成される場合は、離脱解析機能42は、超音波プローブ30が被検体の体表から離れているか否かを、位置情報取得装置23の位置センサの出力にもとづいて解析するとよい。具体的には、離脱解析機能42は、離脱解析領域61の輝度が所定の輝度以上であり、画像データが被検体の部位をROI予想領域にとらえていると考えられるとき、超音波プローブ30が体表に接していると判断し、このときの位置センサの出力から、超音波プローブ30の位置および姿勢を求める。そして、位置センサの出力にもとづいて、求めた超音波プローブ30の位置および姿勢から超音波プローブ30が体表から遠ざかる方向に所定の距離(たとえば3cmなど)離れたと判定すると、離脱解析機能42は超音波プローブ30が被検体の体表から離れていると解析するとよい。
【0050】
また、離脱解析機能42は、離脱解析領域61を用いた解析と、位置センサを用いた解析とを組み合わせてもよい。この場合、離脱解析機能42は、両解析のいずれか一方が被検体の体表から離れているという結果になった場合に、あるいは両者が被検体の体表から離れているという結果になった場合に、被検体の体表から離れているという解析結果を最終出力してもよい。
【0051】
動き解析機能43は、上述の通り、超音波画像データの所定領域を動き解析領域51に設定し、現在より前のフレーム(たとえば1つ前のフレーム)の超音波画像データと現在のフレームの超音波画像データとの間で、動き解析領域51のうちの高輝度領域52の各画素の動きベクトルを求める。また、動き解析機能43は、求めた動きベクトルにもとづいて超音波プローブ30が静止しているか否かを解析する。
【0052】
保存動作制御機能44は、タイマ18を制御し、超音波プローブ30が静止した状態で所定時間が経過すると、所定時間の経過時に画像生成回路14により生成された画像データを記憶回路16に保存させる。また、保存動作制御機能44は、超音波プローブ30が被検体の体表から離れていると、動き解析機能43による解析結果によらず、自動保存動作を禁止する。
【0053】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置10および自動保存制御プログラムの動作の一例について説明する。
【0054】
図5は、図1に示す処理回路19のプロセッサにより、不要な画像の保存を行うことなく超音波プローブ30の動きに応じて画像を自動保存する際の手順の一例を示すフローチャートである。図5において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0055】
まず、ステップS1において、保存動作設定機能41は、ユーザによる入力インターフェース22を介した入力に応じて、または初期設定により、自動保存動作(超音波プローブ30が静止した状態で所定時間が経過すると、所定時間の経過時に画像生成回路14により生成された画像データを記憶部に保存させる動作)を有効に設定する。
【0056】
次に、ステップS2において、離脱解析機能42は、Bモード画像を取得する。
【0057】
次に、ステップS3において、離脱解析機能42は、超音波プローブ30が体表から離れているか否かを判定する。具体的には、離脱解析機能42は、離脱解析領域61を用いて(図3図4参照)、または位置センサを用いて、またはこれらを組み合わせて、超音波プローブ30が被検体の体表から離れているか否かを解析する。超音波プローブ30が被検体の体表から離れている場合は、ステップS4に進み、自動保存動作を禁止すべく、タイマ18を制御して自動保存動作までのカウンタをリセットして、ステップS2に戻る。一方、超音波プローブ30が被検体の体表から離れていないと判定すると、ステップS5に進む。
【0058】
ステップS3で超音波プローブ30が体表から離れていると解析される場合としては、ユーザが被検体に押し当てていた超音波プローブ30を被検体から離した場合のほか、検査の開始直後であって、超音波プローブ30を被検体に押し当てる前などが挙げられる。
【0059】
次に、ステップS5において、動き解析機能43は、超音波画像データの所定領域を動き解析領域51に設定し、現在より前のフレーム(たとえば1つ前のフレーム)の超音波画像データと現在のフレームの超音波画像データとの間で、動き解析領域51のうちの高輝度領域52の各画素の動きベクトルを求める。
【0060】
次に、ステップS6において、動き解析機能43は、求めた動きベクトルにもとづいて超音波プローブ30が静止しているか否かを解析する。超音波プローブ30が動いている場合は、自動保存動作を行うべきではないため、ステップS4に進み、タイマ18を制御して自動保存動作までのカウンタをリセットして、ステップS2に戻る。一方、超音波プローブ30が静止している場合は、ステップS7に進む。
【0061】
ステップS7を実行するのがはじめての場合、保存動作制御機能44は、タイマ18を制御して自動保存動作までの所定時間に応じたカウント値をカウンタにセットして計時を開始させる。ステップS7を実行するのが2度目以降の場合は、保存動作制御機能44は、経過時間に応じてカウンタを減算する。
【0062】
次に、ステップS8において、保存動作制御機能44は、カウンタがゼロか否かを判定する。カウンタがゼロと判定された場合は、この時点で画像生成回路14が生成した画像データを記憶回路16に自動で保存する(ステップS9)。そして、ユーザの指示により処理を終了すべき場合は(ステップS10のYES)、一連の手順は終了となる。処理を継続すべき場合は(ステップS10のNO)、ステップS4に進んでカウンタをリセットして、ステップS2に戻る。他方、ステップS8でカウンタがゼロではないと判定された場合は、ステップS2に戻る。
【0063】
以上の手順により、不要な画像の保存を行うことなく超音波プローブ30の動きに応じて画像を自動保存することができる。
【0064】
本実施形態に係る超音波診断装置10は、超音波プローブ30が静止した状態で所定時間が経過すると画像を自動保存する自動保存動作を行いつつ、検査の開始直後や検査中に超音波プローブ30が被検体の体表から離れているときには、不要な画像の保存が行われないように自動保存動作を禁止することができる。このため、超音波プローブ30が記憶回路16に不要な画像が保存されてしまう弊害を未然に防ぐことができる。したがって、本実施形態に係る超音波診断装置10によれば、ユーザは自らが所望する画像のみを自動保存させることができるため、検査のスループットを大幅に向上させることができる。
【0065】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、不要な画像の保存を行うことなく超音波プローブ30の動きに応じて画像を自動保存することができる。
【0066】
なお、本実施形態における処理回路19の離脱解析機能42、動き解析機能43および保存動作制御機能44は、それぞれ特許請求の範囲における離脱解析部、動き解析部および保存動作制御部の一例である。また、本実施形態における画像生成回路14は、特許請求の範囲における画像生成部の一例である。
【0067】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびFPGA)等の回路を意味するものとする。プロセッサは、記憶媒体に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0068】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0069】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10 超音波診断装置
14 画像生成回路
16 記憶回路
19 処理回路
21 ディスプレイ
23 位置情報取得装置
30 超音波プローブ
42 離脱解析機能
43 動き解析機能
44 保存動作制御機能
51 動き解析領域
52 高輝度領域
61 離脱解析領域
図1
図2
図3
図4
図5