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特許7190265光触媒コート剤、光触媒コート剤の製造方法、及び光触媒担持磁性体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】光触媒コート剤、光触媒コート剤の製造方法、及び光触媒担持磁性体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20221208BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20221208BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221208BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221208BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J23/652 M
C09D201/00
C09D7/61
C09D5/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018115922
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019217445
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】堤之 朋也
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 徳隆
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-268761(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152487(WO,A1)
【文献】特開平11-156200(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056556(WO,A1)
【文献】特開2005-137977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の光触媒と、バインダーとを含有し、
前記少なくとも2種の光触媒は、第1光触媒と、第2光触媒とを少なくとも含有し、
前記第1光触媒は、前記少なくとも2種の光触媒のうちで平均一次粒子径が最も小さく、
前記第2光触媒は、前記少なくとも2種の光触媒のうちで平均一次粒子径が2番目に小さく、
前記第2光触媒の平均一次粒子径は、前記第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上であり、
前記第1光触媒は、酸化チタンが99重量%以上を占めるアナターゼ型酸化チタンを含有し、
前記第2光触媒は、白金を担持した酸化タングステンを含有し、
前記第1光触媒の平均一次粒子径は、5nm以上15nm以下であり、
前記第2光触媒の平均一次粒子径は、15nm以上30nm以下である、光触媒コート剤。
【請求項2】
前記アナターゼ型酸化チタンは、助触媒を担持していない、請求項1に記載の光触媒コート剤。
【請求項3】
前記第2光触媒の体積に対する前記第1光触媒の体積の比率は、2.0以上5.0以下である、請求項1又は2に記載の光触媒コート剤。
【請求項4】
前記バインダーの体積に対する前記少なくとも2種の光触媒の総体積の比率は、2.0以上10.0以下である、請求項1~の何れか一項に記載の光触媒コート剤。
【請求項5】
前記少なくとも2種の光触媒と、前記バインダーとを混合する工程を含む、請求項1~の何れか一項に記載の光触媒コート剤の製造方法。
【請求項6】
磁性材料を含有するコアと、前記コアを被覆するコート層とを備え、
前記コート層は、少なくとも2種の光触媒と、バインダーとを含有し、
前記少なくとも2種の光触媒は、第1光触媒と、第2光触媒とを少なくとも含有し、
前記第1光触媒は、前記少なくとも2種の光触媒のうちで平均一次粒子径が最も小さく、
前記第2光触媒は、前記少なくとも2種の光触媒のうちで平均一次粒子径が2番目に小さく、
前記第2光触媒の平均一次粒子径は、前記第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上であり、
前記第1光触媒は、酸化チタンが99重量%以上を占めるアナターゼ型酸化チタンを含有し、
前記第2光触媒は、白金を担持した酸化タングステンを含有し、
前記第1光触媒の平均一次粒子径は、5nm以上15nm以下であり、
前記第2光触媒の平均一次粒子径は、15nm以上30nm以下である、光触媒担持磁性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒コート剤、光触媒コート剤の製造方法、及び光触媒担持磁性体に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、光触媒性能を有する。光触媒性能は、例えば、空気中の有害物質の分解、悪臭原因物質の分解、水中に溶解若しくは分散した汚染物質の分解、菌類の分解、菌類の成長抑制、外壁の汚れの抑制、又は窓の汚れの抑制である。光触媒を実用化するためには、光触媒性能を損なうことなく、光触媒を基材上に固定化する必要がある。例えば、特許文献1には、アクリルシリコン塗料に光触媒乾燥粉末を含有させた光触媒性塗料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-95977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の塗料を用いる場合、アクリルシリコンのようなポリマーの内部に光触媒が埋没して、ポリマーから光触媒が露出しないことがある。ポリマーから光触媒が露出しないと、光触媒の光触媒性能が低下する。また、ポリマーから光触媒を露出させるためにバインダーの量を減らすと、バインダーに対する光触媒の付着強度が低下し、バインダーから光触媒が脱離してしまう。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上させる光触媒コート剤、光触媒コート剤の製造方法、及び光触媒担持磁性体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光触媒コート剤は、少なくとも2種の光触媒と、バインダーとを含有する。前記少なくとも2種の光触媒は、第1光触媒と、第2光触媒とを少なくとも含有する。前記第1光触媒は、前記少なくとも2種の光触媒のうちで平均一次粒子径が最も小さい。前記第2光触媒は、前記少なくとも2種の光触媒のうちで平均一次粒子径が2番目に小さい。前記第2光触媒の平均一次粒子径は、前記第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上である。
【0007】
本発明の光触媒コート剤の製造方法は、前記少なくとも2種の光触媒と、前記バインダーとを混合する工程を含む。製造される前記光触媒コート剤は、上述した光触媒コート剤である。
【0008】
本発明の光触媒担持磁性体は、磁性材料を含有するコアと、前記コアを被覆するコート層とを備える。前記コート層は、少なくとも2種の光触媒と、バインダーとを含有する。前記少なくとも2種の光触媒は、第1光触媒と、第2光触媒とを少なくとも含有する。前記第1光触媒は、前記少なくとも2種の光触媒のうちで平均一次粒子径が最も小さい。前記第2光触媒は、前記少なくとも2種の光触媒のうちで平均一次粒子径が2番目に小さい。前記第2光触媒の平均一次粒子径は、前記第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光触媒コート剤及び光触媒担持磁性体は、光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上させることができる。本発明の製造方法により製造された光触媒コート剤は、光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。
【0011】
<第1実施形態:光触媒コート剤>
本発明の第1実施形態は、光触媒コート剤に関する。第1実施形態に係る光触媒コート剤は、少なくとも2種の光触媒と、バインダーとを含有する。
【0012】
(光触媒)
光触媒コート剤は、光触媒として、少なくとも2種の光触媒を含有する。少なくとも2種の光触媒は、第1光触媒と、第2光触媒とを少なくとも含有する。第1光触媒は、光触媒コート剤に含有される少なくとも2種の光触媒のうちで、平均一次粒子径が最も小さい光触媒である。第2光触媒は、光触媒コート剤に含有される少なくとも2種の光触媒のうちで、平均一次粒子径が2番目に小さい光触媒である。なお、第1光触媒、及び第2光触媒、は、各々、第1光触媒粒子から構成される粉体、及び第2光触媒粒子から構成される粉体である。光触媒コート剤は、光触媒として、2種又は3種の光触媒を含有することが好ましい。
【0013】
第1実施形態に係る光触媒コート剤が、平均一次粒子径が小さい第1光触媒と、平均一次粒子径が大きい第2光触媒とを含有することで、次の第1から第3の利点が得られる。まず、第1の利点について説明する。光触媒コート剤が基材に塗布され乾燥された場合に、平均一次粒子径が大きい第2光触媒を構成する第2光触媒粒子の表面の一部が、バインダーから露出する。第2光触媒粒子の表面の一部が露出することで、第2光触媒が分解対象物と接触でき、第2光触媒によって分解対象物が好適に分解される。これにより、光触媒性能を向上できる。
【0014】
次に、第2の利点について説明する。光触媒コート剤が基材に塗布され乾燥された場合に、平均一次粒子径が小さい第1光触媒を構成する第1光触媒粒子が、第2光触媒粒子の表面に付着する。バインダーから露出している第2光触媒粒子の表面に第1光触媒粒子が付着した場合、この第1光触媒粒子の表面積分、バインダーから露出する光触媒粒子(第1光触媒粒子及び第2光触媒粒子)の表面積を拡大できる。これにより、光触媒性能が一層向上する。
【0015】
次に、第3の利点について説明する。既に述べたように、光触媒コート剤が基材に塗布され乾燥された場合に、平均一次粒子径が小さい第1光触媒を構成する第1光触媒粒子が、第2光触媒粒子の表面に付着する。バインダーから露出していない第2光触媒粒子の表面に第1光触媒粒子が付着した場合、凝集力によって第1光触媒粒子が第2光触媒粒子に強く引き寄せられているため、バインダー内に位置する第1光触媒粒子によって第2光触媒粒子がバインダーから脱離し難くなる。
【0016】
なお、光触媒により分解される分解対象物としては、例えば、有機リン殺虫剤(より具体的には、ジクロボス(DDVP)、ビニフェート、ランガード、O-エチル O-4-ニトロフェニルフェニルフォスホノチオエート(EPN)、ジプテレックス、スミチオン、ダイアジノン、エストックス、ダイシストン、マラソン、エカチン、スプラサイド、及びオルトラン等)、有機塩素除草剤及び有機塩素殺虫剤(より具体的には、クロロネブ、DDVP、ヘキサクロロベンゼン、α-ヘキサクロロシクロヘキサン、及びβ-ヘキサクロロシクロヘキサン等)、カーバメイト除草剤(より具体的には、チオベンカルブメフェナセット等)、ジフェニルエーテル除草剤(より具体的には、クロロニトロフェン等)、フェノール類(より具体的には、トリクロロフェノール等)、アルキルフェノール類(より具体的には、4-t-ブチルフェノール、4-n-ペンチルフェノール、4-n-ヘキシルフェノール、4-ヘプチルフェノール、4-t-オクチルフェノール、4-n-オクチルフェノール、及びノニルフェノール等)、並びに揮発性有機化合物(VOC、より具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、及びアンモニア等)が挙げられる。
【0017】
第2光触媒の平均一次粒子径は、第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上である。即ち、第1光触媒の平均一次粒子径に対する、第2光触媒の平均一次粒子径の比率(第2光触媒の平均一次粒子径/第1光触媒の平均一次粒子径)は、2.0以上である。第2光触媒の平均一次粒子径が第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上であることで、第1光触媒の平均一次粒子径と第2光触媒の平均一次粒子径との差が大きくなり、既に述べた第1から第3の利点を好適に得ることができる。
【0018】
光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上させるためには、第2光触媒の平均一次粒子径は、第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上5.0倍以下であることが好ましく、2.5倍以上5.0倍以下であることがより好ましく、3.0倍以上5.0倍以下であることが一層好ましく、3.5倍以上5.0倍以下であることがより一層好ましく、4.0倍以上5.0倍以下であることが特に好ましい。なお、第2光触媒の平均一次粒子径は、第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍、2.1倍、2.5倍、3.5倍、4.0倍、及び5.0倍から選ばれる2つの値の範囲内であってもよい。
【0019】
光触媒コート剤は、光触媒として、第1光触媒及び第2光触媒のみを含有していてもよい。また、光触媒コート剤は、光触媒として、第1光触媒及び第2光触媒に加えて、第1光触媒及び第2光触媒以外の光触媒(以下「その他の光触媒」と記載することがある)を更に含有していてもよい。その他の光触媒が含有される場合、光触媒コート剤は、少なくとも3種の光触媒を含有する。その他の光触媒の平均一次粒子径は、第2光触媒の平均一次粒子径よりも大きい。その他の光触媒は、光触媒コート剤に含有される少なくとも3種(例えば、3種)の光触媒のうちで、平均一次粒子径が小さい方から3番目以上(例えば、3番目)である光触媒である。なお、その他の光触媒は、その他の光触媒粒子から構成される粉体である。
【0020】
第1光触媒の平均一次粒子径、第2光触媒の平均一次粒子径、及びその他の光触媒の平均一次粒子径は、各々、1nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがより好ましい。第1光触媒の平均一次粒子径、第2光触媒の平均一次粒子径、及びその他の光触媒の平均一次粒子径が5nm以上であると、各光触媒が凝集し難くなる。一方、第1光触媒の平均一次粒子径、第2光触媒の平均一次粒子径、及びその他の光触媒の平均一次粒子径が50nm以下であると、光触媒コート剤中に各光触媒を均一に分散させ易い。また、第1光触媒の平均一次粒子径、第2光触媒の平均一次粒子径、及びその他の光触媒の平均一次粒子径が50nm以下であると、バインダーから各光触媒が脱離することを好適に抑制できる。
【0021】
光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上させるためには、第1光触媒の平均一次粒子径は、5nm以上15nm以下であることが一層好ましい。また、第1光触媒の平均一次粒子径は、5nm、10nm、及び15nmから選ばれる2つの値の範囲内であってもよい。例えば、第1光触媒の平均一次粒子径は、5nm以上10nm以下、及び10nm以上15nm以下の何れかであってもよい。
【0022】
光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上させるためには、第2光触媒の平均一次粒子径は、15nm以上30nm以下であることが一層好ましく、15nmより大きく30nm以下であることが特に好ましい。また、第2光触媒の平均一次粒子径は、15nm、20nm、25nm、及び30nmから選ばれる2つの値の範囲内であってもよい。例えば、第2光触媒の平均一次粒子径は、15nm以上20nm以下、15nm以上25nm以下、20nm以上25nm以下、20nm以上30nm以下、及び25nm以上30nm以下の何れかであってもよい。
【0023】
その他の光触媒の平均一次粒子径は、第2光触媒の平均一次粒子径よりも大きく且つ30nm以上50nm以下であることが一層好ましい。
【0024】
光触媒の平均一次粒子径は、後述する実施例に記載の方法、又はその代替法により測定できる。
【0025】
光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上させるためには、第2光触媒の体積V2に対する、第1光触媒の体積V1の比率V1/V2は、2.0以上5.0以下であることが好ましい。また、比率V1/V2は、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、及び5.0から選ばれる2つの値の範囲内であってもよい。
【0026】
第1光触媒の体積V1と第2光触媒の体積V2との合計含有率は、少なくとも2種の光触媒の総体積VCに対して、95体積%以上であることが好ましく、96体積%以上であることがより好ましく、100体積%であることが特に好ましい。
【0027】
光触媒コート剤に含有される第1光触媒の体積V1は、式「V1=第1光触媒の重量/第1光触媒の密度」から算出される。光触媒コート剤に含有される第2光触媒の体積V2は、式「V2=第2光触媒の重量/第2光触媒の密度」から算出される。光触媒コート剤に含有されるその他の光触媒の体積V3は、式「V3=その他の光触媒の重量/その他の光触媒の密度」から算出される。少なくとも2種の光触媒の総体積VCは、式「VC=第1光触媒の体積V1+第2光触媒の体積V2+その他の光触媒の体積V3」から算出される。
【0028】
第1光触媒、第2光触媒、及びその他の光触媒を構成する材料は、特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム(より具体的には、SrTiO3)、酸化ニオブ(より具体的には、Nb25)、酸化タンタル(より具体的には、Ta25)、酸化ジルコニウム(より具体的には、ZrO2)、酸化ビスマス(より具体的には、Bi23)、及び酸化鉄(より具体的には、Fe23)が挙げられる。第1光触媒、第2光触媒、及びその他の光触媒を構成する材料としては、酸化チタン、又は酸化タングステンが好ましい。
【0029】
酸化チタンは、TiO2(二酸化チタン)である。酸化チタンの結晶構造としては、例えば、アナターゼ型、及びルチル型が挙げられる。光触媒性能を向上させるために、酸化チタンの結晶構造としては、アナターゼ型が好ましい。
【0030】
酸化タングステンとしては、例えば、WO3(三酸化タングステン)、WO2、WO、W23、W45、W411、W2573、W2058、及びW2468、並びにこれらの混合物が挙げられる。光触媒性能を向上させるために、酸化タングステンとしては、WO3が好ましい。酸化タングステンの結晶構造としては、例えば、単斜晶、三斜晶、斜方晶、及びこれらの少なくとも2種の混晶が挙げられる。
【0031】
光触媒のエネルギーギャップを小さくして可視光領域での光触媒の応答性を向上させるために、光触媒は助触媒を担持していていもよい。助触媒としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄、ニッケル、ニオブ、ジルコニウム、及びモリブデンが挙げられる。これらの金属は、例えば、錯体、塩化物、臭化物、沃化物、酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、燐酸塩、又は有機酸塩の形態で、助触媒として含有されていてもよい。助触媒としては、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、又はイリジウムが好ましく、白金がより好ましい。光触媒に対する助触媒の含有率(以下、助触媒担持率と記載することがある)は、0.01重量%以上3重量%以下であることが好ましい。助触媒担持率がこのような範囲内であると、光触媒の光触媒性能を更に向上できる。
【0032】
第1光触媒は、酸化チタン又は酸化タングステンを含有することが好ましく、酸化チタンを含有することがより好ましく、アナターゼ型の酸化チタンを含有することが一層好ましい。第2光触媒は、酸化チタン又は酸化タングステンを含有することが好ましい。第2光触媒が含有する酸化チタンは、アナターゼ型の酸化チタンであることが好ましい。第2光触媒が含有する酸化タングステンは、白金を担持した酸化タングステンであることが好ましく、白金を担持した三酸化タングステンであることがより好ましい。第1光触媒を構成する材料は、第2光触媒を構成する材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。その他の光触媒は、酸化チタン又は酸化タングステンを含有することが好ましく、酸化チタンを含有することがより好ましく、アナターゼ型の酸化チタンを含有することが一層好ましい。
【0033】
(バインダー)
バインダーは、特に限定されない。バインダーの例としては、バインダー樹脂が挙げられる。バインダー樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、及びポリオレフィン樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、これらの樹脂を共重合させた共重合体であってもよい。バインダー樹脂は、これらの樹脂の混合物であってもよい。バインダーの別の例としては、ガラスが挙げられる。光及び熱に強く、光触媒によって分解され難いことから、バインダーとしては、シリコーン樹脂又はガラスが好ましい。加工が容易であることから、バインダーとしては、シリコーン樹脂がより好ましい。
【0034】
シリコーン樹脂として、市販品を使用してもよい。市販のシリコーン樹脂の例としては、東レ・ダウコーニング株式会社製のBA2400、BA2410、BA2411、BA2510、BA2405、840RESIN、及び804RESINが挙げられる。市販のシリコーン樹脂の別の例としては、信越化学工業株式会社製のKR-350、KR-271、KR-272、KR-274、KR-216、KR-280、KR-282、KR-261、KR-260、KR-255、KR-266、KR-251、KR-155、KR-152、KR-214、KR-220、KR-220LP、X-4040-171、KR-201、KR-5202、及びKR-3093が挙げられる。
【0035】
バインダーの体積VBに対する、少なくとも2種の光触媒の総体積VCの比率VC/VBは、2.0以上10.0以下であることが好ましい。比率VC/VBが2.0以上であると、光触媒の含有量が多くなり、光触媒がバインダーから好適に露出する。これにより、光触媒が分解対象物と接触して、光触媒によって分解対象物が好適に分解され、光触媒性能を向上できる。比率VC/VBが10.0以下であると、光触媒の含有量が多くなり過ぎず、バインダーに対する光触媒の付着強度が高まり、バインダーからの光触媒の脱離を好適に抑制できる。比率VC/VBは、2.0、2.5、3.0、3.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、及び10.0から選ばれる2つの値の範囲内であってもよい。光触媒コート剤に含有されるバインダーの体積VBは、式「VB=バインダーの重量/バインダーの密度」から算出される。なお、バインダーが液状又はエマルション状である場合には、バインダーの体積VBは、バインダーの固形分の体積である。
【0036】
(添加剤)
光触媒コート剤は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、珪素化合物、アルミニウム化合物、アルミノ珪酸塩、アルカリ土類金属、リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、及び活性炭が挙げられる。
【0037】
(溶媒)
光触媒コート剤は、必要に応じて、溶媒を更に含有してもよい。溶媒としては、例えば極性溶媒が挙げられる。極性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、及びプロパノール(より具体的には、2-プロパノール)が挙げられる。以上、第1実施形態に係る光触媒コート剤について説明した。
【0038】
<第2実施形態:光触媒コート剤の製造方法>
本発明の第2実施形態は、光触媒コート剤の製造方法に関する。第2実施形態に係る光触媒コート剤の製造方法は、第1実施形態に係る光触媒コート剤を製造する方法である。第2実施形態に係る光触媒コート剤の製造方法は、少なくとも2種の光触媒と、バインダーとを混合する工程(混合工程)を含む。必要に応じて、混合工程において、その他の光触媒を更に添加してもよい。また、必要に応じて、混合工程において、添加剤及び溶媒の一方又は両方を更に添加してもよい。第2実施形態に係る光触媒コート剤の製造方法で用いられる第1光触媒、第2光触媒、その他の光触媒、バインダー、添加剤、及び溶媒は、各々、第1実施形態で述べた通りである。混合工程で用いられる混合装置としては、例えば、ホモジナイザーが挙げられる。以上、第2実施形態に係る光触媒コート剤の製造方法について説明した。
【0039】
<第3実施形態:光触媒担持磁性体>
本発明の第3実施形態は、光触媒担持磁性体に関する。第3実施形態に係る光触媒担持磁性体は、コアと、コアを被覆するコート層とを備える。
【0040】
(コート層)
コート層は、少なくとも2種の光触媒と、バインダーとを含有する。少なくとも2種の光触媒は、第1光触媒と、第2光触媒とを少なくとも含有する。少なくとも2種の光触媒は、その他の光触媒を更に含有してもよい。また、コート層は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。第3実施形態に係る光触媒担持磁性体のコート層に含有される第1光触媒、第2光触媒、その他の光触媒、バインダー、及び添加剤は、各々、第1実施形態で述べた通りである。
【0041】
コート層の含有量は、100重量部のコアに対して、1重量部以上20重量部以下であることが好ましく、3重量部以上10重量部以下であることがより好ましい。
【0042】
(コア)
コアは、磁性材料を含有する。コアが磁性材料を含有することで、次の利点が得られる。例えば、分解対象物を含有する水の中に光触媒担持磁性体を分散させる。光触媒を活性化する波長の光を照射して、水中の分解対象物を分解する。その際に、磁性材料を含有するコアを備える光触媒担持磁性体を、磁石を用いて移動又は回収することができる。
【0043】
磁性材料は、特に限定されない。磁性材料としては、例えば、酸化鉄(より具体的には、フェライト、及びマグネタイト等)、酸化鉄以外の金属酸化物、金属(より具体的には、鉄、コバルト、及びニッケル等)、及びこれらの合金が挙げられる。酸化鉄は、他の元素を更に含有していてもよい。酸化鉄に更に含有される元素としては、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム、バリウム、及びストロンチウムが挙げられる。他の元素を更に含有した酸化鉄としては、マンガン-フェライト、マンガン-亜鉛-フェライト、ニッケル-亜鉛-フェライト、銅-亜鉛-フェライト、バリウム-フェライト、及びストロンチウム-フェライトが挙げられる。磁性材料としては、酸化鉄が好ましく、フェライトがより好ましく、マンガン-フェライトが更に好ましい。
【0044】
コアの数平均粒子径は、5μm以上5000μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。コアの数平均粒子径がこのような範囲内であると、光触媒担持磁性体の製造に用いられる液にコアが分散し易くなり、コアの表面に均一なコート層が形成され易い。
【0045】
(光触媒担持磁性体の製造方法)
次に、光触媒担持磁性体の製造方法の一例を説明する。光触媒担持磁性体は、例えば、第1実施形態に係る光触媒コート剤によりコアを被覆して、コート層を形成することにより製造される。コート層は、光触媒コート剤処理層である。
【0046】
光触媒コート剤によりコアを被覆する方法の一例を説明する。まず、液中でコアと光触媒コート剤とを混合した後、乾燥させる。これにより、コアの表面にコート層を形成して、光触媒担持磁性体を得る。得られた光触媒担持磁性体は、必要に応じて、洗浄、及び乾燥されてもよい。コアと光触媒コート剤とを混合するための液としては、例えば、光触媒コート剤に含有される溶媒と同じものを使用できる。コアとコート層との結着性を高めるために、液にバインダーを更に添加してもよい。更に添加されるバインダーとしては、例えば、光触媒コート剤に含有されるバインダーと同じものを使用できる。なお、コア及び光触媒コート剤のみで好適に混合できる場合には、コアと光触媒コート剤とを混合するための液を使用しなくてもよい。
【0047】
光触媒コート剤によりコアを被覆する方法の別の例としては、光触媒コート剤にコアを浸漬させる浸漬法、コアに光触媒コート剤を噴霧するスプレー法、コアに光触媒コート剤を滴下する滴下法、流動エアによりコアを浮遊させた状態で光触媒コート剤を噴霧する流動床法、及びニーダーコーター中でコアと光触媒コート剤とを混合し溶媒を除去するニーダーコーター法が挙げられる。以上、第3実施形態に係る光触媒担持磁性体について説明した。
【実施例
【0048】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、光触媒の平均一次粒子径は、次の方法で測定した。まず、比表面積・細孔分布測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ社製「NOVA 4200e」)を用いて、単位質量あたりの光触媒の比表面積Smを測定した。次いで、測定した光触媒の比表面積Smから、下記式(1)に従って、光触媒の平均一次粒子径dを算出した。
平均一次粒子径d=6/(光触媒の比表面積Sm×光触媒の密度ρ)・・・(1)
【0049】
[光触媒コート剤の作製]
光触媒コート剤(A-1)~(A-7)及び(B-1)~(B-3)を、以下の方法で作製した。
【0050】
<光触媒コート剤(A-1)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部にバインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)0.75重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-101」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:6nm)20重量部と、第2光触媒としての酸化チタン(日本アエロジル株式会社製「P-25」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:21nm)5重量部とを分散させた。これにより、光触媒コート剤(A-1)を得た。
【0051】
<光触媒コート剤(A-2)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)1.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-101」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:6nm)15重量部と、第2光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-102」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:15nm)7重量部とを分散させた。これにより、光触媒コート剤(A-2)を得た。
【0052】
<光触媒コート剤(A-3)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAの条件で5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)2.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-101」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:6nm)20重量部と、第2光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「AMT-30」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:30nm)4重量部とを分散させた。これにより、光触媒コート剤(A-3)を得た。
【0053】
<光触媒コート剤(A-4)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)1.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(日本アエロジル株式会社製「P-90」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:14nm)20重量部と、第2光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「AMT-30」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:30nm)5重量部とを分散させた。これにより、光触媒コート剤(A-4)を得た。
【0054】
<光触媒コート剤(A-5)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)1.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-102」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:15nm)20重量部と、第2光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「AMT-30」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:30nm)5重量部とを分散させた。これにより、光触媒コート剤(A-5)を得た。
【0055】
<光触媒コート剤(A-6)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)3.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-101」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:6nm)20重量部と、第2光触媒としての酸化タングステンW-A(白金担持酸化タングステン、平均一次粒子径:30nm)8重量部とを分散させた。これにより、光触媒コート剤(A-6)を得た。
【0056】
なお、酸化タングステンW-Aは、次の方法で作製した。水50mLに、酸化タングステン(WO3、株式会社高純度化学研究所製)5gを分散させて、分散液Iを得た。ビーズミル(日本コークス工業株式会社製「MSC50-ZZ」)に、分散液Iを投入した。ビーズミルを用いて、90分間、分散液I中の酸化タングステンを粉砕した。次いで、遠心分離機(株式会社コクサン製「H-201F」)を用いて、3000rpmの回転速度で5分間、分散液Iを遠心分離し、沈降した酸化タングステン粒子を取り出した。取り出した酸化タングステン粒子5gを、水50mLに分散させて、分散液IIを得た。酸化タングステン粒子100重量部に対して白金が0.5重量部となるように、分散液IIにヘキサクロロ白金酸水溶液を添加した。添加された分散液IIに、攪拌、濾過、水洗浄、及び乾燥を行うことにより、酸化タングステンW-Aを得た。得られた酸化タングステンW-Aは、白金を担持した酸化タングステンであり、平均一次粒子径は30nmであった。
【0057】
<光触媒コート剤(A-7)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)1.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-101」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:6nm)20重量部と、第2光触媒としての酸化チタン(日本アエロジル株式会社製「P-25」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:21nm)5重量部と、その他の光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「AMT-30」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:30nm)1重量部とを分散させた。これにより、光触媒コート剤(A-7)を得た。
【0058】
<光触媒コート剤(B-1)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)1.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(日本アエロジル株式会社製「P-25」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:21nm)5重量部を分散させた。なお、第2光触媒は添加しなかった。これにより、光触媒コート剤(B-1)を得た。
【0059】
<光触媒コート剤(B-2)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)1.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-101」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:6nm)20重量部を分散させた。なお、第2光触媒は添加しなかった。これにより、光触媒コート剤(B-2)を得た。
【0060】
<光触媒コート剤(B-3)の作製>
超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール100重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)1.00重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られたバインダー液に、第1光触媒としての酸化チタン(テイカ株式会社製「TKP-102」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:15nm)20重量部と、第2光触媒としての酸化チタン(日本アエロジル株式会社製「P-25」、アナターゼ型酸化チタン、平均一次粒子径:21nm)5重量部とを分散させた。これにより、光触媒コート剤(B-3)を得た。
【0061】
[評価]
(評価用光触媒担持磁性体の作製)
光触媒コート剤(A-1)~(A-7)及び(B-1)~(B-3)の各々を用いて、評価用光触媒担持磁性体を作製した。詳しくは、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、2-プロパノール10重量部に、バインダー(シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KR-220LP」)2重量部を分散させた。これにより、バインダー液を得た。攪拌機(アズワン株式会社販売「オートセルマスターCM-200」)を用いて、回転数10000rpmで10分間、得られたバインダー液と、磁性材料含有コア(数平均粒子径:35μm、Mn-フェライトのコア)100重量部とを混合し、混合物を得た。攪拌機(アズワン株式会社販売「オートセルマスターCM-200」)を用いて、回転数10000rpmで10分間、得られた混合物と、光触媒コート剤25重量部とを更に混合した。得られた混合物を40℃で24時間乾燥させることにより、2-プロパノールを除去した。これにより、評価用光触媒担持磁性体を得た。光触媒担持磁性体は、磁性材料含有コアと、コアを被覆するコート層とを備えていた。
【0062】
(付着強度の評価)
評価用光触媒担持磁性体に対して、付着強度の評価を行った。まず、蛍光X線分析装置を用いて、評価用光触媒担持磁性体に含有される光触媒の量(具体的には、チタン元素の量、及びタングステン元素の量)を測定した。測定された光触媒の量を、超音波処理前の含有量とした。次いで、純水に評価用光触媒担持磁性体を分散させて、分散液を得た。超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製「ULTRASONICGENERATOR」)を用いて、50μAで5分間、得られた分散液に超音波処理を行った。次いで、分散液を40℃で24時間乾燥させて、超音波処理後の光触媒担持磁性体を得た。蛍光X線分析装置を用いて、超音波処理後の光触媒担持磁性体に含有される光触媒の量(具体的には、チタン元素の量、及びタングステン元素の量)を測定した。測定された光触媒の量を、超音波処理後の含有量とした。式「光触媒残存率=100×(超音波処理後の含有量)/(超音波処理前の含有量)」に従って、光触媒残存率(単位:%)を算出した。そして、光触媒残存率から、下記基準に従って、コアに対する光触媒の付着強度を評価した。評価結果を、表1に示す。
評価A:光触媒残存率が80%以上である。
評価B:光触媒残存率が70%以上80%未満である。
評価C:光触媒残存率が70%未満である。
【0063】
(メチレンブルー分解活性の評価)
光触媒性能として、メチレンブルー分解活性を評価した。ガラス製容器に、評価用光触媒担持磁性体1gと、メチレンブルー三水和物水溶液(濃度:20μmol/L)30mLとを入れて、評価液を作製した。次いで、紫外線ランプ(アズワン株式会社販売「LUV-16」)を、評価液の液面から50mm離れた位置に設置した。0.1L/分の量の空気を評価液に送り込みながら、紫外線ランプを用いて365nmの紫外線を、24時間、評価液に照射した。紫外線照射後の評価液に対して、分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)を用いて、メチレンブルーに由来する波長663nmの光の透過率を測定した。測定された波長663nmの光の透過率から、下記基準に従って、メチレンブルー分解活性を評価した。評価結果を、表1に示す。なお、波長663nmの光の透過率が高い程、メチレンブルーが分解されていることを示す。
評価A:透過率が70%以上100%以下である。
評価B:透過率が20%超70%未満である。
評価C:透過率が0%以上20%以下である。
【0064】
【表1】
【0065】
なお、表1中の各用語は、次の意味である。「部」は「重量部」を示す。「-」は該当する成分を含有していないことを示す。「径」は「平均一次粒子径」を示す。「径比率」の欄の「第2/第1」は、第1光触媒の平均一次粒子径に対する、第2光触媒の平均一次粒子径の比率を示す。「V1/V2」は、第2光触媒の体積V2に対する、第1光触媒の体積V1の比率を示す。「VC/VB」は、バインダーの体積VBに対する、少なくとも2種の光触媒の総体積VCの比率を示す。
【0066】
表1に示す各材料の主成分及び密度を、表2に示す。各材料の主成分とは、対象となる材料において、99重量%以上を占める成分である。第1光触媒の体積V1は、式「V1=(表1に示す第1光触媒の量)/4.23」から算出した。第2光触媒の主成分が酸化チタンである場合、第2光触媒の体積V2は、式「V2=(表1に示す第2光触媒の量)/4.23」から算出した。第2光触媒の主成分が酸化タングステンである場合、第2光触媒の体積V2は、式「V2=(表1に示す第2光触媒の量)/7.16」から算出した。その他の光触媒の体積V3は、式「V3=(表1に示すその他の光触媒の量)/4.23」から算出した。その他の光触媒を含有しない場合、少なくとも2種の光触媒の総体積VCは、式「VC=V1+V2」から算出した。その他の光触媒を含有する場合、少なくとも2種の光触媒の総体積VCは、式「VC=V1+V2+V3」から算出した。バインダーの体積VBは、式「VB=(表1に示すバインダーの量)/1.20」から算出した。なお、光触媒コート剤(A-7)において、少なくとも2種の光触媒の総体積VCに対する、第1光触媒の体積V1と第2光触媒の体積V2との合計含有率は、96体積%であった。
【0067】
【表2】
【0068】
表1に示すように、光触媒コート剤(A-1)~(A-7)の各々は、少なくとも2種の光触媒と、バインダーとを含有していた。具体的には、光触媒コート剤(A-1)~(A-6)の各々は、2種の光触媒(第1光触媒及び第2光触媒)とバインダーとを含有していた。光触媒コート剤(A-7)は、3種の光触媒(第1光触媒、第2光触媒、及びその他の光触媒)とバインダーとを含有していた。第2光触媒の平均一次粒子径は、第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上であった。そのため、表1に示すように、光触媒コート剤(A-1)~(A-7)の各々を用いて作製された光触媒担持磁性体は、付着強度がA評価であり、光触媒の脱離を抑制できた。また、光触媒コート剤(A-1)~(A-7)の各々を用いて作製された光触媒担持磁性体は、メチレンブルー分解活性がA評価であり、光触媒性能が良好であった。
【0069】
一方、表1に示すように、光触媒コート剤(B-1)~(B-2)の各々は、第2触媒を含有していなかった。光触媒コート剤(B-3)においては、第2光触媒の平均一次粒子径が第1光触媒の平均一次粒子径の2.0倍以上ではなかった。そのため、表1に示すように、光触媒コート剤(B-1)及び(B-3)の各々を用いて作製された光触媒担持磁性体は、付着強度がC評価であり、光触媒の脱離が抑制できていなかった。また、光触媒コート剤(B-2)及び(B-3)の各々を用いて作製された光触媒担持磁性体は、メチレンブルー分解活性がC評価であり、光触媒性能が不良であった。
【0070】
以上のことから、本発明に包含される光触媒コート剤(A-1)~(A-7)は、光触媒コート剤(B-1)~(B-3)と比較して、光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上できることが示された。また、本発明の製造方法により製造された光触媒コート剤は、光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上できることが示された。また、本発明の光触媒コート剤を用いて製造された光触媒担持磁性体は、光触媒の脱離を抑制しつつ、光触媒性能を向上できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の光触媒コート剤、本発明の製造方法により製造された光触媒体コート剤、及び本発明の光触媒担持磁性体は、水を浄化するための光触媒製品に利用できる。