(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにおける基本小パターンの較正
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20221208BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221208BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L21/30 541R
G03F7/20 504
H01J37/305 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018119507
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-04-05
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン・フェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキー・シャルトワール
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-050248(JP,A)
【文献】特開2006-339404(JP,A)
【文献】特開2007-150243(JP,A)
【文献】特開2007-258659(JP,A)
【文献】特開2017-022359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにおける基本パターンを較正する方法であって、以下のステップ:
a.可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより、各々が名目臨界寸法(CD
0)を有する幾何学的図形を含む少なくとも1個の較正パターン(MCO、MCH、MCV)を生成するステップであって、前記図形が各々の前記名目臨界寸法よりも小さい寸法の基本パターン(ME
N)に分割され、各々の幾何学的図形の前記基本パターンが同一の
名目寸法
(H
0
、W
0
、L
0
)を有し、他の幾何学的図形の基本パターンが異なる
名目寸法を有するステップと、
b.各々の前記幾何学的図形の実際の臨界寸法(CD
m)を測定するステップと、
c.このように決定された前記実際の臨界寸法に基づいて回帰法を適用して、
-
前記名目寸法(H
0
、W
0
、L
0
)に関する前記基本パターンの
実際寸法の変分(ΔH、ΔW、ΔL)、または
- 前記
実際寸法の変分と同等の効果を生じる前記基本パターンの露光線量の誤差のいずれかを、前記基本パターンの
名目寸法(H
0、W
0、L
0)の関数として表す数学モデルを構築するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記ステップcが以下のサブステップ:
c1.前記基本パターンの寸法または前記線量誤差の前記変分の表現を、前記基本パターンの前記寸法および評価対象である複数のパラメータの関数として決定するステップと、
c2.ステップbで測定された前記寸法と、サブステップc1で決定された前記表現を用いて計算された寸法との間の平均偏差を表す関数を最小化することにより、評価対象である前記パラメータの値を計算するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所与の較正パターンの幾何学的図形が互いに平行な直線である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基本パターンが長方形パターンおよび三角形パターンから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基本パターンが直角二等辺三角形であり、所与の較正パターンの前記幾何学的図形が互いに平行且つ前記基本パターンの直線に平行な直線である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
各々の前記幾何学的形状が、重なり合わずに並置された同一基本パターンに分割される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記基本パターンが直角二等辺三角形であり、前記幾何学的図形が互いに平行且つ対応する基本パターンの一辺に平行な直線であり、前記較正パターンが、
- 直角二等辺三角形の同一基本パターンの2個のサブアセンブリから形成された線であって、前記基本パターンは重なり合わずに並置され、前記サブアセンブリが空間的にずれて重ね合わされる線と、
- 補完的な向きを有する直角二等辺三角形の基本パターンから形成された線であって、前記基本パターンが重なり合わずに並置される線とを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記数学モデルが多項式モデルである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ用のデータを準備するための方法であって、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより基板に転写するレイアウトの少なくとも1個の基本パターンの寸法の変分を補正するステップを含み、前記ステップが、前記変分、または前記変分と同等の効果を生じる露光線量誤差を、前記基本パターンの前記寸法の関数として表す数学モデルを用いて実行される方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の較正方法により前記数学モデルを決定する先行ステップを含む、請求項9に記載の可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ用のデータを準備するための方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ用のデータを準備するための方法であって、前記数学モデルが、少なくとも1個の基本パターンの前記寸法の変分をその寸法の関数として表し、前記方法が以下のステップ:
i.入力データを介して、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより基板に転写するレイアウトを受け取るステップと、
ii.前記レイアウトを基本パターンに分割し、電子の広がりの物理モデルを用いて前記各基本パターンのジオメトリおよび/または露光線量を補正をするステップと、
iii.前記数学モデルを適用して前記各基本パターンの寸法の変分を計算するステップと、
iv.前記各基本パターンに対して、対応する寸法の変分を考慮しながら補正された露光線量を計算するステップと、
v.ステップivで計算した前記補正された露光線量を、ステップiiの終了時点で決定されたような補正された基本パターンに適用するステップとを含む、方法。
【請求項12】
請求項9または10に記載の可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ用のデータを準備するための方法であって、前記数学モデルが、少なくとも1個の基本パターンの前記寸法の変分をその寸法の関数として表し、前記方法が以下のステップ:
I.入力データを介して、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより基板に転写する幾何学的パターンを受け取るステップと、
II.前記幾何学的パターンを基本パターンに分割し、電子の広がりの物理モデルを用いて前記各基本パターンのジオメトリおよび/または露光線量を補正するステップと、
III.前記数学モデルを適用して前記各基本パターンの寸法の変分を計算すると共に、前記基本パターンを変更して前記変分を補正するステップと、
IV.前記数学モデルを再び適用して、ステップIIIで施された前記補正を考慮しながら前記各基本パターンの寸法の新たな変分を再計算するステップと、
V.前記各基本パターンに対して、ステップIVで計算された対応する寸法の変分を考慮しながら補正された露光線量を計算するステップと、
VI.ステップVで計算した前記補正された露光線量を、ステップIIIで変更したような基本パターンに適用するステップとを含む、方法。
【請求項13】
請求項9または10に記載の可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ用のデータを準備するための方法であって、前記数学モデルが、少なくとも1個の基本の電子ビームリソグラフィパターンの寸法の変分に同等の効果を生じる露光線量誤差をその寸法の関数として表し、前記方法が前記露光線量誤差を補正するステップを含む、方法。
【請求項14】
可変成形ビーム電子ビームリソグラフィによりレイアウトを基板に転写する方法であって、
- 請求項9~13のいずれか1項に記載の方法を用いて実行するデータ準備ステップと、
- 前記方法を用いて得られた基本パターン寸法および露光線量を用いて可変成形ビーム電子ビームリソグラフィを実行するステップとを含む方法。
【請求項15】
可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ方法における電子の広がりの物理モデルを推定する方法であって、
A.前記可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ方法により、複数の基本パターンから構成されるレイアウトを基板に転写するステップと、
B.シミュレートされた寸法と、前記基板に転写された前記レイアウトの測定された寸法とを比較することにより、電子の広がりの前記物理モデルを推定するステップと、
C.請求項2に記載の較正方法を実行して、前記基本パターンの寸法の変分を前記寸法の関数として表す数学モデルを構築するステップと、
D.前記数学モデルを適用することにより、前記基板に転写された前記レイアウトの新たなシミュレートされた寸法を計算するステップとを含み、ステップB~Dを反復的に実行する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにおける小形基本パターン(「ショット」)を較正する方法、およびそのような較正の電子ビームリソグラフィデータの準備に対する応用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームリソグラフィは、レイアウトを形成する幾何学的パターンを高解像度で基板に転写すべく用いられる。電子ビームは、転送するレイアウトに応じて基板に配置されたレジストを露光すべく用いられる。露光したレジストは、選択的に除去可能となる化学変化を受け、次いでエッチングされても、堆積またはイオン注入を受けてもよい基板の特定の領域を露出させる(代替的に、未露光レジストを選択的に除去する)。
【0003】
電子ビームリソグラフィの主な用途は、集積回路の製造に用いるフォトリソグラフィマスクの製造である。他の用途は、光子または電子素子の、およびナノ構造の集積回路の直接製造である。
【0004】
レジストは、極めて狭い電子ビームにより一点ずつ露光されてよいが、これは長時間を要する。このため、可変成形ビーム(VSB)技術と呼ばれる別の技術を一般に利用し、その原理を
図1A、1Bおよび
図2に示す。
図1A、1Bに見られるように、電子源SEにより生成された比較的広い電子ビームFEが、2個の連続する開口O1、O2を通過する。開口を通過した後のビームの形状は、可変である開口の形状に依存する。従って、ビームの形状にほぼ一致する基本パターン(本文献内では「ショット」と言う)ME、ME’が得られ、一回の露光で基板に転写される。
図1Aの場合、基本パターンMEは、正方形または長方形であり、
図1Bの場合、基本パターンME’は三角形である。
【0005】
事実、実際に基板に転写される基本パターンの形状および寸法は、必ずしもビームのそれらに対応しておらず、近傍パターンにも依存する(このため「近接効果」に言及する)。これは主にレジスト内での電子の散乱および基板による後方散乱に起因する。
【0006】
実際に基板に転写されるパターンを決定するために、「名目」パターンに対し、
- 一般に点広がり関数(PSF)によりレジスト内での電子の広がりを表す物理モデル、および
- 一般に閾値に基づく簡単なモデルであるレジストのモデルが適用される。レジストは、受け取る電子線量が閾値を超えた場合に露光されるものと考えられる。
【0007】
公知のように、これにより、転写されるパターンが所望のパターンになるべく近いことを保証すべく名目パターンに施す必要がある補正を決定することが可能になる。「データ準備」に言及する理由は、当該動作により、求めるパターンの転写を得るためにリソグラフィ処理の実行を制御すべくVSB機械に配信されるデータファイルが生成されるためである。
【0008】
典型的には、VSB機械により、基準方向に対して0°、±45°、または90°に向けられた長方形または正方形あるいは直角二等辺三角形の基本パターンが得られる。これら各種の基本形状を
図2に示す。これらにより特定のパターン、例えばこれら所定の四方向の線を簡単且つ素早く生成できることが容易に理解されよう。例えば
図3A、3Bにおいて、水平な(垂直基準方向に対して90°)、または45°をなすである線が当該線自体とほぼ同一の臨界寸法を有する有限個の基本パターンから得られ得、近接効果を考慮すべく前記寸法が補正される(「臨界寸法」とは、パターンの最小寸法、すなわち線の幅、正方形の辺の長さ等である)ことが分かる。対照的に、異なる向きの線は、その臨界寸法(幅)よりかなり小さい、より多くの基本パターンに分解する必要があり、これを
図3Cに示す。
【0009】
現在、極めて小さい寸法(典型的には100nm以下)の基本パターンが可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより生成される場合、基板に実際に転写されるパターンの寸法が物理モデルおよびレジスト単独のモデルから予想される寸法とは異なることが知られている。例えば、
図4に、VSB電子ビームリソグラフィによりその向きの関数として得られた120nmに等しい名目臨界寸法CD
0の直線に対して測定された臨界寸法CD
m(幅)を示す。測定臨界寸法CD
mが、0°、45°、90°、135°に向けられた物理モデル(水平線)により与えられるその名目値と殆ど異ならないことが確かめられ得るが、その理由は、これらのケースでは臨界寸法よりも小さい基本パターンを用いる必要がないためである。対照的に、中間的な向きでは線の測定された臨界寸法が130nmを超える、すなわち誤差が約10%の場合がある。
【0010】
上述の効果は科学文献で公知である。
- H.C.Pfeiffer et al.“Recent Advances in Electron-Beam Lithography for the High-Volume Production of VLSI devices”,IEEE transaction on electron devices,Vol.ED-26 4,663 (1979)、
- S.Nishimura et al.,“Evaluation of Shaping Gain Adjustment Accuracy Using Atomic Force Microscope in Variably Shaped Electron-Beam Writing Systems”,J.Appl.Phys.36,7517(1997)、
- J.Choi et al.,“Requirements of e-beam size and position accuracy for photomask of sub-32 nm HP device”,SPIE Vol.7748,774819-1(2010)、
- S.Park et al.,“Requirements of the e-beam shot quality for mask patterning of the sub-1X device”,SPIE Vol.9777,977716-1(2016).
【0011】
しかし、「小形」基本パターン、すなわち転写するパターンの臨界寸法よりも小さい基本パターンの使用に伴う誤差を系統的且つ簡単に補正可能にする方法は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】H.C.Pfeiffer et al.他著“Recent Advances in Electron-Beam Lithography for the High-Volume Production of VLSI devices”,IEEE transaction on electron devices,Vol.ED-26 4,663 (1979)
【文献】S.Nishimura et al.,他著“Evaluation of Shaping Gain Adjustment Accuracy Using Atomic Force Microscope in Variably Shaped Electron-Beam Writing Systems”,J.Appl.Phys.36,7517(1997)
【文献】J.Choi et al.,他著“Requirements of e-beam size and position accuracy for photomask of sub-32 nm HP device”,SPIE Vol.7748,774819-1(2010)
【文献】S.Park et al.,他著“Requirements of the e-beam shot quality for mask patterning of the sub-1X device”,SPIE Vol.9777,977716-1(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来技術の上述の限界を克服することを目的とする。より厳密には、データの準備に利用可能な可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにおける基本パターンを較正して、「小形」基本パターンの使用に伴う誤差を実質的に減少させる方法を提供することを目的とする。また、少なくとも1個のそのような、データを準備するための方法を提供することを目的とする。
【0014】
更に、発明者らはまた、「小形」基本パターンの使用に伴う誤差が、電子の広がりの物理モデル(PSF)の推定に不利な影響を及ぼすことも認識している。本発明の一実施形態により、現在に至るまで見過ごされてきたこの問題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って本発明の一主題は、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにおける基本パターンを較正する方法であって、本方法は以下のステップ:
a.可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより、各々が名目臨界寸法を有する幾何学的図形を含む少なくとも1個の較正パターンを生成するステップであって、前記図形が各々の前記名目臨界寸法よりも小さい寸法の基本パターンに分割され、各々の幾何学的図形の基本パターンが同一の寸法を有し、他の幾何学的図形の基本パターンが異なる寸法を有する、ステップと、
b.各々の前記幾何学的図形の実際の臨界寸法を測定するステップと、
c.このように決定された実際の臨界寸法に基づいて回帰法を適用して、
- 前記基本パターンの寸法の変分、または
- 前記寸法の変分と同等の効果を生じる前記基本パターンの露光線量の誤差を、基本パターンの寸法の関数として表す数学モデルを構築するステップとを含む。
【0016】
上述の方法の特定の実施形態によれば、
- 前記ステップcは、以下のサブステップ:
c1.前記基本パターンの寸法または前記線量誤差の前記変分の表現を、基本パターンの寸法および評価対象である複数のパラメータの関数として決定するステップと、
c2.ステップbで測定された寸法と、サブステップc1で決定された表現を用いて計算された寸法との間の平均偏差を表す関数を最小化することにより、評価対象である前記パラメータの値を計算するステップとを含んでいてよい。
【0017】
- 所与の較正パターンの幾何学的図形は互いに平行な直線であってよい。
【0018】
- 前記基本パターンは長方形パターンおよび三角形パターンから選択されてよい。
【0019】
- 前記基本パターンは直角二等辺三角形であってよく、所与の較正パターンの幾何学的図形は互いに平行且つ前記基本パターンの直線に平行な直線であってよい。
【0020】
- 各々の前記幾何学的形状は、重なり合わずに並置された同一基本パターンに分割されていてよい。
【0021】
- 前記基本パターンは直角二等辺三角形であってよく、前記幾何学的図形は互いに平行且つ対応する基本パターンの一辺に平行である直線であってよく、前記較正パターンは、
- 直角二等辺三角形の同一基本パターンの2個のサブアセンブリから形成された線であって、前記基本パターンが重なり合わずに並置され、前記サブアセンブリが空間的にずれて重ね合わされる線と、
- 補完的な向きを有する直角二等辺三角形の基本パターンから形成された線であって、前記基本パターンが重なり合わずに並置される線とを含んでいてよい。
【0022】
- 前記数学モデルは多項式モデルであってよい。
【0023】
本発明の別の主題は、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ用のデータを準備するための方法であって、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより基板に転写するレイアウトの少なくとも1個の基本パターンの寸法の変分を補正するステップを含み、前記ステップは、前記変分、または前記変分と同等の効果を生じる露光線量誤差を、前記基本パターンの寸法の関数として表す数学モデルを用いて実行される方法である。
【0024】
特定の実施形態によれば、
- データを準備するための方法は、上で定義した較正方法により前記数学モデルを決定する先行ステップを含んでいてよい。
【0025】
- 前記数学モデルは、少なくとも1個の基本パターンの前記寸法の変分をその寸法の関数として表すことができ、本方法は以下のステップ:
i.入力データを介して、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより基板に転写するレイアウトを受け取るステップと、
ii.前記レイアウトを基本パターンに分割し、電子の広がりの物理モデルを用いて前記各基本パターンのジオメトリおよび/または露光線量を補正するステップと、
iii.前記数学モデルを適用して前記各基本パターンの寸法の変分を計算するステップと、
iv.前記各基本パターンに対して、対応する寸法の変分を考慮しながら補正された露光線量を計算するステップと、
v.ステップivで計算した補正された露光線量を、ステップiiの終了時点で決定されたような補正された基本パターンに適用するステップとを含む。
【0026】
- 前記数学モデルは、少なくとも1個の基本パターンの前記寸法の変分をその寸法の関数として表すことができ、本方法は以下のステップ:
I.入力データを介して、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィにより基板に転写する幾何学的パターンを受け取るステップと、
II.前記幾何学的パターンを基本パターンに分割し、電子の広がりの物理モデルを用いて前記各基本パターンのジオメトリおよび/または露光線量を補正するステップと、
III.前記数学モデルを適用して前記各基本パターンの寸法の変分を計算すると共に、前記基本パターンを変更して当該変分を補正するステップと、
IV.前記数学モデルを再び適用して、ステップIIIで施された補正を考慮しながら前記各基本パターンの寸法の新たな変分を再計算するステップと、
V.前記各基本パターンに対して、ステップIVで計算された対応する寸法の変分を考慮しながら補正された露光線量を計算するステップと、
VI.ステップVで計算した補正された露光線量を、ステップIIIで変更したような基本パターンに適用するステップとを含む。
【0027】
- 前記数学モデルは、少なくとも1個の基本の電子ビームリソグラフィパターンの寸法の変分に同等の効果を生じる露光線量誤差をその寸法の関数として表すことができ、本方法は前記露光線量誤差を補正するステップを含む。
【0028】
本発明の更に別の主題は、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィによりレイアウトを基板に転写する方法であって、
- 上で定義した方法を用いて実行するデータ準備ステップと、
- 前記方法を用いて得られた基本パターン寸法および露光線量を用いて可変成形ビーム電子ビームリソグラフィを実行するステップとを含む。
【0029】
本発明の更に別の主題は、可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ方法における電子の広がりの物理モデルを推定する方法であって、
A.前記可変成形ビーム電子ビームリソグラフィ方法により、複数の基本パターンから構成される前記レイアウトを基板に転写するステップと、
B.シミュレートされた寸法と、基板に転写された前記レイアウトの測定された寸法とを比較することにより、電子の広がりの前記物理モデルを推定するステップと、
C.上で定義した較正方法を実行して、前記基本パターンの寸法の変分を前記寸法の関数として表す数学モデルを構築するステップと、
D.前記数学モデルを適用することにより、基板に転写されたレイアウトの新たなシミュレートされた寸法を計算するステップとを含み、ステップB~Dを反復的に実行する。
【0030】
本発明の他の特徴、詳細、および利点は、例示的に与える添付図面を参照しながら以下の記述を精査することにより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】可変成形ビーム(VSB)技術と呼ばれる別の技術を一般に利用し、その原理を示す。
【
図1B】可変成形ビーム(VSB)技術と呼ばれる別の技術を一般に利用し、その原理を示す。
【
図2】可変成形ビーム(VSB)技術と呼ばれる別の技術を一般に利用し、その原理を示す。
【
図3A】水平な(垂直基準方向に対して90°)、または45°をなすである線が当該線自体とほぼ同一の臨界寸法を有する有限個の基本パターンから得られ得、近接効果を考慮すべく前記寸法が補正される(「臨界寸法」とは、パターンの最小寸法、すなわち線の幅、正方形の辺の長さ等である)ことが分かる。
【
図3B】水平な(垂直基準方向に対して90°)、または45°をなすである線が当該線自体とほぼ同一の臨界寸法を有する有限個の基本パターンから得られ得、近接効果を考慮すべく前記寸法が補正される(「臨界寸法」とは、パターンの最小寸法、すなわち線の幅、正方形の辺の長さ等である)ことが分かる。
【
図3C】異なる向きの線は、その臨界寸法(幅)よりかなり小さい、より多くの基本パターンに分解する必要があり、これを示す。
【
図4】VSB電子ビームリソグラフィによりその向きの関数として得られた120nmに等しい名目臨界寸法CD
0の直線に対して測定された臨界寸法CD
m(幅)を示す。
【
図5A】各種形状の小形基本パターンの寸法変分である。
【
図5B】各種形状の小形基本パターンの寸法変分である。
【
図5C】各種形状の小形基本パターンの寸法変分である。
【
図6A】各種線形較正パターンの基本パターンへの分割である。
【
図6B】各種線形較正パターンの基本パターンへの分割である。
【
図6C】各種線形較正パターンの基本パターンへの分割である。
【
図6D】各種線形較正パターンの基本パターンへの分割である。
【
図6E】各種線形較正パターンの基本パターンへの分割である。
【
図7A】較正パターン(線)の臨界寸法の、元となる基本パターンの寸法への依存を示すグラフである。
【
図7B】較正パターン(線)の臨界寸法の、元となる基本パターンの寸法への依存を示すグラフである。
【
図7C】較正パターン(線)の臨界寸法の、元となる基本パターンの寸法への依存を示すグラフである。
【
図7D】較正パターン(線)の臨界寸法の、元となる基本パターンの寸法への依存を示すグラフである。
【
図7E】較正パターン(線)の臨界寸法の、元となる基本パターンの寸法への依存を示すグラフである。
【
図8A】本発明の実施形態による、各種データを準備するための方法のフロー図である。
【
図8B】本発明の実施形態による、各種データを準備するための方法のフロー図である。
【
図8C】本発明の実施形態による、各種データを準備するための方法のフロー図である。
【
図9】本発明の別の実施形態による、電子の広がりの物理モデルを推定する反復的方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図5Aの左側部分に長方形の「名目」基本パターン(または「ショット」)MENを示しており、その各辺は基準方向(「0°の向き」)に各々垂直および平行であって、長さW
0およびH
0を有している。実際に基板に転写されたパターン、すなわちレジスト上のビームの照射範囲は基準METにより示され、長さW
0+ΔW
0およびH
0+ΔH
0の辺を有している。転写された基本パターンの重心は名目パターンの重心に対して不変であると仮定され、これは良い近似で真であるが、この簡素化仮定は容易に緩和できる。偏差ΔW
0およびΔH
0は原理的に正でも負でもよい。以下、正の偏差だけを考慮し、これは実際に転写する基本パターンが対応する名目パターンよりも大きいことを意味するが、これは必須ではない。重要なのは、これらの偏差が名目寸法W
0およびH
0に依存する点である。従って以下のように記載可能である。
ΔW
0=ΔW(W
0,H
0)
ΔH
0=ΔH(W
0,H
0) (1)
【0033】
寸法の偏差を名目寸法の関数として表す関数が有限個数のパラメータに依存するものと仮定している。例えば、関数ΔW(W,H)およびΔH(W,H)は次数Nの多項式であると見なすことができ、従って以下のように記載可能である。
【数1】
ここでχ
0およびΛ
0は各々次数Nの多項式関係の係数の2個の(N×N)行列であり、0°の向きの長方形の場合に「基本パターンモデル」と呼ばれ得るものを定義する。
【0034】
基準方向(
図5B)に対して45°に向けられた長方形の基本パターンの場合も全く同様である。対応する基本パターンモデルは、他の2個のN×N行列χ
45およびΛ
45により定義される。
【0035】
図5Cは、名目長がL
0で実長がL
0+ΔL
0の辺(右側の線)を有する直角二等辺三角形の基本パターンの場合に関する。寸法変分ΔL
0を名目寸法L
0の関数として表すN次多項式モデルは従って、以下のように記載し得る。
【数2】
ここでΓは寸法Nの係数ベクトルである。実際に、三角形基本パターンには4通りの向きがあり得る(
図2の下部参照)ため、これらのベクトルのうち4個:Γ
1、Γ
2、Γ
3、Γ
4を定義する必要がある。
【0036】
従って、
図2の基本パターンを用いるVSB電子ビームリソグラフィ装置の場合、小形基本パターンのN次多項式モデルは4N
2+4N個のパラメータを含む(4個のN×N行列χ
0、Λ
0、χ
45、Λ
45および4個のN×1ベクトルΓ
1、Γ
2、Γ
3、Γ
4)。特定の場合において、例えばW
0=ΔW(W
0)およびΔH
0=ΔH(H
0)と設定する、すなわちパラメータの個数を8Nまで減らす仮定により当該モデルを単純化することが可能である。
【0037】
多項式モデルの選択は排他的ではない。更に、各種のVSB機械は、
図2のものとは異なる基本パターンを用いることによりモデルの構造に影響を与えることができる。
【0038】
また、寸法変分ΔW、ΔH、ΔLを直接考慮しなくても、線量Dの同等の変分ΔD、すなわち間接的に同一寸法変分を生じる線量変分を考慮すればよい。例えば三角形基本パターンの場合、以下のように記載可能である。
【数3】
パラメータδ
iはδ~N個の成分のベクトルを形成している。式2のようにモデルがN
2個のパラメータを含む点以外は長方形パターンの場合と全く同様である。
【0039】
いずれの場合も、寸法変分または同等の線量変分を表すモデルが、基本パターンの名目寸法、形状、および有限個数のパラメータの関数として得られる。従って、これらのパラメータを推定するという問題が生じる。
【0040】
これを行うには、所与の較正パターン内で同一の名目臨界寸法を有する基本パターンから得られた較正パターンを基板に転写する必要がある。後述する実施形態において、較正パターンは全て同一の名目臨界寸法を有しているが、これは必須ではない。
【0041】
異なる較正パターンが各種の基本パターンに用いられる。
【0042】
「0°」の向きを有する長方形の基本パターンの場合(
図5A参照)、較正パターンは名目幅(臨界寸法)CD
0の垂直線MCVまたは水平線MCHであり、前記線は寸法HおよびWの同一基本パターンMENに分割される。各線の名目幅CD
0は、含まれる基本パターンの幅(垂直線の場合)または高さ(水平線の場合)の整数倍数である。すなわち、較正パターンMCVに対してCD
0=n・W、較正パターンMCHに対してCD
0=n・Hであり、nは整数である。垂直線からなる較正パターンの場合を
図6Aに、および水平線形パターンの場合を
図6に示す。
【0043】
対照的に、水平または垂直線の基本パターンの高さ(H)または幅(W)は各々、いかなる特定の定量的制約を受けない。しかし、基本パターンの最大高および幅はVSB機械により制約される。基本パターンの幅または高さの離散化がなるべく細かくなるようにCD
0値を選択することが有利である。例えば、CD
0が120nmの場合、可能な基本パターンの整数幅は[120、60、40、30、24、20、15、12、10、8、6、5、4、3、2、1]nmである。実際に、幅がVSB機械の入力レイアウトの最小格子ピッチに比例する基本パターンが使用される。較正パターンのCD
0が大きいほど、以前の基準を満たす可能な異なる基本パターンの個数が多くなる点に注意されたい。
図6Cに、一例として、垂直線形の較正パターンを示しており、前記パターンは、CD
0、CD
0/2、CD
0/3およびCD
0/4に等しい固定された高さおよび幅Wの基本パターンに分割される。
【0044】
45°に向けられた長方形の基本パターンの場合、同じ向きの線形較正パターンMCOが用いられる。
【0045】
三角形基本パターンの場合はより複雑である。具体的には、同じ向きの同一直角三角形で構成された直線は半分しか満たされない(
図6Eの左側部分参照)。平均線量は従って、長方形の基本パターンの場合の半分であるため較正が損なわれる恐れがある。一つの可能な解決策は相補的三角形を用いるものであるが、これは別個の基本パターンのモデルの共同較正を含む。従って、並置され、半周期分すなわち長さL
0/2ずれた同一の三角形で構成された2個のサブパターンを重ね合わせることが好適である。これを
図6Eに示す。同一の三角形の各サブパターンの被覆割合は50%であるのに対し、2個のサブパターンの重ね合わせにより実現されるパターンの被覆割合は100%である。以下に詳細に説明するように、両方法を共同で用いることも可能である。
【0046】
より一般的には、較正パターンは、較正対象のVSB装置により生成可能な基本パターンの向きに対応する方向の線を含む。このような線は、同種の基本パターン(同一形状、同一方向、および同一名目寸法を有する)、または同一形状および寸法であるが恐らくは異なる、特に反対向きの基本パターンだけから構築することができる。
【0047】
較正パターンは最初にレジストへ転写され、次いで公知の方法、例えば電子顕微鏡検査または原子間力顕微鏡検査を用いて実際の臨界寸法を測定する。例えば、
図7A~7Eは、名目幅CD
0が120nmの垂直線形較正パターンに対して測定した臨界寸法CD
mのグラフであり、前記パターンは、高さH
0が4nm(
図7A)、8nm(
図7B)、10nm(
図7C)、12nm(
図7D)、15nm(
図7E)であり、および4nm~120nmの間に含まれる各種の幅W
0を有する長方形の基本パターンに分割される。複数の「小形」基本パターンで構成される「大きい」寸法の較正パターンの使用により、較正したい寸法変分が増幅される点に注意されたい。例えば、4nm×4nmの正方形の基本パターンに分割された較正パターンの場合、臨界寸法ΔCD=(CD
m-CD
0)における誤差は160nm-120nm=40nm(すなわち30%)に達するのに対し、分離された基本パターンの幅変分ΔW
0はサブナノスケールであって定量化が困難であろう。但し、CD
0=n・W
0ならばΔCD=n・W
0であると考えてはならない。ΔCDとΔW
0(またはH
0あるいはL
0)との関係は、近接効果に依存するためより複雑である。
【0048】
小形基本パターンモデルを較正する方法の次のステップは、較正パターンの予想される、または「理論」臨界寸法を計算することを含む。これを行うには、最初に線量場、すなわち電子の空間的広がりを計算することが必要である。これは物理モデルの利用を要する。次に、レジストモデルを用いることにより臨界寸法が得られる。
【0049】
原理的に、較正パターンの線量場D(r)は、基本パターンME
iと、点広がり関数(PSF)(全ての基本パターンについて同一と仮定される)との畳み込みの積の、基本パターン全体にわたる和により与えられる。
【数4】
ここでD
0は各基本パターンの露光線量、
【数5】
は位置ベクトルである。PSFがガウス曲線の和で表される(頻繁に見られる)場合、長方形基本パターンとの畳み込みを解析的に計算することができる。他の場合では、有限要素計算方式が用いられる。すなわち、各基本パターンの部分要素にわたる離散和により畳み込み積分が推定される。
【0050】
より厳密には、長方形のジオメトリの場合、各基本パターンを面積dx・dyの仮想部分要素に分割することができる。注目メッシュのサイズは、当該メッシュの各セル内のPSFの変分が無視できる程度に選択されなければならない。基本パターンの幅または高さが格子ピッチの倍数でない場合、パターンの境界に位置する部分要素は突出を防止すべく小さくされる。
【0051】
線量密度は、基本パターンME
iにわたる、且つそれらの部分要素jにわたる二重和として記載される。
【数6】
ここでME
ijは基本パターンiの部分要素jの面積に対応し、
【数7】
は当該部分要素の位置を原点とする位置ベクトルである。三角形基本パターンの場合、線量場は、PSFの変分に対して特徴サイズが小さい三角形または長方形の部分要素に基本パターンを離散化することにより数値的に計算できる。
【0052】
線量場が計算されたならば、レジストモデルを適用する。後者は、多くの場合閾値的である。次いで、
【数8】
(D
閾値は、これを超えるとレジストが完全に露光されると考えられる露光閾値)で定義される外形を決定することが課題である。
【0053】
較正パターンが分割されるため、上述の外形は一般に直線ではなくて波打っている。従って理論臨界寸法CD理論は、線の全長にわたり(または、少なくとも波打ちの規模よりはるかに大きい長さにわたり)パターンの平均幅を計算することにより得られる。
【0054】
理論臨界寸法CD理論の計算において、名目基本パターンだけを考える必要はないが、回帰法を介して、当該モデルのパラメータの最適値、すなわち理論臨界寸法と測定された臨界寸法との間の偏差を最小化する値を得るために、較正対象の小形基本パターンモデルがもたらす寸法変分を適用する必要がある。より厳密には、CD理論の計算は、較正方法の実験的部分で用いる基本パターンの全ての名目寸法にわたり、且つ各々の名目寸法または名目寸法の組み合わせ(例えばW0およびH0)にわたり繰り返す必要がある、各種の値が小形基本パターンモデルのパラメータに依存する。従って、長方形基本パターンの場合、較正パターンの生成に用いる名目寸法(W0、H0)の各ペアに対して、パラメータ空間(χ、Λ)を探索してパラメータの各組に対応する寸法変分ΔWおよびΔH、次いで対応する臨界寸法CD理論を計算することが必要である。最も多くの場合、パラメータ空間の完全なサンプリングは計算時間に関して負荷が過大である。従って、好適には、勾配降下アルゴリズム等の従来方法を用いて、当該空間を部分的且つ最適に探査する(例えば、勾配降下方法の場合、収束経路付近のパラメータだけを考慮する)。
【0055】
典型的には、平均二乗誤差等のコスト関数を最小化する。長方形基本パターンの場合、較正は次式を最小化する係数χとΛの行列を探すことを含む。
【数9】
ここで添え字iは特定の較正パターンの基本パターンを示す。
【0056】
モデルの多項式関係は物理的考慮に基づいて制約され得るため、最適化問題をより絞り込むことができる。
・上述のように、変分ΔWは、基本パターンの高さHに依存せず、Wだけに依存することが仮定され得る。Wに依存せずHだけに依存するΔHに同じ推論があてはまり得る。従って、
【数10】
・本モデルは小形基本パターンに関連する。従って、測定された臨界寸法を物理モデルにより完全に説明される基準サイズW
基準×H
基準が存在する。従って、サイズW
0≧W
基準且つH
0≧H
基準ならば変分ΔWおよびΔHがゼロであると考えられる。
・追加的な制約は、基準サイズW
基準およびH
基準での関係ΔW(W
0)およびΔH(H
0)の導関数をゼロに設定するものである。
【0057】
三角形パターンの場合、
図6Eの較正パターンを用いて完全に同等の方法を実行することが可能である。補完的パターンのペア、例えば(左下に直角を有する直角二等辺三角形、右上に直角を有する直角二等辺三角形)を共同で較正することも可能である。これを行うには、2種類の三角形に対して
図6Eの種類の2個の較正パターンを生成し、相補的三角形のペアを用いて追加的なパターンが正方形を形成する。従って、3個の基本コスト関数が得られ、最小化すればパラメータΓ
1、Γ
2の2個のベクトルが得られる全体コスト関数を得るために、任意選択的に重み付けした後で、それらの和を求める。同じ手順を適用して、他の2個の補完的三角形パターンに関連付けられたパラメータΓ
3、Γ
4のベクトルを抽出することができる。
【0058】
ここで、寸法変分として表される基本パターンモデルの場合を考える。線量変分として表されるモデルの場合(式(4))、式(5)または(6)における線量値D0を、基本パターンモデルにより与えられ、且つ決定すべきパラメータの関数として表される線量値で代替すれば充分である。
【0059】
図8Aに、本発明の一実施形態によるデータを準備するための方法を極めて一般的に示す。本方法は、コンピュータにより実行される。入力として与えられるデータは、例えば集積回路を製造するためのフォトリソグラフィマスクに対応する転写対象レイアウトを定義する。上述のように、当該「名目」レイアウトをVSB機械の制御に直接使用したならば所望の結果が得られないが、その理由は一方では近接効果のため、他方では特定の場合に小形基本パターンへの分割に関連する影響のためである。従って、ジオメトリおよび露光線量の補正を適用して、補正レイアウトを得る必要がある。当該補正レイアウトは名目レイアウトとは異なるが、VSB機械の制御に使用された場合、基板に転写された「実際の」レイアウトが、入力として与えられた名目レイアウトの良い近似(理想的に最良の近似)である。これらの補正は、物理モデルを適用して近接効果を補正することにより(従来方式)、および小形基本パターンモデル(本発明の寄与)により計算される。
【0060】
小形基本パターンモデルが線量変分として表される(式(4))場合、物理モデルの使用を考慮する必要がある線量補正が直接得られる。より厳密には、各基本パターンに対して、小形基本パターンモデルを介して実際に適用される線量はD0+ΔDであり、ΔDは幾何学的パラメータに依存する。従ってこの効果を補正するには、各基本パターンに線量D0-ΔDを割り当てれば充分である。
【0061】
寸法変分として表される小形基本パターンモデル(式(2)および(3))の場合はより複雑である。
図8B、8Cを参照して、2個の実施形態を説明する。
【0062】
図8Bの実施形態において、
- 基板に転写するレイアウトを記述したコンピュータファイルを入力データとして与える(ステップi)。
- 当該レイアウトを形成する元であるパターンを、所定の名目寸法を有する基本パターンに分割し、物理モデルを完全に従来方式で用いてジオメトリおよび線量の第1の補正を行う(ステップii)。この補正から、入力として与えた「名目」パターンの寸法とは異なる寸法の露光対象パターンの組からなる補正レイアウト、および各基本パターンに関連付けられた線量分布{D
0}が得られる。
- 次いで基本パターンモデルを適用して、実際に露光するパターンのジオメトリを決定する(ステップiii)。
- 幾何学的変更が、計算可能な影響を線量分布に及ぼす(ステップiv)。基本パターンの「実際の」線量D
1は、エネルギー保存則により初期線量D
0に関連付けられていてよい。すなわち、D
1=D
0(S
0/S
1)、ここでS
0/S
1は、初期基本パターン(近接効果を補償すべく意図された補正だけを考慮する)と、ステップiiiで補正されたものと同一パターンの面積の比に対応している。
【0063】
エネルギー保存則は、長距離の近接効果を一定に保つために自然である。具体的には、注目基本パターンから遠い線量場は、エネルギー保存則の式に従うジオメトリまたは線量の変更の場合と同じである。対照的に、PSFの空間変分に比べて小さい構造、例えば接触型構造の場合、単にエネルギー保存則を適用するだけでは満足な結果が得られない。従って、隣接する基本パターンを考慮した大域的補正を利用する必要がある。基本パターンの線量のこの大域的補正は、ステップiv)で実行されてよい。これは、ステップii)で実行するものと同様のアルゴリズムを使用してよいが、線量だけを変更してジオメトリは不変のままにする。
- 最後のステップ(v)は、「露光する」基本パターン、すなわちステップiiで決定されたパターンに線量D1を適用することを含む。形式的には、これはステップiiiで適用された幾何学的変換の逆変換を行うことを含むが、実際には目標ジオメトリが既知のため当該の変換を計算する必要がない。
【0064】
図8Cの方法は、小形基本パターンの効果を事前に補償するステップ(図のIIIを参照)を含む点で
図8Bの方法とは異なる。本方法において、
- 基板に転写するレイアウトを記述したコンピュータファイルを入力データとして与える(ステップI、
図8Bの方法のステップiに相当)。
- 転写するレイアウトを基本パターンに分割し、物理モデルを完全に従来方式で用いて、ジオメトリおよび線量の第1の補正を行う(ステップII、
図8Bの方法のステップiiに相当)。この補正から、入力として与えた「名目」パターンの寸法とは異なる寸法の基本パターンの組からなるレイアウト、および各基本パターンに関連付けられた線量分布{D
0}が得られる。しかし、これらの基本パターンは、実際にリソグラフィの実行に用いられるものではない。これらは「暫定」基本パターンとされてよい。
- 基本パターンモデルを用いて、露光するパターンを得るべく、暫定基本パターンに対する補正を計算して適用する(ステップIII)。典型的には、「暫定」基本パターンが寸法H
0を有する場合、実際に基板に転写するパターンの寸法、すなわち基本パターンモデルにより与えられる寸法がH
0となるように、寸法H
0-ΔH
0の(「転写対象である」)補正された基本パターンを用いる。実際には、補正された基本パターンの寸法H
0-ΔH
0は、VSB機械の入力レイアウトの最小格子ピッチに最も近い倍数に丸められる。
- 次に、基本パターンモデルを用いて、実際に露光するパターンのジオメトリを決定する(ステップIV、使用する基本パターンが事前補正されていなければ
図8Bの方法のステップiiiに相当)。
- この時点で、実際の線量D
1を
図8Bの方法のステップivと同様に計算する(IV)。
- 次に、当該線量D
1をステップIIIで決定したパターンに適用する(VI)。
【0065】
VSB機械において、入力データは、当該機械の場領域の境界で再分割されてよい。PSFモデルだけに基づく標準データ準備フローにおいて、分割後の当該ステップは補正に悪影響を及ぼさない。対照的に、小形基本パターンモデルの場合、基本パターンの分割後に補正誤差が生じる恐れがある。従って、この「機械分割」を考慮することが好適である。これは「事前に」補正を施すことにより行うことができ、当該補正は、
図8Bの方法のステップii)または
図8Cの方法のステップIII)に組み込まれている。
【0066】
図8Aのデータを準備するための方法(
図8B、8Cはその特定の実施形態)では、点広がり関数(PSF)により表される電子の広がりの物理モデルを考慮する必要がある。公知のように、PSFは、VSBリソグラフィにより生じたパターンに基づいて較正により決定される。しかし、これらのパターンは、特に小サイズである場合、上述の寸法変分に影響を受ける恐れがある。現時点ではこれは考慮されていない。従って、小形基本パターンの影響によりPSFの推定に誤差が生じる。次いで、これらの誤差は基本パターンモデルのパラメータの較正の精度に影響を及ぼす。結論として、
図8Aに示す種類の方法におけるジオメトリおよび線量の補正の計算に用いた2個のモデルは誤差の影響を受ける。これには、実際に基板に転写されたパターンと「名目」または「目標」パターンとの偏差を増大させる傾向がある。
【0067】
この不具合を緩和すべく、本発明は、
図9に示すようにPSFの反復的推定の実行を提案する。
【0068】
最初に、「名目的な」第1の較正レイアウト(レイアウト1)のシミュレーションを、実際に基板に転写されたレイアウトになされた測定と比較することにより、PSFを従来技術により推定する。このように得られたPSFを用いて、上で詳述したように、第2の較正レイアウト(レイアウト2)を用いて基本パターンモデルの較正を行う。このように得られた基本パターンモデルが第1の較正レイアウトに適用される。小形基本パターンの影響を考慮すべく変更された第1の較正レイアウトを用いて、PSFの新たな推定値を計算し、収束するまでこれを繰り返す。
【0069】
データが準備されたならば、本発明に従い計算されたジオメトリおよび線量を用いて、従来方式でパターンを基板に転写する。
【符号の説明】
【0070】
SE 電子線
FE 電子ビーム
O1、O2 開口
CD0 名目臨界寸法
CDm 測定臨界寸法
CD理論 理論臨界寸法
D閾値 露光閾値
MCH 水平線
MCO 線形較正パターン
MCV 垂直線
ME、ME’ 基本パターン
MEN 名目基本パターン
MET 基準
PSF 点広がり関数
L0 名目長
W0、H0 名目寸法
W基準、H基準 基準サイズ
W 幅
H 高さ
ΔW、ΔH、ΔL、ΔL0 寸法変分
VSB 可変成形ビーム
N 次数
S0/S1 面積比
χ0、λ0、χ45、λ45 係数行列
Γ1、Γ2、Γ3、Γ4 係数ベクトル
δi 成分ベクトル