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特許7190268粘着剤層付偏光フィルム及びその剥離方法、並びに画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】粘着剤層付偏光フィルム及びその剥離方法、並びに画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221208BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221208BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221208BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20221208BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221208BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20221208BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20221208BHJP
   C09J 139/06 20060101ALI20221208BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
C09J7/38
C09J7/20
C09J201/00
C09J5/00
C09J133/06
C09J139/06
C09J11/06
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2018121009
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020003562
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】森本 有
(72)【発明者】
【氏名】江原 卓
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
【審査官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094474(WO,A1)
【文献】特開2009-001673(JP,A)
【文献】特開2008-297539(JP,A)
【文献】特開2009-242792(JP,A)
【文献】特開2005-148638(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0012288(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
C09J 7/38
C09J 7/20
C09J 201/00
C09J 5/00
C09J 133/06
C09J 139/06
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層付偏光フィルムが前記粘着剤層によりガラス基板に貼り付けられている積層体から、前記粘着剤層付偏光フィルムを剥離する、粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法であって、
前記粘着剤層付偏光フィルムは、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムおよび前記片保護偏光フィルムの偏光子側に直接またはコーティング層を介して粘着剤層を有する粘着剤層付片保護偏光フィルムであり、
前記粘着剤層は、ベースポリマー、並びに、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤を含有し、
前記粘着剤層は、下記式(1)にて算出される重量変化率が1.1%以上2.0%以下であり、
重量変化率(%)={(W -W 0) /W }×100 (1)
=前記粘着剤層を23℃で2時間乾燥した後の粘着剤層の重量
=前記乾燥後の前記粘着剤層を23℃55%RHで5時間放置し、さらに60℃95%RHで5時間放置した後の粘着剤層の重量
前記粘着剤層は、ガラス基板に対する初期粘着力が2~10N/25mmであり、かつガラス基板に対する粘着力が水との接触により低下し、水との接触の状態においてその後に増大するものであり、
前記積層体を23℃の水中に浸漬して、前記粘着剤層の露出部に水を接触させ、前記粘着剤層のガラス基板に対する粘着力が初期粘着力の40%の値以下に低下した時から、最小値となった後で初期粘着力の40%を超えない値まで増大するまでの間に、前記積層体から前記粘着剤層付偏光フィルムを剥離することを特徴とする粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項2】
前記粘着剤層は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満であるアルキル(メタ)アクリレート(A)を50重量%以上、及び
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であるアルキル(メタ)アクリレート(b1)及びホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であり、かつ複素環を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)からなる群より選択される少なくとも1種の高Tgモノマー(B)を0.1~20重量%含有する請求項1に記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、窒素含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、及び水酸基含有モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であって、前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)以外の極性モノマーを含有する請求項2に記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項4】
前記窒素含有モノマーは、ラクタム環を有するビニル系モノマーである請求項3に記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項5】
前記ラクタム環を有するビニル系モノマーは、ビニルピロリドン系モノマーである請求項4に記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項6】
前記ビニルピロリドン系モノマーは、N-ビニルピロリドンである請求項5に記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記窒素含有モノマーを0.1~5重量%含有する請求項3~6のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記カルボキシル基含有モノマーを0.01~3重量%含有する請求項3~7のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記水酸基含有モノマーを0.01~1重量%含有する請求項3~8のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が90万以上である請求項2~9のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項11】
前記シランカップリング剤の含有量は、前記ベースポリマー100重量部に対して0.01~3重量部である請求項1~10のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法。
【請求項12】
偏光フィルムの片面に粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付偏光フィルムは、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムおよび前記片保護偏光フィルムの偏光子側に直接またはコーティング層を介して粘着剤層を有する粘着剤層付片保護偏光フィルムであり、
前記粘着剤層は、ベースポリマー、並びに、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤を含有し、
前記粘着剤層は、下記式(1)にて算出される重量変化率が1.1%以上2.0%以下であり、
重量変化率(%)={(W -W 0) /W }×100 (1)
=前記粘着剤層を23℃で2時間乾燥した後の粘着剤層の重量
=前記乾燥後の前記粘着剤層を23℃55%RHで5時間放置し、さらに60℃95%RHで5時間放置した後の粘着剤層の重量
前記粘着剤層は、ガラス基板に対する粘着力が水との接触により低下し、水との接触の状態においてその後に増大するものであり、
前記粘着剤層付偏光フィルムを前記粘着剤層によりガラス基板に貼り付けられている積層体を23℃の水中に浸漬して、前記粘着剤層の露出部に水を接触させる時、前記粘着剤層は、水に接触させた後のガラス基板に対する粘着力が、初期粘着力に対して60%以上低下し、最小値となった後、初期粘着力の40%以上に増大するものであることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項13】
前記粘着剤層は、ガラス基板に対する初期粘着力が2~10N/25mmである請求項12に記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項14】
前記粘着剤層は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満であるアルキル(メタ)アクリレート(A)を50重量%以上、及び
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であるアルキル(メタ)アクリレート(b1)及びホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であり、かつ複素環を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)からなる群より選択される少なくとも1種の高Tgモノマー(B)を0.1~20重量%含有する請求項12又は13に記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項15】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、窒素含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、及び水酸基含有モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であって、前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)以外の極性モノマーを含有する請求項14に記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項16】
前記窒素含有モノマーは、ラクタム環を有するビニル系モノマーである請求項15に記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項17】
前記ラクタム環を有するビニル系モノマーは、ビニルピロリドン系モノマーである請求項16に記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項18】
前記ビニルピロリドン系モノマーは、N-ビニルピロリドンである請求項17に記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項19】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記窒素含有モノマーを0.1~5重量%含有する請求項15~18のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項20】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記カルボキシル基含有モノマーを0.01~3重量%含有する請求項15~19のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項21】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記水酸基含有モノマーを0.01~1重量%含有する請求項15~20のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項22】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が90万以上である請求項14~21のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項23】
前記シランカップリング剤の含有量は、前記ベースポリマー100重量部に対して0.01~3重量部である請求項12~22のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項24】
請求項12~23のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルムを有する画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムと、当該偏光フィルムに設けられた粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムに関する。また、本発明は、ガラス基板から前記粘着剤層付偏光フィルムを剥離する方法に関する。さらに、本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、及びPDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光フィルムを配置することが必要不可欠である。偏光フィルムは、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性材料からなる偏光子の片面または両面に、保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤等により貼り合わせたものが用いられている。
【0003】
前記偏光フィルムを液晶セル等に貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、偏光フィルムを瞬時に固定できること、偏光フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、偏光フィルムの片面に予め粘着剤層として設けられている。即ち、偏光フィルムの貼着には粘着剤層付偏光フィルムが一般的に用いられる。
【0004】
前記粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層には高い耐久性が要求され、例えば、環境促進試験として通常行われる加熱及び加湿等による耐久試験において、粘着剤層に起因する剥がれや浮き等の不具合が発生しないことが求められる。
【0005】
一方、液晶パネル表面を形成するガラス基板等に粘着剤層付偏光フィルムを貼り合せる際に、貼り合わせ位置がずれたり、異物や気泡が混入して貼り合せミスが生じた場合には、前記偏光フィルムをガラス基板等から剥離する必要がある。しかし、液晶パネルの大型化や液晶セルの薄型化により、粘着剤層付偏光フィルムを剥離するのが困難になりつつあり、粘着剤層の粘着力が強い場合には、剥離するのに大きな力が必要になるため作業性が悪くなったり、液晶セルのセルギャップが変化して表示品位が低下したり、液晶セルを破損するなどの問題がある。特に、薄型偏光子を用いた粘着剤層付片保護偏光フィルムは、偏光子が薄く、さらに保護フィルムが偏光子の片面にしか設けられていないため、全体の厚みが非常に薄い。そのため、薄型偏光子を用いた粘着剤層付片保護偏光フィルムは、ガラス基板等から剥離する際に破断しやすいという問題がある。そのため、前記粘着剤層には、前記偏光フィルムをガラス基板等から剥離する際に、不具合が起こらないリワーク性も要求されている。
【0006】
前記リワーク性の問題を解決する方法として、特許文献1では、ガラス基板に粘着型光学フィルムが貼り付けられている光学フィルム付きガラス基板から粘着型光学フィルムを剥離する粘着型光学フィルムの剥離方法において、光学フィルム付きガラス基板を温度40~98℃かつ相対湿度60~99%の環境下に3分間以上曝した後に、前記環境下でガラス基板から粘着型光学フィルムを剥離することを特徴とする粘着型光学フィルムの剥離方法、が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、ガラス基板に粘着型光学フィルムが貼り付けられている光学フィルム付きガラス基板から粘着型光学フィルムを剥離する粘着型光学フィルムの剥離方法において、粘着型光学フィルムの粘着剤層は、水分散型粘着剤から形成されており、光学フィルム付きガラス基板を温度40℃以上かつ相対湿度80%以上、又は温度50℃以上かつ相対湿度70%以上の環境下に曝した後に、ガラス基板から粘着型光学フィルムを剥離することを特徴とする粘着型光学フィルムの剥離方法、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5314439号明細書
【文献】特開2009-197222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1及び2の粘着型光学フィルムの剥離方法は、加熱及び加湿によって粘着力が大きく低下する粘着剤層に対しては有効な剥離方法であるが、耐久性に優れる粘着剤層に対しては有効な剥離方法ではなく、前記リワーク性の問題を十分に解決することはできない。
【0010】
本発明は、高温及び/又は高湿環境下における耐久性に優れる粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを、破断することなく、容易にガラス基板等から剥離する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、初期のリワーク性に優れ、かつ高温及び/又は高湿環境下における耐久性に優れる粘着剤層付偏光フィルムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルムを有する画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記の粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法、及び粘着剤層付偏光フィルムにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、粘着剤層付偏光フィルムが前記粘着剤層によりガラス基板に貼り付けられている積層体から、前記粘着剤層付偏光フィルムを剥離する、粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法であって、
前記粘着剤層付偏光フィルムは、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムおよび前記片保護偏光フィルムの偏光子側に直接またはコーティング層を介して粘着剤層を有する粘着剤層付片保護偏光フィルムであり、
前記粘着剤層は、ガラス基板に対する初期粘着力が2~10N/25mmであり、かつガラス基板に対する粘着力が水との接触により低下し、その後に増大するものであり、
前記積層体の前記粘着剤層の露出部に水を接触させ、前記粘着剤層のガラス基板に対する粘着力が初期粘着力の40%の値以下に低下した時から、最小値となった後で初期粘着力の40%を超えない値まで増大するまでの間に、前記積層体から前記粘着剤層付偏光フィルムを剥離することを特徴とする粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法、に関する。
【0013】
本発明者らは、偏光フィルムの片面に設けられる粘着剤層の物性と、初期のリワーク性と、高温及び/又は高湿環境下における耐久性との関係について鋭意検討を重ねた結果、特定の粘着剤層は、ガラス基板に対する粘着力が水との接触により低下し、その後に増大する、従来の粘着剤層では見られない特異な特性を有するものであることを見出した。そして、当該特性の粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムが前記粘着剤層によりガラス基板に貼り付けられている積層体において、前記積層体の前記粘着剤層の露出部に水を接触させ、前記粘着剤層のガラス基板に対する粘着力が低下してから再び増大するまでの間に、前記積層体から前記粘着剤層付偏光フィルムを剥離することにより、前記粘着剤層付偏光フィルムが破断することなく、そしてガラス基板に損傷を与えることなく、容易に前記粘着剤層付偏光フィルムをガラス基板から剥離することができることを見出した。
【0014】
また、前記粘着剤層は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満であるアルキル(メタ)アクリレート(A)を50重量%以上、及び
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であるアルキル(メタ)アクリレート(b1)及びホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であり、かつ複素環を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)からなる群より選択される少なくとも1種の高Tgモノマー(B)を0.1~20重量%含有することが好ましい。
【0015】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、窒素含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、及び水酸基含有モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であって、前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)以外の極性モノマーを含有することが好ましい。
【0016】
前記窒素含有モノマーは、ラクタム環を有するビニル系モノマーであることが好ましい。また、前記ラクタム環を有するビニル系モノマーは、ビニルピロリドン系モノマーであることが好ましい。また、前記ビニルピロリドン系モノマーは、N-ビニルピロリドンであることが好ましい。
【0017】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記窒素含有モノマーを0.1~5重量%含有することが好ましく、前記カルボキシル基含有モノマーを0.01~3重量%含有することが好ましく、前記水酸基含有モノマーを0.01~1重量%含有することが好ましい。
【0018】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が90万以上であることが好ましい。
【0019】
前記粘着剤層は、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。前記シランカップリング剤の含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01~3重量部であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、偏光フィルムの片面に粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付偏光フィルムは、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムおよび前記片保護偏光フィルムの偏光子側に直接またはコーティング層を介して粘着剤層を有する粘着剤層付片保護偏光フィルムであり、
前記粘着剤層は、ガラス基板に対する粘着力が水との接触により低下し、その後に増大するものであることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム、に関する。
【0021】
前記粘着剤層は、ガラス基板に対する初期粘着力が2~10N/25mmであることが好ましい。
【0022】
また、前記粘着剤層は、水に接触させた後のガラス基板に対する粘着力が、初期粘着力に対して60%以上低下し、最小値となった後、初期粘着力の40%以上に増大するものであることが好ましい。
【0023】
また、前記粘着剤層は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満であるアルキル(メタ)アクリレート(A)を50重量%以上、及び
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であるアルキル(メタ)アクリレート(b1)及びホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であり、かつ複素環を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)からなる群より選択される少なくとも1種の高Tgモノマー(B)を0.1~20重量%含有することが好ましい。
【0024】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、窒素含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、及び水酸基含有モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であって、前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)以外の極性モノマーを含有することが好ましい。
【0025】
前記窒素含有モノマーは、ラクタム環を有するビニル系モノマーであることが好ましい。また、前記ラクタム環を有するビニル系モノマーは、ビニルピロリドン系モノマーであることが好ましい。また、前記ビニルピロリドン系モノマーは、N-ビニルピロリドンであることが好ましい。
【0026】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記窒素含有モノマーを0.1~5重量%含有することが好ましく、前記カルボキシル基含有モノマーを0.01~3重量%含有することが好ましく、前記水酸基含有モノマーを0.01~1重量%含有することが好ましい。
【0027】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が90万以上であることが好ましい。
【0028】
前記粘着剤層は、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。前記シランカップリング剤の含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01~3重量部であることが好ましい。
【0029】
また、本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルムを有する画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の剥離方法によれば、粘着剤層付偏光フィルムが破断することなく、そしてガラス基板に損傷を与えることなく、容易に前記粘着剤層付偏光フィルムをガラス基板から剥離することができる。本発明の剥離方法は、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有し、破断しやすい粘着剤層付片保護偏光フィルムをガラス基板から剥離する場合において特に好適である。また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、初期のリワーク性に優れるため、薄型偏光子や片保護偏光フィルムを用いた場合でも、前記偏光フィルムをガラス基板等から破断することなく容易に剥離することができる。また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、高温及び/又は高湿環境下における耐久性に優れているため、粘着剤層に起因する剥がれや浮き等の不具合が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の粘着剤層付片保護偏光フィルムの概略断面図の一例である。
図2】粘着剤層Aの粘着力の推移を示すグラフである。
図3】粘着剤層Cの粘着力の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムおよび前記片保護偏光フィルムの偏光子側に直接またはコーティング層を介して粘着剤層を有する粘着剤層付片保護偏光フィルムである。また、水と接触した際の粘着力低下によるリワーク性を確保する観点から粘着剤層付片保護偏光フィルムであることが好ましい。
【0033】
以下に前記粘着剤層付片保護偏光フィルムを、図1を参照しながら説明する。粘着剤層付片保護偏光フィルム11は、例えば、片保護偏光フィルム10および粘着剤層4を有する。片保護偏光フィルム10は、図1に示すように、偏光子1の片面にのみ保護フィルム2を有する。偏光子1と保護フィルム2とは接着剤層3(その他、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層)を介して積層されている。なお、図示していないが、片保護偏光フィルム10は、保護フィルム2に易接着層を設けたり活性化処理を施したりして、当該易接着層と接着剤層を積層することができる。また図示していないが、保護フィルム2は複数設けることができる。複数の保護フィルム2は接着剤層3(その他、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層)により積層することができる。
【0034】
また、図1に示すように、粘着剤層付片保護偏光フィルム11における粘着剤層4は、片保護偏光フィルム10の偏光子1の側に設けられる。また図示していないが、偏光子1と粘着剤層4との間にコーティング層を設けてもよい。前記コーティング層は特に制限されず、例えば、特許第6077618号明細書等に記載されている公知の透明層等を適用することができる。なお、粘着剤層付片保護偏光フィルム11の粘着剤層4にはセパレータ5を設けることができ、その反対側には、表面保護フィルム6を設けることができる。図1の粘着剤層付片保護偏光フィルム11では、セパレータ5および表面保護フィルム6がいずれも設けられている場合が示されている。
【0035】
<偏光子>
本発明において、偏光子の厚みは、薄型化および貫通クラックの発生を抑える観点から12μm以下であるのが好ましく、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下、より更に好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下である。一方、偏光子の厚みは1μm以上であることが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0036】
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を用いたものが使用される。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。
【0037】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0038】
偏光子はホウ酸を含有していることが延伸安定性や光学耐久性の点から好ましい。また、偏光子に含まれるホウ酸含有量は、貫通クラックおよびナノスリットの発生抑制、拡張抑制の観点から、偏光子全量に対して25重量%以下であるのが好ましく、さらには20重量%以下であるのが好ましく、さらには18重量%以下、さらには16重量%以下であることが好ましい。偏光子に含まれるホウ酸含有量が25重量%を超える場合には、偏光子の厚みを薄く(例えば厚み12μm以下)した場合であっても偏光子の収縮応力が高まり貫通クラックが発生しやすくなるため好ましくない。一方、偏光子の延伸安定性や光学耐久性の観点から、偏光子全量に対するホウ酸含有量は10重量%以上であることが好ましく、さらには12重量%以上であることが好ましい。
【0039】
薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
特許第5587517号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
等に記載されている薄型偏光子またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0040】
前記偏光子は、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、次式
P>-(100.929T-42.4-1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されていることが好ましい。前記条件を満足するように構成された偏光子は、一義的には、大型表示素子を用いた液晶テレビ用のディスプレイとして求められる性能を有する。具体的にはコントラスト比1000:1以上かつ最大輝度500cd/m以上である。他の用途としては、例えば有機EL表示装置の視認側に貼り合される。
【0041】
一方、前記条件を満足するように構成された偏光子は、構成する高分子(例えばポリビニルアルコール系分子)が高い配向性を示すため、薄型(例えば厚み12μm以下)であることと相俟って、偏光子の吸収軸方向に直交する方向の引張破断応力が顕著に小さくなる。その結果、例えば、偏光フィルムの製造過程において当該引張破断応力を超える機械的衝撃に晒された際に、ナノスリットが偏光子の吸収軸方向に生じる可能性が極めて高い。よって、本発明の剥離方法は、当該偏光子を採用した片保護偏光フィルム(又はそれを用いた粘着剤層付片保護偏光フィルム)に特に好適である。
【0042】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法によって得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0043】
<保護フィルム>
前記保護フィルムを構成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または上記ポリマーのブレンド物なども上記保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。
【0044】
なお、保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0045】
前記保護フィルムとしては、位相差フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルム等も用いることができる。位相差フィルムとしては、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有するものが挙げられる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが偏光子保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0046】
位相差フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムが挙げられる。上記延伸の温度、延伸倍率等は、位相差値、フィルムの材料、厚みにより適宜に設定される。
【0047】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1~500μm程度である。特に1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましく、さらには、5~150μm、特に、5~80μmの薄型の場合に特に好適である。
【0048】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0049】
<介在層>
前記保護フィルムと偏光子は接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層される。この際、介在層により両者を空気間隙なく積層することが望ましい。前記保護フィルムと偏光子は接着剤層を介して積層するのが好ましい。
【0050】
接着剤層は接着剤により形成される。接着剤の種類は特に制限されず、種々のものを用いることができる。前記接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されず、接着剤としては、水系、溶剤系、ホットメルト系、活性エネルギー線硬化型等の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。
【0051】
水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5~60重量%の固形分を含有してなる。
【0052】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線、紫外線(ラジカル硬化型、カチオン硬化型)等の活性エネルギー線により硬化が進行する接着剤であり、例えば、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、光ラジカル硬化型接着剤を用いることができる。光ラジカル硬化型の活性エネルギー線硬化型接着剤を、紫外線硬化型として用いる場合には、当該接着剤は、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含有する。
【0053】
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0054】
また、前記接着剤の塗工は、水系接着剤等を用いる場合には、最終的に形成される接着剤層の厚みが30~300nmになるように行うのが好ましい。前記接着剤層の厚さは、さらに好ましくは60~250nmである。一方、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合には、前記接着剤層の厚みは、0.1~200μmになるよう行うのが好ましい。より好ましくは、0.5~50μm、さらに好ましくは0.5~10μmである。
【0055】
なお、偏光子と保護フィルムの積層にあたって、保護フィルムと接着剤層の間には、易接着層を設けることができる。易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
【0056】
易接着層は、通常、保護フィルムに予め設けておき、当該保護フィルムの易接着層側と偏光子とを接着剤層により積層する。易接着層の形成は、易接着層の形成材を保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常調整される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01~5μm、さらに好ましくは0.02~2μm、さらに好ましくは0.05~1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
【0057】
粘着剤層は、粘着剤から形成される。粘着剤としては各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーが選択される。前記粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0058】
下塗り層(プライマー層)は、偏光子と保護フィルムとの密着性を向上させるために形成される。プライマー層を構成する材料としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂などが用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
<粘着剤層>
前記粘着剤層付片保護偏光フィルムの粘着剤層は、ガラス基板に対する粘着力が水との接触により低下し、その後に増大するものである。
【0060】
前記粘着剤層は、リワーク性及び粘着特性の観点から、ガラス基板に対する初期粘着力が2~10N/25mmであることが好ましく、より好ましくは3~6N/25mmである。なお、本発明において、初期粘着力とは、水に接触させる前のガラス基板に対する粘着力を意味する。
【0061】
また、前記粘着剤層は、リワーク性及び粘着特性の観点から、水に接触させた後のガラス基板に対する粘着力が、初期粘着力に対して60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上)低下し、最小値となった後、初期粘着力の40%以上(好ましくは45%以上)に増大するものであることが好ましい。
【0062】
また、前記粘着剤層は、リワーク性及び粘着特性の観点から、水に接触させた後のガラス基板に対する粘着力の最小値は、初期粘着力の30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。
【0063】
前記粘着剤層を形成する粘着剤の種類は特に制限されない。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、及びセルロース系粘着剤などがあげられるが、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤は、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるため、粘着剤層の形成材料として好適である。以下、前記粘着剤層の形成材料として、アクリル系粘着剤を用いた場合について説明する。
【0064】
前記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするものを用いることができる。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0065】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は1~18程度であり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等を例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0066】
前記特性を有する粘着剤層を得るために、(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満(より好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-40℃以下)であるアルキル(メタ)アクリレート(A)を50重量%以上(より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、よりさらに好ましくは80重量%以上)、及び
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上(より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは40℃以上)であるアルキル(メタ)アクリレート(b1)及びホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上(より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは40℃以上)であり、かつ複素環を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)からなる群より選択される少なくとも1種の高Tgモノマー(B)を0.1~20重量%(より好ましくは1~15重量%、さらに好ましくは2.5~10重量%、よりさらに好ましくは4重量%以上10重量%未満)含有することが好ましい。なお、前記アルキル(メタ)アクリレート(b1)と前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)を併用する場合は、合計での重量%である。
【0067】
前記アルキル(メタ)アクリレート(A)としては、例えば、エチルアクリレート(Tg:-24℃)、n-ブチルアクリレート(Tg:-50℃)、n-ペンチルメタクリレート(Tg:-5℃)、n-ヘキシルアクリレート(Tg:-57℃)、n-ヘキシルメタクリレート(Tg:-5℃)、n-オクチルアクリレート(Tg:-65℃)、n-オクチルメタクリレート(Tg:-20℃)、n-ノニルアクリレート(Tg:-58℃)、n-ラウリルアクリレート(Tg:-3℃)、n-ラウリルメタクリレート(Tg:-65℃)、n-テトラデシルメタクリレート(Tg:-72℃)、i-プロピルアクリレート(Tg:-3℃)、i-ブチルアクリレート(Tg:-40℃)、i-オクチルアクリレート(Tg:-58℃)、i-オクチルメタクリレート(Tg:-45℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(Tg:-70℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(Tg:-10℃)等が挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。これらのうち、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-ヘキシルアクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートから選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、n-ブチルアクリレートを用いることがより好ましい。なお、前記各括弧中のTg(ガラス転移温度)は、各モノマーを重合して得られるホモポリマーのTgである。以下の記載も同様である。
【0068】
前記アルキル(メタ)アクリレート(b1)としては、例えば、メチルアクリレート(Tg:8℃)、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、エチルメタクリレート(Tg:65℃)、n-プロピルアクリレート(Tg:3℃)、n-プロピルメタクリレート(Tg:35℃)、n-ペンチルアクリレート(Tg:22℃)、n-テトラデシルアクリレート(Tg:24℃)、n-ヘキサデシルアクリレート(Tg:35℃)、n-ヘキサデシルメタクリレート(Tg:15℃)、n-ステアリルアクリレート(Tg:30℃)、及びn-ステアリルメタクリレート(Tg:38℃)などの直鎖アルキル(メタ)アクリレート;t-ブチルアクリレート(Tg:43℃)、t-ブチルメタクリレート(Tg:48℃)、i-プロピルメタクリレート(Tg:81℃)、及びi-ブチルメタクリレート(Tg:48℃)などの分岐鎖アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシルアクリレート(Tg:19℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg:65℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:94℃)、及びイソボルニルメタクリレート(Tg:180℃)などの環状アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。これらのうち、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、及びイソボルニルメタクリレートから選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びイソボルニルアクリレートから選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0069】
前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)は、複素環を有する。複素環は特に制限されないが、例えば、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、及びモルホリン環などの複素脂肪族環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、及びピラジン環などの複素芳香族環などが挙げられる。前記複素環は、(メタ)アクリロイル基に直接結合していてもよく、接続基を介して(メタ)アクリロイル基に結合していてもよい。これらのうち、複素脂肪族環が好ましく、より好ましくはモルホリン環である。前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)としては、例えば、N-アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)などが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。これらのうち、特にN-アクリロイルモルホリンを用いることが好ましい。
【0070】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性などの改善を目的に、1種類以上の各種モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマー(ただし、前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)を除く)の具体例としては、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素含有モノマー、及び芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
【0071】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0072】
水酸基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートなどが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0073】
窒素含有モノマーとしては、例えば、ラクタム環を有するビニル系モノマー(例えば、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドンなどのビニルピロリドン系モノマー、及びβ-ラクタム環、δ-ラクタム環、及びε-ラクタム環などのラクタム環を有するビニルラクタム系モノマーなど);マレイミド、N-シクロへキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル、3-(3-ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ(メタ)アクリレート系モノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類などが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0074】
芳香族基含有モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0075】
上記モノマーの他に、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0076】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2-メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0077】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力を向上させて、粘着剤層の耐久性を向上させる観点から、前記カルボキシル基含有モノマー、前記水酸基含有モノマー、及び前記窒素含有モノマーから選択される少なくとも1種の極性モノマー(ただし、前記(メタ)アクリロイル基含有モノマー(b2)を除く)を共重合により前記(メタ)アクリル系ポリマーに導入することが好ましく、より好ましくは前記カルボキシル基含有モノマー、前記水酸基含有モノマー、及び前記窒素含有モノマーを共重合により前記(メタ)アクリル系ポリマーに導入する。前記カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸が好ましい。前記水酸基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートから選択される1種以上が好ましい。前記窒素含有モノマーは、ラクタム環を有するビニル系モノマーであることが好ましく、より好ましくは前記ビニルピロリドン系モノマーであり、さらに好ましくはN-ビニルピロリドンである。前記窒素含有モノマーを共重合により前記(メタ)アクリル系ポリマーに導入することにより、高温及び/又は高湿時における粘着剤層の耐久性(耐剥がれ性)を向上させることができる。
【0078】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記カルボキシル基含有モノマーを0.01~3重量%含有することが好ましく、より好ましくは0.05~1重量%であり、さらに好ましくは0.1~0.5重量%である。
【0079】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記水酸基含有モノマーを0.01~1重量%含有することが好ましく、より好ましくは0.05~1重量%であり、さらに好ましくは0.1~0.5重量%である。
【0080】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、前記窒素含有モノマーを0.1~5重量%含有することが好ましく、より好ましくは0.5~3重量%であり、さらに好ましくは1.5~3重量%である。
【0081】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、粘着特性、耐候性、及び耐熱性等の観点から、通常、重量平均分子量は80万以上であり、好ましくは90万以上であり、より好ましくは100万以上である。
【0082】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは公知の手法により製造でき、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50~80℃程度、反応時間は1~8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。
【0083】
前記粘着剤には架橋剤を配合することができる。架橋剤により、密着性や耐久性を向上でき、また高温での信頼性や粘着剤自体の形状の保持を図ることができる。架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、過酸化物系、金属キレート系、オキサゾリン系などを適宜に使用可能である。これら架橋剤は1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート化合物が用いられる。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したアダクト系イソシアネート化合物;イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどが挙げられる。
【0085】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、ベースポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤を0.01~2重量部含有してなることが好ましく、0.02~2重量部含有してなることがより好ましく、0.05~1.5重量部含有してなることがさらに好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0086】
過酸化物系架橋剤としては、各種過酸化物が用いられる。過酸化物としては、ジ(2‐エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ‐sec‐ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐へキシルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ‐n‐オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ2‐エチルヘキサノエート、ジ(4‐メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、などが挙げられる。これらのなかでも、特に架橋反応効率に優れる、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドが好ましく用いられる。
【0087】
前記過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、ベースポリマー100重量部に対し、前記過酸化物0.01~2重量部であり、0.04~1.5重量部含有してなることが好ましく、0.05~1重量部含有してなることがより好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
【0088】
前記粘着剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、任意の適切な官能基を有するものを用いることができる。官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、酸無水物基、メルカプト基、(メタ)アクリロキシ基、アセトアセチル基、イソシアネート基、スチリル基、及びポリスルフィド基等が挙げられる。具体的には、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物基含有シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のポリスルフィド基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。これらのうち、前記特性を有する粘着剤層を形成するために、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましく、より好ましくはエポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、又は酸無水物基を有するシランカップリング剤である。
【0089】
また、前記特性を有する粘着剤層を形成するために、オリゴマー型のシランカップリング剤を用いてもよい。ここで、オリゴマー型とは、モノマーの2量体以上100量体未満程度の重合体を指すものであり、オリゴマー型シランカップリング剤の重量平均分子量としては、300~30000程度が好ましい。
【0090】
オリゴマー型のシランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、及びイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられ、好ましくはメルカプト基含有シランカップリング剤、及びイソシアネート基含有シランカップリング剤である。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0091】
前記エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ当量は、高温及び/又は高湿環境下における粘着剤層の耐久性の観点から、250~600g/molであることが好ましく、より好ましくは250~500g/molであり、さらに好ましくは280~400g/molである。
【0092】
前記エポキシ基含有シランカップリング剤は、分子内に2個以上のアルコキシシリル基を有することが好ましい。また、前記エポキシ基含有シランカップリング剤のアルコキシ基の量は、シランカップリング剤中、10~60重量%であることが好ましく、20~50重量%であることがより好ましく、20~40重量%であることがさらに好ましい。
【0093】
分子内に2個以上のアルコキシシリル基を有するオリゴマー型のエポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業(株)製のX-12-981S、X-12-1231、X-41-1059A、X-41-1056等が挙げられる。
【0094】
前記メルカプト基含有シランカップリング剤のメルカプト当量は、高温及び/又は高湿環境下における粘着剤層の耐久性の観点から、1000g/mol以下であることが好ましく、800g/mol以下であることがより好ましく、700g/mol以下であることがより好ましく、500g/mol以下であることがより好ましい。また、メルカプト当量の下限値は特に限定されないが、200g/mol以上であることが好ましい。
【0095】
前記メルカプト基含有シランカップリング剤は、分子内に2個以上のアルコキシシリル基を有することが好ましい。また、前記メルカプト基含有シランカップリング剤のアルコキシ基の量は、シランカップリング剤中、10~60重量%であることが好ましく、20~50重量%であることがより好ましく、20~40重量%であることがさらに好ましい。
【0096】
分子内に2個以上のアルコキシシリル基を有するオリゴマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業(株)製のX-41-1805、X-41-1810、X-41-1818、X-12-1156等が挙げられる。
【0097】
前記イソシアネート基含有シランカップリング剤のイソシアネート当量は、高温及び/又は高湿環境下における粘着剤層の耐久性の観点から、250~600g/molであることが好ましく、より好ましくは250~500g/molであり、さらに好ましくは280~400g/molである。
【0098】
前記イソシアネート基含有シランカップリング剤は、分子内に2個以上のアルコキシシリル基を有することが好ましい。また、前記イソシアネート基含有シランカップリング剤のアルコキシ基の量は、シランカップリング剤中、10~60重量%であることが好ましく、20~50重量%であることがより好ましく、20~40重量%であることがさらに好ましい。
【0099】
分子内に2個以上のアルコキシシリル基を有するオリゴマー型のイソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業(株)製のX-40-9318、X-12-1159L等が挙げられる。
【0100】
シランカップリング剤全体の含有量は、耐久性に優れる粘着剤層を得る観点から、ベースポリマー100重量部に対して0.01~3重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~3重量部であり、さらに好ましくは0.2~2重量部である。
【0101】
また、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤(オリゴマー型のシランカップリング剤を含む)の含有量は、前記特性を有する粘着剤層を得る観点から、ベースポリマー100重量部に対して0.01~3重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~3重量部であり、さらに好ましくは0.2~2重量部である。
【0102】
さらに、前記粘着剤は、リワーク性を向上させる観点から、リワーク向上剤を含有することが好ましい。前記リワーク向上剤は、極性基を有し、ガラス界面に相互作用しやすく、ガラス界面に偏析しやすい化学物質である。前記リワーク向上剤としては、例えば、EO及びPOなどのアルキレンオキシ基を有するジオール、パーフルオロアルキル基を有するオリゴマー、及び反応性シリル基を有するポリエーテル化合物などが挙げられる。前記ポリエーテル化合物は、例えば、特開2010-275522号公報に開示されているものを用いることができる。
【0103】
前記反応性シリル基を有するポリエーテル化合物としては、例えば、カネカ社製のMSポリマーS203、S303、S810;SILYL EST250、EST280;SAT10、SAT200、SAT220、SAT350、SAT400、旭硝子社製のEXCESTAR S2410、S2420又はS3430等が挙げられる。
【0104】
リワーク向上剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、さらに好ましくは0.1重量部以上であり、また、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下、よりさらに好ましくは1重量部以下である。リワーク向上剤の含有量が0.001重量部未満の場合には、粘着剤層のリワーク性が向上しにくくなり、10重量部を超えると粘着剤層の粘着特性が低下する傾向にある。
【0105】
さらに、前記粘着剤は、帯電防止剤を含有することが好ましい。液晶表示装置の製造時、粘着剤層付片保護偏光フィルムを液晶パネルに貼り付ける際には、粘着剤層付片保護偏光フィルムの粘着剤層から離型フィルムを剥離するが、当該離型フィルムの剥離により静電気が発生する。また、液晶パネルに粘着剤層付片保護偏光フィルムを貼り合せる際に、貼り合せミスが生じた場合には、前記偏光フィルムを剥離する必要があるが、当該偏光フィルムの剥離により静電気が発生する。発生した静電気は、液晶表示装置内部の液晶の配向に影響を与え、不良を招くようになる。また、液晶表示装置の使用時に静電気による表示ムラが生じる場合がある。粘着剤に帯電防止剤を添加することにより、粘着剤層付片保護偏光フィルムの粘着剤層に帯電防止機能を付与し、これらの不具合を防止することができる。
【0106】
前記帯電防止剤は特に制限されず、例えば、オニウム-アニオン塩、及びアルカリ金属塩などのイオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物を添加した場合には、粘着剤層の表面にイオン性化合物がブリードアウトすることで効率的に帯電防止機能が発現すると考えられる。一方、偏光子にイオン性化合物が接触することで、偏光度などの光学特性が低下する場合がある。前記光学特性の低下を抑制する観点から、特にアルカリ金属塩を用いることが好ましい。
【0107】
アルカリ金属塩は、アルカリ金属の有機塩又は無機塩を用いることができる。アルカリ金属塩は1種を単独でまたは複数を併用することができる。
【0108】
アルカリ金属塩のカチオン部を構成するアルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムの各イオンが挙げられる。これらアルカリ金属イオンのなかでもリチウムイオンが好ましい。
【0109】
アルカリ金属塩のアニオン部は有機物で構成されていてもよく、無機物で構成されていてもよい。有機塩を構成するアニオン部としては、例えば、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(CFSO、(CFSO、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)NS(CFSO 、PF 、CO 2-、などが用いられる。特に、フッ素原子を含むアニオン部は、イオン解離性の良いイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。無機塩を構成するアニオン部としては、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、AsF 、SbF 、NbF 、TaF6-、(CN)、などが用いられる。アニオン部としては、(CFSO、(CSO等の(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドが好ましく、特に(CFSO、で表わされる(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0110】
アルカリ金属の有機塩としては、具体的には、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON、Li(CFSOC、KOS(CFSOK、LiOS(CFSOK等が挙げられ、これらのうちLiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON、Li(CFSOC等が好ましく、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON等のフッ素含有リチウムイミド塩がより好ましく、特に(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩が好ましい。
【0111】
また、アルカリ金属の無機塩としては、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。
【0112】
粘着剤中のアルカリ金属塩の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.001~5重量部が好ましい。前記アルカリ金属塩が0.001重量部未満では、帯電防止性能の向上効果が十分ではない場合がある。前記アルカリ金属塩の含有量は、0.01重量部以上が好ましく、さらには0.1重量部以上であるのが好ましい。一方、前記アルカリ金属塩の含有量が5重量部より多いと、耐久性が十分ではなくなる場合がある。前記アルカリ金属塩の含有量は、3重量部以下が好ましい。
【0113】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に、片保護偏光フィルムの偏光子側(図1の態様では偏光子)に転写する方法、または前記粘着剤を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を前記偏光子側に形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0114】
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、優れた粘着特性及びリワーク性を両立する観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは23μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、また、好ましくは10μm以上、より好ましくは12μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。
【0115】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0116】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0117】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0118】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0119】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0120】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0121】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは5~100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0122】
前記粘着剤層は、下記式(1)にて算出される重量変化率が1.1%以上であることが好ましく、より好ましくは1.2%以上であり、さらに好ましくは1.25%以上である。前記重量変化率が1.1%未満の場合には、水に接触時の粘着力低下の効果が低く、リワーク性が悪くなる。また、リワーク性の観点から、前記重量変化率は2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.8%以下である。なお、極性基が多いと粘着力の絶対値が高くなり、リワークが困難になる。
重量変化率(%)={(W-W)/W}×100 (1)
=前記粘着剤層を23℃で2時間乾燥した後の粘着剤層の重量
=前記乾燥後の前記粘着剤層を23℃55%RHで5時間放置し、さらに60℃95%RHで5時間放置した後の粘着剤層の重量
【0123】
<表面保護フィルム>
粘着剤層付片保護偏光フィルムには、表面保護フィルムを設けることができる。表面保護フィルムは、通常、基材フィルムおよび粘着剤層を有し、当該粘着剤層を介して偏光子を保護する。
【0124】
表面保護フィルムの基材フィルムとしては、検査性や管理性などの観点から、等方性を有する又は等方性に近いフィルム材料が選択される。そのフィルム材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーがあげられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。基材フィルムは、1種または2種以上のフィルム材料のラミネート体として用いることもでき、また前記フィルムの延伸物を用いることもできる。基材フィルムの厚さは、一般的には、500μm以下、好ましくは10~200μmである。
【0125】
表面保護フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1~100μm程度、好ましくは5~50μmである。
【0126】
なお、表面保護フィルムには、基材フィルムにおける粘着剤層を設けた面の反対面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。
【0127】
<他の光学層>
粘着剤層付片保護偏光フィルムは、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4などの波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置などの形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、粘着剤層付片保護偏光フィルムに更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光フィルムまたは半透過型偏光フィルム、粘着剤層付片保護偏光フィルムに更に位相差板が積層されてなる楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルム、粘着剤層付片保護偏光フィルムに更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光フィルム、あるいは粘着剤層付片保護偏光フィルムに更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光フィルムが好ましい。
【0128】
粘着剤層付片保護偏光フィルムに上記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置などの製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業などに優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層などの適宜な接着手段を用いうる。上記の粘着剤層付片保護偏光フィルムやその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0129】
粘着剤層付片保護偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶表示装置、有機EL表示装置などの各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着剤層付片保護偏光フィルムまたは光学フィルム、及び必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による、粘着剤層付片保護偏光フィルムまたは光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばIPS型、VA型などの任意なタイプのものを用いうるが、特にIPS型に好適である。
【0130】
液晶セルの片側又は両側に粘着剤層付片保護偏光フィルムまたは光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、粘着剤層付片保護偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に粘着剤層付片保護偏光フィルムまたは光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0131】
<粘着剤層付偏光フィルムの剥離方法>
本発明の剥離方法は、前記粘着剤層付片保護偏光フィルムが前記粘着剤層によりガラス基板に貼り付けられている積層体から、前記粘着剤層付片保護偏光フィルムを剥離する方法であって、
前記積層体の前記粘着剤層の露出部に水を接触させ、前記粘着剤層のガラス基板に対する粘着力が初期粘着力の40%(好ましくは30%、より好ましくは20%)の値以下に低下した時から、最小値となった後で初期粘着力の40%(好ましくは30%、より好ましくは20%)を超えない値まで増大するまでの間に、前記積層体から前記粘着剤層付偏光フィルムを剥離することを特徴とする。
【0132】
前記粘着力が初期粘着力の40%の値以下に低下する前に前記積層体から前記粘着剤層付片保護偏光フィルムを剥離すると、前記粘着剤層のガラス基板に対する粘着力が十分に低下していないため、粘着剤層付片保護偏光フィルムが破断したり、ガラス基板が損傷する恐れがある。また、前記粘着力が初期粘着力の40%を超えた値に増大した後に前記積層体から前記粘着剤層付片保護偏光フィルムを剥離すると、前記粘着剤層のガラス基板に対する粘着力が再び増大しているため、粘着剤層付片保護偏光フィルムが破断したり、ガラス基板が損傷する恐れがある。
【0133】
前記積層体の前記粘着剤層の露出部に水を接触させる方法は、前記粘着剤層の露出部に液体の水が接触していればどのような方法でもよく、例えば、前記積層体を水中に浸漬する方法、前記粘着剤層の露出部に水を塗布する方法、及び前記粘着剤層の露出部に水を含んだスポンジやウエス等を接触させる方法が挙げられる。
【0134】
接触させる水の温度は特に制限されないが、通常15~35℃であり、好ましくは20~30℃、より好ましくは22~28℃である。
【0135】
前記積層体から前記粘着剤層付片保護偏光フィルムを剥離する工程は、前記粘着剤層の露出部に水を接触させた状態で行ってもよく、水を除去した後に行ってもよい。
【実施例
【0136】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0137】
<片保護偏光フィルムの作製>
(偏光子の作製)
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.0重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
以上により、厚み5μm、ホウ酸含有量16%の偏光子を含む光学フィルム積層体を得た。偏光子中のホウ酸含有量は下記方法により測定した。
【0138】
得られた偏光子について、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)(Perkin Elmer社製、商品名「SPECTRUM2000」)を用いて、偏光を測定光とする全反射減衰分光(ATR)測定によりホウ酸ピーク(665cm-1)の強度および参照ピーク(2941cm-1)の強度を測定した。得られたホウ酸ピーク強度および参照ピーク強度からホウ酸量指数を下記式により算出し、さらに、算出したホウ酸量指数から下記式によりホウ酸含有量(重量%)を決定した。
(ホウ酸量指数)=(ホウ酸ピーク665cm-1の強度)/(参照ピーク2941cm-1の強度)
(ホウ酸含有量(重量%))=(ホウ酸量指数)×5.54+4.1
【0139】
(透明保護フィルムの作製)
透明保護フィルム:厚み40μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂フィルムの易接着処理面にコロナ処理を施して用いた。
【0140】
(透明保護フィルムに適用する接着剤の作製)
N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
【0141】
(片保護偏光フィルムの作製)
上記光学フィルム積層体の偏光子の表面に、上記紫外線硬化型接着剤を硬化後の接着剤層の厚みが0.5μmとなるように塗布しながら、上記透明保護フィルムを貼合せたのち、活性エネルギー線として、紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射は、ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm(波長380~440nm)を使用し、紫外線の照度は、Solatell社製のSola-Checkシステムを使用して測定した。次いで、非晶性PET基材を剥離し、薄型偏光子を用いた片保護偏光フィルムを作製した。得られた片保護偏光フィルムを用いて、下記方法により偏光子の単体透過率Tおよび偏光度Pを測定したところ、偏光子の単体透過率Tは42.8%、偏光子の偏光度Pは99.99%であった。
【0142】
得られた片保護偏光フィルムの偏光子の単体透過率Tおよび偏光度Pを、積分球付き分光透過率測定器(村上色彩技術研究所のDot-3c)を用いて測定した。
なお、偏光度Pは、2枚の同じ片保護偏光フィルムを両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
各透過率は、グランテラープリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補整したY値で示したものである。
【0143】
<粘着剤層の形成>
(アクリル系粘着剤Aの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n-ブチルアクリレート89.78部、メチルメタクリレート8部、N-ビニルピロリドン1.5部、アクリル酸0.2部、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート0.48部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.15部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度20%に調整した、重量平均分子量130万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0144】
前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8220GPC)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りである。
サンプル濃度:0.2質量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)
リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(1本)
検出器:示差屈折計(RI)
重量平均分子量はポリスチレン換算値にて求めた。
【0145】
調製したアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成社製)1.5部、エチルメチルピロリジニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業製)1部、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名「タケネートD160N」)0.25部、過酸化物系架橋剤(日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT40SV」)0.25部、リワーク向上剤(カネカ社製、商品名「SAT10」)0.1部、酸化防止剤(BASFジャパン社製、商品名「Irganox 1010」)0.3部、アセトアセチル基含有シランカップリング剤(綜研化学社製、商品名「A-100」)0.2部、及びオリゴマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「X-41-1810」)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤Aを調製した。
【0146】
(アクリル系粘着剤B及びCの調製)
上記アクリル系粘着剤Aの調製において、モノマーの組成を表1に示すように変え、重合条件を調整し、また添加剤の種類及び配合量を表1に示すように変えた以外は同様の方法でアクリル系ポリマーの溶液を調製し、アクリル系粘着剤B及びCを調製した。
【0147】
(粘着剤層A~Cの形成)
次いで、調製したアクリル系粘着剤A、B又はCを、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータでそれぞれ均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで1分間乾燥し、各セパレータフィルムの表面に粘着剤層A、B又はCをそれぞれ形成した。
【0148】
【表1】
【0149】
表1中の化合物は以下の通りである。
BA:n-ブチルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AA:アクリル酸
NVP:N-ビニルピロリドン
MMA:メチルメタクリレート
ナイパーBMT40SV:ジベンゾイルパーオキサイド
D160N:イソシアネート系架橋剤(三井化学社製)
D110N:イソシアネート系架橋剤(三井化学社製)
SAT10:リワーク向上剤(カネカ社製)
LiTFSi:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成社製)
EMPTFSi:エチルメチルピロリジニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業製)
Irganox 1010:酸化防止剤(BASFジャパン社製)
A-100:アセトアセチル基含有シランカップリング剤(綜研化学社製)
X-41-1810:オリゴマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製)
【0150】
<重量変化率の測定>
作製した粘着剤層A~C50mgをそれぞれサンプルカゴに入れ、装置秤にセットした後、水分吸脱着測定装置(Hiden社製、IGA-Sorp)を用いて水分吸脱着測定を行った。測定条件は下記の通りである。測定で得られたW及びWを下記式(1)に代入して重量変化率を算出した。
乾燥(粘着剤層中の水分を除去する前処理):(100℃、Dry、1時間)
プログラム:(23℃、Dry、2時間)(W)→(23℃、55%RH、5時間)→(60℃、95%RH、5時間)(W)→(23℃、55%RH、5時間)
測定モード:シーケンス

重量変化率(%)={(W-W)/W}×100 (1)
=前記粘着剤層を23℃で2時間乾燥した後の粘着剤層の重量
=前記乾燥後の前記粘着剤層を23℃55%RHで5時間放置し、さらに60℃95%RHで5時間放置した後の粘着剤層の重量
【0151】
<粘着力の測定>
作製した片保護偏光フィルムの偏光子側に、作製した粘着剤層A~Cをそれぞれ貼り合わせて、粘着剤層付片保護偏光フィルムA~Cを作製して、サンプルを得た。
前記サンプルを無アルカリガラス板表面にラミネーターを用いて貼り付け、次いで50℃、5atmの条件で15分間オートクレーブ処理して完全に密着させた。その後、リワーク装置を用いて、剥離温度23℃、剥離速度300mm/min及び剥離角度90度の条件で前記偏光フィルムを無アルカリガラス板表面から剥離した時の初期粘着力(N/25mm)を測定した。
また、前記サンプルを無アルカリガラス板表面にラミネーターを用いて貼り付け、次いで50℃、5atmの条件で15分間オートクレーブ処理して完全に密着させて積層体を得た。そして、得られた複数の積層体を23℃の水中に浸漬し、2時間後に前記積層体1枚を水中から取り出し、剥離温度23℃、剥離速度300mm/min及び剥離角度90度の条件で前記偏光フィルムを無アルカリガラス板表面から剥離した時の粘着力(N/25mm)を測定した。同様の測定を浸漬5時間後、24時間後に行った。浸漬2時間後、浸漬5時間後、及び浸漬24時間後の粘着力を表2に示す。図2及び3は、粘着剤層A及びCの粘着力の推移を示すグラフである。粘着剤層A及びCの粘着力は、水との接触によって時間の経過とともに低下し、その後に増大していることがわかる。
【0152】
<耐久性の評価>
作製した粘着剤層付片保護偏光フィルムA~C(37インチ)のセパレータフィルムを剥がし、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,EG-XG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaの条件で15分間のオートクレーブ処理を行って、前記偏光フィルムを完全に無アクリルガラスに密着させた。次いで、これを、80℃の加熱オーブン(加熱)および60℃/90%RHの恒温恒湿機(加湿)の条件下にそれぞれ投入して、500時間後の偏光板の剥がれの有無を、下記基準で評価した。
◎:全く剥がれが認められなかった。
○:目視では確認できない程度の剥がれが認められた。
△:目視で確認できる小さな剥がれが認められた。
×:明らかな剥がれが認められた。
【0153】
【表2】
【0154】
実施例1~2、比較例1~10
作製した粘着剤層付片保護偏光フィルムA~Cをそれぞれ無アルカリガラス板表面にラミネーターを用いて貼り付け、次いで50℃、5atmの条件で15分間オートクレーブ処理して完全に密着させて積層体を得て、得られた積層体を23℃の水中に浸漬した。予め測定した表2の粘着力の結果を基に剥離タイミングを調整した。表3に記載の浸漬時間後に前記積層体を水中から取り出し、リワーク装置を用いて、剥離温度23℃、剥離速度300mm/min及び剥離角度90度の条件で前記偏光フィルムを無アルカリガラス板表面から剥離した時の粘着力(N/25mm)を測定した。また、下記基準でリワーク性の評価を行った。結果を表3に示す。
◎:偏光フィルムの破断、ガラスの破損がなく、容易に偏光フィルムを剥離できる。
〇:偏光フィルムの破断、ガラスの破損がなく、偏光フィルムを剥離できる。
△:偏光フィルムの破断、ガラスの破損が起こる場合があるが、偏光フィルムを剥離できる。
×:偏光フィルムの破断、ガラスの破損が起こり、偏光フィルムを剥離できない。
【0155】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、これ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置などの画像表示装置に用いられる。
【符号の説明】
【0157】
1 偏光子
2 保護フィルム
3 接着剤層等
4 粘着剤層
5 セパレータ
6 表面保護フィルム
10 片保護偏光フィルム
11 粘着剤層付片保護偏光フィルム
図1
図2
図3