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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】シート貼付方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221208BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/68 N
H01L21/78 Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018122437
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020004828
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】杉下 芳昭
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222308(JP,A)
【文献】特表2013-543262(JP,A)
【文献】特開2012-033636(JP,A)
【文献】特開平06-184504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子が添加されている第1接着シートを被着体の第1面に貼付するシート貼付工程と、
前記被着体の第2面が表出した状態で前記第1接着シートが貼付された前記被着体を支持するウエハ支持工程と、
第2接着シートを支持し、当該第2接着シートの接着面を前記ウエハ支持工程で支持した前記被着体の前記第2面に対向させて配置する第2接着シート支持工程と、
前記被着体の前記第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付する押圧工程を実施し、
前記押圧工程において、前記第1接着シートに前記エネルギーを付与して前記膨張性粒子を膨張させることで、前記第1接着シートに貼付されている前記被着体を変位させて当該被着体の第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付するとともに、前記第1接着シートと前記被着体との接着面積を低減させて当該第1接着シートの前記被着体に対する接着力を低減させることを特徴とするシート貼付方法。
【請求項2】
所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子が添加されている第1接着シートが予め第1面に貼付されている被着体を用意する工程と、
前記被着体の第2面が表出した状態で前記第1接着シートが貼付された前記被着体を支持するウエハ支持工程と、
第2接着シートを支持し、当該第2接着シートの接着面を前記ウエハ支持工程で支持した前記被着体の前記第2面に対向させて配置する第2接着シート支持工程と、
前記被着体の前記第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付する押圧工程とを実施し、
前記押圧工程において、前記第1接着シートに前記エネルギーを付与して前記膨張性粒子を膨張させることで、前記第1接着シートに貼付されている前記被着体を変位させて当該被着体の第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付するとともに、前記第1接着シートと前記被着体との接着面積を低減させて当該第1接着シートの前記被着体に対する接着力を低減させることを特徴とするシート貼付方法。
【請求項3】
前記押圧工程の前段にて、前記被着体に改質部を形成し、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域を前記被着体に形成する改質部形成工程を実施し、
前記押圧工程において、前記第1接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された第1接着シート部分に添加されている前記膨張性粒子を膨張させることで、前記第1接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させ、前記改質部を起点として亀裂を形成して個片化し、前記被着体を個片体とした状態で前記第2接着シートに押圧して貼付するとともに、前記第1接着シート部分と前記個片体との接着面積を低減させて当該第1接着シート部分の前記個片体に対する接着力を低減させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート貼付方法。
【請求項4】
改質部が形成され、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域が予め形成された被着体を用意する工程を実施し、
前記押圧工程において、前記第1接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された第1接着シート部分に添加されている前記膨張性粒子を膨張させることで、前記第1接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させ、前記改質部を起点として亀裂を形成して個片化し、前記被着体を個片体とした状態で前記第2接着シートに押圧して貼付するとともに、前記第1接着シート部分と前記個片体との接着面積を低減させて当該第1接着シート部分の前記個片体に対する接着力を低減させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート貼付方法。
【請求項5】
所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子が添加されている第1接着シートが予め第1面に貼付され、且つ、改質部が形成され、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域が予め形成された被着体を用意する工程を実施し、
前記被着体の第2面が表出した状態で前記第1接着シートが貼付された前記被着体を支持するウエハ支持工程と、
第2接着シートを支持し、当該第2接着シートの接着面を前記ウエハ支持工程で支持した前記被着体の前記第2面に対向させて配置する第2接着シート支持工程と、
前記被着体の前記第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付する押圧工程を実施し、
前記押圧工程において、前記第1接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された第1接着シート部分に添加されている前記膨張性粒子を膨張させることで、前記第1接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させ、前記改質部を起点として亀裂を形成して個片化し、前記被着体を個片体とした状態で前記第2接着シートに押圧して貼付するとともに、前記第1接着シート部分と前記個片体との接着面積を低減させて当該第1接着シート部分の前記個片体に対する接着力を低減させることを特徴とするシート貼付方法。
【請求項6】
前記改質部は、第1方向に沿う第1改質部と、当該第1方向に交差する第2方向に沿う第2改質部とを含み、
前記押圧工程では、前記エネルギーを付与した位置に、当該エネルギーの付与領域が所定の方向に延びるライン状付与領域を形成し、当該ライン状付与領域を前記第1方向と平行となるように移動させる第1押圧工程と、当該ライン状付与領域を前記第2方向と平行となるように移動させる第2押圧工程とを実施することを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のシート貼付方法。
【請求項7】
前記膨張性粒子は、所定の第1エネルギーで膨張する第1膨張性粒子と、当該第1エネルギーと異なる所定の第2エネルギーで膨張する第2膨張性粒子とを有し、
前記押圧工程では、前記第1接着シートに前記第1エネルギーを付与する第1エネルギー付与工程と、前記第1接着シートに前記第2エネルギーを付与する第2エネルギー付与工程とを実施することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のシート貼付方法。
【請求項8】
前記押圧工程で変位される前の被着体部分が変位することを抑制する変位抑制工程を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のシート貼付方法。
【請求項9】
前記第2接着シートに貼付された前記被着体から前記第1接着シートを剥離するシート剥離工程を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のシート貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1面に第1接着シートが貼付された被着体の第2面に第2接着シートを貼付するシート貼付方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-222308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の転写方法(シート貼付方法)では、第1接着シートS1(第1接着シート)としてウェハW(被着体)との接着力が強力なものが採用された場合、第1面W1(第1面)に第1接着シートが貼付された被着体の第2面W2(第2面)に第2接着シートS2(第2接着シート)を貼付し、当該被着体から第1接着シートを剥離する所謂転写工程を行う際、第1接着シートと被着体との接着力を低減させる接着力低減工程を独立して行わなければならない。従って、転写工程を含む被着体の処理工程が長期化するという不都合を発生する。
【0005】
本発明の目的は、転写工程を含む被着体の処理工程が長期化することを防止することができるシート貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、押圧工程において、被着体を第2接着シートの接着面に押圧して貼付するとともに、第1接着シートの被着体に対する接着力を低減させるので、第1接着シートと被着体との接着力を低減させる接着力低減工程を独立して行わなくてもよく、転写工程を含む被着体の処理工程が長期化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)~(F)は、本発明の実施形態に係るシート貼付方法の説明図。
図2】(A)~(C)は、本発明の変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1(A)中手前方向から観た場合を基準とし、図を指定することなく方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な図1(A)中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
本発明のシート貼付方法は、所定のエネルギーとしての赤外線IRが付与されることで膨張する膨張性粒子SGが添加されている第1接着シートAS1を被着体としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)WFの第1面WF1に貼付するシート貼付工程PC1と、ウエハWFの第2面WF2が表出した状態で第1接着シートAS1が貼付されたウエハWFを支持するウエハ支持工程PC2と、ウエハWFに改質部MTを形成し、当該改質部MTで囲繞された個片化予定領域WFPをウエハWFに形成する改質部形成工程PC3と、第2接着シートAS2を支持し、当該第2接着シートAS2の接着面AS2Aをウエハ支持工程PC2で支持した被着体WFの第2面WF2に対向させて配置する第2接着シート支持工程PC4と、ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付する押圧工程PC5と、第2接着シートAS2に貼付されたウエハWFから第1接着シートAS1を剥離するシート剥離工程PC6とを実施する。
なお、本実施形態では、第1接着シートAS1は、基材シートBS1と接着剤層AL1とを備え、当該接着剤層AL1のみに膨張性粒子SGが添加されたものが採用されている。
【0011】
シート貼付工程PC1は、図1(A)に示すように、押圧手段としての押圧ローラ11で第1接着シートAS1をウエハWFの第1面WF1に押圧して貼付する。このシート貼付工程PC1では、押圧ローラ11とウエハWFとの一方の移動を規制した状態で他方を移動させたり、それら両方を移動させたりしてウエハWFに第1接着シートAS1を貼付することができる。ウエハWFは、第1面WF1および第2面WF2のうち少なくとも一方に所定の回路が形成されており、第1接着シートAS1は、そのようなウエハWFにおける回路が形成された面に貼付されてもよいし、回路が形成されていない面に貼付されてもよい。
【0012】
ウエハ支持工程PC2は、図1(B)に示すように、ウエハ支持手段としての支持テーブル21で、第1接着シートAS1が貼付されたウエハWFを当該第1接着シートAS1側から支持する。
【0013】
改質部形成工程PC3は、図1(C)に示すように、改質部形成手段としてのレーザ照射機31でウエハWFに複数の改質部MTを形成する。この改質部形成工程PC3では、レーザ照射機31とウエハWFとの一方の移動を規制した状態で他方をY軸方向に移動させたり、それら両方をY軸方向に移動させたりして、図1(C-1)に示すように、第1方向としてのY軸方向に沿う第1改質部MTYを形成する第1改質部形成工程PC31と、レーザ照射機31とウエハWFとの一方の移動を規制した状態で他方をX軸方向に移動させたり、それら両方をX軸方向に移動させたりして、図1(C-2)に示すように、Y軸方向に交差する第2方向としてのX軸方向に沿う第2改質部MTXを形成する第2改質部形成工程PC32とを実施し、第1改質部MTYと第2改質部MTXとで囲繞された個片化予定領域WFPを形成するようになっている。
【0014】
第2接着シート支持工程PC4は、図1(D)に示すように、第2接着シート支持手段としての支持テーブル41で、第2接着シートAS2を構成する基材シートBS2および接着剤層AL2のうち基材シートBS2側から当該第2接着シートAS2を支持する。なお、第2接着シートAS2の接着面AS2Aは、接着剤層AL2における基材シートBS2が積層された面の反対側の面である。
【0015】
押圧工程PC5は、図1(E)に示すように、赤外線IRを発光する発光源51Aと、当該発光源51Aで発光した赤外線IRを集光させる集光板51Bとで構成されたエネルギー付与手段51を用い、第1接着シートAS1に対して部分的に赤外線IRを付与し、当該赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている膨張性粒子SGを膨張させることで、第1接着シート部分AS1Pに貼付されている個片化予定領域WFPを変位させ、改質部MTを起点として亀裂CKを形成して個片化し、ウエハWFを個片体としてのチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シート部分AS1PとチップCPとの接着面積を低減させて当該第1接着シート部分AS1PのチップCPに対する接着力を低減させる。この押圧工程PC5では、赤外線IRは、エネルギー付与手段51と、ウエハWFとの一方の移動を規制した状態で他方を移動させたり、それら両方を移動させたりして接着剤層AL1に赤外線IRを付与することができる。
本実施形態では、押圧工程PC5は、赤外線IRを付与した位置に、当該赤外線IRの付与領域が所定の方向に延びるライン状付与領域LGを形成し、図1(E-1)に示すように、当該ライン状付与領域LGをY軸方向と平行となるように移動させる第1押圧工程PC51と、図1(E-2)に示すように、当該ライン状付与領域LGをX軸方向と平行となるように移動させる第2押圧工程PC52とを実施し、ウエハWFに貼付された第1接着シートAS1の接着剤層AL1に当該赤外線IRを付与することで、接着剤層AL1に添加されている膨張性粒子SGを膨張させる。
第1押圧工程PC51では、図1(E-1)に示すように、Y軸方向に沿うライン状付与領域LGを左方から右方に向けて移動させる。すると、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている膨張性粒子SGが次々に膨張し、接着剤層AL1に無数の凸部CVが形成される。これにより、ウエハWFは、左方から右方に向けて次々に部分的に持ち上げられて変位し、第1改質部MTYが起点となってY軸方向に延びる亀裂CKYが形成され、Y軸方向に延びる複数の短冊状ウエハWFSとなる。そして、それら短冊状ウエハWFSは、複数の凸部CVによって、第1接着シート部分AS1Pとの接着面積が低減し、当該第1接着シート部分AS1Pに対する接着力が低減する。このとき、エネルギー付与手段51は、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている個々の膨張性粒子SGが完全に膨張しないように、または、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている膨張性粒子SG全てが膨張しないように赤外線IRを照射する。
【0016】
次いで、エネルギー付与手段51をXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させ、当該エネルギー付与手段51が形成したライン状付与領域LGをX軸方向と平行となるように移動させた後、第2押圧工程PC52が実施される。
第2押圧工程PC52では、支持テーブル41で支持した第2接着シートAS2をウエハWFの第2面WF2に接近させ、第2接着シートAS2の接着面AS2AをウエハWFの第2面WF2に対向させて配置した後、図1(E-2)に示すように、X軸方向に沿うライン状付与領域LGをウエハWFの後方から前方に向けて移動させる。すると、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている個々の膨張性粒子SGが次々にさらに大きく膨張し、または、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている膨張性粒子SGのさらに多くが膨張し、接着剤層AL1に形成された無数の凸部CVが拡大する。これにより、短冊状ウエハWFSは、後方から前方に向けて次々に部分的に持ち上げられて変位し、第2改質部MTXが起点となってX軸方向に延びる亀裂CKXが形成され、当該亀裂CKXと先に形成されていた亀裂CKYとで複数のチップCPとなる。そして、それらチップCPは、複数の凸部CVによって、第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧されて貼付されるとともに、第1接着シート部分AS1Pとの接着面積がさらに低減し、当該第1接着シート部分AS1Pに対する接着力がさらに低減する。
第1接着シートAS1は、無数の凸部CVによってチップCPとの接着領域が減少するので、当該チップCPとの接着力が減少し、第1接着シートAS1としてチップCP(ウエハWF)との接着力が強力なものが採用された場合にでも、チップCPを簡単に第1接着シートAS1から取り外すことができるようになる。
【0017】
シート剥離工程PC6は、図1(F)に示すように、剥離手段としての剥離ローラ61に掛け回された保持手段としての帯状の剥離用テープPTを第1接着シートAS1に貼付しながら、当該第1接着シートAS1をウエハWFの第1面WF1から剥離する。このシート剥離工程PC6では、剥離ローラ61と、第1、第2接着シートAS1、AS2が貼付されたウエハWFとの一方の移動を規制した状態で、他方を例えばX軸方向に移動させたり、それらを相互に例えばX軸方向内で反対方向に移動させたりしてウエハWFから第1接着シートAS1を剥離することができる。
【0018】
以上のような実施形態によれば、押圧工程PC5において、ウエハWFを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シートAS1のウエハWFに対する接着力を低減させるので、第1接着シートAS1とウエハWFとの接着力を低減させる接着力低減工程を独立して行わなくてもよく、転写工程を含むウエハWFの処理工程が長期化することを防止することができる。
【0019】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、シート貼付工程は、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子が添加されている第1接着シートを被着体の第1面に貼付する工程であれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0020】
シート貼付工程PC1は、駆動機器であって押圧手段としての直動モータの出力軸に支持され、減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段によって第1接着シートAS1を保持可能な保持部材で当該第1接着シートAS1を吸着保持し、当該保持部材で保持した第1接着シートAS1をウエハWFの第1面WF1に押圧して貼付するシート貼付装置の他、公知のシート貼付装置や人手によって第1接着シートAS1をウエハWFの第1面WF1に押圧して貼付ししてもよい。
第1接着シートAS1が予め第1面WF1に貼付されているウエハWFを用意する工程を実施する場合や、第1接着シートAS1が予め第1面WF1に貼付され、且つ、改質部MTが予め形成されているウエハWFを用意する工程を実施する場合、本発明のシート貼付方法においてシート貼付工程PC1は実施しなくてもよい。
【0021】
ウエハ支持工程PC2は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段(支持手段)を有する支持テーブル21で第1接着シートAS1が貼付されたウエハWFを保持してもよいし、ウエハWFの外側またはウエハWFを囲むようにリングフレームや額縁等のフレーム部材を支持し、押圧工程PC5においてウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付する際、フレーム部材も第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよく、この場合、フレーム部材には、第1接着シートAS1が貼付されていてもよいし、貼付されていなくてもよく、フレーム部材に第1接着シートAS1が貼付されている場合には、ウエハWFと同様にして、押圧工程PC5において膨張性粒子SGの膨張によって当該フレーム部材を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよいし、フレーム部材に第1接着シートAS1が貼付されていない場合には、押圧工程PC5において第2接着シートAS2の接着面AS2AをウエハWFの第2面WF2に接近させた際、当該第2接着シートAS2をフレーム部材に押圧して貼付してもよい。
【0022】
改質部形成工程PC3は、シート貼付工程PC1の前段で実施されてもよいし、X軸またはY軸と平行な1本はたは複数本の改質部MTを形成してもよいし、X軸またはY軸と平行でない1本または複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に不等間隔な複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に平行または平行でない複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に交差しない複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に直交または斜交する複数本の改質部MTを形成してもよいし、曲線状または折線状の1本または複数本の改質部MTを形成してもよく、そのような改質部MTによって形成される個片化予定領域WFPやチップCPの形状は、円形、楕円形、三角形または四角形以上の多角形等、どのような形状でもよいし、第1、第2方向以外に、その他の1または2以上の方向それぞれに1本または複数本の改質部MTを形成してもよく、この場合、押圧工程は、第1、第2押圧工程PC51、PC52以外に、その他の1または2以上の押圧工程を実施してもよい。
改質部形成手段は、レーザ光、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等の付与によって、ウエハWFの特性、特質、性質、材質、組成、構成、寸法等を変更することで、ウエハWFを脆弱化、粉砕化、液化または空洞化して改質部MTを形成してもよく、このような改質部MTは、膨張性粒子SGの膨張によって被着体を個片化して個片体を形成することができればどのようなものでもよい。
改質部MTが予め形成されているウエハWFを用意する工程を実施する場合や、第1接着シートAS1が予め第1面WF1に貼付され、且つ、改質部MTが予め形成されているウエハWFを用意する工程を実施する場合、本発明のシート貼付方法において改質部形成工程PC3は実施しなくてもよい。
【0023】
第2接着シート支持工程PC4は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段(支持手段)を有する支持テーブル41で第2接着シートAS2を保持してもよいし、リングフレームや額縁等のフレーム部材が貼付された第2接着シートAS2を保持してもよいし、例えば、シート貼付工程PC1、ウエハ支持工程PC2または改質部形成工程PC3の前段等、押圧工程PC5の前段であればどの段階で実施してもよいし、第2押圧工程PC52を実施する場合、第1押圧工程PC51と当該第2押圧工程PC52との間で実施してもよいし、第2接着シートAS2接着面AS2AをウエハWFの第2面WF2に対向させて配置する際、当該第2接着シートAS2の接着面AS2AをウエハWFの第2面WF2に当接させてもよいし、当接させなくてもよい。
【0024】
押圧工程PC5は、図2(A)に示すように、第1改質部MTYまたは第2改質部MTXに斜交するライン状付与領域LG(不図示)をウエハWFの一端から他端に向けて移動させることで、第1、第2改質部MTY、MTXの両方を起点として亀裂CKY、CKXを同時に形成して個片化し、ウエハWFをチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シート部分AS1PとチップCPとの接着面積を低減させて当該第1接着シート部分AS1PのチップCPに対する接着力を低減させたりしてもよい。この場合、第1改質部MTYまたは第2改質部MTXに斜交するライン状付与領域LGの傾斜角度は、例えば、1度、5度、10度、45度、60度、89度等、どのような角度でもよい。
押圧工程PC5は、図2(B)に示すように、第1接着シートAS1全体に一括で赤外線IRを付与可能な発光源52Aと、当該発光源52Aで発光した赤外線IRを反射させる反射板52Bと、反射板52Bの上部の開口部52Cを開閉可能な開閉板52Dとで構成されたエネルギー付与手段52を採用し、以下の第1押圧工程PC53と第2押圧工程PC54とを実施してもよい。
第1押圧工程PC53は、開口部52Cを開閉板52Dで全閉にした状態から当該開閉板52Dを左方から右方に向けて徐々に移動させ、図2(B-1)に示すように、左方から右方に向けて次々に亀裂CKYを形成し、Y軸方向に延びる短冊状ウエハWFSを形成する。次いで、エネルギー付与手段52をXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させた後、第2押圧工程PC54が実施される。第2押圧工程PC54は、開口部52Cを開閉板52Dで全閉にした状態から当該開閉板52Dを後方から前方に向けて徐々に移動させ、図2(B-2)に示すように、後方から前方に向けて次々に亀裂CKXを形成し、亀裂CKXと亀裂CKYとでチップCPを形成して個片化し、ウエハWFをチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シート部分AS1PとチップCPとの接着面積を低減させて当該第1接着シート部分AS1PのチップCPに対する接着力を低減させる。この場合、開閉板52Dの代わりに、図2(C-1)、(C-2)に示すように、発光源52Aが発光した赤外線IRでライン状付与領域LGを形成するスリット52Eを備えた移動板52Fを採用してもよい。なお、スリット52Eには、赤外線IRを集光させたり平行光としたりするレンズを設けてもよい。
押圧工程PC5は、例えば、赤外線IRの付与領域が点状となる点状付与領域を形成して第1接着シートAS1に対して部分的に赤外線IRを付与したり、個片化予定領域WFP(チップCP)の平面形状に対応した面状付与領域または、個片化予定領域WFP(チップCP)の平面形状に対応していない面状付与領域を形成して第1接着シートAS1に対して部分的に赤外線IRを付与し、個片化予定領域WFPを変位させて個片化し、ウエハWFをチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、当該1つまたは複数の区画に対応する第1接着シート部分AS1PとチップCPとの接着面積を低減させて当該第1接着シート部分AS1PのチップCPに対する接着力を低減させてもよい。
押圧工程PC5は、膨張性粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して、第1接着シートAS1に赤外線IRを照射する時間を任意に決定することができるし、発光源51A、52Aとして、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等何を採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりして、第1接着シートAS1に赤外線IRを照射してもよいし、エネルギー付与手段としてレーザ光、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等を付与するものを採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりして、被着体に所定のエネルギーを付与してもよく、膨張性粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮してエネルギー付与手段を任意に決定することができるし、被着体が所定のエネルギーを透過可能なものの場合、当該所定のエネルギーを被着体側から付与してもよいし、第1接着シートAS1側から付与してもよいし、被着体側と第1接着シートAS1側との両方から付与してもよい。
エネルギー付与手段51、52は、集光板51Bや反射板52Bがなくてもよいし、集光板51Bの代わりにまたは集光板51Bと併用し、赤外線IRを集光させたり平行光としたりするレンズを設けてもよい。
押圧工程PC5は、ウエハWFを個片化することなく、当該ウエハWFを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい。すなわち、押圧工程PC5は、第1接着シートAS1に赤外線IRを付与して膨張性粒子SGを膨張させることで、第1接着シートAS1に貼付されているウエハWFを変位させて当該ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シートAS1とウエハWFとの接着面積を低減させて当該第1接着シートAS1のウエハWFに対する接着力を低減させる。この場合、本発明のシート貼付方法において、改質部形成工程PC3は実施しなくてもよいし、ウエハWFの一端から他端に向けて徐々に赤外線IRを付与してもよいし、ウエハWFの一端から他端に向けて徐々に赤外線IRを付与しなくてもよい。
【0025】
シート剥離工程PC6は、保持手段として、帯状または枚葉の剥離用テープPTを採用してもよいし、駆動機器としての直動モータの出力軸に支持され、減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段によって吸着保持が可能な保持部材で第1接着シートAS1を保持し、当該保持部材で保持した第1接着シートAS1をウエハWFから離間させて剥離するシート剥離装置の他、公知のシート剥離装置や人手によってウエハWFから第1接着シートAS1を剥離してもよいし、本発明のシート貼付方法において実施しなくてもよい。
【0026】
例えば、膨張性粒子SGが、所定の第1エネルギーとしての80℃の熱で膨張する図示しない第1膨張性粒子と、当該第1エネルギーと異なる所定の第2エネルギーとしての120℃の熱で膨張する図示しない第2膨張性粒子とを有し、押圧工程PC5では、第1接着シートAS1に80℃の熱を付与して第1改質部MTYを起点として亀裂CKYを形成する第1エネルギー付与工程と、第1接着シートAS1に120℃の熱を付与して第2改質部MTXを起点として亀裂CKXを形成する第2エネルギー付与工程とを実施し、個片化予定領域WFPを変位させ、改質部MTを起点として亀裂CKを形成して個片化し、ウエハWFをチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シート部分AS1PとチップCPとの接着面積を低減させて当該第1接着シート部分AS1PのチップCPに対する接着力を低減させてもよい。この場合、第1エネルギーや第2エネルギーは、何度の熱でもよいし、膨張性粒子SGが、第1、第2エネルギー以外の他の温度の熱で膨張する他の膨張性粒子を有する場合、他の温度の熱を付与する押圧工程をその分増やすことができる。
また、膨張性粒子SGとして、第1エネルギーとしての赤外線で膨張する図示しない第1膨張性粒子と、第2エネルギーとしての紫外線で膨張する図示しない第2膨張性粒子とが添加されている第1接着シートAS1を採用し、押圧工程PC5では、第1エネルギー付与工程で赤外線を付与して第1改質部MTYを起点として亀裂CKYを形成し、第2エネルギー付与工程で紫外線を付与して第2改質部MTXを起点として亀裂CKXを形成し、個片化予定領域WFPを変位させ、改質部MTを起点として亀裂CKを形成して個片化し、ウエハWFをチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シート部分AS1PとチップCPとの接着面積を低減させて当該第1接着シート部分AS1PのチップCPに対する接着力を低減させてもよい。なお、第1エネルギーと第2エネルギーとの組み合わせは、赤外線、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等、第1接着シートAS1に添加されている図示しない第1、第2膨張性粒子の組み合わせによってどのような組み合わせでもよいし、第1、第2エネルギー以外の他のエネルギーで膨張する他の膨張性粒子が添加されている第1接着シートAS1が採用された場合、当該他のエネルギーを付与する押圧工程をその分増やすこともできる。
さらに、第1接着シートAS1として、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等の熱を所定のエネルギーとして膨張する膨張性粒子SGが添加されているものが採用されてもよく、押圧工程PC5は、それら膨張性粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して当該膨張性粒子SGを膨張させ、ウエハWFを変位させて当該ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シートA1とウエハWFとの接着面積を低減させて当該第1接着シートAS1のウエハWFに対する接着力を低減させたり、個片化予定領域WFPを変位させ、改質部MTを起点として亀裂CKを形成して個片化し、ウエハWFをチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するとともに、第1接着シート部分AS1PとチップCPとの接着面積を低減させて当該第1接着シート部分AS1PのチップCPに対する接着力を低減させたりしてもよい。
第1押圧工程PC51またはPC53から第2押圧工程PC52またはPC54に移る際、停止しているエネルギー付与手段51、52に対してウエハWFをXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させてもよいし、エネルギー付与手段51、52とウエハWFとが相対的にXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動するようにそれら両方を回転移動させてもよい。
【0027】
第1接着シートAS1は、当該第1接着シートAS1を構成する基材シートBS1のみに膨張性粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層AL1と基材シートBS1との両方に膨張性粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層AL1と基材シートBS1との中間に中間層が存在し、当該中間層、接着剤層AL1および基材シートBS1のうち少なくとも1つまたは少なくとも2つに膨張性粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層AL1と基材シートBS1との両方に膨張性粒子SGが添加されている場合や、中間層、接着剤層AL1および基材シートBS1のうち少なくとも2つに膨張性粒子SGが添加されている場合、それら膨張性粒子SGは、同一のものでもよいし、同一でないものでもよい。
個片体は、チップCPに限らず、例えば、短冊状ウエハWFSでもよく、この場合の個片化予定領域は、第1改質部MTYとウエハWFの外縁とで囲繞された領域となり、押圧工程PC5において第2押圧工程PC52やPC54を実施しなくてもよい。
被着体が予め短冊状ウエハWFSのようなものであれば、押圧工程PC5において第2押圧工程PC52またはPC54のみを実施してチップCPを形成してもよい。
個片化予定領域WFPは、改質部MTとウエハWFの外縁とで囲繞されたものでもよく、このような個片化予定領域WFPから形成されるチップCPは、例えば、X軸と平行な1つの辺とY軸と平行な1つの辺とウエハWFの外縁とで形成される略扇状のものや、X軸と平行な2つの辺とY軸と平行な1つの辺とウエハWFの外縁とで形成される形状のもの等、どのような形状のものでもよい。
膨張性粒子SGは、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱によって容易にガス化して膨張する物質が弾性を有する殻内に内包された微粒子等が例示でき、特願2017-73236、特開2013-159743、特開2012-167151、特開2001-123002等で開示されている熱発泡性微粒子や、特開2013-47321、特開2007-254580、特開2011-212528、特開2003-261842等で開示されている膨張性粒子等、何ら限定されるものではなく、例えば、熱分解して、水、炭酸ガス、窒素を発生させて膨張性粒子と類似の効果を奏する発泡剤を採用してもよいし、特開2016-53115、特開平7-278333で開示されている紫外線により気体を発生するアゾ化合物等の気体発生剤で殻を膨張させるものでもよいし、例えば、加熱によって膨張するゴムや樹脂等でもよいし、その他、重曹、炭酸水素ナトリウム、ベーキングパウダ等でもよい。
ウエハWFは、第1面WF1および第2面WF2の両方に回路が形成されていなくてもよい。
【0028】
本発明のシート貼付方法では、押圧工程PC5で変位される前のウエハWF部分が変位することを抑制する変位抑制工程を実施してもよい。この変位抑制工程は、図1(E)中二点鎖線で示すように、変位させたくない個片化予定領域WFP上に押え板HPを配置させることで、変位する個片化予定領域WFPに追従し、隣接する個片化予定領域WFPも一緒に変位して改質部MTが亀裂CKとなることが抑制されることを防止することができる。なお、このような変位抑制工程では、変位させたくない個片化予定領域WFP上に押え板HPを当接させてもよいし、当接させなくてもよいし、気体の吹き付けにより、変位される前のウエハWFが変位することを抑制したり、プーリとベルトとで、変位される前のウエハWFが変位することを抑制したりする他の構成を採用してもよい。
押圧工程PC5において膨張性粒子SGが膨張した際、第1接着シートAS1が変位してしまうことで個片化予定領域WFPが変位しなくなることを防止するために、当該押圧工程PC5の前段で、第1接着シートAS1の変位を防止するシート支持工程を実施してもよい。このようなシート支持工程は、例えば、保持面を備えた保持プレート(保持部材)で第1接着シートAS1を基材シートBS1側から吸着保持したり、基材シートBS1側に鉄板や硝子板等の板状部材(保持部材)を貼付したりして、基材シートBS1を面で保持するようにすればよい。なお、保持プレートや板状部材は、被着体が所定のエネルギーを透過不可能なものであれば、当該所定のエネルギーを透過可能なもので構成すればよいし、被着体が所定のエネルギーを透過可能なものであれば、当該所定のエネルギーを透過不可能なもので構成してもよいし、透過可能なもので構成してもよい。また、第1接着シートAS1が、膨張性粒子SGが膨張した際、変位しない程度の剛性を備えていれば、シート支持工程は実施しなくてもよいし、実施してもよい。
本発明のシート貼付方法では、シート貼付工程PC1、ウエハ支持工程PC2、改質部形成工程PC3、第2接着シート支持工程PC4、押圧工程PC5またはシート剥離工程PC6の前段等で、ウエハWFを所定の厚みにまで研削(研磨)する研削(研磨)工程を実施してもよいし、シート剥離工程PC6の後段で、ウエハWFを所定の厚みにまで研削(研磨)する研削(研磨)工程を実施してもよいし、シート剥離工程PC6の後段で、チップCPを第2接着シートAS2から取り外す取外し工程を実施してもよいし、第2接着シートAS2から取り外したチップCPを基板や載置台等の他の部材に接着する接着工程を実施してもよい。
【0029】
本発明における第1、第2接着シートAS1、AS2および被着体の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、第1、第2接着シートAS1、AS2は、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の第1、第2接着シートAS1、AS2が採用された場合は、当該第1、第2接着シートAS1、AS2を加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプの加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、このような第1、第2接着シートAS1、AS2は、例えば、接着剤層AL1、AL2だけの単層のもの、基材シートBS1(BS2)と接着剤層AL1(AL2)との間に中間層を有するもの、基材シートBS1、BS2の上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材シートBS1、BS2を接着剤層AL1、AL2から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、被着体としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物であってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物であってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、第1、第2接着シートAS1、AS2は、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0030】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、ローラ等の回転部材が採用されている場合、当該回転部材を回転駆動させる駆動機器を備えてもよいし、回転部材の表面や回転部材自体をゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、回転部材の表面や回転部材自体を変形しない部材で構成してもよいし、押圧ローラや押圧ヘッド等の押圧手段や押圧部材といった被押圧物を押圧するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、ローラ、丸棒、ブレード材、ゴム、樹脂、スポンジ等の部材を採用したり、大気やガス等の気体の吹き付けにより押圧する構成を採用したりしてもよいし、押圧するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材を支持または保持するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0031】
AS1…第1接着シート
AS2…第2接着シート
AS1P…第1接着シート部分
AS2A…接着面
CK…亀裂
CP…半導体チップ(個片体)
IR…赤外線(エネルギー)
LG…ライン状付与領域
MT…改質部
MTX…第2改質部
MTY…第1改質部
PC1…シート貼付工程
PC2…ウエハ支持工程
PC3…改質部形成工程
PC4…第2接着シート支持工程
PC5…押圧工程
PC51、PC53…第1押圧工程
PC52、PC54…第2押圧工程
PC6…シート剥離工程
SG…膨張性粒子
WF…半導体ウエハ(被着体)
WFP…個片化予定領域
WF1…第1面
WF2…第2面
図1
図2