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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】シート貼付装置およびシート貼付方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221208BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/78 M
H01L21/78 V
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018122438
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020004829
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】杉下 芳昭
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222308(JP,A)
【文献】特表2013-543262(JP,A)
【文献】特開2012-033636(JP,A)
【文献】特開平06-184504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に第1接着シートが貼付された被着体の第2面に第2接着シートを貼付するシート貼付装置において、
前記被着体の前記第2面が表出した状態で前記第1接着シートが貼付された前記被着体を支持する第1支持手段と、
前記第2接着シートを支持し、当該第2接着シートの接着面を前記第1支持手段で支持した前記被着体の前記第2面に対向させて配置する第2支持手段と、
前記被着体の前記第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付する押圧手段とを備え、
前記第1接着シートは、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子が添加されており、
前記押圧手段は、前記第1接着シートに前記エネルギーを付与して前記膨張性粒子を膨張させることで、前記第1接着シートに貼付されている前記被着体を変位させて当該被着体の前記第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付することを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記被着体と押圧手段とを相対移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記被着体に改質部を形成し、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域を前記被着体に形成する改質部形成手段を備え、
前記押圧手段は、前記第1接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された第1接着シート部分に添加されている前記膨張性粒子を膨張させ、当該第1接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて個片化し、前記被着体を個片体とした状態で前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付することを特徴とする請求項1に記載のシート貼付装置。
【請求項4】
前記被着体には、改質部が形成され、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域が予め形成されており、
前記押圧手段は、前記第1接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された第1接着シート部分に添加されている前記膨張性粒子を膨張させ、当該第1接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて個片化し、前記被着体を個片体とした状態で前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付することを特徴とする請求項1に記載のシート貼付装置。
【請求項5】
前記被着体と押圧手段とを相対移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のシート貼付装置。
【請求項6】
前記改質部は、第1方向に沿う第1改質部と、当該第1方向に交差する第2方向に沿う第2改質部とを含み、
前記押圧手段は、前記エネルギーを付与した位置に、当該エネルギーの付与領域が所定の方向に延びるライン状付与領域を形成し、
前記移動手段は、前記ライン状付与領域を前記第1方向と平行となるように移動させ、さらに、前記ライン状付与領域を前記第2方向と平行となるように移動させることを特徴とする請求項5に記載のシート貼付装置。
【請求項7】
前記膨張性粒子は、第1エネルギーで膨張する第1膨張性粒子と、第2エネルギーで膨張する第2膨張性粒子とを有し、
前記押圧手段は、前記第1エネルギーを付与する第1押圧手段と、前記第2エネルギーを付与する第2押圧手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のシート貼付装置。
【請求項8】
前記押圧手段によって変位される前の被着体部分が変位することを抑制する変位抑制手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のシート貼付装置。
【請求項9】
前記第2接着シートに貼付された前記被着体から前記第1接着シートを剥離するシート剥離手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のシート貼付装置。
【請求項10】
第1面に第1接着シートが貼付された被着体の第2面に第2接着シートを貼付するシート貼付方法において、
前記被着体の前記第2面が表出した状態で前記第1接着シートが貼付された前記被着体を支持する第1支持工程と、
前記第2接着シートを支持し、当該第2接着シートの接着面を前記第1支持工程で支持した前記被着体の前記第2面に対向させて配置する第2支持工程と、
前記被着体の前記第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付する押圧工程とを実施し、
前記第1接着シートは、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子が添加されており、
前記押圧工程では、前記第1接着シートに前記エネルギーを付与して前記膨張性粒子を膨張させることで、前記第1接着シートに貼付されている前記被着体を変位させて当該被着体の前記第2面を前記第2接着シートの接着面に押圧して貼付することを特徴とするシート貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付装置およびシート貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1面に第1接着シートが貼付された被着体の第2面に、第2接着シートを貼付するシート貼付装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-222308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の転写装置(シート貼付装置)では、第1シート支持手段3(第1支持手段)で支持した第1接着シートS1(第1接着シート)を介して、押圧手段4(押圧手段)でウェハW(被着体)を第2接着シートS2(第2接着シート)に押圧して貼付するため、第1接着シートに張力が付与される。このように第1接着シートに張力が付与されると、当該第1接着シートが破損したり、当該第1接着シートが第1リングフレームRL1や第1支持手段等から外れたりするといった不具合が起り、被着体を所望の状態で第2接着シートに貼付できなくなるという不都合を発生する。
【0005】
本発明の目的は、被着体に貼付された第1接着シートに張力を極力付与することなく当該被着体を第2接着シートに貼付することができるシート貼付装置およびシート貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1接着シートに添加されている膨張性粒子を膨張させることで、被着体を第2接着シートの接着面に押圧して貼付するので、被着体に貼付された第1接着シートに張力を極力付与することなく被着体を第2接着シートに貼付することができる。
また、被着体に個片化予定領域が形成されれば、当該個片化予定領域から個片体を形成し、形成した個片体を第2接着シートに貼付することができる。
さらに、移動手段を備えれば、変位させたい個片化予定領域に押圧手段を移動させて個片体を形成し、形成した個片体を第2接着シートに貼付したり、被着体や個片体と、第2接着シートAS2との間に介在する空気を追い出しながらそれらを貼付したりすることができる。
また、移動手段が、ライン状付与領域を第1方向と平行となるように移動させ、さらに、ライン状付与領域を第2方向と平行となるように移動させるように構成すれば、例えば、第1方向に沿う2つの辺と、第2方向に沿う2つの辺とで囲まれた四角形の個片体を形成し、形成した個片体を第2接着シートに貼付することができる。
さらに、押圧手段が、第1エネルギーを付与する第1押圧手段と、第2エネルギーを付与する第2押圧手段とを備えていれば、第1エネルギーで膨張する第1膨張性粒子と、第2エネルギーで膨張する第2膨張性粒子とを時間差をもって膨張させ、被着体を第2接着シートに貼付することができる。
また、変位抑制手段を備えれば、変位する個片化予定領域と共に、隣接する個片化予定領域も一緒に変位し、改質部を起点とした亀裂の形成ができなくなることを防止することができる。
さらに、第2接着シートに貼付された被着体から第1接着シートを剥離すれば、当該被着体を第1接着シートから第2接着シートに転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は、本発明の実施形態に係るシート貼付装置の説明図。(B)、(C)は、シート貼付装置の動作説明図。
図2】(A)~(D)は、シート貼付装置の動作説明図。
図3】(A)~(C)は、本発明の変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、図1(A)中手前方向から観た場合を基準とし、図を指定することなく方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な図1(A)中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
本発明のシート貼付装置EAは、第1面WF1に第1接着シートAS1が貼付された被着体としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)WFの第2面WF2に第2接着シートAS2を貼付する装置であって、ウエハWFの第2面WF2が表出した状態で第1接着シートAS1が貼付されたウエハWFを支持する第1支持手段10と、ウエハWFに改質部MTを形成し、当該改質部MTで囲繞された個片化予定領域WFPをウエハWFに形成する改質部形成手段20と、第2接着シートAS2を支持し、当該第2接着シートAS2の接着面AS2Aを第1支持手段10で支持したウエハWFの第2面WF2に対向させて配置する第2支持手段30と、ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付する押圧手段40と、ウエハWFと押圧手段40とを相対移動させる移動手段50と、押圧手段40によって変位される前のウエハWF部分が変位することを抑制する変位抑制手段60と、第2接着シートAS2に貼付されたウエハWFから第1接着シートAS1を剥離するシート剥離手段70とを備えている。
第1接着シートAS1は、所定のエネルギーとしての赤外線IRが付与されることで膨張する膨張性粒子SGが添加されている。なお、本実施形態では、第1接着シートAS1は、基材シートBS1と接着剤層AL1とで構成され、当該接着剤層AL1のみに膨張性粒子SGが添加されたものが採用されている。また、第2接着シートAS2は、基材シートBS2と接着剤層AL2とで構成されたものが採用されており、第2接着シートAS2の接着面AS2Aは、接着剤層AL2における基材シートBS2が積層された面の反対側の面である。
【0011】
第1支持手段10は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段(保持手段)によって吸着保持が可能な支持面11Aを有し、赤外線IRを透過可能な第1支持テーブル11を備えている。
【0012】
改質部形成手段20は、複数のアームによって構成され、その作業範囲内において、作業部である先端アーム21Aで支持したものを何れの位置、何れの角度にでも変位可能な駆動機器としての所謂多関節ロボット21と、多関節ロボット21の先端アーム21Aが嵌り込み、当該多関節ロボット21に保持されるレーザ保持部22Aを有するレーザ用ブラケット22と、レーザ用ブラケット22に支持され、ウエハWFにレーザLSを照射し、改質部MTを形成するレーザ照射機23とを備え、第1方向としてのY軸方向に沿う第1改質部MTYと、Y軸方向に交差する第2方向としてのX軸方向に沿う第2改質部MTXとを形成し、第1改質部MTYと第2改質部MTXとで囲繞された個片化予定領域WFPを形成するように構成されている。なお、多関節ロボット21は、例えば、特開2016-81974に例示されている多関節ロボット111等が例示できる。
【0013】
第2支持手段30は、駆動機器としての直動モータ31と、その出力軸31Aに支持され、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段(保持手段)によって吸着保持が可能な支持面32Aを有する第2支持テーブル32とを備えている。
【0014】
押圧手段40は、移動手段50に支持された光源ボックス41と、光源ボックス41内に支持され、赤外線IRを発光する発光源42と、当該発光源42で発光した赤外線IRを集光させる集光板43とを備え、赤外線IRを付与した位置に、当該赤外線IRの付与領域が所定の方向に延びるライン状付与領域LG(図2(A)、(B)参照)を形成するようになっている。そして、押圧手段40は、第1接着シートAS1に対して部分的に赤外線IRを付与し、当該赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1P(図2(A)、(B)参照)に添加されている膨張性粒子SGを膨張させ、当該第1接着シート部分AS1Pに貼付されている個片化予定領域WFPを変位させて個片化し、ウエハWFを個片体としてのチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付する。
【0015】
移動手段50は、駆動機器としての回動モータ51と、その出力軸51Aに支持され、光源ボックス41をそのスライダ52Aで支持する駆動機器としてのリニアモータ52とを備え、押圧手段40が形成したライン状付与領域LGをY軸方向と平行となるように移動させ、さらに、ライン状付与領域LGをX軸方向と平行となるように移動させるようになっている。
【0016】
変位抑制手段60は、改質部形成手段20と共用される多関節ロボット21と、多関節ロボット21の先端アーム21Aが嵌り込み、当該多関節ロボット21に保持される押え板保持部61Aを有する押え板61とを備えている。
【0017】
シート剥離手段70は、保持手段としての帯状の剥離用テープPTを支持する支持ローラ71と、剥離用テープPTを案内するガイドローラ72と、駆動機器としての直動モータ73の出力軸73Aに回転可能に支持された剥離ローラ74と、駆動機器としての回動モータ75Aの図示しない出力軸に支持され、ピンチローラ75Bとで剥離用テープPTを挟み込む駆動ローラ75と、図示しない駆動機器の出力軸に支持され、ピンチローラ75Bとの間に存在する剥離用テープPTに常に所定の張力を付与して当該剥離用テープPTを回収する回収ローラ76と、そのスライダ77Aで第2支持手段30を支持する駆動機器としてのリニアモータ77とを備えている。
【0018】
以上のシート貼付装置EAの動作を説明する。
先ず、図1(A)中実線で示す初期位置に各部材が配置されたシート貼付装置EAに対し、当該シート貼付装置EAの使用者(以下、単に「使用者」という)が操作パネルやパーソナルコンピュータ等の図示しない操作手段を介して運転開始の信号を入力する。次いで、使用者または、多関節ロボットや接着シート供給装置等の図示しないシート供給手段が、図1(A)に示すように、第2接着シートAS2を第2支持テーブル32の支持面32Aに当接させると、第2支持手段30が図示しない減圧手段を駆動し、支持面32Aでの第2接着シートAS2の吸着保持を開始する。その後、使用者または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、図1(A)に示すように、第1接着シートAS1を支持面11A側にして当該第1接着シートAS1が貼付されたウエハWFを第1支持テーブル11上に載置すると、第1支持手段10が図示しない減圧手段を駆動し、支持面11Aでの第1接着シートAS1の吸着保持を開始する。
【0019】
次に、改質部形成手段20が多関節ロボット21およびレーザ照射機23を駆動し、レーザ照射機23を前後方向に移動させ、図1(B)に示すように、ウエハWFに第1改質部MTYを形成した後、レーザ照射機23を左右方向に移動させ、図1(C)に示すように、ウエハWFに第2改質部MTXを形成し、個片化予定領域WFPを形成する。そして、改質部形成手段20が多関節ロボット21を駆動し、レーザ照射機23を初期位置に復帰させた後、先端アーム21Aをレーザ保持部22Aから抜き取り、当該先端アーム21Aを押え板保持部61Aに嵌め込み、多関節ロボット21で押え板61を保持する。
【0020】
次いで、押圧手段40および移動手段50が発光源42およびリニアモータ52を駆動し、Y軸方向に延びるライン状付与領域LGを形成した後、図2(A)に示すように、光源ボックス41を左方から右方に向けて移動させ、ライン状付与領域LGをY軸方向と平行な状態で移動させる。すると、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている膨張性粒子SGが同図に示すように次々に膨張し、接着剤層AL1に無数の凸部CVが形成される。これにより、ウエハWFは、左方から右方に向けて次々に部分的に持ち上げられて変位し、第1改質部MTYが起点となってY軸方向に延びる亀裂CKYが形成され、Y軸方向に延びる短冊状ウエハWFSとなる。
なお、本実施形態では、上記のようにして亀裂CKYを形成する際、押圧手段40は、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている個々の膨張性粒子SGが完全に膨張しないように、または、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている膨張性粒子SG全てが膨張しないように赤外線IRを照射するようになっている。また、上記のようにして亀裂CKYを形成する際、変位抑制手段60が多関節ロボット21を駆動し、変位させたくない個片化予定領域WFP上に押え板61を配置させ、改質部MTを起点とした亀裂CKの形成ができなくなることを防止する。
【0021】
その後、光源ボックス41がウエハWFの右端部の右方所定位置に到達すると、押圧手段40および移動手段50が発光源42およびリニアモータ52の駆動を停止した後、移動手段50が回動モータ51を駆動し、押圧手段40をXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させる。次に、第2支持手段30が直動モータ31を駆動し、図2(B)に示すように、短冊状ウエハWFSの上面すなわちウエハWFの第2面WF2に、第2支持テーブル32で支持している第2接着シートAS2を接近させ、第2接着シートAS2の接着面AS2AをウエハWFの第2面WF2に対向させて配置する。
【0022】
そして、押圧手段40および移動手段50が発光源42およびリニアモータ52を駆動し、X軸方向に延びるライン状付与領域LGを形成した後、図2(B)に示すように、光源ボックス41を後方から前方に向けて移動させ、ライン状付与領域LGをX軸方向と平行な状態で移動させる。すると、同図に示すように、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている個々の膨張性粒子SGが次々にさらに大きく膨張し、または、赤外線IRが付与された第1接着シート部分AS1Pに添加されている膨張性粒子SGのさらに多くが膨張し、接着剤層AL1に形成されていた無数の凸部CVが拡大する。これにより、短冊状ウエハWFSは、後方から前方に向けて次々に部分的に持ち上げられて変位し、第2改質部MTXが起点となってX軸方向に延びる亀裂CKXが形成され、当該亀裂CKXと先に形成されていた亀裂CKYとで複数のチップCPとなり、第2接着シートAS2の接着剤層AL2に押圧されて貼付される。このときも、変位抑制手段60が多関節ロボット21を駆動し、変位させたくない個片化予定領域WFPを押え板61で押さえておく。
【0023】
次いで、光源ボックス41がウエハWFの前端部の前方所定位置に到達すると、押圧手段40が発光源42の駆動を停止した後、移動手段50が回動モータ51およびリニアモータ52を駆動し、光源ボックス41を初期位置に復帰させる。その後、変位抑制手段60が多関節ロボット21を駆動し、押え板61を初期位置に復帰させた後、先端アーム21Aを押え板保持部61Aから抜き取り、初期位置に復帰させておいたレーザ用ブラケット22のレーザ保持部22Aに先端アーム21Aを嵌め込み、多関節ロボット21でレーザ照射機23を保持し、各アームを初期位置に復帰させる。
【0024】
次に、第1支持手段10が図示しない減圧手段の駆動を停止し、支持面11Aでの第1接着シートAS1の吸着保持を解除した後、第2支持手段30が直動モータ31を駆動し、第2支持テーブル32を上昇させ、第1面WF1および第2面WF2に第1接着シートAS1および第2接着シートAS2が貼付されたチップCP(ウエハWF)を所定の高さ位置にまで持ち上げる。そして、シート剥離手段70がリニアモータ77を駆動し、第2支持テーブル32を右方へ搬送し、図2(C)に示すように、第1接着シートAS1の右端部が剥離ローラ74の最上端部直上に到達すると、リニアモータ77の駆動を停止する。次いで、シート剥離手段70が直動モータ73を駆動し、図2(C)中二点鎖線で示すように、剥離ローラ74を上昇させて剥離用テープPTを第1接着シートAS1の右端部に貼付する。その後、シート剥離手段70がリニアモータ77および回動モータ75Aを駆動し、図2(D)に示すように、第2支持テーブル32を右方へ移動させる移動速度に合わせて剥離用テープPTを回収ローラ76で回収することで、チップCP(ウエハWF)から第1接着シートAS1を剥離する。このとき、接着剤層AL1に形成された無数の凸部CVによって、接着剤層AL1とチップCPとの接着面積が低減し、当該チップCPに対する第1接着シートAS1の接着力が低減しているので、剥離される第1接着シートAS1と共にチップCPが第2接着シートAS2から剥離されるリスクは低減される。第1接着シートAS1全体がチップCPから剥離されると、シート剥離手段70が直動モータ73を駆動し、剥離ローラ74を初期位置に復帰させた後、回動モータ75Aの駆動を停止する。
【0025】
次に、第2接着シートAS2を介してチップCPを保持した第2支持テーブル32が剥離ローラ74の右方所定位置に到達すると、シート剥離手段70がリニアモータ77の駆動を停止する。そして、使用者または、ピックアップ装置や保持装置等の図示しないチップ搬送手段が、全てのチップCPまたは所定数のチップCPを第2接着シートAS2から取り外し、当該チップCPを別の工程に搬送すると、使用者または、ベルトコンベアや多関節ロボット等の図示しない除去手段が第2接着シートAS2を支持する。次いで、第2支持手段30が図示しない減圧手段の駆動を停止し、支持面32Aでの第2接着シートAS2の吸着保持を解除すると、使用者または図示しない除去手段が支持面32Aから第2接着シートAS2を除去する。その後、シート剥離手段70がリニアモータ77を駆動し、第2支持テーブル32を初期位置に復帰させ、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0026】
以上のような実施形態によれば、第1接着シートAS1に添加されている膨張性粒子SGを膨張させることで、ウエハWFを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付するので、ウエハWFに貼付された第1接着シートAS1に張力を極力付与することなくウエハWFを第2接着シートAS2に貼付することができる。
【0027】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、第1支持手段は、被着体の第2面が表出した状態で第1接着シートが貼付された被着体を支持可能なものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0028】
第1支持手段10は、保持手段が備わっていなくてもよいし、被着体が所定のエネルギーを透過可能なものであれば、第1支持テーブル11として当該所定のエネルギーを透過不可能なもので構成してもよいし、透過可能なもので構成してもよい。
第1支持手段10は、ウエハWFの外側またはウエハWFを囲むようにリングフレームや額縁等のフレーム部材を支持し、ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付する際、フレーム部材も第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよく、この場合、フレーム部材には、第1接着シートAS1が貼付されていてもよいし、貼付されていなくてもよく、フレーム部材に第1接着シートAS1が貼付されている場合には、ウエハWFと同様にして、膨張性粒子SGの膨張によって当該フレーム部材を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよいし、フレーム部材に第1接着シートAS1が貼付されていない場合には、第2接着シートAS2の接着面AS2AをウエハWFの第2面WF2に接近させた際、当該第2接着シートAS2をフレーム部材に押圧して貼付してもよい。
【0029】
改質部形成手段20は、レーザ照射機23を移動させずにまたは移動させつつ、ウエハWFを移動させて当該ウエハWFに改質部MTを形成してもよいし、X軸またはY軸と平行な1本または複数本の改質部MTを形成してもよいし、X軸またはY軸と平行でない1本または複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に等間隔または不等間隔な複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に平行または平行でない複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に交差しない複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に直交または斜交する複数本の改質部MTを形成してもよいし、第1、第2方向以外に、その他の1または2以上の方向それぞれに1本または複数本の改質部MTを形成してもよいし、曲線状または折線状の1本または複数本の改質部MTを形成してもよく、そのような改質部MTによって形成される個片化予定領域WFPやチップCPの形状は、円形、楕円形、三角形または四角形以上の多角形等、どのような形状でもよい。
改質部形成手段20は、レーザ光、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等の付与によって、ウエハWFの特性、特質、性質、材質、組成、構成、寸法等を変更することで、ウエハWFを脆弱化、粉砕化、液化または空洞化して改質部MTを形成してもよく、このような改質部MTは、膨張性粒子SGの膨張を外力とし、被着体を個片化して個片体を形成することができればどのようなものでもよい。
改質部形成手段20は、変位抑制手段60と共用することのない駆動機器でレーザ照射機23を保持して移動させる構成でもよいし、ウエハWFに改質部MTが形成され、当該改質部MTで囲繞または当該改質部MTとウエハWFの外縁とで囲繞された個片化予定領域WFPが予め形成されている場合や、ウエハWFを個片化させずに当該ウエハWFの第2面WF2に第2接着シートAS2を貼付する場合、本発明のシート貼付装置EAに備わっていなくてもよいし、備わっていてもよい。
【0030】
第2支持手段30は、当該第2支持テーブル32で支持している第2接着シートAS2の接着面AS2AをウエハWFの第2面WF2に対向させて配置する際、第2接着シートAS2の接着面AS2AをウエハWFSの第2面WF2に当接させてもよいし当接させなくてもよいし、第1支持手段10が支持面11Aでの第1接着シートAS1の吸着保持を解除することなく、第2支持テーブル32を上昇させるだけで、ウエハWFから第1接着シートAS1を剥離させることができる場合、シート剥離手段として機能することができるし、第1支持手段10で支持したウエハWFの第2面WF2と、第2支持手段30で支持した第2接着シートAS2との間隔が、押圧手段40によって膨張性粒子SGを膨張させるだけで、ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付することができる位の間隔であれば、直動モータ31がなくてもよい。
第2支持手段30は、フレーム部材が貼付された第2接着シートAS2を保持してもよいし、直動モータ31の代わりに多関節ロボット21で第2支持テーブル32を支持してもよく、多関節ロボット21で第2支持テーブル32を支持する場合、シート剥離手段70は、リニアモータ77を採用することなく、多関節ロボット21を駆動し、第2支持テーブル32と剥離ローラ74等とを相対移動させ、ウエハWFから第1接着シートAS1を剥離してもよいし、例えば、図1のシート貼付装置EAを上下反転した構成とした場合、保持手段が備わっていなくてもよい。
【0031】
押圧手段40は、図3(A)に示すように、第1接着シートAS1全体に一括で赤外線IRを付与可能な発光源44と、当該発光源44で発光した赤外線IRを反射させる反射板45と、反射板45の上部の開口部45Aを開閉可能な開閉板46とで構成してもよい。この場合、発光源44を駆動して赤外線IRを発光し、開口部45Aを開閉板46で全閉にした状態から当該開閉板46を左方から右方に向けて徐々に移動させ、図3(A-1)に示すように、左方から右方に向けて次々に亀裂CKYを形成し、Y軸方向に延びる短冊状ウエハWFSを形成する。次いで、開口部45Aを開閉板46で全閉にした後、押圧手段40をXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させる。その後、開閉板46を後方から前方に向けて徐々に移動させ、図3(A-2)に示すように、後方から前方に向けて次々に亀裂CKXを形成し、亀裂CKXと亀裂CKYとでチップCPを形成し、ウエハWFをチップCPとした状態で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい。
押圧手段40は、開閉板46の代わりに、図3(B-1)、(B-2)に示すように、発光源44が発光した赤外線IRでライン状付与領域LGを形成するスリット47Aを備えた移動板47を採用してもよいし、スリット47Aには、赤外線IRを集光させたり平行光としたりするレンズを設けてもよいし、開閉板46や移動板47を例えば第1支持テーブル11側に設けてもよい。
押圧手段40は、集光板43や反射板45がなくてもよいし、集光板43の代わりにまたは集光板43と併用し、赤外線IRを集光させたり平行光としたりするレンズを設けてもよいし、膨張性粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して、第1接着シートAS1に赤外線IRを照射する時間を任意に決定することができるし、発光源42、44として、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等何を採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりしてもよいし、エネルギーとしてレーザ光、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等を付与するものを採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりしてもよく、膨張性粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して任意の構成を採用することができるし、被着体が所定のエネルギーを透過可能なもの場合、第2支持手段30および第2接着シートAS2に所定のエネルギーを透過可能なものを採用し、第2支持手段30、第2接着シートAS2および被着体を透過させて第1接着シートAS1に所定のエネルギーを付与してもよいし、被着体側と第1接着シートAS1側との両方から所定のエネルギーを付与してもよい。
押圧手段40は、前記実施形態では、ライン状付与領域LGを形成して第1接着シートAS1に対して部分的に赤外線IRを付与し、チップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付したが、赤外線IRの付与領域が点状となる点状付与領域を形成し、第1接着シートAS1に対して部分的に赤外線IRを付与したり、個片化予定領域WFPの平面形状に対応した面状付与領域または、個片化予定領域WFPの平面形状に対応していない面状付与領域を形成して第1接着シートAS1に対して部分的に赤外線IRを付与したりして、チップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよいし、例えば、任意の位置の個片化予定領域WFPの1つまたは複数の区画に対応する第1接着シート部分AS1Pだけに赤外線IRを付与し、当該第1接着シート部分AS1Pに貼付されている1つまたは複数の区画からなる個片化予定領域WFPを変位させてチップCPを形成し、チップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよいし、ウエハWFの中央部から放射方向に向かって、部分的に第1接着シートAS1に対して赤外線IRを付与し、チップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい。
押圧手段40は、ウエハWFを個片化することなく、当該ウエハWFを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧してもよい。すなわち、押圧手段40は、第1接着シートAS1に赤外線IRを付与して膨張性粒子SGを膨張させることで、第1接着シートAS1に貼付されているウエハWFを変位させて当該ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい。
押圧手段40は、第1接着シートAS1全体に一括で赤外線IRを付与し、チップCPやウエハWF全体を一括で第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよく、この場合、移動手段50は本発明のシート貼付装置EAに備わっていなくてもよい。
【0032】
移動手段50は、図3(C)に示すように、第1改質部MTYおよび第2改質部MTXに斜交するライン状付与領域LG(不図示)をウエハWFの一端から他端に向けて移動させることで、第1、第2改質部MTY、MTXの両方を起点として亀裂CKY、CKXを同時に形成し、それによって形成されたチップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい(図3(C)には、ウエハWFに貼付されている第1接着シートAS1は不図示)。なお、この場合の斜交角度は、例えば、X軸やY軸に対して1度、5度、10度、45度、60度、89度等、どのような角度でもよい。
移動手段50は、押圧手段40を移動させずにまたは移動させつつ、ウエハWFを移動させ、押圧手段40に対してウエハWFをXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させてもよい。
移動手段50は、押圧手段40を移動させずにまたは移動させつつ、ウエハWFおよび第2接着シートAS2を移動させ、ライン状付与領域LGをY軸方向と平行となるように移動させたり、ライン状付与領域LGをX軸方向と平行となるように移動させたり、ライン状付与領域LGをX軸やY軸方向と平行とならないように移動させたり、ライン状付与領域LGをウエハWFの右方から左方に向けて移動させたり、ライン状付与領域LGをウエハWFの前方から後方に向けて移動させたり、ライン状付与領域LGをウエハWFのその他の方向から別の方向に向けて移動させたりして、ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよいし、ウエハWFに改質部MTが形成されていない場合でも、押圧手段40を移動させ、当該ウエハWFの第2面WF2を一端から他端に向けて徐々に第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい。このように、チップCPやウエハWFの第2面WF2を一端から他端に向けて徐々に第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付すれば、チップCPやウエハWFの第2面WF2と、第2接着シートAS2の接着面AS2Aとの間に気泡ができることを防止することができる。
移動手段50は、押圧手段40およびウエハWFの少なくとも一方をXY平面内で上面視時計回転方向に90度回転移動させてもよいし、押圧手段40およびウエハWFの少なくとも一方をXY平面内で上面視時計回転方向に90度以下または90度以上回転移動させてもよいし、本発明のシート貼付装置EAを構成する構成物として備わっていてもよいし、他の装置で押圧手段40およびウエハWFの少なくとも一方を移動させて当該ウエハWFの第2面WF2を第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付する場合、本発明のシート貼付装置EAに備わっていなくてもよいし、例えば、ウエハWFの1箇所だけに個片化予定領域WFPが形成されており、押圧手段40がこの個片化予定領域WFPの平面形状に対応または対応していない面状付与領域を形成し、第1接着シートAS1に対して部分的に赤外線IRを付与して、1つのチップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付する場合等においても、本発明のシート貼付装置EAに備わっていなくてもよい。
【0033】
変位抑制手段60は、変位させたくない個片化予定領域WFP上に押え板61を当接させてもよいし、当接させなくてもよいし、気体の吹き付けにより、押圧手段40によって変位される前のウエハWF部分が変位することを抑制したり、プーリとベルトとで押圧手段40によって変位される前のウエハWF部分が変位することを抑制したりする他の構成を採用してもよいし、改質部形成手段20と共用することのない駆動機器で押え板61を保持して移動させる構成でもよいし、押え板61を一方向(例えば左右方向)に移動させる駆動機器と、他の押え板を他方向(例えば前後方向)に移動させる別の駆動機器とを採用してもよいし、本発明のシート貼付装置EAに備わっていなくてもよい。
【0034】
シート剥離手段70は、第2支持テーブル32を移動させることなくまたは、移動させつつ、剥離ローラ74等を移動させてウエハWFから第1接着シートAS1を剥離してもよいし、保持手段として、帯状または枚葉の剥離用テープPTを採用してもよいし、駆動機器としての直動モータの出力軸に支持され、減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段によって吸着保持が可能な保持部材で第1接着シートAS1を保持し、当該保持部材で保持した第1接着シートAS1をウエハWFから離間させて剥離する構成等どのような構成でもよいし、例えば、赤外線、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等の接着力低減エネルギーによって、接着剤層AL1の接着力が低減するものを採用してもよい。この場合、接着力低減エネルギーを照射する接着力低減エネルギー付与手段を採用し、第1接着シートAS1をウエハWFから剥離する前段で、当該第1接着シートAS1に接着力低減エネルギーを照射するようにすればよい。
シート剥離手段70は、例えば、第1支持手段10が支持面11Aでの第1接着シートAS1の吸着保持を解除することなく、第2支持手段30が第2支持テーブル32を上昇させるだけで、ウエハWFから第1接着シートAS1を剥離させることができる場合や、他の装置でウエハWFから第1接着シートAS1を剥離する場合や、ウエハWFから第1接着シートAS1を剥離しない場合等において、本発明のシート貼付装置EAに備わっていなくてもよい。
【0035】
例えば、膨張性粒子SGが、第1エネルギーとしての80℃の熱エネルギーで膨張する図示しない第1膨張性粒子と、第2エネルギーとしての120℃の熱エネルギーで膨張する図示しない第2膨張性粒子とを有し、押圧手段40が、80℃の熱エネルギーを付与する図示しない第1押圧手段と、120℃の熱エネルギーを付与する図示しない第2押圧手段とを備えていてもよい。この場合、上記実施形態と同様の動作で、押圧手段40が、80℃の熱エネルギーを付与して第1改質部MTYを起点として亀裂CKYを形成した後、120℃の熱エネルギーを付与して第2改質部MTXを起点として亀裂CKXを形成し、チップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付することができる。なお、第1エネルギーや第2エネルギーは、何度の熱エネルギーでもよいし、膨張性粒子SGが、第1、第2エネルギー以外の他の温度の熱エネルギーで膨張する他の膨張性粒子を有する場合、押圧手段40は、他の温度の熱エネルギーを付与する他の押圧手段を増設することができる。
また、膨張性粒子SGとして、第1エネルギーとしての赤外線で膨張する図示しない第1膨張性粒子と、第2エネルギーとしての紫外線で膨張する図示しない第2膨張性粒子とが添加されている第1接着シートAS1を採用し、押圧手段40が、赤外線を付与する図示しない第1押圧手段と、紫外線を付与する図示しない第2押圧手段とを備えていてもよい。この場合、上記実施形態と同様の動作で、押圧手段40が、赤外線を付与して第1改質部MTYを起点として亀裂CKYを形成した後、紫外線を付与して第2改質部MTXを起点として亀裂CKXを形成し、チップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい。なお、第1エネルギーと第2エネルギーとの組み合わせは、以外の他のエネルギーで膨張する他の膨張性粒子が添加されている第1接着シートAS1が採用された場合、当該他のエネルギーを付与する他の押圧手段を増設することができる。
さらに、前記実施形態では、ウエハWFの一端から他端に向けて徐々にライン状付与領域LGを移動させたが、改質部MTが形成されている位置のみにライン状付与領域LGが位置するように押圧手段40を移動させ、改質部MTを起点として亀裂CKを形成したり、発光源42、44を消灯させておき、改質部MTが形成されている位置にライン状付与領域LGが位置するように押圧手段40やスリット47Aを移動させてから発光源42、44を駆動し、改質部MTを起点として亀裂CKを形成したりしてもよい。
また、第1接着シートAS1として、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等の熱を所定のエネルギーとして膨張する膨張性粒子SGが添加されているものが採用されてもよく、押圧手段40は、それら膨張性粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して当該膨張性粒子SGを膨張させ、第1接着シートAS1に貼付されているウエハWFやチップCPを変位させてそれらを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧できればどのような構成のものでもよい。
シート貼付装置EAは、第2接着シートAS2からチップCPやウエハWFを取り外すことなく、搬送手段や使用者が第2接着シートAS2ごとチップCPやウエハWFを別の工程に搬送するものいでもよい。
【0036】
第1接着シートAS1は、当該第1接着シートAS1を構成する基材シートBS1のみに膨張性粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層AL1と基材シートBS1との両方に膨張性粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層AL1と基材シートBS1との中間に1または複数の中間層が存在し、当該中間層、接着剤層AL1および基材シートBS1のうち少なくとも1つまたは少なくとも2つに膨張性粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、ウエハWFにおける回路が形成された面に貼付されてもよいし、回路が形成されていない面に貼付されてもよいし、接着剤層AL1と基材シートBS1との両方に膨張性粒子SGが添加されている場合や、中間層、接着剤層AL1および基材シートBS1のうち少なくとも2つに膨張性粒子SGが添加されている場合、それら膨張性粒子SGは、同一のものでもよいし、同一でないものでもよい。
ウエハWFは、他方の面WF2に、予めその他の接着シートが貼付されていてもよく、当該他の接着シートを介して第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧されて貼付されてもよいし、このような他の接着シートを適宜剥離する公知のシート剥離手段を採用してもよい。
個片体は、チップCPに限らず、例えば、短冊状ウエハWFSでもよく、この場合の個片化予定領域は、第1改質部MTYとウエハWFの外縁とで囲繞された領域となり、移動手段50は、押圧手段40が形成したライン状付与領域LGを1つの方向(例えばY軸、X軸またはその他の方向)にだけ移動させ、短冊状ウエハWFSを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい。
被着体が予め短冊状ウエハWFSのようなものであれば、移動手段50は、押圧手段40が形成したライン状付与領域LGを1つの方向(例えばY軸、X軸またはその他の方向)にだけ移動させ、チップCPを第2接着シートAS2の接着面AS2Aに押圧して貼付してもよい。
個片化予定領域WFPは、改質部MTとウエハWFの外縁とで囲繞されたものでもよく、このような個片化予定領域WFPから形成されるチップCPは、例えば、X軸と平行な1つの辺とY軸と平行な1つの辺とウエハWFの外縁とで形成される略扇状のものや、X軸と平行な2つの辺とY軸と平行な1つの辺とウエハWFの外縁とで形成される形状のもの等、どのような形状のものでもよい。
膨張性粒子SGは、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱によって容易にガス化して膨張する物質が弾性を有する殻内に内包された微粒子等が例示でき、特願2017-73236、特開2013-159743、特開2012-167151、特開2001-123002等で開示されている熱発泡性微粒子や、特開2013-47321、特開2007-254580、特開2011-212528、特開2003-261842等で開示されている膨張性粒子等、何ら限定されるものではなく、例えば、熱分解して、水、炭酸ガス、窒素を発生させて膨張性粒子と類似の効果を奏する発泡剤を採用してもよいし、特開2016-53115、特開平7-278333で開示されている紫外線により気体を発生するアゾ化合物等の気体発生剤で殻を膨張させるものでもよいし、例えば、加熱によって膨張するゴムや樹脂等でもよいし、その他、重曹、炭酸水素ナトリウム、ベーキングパウダ等でもよい。
ウエハWFは、第1面および第2面のうち少なくとも一方に所定の回路が形成されていてもよいし、それら両方に回路が形成されていなくてもよい。
第1接着シートAS1は、無数の凸部CVが形成されることで、チップCPとの接着領域が減少して当該チップCPとの接着力が減少してもよいし、チップCPとの接着力が減少しなくてもよい。
【0037】
本発明のシート貼付装置EAは、ウエハWFを所定の厚みにまで研削(研磨)する公知の研削(研磨)手段が備わっていてもよいし、チップCPを第2接着シートAS2から取り外す公知のピックアップ手段が備わっていてもよいし、第2接着シートAS2から取り外したチップCPを基板や載置台等の他の部材に接着する公知の接着手段が備わっていてもよい。
【0038】
本発明における第1、第2接着シートAS1、AS2の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、第1、第2接着シートAS1、AS2は、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の第1、第2接着シートAS1、AS2が採用された場合は、当該第1、第2接着シートAS1、AS2を加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプの加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、このような第1、第2接着シートAS1、AS2は、例えば、接着剤層AL1、AL2だけの単層のもの、基材シートBS1、BS2と接着剤層AL1、AL2との間に中間層を有するもの、基材シートBS1、BS2の上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材シートBS1、BS2を接着剤層AL1、AL2から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、被着体としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物であってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物であってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、第1、第2接着シートAS1、AS2は、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0039】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、ローラ等の回転部材が採用されている場合、当該回転部材を回転駆動させる駆動機器を備えてもよいし、回転部材の表面や回転部材自体をゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、回転部材の表面や回転部材自体を変形しない部材で構成してもよいし、ローラの代わりに回転するまたは回転しないシャフトやブレード等の他の部材を採用してもよいし、押圧ローラや押圧ヘッド等の押圧手段や押圧部材といった被押圧物を押圧するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、ローラ、丸棒、ブレード材、ゴム、樹脂、スポンジ等の部材を採用したり、大気やガス等の気体の吹き付けにより押圧する構成を採用したりしてもよいし、押圧するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし、剥離板や剥離ローラ等の剥離手段や剥離部材といった被剥離物を剥離するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、板状部材、丸棒、ローラ等の部材を採用してもよいし、剥離するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材を支持または保持するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよいし、切断手段や切断部材等の被切断部材を切断または、被切断部材に切込や切断線を形成するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、カッター刃、レーザカッタ、イオンビーム、火力、熱、水圧、電熱線、気体や液体等の吹付け等で切断するものを採用したり、適宜な駆動機器を組み合わせたもので切断するものを移動させて切断するようにしたりしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
EA…シート貼付装置
10…第1支持手段
20…改質部形成手段
30…第2支持手段
40…押圧手段
50…移動手段
60…変位抑制手段
70…シート剥離手段
AS1…第1接着シート
AS2…第2接着シート
AS2A…接着面
AS1P…第1接着シート部分
CP…半導体チップ(個片体)
IR…赤外線(エネルギー)
LG…ライン状付与領域
MT…改質部
MTX…第2改質部
MTY…第1改質部
SG…膨張性粒子
WF…半導体ウエハ(被着体)
WF1…第1面
WF2…第2面
WFP…個片化予定領域
図1
図2
図3