(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】タンクのガス置換方法および装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20221208BHJP
B65D 88/06 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F17C13/00 302Z
B65D88/06 Z
(21)【出願番号】P 2018134305
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰成
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122488(JP,A)
【文献】特開2012-092895(JP,A)
【文献】特開平08-261397(JP,A)
【文献】特開2017-132473(JP,A)
【文献】特開2015-025467(JP,A)
【文献】特開2001-349499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留物を貯留する内槽と、
該内槽を内部に収容する外槽と、
前記内槽の上部を覆う蓋部と、
タンク内の外周部にあたり、且つ前記内槽の外側の空間であるアニュラスペースに形成された側部断熱層と、
前記内槽の上方に設けられ、前記側部断熱層をアニュラスペースに保持するリテイニングウォールと
を備えたタンク内のガスを置換するにあたり、
アニュラスペースに開口を有する送給用配管からアニュラスペースに対してガスを送り込むと共に、アニュラスペースに開口を有する抜出用配管からアニュラスペース内のガスを抜き出す、タンクのガス置換方法
であって、
前記内槽の内部空間へガスを送り込むと共に、前記タンクの蓋上スペースから前記送給用配管に対してガスを送り込み、該送給用配管から前記側部断熱層内にガスを送り込む一方、アニュラスペースにおける前記側部断熱層の上方から前記抜出用配管によりガスを抜き出す、タンクのガス置換方法。
【請求項2】
貯留物を貯留する内槽と、
該内槽を内部に収容する外槽と、
前記内槽の上部を覆う蓋部と、
タンク内の外周部にあたり、且つ前記内槽の外側の空間であるアニュラスペースに形成された側部断熱層と、
前記内槽の上方に設けられ、前記側部断熱層をアニュラスペースに保持するリテイニングウォールと
を備えたタンク内のガスを置換するにあたり、
アニュラスペースに開口を有する送給用配管からアニュラスペースに対してガスを送り込むと共に、アニュラスペースに開口を有する抜出用配管からアニュラスペース内のガスを抜き出す、タンクのガス置換方法
であって、
前記内槽の内部空間へガスを送り込むと共に、前記タンクの蓋上スペースから前記送給用配管に対してガスを送り込み、該送給用配管からアニュラスペースにおける前記側部断熱層の上方へガスを送り込む一方、該側部断熱層内から前記抜出用配管によりガスを抜き出す、タンクのガス置換方法。
【請求項3】
貯留物を貯留する内槽と、
該内槽を内部に収容する外槽と、
前記内槽の上部を覆う蓋部と、
タンク内の外周部にあたり、且つ前記内槽の外側の空間であるアニュラスペースに形成された側部断熱層と、
前記内槽の上方に設けられ、前記側部断熱層をアニュラスペースに保持するリテイニングウォールとを備えたタンクに、
アニュラスペースに開口を有する送給用配管と、
アニュラスペースに開口を有する抜出用配管と
、
前記内槽の内部空間と、タンクの外部空間とを連通する内槽パージ管と、
前記送給用配管を前記タンク内における前記蓋部の上方の蓋上スペースに接続する上部連絡管と
を備えたタンクのガス置換装置。
【請求項4】
蓋上スペースと外部空間を連通する蓋上スペース連通管を備え、
前記上部連絡管は、一端を前記送給用配管に、他端を前記蓋上スペース連通管に接続される、請求項
3に記載のタンクのガス置換装置。
【請求項5】
複数の前記送給用配管が周方向に関して均等にアニュラスペースに配置されている、請求項
3または4に記載のタンクのガス置換装置。
【請求項6】
前記送給用配管は、下端を前記側部断熱層内に配置されたアニュラスペースパージ管であり、
前記抜出用配管は、下端がアニュラスペースにおける前記側部断熱層の上方に開口するアニュラスペース連通管である、請求項
3~5のいずれか一項に記載のタンクのガス置換装置。
【請求項7】
前記アニュラスペースパージ管の前記側部断熱層内に位置する部分の側面に、管の内外を連通する孔が設けられている、請求項
6に記載のタンクのガス置換装置。
【請求項8】
前記送給用配管は、下端がアニュラスペースにおける前記側部断熱層の上方に開口するアニュラスペース連通管であり、
前記抜出用配管は、下端を前記側部断熱層内に配置されたアニュラスペースパージ管である、請求項
3~5のいずれか一項に記載のタンクのガス置換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガス等の低温の流体を貯留するタンクにおいて、アニュラスペースのガスを置換する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化ガス等を貯留するタンクとして、サスペンデッドデッキ型と呼ばれる型式のタンクが用いられている。この種のタンクは、PC(prestressed concrete)、金属等といった素材により構成した外槽の内側に、金属等により形成された内槽が収容され、前記外槽と前記内槽の間の空間に断熱層を備えている。
【0003】
前記内槽を収容した外槽は、全体が基礎の上に支持されており、前記内槽の底面と、前記基礎の上面の間には、前記内槽と前記基礎との間を断熱するよう、底部断熱層が設けられている。該底部断熱層は、泡ガラスや発泡樹脂、断熱コンクリートといった変形しにくい素材により構成される。
【0004】
また、前記内槽の側壁と、前記外槽の側壁との間の空間(アニュラスペース)には、側部断熱層が設けられる。側部断熱層は、例えばアニュラスペースに、パーライト等の粒状の断熱材を充填することで形成される。断熱材は、内槽の上部を覆うデッキよりも上方まで充填されており、前記デッキより上側に位置する断熱材は、前記デッキ上面の外周部を取り囲むように設けられたリテイニングウォールによりアニュラスペースに保持される。
【0005】
こうしたタンクにLNGやLPGといった低温の液化ガスを貯蔵する場合、液化ガスをタンクに注入する前に、タンク内に窒素等の不活性ガスを一旦充満させ、その後に不活性ガスをパージし、液化ガスを注入していくといった手順が取られる。タンク内の酸素を追い出し、可燃性のガスが酸素と混合してしまうことを防ぐと共に、水分を除去してタンク内での氷の発生を抑えるためである。
【0006】
タンクに窒素を注入する場合には、例えば内槽の底部に通じるノズル(内槽パージ管)を設置して外部から窒素を送り込む。前記内槽パージ管から吐出される窒素は、内槽を満たしつつ、デッキに設けられた開口から、屋根と前記デッキの間の空間(蓋上スペース)へ漏れ出す。そして、タンクの屋根に設けられた放散塔を通り、蓋上スペースから外部空間へ抜ける。この窒素の動きに伴ってタンク内の空気が追い出され、内槽と蓋上スペースが窒素で満たされる。
【0007】
また、窒素は蓋上スペースからリテイニングウォールを通ってアニュラスペースに進入し、アニュラスペース内の空気をも追い出す。リテイニングウォールはグラスクロス等、断熱材の粒子は通さないが通気性を有する素材で構成されており、窒素を通過させることができる。
【0008】
粒状の断熱材で構成された側部断熱層には、アニュラスペース内の空気を追い出すためのノズル(アニュラスペースパージ管)が埋設されており、該アニュラスペースパージ管の下端はアニュラスペースの底部に、上端はタンクの外部空間に位置している。蓋上スペースからリテイニングウォールを抜けてアニュラスペースに進入した窒素は、側部断熱層を通ってアニュラスペースの底部に達し、前記アニュラスペースパージ管の下端から管内を通り、外部空間に抜き出される。この窒素の動きに伴い、アニュラスペース内の空気が追い出され、アニュラスペースが窒素で満たされる。
【0009】
尚、こうしたタンクにおけるガスの置換方法に関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の如き置換方法では、内槽と蓋上スペース内のガスは迅速に窒素に置換されるが、これと比較してアニュラスペースにおけるガスの置換に時間がかかってしまうという欠点がある。窒素が蓋上スペースからリテイニングウォールを通ってアニュラスペースに進入する際の抵抗と、側部断熱層を通過してアニュラスペースの底部に至るまでの抵抗が大きいからである。この抵抗があるために、蓋上スペースの窒素のうち大部分は放散塔から排出されてしまい、蓋上スペースからアニュラスペースへは窒素が少しずつしか供給されないので、アニュラスペース内のガスは少しずつしか置換されない。酸素については比較的早く規定値を下回る濃度まで下げることができるが、水蒸気の排出に特に時間がかかってしまう。結果として、タンクの建設あるいはメンテナンス等に関し、作業が完了してタンクを使用できるようになるまでの工期が延びたり、期日が決定できなくなるといった不都合が生じていた。
【0012】
そこで、本開示においては、斯かる実情に鑑み、アニュラスペースのガスの置換を迅速に行い得るタンクのガス置換方法および装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、貯留物を貯留する内槽と、該内槽を内部に収容する外槽と、前記内槽の上部を覆う蓋部と、タンク内の外周部にあたり、且つ前記内槽の外側の空間であるアニュラスペースに形成された側部断熱層と、前記内槽の上方に設けられ、前記側部断熱層をアニュラスペースに保持するリテイニングウォールとを備えたタンク内のガスを置換するにあたり、アニュラスペースに開口を有する送給用配管からアニュラスペースに対してガスを送り込むと共に、アニュラスペースに開口を有する抜出用配管からアニュラスペース内のガスを抜き出す、タンクのガス置換方法であって、前記内槽の内部空間へガスを送り込むと共に、前記タンクの蓋上スペースから前記送給用配管に対してガスを送り込み、該送給用配管から前記側部断熱層内にガスを送り込む一方、アニュラスペースにおける前記側部断熱層の上方から前記抜出用配管によりガスを抜き出す、タンクのガス置換方法にかかるものである。
【0016】
上述のタンクのガス置換方法において、前記送給用配管は、アニュラスペースにおける前記側部断熱層の上方へガスを送り込み、前記抜出用配管は、前記側部断熱層内からガスを抜き出すようにすることもできる。
【0017】
また、本開示は、貯留物を貯留する内槽と、該内槽を内部に収容する外槽と、前記内槽の上部を覆う蓋部と、タンク内の外周部にあたり、且つ前記内槽の外側の空間であるアニュラスペースに形成された側部断熱層と、前記内槽の上方に設けられ、前記側部断熱層をアニュラスペースに保持するリテイニングウォールとを備えたタンクに、アニュラスペースに開口を有する送給用配管と、アニュラスペースに開口を有する抜出用配管と、前記内槽の内部空間と、タンクの外部空間とを連通する内槽パージ管と、前記送給用配管を前記タンク内における前記蓋部の上方の蓋上スペースに接続する上部連絡管とを備えたタンクのガス置換装置にかかるものである。
【0019】
上述のタンクのガス置換装置は、蓋上スペースと外部空間を連通する蓋上スペース連通管を備え、前記上部連絡管は、一端を前記送給用配管に、他端を前記蓋上スペース連通管に接続することができる。
【0020】
上述のタンクのガス置換装置においては、複数の前記送給用配管が周方向に関して均等にアニュラスペースに配置されることが好ましい。
【0021】
上述のタンクのガス置換装置において、前記送給用配管は、下端を前記側部断熱層内に配置されたアニュラスペースパージ管とし、前記抜出用配管は、下端がアニュラスペースにおける前記側部断熱層の上方に開口するアニュラスペース連通管とすることができる。
【0022】
上述のタンクのガス置換装置においては、前記アニュラスペースパージ管の前記側部断熱層内に位置する部分の側面に、管の内外を連通する孔を設けることができる。
【0023】
上述のタンクのガス置換装置において、前記送給用配管は、下端がアニュラスペースにおける前記側部断熱層の上方に開口するアニュラスペース連通管とし、前記抜出用配管は、下端を前記側部断熱層内に配置されたアニュラスペースパージ管とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のタンクのガス置換方法および装置によれば、アニュラスペースのガスの置換を迅速に行い得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の第一実施例によるタンクのガス置換装置の形態を示す正断面図である。
【
図2】本開示の第一実施例によるタンクのガス置換装置の形態を示す平面図である。
【
図3】本開示の実施によるタンクのガス置換方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の第二実施例によるタンクのガス置換装置の形態を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1、
図2は本開示の実施例によるガスの置換装置を適用したタンクの形態を示している。タンク1は、外殻をなす外槽2と、貯留物3を貯留する内槽4とを備えて構成されるサスペンデッドデッキ型のタンクである。外槽2と内槽4は各々円形状の平断面を有する円筒状の形状をなしており、外槽2は金属やPC等により、内槽4は金属等により、それぞれ形成される。そして、外槽2の内側に内槽4が収容されるよう、コンクリート等により形成された基礎5の上に平面視で同心円状に配置される。尚、本第一実施例では、内槽4に貯留物3を貯留しない状態での作動を想定しているため、
図1では貯留物3を破線にて表示している。
【0028】
内槽4の上部は、ドーム状をなす外槽2の屋根2aから吊り下げられた蓋部としてのデッキ4aにより覆われている。内槽4の上方には、平面視で内槽4の側壁4bに沿うように膜状のリテイニングウォール6が備えられている。リテイニングウォール6は、デッキ4a上面の外周部を取り囲むように、デッキ4aの上面から屋根2aの下面まで垂直方向に沿って設置される。リテイニングウォール6は、通気性を有するが粒状の断熱材は通さない不燃性の素材、例えばグラスクロスを素材として形成される。
【0029】
円形をなす内槽4の底面4cと、基礎5との間には円盤状の底部断熱層7が設置されている。底部断熱層7は、断熱材として、泡ガラスや発泡樹脂、断熱コンクリート等の多孔質の素材を備えている。尚、底部断熱層7として、前記断熱材の他に、例えば内槽4を基礎5の上に支持するための支持構造等、各種の構造を備えても良いが、ここでは図示を省略している。
【0030】
内槽4の側壁4bと、外槽2の側壁2bとの間には、側部断熱層8が配置される。側部断熱層8は、内槽4の側方と外槽2の間に形成されるアニュラスペースAに、例えばパーライト等の粒状の断熱材を充填することで形成される。側部断熱層8の上部は内槽4のデッキ4aよりも上方に達しており、側部断熱層8のうちデッキ4aより上方に位置する部分は、リテイニングウォール6によりアニュラスペースAに保持される。ここで、アニュラスペースAとは、平面視でタンク1内の外周部にあたり、且つ内槽4の外側の空間を指すものとする。すなわち、アニュラスペースAは、外槽2の側壁2bと内槽4の側壁4bとの間のほか、外槽2の側壁2bと底部断熱層7の側面との間、さらに外槽2の屋根2aおよび側壁2bとリテイニングウォール6との間の空間をも含む。
【0031】
また、内槽4の側壁4bには、該側壁4bを径方向外側から覆うようにブランケット9が設置されている。ブランケット9は、内槽4を外部から断熱する機能のほかに柔軟性を有するグラスウール等の素材により形成され、アニュラスペースAにおいて内槽4の熱変形を吸収するようになっている。
【0032】
こうして、タンク1では、内槽4の下方に設置された底部断熱層7と、内槽4の側方に設置された側部断熱層8及びブランケット9により、下部の基礎5、及び外槽2の外側の外部空間Oと、内槽4との間を断熱するようになっている。
【0033】
タンク1には、内部のガスGを置換するための構造として、屋根2a及びデッキ4aを貫通し、タンク1の外部空間Oと内槽4の内部空間Iとを連通するように内槽パージ管10が設けられている。内槽パージ管10の上端は屋根2aの上に開口し、下部は内槽4の底部に延びて開口している。ガスGの置換時には、上端にガス供給装置10aを接続し、該ガス供給装置10aから供給されるガスGを内槽4の底部へ送り込むことができるようになっている。
【0034】
屋根2aの頂部には、タンク1内の余分なガスGを抜き出すための頂部開口11が設けられている。また、デッキ4aには、該デッキ4aと屋根2aとの間の蓋上スペースDと、内部空間Iとを連通するように複数の蓋部開口12が設けられている。蓋部開口12の上部には、開閉弁13を介して放散塔14が接続され、蓋上スペースD内のガスGが放散塔14を通って外部空間Oへ排出されるようになっている。
【0035】
また、タンク1には、アニュラスペースAと外部空間Oを連通するように、屋根2aおよびデッキ4aを貫通するアニュラスペースパージ管15が設けられている。本第一実施例において、アニュラスペースパージ管15は、後述するようにガスGの置換の際、アニュラスペースAに対してガスGを送り込む送給用配管として機能する。アニュラスペースパージ管15は、屋根2aの上に開口した上端から下方のアニュラスペースAへ垂直方向に沿って延びて側部断熱層8内に潜り、アニュラスペースAの底部で折れ曲がってアニュラスペースAの底面に沿って延びている。アニュラスペースパージ管15のうち、側部断熱層8内に位置する部分には、管の内外を連通するよう、側面に多数の孔15aが開口している。尚、
図2ではアニュラスペースAの底部に沿って延びるアニュラスペースパージ管15のうち一部のみに孔15aを図示しているが、実際にはアニュラスペースAの底部に沿って延びるアニュラスペースパージ管15の全域に孔15aが設けられる。
【0036】
アニュラスペースパージ管15の上端には、開閉弁16を介して上部連絡管17が接続されている。上部連絡管17は、外部空間Oに設置され、一端はアニュラスペースパージ管15の上端に接続され、他端は開閉弁18を介して蓋上スペース連通管19の上端に接続される。蓋上スペース連通管19は、蓋上スペースDと外部空間Oを連通する配管であり、蓋上スペースDのうちリテイニングウォール6に近い位置に屋根2aを貫通するように設置されている。蓋上スペース連通管19の下端は蓋上スペースDに開口し、上端は外部空間Oに開口して上部連絡管17に接続されている。こうして、上部連絡管17により、アニュラスペースパージ管15が蓋上スペース連通管19を介して蓋上スペースDに接続される。本第一実施例において、蓋上スペース連通管19は、後述するようにアニュラスペースAからガスGを抜き出す抜出用配管として機能する。
【0037】
アニュラスペースAの上方にあたる屋根2aには、アニュラスペース連通管20が設けられている。アニュラスペース連通管20は、アニュラスペースAと外部空間Oを連通する配管であり、下端がアニュラスペースAにおける側部断熱層8の上方に、上端が外部空間Oに開口している。アニュラスペース連通管20の上端は、開閉弁21を介して排出管22に接続されている。
【0038】
アニュラスペースパージ管15、上部連絡管17、蓋上スペース連通管19は、
図2に示す如く、複数組(ここに示した例では、5組)を周方向に関して均等にアニュラスペースAに配置することが好ましい。後述するガスGの置換作業において、側部断熱層8に対してなるべく均等にガスGを送り込むためである。
【0039】
このほか、タンク1には、外部空間Oや内部空間I、アニュラスペースAや蓋上スペースDを適宜互いに連通する配管や開口が複数設けられるが、ここでは図示を省略している。
【0040】
次に、上記した本第一実施例のタンクのガス置換装置によるガス置換方法の手順を、
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0041】
配管類の設置から説明する。ステップS1として、タンク1に内槽パージ管10、アニュラスペースパージ管15、蓋上スペース連通管19、アニュラスペース連通管20を設ける。ステップS2として、アニュラスペースAに断熱材を投入し、側部断熱層8を形成する。アニュラスペースAへの断熱材の投入は、例えばアニュラスペース連通管20を通して行っても良い。側部断熱層8の上部は、リテイニングウォール6を設置して保持する。ステップS3として、タンク1の外部に位置する配管類を設置する。タンク1の頂部開口11に放散塔14を接続し、アニュラスペースパージ管15と蓋上スペース連通管19を上部連絡管17で接続し、アニュラスペース連通管20に排出管22を接続する。尚、ステップS1~S3における各工程は適宜前後させ、あるいは同時並行で実行して良いが、アニュラスペースパージ管15の設置は断熱材の投入より先に行うべきである。
【0042】
ステップS4として、内槽パージ管10の上端にガス供給装置10aを接続し、ステップS5として、ガス供給装置10aからガスGの供給を開始する。ガス供給装置10aから供給されるガスGは、例えば窒素等の不活性ガスである。
【0043】
内槽4内に供給されたガスGは、内部空間Iに充満すると共に、デッキ4aの蓋部開口12から蓋上スペースDに溢れ出す。もともと内部空間Iおよび蓋上スペースD内にあった空気等であるガスGは、頂部開口11から放散塔14を通って外部空間Oへ押し出される(ステップS6)。
【0044】
さらに、蓋上スペースDに充満したガスGが、蓋上スペース連通管19から上部連絡管17を通り、送給用配管としてのアニュラスペースパージ管15へ導かれる(ステップS7)。アニュラスペースパージ管15内に導入されたガスGは、孔15aを通じて側部断熱層8内に放出される(ステップS8)。アニュラスペースAおよび側部断熱層8内にもともとあった空気等であるガスGは、アニュラスペースパージ管15から放出されるガスGに押し出される形で、側部断熱層8の上方に位置する抜出用配管としてのアニュラスペース連通管20から抜き出され、排出管22を通って外部空間Oへ押し出される(ステップS9)。
【0045】
ガス供給装置10aの運転を続けると、内部空間I、蓋上スペースD、アニュラスペースAにあった空気等のガスGは、ガス供給装置10aから供給される窒素等であるガスGに置換される。貯留物3として液化ガス等を貯留するタンク1の場合は、内部空間I、蓋上スペースD、アニュラスペースAにおける酸素および水蒸気の濃度が規定値未満となった段階で置換が完了したとみなす(ステップS10)。置換が完了したら、ステップS11として、開閉弁13,16,18,21を閉じ、ガス供給装置10aからのガスGの供給を停止する。開閉弁16,18,21を閉じた後、タンク1の外側に位置する上部連絡管17、排出管22は取り外すことができる。
【0046】
このようにすると、アニュラスペースAへガスGを送り込むにあたっての抵抗が少ないため、効率良くガスGを送り込んで置換を迅速に行うことができる。まず、従来であれば蓋上スペースDからリテイニングウォール6を通してガスGをアニュラスペースAに送り込んでいたため、リテイニングウォール6を通過する際にガスGが受ける抵抗がアニュラスペースAへのガスGの送給の妨げとなっていた。一方、本第一実施例では蓋上スペース連通管19および上部連絡管17により、蓋上スペースDからアニュラスペースパージ管15に直接ガスGを送り込んでいる。つまり、蓋上スペースDからアニュラスペースAへリテイニングウォール6を迂回させてガスGを送り込むことになり、送給用配管であるアニュラスペースパージ管15へ導入されるガスGはリテイニングウォール6の抵抗を受けない。
【0047】
さらに、ガスGが側部断熱層8を通過する際の抵抗も大幅に低減される。従来の技術であれば、アニュラスペースAのガスGを置換する際には、アニュラスペースAへ側部断熱層8の上方からガスGを送り込み、側部断熱層8に下端を埋設するように設置した配管(アニュラスペースパージ管15')の底部から抜き出していた(この場合のアニュラスペースAにおけるガスGの流れ、およびアニュラスペースパージ管15'を
図1中に一点鎖線で示す)。ここで、一点鎖線で示すアニュラスペースパージ管15'には孔15aが設けられていないため、ガスGはアニュラスペースパージ管15'の側面から管内に入ることはない。アニュラスペースA内のガスGは、アニュラスペースパージ管15'の下端の開口からアニュラスペースパージ管15'内に入り、上端から抜き出されて外部空間Oへ排出される。
【0048】
こうした従来のガスの置換装置および置換方法では、蓋上スペースDからアニュラスペースAに進入したガスGは、アニュラスペースパージ管15'から抜き出されるまでに側部断熱層8の上面から底部までを通過しなくてはならない。側部断熱層8は通常、高さ方向に数メートル~数十メートルの寸法を有しており、ガスGがこの側部断熱層8を高さ方向に通過しようとすれば、その際の抵抗は多大なものとなる。また、特に側部断熱層8の底部においては、上方に積み重なった断熱材の重みによって断熱材同士が押し固められた状態となっており、ガスGにとっての抵抗はいっそう大きい。
【0049】
これに対し、本第一実施例の場合、アニュラスペースA内のガスGを側部断熱層8の底部から抜き取るのではなく、アニュラスペースパージ管15から側部断熱層8に向かって押し出すようにしている。アニュラスペースパージ管15の側面には、上述の如く多数の孔15aが開口しており、この孔15aはアニュラスペースパージ管15のうち、アニュラスペースA内を垂直方向に沿って延びる部分にも設けられている。よって、アニュラスペースパージ管15内に送り込まれたガスGは、側部断熱層8の各高さからアニュラスペースA内に供給され、側部断熱層8を上方へ抜けて排出管22から外部空間Oへ排出されることになる。側部断熱層8のうち、浅い部分から供給されるガスGにとっては、側部断熱層8を上方へ抜けるまでの距離が短いため抵抗が少ない。このため、短時間で多くのガスGをアニュラスペースパージ管15からアニュラスペースA内に送り込むことができる。
【0050】
ここで、
図2に示す如く、タンク1の外周をなすアニュラスペースAに複数のアニュラスペースパージ管15を均等に配置しておけば、各位置において垂直方向に延びるアニュラスペースパージ管15の側面から、側部断熱層8内に対し均等にガスGを供給することができる。こうして、アニュラスペースAにおいてガスGの置換にかかる時間をいっそう縮減できる。
【0051】
アニュラスペースパージ管15へガスGを送り込むにあたっては、蓋上スペースDを介してではなく、例えばガス供給装置10aをアニュラスペースパージ管15の上端に接続し、ガスGを直接送り込むことも可能である。ただし、液化ガス等の貯留物3を内槽4に貯留するタンク1の場合、内槽4は内側からの高い圧力に耐え得るように構造を設計されており、外からの圧力に対する強度は通常、あまり考慮されない。よって、アニュラスペースA内の圧力が内部空間Iの圧力に対してあまり高くなると、内槽4やその他の部分の素材に変形等が生じる虞がある。このため、仮にガス供給装置10aからアニュラスペースパージ管15へ直接ガスGを送り込むとすれば結局、内槽4にも別途ガスGを供給するなどして、両空間I,Aで圧力のバランスを調整する必要がある。そこで、
図1に示すように内部空間IへガスGを送り込み、蓋上スペースDからアニュラスペースAへ間接的にガスGを供給するようにすれば、内部空間Iの圧力をアニュラスペースAと同等以上に簡単に保つことができ、好適である。
【0052】
また、本第一実施例では屋根2aにおける平面視でリテイニングウォール6より内側の位置に、頂部開口11とは別に蓋上スペース連通管19を設け、該蓋上スペース連通管19とアニュラスペースパージ管15を上部連絡管17で接続しているが、アニュラスペースパージ管15と頂部開口11を接続することでガスGの置換を行うことも可能である。ただし、その場合は上部連絡管17にあたる配管を屋根2aの中心から外周部まで長く延ばさなくてはならず、配管の設置にかかる手間やコストが増大してしまう。よって、アニュラスペースパージ管15を蓋上スペースDに接続するにあたっては、頂部開口11よりアニュラスペースA寄りの位置に蓋上スペース連通管19を設ける方がより好適である。
【0053】
以上のように、上記本第一実施例は、内槽4と、外槽2と、前記内槽4の上部を覆う蓋部4aと、アニュラスペースAに形成された側部断熱層8と、前記側部断熱層8をアニュラスペースAに保持するリテイニングウォール6とを備えたタンク1に、アニュラスペースAに開口を有する送給用配管(アニュラスペースパージ管)15と、アニュラスペースAに開口を有する抜出用配管(アニュラスペース連通管)20とを備えている。
【0054】
そして、タンク1内のガスGを置換するにあたり、アニュラスペースAに開口を有する送給用配管15からアニュラスペースAに対してガスGを送り込むと共に、アニュラスペースAに開口を有する抜出用配管20からアニュラスペースA内のガスGを抜き出すようにしている。このようにすると、送給用配管15へ導入されるガスGはリテイニングウォール6を通過する際の抵抗を受けず、アニュラスペースAへガスGを送り込むにあたっての抵抗が少ないので、効率良くガスGを送り込んで置換を迅速に行うことができる。
【0055】
また、本第一実施例は、前記内槽4の内部空間Iと、タンク1の外部空間Oとを連通する内槽パージ管10と、前記送給用配管15を前記タンク1内における前記蓋部4aの上方の蓋上スペースDに接続する上部連絡管17とを備えている。
【0056】
そして、前記内槽4の内部空間IへガスGを送り込み、前記タンク1の蓋上スペースDから前記送給用配管15に対してガスGを送り込むようにしている。このようにすると、ガスGの置換の過程において、内部空間Iの圧力をアニュラスペースAと同等以上に簡単に保つことができる。
【0057】
また、本第一実施例は、蓋上スペースDと外部空間Oを連通する蓋上スペース連通管19を備え、前記上部連絡管17は、一端を前記送給用配管15に、他端を前記蓋上スペース連通管19に接続されている。このようにすると、アニュラスペースパージ管15を蓋上スペースDと連通させるにあたり、アニュラスペースA寄りの位置に設けた蓋上スペース連通管19とアニュラスペースパージ管15を接続することで、配管の設置にかかる手間やコストを節減することができる。
【0058】
また、本第一実施例においては、複数の前記送給用配管15が周方向に関して均等にアニュラスペースAに配置されている。このようにすると、側部断熱層8内に対し均等にガスGを供給することができ、アニュラスペースAにおいてガスGの置換にかかる時間をいっそう縮減できる。
【0059】
また、本第一実施例において、前記送給用配管は、下端を前記側部断熱層8内に配置されたアニュラスペースパージ管15とし、前記抜出用配管は、下端がアニュラスペースAにおける前記側部断熱層8の上方に開口するアニュラスペース連通管20とすることができる。
【0060】
そして、前記送給用配管(アニュラスペースパージ管)15は、前記側部断熱層8内にガスGを送り込み、前記抜出用配管(アニュラスペース連通管)20は、アニュラスペースAにおける前記側部断熱層8の上方からガスGを抜き出すようにしている。
【0061】
また、本第一実施例のタンクのガス置換装置においては、前記アニュラスペースパージ管15の前記側部断熱層8内に位置する部分の側面に、管の内外を連通する孔15aを設けている。こうすることにより、短時間で多くのガスGをアニュラスペースパージ管15からアニュラスペースA内に送り込むことができる。
【0062】
したがって、本第一実施例によれば、アニュラスペースのガスの置換を迅速に行い得る。
【0063】
図4は本発明を適用したタンクの別の形態を示している。本第二実施例では、上部連絡管17の一端をアニュラスペースパージ管15ではなく、アニュラスペース連通管20の上端に接続し、ガスGの置換を行うようにしている。この場合、蓋上スペースD内に充満するガスGは、蓋上スペース連通管19から上部連絡管17を通り、アニュラスペース連通管20からアニュラスペースAにおける側部断熱層8の上方に導入される。そして、側部断熱層8の上面から側部断熱層8を通り、側部断熱層8内に埋め込まれたアニュラスペースパージ管15に入って上端から抜き出され、外部空間Oへ排出されることになる。すなわち、本第二実施例においては、アニュラスペース連通管20が送給用配管として、アニュラスペースパージ管15が抜出用配管として、それぞれ機能する。
【0064】
このようにしても、送給用配管であるアニュラスペース連通管20へ導入されるガスGはリテイニングウォール6の通過に伴う抵抗を受けないので、その分だけ多くのガスGを迅速にアニュラスペースA内に送り込むことができる。ただし、このようにする場合は、孔15aはアニュラスペースパージ管15のうち側部断熱層8の底部に位置する部分にのみ設け、側部断熱層8のうち深い部分にガスGを送り込むべきである。ガスGにとっては、側部断熱層8のうち浅い部分に位置する孔15aを通ってアニュラスペースパージ管15の管内に入る方が、深い部分に位置する孔15aを通って管内に入るよりも抵抗が小さい。このため、浅い部分に孔15aが設けられているとガスGの流量がそこに集中してしまい、側部断熱層8の深い部分におけるガスGの置換がうまく行かない虞があるからである。
【0065】
以上のように、上記本第二実施例において、前記送給用配管は、下端がアニュラスペースAにおける前記側部断熱層8の上方に開口するアニュラスペース連通管20とし、前記抜出用配管は、下端を前記側部断熱層8内に配置されたアニュラスペースパージ管15としている。
【0066】
そして、前記送給用配管(アニュラスペース連通管)20は、アニュラスペースAにおける前記側部断熱層8の上方へガスGを送り込み、前記抜出用配管(アニュラスペースパージ管)15は、前記側部断熱層8内からガスGを抜き出すようにしている。このようにしても、送給用配管20へ導入されるガスGはリテイニングウォール6を通過する際の抵抗を受けないので、ガスGの置換にかかる時間を短くすることができる。
【0067】
その他の構成や作用効果については上記第一実施例(
図1、
図2参照)と同様であるため説明を省略するが、本第二実施例によれば、アニュラスペースのガスの置換を迅速に行い得る。
【0068】
尚、本発明のタンクのガス置換方法および装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 タンク
2 外槽
2a 屋根
2b 側壁
3 貯留物
4 内槽
4a デッキ(蓋部)
4b 側壁
4c 底面
5 基礎
6 リテイニングウォール
7 底部断熱層
8 側部断熱層
9 ブランケット
10 内槽パージ管
11 頂部開口
12 蓋部開口
13 開閉弁
14 放散塔
15 アニュラスペースパージ管(送給用配管、抜出用配管)
15' アニュラスペースパージ管
15a 孔
16 開閉弁
17 上部連絡管
18 開閉弁
19 蓋上スペース連通管
20 アニュラスペース連通管(抜出用配管、送給用配管)
21 開閉弁
22 排出管
A アニュラスペース
D 蓋上スペース
G ガス
I 内部空間
O 外部空間