(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】輸液パックを用いた微細気泡発生方法および微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
B01F 23/232 20220101AFI20221208BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20221208BHJP
B01F 25/451 20220101ALI20221208BHJP
B01F 33/84 20220101ALI20221208BHJP
B01F 25/27 20220101ALI20221208BHJP
B01F 35/52 20220101ALI20221208BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20221208BHJP
B01F 25/452 20220101ALI20221208BHJP
【FI】
B01F23/232
A61M5/14 500
B01F25/451
B01F33/84
B01F25/27
B01F35/52
A61J1/05 351Z
B01F25/452
(21)【出願番号】P 2018160627
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018016730
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504077308
【氏名又は名称】安斎 聡
(73)【特許権者】
【識別番号】518037530
【氏名又は名称】辻 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安斎 聡
(72)【発明者】
【氏名】辻 直樹
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-537933(JP,A)
【文献】特表平06-503976(JP,A)
【文献】特開2015-167926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
A61M 5/14
B01F 33/84
B01F 35/52
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液パックを用いた微細気泡発生方法であって、
前記輸液パック内に含まれる気体を放出する第一の工程と、
前記輸液パック内に注入用気体を与圧しつつ注入する第二の工程と、
前記予圧された輸液パック内に注射器の注射針を穿刺する第三の工程と、
前記注射器を駆動することにより、注射針から輸液を注射器の容器内へ移動させる第四の工程と、
前記注射器を駆動することにより、前記第四の工程により移動した輸液を再度輸液パック内へ移動させる第五の工程と、を備え、
前記注入用気体は、水素、酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素、または亜酸化窒素のいずれかを含み、
前記第四の工程および第五の工程において、前記注射器の注射針と、前記注射器の容器との間に気体を微細気泡として放出するインライン型ユニットを配置し、前記インライン型ユニットは、容器と注射器との間を繋ぐ液体通路と、気体を圧入するための圧入手段と、前記液体通路内に配置され、圧入された気体を微細気泡として放出する直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している気泡発生媒体と、を備え、前記気泡発生媒体から、注入用気体が微細気泡となって輸液内に注入され、
輸液内の前記注入用気体の気泡数密度を10の8乗個/cc以上とすることを特徴とする、
輸液パックを用いた微細気泡発生方法。
【請求項2】
前記第四の工程および第五の工程において前記注射器の駆動する回数および速度を制御手段によって制御することを特徴とする、
請求項1に記載の輸液パックを用いた微細気泡発生方法。
【請求項3】
前記注射針の内径は、0.6mm以上3.0mm以下であることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載の輸液パックを用いた微細気泡発生方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の輸液パックを用いた微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置であって、
前記注射器を固定する固定手段と、
前記注射器のプランジャを注射器の容器の長手方向に対して往復移動させるための駆動手段と、
前記駆動手段の往復移動の回数と速度を制御する制御装置と、
前記制御装置の制御パターンを選択するための選択手段と、
を備えることを特徴とする、
微細気泡発生装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の輸液パックを用いた微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置であって、
前記注射器の注射針と、前記注射器の容器との間に気体を微細気泡として放出するインライン型ユニットを配置し、
前記インライン型ユニットは、容器と注射器との間を繋ぐ液体通路と、気体を圧入するための圧入手段と、前記液体通路内に配置され、圧入された気体を微細気泡として放出する
直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している気泡発生媒体と、を備え、
前記微細気泡発生装置は、前記第四の工程および第五の工程において前記液体通路内の液体に対して、圧入された気体を微細気泡として放出することを特徴とする、
微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記液体通路の中途部に、余剰気体を排出するための気体排出通路を設け、
前記気体排出通路の中途部に弁を設けたことを特徴とする、
請求項5に記載の微細気泡発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液パックを用いた微細気泡発生方法の技術に関し、より詳しくは、輸液パックの内部に注入用気体を微細気泡として混入する微細気泡発生方法および微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点滴静脈注射に用いられる生理食塩水が封入された輸液パックは公知となっている。輸液パックは、合成樹脂製であり、生理食塩水の他に生理食塩水の劣化を防ぐための窒素が封入されている。
前記輸液パックに入った生理食塩水を静脈内に注入する点滴静脈注射を行う際には、輸液パックを注入先よりも上方に載置し、チューブと連結する。チューブの中途部には、チャンバが設けられており、チャンバに輸液が滴下する。チャンバに滴下した輸液は、細かい飛沫となるため、輸液中の通常サイズの気泡は破裂し除去される。また、滴下速度を調節することにより、時間当たりの注入量(注入速度)を調節することができる。注入速度は手動若しくはポンプ等を用いて自動で制御する。これにより、注入先である静脈へ入る輸液の注入速度を調節しつつ緩やかに持続的に薬剤を投与することができる。
【0003】
ところで、前述した点滴静脈注射を用いて、気体をマイクロバブルとして含んだ輸液を注入先である静脈へと注入する技術が公知となっている(例えば、特許文献1)。
また、近年、前述した点滴静脈注射を用いて、水素分子(H2)や酸素分子(O2)を常温常圧化においてサイズ(直径)が100μm未満の気泡(以下、微細気泡とする)を静脈内へ供給する臨床研究が報告されている。すなわち、急性脳幹梗塞患者にH2が溶存する輸液を投与したところ、有意性のある病態改善効果が上がったとの報告がなされている。このようなH2が溶存する輸液を作成するためには、輸液を製造する段階で飽和する程度のH2を溶存させ、専用の装置を使って樹脂製の輸液パックへ注入して作成する必要が有り、装置の大型化や製法の困難性が課題として存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、以上に示したかかる課題に鑑み、輸液パックの製造段階ではなく輸液パックの使用段階で、施術者が容易に輸液中に微細気泡を発生させることができる輸液パックを用いた微細気泡発生方法および微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、本発明においては、輸液パックを用いた微細気泡発生方法であって、
前記輸液パック内に含まれる気体を放出する第一の工程と、
前記輸液パック内に注入用気体を与圧しつつ注入する第二の工程と、
前記予圧された輸液パック内に注射器の注射針を穿刺する第三の工程と、
前記注射器を駆動することにより、注射針から輸液を注射器の容器内へ移動させる第四の工程と、
前記注射器を駆動することにより、前記第四の工程により移動した輸液を再度輸液パック内へ移動させる第五の工程と、を備え、
前記注入用気体は、水素、酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素、または亜酸化窒素のいずれかを含み、前記第四の工程および第五の工程において、前記注射器の注射針と、前記注射器の容器との間に気体を微細気泡として放出するインライン型ユニットを配置し、前記インライン型ユニットは、容器と注射器との間を繋ぐ液体通路と、気体を圧入するための圧入手段と、前記液体通路内に配置され、圧入された気体を微細気泡として放出する直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している気泡発生媒体と、を備え、前記気泡発生媒体から、注入用気体が微細気泡となって輸液内に注入され、
輸液内の前記注入用気体の気泡数密度を10の8乗個/cc以上とするものである。
【0009】
また、本発明においては、前記第四の工程および第五の工程において前記注射器の駆動する回数および速度を制御手段によって制御するものであってもよい。
【0010】
また、本発明においては、前記注射針の内径は、0.6mm以上3.0mm以下であるものであってもよい。
【0011】
また、本発明においては、輸液パックを用いた微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置であって、
前記注射器を固定する固定手段と、
前記注射器のプランジャを注射器の容器の長手方向に対して往復移動させるための駆動手段と、
前記駆動手段の往復移動の回数と速度を制御する制御装置と、
前記制御装置の制御パターンを選択するための選択手段と、
を備えるものである。
【0012】
また、本発明においては、輸液パックを用いた微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置であって、
前記注射器の注射針と、前記注射器の容器との間に気体を微細気泡として放出するインライン型ユニットを配置し、
前記インライン型ユニットは、容器と注射器との間を繋ぐ液体通路と、気体を圧入するための圧入手段と、前記液体通路内に配置され、圧入された気体を微細気泡として放出する直径数μm~数十μmの細かな孔を多数有している気泡発生媒体と、を備え、
前記微細気泡発生装置は、前記第四の工程および第五の工程において前記液体通路内の液体に対して、圧入された気体を微細気泡として放出するものである。
【0013】
また、本発明においては、前記液体通路の中途部に、余剰気体を排出するための気体排出通路を設け、
気体排出通路の中途部に弁を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
本発明においては、注射器を用いて注入用気体を輸液パック内に微細気泡として注入することが可能となり、輸液パックの製造段階ではなく輸液パックの使用段階で、施術者が容易に輸液中に微細気泡を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)~(E)本発明の一実施形態に係る輸液パックを用いた微細気泡発生方法の第一の工程から第五の工程を示す概略図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る輸液パックおよびチューブを示す概略図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置を示す斜視図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る第三の工程における微細気泡発生装置を示す正面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る第四の工程における微細気泡発生装置を示す正面図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る第五の工程における微細気泡発生装置を示す正面図。
【
図7】本発明の別実施形態に係る微細気泡発生装置を示す概略図。
【
図8】本発明の別実施形態に係る微細気泡発生装置を示す一部断面図。
【
図9】本発明の別実施形態に係る輸液パック、注射器、および微細気泡発生装置を示す一部断面図。
【
図10】本発明の別実施形態に係る機体排出通路を備えた微細気泡発生装置を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0018】
まず、本発明の一実施形態にかかる輸液パックを用いた微細気泡発生方法について
図1を用いて説明する。
輸液パックPは、ヒトの体内へ注入することを目的とする輸液が封入された容器であり、主に点滴静脈注射に用いられるものである。輸液パックPは、樹脂で形成されており、例えば合成樹脂であるPEやPPで形成されている。
輸液パックPに封入された輸液は、主成分を生理食塩水とする溶解液を含むものである。また、有効成分である各種薬剤を含むものであってもよい。
輸液パックPには、輸液の他に輸液の劣化を防止するために窒素が封入されている。また、輸液パックPには、酸素や二酸化炭素などのその他の気体が封入されていてもよい。
【0019】
輸液パックPを用いた微細気泡発生方法において、第一の工程として、輸液パックPに封入されている気体を放出する。例えば、第一の工程においては、
図1(A)に示すように、注射器10を用いて輸液パックPに封入されている気体を放出する。施術者は、注射器10の注射針10Aを輸液パックPの上端に設けられたキャップP1に穿刺して、輸液パックP内の気体が存在する部分まで注射針10Aを挿入して、注射器10のプランジャ10Bを移動させることにより気体を放出する。輸液パックPの上端に設けられたキャップP1の内側には軟質材料でできた膜部材が設けられており、膜部材が穿刺後の孔を塞ぐため穿刺後の輸液パックPの密閉性は保たれる。
気体を放出した後の輸液パックPにおいては、輸液のみが存在している。
【0020】
第二の工程として、輸液のみが存在している輸液パックP内に注入用気体を与圧しつつ注入する。注入用気体は、輸液と共にヒトの体内へ注入することを目的とする気体であり、水素、酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素のいずれかを含む。また、注入用気体は、その他の気体が低い割合で含まれていてもよい。例えば、第二の工程においては、
図1(B)に示すように、注射器10を用いて輸液パックPに注入する。施術者は、注射器10の注射針10Aを輸液パックPの上端に設けられたキャップP1に穿刺して、輸液パックP内まで注射針10Aを挿入して、注射器10のプランジャ10Bを移動させることにより注入用気体を注入する。この際、注入用気体の圧力を大気圧よりも0.04MPa~0.15MPa程度高い圧力とする。これにより、輸液パックP内の圧力が、大気圧よりも0.04MPa~0.15MPa程度高い圧力となるまで注入用気体を注入する。注入用気体が注入された輸液パックPにおいては、輸液と注入用気体が分離して存在している。輸液パックPの上端に設けられたキャップP1の内側には軟質材料でできた膜部材が設けられており、膜部材が穿刺後の孔を塞ぐため穿刺後の輸液パックPの密閉性は保たれる。
【0021】
第三の工程として、予圧された輸液パックP内に注射器10の注射針10Aを穿刺する。例えば、第三の工程においては、
図1(C)に示すように、注射器10を用いて輸液パックPに注入する。施術者は、予圧された輸液パックPを直立させた状態で、注射器10の注射針10Aを輸液パックPの下端にあるキャップP1に穿刺して、輸液パックP内の輸液が存在する部分まで注射針10Aを挿入する。このとき注射器10のプランジャ10Bは、最も注射器10の容器10C内へ押し込まれた状態である。
【0022】
第四の工程として、注射器10を駆動することにより、注射針10Aから輸液を注射器10の容器10C内へ移動させる。例えば、第四の工程において、
図1(D)に示すように、注射器10のプランジャ10Bを注射器10の容器10Cの長手方向に対して移動させることにより容器10C内の空間Sの容積を増加させることで、輸液パックP内の輸液を注射器10の容器10C内へ移動させる。
【0023】
輸液パックP内の輸液は、輸液パックP内の圧力および注射器10のプランジャ10Bの移動による容器10C内の負圧により容器10C内へ移動する。容器10C内へ移動する際に、注入用気体と輸液とがともに注射針10A内を通過する。この際、注入用気体と輸液とが混合され、また、注射針10Aと容器10Cとの断面積の差によって差圧が生じるため、注入用気体が微細気泡となって輸液内に存在する。微細気泡とは、常温常圧化においてサイズ(直径)が100μm未満の気泡である。
【0024】
第五の工程として、注射器10を駆動することにより、第四の工程により移動した輸液を再度輸液パックP内へ移動させる。例えば、第五の工程において、
図1(E)に示すように、注射器10のプランジャ10Bを注射器10の容器10Cの長手方向に対して移動させることにより容器10C内の空間Sの容積を減少させることで、容器10C内の輸液を輸液パックP内へ移動させる。
【0025】
容器10C内の輸液は、注射器10のプランジャ10Bの移動による容器10C内の正圧により輸液パックP内へ移動する。これにより、注入用気体が微細気泡となって存在する輸液が輸液パックP内に戻される。第四の工程と第五の工程を数回繰り返すことにより、輸液内の気泡数密度は、10の8乗個/cc以上となるのが望ましい。
気泡数密度の指標として、レーザー光による光の散乱の確認方法がとられることがある。通常の生理食塩水を用いて対照実験を行った場合、通常の輸液である生理食塩水では光の散乱はほとんど見られないが、本実施形態における微細気泡発生方法により微細気泡を発生させた場合、光の散乱により、生理食塩水内のレーザー光を視認することが可能となる。
【0026】
このように第一の工程から第五の工程を行うことにより、輸液パックP内の輸液に微細気泡を混入させることができる。微細気泡が混入された輸液パックPは、主に点滴静脈注射に用いられる。例えば、水素を微細気泡として混入した輸液パックPを用いて点滴静脈注射で患者に投与する場合、輸液パックPを注入先である患者の体よりも上方に載置し、チューブ11と連結する。
図2に示すように、チューブ11の中途部には、チャンバ12が設けられており、チャンバ12に輸液が滴下する。チャンバ12に滴下した輸液は、細かい飛沫となるため、輸液中の通常サイズの気泡は破裂し除去される。しかし、輸液中に微細気泡として存在する水素は飛沫内にも存在し続けることが可能であり、チャンバ12に滴下した輸液の中でも存在し続ける。チャンバ12内の輸液は、チューブ11を通って患者の静脈内へと注入され、患者の静脈内への水素分子(H2)の供給が行われる。例えば、急性脳幹梗塞患者へH2が含まれる輸液の投与が行われることにより、有意性のある病態改善効果がある。
【0027】
次に、輸液パックPを用いた微細気泡発生方法を行うための微細気泡発生装置20について
図3から
図6を用いて説明する。
微細気泡発生装置20は、主に第三の工程、第四の工程、および第五の工程を行うための装置であり、輸液パックP内に予め注入された注入用気体を微細気泡として混入するための装置である。
微細気泡発生装置20は、本体21と、輸液パック固定部22と、注射器固定部23と、駆動部24と、を備える。
【0028】
本体21は、上下方向が長手方向となる直方体状の部材であり、その下端に設置台21Aが備えられている。また、前面上部に輸液パック固定部22が設けられており、前面下部に注射器固定部23と、駆動部24と、が設けられている。また、上端部には、表示手段と、選択手段とを兼ねるタッチパネル26が設けられており、施術者が、タッチパネル26を操作することで、制御手段の制御パターンを選択することができる。
本体21の内部には、制御手段であるCPU25が設けられている。また、本体21の前面にはカバー27が設けられており、カバー27は、透明な樹脂等で構成されており、本体21に対して開閉可能である。
【0029】
輸液パック固定部22は、本体21前面から突出して設けられており、輸液パックPのキャップP1を挟持して固定するものである。輸液パック固定部22は、左右二枚の板材を備えており、板材によって、輸液パックPのキャップP1を挟持することで固定する。また、輸液パック固定部22は上下方向に摺動可能に構成されている。輸液パック固定部22が上端へ移動したときは、輸液パックPの下端と注射器10の注射針10Aの上端とが離間する位置にある(
図4の二点鎖線参照)。輸液パック固定部22が下端へ移動したときは、輸液パックPの下端にあるキャップP1に注射器10の注射針10Aが穿刺される位置にある(
図4の実線参照)。また、輸液パック固定部22は、この構成に限定するものではなく、例えば、孔を設けてキャップP1を孔に貫入することにより、固定する構成としてもよい。
【0030】
注射器固定部23は、輸液パック固定部22よりも下方にあり、注射器10の長手方向を上下方向と平行にした状態で固定するものである。注射器固定部23は、左右二枚の板材を備えており、板材によって、注射器10の容器10Cを挟持することで固定する。
注射器固定部23に固定される注射器10は、注射針10Aと、押子であるプランジャ10Bと、容器10Cとを備える。注射針10Aの内径は、0.6mm以上3.0mm以下である。また、容器10Cの断面積は500mm2以上700mm2以下である。
【0031】
駆動部24は、注射器10のプランジャ10Bを注射器10の容器10Cの長手方向に対して往復移動させるためのものである。駆動部24は、上下方向へ移動可能に構成されており、プランジャ10Bを相対移動不能となるように固定する。そして、駆動部24を、上下方向へ移動させることにより、プランジャ10Bを上下に往復移動させることができる。
【0032】
次に第三の工程、第四の工程、および第五の工程を行うときの微細気泡発生装置20について説明する。
第一の工程において、輸液パックP内に含まれる気体を放出し、第二の工程において、輸液パックP内に注入用気体を与圧しつつ注入する。第一の工程および第二の工程を行った後の輸液パックPを、微細気泡発生装置20の輸液パック固定部22によって固定する。
【0033】
次に、
図4に示すように、第三の工程において、予圧された輸液パックP内に注射器10の注射針10Aを穿刺するために、まず、注射器10を輸液パック固定部22の下方にある注射器固定部23に固定する。次に、輸液パック固定部22を上端へ移動させて、輸液パックPを固定する。このとき、輸液パックPの下端と注射器10の注射針10Aの上端とが離間する。そして、輸液パック固定部22を下端へ移動させることにより、輸液パックPの下端にあるキャップP1に注射器10の注射針10Aが穿刺される。
【0034】
次に、
図5に示すように、第四の工程において、注射器10を駆動することにより、注射針10Aから液体を注射器10の容器10C内へ移動させる。注射器10を駆動するとは、言い換えれば、駆動部24によって、注射器10のプランジャ10Bを下方向へ移動することである。注射器10のプランジャ10Bを下方に移動することにより、注射器10の容器10Cに負圧となった空間Sが設けられる。この空間Sに、輸液パックP内の輸液および注入用気体が注射針10Aを通って移動する。注入用気体と輸液とが混合され、また、注射針10Aと容器10Cとの断面積の差によって差圧が生じるため、注入用気体が微細気泡となって輸液内に存在する。微細気泡とは、常温常圧下においてサイズ(直径)が100μm未満の気泡である。
【0035】
次に、
図6に示すように、第五の工程において、注射器10を駆動することにより、第四の工程により移動した輸液を再度輸液パックP内へ移動させる。注射器10を駆動するとは、言い換えれば、駆動部24によって、注射器10のプランジャ10Bを上方向へ移動することである。注射器10のプランジャ10Bを上方に移動することにより、注射器10の容器10Cの空間Sの容積が減少する。空間S内の輸液を輸液パックP内へ移動させる。空間S内の輸液には、注入用気体である水素分子(H2)が微細気泡として存在しており、輸液が輸液パックP内へ戻されるときに、輸液は、水素分子を微細気泡として含む状態で戻される。
【0036】
さらに、第四の工程および第五の工程を繰り返すことにより、輸液内の気泡数密度が向上し、輸液内の気泡数密度は、10の8乗個/cc以上となる。
【0037】
また、第四の行程および第五の工程を行う際の駆動部24の駆動速度および駆動回数は制御手段であるCPU25によって制御される。
CPU25は、駆動部24を上下方向に移動させる図示せぬアクチュエータに接続されている。前記アクチュエータは、例えば、モータおよびラックアンドピニオンなどの駆動機構で構成されている。制御手段であるCPU25は、前記アクチュエータのモータの回転速度および正逆回転の変更について制御する。
【0038】
このように構成することにより、施術者は、微細気泡発生装置20を用いて容易に輸液パックP内の輸液に微細気泡を混入させることができる。施術者は、微細気泡発生装置20を用いる前に、輸液パックPに注射器10等を用いて注入用気体(H2)を与圧しつつ注入する。施術者は、輸液パック固定部22を上端へ移動させて、予圧された輸液パックPのキャップP1を下にした状態で、輸液パック固定部22に固定する。このとき、輸液パックPの下端と注射器10の注射針10Aの上端とが離間する。そして、輸液パック固定部22を下端へ移動させることにより、輸液パックPに注射器10の注射針10Aが穿刺される。
【0039】
次に、施術者は、タッチパネル26を操作して制御パターンを選択する。例えば、「低速・5回」や「高速・10回」など、プランジャ10Bの上下動の速度と回数を選択する。タッチパネル26の操作後、駆動部24が駆動することにより、注射器10のプランジャ10Bが上下に移動し、注射器10の容器10Cと輸液パックPとの間で輸液が移動する。輸液が移動する際に、H2が微細気泡として輸液に混入される。
このように、大型の装置を用いることなく、施術者が施術に必要な分だけ注入用気体を微細気泡として混入させた輸液パックPを製造することができる。
【0040】
以上のように、輸液パックPを用いた微細気泡発生方法であって、輸液パックP内に含まれる気体を放出する第一の工程と、輸液パックP内に注入用気体を与圧しつつ注入する第二の工程と、予圧された輸液パック内に注射器10の注射針10Aを穿刺する第三の工程と、注射器10を駆動することにより、注射針10Aから液体を注射器10の容器10C内へ移動させる第四の工程と、注射器10を駆動することにより、第四の工程により移動した輸液を再度輸液パックP内へ移動させる第五の工程と、を備えるものである。
【0041】
このように構成することにより、注射器10を用いて注入用気体を輸液パックP内に微細気泡として注入することが可能となり、輸液パックPの製造段階ではなく輸液パックPの使用段階で、施術者が容易に輸液中に微細気泡を発生させることができる。
ことができる。
【0042】
また、注入用気体は、水素、酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素、または亜酸化窒素のいずれかを含むものであってもよい。
このように構成することにより、水素、酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素、または亜酸化窒素を点滴静脈注射によって患者の静脈内へ供給することができる。
【0043】
また、第四の工程および第五の工程において注射器10の駆動する回数および速度を制御手段であるCPU25によって制御するものであってもよい。
このように構成することにより、輸液パックPの大きさや生理食塩水以外の成分の濃度等に合わせて、適当な気泡数密度とすることができる。
【0044】
また、注射針10Aの内径は、0.6mm以上3.0mm以下であるものであってもよい。
このように構成することにより、注射針10Aと容器10Cとの断面積の差によって差圧が生じるため、注入用気体が微細気泡となりやすくなる。
【0045】
次に、別の実施形態として、インライン型のユニットを用いた微細気泡発生装置120について
図7から
図9を用いて説明する。
微細気泡発生装置120は、主に第二の工程、第三の工程、第四の工程、および第五の工程を行うための装置であり、輸液パックP内の輸液に注入用気体を微細気泡として混入するための装置である。
微細気泡発生装置120は、インライン型ユニット121と、圧送手段である圧力調整器122と、キャニスタ123とを備える。
インライン型ユニット121は、注射器10の注射針10Aと、前記注射器10の容器10Cとの間に配置されるユニットであり、注入用気体を微細気泡として放出するためのユニットである。
インライン型ユニット121は内部に管状の液体通路131を設けた円筒状の本体130と、液体通路131の壁面130Aの一部を凹状にして、その部分に設けた気泡発生媒体132とから構成される。
本体130は、例えば、PTFEなどのフッ素樹脂(フッ化炭素樹脂)で構成されている。なお、耐熱性の合成樹脂であればフッ素樹脂に限定するものではない。
液体通路131は、本体130内に設けられた空間であり、容器10C側の先端部と、注射針10Aの基部10Dとに連結されている。液体通路131の容器10C側の端部には、容器10C側の先端部10Eを装着するための凹部131Aが設けられている。また、液体通路131の注射針10A側の端部には、注射針10Aの基部10Dに設けられた凹部と嵌合するための凸部131Bが設けられている。
気泡発生媒体132は、液体通路131の壁面130A内部に配置されている。気泡発生媒体132は、液体通路131の輸液が流れる方向に平行となるように配置されている。また、気泡発生媒体132は、炭素系の多孔質素材で構成されており、
図6に示すように、直径数μm~数十μmの細かな孔132Aを多数有している。また、気泡発生媒体132は導電体であり、気泡発生媒体132から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体132を通過する際に微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素およびセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。また、炭素系の多孔質素材の表面には、厚さ数nmの膜が形成されている。前記膜はケイ素を含む無機質の膜で形成されている。
【0046】
圧力調整器122は、気泡発生媒体132内へ気体を圧送するための手段であり、圧送する気体の圧力を調整する装置である。例えば、圧力調整器122は、調整弁で構成されており、調整弁の開度を調整するための操作部122Aと、調整弁によって調整された圧入する気体の圧力を表示する表示部122Bが設けられている。圧力調整器122は、操作部122Aを操作して調整弁の開度を調整することにより、圧入する気体の圧力を調整する。
キャニスタ123は、圧縮された気体が貯蔵される容器であり、圧力調整器122を介して気泡発生媒体と連結されている。キャニスタ123内の気体には、予圧がされているため、圧力調整器122の開度を調整することで、最大でキャニスタ123内に予圧された圧力と同じ圧力で気泡発生媒体132へ気体を圧送することができる。
【0047】
また、
図10に示すように、液体通路131の中途部に、余剰気体を排出するための気体排出通路135を設けることもできる。気体排出通路135の中途部に弁136を設けている。弁136を開閉することにより、余剰気体を排出することが可能となる。
【0048】
次に、第二の工程、第三の工程、第四の工程、および第五の工程を行うときの微細気泡発生装置20について説明する。
第一の工程において、輸液パックP内に含まれる気体を放出する。第一の工程を行った後の輸液パックPに、第三の工程を行う。すなわち、微細気泡発生装置120と連結した注射器10の注射針10Aを穿刺する。注射針10Aの基部10Dには微細気泡発生装置120のインライン型ユニット121が連結している。
【0049】
次に、第四の工程において、注射器10を駆動することにより、注射針10Aから液体を注射器10の容器10C内へ移動させる。注射器10を駆動するとは、言い換えれば、注射器10のプランジャ10Bを下方向へ移動することである。注射器10のプランジャ10Bを下方に移動することにより、注射器10の容器10Cに負圧となった空間Sが設けられる。この空間Sに、輸液パックP内の輸液が注射針10Aおよびインライン型ユニット121の液体通路131を通って移動する。
液体通路131において、気泡発生媒体132から、注入用気体が微細気泡となって輸液内に注入される。すなわち、第四の工程において、輸液内に注入用気体を与圧しつつ注入する第二の工程もあわせて行われる。微細気泡とは、常温常圧下においてサイズ(直径)が100μm未満の気泡である。
【0050】
次に、第五の工程において、注射器10を駆動することにより、第四の工程により移動した輸液を再度輸液パックP内へ移動させる。注射器10を駆動するとは、注射器10のプランジャ10Bを上方向へ移動することである。注射器10のプランジャ10Bを上方に移動することにより、注射器10の容器10Cの空間Sの容積が減少する。空間S内の輸液が、インライン型ユニット121の液体通路131および注射針10Aを通って輸液パックP内へ移動する。液体通路131において、気泡発生媒体132から、注入用気体が微細気泡となって輸液内に注入される。すなわち、第五の工程において、輸液内に注入用気体を与圧しつつ注入する第二の工程もあわせて行われる。微細気泡とは、常温常圧下においてサイズ(直径)が100μm未満の気泡である。
【0051】
さらに、第四の工程および第五の工程を繰り返すことにより、輸液内の気泡数密度が向上し、輸液内の気泡数密度は、10の8乗個/cc以上10の10乗個/cc以下となる。
気泡数密度の指標として、レーザー光による光の散乱の確認方法がとられることがある。通常の生理食塩水を用いて対照実験を行った場合、通常の生理食塩水では光の散乱はほとんど見られないが、本実施形態における微細気泡発生方法により微細気泡を発生させた場合、光の散乱により、生理食塩水内のレーザー光を視認することが可能となる。
【0052】
このように構成することにより、施術者は、微細気泡発生装置120を用いて容易に輸液パックP内の輸液に微細気泡を混入させることができる。施術者は、キャニスタ123の残量および輸液を移動させる時間を制御することで、微細気泡の発生量を概算で算出することができる。
また、微細気泡発生装置120を用いて発生させる微細気泡の量は、圧力調整器122によって圧力を調整することで容易に調整することができる。また、圧力調整器122によって注入用気体の圧力を高くすることにより、飽和量まで微細気泡を発生させることができる。
【0053】
第一の工程において、施術者が輸液パックP内に含まれる気体を放出する代わりに、輸液パックにフィルター付きの使い捨て針134を付けておくことも可能である。使い捨て針134は、輸液パックPの上面から貫入する。このように構成することにより、輸液パックP内に充満した注入用気体を効率よく排出することが可能となる。これによって、第一の工程を省いて、第二の工程から第五の工程を行う際、輸液パックP内の気体と余剰の注入用気体をフィルター付きの使い捨て針134から排出することができる。このように構成することにより、高濃度の微細気泡を定量的に混入することが可能となる。
【0054】
また、インライン型ユニット121の液体通路131の中途部に、余剰気体を排出するための気体排出通路135を設けることも可能である。気体排出通路135は、注射針10A側の端部に設けられる。すなわち、注射針10Aを輸液パックPに穿刺する場合において、液体通路131の上端付近に位置するように設けられる。気体排出通路135の中途部に弁136を設ける。弁136は、滅菌した状態で用いられる。これにより、気体排出通路135内の圧力が所定の圧力以上となった場合に余剰気体を気体排出通路135から排出することができる。このように構成することにより、高濃度の微細気泡を定量的に混入することが可能となる。
【0055】
インライン型ユニット121を用いた微細気泡発生装置120を用いて、輸液パックPのかわりに採血した血液が入ったパウチに注入用気体を微細気泡として混入することもできる。例えば、治験者から一度血液を採血し、インライン型ユニット121を用いた微細気泡発生装置120を用いて血液内に微細気泡を混入する。そして、微細気泡を混入した血液を治験者に再び戻すという自己輸血を行うこともできる。
【符号の説明】
【0056】
10 注射器
10A 注射針
10B プランジャ
10C 容器
20 微細気泡発生装置
21 本体
22 輸液パック固定部
23 注射器固定部
24 駆動部
25 CPU(制御手段)
26 タッチパネル(選択手段)