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特許7190294共重合体、該共重合体を含む硬化性樹脂組成物、及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】共重合体、該共重合体を含む硬化性樹脂組成物、及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/32 20060101AFI20221208BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08F220/32
C08L33/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018168988
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020041046
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】中川 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】上原 和浩
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-247135(JP,A)
【文献】特開2007-204667(JP,A)
【文献】特開平11-015160(JP,A)
【文献】特開平11-174677(JP,A)
【文献】特開平11-015159(JP,A)
【文献】特開2014-111729(JP,A)
【文献】特開2008-234909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/32
C08L 33/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボン酸又はその無水物に由来する構成単位(A)と、下記式(1)
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~7のアルキル基を示す。Xは炭素数1~12のアルキレン基を示す。Yは置換基として炭素数1~3のアルキル基を有していてもよいメチレン基若しくはエチレン基又は酸素原子を示す。nは0~7の整数を示す。)
で表される化合物に由来する構成単位(B)とを含む共重合体であり、
共重合体の全構成単位に対する構成単位(A)の含有量が2~60重量%、構成単位(B)の含有量が40~98重量%であって、
示差走査熱量計を用いて、5℃/分の速度で昇温した際に現れる発熱ピークトップ温度が180~220℃であることを特徴とする共重合体。
【請求項2】
さらに、下記(c1)~(c4)からなる群より選択された少なくとも1つの化合物に由来する構成単位(C)を含む請求項1に記載の共重合体。
(c1)アルキル基で置換されていてもよいスチレン
(c2)N-置換マレイミド
(c3)N-ビニル化合物
(c4)下記式(2)
【化2】
(式中、R11は水素原子又は炭素数1~7のアルキル基を示す。R12はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示す。Zはヘテロ原子を示す。)
で表される不飽和カルボン酸誘導体
【請求項3】
共重合体の全構成単位に対する構成単位(A)の含有量が2~60重量%、構成単位(B)の含有量が40~98重量%、構成単位(C)の含有量が0~85重量%である請求項2に記載の共重合体。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物のXが炭素数1~3のアルキレン基を示す請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項5】
共重合体の全構成単位に対する構成単位(B)の含有量が60~95重量%である請求項1~4のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の共重合体を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらにカチオン重合開始剤を含む請求項6に記載の共重合体を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載される硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、該共重合体を含む硬化性樹脂組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、VLSIに代表されるサブミクロンオーダーの微細加工を必要とする各種電子デバイス製造の分野では、デバイスのよりいっそうの高密度、高集積化への要求が高まっている。このため、微細パターン形成方法であるフォトリソグラフィー技術に対する要求がますます厳しくなっている。他方、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品においては、その劣化や損傷を防止するための保護膜、層状に配置される配線の間を絶縁するために設ける層間絶縁膜、素子表面を平坦化するための平坦化膜、電気的絶縁を保つための絶縁膜等が設けられている。他方、液晶表示素子、例えばTFT型液晶表示素子にあっては、ガラス基板上に偏光板を設け、ITO等の透明導電回路層及び薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、層間絶縁膜で被覆して背面板とする一方、ガラス板上に偏光板を設け、必要に応じてブラックマトリックス層及びカラーフィルター層のパターンを形成し、さらに透明導電回路層、層間絶縁膜を順次形成して上面板とし、この背面板と上面板とをスペーサを介して対向させて両板間に液晶を封入することで製造されるが、そこで使用される感光性樹脂組成物としては透明性、耐熱性、現像性及び平坦性に優れたものであることが要求される。
【0003】
レジストの高感度化の方法として、感光剤である光酸発生剤を利用した化学増幅型レジストがよく知られている。例えばエポキシ基を有する構造単位を含む樹脂と光酸発生剤とを含有する樹脂組成物を用い、露光により光酸発生剤からプロトン酸を生成させ、エポキシ基を開裂させて架橋反応を引き起こす。これにより樹脂が現像液に対して不溶となってパターンが形成され、さらに、露光後の加熱処理によりレジスト固相内を移動させ、当該酸によりレジスト樹脂等の化学変化を触媒反応的に増幅させる。このようにして、光反応効率(一光子あたりの反応)が1未満の従来のレジストに比べて飛躍的な高感度化が達成されている。現在では開発されるレジストの大半が化学増幅型であり、露光光源の短波長化に対応した高感度材料の開発に採用されている。
【0004】
一方、TFT型液晶表示素子や集積回路素子に設けられる絶縁膜には、微細加工を施すことが必要となるため、当該絶縁膜を形成するための材料として、一般に、感放射線性樹脂組成物が使用されており、このような感放射線性樹脂組成物においては、高い生産性を得るために、高い感放射線性を有するものであることが要求される。また、絶縁膜が耐溶剤性の低いものである場合には、当該絶縁膜に、有機溶剤による膨潤、変形、基板からの剥離等が生じることにより、液晶表示素子や集積回路素子の製造において重大な障害が生じる。そのため、このような絶縁膜には優れた耐溶剤性が要求される。さらに、液晶表示素子や固体撮像素子等に設けられる絶縁膜には、必要に応じて高い透明性が要求される。
【0005】
このような要求に対して、特許文献1には、(a)不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物、(b)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物、及び(c)他のラジカル重合性化合物の共重合体であって、前記成分(b)としてグリシジルメタアクリレートが用いられた共重合体が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、脂環式エポキシ基含有重合性不飽和化合物とラジカル重合性化合物との共重合体であって、脂環式エポキシ基含有重合性不飽和化合物として(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレートが用いられた共重合体が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、(A)アルカリ可溶性基を含むモノマー単位及び(B)エポキシ基含有重合性不飽和化合物に対応するモノマー単位からなる共重合体であって、カルボキシル基と3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を有する構造単位を含む共重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-43643号公報
【文献】特開2003-76012号公報
【文献】特開2006-193718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に開示される共重合体は保存安定性が悪く、-20℃以下で保管する必要があった。また、硬化物の耐溶剤性も低かった。
【0010】
特許文献3の共重合体は、カルボキシル基と3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環のエポキシ基との反応性が悪いためか、硬化時の温度によっては硬化物の耐溶剤性が低くなるため、硬化時に高温に付す必要があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、保存安定性に優れ、比較的低い温度でも硬化し、且つ硬化物の耐溶剤性が優れる共重合体、該共重合体を含む硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、特定の構成単位を含み、発熱ピークトップ温度が180~220℃である共重合体が、保存安定性に優れ、比較的低い温度でも硬化し、且つ硬化物の耐溶剤性が優れることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明では、不飽和カルボン酸又はその無水物に由来する構成単位(A)と、下記式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~7のアルキル基を示す。Xは単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基を示す。Yは置換基として炭素数1~3のアルキル基を有していてもよいメチレン基若しくはエチレン基、酸素原子、又は酸素原子と結合していてもよい硫黄原子を示す。nは0~7の整数を示す。)
で表される化合物に由来する構成単位(B)とを含む共重合体であって、
示差走査熱量計を用いて、5℃/分の速度で昇温した際に現れる発熱ピークトップ温度が180~220℃であることを特徴とする共重合体を提供する。
【0014】
本発明の共重合体は、さらに、下記(c1)~(c4)からなる群より選択された少なくとも1つの化合物に由来する構成単位(C)を含むことが好ましい。
(c1)アルキル基で置換されていてもよいスチレン
(c2)N-置換マレイミド
(c3)N-ビニル化合物
(c4)下記式(2)
【化2】

(式中、R11は水素原子又は炭素数1~7のアルキル基を示す。R12はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示す。Zはヘテロ原子を示す。)
で表される不飽和カルボン酸誘導体
【0015】
本発明の共重合体は、共重合体の全構成単位に対する構成単位(A)の含有量が2~60重量%、構成単位(B)の含有量が40~98重量%、構成単位(C)の含有量が0~85重量%であることが好ましい。
【0016】
本発明は、また、前記共重合体を含む硬化性樹脂組成物を提供する。
【0017】
前記硬化性樹脂組成物は、さらにカチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
【0018】
本発明は、また、前記硬化性樹脂組成物の硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の共重合体は、保存安定性に優れ、比較的低い温度でも硬化し、且つ硬化物の耐溶剤性が優れる。また、前記共重合体を含む硬化性樹脂組成物は、保存安定性に優れ、比較的低い温度でも硬化し、且つ硬化物の耐溶剤性が優れる。さらに、前記硬化性樹脂組成物の硬化物は耐溶剤性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<共重合体>
本発明の共重合体は、不飽和カルボン酸又はその無水物に由来する構成単位(A)と、前記式(1)で表される化合物に由来する構成単位(B)とを含む共重合体であって、示差走査熱量計を用いて、5℃/分の速度で昇温した際に現れる発熱ピークトップ温度が180~220℃であることを特徴とする。本発明の共重合体は、さらに、前記(c1)~(c4)からなる群より選択された少なくとも1つの化合物に由来する構成単位(C)を含んでいてもよい。また、さらに構成単位(A)~(C)以外の構成単位として後述の構成単位(D)を含んでいてもよい。
【0021】
[構成単位(A)]
構成単位(A)は不飽和カルボン酸又はその酸無水物(a)を共重合に付すことにより共重合体に導入することができる。
【0022】
不飽和カルボン酸又はその酸無水物(a)としては特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸;無水メタクリル酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸の無水物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物が挙げられる。これらの中でも、共重合性や現像性の観点からはアクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。不飽和カルボン酸又はその酸無水物(a)は、単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
構成単位(A)の共重合体に占める割合は特に限定されないが、例えば、共重合体を構成する全構成単位に対して2~60重量%が好ましく、より好ましくは3~40重量%、さらに好ましくは5~20重量%である。構成単位(A)の割合が上記範囲内であることにより、耐溶剤性や現像性に優れる傾向がある。なお、本発明において、構成単位の共重合体に占める割合とは、共重合に使用する化合物(単量体)の重量を基準とするものである。例えば、構成単位(A)の共重合体に占める割合とは、共重合に使用する化合物の総量(100重量%)に対する、不飽和カルボン酸又はその酸無水物(a)の使用量の割合を意味する。
【0024】
[構成単位(B)]
構成単位(B)は、下記式(1)で表される化合物を共重合に付すことにより共重合体に導入することができる。
【化3】
【0025】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~7のアルキル基を示す。Xは単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基を示す。Yは置換基として炭素数1~3のアルキル基を有していてもよいメチレン基若しくはエチレン基、酸素原子、又は酸素原子と結合していてもよい硫黄原子を示す。nは0~7の整数を示す。
【0026】
1及びR2における炭素数1~7のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等が挙げられる。nが2以上の場合、n個のR2は同一であっても異なっていてもよい。R1及びR2は、共重合性や反応性の観点からは水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましい。
【0027】
Xのヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基において、ヘテロ原子は炭化水素基の末端に結合していてもよく、炭化水素基を構成する炭素原子間に介在していてもよい。ヘテロ原子は特に限定されないが、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。
【0028】
前記ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等のアルキレン基(炭素数1~12のアルキレン基が好ましく、炭素数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~3のアルキレン基が特に好ましい);チオメチレン基、チオエチレン基、チオプロピレン基等のチオアルキレン基(炭素数1~12のチオアルキレン基が好ましく、炭素数1~6のチオアルキレン基がより好ましい);アミノメチレン基、アミノエチレン基、アミノプロピレン基等のアミノアルキレン基(炭素数1~12のアミノアルキレン基が好ましく、炭素数1~6のアミノアルキレン基がより好ましい)等が挙げられる。この中でも、保存安定性の観点からは、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0029】
Yの置換基として炭素数1~3のアルキル基を有していてもよいメチレン基若しくはエチレン基としては特に限定されないが、メチレン基又はエチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0030】
Yの酸素原子と結合していてもよい硫黄原子としては、例えば、硫黄原子、スルホニル基等が挙げられる。
【0031】
前記式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式(1a)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0032】
式(1a)におけるR1、R2、X、Y、及びnは、式(1)にて説明したものと同様である。
【0033】
式(1)で表される化合物の具体的な例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化5】
【0034】
構成単位(B)の共重合体に占める割合は特に限定されないが、全構成単位に対して40~98重量%であることが好ましく、より好ましくは60~95重量%、さらに好ましくは75~90重量%である。構成単位(B)の割合が上記範囲内であることにより、耐溶剤性や現像性に優れる傾向がある。
【0035】
[構成単位(C)]
構成単位(C)は、アルキル基で置換されていてもよいスチレン(c1)、N-置換マレイミド(c2)、N-ビニル化合物(c3)、及び前記式(2)で表される不飽和カルボン酸誘導体(c4)からなる群より選択された少なくとも1つの化合物に由来する構成単位である。構成単位(C)は硬化物(硬化皮膜)に硬度を付与する機能や、共重合反応を円滑化する機能、溶媒への溶解性を高める機能、基材への密着性を高める機能などを有する。
【0036】
構成単位(C)は、前記(c1)~(c4)からなる群より選択された少なくとも1つの化合物を共重合に付すことにより共重合体に導入することができる。
【0037】
(スチレン(c1))
アルキル基で置換されていてもよいスチレン(c1)におけるアルキル基は特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1~7のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基又はエチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。前記アルキル基はスチレンのビニル基及びベンゼン環のいずれに結合していてもよい。
【0038】
アルキル基で置換されていてもよいスチレン(c1)の代表的な例として、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン(o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン)等が挙げられる。アルキル基で置換されていてもよいスチレン(c1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0039】
(N-置換マレイミド(c2))
N-置換マレイミド(c2)としては、例えば、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
【0040】
式(3)中、R21は有機基を示す。
【0041】
前記有機基としては、例えば、炭化水素基、複素環式基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基(例えばC1-6アルキル基等);シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;これらの2以上が結合した基等が挙げられる。複素環式基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含有する5~10員のヘテロシクロアルキル基及びヘテロアリール基が挙げられる。
【0042】
N-置換マレイミド(c2)としては特に限定されないが、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド等のN-アルキルマレイミド;N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロオクチルマレイミド、N-アダマンチルマレイミド、N-ノルボルニルマレイミド等のN-シクロアルキルマレイミド;N-フェニルマレイミド等のN-アリールマレイミド;N-ベンジルマレイミド等のN-アラルキルマレイミド等が挙げられる。N-置換マレイミド(c2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0043】
(N-ビニル化合物(c3))
N-ビニル化合物(c3)としては特に限定されないが、例えば、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。N-ビニル化合物(c3)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
(不飽和カルボン酸誘導体(c4))
不飽和カルボン酸誘導体(c4)は、下記式(2)で表すことができる。
【化7】
【0045】
式(2)中、R11は水素原子又は炭素数1~7のアルキル基を示す。R12はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示す。Zはヘテロ原子を示す。
【0046】
11における炭素数1~7のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R11としては、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0047】
12におけるヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、例えば、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びこれらの2以上が連結した基が挙げられる。前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。
【0048】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、イソデシル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数1~23のアルキル基が挙げられる。
【0049】
前記ヘテロアルキル基としては、例えば、-(R13-O)m-R14基(式中、R13は炭素数1~12のアルキレン基を示す。R14は水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を示す。mは1以上の整数を示す。)、-R15-NR1617基(式中、R15は炭素数1~12のアルキレン基を示す。R16及びR17は、それぞれ同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。)が挙げられる。
【0050】
前記アルケニル基としては、例えば、アリル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基等の炭素数2~23のアルケニル基が挙げられる。
【0051】
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等の炭素数3~12のシクロアルキル基が挙げられる。
【0052】
前記ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、オキセタン環、オキソラン環、オキサン環、オキセパン環等の環状エーテル構造を含む基(例えば、3員環以上の環状エーテル含有基)等が挙げられる。
【0053】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~12のアリール基が挙げられる。
【0054】
式(2)で表される不飽和カルボン酸誘導体(c4)としては特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等のヘテロアルキル基を有する(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート等のアルケニル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン-8-オール(メタ)アクリレート等の単環又は多環のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のエポキシ基(オキシラニル基)を有する(メタ)アクリレート、オキセタニル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2-(3-メチル-3-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-エチル-3-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2-[(3-メチル-3-オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2-[(3-エチル-3-オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3-[(3-メチル-3-オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3-エチル-3-オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート等のオキセタニル基を有する(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のオキソラニル基を有する(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基を含む(メタ)アクリレート等のヘテロシクロアルキル基(例えば、3員環以上の環状エーテル含有基)を有する(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール基を有する(メタ)アクリレート;3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。式(2)で表される不飽和カルボン酸誘導体(c4)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
構成単位(C)の共重合体に占める割合は特に限定されないが、全構成単位に対して0~85重量%であることが好ましく、より好ましくは1~60重量%、さらに好ましくは2~40重量%である。構成単位(C)の割合が上記範囲内であることにより、耐溶剤性に優れる傾向がある。
【0056】
[構成単位(D)]
本発明の共重合体は、前記構成単位(A)~(C)以外の構成単位(D)を含んでいてもよい。構成単位(D)として、例えば、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリルに由来する構成単位が挙げられる。
【0057】
本発明の共重合体が構成単位(A)と構成単位(B)とを含み、構成単位(C)を含まない場合、構成単位(A)と構成単位(B)との総量は、全構成単位に対して90重量%以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。また、本発明の共重合体が構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とを含む場合、構成単位(A)~(C)の総量は、全構成単位に対して90重量%以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。
【0058】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、例えば、1000~1000000であることが好ましく、より好ましくは3000~300000、さらに好ましくは5000~100000である。共重合体の分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mn)は特に限定されないが、例えば、5.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.0~4.5、さらに好ましくは1.0~4.0である。なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、GPCにより標準物質としてポリスチレンを用いて測定することができるが、実施例にて用いた方法により測定されたものであることが好ましい。
【0059】
本発明の共重合体は、示差走査熱量計を用いて、5℃/分の速度で昇温した際に現れる発熱ピークトップ温度が180~220℃であることを特徴とする。なお、本発明において、発熱ピークトップ温度は、例えば、実施例にて用いた方法により測定されたものであることが好ましい。
【0060】
本発明の共重合体は、その硬化物が耐溶剤性に優れ、高い絶縁性を有するものであるため、保護膜や絶縁膜を形成するための材料として有用である。また、保存安定性に優れることからバインダー樹脂や顔料分散樹脂として有用である。
【0061】
<共重合体の製造方法>
本発明の共重合体は、不飽和カルボン酸又はその無水物(a)と、環上にエポキシ基を有する多環式脂肪族基と不飽和結合を有する基とを有する化合物(b)と、必要に応じて、前記(c1)~(c4)からなる群より選択された少なくとも1つの化合物と、前記構成単位(D)に対応する化合物とを共重合に付すことにより製造することができる。以下、不飽和カルボン酸又はその無水物(a)等の共重合体に導入し得る化合物を「単量体」と総称することがある。
【0062】
本発明の共重合体の製造方法では、重合開始剤の存在下で共重合に付してもよい。前記重合開始剤としては、慣用乃至公知のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジエチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジブチル--2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。過酸化物をラジカル重合開始剤として使用する場合、還元剤を組み合わせてレドックス型の開始剤としてもよい。この中でもアゾ化合物が好ましく、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)がより好ましい。
【0063】
重合開始剤の使用量は、円滑な共重合を損なわない範囲で適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、単量体の総量(100重量部)に対して1~20重量部が好ましく、より好ましくは3~15重量部である。
【0064】
本発明の共重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状-懸濁重合、乳化重合等、アクリル系ポリマーやスチレン系ポリマーを製造する際に用いる慣用の方法により行うことができる。単量体、重合開始剤は、それぞれ、反応系に一括供給してもよく、その一部又は全部を反応系に滴下してもよい。例えば、一定温度に保持した単量体又は単量体と重合溶媒との混合液中に、重合開始剤を重合溶媒に溶解した溶液を滴下して重合する方法や、予め単量体、重合開始剤を重合溶媒に溶解させた溶液を、一定温度に保持した重合溶媒中に滴下して重合する方法(滴下重合法)等を採用できる。
【0065】
本発明における共重合体は、重合溶媒中で共重合されることが好ましい。重合溶媒は単量体組成等に応じて適宜選択でき、例えば、エーテル(ジエチルエーテル;エチレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノ又はジアリールエーテル、ジプロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、1,3-プロパンジオールモノ又はジアルキルエーテル、1,3-ブタンジオールモノ又はジアルキルエーテル、1,4-ブタンジオールモノ又はジアルキルエーテル、グリセリンモノ,ジ又はトリアルキルエーテル等のグリコールエーテル類等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、C5-6シクロアルカンジオールモノ又はジアセテート、C5-6シクロアルカンジメタノールモノ又はジアセテート等のカルボン酸エステル類;エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ又はジアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ又はジアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ又はジアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ又はジアセテート、1,3-プロパンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3-プロパンジオールモノ又はジアセテート、1,3-ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3-ブタンジオールモノ又はジアセテート、1,4-ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールモノ又はジアセテート、グリセリンモノ,ジ又はトリアセテート、グリセリンモノ又はジC1-4アルキルエーテルジ又はモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノ又はジアセテート等のグリコールアセテート類又はグリコールエーテルアセテート類等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン等)、アミド(N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、C5-6シクロアルカンジオール、C5-6シクロアルカンジメタノール等)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素等)、これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0066】
重合温度は単量体の種類や組成に応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、30~150℃であることが好ましい。
【0067】
上記方法により得られた共重合体を含む反応溶液は、必要に応じて、沈殿又は再沈殿を施すことにより精製することができる。沈殿又は再沈殿に用いる溶媒は有機溶媒及び水のいずれであってもよく、またその混合溶媒であってもよい。有機溶媒として、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素等)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタン等)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリル等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)、カルボン酸(酢酸等)、及びこれらの溶媒を含む混合溶媒等が挙げられる。
【0068】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の共重合体を含有することを特徴とし、さらに、前記共重合体以外の硬化性化合物、カチオン重合開始剤、溶剤を含有してもよい。
【0069】
本発明の共重合体以外の硬化性化合物としては特に限定されないが、例えば、多官能ビニル化合物、多官能チオール化合物、多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0070】
多官能ビニル化合物としては、ビニル基を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;両末端ヒドロキシポリブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプリラクトン等の両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート;グリセリン、1,2,4,-ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のポリ(メタ)アクリレート;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ベンゼンジオール等の環式ポリオールのポリ(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能ビニル化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0071】
多官能チオール化合物としては、チオール基を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、テトラエチレングリコールビス3-メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス3-メルカプトプロピオネート、トリス(3-メルカプトプロピニルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス3-メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールテトラキス3-メルカプトプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカブトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等が挙げられる。多官能チオール化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0072】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物[ポリヒドロキシ化合物(ビスフェノール類、多価フェノール類、脂環式多価アルコール類、脂肪族多価アルコール類等)とエピクロルヒドリンとの反応により生成するグリシジルエーテル類(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等の(ポリ)C2-4アルキレングリコールジグリシジルエーテル;レゾルシン、ヒドロキノン等の多価フェノール類のジグリシジルエーテル;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール類等の脂環式多価アルコール類のジグリシジルエーテル;ビスフェノール類(4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類等)又はそのC2-3アルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等)、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等)等]、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物(又は環状脂肪族エポキシ樹脂)、複素環式エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、ヒダントイン型エポキシ樹脂等)、グリシジルアミン型エポキシ化合物[アミン類とエピクロルヒドリンとの反応生成物、例えば、N-グリシジル芳香族アミン{テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、トリグリシジルアミノフェノール(TGPAP、TGMAP等)、ジグリシジルアニリン(DGA)、ジグリシジルトルイジン(DGT)、テトラグリシジルキシリレンジアミン(TGMXA等)等}、N-グリシジル脂環族アミン(テトラグリシジルビスアミノシクロヘキサン等)等]等が挙げられる。多官能エポキシ化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0073】
前記カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0074】
光カチオン重合開始剤は、光の照射によって酸を発生して、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。光カチオン重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0075】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等を挙げることができる。
【0076】
光カチオン重合開始剤のアニオン部としては、例えば、[(Y)sB(Phf)4-s-(式中、Yはフェニル基又はビフェニリル基を示す。Phfは水素原子の少なくとも1つが、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基を示す。sは0~3の整数である)、BF4 -、[(Rf)kPF6-k-(Rf:水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基、k:0~5の整数)、AsF6 -、SbF6 -、SbF5OH-等を挙げることができる。
【0077】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]フェニル-2-チオキサントニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0078】
光カチオン重合開始剤としては、商品名「サイラキュアUVI-6970」、「サイラキュアUVI-6974」、「サイラキュアUVI-6990」、「サイラキュアUVI-950」(以上、米国ユニオンカーバイド社製)、「Irgacure250」、「Irgacure261」、「Irgacure264」(以上、BASF社製)、「CG-24-61」(チバガイギー社製)、「オプトマーSP-150」、「オプトマーSP-151」、「オプトマーSP-170」、「オプトマーSP-171」(以上、(株)ADEKA製)、「DAICAT II」((株)ダイセル製)、「UVAC1590」、「UVAC1591」(以上、ダイセル・サイテック(株)製)、「CI-2064」、「CI-2639」、「CI-2624」、「CI-2481」、「CI-2734」、「CI-2855」、「CI-2823」、「CI-2758」、「CIT-1682」(以上、日本曹達(株)製)、「PI-2074」(ローディア社製、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トルイルクミルヨードニウム塩)、「FFC509」(3M社製)、「BBI-102」、「BBI-101」、「BBI-103」、「MPI-103」、「TPS-103」、「MDS-103」、「DTS-103」、「NAT-103」、「NDS-103」(以上、ミドリ化学(株)製)、「CD-1010」、「CD-1011」、「CD-1012」(以上、米国、Sartomer社製)、「CPI-100P」、「CPI-101A」(以上、サンアプロ(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0079】
熱カチオン重合開始剤は、加熱処理を施すことによって酸を発生して、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、熱を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。熱カチオン重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物等を挙げることができる。
【0081】
熱カチオン重合開始剤のカチオン部としては、例えば、4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウムイオン、4-ヒドロキシフェニル-メチル-(2-メチルベンジル)スルホニウムイオン、4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウムイオン、p-メトキシカルボニルオキシフェニル-ベンジル-メチルスルホニウムイオン等を挙げることができる。
【0082】
熱カチオン重合開始剤のアニオン部としては、前記光カチオン重合開始剤のアニオン部と同様の例を挙げることができる。
【0083】
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、4-ヒドロキシフェニル-メチル-ベンジルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-ヒドロキシフェニル-メチル-(2-メチルベンジル)スルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-ヒドロキシフェニル-メチル-1-ナフチルメチルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、p-メトキシカルボニルオキシフェニル-ベンジル-メチルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0084】
カチオン重合開始剤の含有量(2種以上含有する場合はその総量)としては、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量部)に対して、例えば、0.1~10.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1~5.0重量部、さらに好ましくは0.2~3.0重量部、特に好ましくは0.2~1.0重量部である。カチオン重合開始剤の含有量が上記範囲を下回ると、硬化性が低下する傾向がある。一方、カチオン重合開始剤の含有量が上記範囲を上回ると、硬化物が着色し易くなる傾向がある。
【0085】
溶剤としては、エーテル(ジエチルエーテル;エチレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノ又はジアリールエーテル、ジプロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、1,3-プロパンジオールモノ又はジアルキルエーテル、1,3-ブタンジオールモノ又はジアルキルエーテル、1,4-ブタンジオールモノ又はジアルキルエーテル、グリセリンモノ,ジ又はトリアルキルエーテル等のグリコールエーテル類等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、C5-6シクロアルカンジオールモノ又はジアセテート、C5-6シクロアルカンジメタノールモノ又はジアセテート等のカルボン酸エステル類;エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ又はジアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ又はジアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ又はジアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ又はジアセテート、1,3-プロパンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3-プロパンジオールモノ又はジアセテート、1,3-ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3-ブタンジオールモノ又はジアセテート、1,4-ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールモノ又はジアセテート、グリセリンモノ,ジ又はトリアセテート、グリセリンモノ又はジC1-4アルキルエーテルジ又はモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノ又はジアセテート等のグリコールアセテート類又はグリコールエーテルアセテート類等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン等)、これらの混合溶媒等を使用することができる。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記成分以外にも、例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カルボキシ基含有樹脂等の樹脂、ラジカル重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、添加剤(充填剤、消泡剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、低応力化剤、可とう性付与剤、ワックス類、樹脂、架橋剤、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等)を含んでいてもよい。
【0087】
本発明の硬化性樹脂組成物における共重合体の濃度は特に限定されないが、例えば、3~40重量%である。また、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量に対する共重合体の濃度は特に限定されないが、例えば、20重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
【0088】
[硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより諸物性に優れた硬化物が得られる。例えば、上記硬化性樹脂組成物を、スピンコーター、ディップコーター、ローラコーター、スリットコーター等の慣用の塗布手段により、各種基材又は基板へ塗工して塗膜を形成した後、該塗膜を硬化させることにより硬化物を得ることができる。硬化は、例えば、硬化性樹脂組成物に光照射及び/又は加熱処理を施すことにより行われる。
【0089】
前記光照射は、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線源、レーザー光源、LED光源等を使用し、積算照射量が、例えば、500~5000mJ/cm2となる範囲で照射することが好ましい。
【0090】
前記加熱処理は、例えば60~300℃(好ましくは100~250℃)の温度で、例えば、1~120分間(好ましくは1~60分)加熱することが好ましい。
【0091】
基材又は基板としては、シリコンウエハー、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等が挙げられる。硬化後の塗膜の厚みは、例えば、0.05~20μmが好ましく、より好ましくは0.1~10μmである。
【0092】
本発明の硬化物(硬化後の塗膜)は、耐溶剤性に優れ、高い絶縁性を有するものであるため、保護膜や絶縁膜として有用である。
【実施例
【0093】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)及び分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、以下の条件で測定した。
装置:検出器:RID-20A(島津製作所)
ポンプ:LC-20AD(島津製作所)
システムコントローラー:CBM-20Alite(島津製作所)
デガッサー:DGU-20A3(島津製作所)
オートインジェクター:SIL-20A HT(島津製作所)
カラム:Shodex KF-806L(昭和電工)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)0.8ml/min
温度:オーブン:40℃、RI:40℃
検出器:RI
【0094】
[参考例1/モノマーB1の作成]
33.7gの5-ノルボルネン-2-メタノール、41.3gのトリエチルアミン、及び6.5mgのメトキノンを57.2gのTHF(テトラヒドロフラン)に加えた混合溶液に対し、42.4gのメタクリル酸クロリドを、内温を20℃以下に維持しながら40分かけて滴下した後、20℃で4時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで原料である5-ノルボルネン-2-メタノールの消失を確認した後に、100gの酢酸エチルと84.0gの水を加えた。分液後、94.8gの10%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、68.0gの水で3回洗浄した。得られた有機相を40℃、15Torrの条件で濃縮することにより、48.3gの5-ノルボルネン-2-メチルアクリレート粗生成物を得た。前記粗生成物の純度は93%、収率は86%であった。
【0095】
47.5gの前記5-ノルボルネン-2-メチルアクリレート粗生成物及び9.4mgのメトキノンを141gの酢酸エチルに加えた混合溶液に対して、72.3gのmCPBA(3-クロロ過安息香酸、30%含水)を、内温を20℃以下に維持しながら1時間かけて添加した後、20℃で3時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで原料の消失を確認した後に、278gの15%チオ硫酸ナトリウム水溶液と141gの酢酸エチルを加えて15分撹拌した。分液後、217gの8%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、141gの水で2回洗浄した。有機相を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、29.4gの3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタンー6-イルメチルメタクリレート(以下、「モノマーB1」と称することがある)を得た。3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタンー6-イルメチルメタクリレートの純度は99%、収率は71%であった。
【0096】
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、及び撹拌機を備えた1Lのフラスコ内に窒素を適量流して窒素雰囲気とし、前記フラスコ内に150重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れ、撹拌しながら80℃まで加熱した。その後、7重量部の2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、30重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて洗い流しながら加えた。次いで、該フラスコ内に、単量体としての11重量部のアクリル酸(AA)及び89重量部のモノマーB1と、20重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶液を、滴下ポンプを用いて約4時間かけて滴下した。単量体の滴下が終了した後、4時間、同温度に保持し、その後室温まで冷却して、固形分34.6重量%の共重合体含有溶液を得た。生成した共重合体の重量平均分子量Mwは19,000、分散度は3.47であった。
【0097】
[実施例2]
単量体として11重量部のアクリル酸(AA)、79重量部のモノマーB1、及び10重量部のビニルトルエン(VT)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことで、固形分33.8重量%の共重合体含有溶液を得た。生成した共重合体の重量平均分子量Mwは17,000、分散度は3.33であった。
【0098】
[実施例3]
単量体として11重量部のアクリル酸(AA)、79重量部のモノマーB1、及び10重量部のメタクリル酸メチル(MMA)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことで、固形分34.2重量%の共重合体含有溶液を得た。生成した共重合体の重量平均分子量Mwは18,500、分散度は3.41であった。
【0099】
[実施例4]
単量体として11重量部のアクリル酸(AA)、79重量部のモノマーB1、及び10重量部のシクロヘキシルマレイミド(CHMI)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことで、固形分34.4重量%の共重合体含有溶液を得た。生成した共重合体の重量平均分子量Mwは18,000、分散度は3.40であった。
【0100】
[実施例5]
単量体として11重量部のアクリル酸(AA)、79重量部のモノマーB1、及び10重量部のN-ビニルピロリドン(VP)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことで、固形分34.4重量%の共重合体含有溶液を得た。生成した共重合体の重量平均分子量Mwは17,500、分散度は3.38であった。
【0101】
[比較例1]
還流冷却器、滴下ロート及び撹拌機を備えた1Lのフラスコ内に窒素を適量流して窒素雰囲気とし、150重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れ、撹拌しながら65℃まで加熱した。その後、14重量部の2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を30重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗い流しながら加えた。次いで、該フラスコ内に、単量体として11重量部のアクリル酸(AA)、79重量部のグリシジルメタクリレート(GMA)、10重量部のメタクリル酸メチル(MMA)を20重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した溶液を、滴下ポンプを用いて約4時間かけて滴下した。単量体の滴下が終了した後、約4時間同温度に保持し、その後室温まで冷却して、固形分33.8重量%の共重合体含有溶液を得た。生成した共重合体の重量平均分子量Mwは16,000、分散度は3.32であった。
【0102】
[比較例2]
単量体として11重量部のアクリル酸(AA)、79重量部の3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(サイクロマーM100)、10重量部のメタクリル酸メチル(MMA)を用いたこと以外は比較例1と同様の操作を行い、固形分33.4重量%の共重合体含有溶液を得た。生成した共重合体の重量平均分子量Mwは16,000、分散度は3.30であった。
【0103】
[比較例3]
単量体として11重量部のアクリル酸(AA)、89重量部の3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-9-イルアクリレートと3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルアクリレートの混合物(モノマーB2)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、固形分34.1重量%の共重合体含有溶液を得た。生成した共重合体の重量平均分子量Mwは18,000、分散度は3.43であった。
【0104】
<評価試験>
実施例及び比較例で得られた各共重合体含有溶液を用いて以下の評価試験を行った。結果を表1に示す。なお、表中、単量体組成の欄の数字は重量部を表す。
【0105】
(1)保存安定性試験
実施例及び比較例で得られた共重合体含有溶液の重量平均分子量を測定すると共に、40℃のオーブンで1週間保存した後の重量平均分子量を測定し、その間の重量平均分子量増加率を以下の計算式で算出した。
P:保存前の重量平均分子量、Q:40℃で1週間保存した後の重量平均分子量
重量平均分子量増加率={(Q/P)×100}-100
【0106】
(2)発熱ピークトップ温度の測定
実施例及び比較例で得られた共重合体含有溶液5gを50gのヘプタン中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別、減圧乾燥することにより共重合体を白色粉末として得た。前記の白色粉末の約10mgをサンプルとし、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC1)を用い、窒素ガス雰囲気下、40℃から5℃/分の速度で300℃まで昇温し、発熱ピークトップ温度を測定した。
【0107】
(3)耐溶剤性試験-1
ガラス板に実施例及び比較例で得られた共重合体含有溶液をスピンコーターで塗布した後、200℃で30分間加熱硬化させることで試験片を作製した。硬化後の塗膜の厚みは4μmであった。
【0108】
試験片に対して、γ―ブチロラクトン(γ-BL)及びN―メチルピロリドン(NMP)をそれぞれ1滴ずつ滴下し、10分間放置した。その後水洗し、溶剤を滴下した箇所が全く変化していなかったら◎、僅かに溶剤の跡が残るが、拭き取れば消えるようであれば○、溶剤の跡が残り、拭き取っても消えないようであれば△、全面的に変色していたら×とした。
【0109】
(4)耐溶剤性試験-2
試験片の調製において、硬化温度を230℃としたこと以外は耐溶剤性試験-1と同様にして、硬化物の耐溶剤性試験を行った。
【0110】
実施例1~5の共重合体は、40℃でも重量平均分子量は増加しにくく、保存安定性が良好であった。さらに、硬化温度が200℃でも、230℃の場合と同様に良好な耐溶剤性を示した。その一方で、比較例1~2の共重合体は、40℃でゲル化してしまうことからも理解できる様に保存安定性が悪いことが分かった。また、比較例3の共重合体は、モノマーB2を用いることで、保存安定性は良好であるものの、硬化温度を230℃から200℃に下げると十分に硬化しないため、耐溶剤性が低下することが分かった。
【0111】
【表1】
【0112】
以下に、実施例及び比較例で用いられた成分について説明する。
モノマーB1:3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタンー6-イルメチルメタクリレート(参考例1を参照)
GMA:グリシジルメタクリレート(日油(株)製)
サイクロマーM100:3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート((株)ダイセル製)
モノマーB2:3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-9-イルアクリレートと3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルアクリレートの混合物(商品名「E-DCPA」、(株)ダイセル製)
VT:ビニルトルエン(長瀬産業(株)製)
MMA:メタクリル酸メチル(富士フイルム(株)製)
CHMI:シクロヘキシルマレイミド(日本触媒(株)製)
VP:N-ビニルピロリドン(東京化成工業(株)製)
MMPGAC:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート((株)ダイセル製)