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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】位置決め装置および露光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20221208BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02B7/00 B
G03F7/20 521
G02B7/00 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018174192
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020046514
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 淳生
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】布施 直人
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-220516(JP,A)
【文献】特開2005-016719(JP,A)
【文献】特開平07-164252(JP,A)
【文献】特開2014-134646(JP,A)
【文献】特開平10-009262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 7/18 - 7/24
H01L 21/30
H01L 21/46
G12B 1/00 - 17/08
F16C 29/00 - 31/06
G03F 7/20 - 7/24
G03F 9/00 - 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に平行な第1面を有する第1部材と、
前記第1方向に交差する第2方向に互いに離隔しかつ前記第1方向に平行に配置されるように前記第1部材に固定された第1レールおよび第2レールと、
前記第1レールによって支持され前記第1レールに沿って移動可能な第1ブロックおよび第2ブロックと、
前記第2レールによって支持され前記第2レールに沿って移動可能な第3ブロックと、
前記第1面に対面する第2面を有し、前記第1ブロック、前記第2ブロックおよび前記第3ブロックに固定された第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とが相互に固定されて1つの剛性部材を構成するように前記第1部材および前記第2部材を相互に締結する締結部と、を備え、
前記第1部材および前記第2部材は、剛性部材である、
ことを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記締結部は、第1締結具、第2締結具および第3締結具を含み、
前記第1方向における前記第1締結具の位置は、前記第1方向における前記第1ブロックの2つの端面の間にあり、前記第1方向における前記第2締結具の位置は、前記第1方向における前記第2ブロックの2つの端面の間にあり、前記第1方向における前記第3締結具の位置は、前記第1方向における前記第3ブロックの2つの端面の間にある、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記第1部材は、前記第1面を含む2つの第1面を有し、前記2つの第1面は、互いに対向する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記第1部材は、底面部と、前記底面部の2つの端部からそれぞれ延びる2つの側面部とを含み、
前記2つの第1面は、前記2つの側面部にそれぞれ設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記底面部と前記2つの側面部とが相互に締結されて構成される、
ことを特徴とする請求項4に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記第2部材と前記2つの側面部とがクランプ構造体によって相互に締結される、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の位置決め装置。
【請求項7】
第1方向に平行な第1面を有する第1部材と、
前記第1方向に交差する第2方向に互いに離隔しかつ前記第1方向に平行に配置されるように前記第1部材に固定された第1レールおよび第2レールと、
前記第1レールによって支持され前記第1レールに沿って移動可能な第1ブロックおよび第2ブロックと、
前記第2レールによって支持され前記第2レールに沿って移動可能な第3ブロックと、
前記第1面に対面する第2面を有し、前記第1ブロック、前記第2ブロックおよび前記第3ブロックに固定された第2部材と、
前記第1面と前記第2面とが接触するように前記第1部材および前記第2部材を相互に締結する締結部と、を備え、
前記第1部材および前記第2部材は、剛性部材であり、
前記第1部材は、前記第1面を含む2つの第1面と、底面部と、前記底面部の2つの端部からそれぞれ延びる2つの側面部とを含み、
前記2つの第1面は、前記2つの側面部のそれぞれに互いに対向して設けられ、
前記第2部材と前記2つの側面部とがクランプ構造体によって相互に締結される、
ことを特徴とする位置決め装置。
【請求項8】
前記第2部材は、上面部と、前記上面部の2つの端部からそれぞれ延びる2つの側面部とを含み、
前記2つの第1面は、前記2つの側面部にそれぞれ設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の位置決め装置。
【請求項9】
前記上面部と前記2つの側面部とがボルトによって相互に締結される、
ことを特徴とする請求項に記載の位置決め装置。
【請求項10】
第1方向に平行な第1面を有する第1部材と、
前記第1方向に交差する第2方向に互いに離隔しかつ前記第1方向に平行に配置されるように前記第1部材に固定された第1レールおよび第2レールと、
前記第1レールによって支持され前記第1レールに沿って移動可能な第1ブロックおよび第2ブロックと、
前記第2レールによって支持され前記第2レールに沿って移動可能な第3ブロックと、
前記第1面に対面する第2面を有し、前記第1ブロック、前記第2ブロックおよび前記第3ブロックに固定された第2部材と、
前記第1面と前記第2面とが接触するように前記第1部材および前記第2部材を相互に締結する締結部と、を備え、
前記第1部材および前記第2部材は、剛性部材であり、
前記第1部材は、前記第1面を含む2つの第1面を有し、前記2つの第1面は、互いに対向し、
前記第2部材は、上面部と、前記上面部の2つの端部からそれぞれ延びる2つの側面部とを含み、
前記2つの第1面は、前記2つの側面部にそれぞれ設けられ、
前記上面部と前記2つの側面部とがボルトによって相互に締結される、
ことを特徴とする位置決め装置。
【請求項11】
前記第2レールによって支持され前記第2レールに沿って移動可能な第4ブロックを更に備え、
前記第2部材は、前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックに固定される、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の位置決め装置。
【請求項12】
前記第1ブロック、前記第2ブロック、前記第3ブロックおよび前記第4ブロックは、前記第1ブロックの重心、前記第2ブロックの重心、前記第3ブロックの重心および前記第4ブロックの重心を頂点とする長方形を構成するように配置されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の位置決め装置。
【請求項13】
前記締結部は、第4締結具を更に含み、
前記第1方向における前記第4締結具の位置は、前記第1方向における前記第4ブロックの2つの端面の間にある、
ことを特徴とする請求項12に記載の位置決め装置。
【請求項14】
前記第1ブロック、前記第2ブロックおよび前記第3ブロックは、前記第1ブロックの重心、前記第2ブロックの重心および前記第3ブロックの重心を頂点とし、前記第1ブロックの重心と前記第2ブロックの重心とを結ぶ線分を底辺とする二等辺三角形を構成するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の位置決め装置。
【請求項15】
前記第1レールは、前記第1ブロックを支持する第1レール部分と前記第2ブロックを支持する第2レール部分とに分離されている、
ことを特徴とする請求項14に記載の位置決め装置。
【請求項16】
前記第1方向に垂直な断面において、前記締結部によって締結された前記第1部材および前記第2部材で構成される構造体が中空の四角柱形状を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の位置決め装置。
【請求項17】
前記第2部材に固定された光学素子を更に備えることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の位置決め装置。
【請求項18】
請求項17に記載の位置決め装置を備えることを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め装置および露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイまたは半導体デバイス等のような微細加工が要求される物品の製造に使用される露光装置では、高い解像力を得るために、光学素子の位置を精密に調整する必要がある。また、光学素子の位置の調整後においては、光学素子を通して形成される像のコントラストが光学素子の振動によって低下しないように、光学素子が高い剛性で支持される必要がある。このような用途において直動ステージのような位置決め装置が使用されうる。
【0003】
本願との関連性は低いが、特許文献1には、光モジュールを支持構造体に連結する連結装置が開示されている。この連結装置は、光モジュールの支持区分を支持構造体に連結するための複数の連結ユニットを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-225674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学素子等の物体の位置および姿勢を精密に調整することが要求される装置に搭載される位置決め装置では、物体を位置決めし固定する度に物体の位置および姿勢が変化しないこと、即ち物体の固定作業における再現性が要求される。また、このような位置決め装置には、固定後に高い剛性を有することが要求される。
【0006】
本発明は、固定作業における高い再現性と高い剛性を提供するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、位置決め装置に係り、前記位置決め装置は、第1方向に平行な第1面を有する第1部材と、前記第1方向に交差する第2方向に互いに離隔しかつ前記第1方向に平行に配置されるように前記第1部材に固定された第1レールおよび第2レールと、
前記第1レールによって支持され前記第1レールに沿って移動可能な第1ブロックおよび第2ブロックと、前記第2レールによって支持され前記第2レールに沿って移動可能な第3ブロックと、前記第1面に対面する第2面を有し、前記第1ブロック、前記第2ブロックおよび前記第3ブロックに固定された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とが相互に固定されて1つの剛性部材を構成するように前記第1部材および前記第2部材を相互に締結する締結部と、を備え、前記第1部材および前記第2部材は、剛性部材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固定作業における高い再現性と高い剛性を提供するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態の位置決め装置の構成を示す斜視図。
図2】本発明の第1実施形態の位置決め装置の構成を示す平面図。
図3】本発明の第2実施形態の位置決め装置の構成を示す斜視図。
図4】本発明の第3実施形態の位置決め装置の構成を示す斜視図。
図5】本発明の第4実施形態の位置決め装置の構成を示す斜視図。
図6】本発明の第5実施形態を位置決め装置の構成を示す斜視図(a)および断面図(b)。
図7】本発明の第6実施形態の位置決め装置の構成を示す平面図。
図8】本発明の幾つかの実施形態における締結部の配置を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその例示的な実施形態を通して説明する。
【0011】
図1および図2には、本発明の第1実施形態の位置決め装置100の構成が示されている。位置決め装置100は、第1部材1と、第1レール21と、第2レール22と、第1ブロック31と、第2ブロック32と、第3ブロック33と、第4ブロック34と、第2部材4と、締結部5とを備えうる。第1部材1は、X方向(第1方向)に平行な第1面S1を有しうる。第1部材1は、例えば、互いに対向する2つの第1面S1を有しうる。第1部材1は、底面部BPと、底面部BPの2つの端部からそれぞれ延びる2つの側面部SPとを含みうる。底面部BPおよび2つの側面部SPは、それぞれ板形状を有しうる。2つの第1面S1は、2つの側面部SPにそれぞれ設けられうる。換言すると、1つの第1側面部SPに1つの第1面S1が設けられうる。第1レールL1および第2レールL2は、X方向に直交するY方向(第2方向)に互いに離隔しかつX方向に平行に配置されるように第1部材1に固定されうる。ここで、第1レールL1および第2レールL2が相互に離隔する方向は、X方向に直交するY方向である必要は必ずしもなく、包括的には、X方向に交差する方向であればよい。第1レールL1および第2レールL2は、底面部BPの上面の上に配置されうる。底面部BPの上面は、平坦面でありうる。
【0012】
第1ブロック31および第2ブロック32は、ガイドとして機能する第1レール21によって支持され、第1レール21に沿ってX方向に移動可能である。第3ブロック33および第4ブロック34は、ガイドとして機能する第2レール22によって支持され、第2レール22に沿ってX方向に移動可能である。第1ブロック31、第2ブロック32、第3ブロック33および第4ブロック34は、第1ブロック31の重心、第2ブロック32の重心、第3ブロック33の重心および第4ブロック34の重心を頂点とする四角形、好ましくは長方形を構成するように配置されうる。後述の第6実施形態として例示されるように、第4ブロック34は取り除かれてもよい。この場合、第1ブロック31、第2ブロック32および第3ブロック33は、第1ブロック31の重心、前記第2ブロック32の重心および第3ブロック33の重心を頂点とする三角形を構成するように配置される。
【0013】
第2部材4は、第1面S1に対面する第2面S2を有し、第1ブロック31、第2ブロック32、第3ブロック33および第4ブロック34に固定される。第1部材1が2つの第1面S1を有する場合、それに対応するように、第2部材4は、2つの第2面S1を有する。第2部材4は、第2部材4が第1ブロック31、第2ブロック32、第3ブロック33および第4ブロック34に固定された状態かつ第1部材1に固定されない状態で、X方向に移動可能である。
【0014】
締結部5は、第1面S1と第2面S2とが接触するように第1部材1および第2部材4を相互に締結する。締結部5は、第1ブロック31、第2ブロック32、第3ブロック33および第4ブロック34にそれぞれ対応する第1締結具51、第2締結具52、第3締結具53および第4締結具54を含みうる。第1締結具51、第2締結具52、第3締結具53および第4締結具54の各々は、例えば、雄ネジを有するボルトであり、第1部材1に設けられた長丸穴55を介して、第2部材4に設けられた雌ネジ56にネジ締結されうる。長丸穴55の長手方向は、第2部材4が移動可能なX方向と一致していて、長丸穴55の長手方向の長さと締結具51、52、53、54の直径との差異がX方向における第2部材4のストローク(可動範囲)を決定しうる。第2部材4の位置の調整および姿勢は、締結具51、52、53、54を緩めた状態でなされる。第1部材1に対する第2部材4の固定(ロック)は、締結具51、52、53、54を締め付けること、即ち、締結具51、52、53、54を第1部材1の長丸穴55を介して第2部材4の雌ネジ56にネジ締結することによってなされうる。
【0015】
図2に例示されるように、X方向における第1締結具51の位置は、X方向における第1ブロック31の2つの端面の間(矢印ARで示される範囲内)にあることが好ましい。同様に、X方向における第2締結具52の位置は、それぞれ、X方向における第2ブロック32の2つの端面の間(矢印ARで示される範囲内)にあることが好ましい。同様に、X方向における第3締結具53の位置は、X方向における第3ブロック33の2つの端面の間(矢印ARで示される範囲内)にあることが好ましい。同様に、X方向における第4締結具54の位置は、X方向における第4ブロック34の2つの端面の間(矢印ARで示される範囲内)にあることが好ましい。また、第1締結具51、第2締結具52、第3締結具53および第4締結具54は、同一平面(XY平面に平行な面)内に配置されることが好ましい。以上の構成は、第1部材1に対して第2部材4を固定(ロック)する操作による第1部材1に対する第2部材4の相対的な位置および姿勢の変化を一定にすること、即ち第1部材1に対する第2部材4の固定作業における再現性を向上させるために有利である。
【0016】
第1部材1に対する第2部材4の固定の前は、第2部材4は、第1~第4ブロック31~34に固定されているのみであり、また、一般に、レール21とブロック31、32、レール22とブロック33、34との結合部は、回転に対する剛性が低い。したがって、締結部5の締結による第1部材1に対する第2部材4の固定のための操作において、締結部5に加えられるモーメントよって、第2部材4がY軸に平行な軸の周りで回転しうる。上記のようなブロック31~34および締結具51~54の配置は、第2部材4の固定時における上記のような第2部材4の回転を抑え、第1部材1に対する第2部材4の固定作業における再現性を向上させるために有利である。第1部材1に対して第2部材4を固定する作業における再現性を向上させるためには、締結具51~54の締め付け順を決めておき、毎回同じ締め付け順で締結具51~54の締め付けを行うことが好ましい。また、締結具51~54の締め付けトルクを一定値にすることが好ましい。
【0017】
第2部材4が第1部材1に対して移動可能な状態においては、第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2との間に僅かな間隙がある。換言すると、第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2との間に僅かな間隙がある状態において、第2部材4が第1部材1に対して移動可能である。締結部5によって第1部材1と第2部材4とが相互に締結あるいは固定された状態では、第1部材1が僅かに変形し、第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2とが接触している。第1部材1および第2部材4は、高い剛性を有する剛性部材であり、締結部5によって相互に締結あるいは固定された第1部材1および第2部材4で構成される構造体は、1つの剛性部材であるとみなすことができる。剛性部材という用語は、弾性部材および可撓性部材のような容易に変形する部材(例えば、板バネ)とは区別される用語である。X方向に垂直な断面において、締結部5によって締結された第1部材1および第2部材4で構成される構造体は、中空の四角柱形状を有しうる。このような構造体は、高い剛性を有しうる。
【0018】
第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2との間隙は、第1部材1(の側面部SP)の変形量より小さくする必要がある。これは、該間隙の管理は、第1部材1および第2部材4の公差を適切に設定することでなされうる。以下に1つの設計例を挙げる。締結部5の締結具51~54がネジサイズM5のボルトでありうる。この場合、典型的な軸力は、3000N程度である。第1部材1の材質は、ステンレスでありうる。第1部材1は、第1面S1を有する側面部SPの厚さが5mm、底面部BPの上面から締結具51~54までの距離が50mm、第1部材1のX方向の長さが300mmでありうる。この例では、第1部材1の変形量は、6.2μm程度である。第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2との間隙は、例えば6μm以下であり、好ましくは5μm以下である。第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2との間隙が小さすぎると、第2部材4を移動させる際に第1面S1と第2面S2とが接触し、第2部材4を移動させるために要する力が過剰に大きくなりうる。したがって、該間隙は、少なくとも1μmであることが好ましい。この構成における実験において、固定作業における回転角度に関する再現性は、±0.7μradであった。一方、本実施形態に従わない構成では、固定作業における回転角度に関する再現性は、±30μradであった。
【0019】
位置決め装置100は、更に光学素子等の物体を備えうる。該物体は、第2部材4に固定され、第1部材1に対する第2部材4の位置決めによって位置決めされうる。光学素子は、例えば、ミラーまたはレンズでありうる。光学素子を備える位置決め装置は、例えば、露光装置の一部を構成しうる。
【0020】
第1部材1に対する第2部材4(および第2部材4に固定される光学素子等の物体)の位置決めは、調整機構によって第1部材1に対して第2部材4を相対的に移動させることによってなされうる。該調整機構は、例えば、押しネジとバネとを含む手動の調整機構であってもよく、この場合、押しネジの回転によって第1部材1に対する第2部材4の位置を調整することができる。手動の調整機構は、位置決め装置100の構造の単純化、低コスト化に寄与しうる。また、手動の調整機構は、アクチュエータ等の発熱源がない点で、発熱による光学素子等の物体の変形を抑えるために有効である。
【0021】
一方、第1部材1に対する第2部材4の位置決めのための調整機構は、アクチュエータを含む電動の調整機構であってもよい。アクチュエータは、例えば、ステッピングモーターまたはリニアモーター等でありうる。ステッピングモーターは、汎用アクチュエータであるために比較的安価であり、また、駆動パルス数で位置を制御できるため、精密な駆動が容易であるという点で優れている。リニアモーターは、直線駆動アクチュエータであるため、ステッピングモーターの様な回転駆動アクチュエータを用いる場合に必要となる回転運動を直進運動に変換するボールネジなどの機構が不要となる。そのため、構造が簡素になるという点で優れている。アクチュエータの発熱によって、第2部材4に取り付けられる光学素子、更には周囲の光学素子を変形させないように、冷却機構を設けるか、駆動を短時間で完了させ、駆動後は電源を切るなどの運用が望ましい。
【0022】
第1部材1に対する第2部材4の相対的な位置を検出するためにセンサーが設けられうる。このようなセンサーとしては、例えば、接触式の電気マイクロメータ、非接触式の光学センサー、リニアエンコーダー等が採用されうる。接触式のセンサーは設置時の調整作業が簡単である点で優れており、非接触式のセンサーはヒステリシスがない点で優れており、リニアエンコーダーはストロークを長くしやすいという点で優れている。
【0023】
締結具51~54としてのボルトと第1部材1との間には、ワッシャが配置されうる。ここで、ボルトの座面より大きい直径を有するワッシャが用いられてもよいし、該座面より小さい直径を有するワッシャが用いられてもよく、両者では、互いに異なる効果が期待される。ボルトの座面より大きい直径を有するワッシャを用いる場合、第1部材1に加わる圧縮応力を緩和することができるので、より大きな力で第1部材1と第2部材4とを相互に締結することができる。一方、ボルトの座面より小さい直径を有するワッシャを用いる場合、ボルトを締めつける際に第1部材1に加わるモーメントを小さくできるので、固定作業における再現性を向上させることができる。
【0024】
第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2との間隙を管理するために、第1部材1と第2部材S2の公差が管理されうる。あるいは、第1部材1および第2部材4を準備した後に第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2の一方または双方を加工してもよい。例えば、第1部材1と第2部材4の一方の仕上がり寸法を計測し、この計測の結果に基づいて他方を加工してもよい。この場合、一方の加工に要求される精度を緩和することができる。第1部材1および第2部材4の材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄またはセラミックなどの、高いヤング率を有する材料が適している。
【0025】
また、第1部材1および第2部材4の材料がアルミニウムである場合、第1部材1および第2部材4の厚さは1.5mm以上10.0mm以下であることが望ましい。また、第1部材1および第2部材4の材料がステンレスまたは鉄である場合、第1部材1および第2部材4の厚さは1.0mm以上8.0mm以下であることが望ましい。また、第1部材1および第2部材4の材料がセラミックである場合、第1部材1および第2部材4の厚さは0.6mm以上5.0mm以下であることが望ましい。このような厚さの限定を満たす第1部材1および第2部材4は、十分に高い剛性を有し、剛性部材として理解することができる。
【0026】
レール21、22およびブロック31、32、33、34を構成する機構としては、リニヤガイド(登録商標)などの、転動体を介して可動体を案内する直動案内機構が好適である。そのような直動案内機構は、摩擦係数が小さいため、調整のしやすさの点で優れている。さらに、転動体とレール、および、転動体とブロックとの間に隙間がない構成を有する直動案内機構は、第2部材4の移動あるいは駆動時のガタが小さいので、調整のしやすさの点で優れている。
【0027】
図3には、本発明の第2実施形態の位置決め装置100の構成が示されている。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第2実施形態では、第1部材1は、底面部7と、底面部7の2つの端部からそれぞれ延びる2つの側面部6とを含み、2つの側面部6のそれぞれが第1面S1を有する。第1部材1は、底面部7と2つの側面部6とが締結具300によって相互に締結されて構成される。締結具300による締結を解除することによって、底面部7および2つの側面部6は、3つの部材に分離される。第2実施形態では、第2部材4の寸法に合わせて2つの側面部6を底面部7に取り付ければよいので、第2部材4、ならびに、2つの側面部6および底面部7に要求される加工精度を緩和することができる。
【0028】
図8に例示されるように、2つの側面部6を底面部7に締結するための締結具300(ボルト)は、締結部5から等距離の位置に配置されることが、固定作業における再現性を向上させる観点で好ましい。
【0029】
図4には、本発明の第3実施形態の位置決め装置100の構成が示されている。第3実施形態として言及しない事項は、第1又は第2実施形態に従いうる。第3実施形態では、第2部材4は、上面部91と、上面部91の2つの端部からそれぞれから延びる2つの側面部92とを含み、2つの側面部92のそれぞれが第2面S2を有する。2つ第2面S2は、1つの平面内に位置するように構成されうる。また、第1部材1は、例えば、第1面S1を有する平板部材で構成されうる。第1部材1と第2部材4とは、締結部5によって相互に締結されうる。
【0030】
締結部5によって第1部材1と第2部材4とが相互に締結されていない状態で、第1面S1と第2面S2との間には僅かな間隙があり、第2部材4は、X方向に移動可能である。第2部材4が位置決めされた後、締結部5によって第1部材1と第2部材4とが相互に締結あるいは固定される。締結部5によって第1部材1と第2部材4とが相互に締結あるいは固定された状態では、第1部材1が僅かに変形し、第1部材1の第1面S1と第2部材4の第2面S2とが接触している。第1部材1および第2部材4は、高い剛性を有する剛性部材であり、締結部5によって相互に締結あるいは固定された第1部材1と第2部材4で構成される構造体は、1つの剛性部材であるとみなすことができる。
【0031】
第1面S1と第2面S2との間に、締結部5による第1部材1および第2部材4の変形(第1面S1と第2面S2との間隙に影響を与える変形)よりも小さい間隙が形成されるように、第2部材4、レール21、22、ブロック31~34の寸法が管理されうる。あるいは、レール21、22とブロック31~34の実際の寸法を計測し、第1面S1と第2面S2との間に適切な間隙が形成されるように第2部材4が加工されてもよい。第3実施形態は、固定作業に関して第1部材1の下方から締結部5にアクセスするための選択肢を提供する。
【0032】
図5には、本発明の第4実施形態の位置決め装置100の構成が示されている。第4実施形態は、第3実施形態の変形例を提供し、第4実施形態として言及しない事項は、第3実施形態、あるいは、第3実施形態を介して第1又は第2実施形態に従いうる。第4実施形態では、第2部材4は、上面部91と、上面部91の2つの端部からそれぞれ延びる2つの側面部92とを含み、2つの側面部92のそれぞれが第2面S2を有する。2つ第2面S2は、1つの平面内に位置するように構成されうる。第2部材4は、上面部91と2つの側面部92とが締結具500によって相互に締結されて構成されうる。締結具500による締結を解除することによって、上面部12および2つの側面部11は、3つの部材に分離される。第4実施形態では、レール21、22、ブロック31~34、側面部11に対して要求される加工精度を緩和することができる。
【0033】
図6には、本発明の第5実施形態の位置決め装置100の構成が示されている。第5実施形態として言及しない事項は、第1乃至第4実施形態のいずれか又は組み合わせに従いうる。第5実施形態では、第2部材4と第1部材1の2つの側面部SPとが締結部5によって締結される点で第1実施形態と共通している。一方、第1実施形態の具体例では、締結部5を構成する締結具51~54がボルトであるのに対して、第5実施形態の具体例では、締結部5がクランプ構造体15である点で両者は相違している。
【0034】
第1部材1は、底面部BPと、底面部BPの2つの端部からそれぞれ延びる2つの側面部SPとを含みうる。各側面部SPは、第1面S1を有する。第2部材4は、上面部12と、上面部12の2つの端部からそれぞれ延びる2つの側壁部14とを有しうる。各側壁部14は、第2面S2を有する。クランプ構造体15は、側面部SPと側壁部14とを相互に押し付けるように、換言すると、第1面S1と第2面S2とが接触するように、第1部材1および第2部材4をクランプしうる。第1実施形態の具体例では、長丸穴55の寸法によって第2部材4のストローク(可動範囲)が制限されるが、第5実施形態は、第2部材4のストロークを拡大するために有利である。
【0035】
締結部5は、クランプ構造体15に付随するボルト17を含みうる。クランプ動作は、ボルト17の締め付けによってなされる。締結部5は、ボルト17の緩みを防止する緩み止めナット16を含んでもよい。締結部5は、例えば、ボルト17の先端が側面部SPに当接する構造を有しうるが、この場合、ボルト17をその先端が丸い丸先タイプのものとすることが好ましい。この場合、締結時に側面部SPに傷が生じこと、そして、その傷によって固定作業の再現性が低下することが抑制される。また、丸先タイプの採用は、ボルト17と側面部SPとの接触面積を小さくし、締結時にボルト17から第1部材1に加わるモーメントを小さくすることを可能にする。これは、固定作業の再現性の向上に寄与しうる。
【0036】
同様に、クランプ構造体15が第2部材4の側壁部14に接触する部分の面積を小さくすることも、クランプ構造体15から第2部材4に加わるモーメントを小さくし固定作業の再現性を向上することに寄与しうる。
【0037】
図7には、本発明の第6実施形態の位置決め装置100の構成が示されている。第2実施形態として言及しない事項は、第1乃至第5実施形態のいずれか又は組み合わせに従いうる。第1実施形態の説明において簡単に言及されたように、ブロックの個数は3個でもよい。第7実施形態の位置決め装置100は、第1ブロック31、第2ブロック32および第3ブロック33を備える一方、第4ブロック34を備えていない。第1ブロック31および第2ブロック32は、ガイドとして機能する第1レール21によって支持され、第1レール21に沿ってX方向に移動可能である。第3ブロック33は、ガイドとして機能する第2レール22によって支持され、第2レール22に沿ってX方向に移動可能である。
【0038】
第1レール21は、第1ブロック31を支持する第1レール部分と、第2ブロック32を支持する第2レール部分とに分割されてもよい。この場合、第1レール部分と第2レール部分とは、同一直線上に配置されてもよいし、互いに平行な2つの直線上に振り分けて配置されてもよい。
【0039】
第1ブロック31、第2ブロック32および第3ブロック33は、第1ブロック31の重心、前記第2ブロック32の重心および第3ブロック33の重心を頂点とする三角形を構成するように配置される。ここで、好ましくは、第1ブロック31、第2ブロック32および第3ブロック33は、第1ブロック31の重心と第2ブロック32の重心とを結ぶ線分を底辺とする二等辺三角形を構成するように配置される。
【0040】
第2部材4は、第1ブロック31、第2ブロック32および第3ブロック33に固定され、第1面S1に対面する第2面S2を有する。第2部材4は、第2部材4が第1ブロック31、第2ブロック32および第3ブロック33に固定された状態かつ第1部材1に固定されない状態で、X方向に移動可能である。締結部5は、第1部材1および第2部材4を相互に締結する。
【符号の説明】
【0041】
1:第1部材、21:第1レール、22:第2レール、31~34:ブロック、4:第2部材、5:締結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8