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特許7190300データキャリア装置、画像形成装置の交換ユニット及び通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】データキャリア装置、画像形成装置の交換ユニット及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/49 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H04L25/49 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018175339
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2019103123
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2017229360
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 一路
(72)【発明者】
【氏名】一藤木 浩孝
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-165943(JP,A)
【文献】特開平02-084812(JP,A)
【文献】特開昭63-236990(JP,A)
【文献】特開2008-263545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信するパルス信号の各パルスのデューティ比を判定する第1判定手段と、
前記パルス信号の各パルスについて、第1レベルから第2レベルに変化する第1エッジから、次の前記第1エッジまでの期間であるパルスの期間を判定する第2判定手段と、
前記第1判定手段の判定結果と前記第2判定手段の判定結果とに基づき前記パルス信号で搬送されているデータの値を判定する第3判定手段と、
を備え、
前記第2判定手段は、基準値を有し、1つのパルスの期間と前記基準値との差が所定値より小さいか否かにより、前記1つのパルスの期間が第1期間であるか、前記第1期間より長い第2期間であるかを判定することを特徴とするデータキャリア装置。
【請求項2】
前記データキャリア装置は、データキャリア駆動装置と2つの通信線で接続され、
前記データキャリア駆動装置が前記2つの通信線間に与える電位差に基づき前記パルス信号を出力する出力する出力手段をさらに備えていることを特徴とする請求項に記載のデータキャリア装置。
【請求項3】
前記データキャリア駆動装置がデータを送信していない間、前記出力手段が出力する前記パルス信号の各パルスの期間は、前記第1期間又は前記第2期間であり、
前記データキャリア駆動装置がデータを送信していない間、前記パルス信号に基づき前記基準値を計測する計測手段をさらに備えていることを特徴とする請求項に記載のデータキャリア装置。
【請求項4】
前記計測手段は、前記データキャリア駆動装置がデータを送信していない間、前記パルス信号の1つ以上のパルスの期間を計測することで、前記基準値を計測することを特徴とする請求項に記載のデータキャリア装置。
【請求項5】
前記パルス信号の各パルスは、前記第2レベルから前記第1レベルに変化する第2エッジを有し、
前記第1判定手段は、1つのパルスの期間と、前記1つのパルスにおける前記第2レベルの期間と、を計測することで、前記1つのパルスのデューティ比を判定することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のデータキャリア装置。
【請求項6】
前記第1判定手段は、1つのパルスの期間の半分の値と、前記1つのパルスにおける前記第2レベルの期間と、を比較することで、前記1つのパルスのデューティ比が第1デューティ比であるか、前記第1デューティ比より大きい第2デューティ比であるかを判定することを特徴とする請求項に記載のデータキャリア装置。
【請求項7】
前記パルス信号の各パルスは、前記第2レベルから前記第1レベルに変化する第2エッジを有し、
前記第1判定手段は、1つのパルスにおける前記第2レベルの期間と、前記1つのパルスにおける前記第1レベルの期間と、を比較することで、前記1つのパルスのデューティ比が第1デューティ比であるか、前記第1デューティ比より大きい第2デューティ比であるかを判定することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のデータキャリア装置。
【請求項8】
画像形成装置の交換ユニットであって、
画像形成に使用されるプロセス部材と、
請求項1からのいずれか1項に記載のデータキャリア装置と、
を備えていることを特徴とする交換ユニット。
【請求項9】
2つの通信線で接続されるデータキャリア駆動装置とデータキャリア装置とを含む通信システムであって、
前記データキャリア駆動装置は、
前記データキャリア装置にデータを送信する際、送信するデータの値に基づき、期間とデューティ比を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した期間及びデューティ比のパルスを含む第1パルス信号を生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した第1パルス信号に応じた電位差を前記2つの通信線に印加する印加手段と、
を備えており、
前記データキャリア装置は、
前記2つの通信線間の電位差に基づき第2パルス信号を出力する出力する出力手段と、
前記第2パルス信号の各パルスのデューティ比を判定する第1判定手段と、
前記第2パルス信号の各パルスについて、第1レベルから第2レベルに変化する第1エッジから、次の前記第1エッジまでの期間であるパルスの期間を判定する第2判定手段と、
前記第1判定手段の判定結果と前記第2判定手段の判定結果とに基づき前記データキャリア装置が送信したデータの値を判定する第3判定手段と、
を備え
前記第2判定手段は、基準値を有し、1つのパルスの期間と前記基準値との差が所定値より小さいか否かにより、前記1つのパルスの期間が第1期間であるか、前記第1期間より長い第2期間であるかを判定することを特徴とする通信システム。
【請求項10】
前記データキャリア駆動装置は画像形成装置の本体に設けられ、
前記データキャリア装置は、前記画像形成装置の交換ユニットに設けられることを特徴とする請求項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データキャリア駆動装置とデータの送受信を行うデータキャリア装置と、当該データキャリ装置を含む、画像形成装置の交換ユニットと、当該データキャリア装置及び当該データキャリア駆動装置を含む通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2つの通信線により、データの送受信、電力供給、同期信号の供給を行う通信システムを開示している。特許文献1によると、データキャリア駆動装置は、パルス信号のデューティ比をデータの値に応じて変化させることで、データキャリア装置にデータを送信している。一方、データキャリア装置は、データキャリア駆動装置が出力するパルス信号がハイレベルの期間において、データの値に応じて通信線に流れる電流を変化させることで、データキャリア駆動装置にデータを送信している。特許文献1のデータ通信システムは、データキャリア駆動装置が出力するパルス信号の1周期で1ビットのデータの送受信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4393351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様な通信システムにおいて、通信レートを高くするための1つの方法は、パルス信号の周波数を高くすることである。しかしながら、この様な通信システムでは、信号と電力を重畳して送信するために駆動回路の負荷容量を大きくせざるを得ない。負荷容量の大きな駆動回路では、パルス信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジになまりが生じる。そのため、パルス信号の高周波数化には限界がある。
【0005】
本発明は、パルス信号の1周期で複数ビットを送受信できる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、データキャリア装置は、受信するパルス信号の各パルスのデューティ比を判定する第1判定手段と、前記パルス信号の各パルスについて、第1レベルから第2レベルに変化する第1エッジから、次の前記第1エッジまでの期間であるパルスの期間を判定する第2判定手段と、前記第1判定手段の判定結果と前記第2判定手段の判定結果とに基づき前記パルス信号で搬送されているデータの値を判定する第3判定手段と、を備え、前記第2判定手段は、基準値を有し、1つのパルスの期間と前記基準値との差が所定値より小さいか否かにより、前記1つのパルスの期間が第1期間であるか、前記第1期間より長い第2期間であるかを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、パルス信号の1周期で複数ビットを送受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるデータ通信システムの構成図。
図2】一実施形態による通信ステートの遷移状態の説明図。
図3】一実施形態による各信号波形を示す図。
図4】一実施形態によるデータキャリア駆動装置の復調部の構成図。
図5】一実施形態によるデータ値とクロックパルス信号の波形との関係を示す図。
図6】一実施形態による指令データに対応するパルス電圧の波形を示す図。
図7】一実施形態による各信号波形を示す図。
図8】一実施形態による各信号波形を示す図。
図9】一実施形態による判定部での処理の説明図。
図10】一実施形態によるデータ通信システムの構成図。
図11】一実施形態による基準値計測処理の説明図。
図12】一実施形態による判定部での処理の説明図。
図13】一実施形態による画像形成装置の構成図。
図14】一実施形態による画像形成装置にデータ通信システムを適用した場合のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態によるデータ通信システム100の構成図である。データ通信システム100は、データキャリア装置101と、データキャリア駆動装置102と、を備えている。データキャリア駆動装置102は、端子A及び端子Bを有し、データキャリア装置101は、接点A及び接点Bを有している。ここで、図1に示す様に、端子Aと接点Aとが通信線により接続され、端子Bと接点Bとが通信線により接続され、この2つの通信線を介して、データキャリア装置101及びデータキャリア駆動装置102は、データの送受信を行う。また、データキャリア駆動装置102は、この2つの通信線を介してデータキャリア装置101に動作電力を供給する。
【0011】
例えば、本実施形態によるデータ通信システム100は画像形成装置に適用することができる。具体的には、画像形成装置の本体にデータキャリア駆動装置102を設け、画像形成装置の交換ユニットにデータキャリア装置101を設ける。そして、交換ユニットを画像形成装置に装着すると、データキャリア駆動装置102とデータキャリア装置101とが2つの通信線により接続される様に画像形成装置を構成する。また、データキャリア装置101には、交換ユニットに関する情報が格納された不図示のメモリを設ける。これにより、画像形成装置は、データ通信システム100を利用して、当該メモリに格納された交換ユニットに関する情報を取得することができる。なお、メモリに格納される情報は、例えば、交換ユニットの認証に関する情報や、交換ユニットを使用して行う画像形成制御における制御パラメータに関する情報とすることができる。
【0012】
本実施形態によるデータ通信システム100は、図2に示すように、待機ステート、データ送信ステート、インターバルステート、データ返信ステートの順に、4つの通信ステートを遷移しながら、データの送受信を行う。データ送信ステートにおいて、データキャリア駆動装置102は、データキャリア装置101に指令データを送信する。例えば、データキャリア駆動装置102は、指令データにより、データキャリア装置101の図示しないメモリに格納されたデータを読み出すことをデータキャリア装置101に指示する。インターバルステートにおいて、データキャリア装置101は、データ送信ステートで受信した指令の解析と、その指令の実行を行う。データ返信ステートにおいて、データキャリア装置101は、データ送信ステートにおいてデータキャリア駆動装置102から受信した指令に対する応答として、返信データをデータキャリア駆動装置102に送信する。例えば、データ送信ステートで受信した指令が、メモリのデータを読み出すものである場合、返信データは、メモリに格納されたデータの値となる。データ返信ステートが終了すると待機ステートに移行する。待機ステートとは、データキャリア駆動装置102が次の指令データをデータキャリア装置101に送信するまでの状態である。
【0013】
まず、図1のデータキャリア駆動装置102について説明する。データキャリア駆動装置102は、電圧V1を出力する第1電源107と、電圧V1より低い電圧V2を出力する第2電源108と、を有している。第1電源107は、復調部106の閾値設定部111と、電流検出部110に電圧V1を出力する。第2電源108は、電圧変換部112に電圧V2を出力する。データ処理部103は、データキャリア装置101へ送信する指令データの作成と、データキャリア装置101から受信した返信データに基づく処理を実行する。
【0014】
変調部105は、データ処理部103が生成する指令データに従いクロックパルス信号を生成する。具体的には、デューティ比設定部114には、デューティAとデューティBの2つのデューティ比を示す値が格納されている。本実施形態においては、50%より小さいデューティ比のデューティAを示す値と、50%より大きいデューティ比のデューティBを示す値が格納されているものとする。デューティ比設定部114は、指令データのデータ値に応じてデューティA又はデューティBを選択し、選択したデューティ比をパルス信号生成部113に通知する。また、周波数設定部115には、周波数Aと周波数Bの2つの周波数を示す値が格納されている。本実施形態において、周波数Bは、周波数Aよりも高い周波数とする。周波数設定部115は、指令データのデータ値に応じて周波数A又は周波数Bを選択し、選択した周波数を示す値をパルス信号生成部113に通知する。パルス信号生成部113は、デューティ比設定部114及び周波数設定部115がそれぞれ選択したデューティ比及び周波数に基づくパルスを含むクロックパルス信号を生成して電圧変換部112に出力する。つまり、パルス信号生成部113が出力するクロックパルス信号のパルスは、周波数AでデューティAのパルス、周波数BでデューティAのパルス、周波数AでデューティBのパルス、周波数BでデューティBのパルスの4種類のいずれかとなる。
【0015】
電圧変換部112は、入力されるクロックパルス信号のレベルがローの期間には第2電源108が出力する電圧V2を端子Bに出力し、ハイの期間には0V(GND)を端子Bに出力する。例えば、図3に示すクロックパルス信号が電圧変換部112に入力されると、電圧変換部112は、図3に示す電圧波形を端子Bに出力する。
【0016】
復調部106は、データキャリア装置101が送信する返信データを復調し、データ処理部103へ出力する。図4は、復調部106の詳細な構成を示している。電流検出部110は、電流検出抵抗Riを有している。第1電源107からデータキャリア装置101に流れ出す電流Iの値をIyとすると、データキャリア装置101の接点A(端子A)の電圧VaはVy=(V1-Iy×Ri)となる。閾値設定部111は、分圧抵抗R1と分圧抵抗R2と、を有し、分圧抵抗R1及びR2により第1電源107が出力する電圧V1を分圧し、閾値電圧Vthを生成する。電流判定部109のコンパレータには、閾値電圧Vthと端子Aの電圧Vaが入力されており、これらの大小を比較することで、電流Iによる電圧降下の大きさを判定し、その判定結果を出力する。
【0017】
なお、後述する様に、本実施形態において、電流Iの値を変化させるのはデータキャリア装置101である。具体的には、データキャリア装置101は、データ返信ステート以外の通信ステートにおいては、電流Iの値をIyにする。また、データキャリア装置101は、データ返信ステートにおいては、返信データのデータ値に応じて電流Iの値をIy又はIyより大きいIxとする。以下では、電流IがIyのときの電圧VaをVyとし、電流IがIxのときの電圧VaをVx(<Vy)とする。なお、Vx>V2とする。図3には、電流IがIyのときの端子Aの電圧と、端子Aと端子Bとの間の電位差であるパルス電圧Vabも示している。図3に示す様に、電流IがIyであると、パルス電圧Vabは、ハイレベルが概ねVyであり、ローレベルが概ねVy-V2のパルス波形となる。パルス電圧Vabは、接点A及び接点Bを介してデータキャリア装置101に供給される。
【0018】
続いて、データキャリア駆動装置102による指令データの送信処理について説明する。データキャリア駆動装置102の変調部105は、データ送信ステートにおいて、指令データを送信する際、指令データのデータ値に応じて変調したクロックパルス信号を生成する。上述した様に、パルス信号生成部113が出力するクロックパルス信号のパルスは、周波数AでデューティAのパルス、周波数BでデューティAのパルス、周波数AでデューティBのパルス、周波数BでデューティBのパルスの4種類のいずれかである。また、上述した様に、データ送信ステートにおいて、電流IはIyである。したがって、図3に示す様に、データ送信ステートにおいて、クロックパルス信号がハイレベルであると、パルス電圧Vabは電圧Vyとなり、クロックパルス信号がローレベルであると、パルス電圧Vabは電圧Vyより低い電圧(Vy-V2)となる。つまり、パルス電圧Vabの波形は、クロックパルス信号の波形と同様である。本実施形態では、図5に示す様に、この4種類のパルスにより、1つのパルスで2ビットのデータを送信する。
【0019】
図6は、データキャリア駆動装置102が、データ列"0101110010100011"である指令データを送信する場合のパルス電圧Vabを示している。データ値に応じてデューティ比及び周波数が変調されたパルス電圧Vabは、データキャリア装置101の接点Aと接点B間に印加される。なお、本実施形態において、データキャリア駆動装置102は、データ送信ステート以外のステートにおいて、データ値"01"を繰り返し送信する。つまり、データ送信ステート以外のステートにおいて、パルス電圧Vabは、周波数AでデューティBとなる。
【0020】
続いて、データキャリア駆動装置102による返信データの受信処理について説明する。データキャリア装置101は、データキャリア駆動装置102から流れ込む電流Iを変化させることで、返信データをデータキャリア駆動装置102に送信する。したがって、復調部106は、電流Iの大小を判定することで、返信データのデータ値を判定する。本実施形態においては、返信データのデータ値が"1"であると、データキャリア装置101は、パルス電圧Vabがハイレベルである期間とローレベルである期間の両方において、電流Iの値をIyにする。一方、返信データのデータ値が"0"であると、データキャリア装置101は、パルス電圧Vabがハイレベルである期間、電流Iの値をIyより大きいIxとし、パルス電圧Vabがローレベルである期間、電流Iの値をIyにする。なお、データキャリア装置101は、返信データを送信していない間は、電流Iの値をIyにする。つまり、データキャリア装置101は、返信データとしてデータ値"0"を送信する場合、パルス電圧Vabがハイレベルである期間に電流Iの値を、それ以外の期間より増加させる。上述した様に、電流検出部110の電流検出抵抗Riで生じる電圧降下により、端子Aの電圧Vaは、データキャリア駆動装置102からデータキャリア装置101に流れ込む電流Iの値により変化する。ここで、電流IがIxのときの電圧Va=Vxであり、電流IがIyのときの電圧Va=Vyとすると、Vy>Vxである。本実施形態では、閾値設定部111が電圧V1を分圧して生成する閾値電圧Vthを、Vy>Vth>Vxとの関係を満たす様にする。図4に示す様に、本実施形態において、閾値電圧Vthはコンパレータの負側の端子に入力されるため、電流IがIxであると、コンパレータは、ローレベルを出力する。一方、電流IがIyであると、コンパレータは、ハイレベルを出力する。このコンパレータによる判定結果は、データ処理部103に入力される。
【0021】
図7は、返信データのデータ列が"10101"である場合の各波形を示している。電圧Vaは、電流IがIxの間、Vxとなる。したがって、電圧Vaを閾値電圧Vthと比較することで、電流判定部109のコンパレータは、図7において、電流判定結果として示す波形の信号をデータ処理部103に出力する。データ処理部103は、パルス電圧Vabの立ち上がりエッジから、次の立下りエッジまでの間のこの波形に基づき、返信データのデータ値を判定する。なお、図7に示す様に、電流Iの値に応じて電圧Vaの値が変化するため、パルス電圧Vabのハイレベルの値も返信データに応じて変化する。なお、上述した様に、データキャリア装置101は、データ返信ステート以外のステートにおいては電流Iの値をIyとするため、パルス電圧Vabのハイレベルの値が変化するのは、データ返信ステートのときのみである。図2には、各ステートと、パルス電圧Vabとの関係の一例も示してある。
【0022】
続いて、データキャリア装置101の各ブロックについて説明する。内部電源生成部118は、データキャリア駆動装置102から供給されるパルス電圧Vabに基づき、データキャリア装置101が使用する電圧Vpを生成し、データキャリア装置101の各部に供給する。変換部124は、パルス電圧Vabの電圧をデータキャリア装置101内のロジック部で使用可能な値に変換する。本実施形態において、変換部124は、パルス電圧Vabがハイレベルであると、電圧Vpに変換し、ローレベルであると、電圧Vpより低い基準電圧に変換し、これを受信パルス信号として判定部125に出力する。なお、本実施形態では、基準電圧を0Vとする。図8は、電流IがIyであるときの各波形を示している。
【0023】
判定部125は、データ送信ステートにおいて、受信パルス信号のデューティ比及び周波数を判定し、判定結果を復調部122に出力する。復調部122は、この判定結果に基づき指令データのデータ値を判定(復調)し、判定したデータ値をデータ処理部123に出力する。データ処理部123は、指令データの内容に基づき返信データを生成し、切替部117に返信データを出力する。切替部117は、返信データのデータ値に応じて、データキャリア駆動装置102からデータキャリア装置101に流れ込む電流Iを切り替えることで、データキャリア駆動装置102に返信データを送信する。また、内部クロック生成部116は、パルス電圧Vabの周波数より十分早い周波数の内部クロックを生成し判定部125に出力する。
【0024】
続いて、判定部125の詳細について説明する。判定部125は、デューティ比判定部120と、周波数判定部121と、を備えている。周波数判定部121には、周波数判定の基準値Xが予め設定されている。
【0025】
図9は、判定部125での判定処理の説明図である。判定部125は、受信パルス信号より十分高速な内部クロックを用いて、受信パルス信号の各パルスについて、ハイレベルの期間t1と、パルスの期間t2と、をカウントする。デューティ比判定部120は、t1とt2の半分の値とを比較する。上述した様に、デューティAは、50%より小さく、デューティBは、50%より大きい。したがって、デューティ比判定部120は、t1がt2の半分の値より小さいと、デューティAと判定し、t1がt2の半分より大きいと、デューティBと判定する。デューティ比判定部120は、判定結果を復調部122に出力する。
【0026】
また、上述した様に、周波数Bは、周波数Aより高い周波数である。したがって、周波数が周波数Aであるときの1つのパルスの期間Aは、周波数が周波数Bであるときの1つのパルスの期間Bより長くなる。つまり、受信パルス信号が周波数Aであるときの期間t2の値は、受信パルス信号が周波数Bであるときの周期t2の値より大きくなる。本実施形態において、周波数判定部121に格納される基準値Xは、受信パルス信号が周波数Aであるときのt2の値より小さく、かつ、受信パルス信号が周波数Bであるときのt2の値より大きい値とする。したがって、周波数判定部121は、t2と基準値Xとを比較し、t2がXより大きいと周波数Aと判定し、t2がXより小さいと周波数Bと判定し、判定結果を復調部122に出力する。
【0027】
復調部122は、デューティ比判定部120及び周波数判定部121それぞれの判定結果を組み合わせて指令データの復調を行う。具体的には、図5に示す様に、周波数A、かつ、デューティAであれば"00"と判定し、周波数A、かつ、デューティBであれば"01"と判定し、周波数B、かつ、デューティAであれば"10"と判定し、周波数B、かつ、デューティBであれば"11"と判定する。復調部122は、復調したデータ値をデータ処理部123に出力する。
【0028】
次に、データキャリア駆動装置102への返信データ送信時の詳細動作について説明する。インターバルステートが終了すると、データ返信ステートに移行する。データ返信ステートにおいて、データキャリア装置101の切替部117は、データ処理部123から入力された返信データに応じて、負荷を変化させ、電流Iの大小を切り替える。具体的には、上述した様に、返信データが"0"の時、パルス電圧Vabがハイレベルである期間、電流Iの値をIxにする。
【0029】
以上、本実施形態において、データキャリア駆動装置102は、指令データの連続する複数のビットのデータ値に基づき、周波数(期間)とデューティ比を選択する。そして、選択した周波数(期間)及びデューティ比のパルスを含むクロックパルス信号を生成し、電圧変換部112で変換してデータキャリア装置101に送信する。また、データキャリア装置101は、2つの通信線間の電圧に基づきクロックパルス信号と同じ波形の受信パルス信号を生成する。そして、データキャリア装置101は、受信パルス信号の各パルスのデューティ比と、各パルスの期間を判定し、デューティ比と各パルスの期間の判定結果に基づき受信パルス信号で搬送されているデータ値を判定する。なお、受信パルス信号の1つのパルスとは、受信パルス信号の立ち上がりエッジ間の期間である。また、受信パルス信号は、その期間内に1つの立下りエッジを有し、デューティ比とは、1つのパルスの期間に対するハイレベルの期間の比である。
【0030】
以上の構成により、パルス電圧Vabの1周期において、2ビットの指令データを送信することができる。なお、本実施形態では、2つの周波数(期間)と2つのデューティ比を使用したが3つ以上の周波数と3つ以上のデューティ比を組み合わせて複数のビットをパルス電圧Vabの1周期で送信する構成とすることもできる。
【0031】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。図10は、本実施形態によるデータ通信システム900の構成図である。なお、第一実施形態と同様の構成要素については、同じ参照符号を付与してその説明は省略する。データ通信システムは、データキャリア駆動装置102と、データキャリア装置901と、を有する。なお、データキャリア駆動装置102は第一実施形態と同様である。本実施形態において、データキャリア装置901は、第一実施形態の判定部125に代えて、判定部902を有する。なお、判定部902のデューティ比判定部120は、第一実施形態と同じである。本実施形態では、第一実施形態の様に周波数判定部121に予め基準値を格納しない。代わりに、基準値計測部903が、基準値Yを計測して、周波数判定部904に出力する。
【0032】
図11は、基準値計測部903による基準値Yの計測方法の説明図である。基準値計測部903は、例えば、待機ステートの間、受信パルス信号の1周期を内部クロックでカウントする。なお、上述した様に、待機ステートの間の受信パルス信号の周波数は周波数Aである。基準値計測部903は、周波数Aの時の1つのパルスの期間を内部クロックでカウントしたカウント値t5を、基準値Yとして周波数判定部904に出力する。
【0033】
周波数判定部904は、データ送信ステートにおいて、受信パルス信号のパルスの期間のカウント値t2と基準値Yとの差の絶対値を求め、この差の絶対値が所定値より小さいかを判定する。上述した様に、基準値Yは、周波数Aに対応するパルスの期間のカウント値であるため、受信パルス信号が周波数Aであるときの差の絶対値は、受信パルス信号が周波数Bであるときの差の絶対値より小さくなる。したがって、周波数判定部904は、1つのパルスのカウント値t2と基準値Yとの差の絶対値が所定値より小さいと、当該1つのパルスの周波数は、周波数Aであると判定し、そうではないと、周波数Bと判定する。なお、本実施形態では、待機ステートの間の受信パルス信号の周波数を周波数Aとしたが、周波数Bであっても同様である。
【0034】
基準値計測部903による基準値Yの計測は、例えば、初回のデータ通信を開始する前の待機ステートでのみ行う構成とすることができる。また、待機ステートの度に基準値Yの計測を行う構成であっても、所定回数の待機ステートの度に行う構成であっても良い。また、待機ステートの間に1つのパルスについてのカウント値t5のみを計測して基準値Yとする構成であっても、複数のパルスについてのカウント値t5を計測し、それらの平均値を基準値Yとする構成であっても良い。
【0035】
以上、本実施形態において、データキャリア駆動装置102は、データ送信ステート以外の期間において、クロックパルス信号の周波数(パルスの期間)を一定とする。そして、データキャリア装置101は、1又は複数のパルスについて、その期間を測定して基準値を求める。この様に、本実施形態では、基準値Yを実測するため、精度よくパルスの周波数を判定することができる。
【0036】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について、第一実施形態との相違点を中心に説明する。なお、本実施形態の構成は、図1に示す第一実施形態と同様である。第一実施形態において、判定部125は、受信パルス信号の立ち上がりエッジから立ち下がりエッジまでの期間t1と、立ち上がりエッジから、次の立ち上がりエッジまでの期間t2を内部クロックで計測していた。本実施形態では、図12に示す様に、受信パルス信号の立ち上がりエッジから立ち下りエッジまでの期間t3と、受信パルス信号の立下りエッジから立ち上がりエッジまでの期間期間t4と、を内部クロックで計測する。つまり、本実施形態では、受信パルス信号の1つのパルスのハイレベルの期間t3と、ローレベルの期間t4と、を内部クロックで計測する。なお、t3とt4を加算したものが、第一実施形態でのt2であるため、周波数判定部121は、t3とt4を加算した値と基準値とを比較して周波数を判定する。一方、本実施形態において、デューティ比判定部120は、期間t3と期間t4との大小関係を判定する。具体的には、期間t3が期間t4より小さいと、周波数判定部121は、デューティAと判定し、期間t3が期間t4より大きいと、周波数判定部121は、デューティBと判定する。
【0037】
<第四実施形態>
なお、上記実施形態で説明したデータ通信システムは、例えば画像形成装置に適用可能である。その場合、画像形成装置の本体側にデータキャリア駆動装置を搭載し、消耗品等の交換部品にデータキャリア装置を搭載した構成とすることができる。以下に、上記実施形態のデータ通信システムが適用される画像形成装置の構成を説明する。
【0038】
[画像形成装置の構成]
画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタを例にあげて説明する。図13に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ300は、画像形成部として、静電潜像が形成される像担持体としての感光ドラム311、感光ドラム311を一様に帯電させる帯電部317(帯電手段)、感光ドラム311に形成された静電潜像をトナーで現像する現像部312(現像手段)を備えている。この感光ドラム311、帯電部317、現像部312は一体化されたカートリッジCとして画像形成装置の本体に対して着脱可能になっている。そして、感光ドラム311に現像されたトナー像を、カセット316から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写部318(転写手段)によって転写して、シートに転写したトナー像を定着器314で定着してトレイ315に排出する。また、画像形成装置は、画像形成動作を制御するためのCPUを含むコントローラ320を有する。コントローラ320は、画像形成装置の動作を制御するプログラムやデータを記憶する不図示のメモリ(ROM、RAM等)を有する。
【0039】
図14は、画像形成装置にデータ通信システムを適用する場合のブロック図である。画像形成装置の本体は、コントローラ320と双方向に通信可能なデータキャリア駆動装置102を備えている。カートリッジCは、データキャリア装置101と、データ記憶部101Aと、を有する。データ記憶部101Aは、データキャリア装置101によって読み出し及び書き込みが制御される。データ記憶部101Aとしては、EEPROM等の不揮発性のメモリを使用することができる。
【0040】
コントローラ320からの命令に基づきデータキャリア駆動装置102は、カートリッジCに搭載されたデータキャリア装置101とのデータ通信を実行する。カートリッジCのデータキャリア装置101は、例えばデータキャリア駆動装置102から送信されたデータを処理して、データ記憶部101Aに記憶することが可能である。また、データキャリア装置101は、データキャリア駆動装置102からの信号に基づき、データ記憶部101Aに記憶されたデータを読み出してデータキャリア駆動装置102に返信することが可能である。
【0041】
このように、本発明は、画像形成装置の交換部品(交換ユニット)にデータキャリア装置101を搭載したデータ通信システムに適用可能である。画像形成装置の消耗品としてのカートリッジに関するデータをデータ記憶部101Aに記憶することで、例えばカートリッジの使用状態としてトナー残量、感光ドラムの使用量等を管理するシステムを提供することができる。
【0042】
なお、適用可能な画像形成装置としては、図13に例示したものに限定されず、例えば複数の画像形成部を備えるカラー画像形成装置であってもよい。また、データキャリア装置101が設けられる交換部品(交換ユニット)は、カートリッジに限定されない。例えば、感光ドラム311上のトナー像が転写される中間転写ベルトを含む中間転写ベルトユニットや、トナーを収容するトナーユニット等、画像形成に用いられるプロセス部材を含む、様々な交換部品にデータキャリア装置101を設けてデータ通信システムを提供することが可能である。
【0043】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0044】
120:デューティ比判定部、121:周波数判定部、122:復調部
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