(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/06 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B65D41/06
(21)【出願番号】P 2018177410
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
(72)【発明者】
【氏名】熊田 光雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勝己
(72)【発明者】
【氏名】渡部 篤
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雄祐
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-008152(JP,U)
【文献】実開昭61-129748(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0247714(US,A1)
【文献】特開2007-261670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を注出可能な注出口が形成された本体部と、
前記本体部と密接して前記注出口をカバーする上蓋部と、
前記上蓋部に設けられ、前記注出口の軸方向に沿って移動可能な押圧部と、
前記本体部と前記上蓋部のいずれかに設けられて、前記押圧部の前記軸方向への移動に連動して前記本体部に対して相対的に回動可能な周状部材と、
前記本体部と前記上蓋部との間に設けられる弾性体とを含み、
押圧動作による前記押圧部の前記軸方向への移動に伴って、前記周状部材が前記本体部に対して相対的に回動し、前記上蓋部が前記本体部から開栓
と閉栓
が可能となるカム機構を有
し、
前記弾性体は前記注出口の上端面に密接して密封可能であり、且つ、前記弾性体が前記上蓋部の内面に配設されてなる、ことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記カム機構は、
前記押圧部と前記周状部材の一方に設けられる突起部と、
他方に設けられるカム溝と、で構成される請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記カム溝は、
前記軸方向における前記突起部の移動下限を規定する下部カムと、
前記下部カムの上方に配置されて、閉栓時における前記突起部の移動上限を規定して前記突起部を保持する上部カムと、を含んで構成される請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記下部カムは、
閉栓時に前記突起部が最初に接触する第1頂部と、
前記第1頂部から周方向に沿って下方に傾斜した第1傾斜部と、
前記第1傾斜部の下端部と連なる第2頂部と、
前記第2頂部から前記周方向に沿って下方に傾斜した第2傾斜部とが、
前記第2傾斜部の下端部と前記第1頂部とが連なることで繰り返し単位として前記周方向で連続し、
前記上部カムは、
前記周方向に関して所定間隔で複数設けられ、
前記閉栓時に前記突起部が前記下部カムから離脱した後で接触する左底部と、
前記左底部から前記周方向の上方に傾斜した第3傾斜部と、
前記第3傾斜部の端部で前記突起部を保持する突起保持部と、
前記突起保持部から前記周方向の下方に傾斜した第4傾斜部と、を含んでいる請求項3に記載のキャップ。
【請求項5】
前記上部カムの前記左底部は、前記周方向に関して前記下部カムの前記第1頂部と前記第2頂部の間に配置される請求項4に記載のキャップ。
【請求項6】
前記下部カムの前記第2頂部は、前記周方向に関して前記上部カムの前記突起保持部よりも前記左底部に近くなるように配置される請求項4又は5に記載のキャップ。
【請求項7】
前記第2傾斜部の下端は、前記周方向に関して前記上部カムの前記第4傾斜部の右底よりも外側となるように配置される請求項4~6のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項8】
前記上部カムの上端は、前記閉栓時において前記複数の上部カムの間隙に前記突起部を誘導する誘導面が形成されている請求項3~7のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項9】
前記本体部と前記上蓋部とを連結する可撓性の連結帯をさらに含み、
前記上蓋部の周壁には、前記上蓋部のバンド接続部
と周方向に関して重なる位置においてガイド部が形成されるとともに、
前記本体部の周壁には
、前記ガイド部
と前記周方向に関して重なる位置において当該ガイド部に挿入可能な被ガイド部が形成されている
、請求項1~8のいずれか一項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の容器口部と係合可能なキャップに関するものであり、より詳細には簡便な動作で開栓と閉栓が可能な構造が採用されている合成樹脂キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水やお茶あるいは清涼飲料水などの飲料用容器として、PETボトル又は金属/ガラス製ボトルなどの容器やスパウト付き紙パック容器など開閉栓可能なものが広く使用され、調味料や洗剤等を内容物とする容器においても同様である。これらの容器に使用されるキャップとしては、例えば合成樹脂を射出成形して所望の形状に成形した合成樹脂キャップなどが用いられている。
かような合成樹脂キャップの一例として、例えば特許文献1に示すごとき簡単な動作によって開栓と閉栓を実現させたキャップが知られている。
【0003】
すなわち特許文献1においては、幼児等に危険性のある内容物を貯蔵する容器に使用されるキャップであって、閉栓状態では幼児が容易に開口できないようなロック装置となり、しかも大人が使用する場合には簡単な操作により開栓できる構造が示されている。より具体的には
図5及び
図6に示されるとおり、カム部20の上方凹入部のストッパー部22にオーバーキャップ9の小突起部21が係止していて当該オーバーキャップ9は上方に引き抜くことも廻動することも不可能となっている。一方で開栓時にはオーバーキャップ9の薄肉ばね部18を下圧しながら当該オーバーキャップ9を廻動させると、オーバーキャップ9の小突起部21はストッパー部22を離脱して開栓する構造が開示されている。
【0004】
他方で閉栓時にはオーバーキャップ9を上記とは反対方向に廻動させながら薄肉ばね部18を下圧すると、オーバーキャップ9の小突起部21がカム部20の波状カム部25及びストッパー部24に沿って誘導されて最終的に小突起部21が上方のストッパー部22に係合する構造が採用される場合もある。
このように特許文献1では、簡便な動作を実現する機構として、小突起部21とカム部20との連動によって容器の開栓動作と閉栓動作を行う構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり容器を封止可能なキャップは、その優れた利便性から様々な状況で使用されており、それが故に様々な人が当該キャップを利用することが容易に想像できる。
これに対して従来の合成樹脂キャップにおいては、開栓動作や閉栓動作(これらを総称して「開閉栓」とも称する)に際してキャップを摘まんで捻り回す廻動動作が必要となっており、一例として例えば指先が不自由な人や握り込む力が弱い人にとっては開閉栓が非常に困難である。
また、何らかの作業と並行しながら片手で開閉栓を容易に実行可能な優れた構造は未だ提案されていない。
従って、本発明の目的の1つは、開閉栓に対して廻動動作(捻り回し)が不要であり、例えば片手でも開閉栓を容易に行うことが可能な構造のキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一形態におけるキャップは、(1)内容物を注出可能な注出口が形成された本体部と、 前記本体部と密接して前記注出口をカバーする上蓋部と、前記上蓋部に設けられ、前記注出口の軸方向に沿って移動可能な押圧部と、前記本体部と前記上蓋部のいずれかに設けられて、前記押圧部の前記軸方向への移動に連動して前記本体部に対して相対的に回動可能な周状部材と、前記本体部と前記上蓋部との間に設けられる弾性体とを含み、押圧動作による前記押圧部の前記軸方向への移動に伴って、前記周状部材が前記本体部に対して相対的に回動し、前記上蓋部が前記本体部から開栓と閉栓が可能となるカム機構を有し、前記弾性体は前記注出口の上端面に密接して密封可能であり、且つ、前記弾性体が前記上蓋部の内面に配設されてなることを特徴とする。
【0008】
なお上記(1)に記載のキャップにおいては、(2)前記カム機構は、前記押圧部と前記周状部材の一方に設けられる突起部と、他方に設けられるカム溝と、で構成されることが好ましい。
【0009】
また、上記(2)に記載のキャップにおいては、(3)前記カム溝は、前記軸方向における前記突起部の移動下限を規定する下部カムと、前記下部カムの上方に配置されて、閉栓時における前記突起部の移動上限を規定して前記突起部を保持する上部カムと、を含んで構成されることが好ましい。
【0010】
また、上記(3)に記載のキャップにおいては、(4)前記下部カムは、閉栓時に前記突起部が最初に接触する第1頂部と、前記第1頂部から周方向に沿って下方に傾斜した第1傾斜部と、前記第1傾斜部の下端部と連なる第2頂部と、前記第2頂部から前記周方向に沿って下方に傾斜した第2傾斜部とが、前記第2傾斜部の下端部と前記第1頂部とが連なることで繰り返し単位として前記周方向で連続し、前記上部カムは、前記周方向に関して所定間隔で複数設けられ、前記閉栓時に前記突起部が前記下部カムから離脱した後で接触する左底部と、前記左底部から前記周方向の上方に傾斜した第3傾斜部と、前記第3傾斜部の端部で前記突起部を保持する突起保持部と、前記突起保持部から前記周方向の下方に傾斜した第4傾斜部と、を含んでいることが好ましい。
【0011】
また、上記(4)に記載のキャップにおいては、(5)前記上部カムの前記左底部は、前記周方向に関して前記下部カムの前記第1頂部と前記第2頂部の間に配置されることが好ましい。
【0012】
また、上記(4)又は(5)に記載のキャップにおいては、(6)前記下部カムの前記第2頂部は、前記周方向に関して前記上部カムの前記突起保持部よりも前記左底部に近くなるように配置されることが好ましい。
【0013】
また、上記(4)~(6)のいずれかに記載のキャップにおいては、(7)前記第2傾斜部の下端は、前記周方向に関して前記上部カムの前記第4傾斜部の右底よりも外側となるように配置されることが好ましい。
【0014】
また、上記(3)~(7)のいずれかに記載のキャップにおいては、(8)前記上部カムの上端は、前記閉栓時において前記複数の上部カムの間隙に前記突起部を誘導する誘導面が形成されていることが好ましい。
【0015】
また、上記(1)~(8)のいずれかに記載のキャップにおいては、(9)前記本体部と前記上蓋部とを連結する可撓性の連結帯をさらに含み、前記上蓋部のバンド接続部と対応して前記上蓋部の周壁にはガイド部が形成されるとともに、前記本体部の周壁には前記ガイド部と対応する被ガイド部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、押圧部の軸方向への移動に連動してカム機構が上蓋部を本体部から開閉栓可能とするので、使用者の廻動動作を一切伴わずに軸方向への押圧動作だけで開閉栓を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態におけるキャップ100が容器本体1に装着された開栓状態におけるキャップ付き容器200の外観を示す斜視図である。
【
図2】開栓状態におけるキャップ付き容器200の側面を示す側面図である。
【
図3】開栓状態におけるキャップ付き容器200を上方から俯瞰した外観図である。
【
図4】閉栓状態におけるキャップ付き容器200の外観を示す斜視図と、容器口部を拡大して模式的に示した断面図である。
【
図5】実施形態におけるキャップ100の外観を示す斜視図である。
【
図6】キャップ100のうち本体部10を模式的に示した斜視図である。
【
図7】本体部10に対して相対的に回動する周状部材30の詳細を示す模式図である。
【
図8】キャップ100のうち上蓋部20を模式的に示した斜視図である。
【
図9】上蓋部20の詳細を模式的に示した断面図である。
【
図10】閉栓動作時におけるカム機構50の動作を模式的に説明する状態遷移図である。
【
図11】開栓動作時におけるカム機構50の動作を模式的に説明する状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。
なお本実施形態においては、説明の便宜上、図を用いた説明においてX、Y及びZ方向を適宜設定したが、説明の便宜上であって本発明を何ら過度に限定するものではない。
【0020】
<キャップ付き容器200>
図1~4は、本実施形態に係るキャップ付き容器200をそれぞれ異なる方向から見た図である。これらの図から明らかなとおり、本実施形態のキャップ付き容器200は、キャップ100が容器本体1に装着されており、当該容器本体1内に内容物を貯留し保存するのに好適となっている。
また、この容器口部には、公知のネジ構造が形成されているが、キャップ100を固着可能な形態は上記のネジ構造に限られず、例えばアンダーカットで突起を形成して容器本体1側と嵌合する打栓式構造など公知の種々の固着構造を適用してもよい。
【0021】
また、容器本体1についても上記したボトルや瓶の形態に限られず、例えばキャップ100をスパウトとして構成した場合に当該スパウトに融着される紙やプラスチックなどの袋状容器の形態であってもよい。
また、本実施形態の容器本体1に貯蔵されるのに好適な内容物としては、特に制限はなく、水やお茶あるいは清涼飲料水の他にアルコール飲料や炭酸飲料なども例示できる。さらには飲料に限られず、各種の調味料やトイレタリー液など公知の種々の液体が例示できる。
【0022】
<キャップ100>
以下、上記した容器本体1に装着されるキャップ100について、
図1~9を適宜参照しながら詳述する。なお
図4では連結帯80が両端部付近で切断されたごとき図示となっているが、これは説明の便宜上であって実際にはこれら連結帯80が連結された一体物となって構成されている。
これらの図からも明らかなとおり、本実施形態におけるキャップ100は、本体部10、上蓋部20、周状部材30、及び弾性部材40を含んで構成されている。このキャップ100の材質に特に制限はないが、例えば射出成形が可能な公知の合成樹脂(例えばポリエチレンやポリプロピレンなど)で構成されることが好ましい。
【0023】
なおキャップ100は、
図4(b)に例示されるような上蓋部20をカバーする封止カバー90をさらに含んで構成されていてもよい。この封止カバー90は、例えば使用者が誤って押圧部21を押圧してしまうことや、或いは押圧部21に予期せぬ外力がかかり押圧してしまい意図せず開栓してしまうことや、この押圧部21自体の汚染を回避することなどを目的として設置できる。したがってこの封止カバー90を有する場合には、キャップ100の開栓時には当該封止カバー90を除去した上で押圧部21を押圧することとなる。なお
図4(b)に示されるとおり、封止カバー90には、連結帯80や被ガイド部13aとの干渉を防止するための開口が形成されていてもよい。
【0024】
本体部10は、中空の筒状部材であって、上記した容器本体1の注出口に対応して内容物を注出可能な注出口11が形成されて容器本体1の口部と係合可能且つ連通する流路を有して構成されている。
より具体的には、
図1~3及び6などに示されるとおり、本体部10は、上記した注出口11の他、フランジ面12、周壁13、容器接続部14などを含んで構成されている。
【0025】
このうち周壁13は、容器接続部14の上面となるフランジ面12から立設するように設けられている。この周壁13は、容器接続部14よりも小径で構成された中空の筒状部材であって、その外周面には被ガイド部13aが形成されるとともに、その内周面には後述する周状部材30を回転可能に保持する収容凹部13bが形成されている。
【0026】
なお
図1及び2から明らかなとおり、本実施形態では被ガイド部13aは周壁13の外周面に形成されて軸方向に延在するガイドリブであり、このガイドリブとしての被ガイド部13aが後述する上蓋部20の外周壁22に形成された切り欠きとしてのガイド部22a内に挿入される。また、上記した被ガイド部13aとガイド部22aの図示された構造は一例であって、例えばこれらが逆の構成となるようにしてもよい。
【0027】
容器接続部14は、上記した容器本体1の口部と接続される中空の筒状部材である。本実施形態では、容器接続部14の外周面には後述する連結帯80の一端が固着されるバンド接続部14aが形成されるとともに、その内周面には上記した容器本体の口部と接続される雌螺条14bが形成されている。
なお、本実施形態の連結帯80は、本体部10と上蓋部20とを連結する可撓性の帯状部材である。したがって閉栓時には連結帯80が撓んだ状態で常時反力が生じた状態となっており、開栓時にその反力が開放されて延伸した状態に戻るように構成されている。
【0028】
次に本実施形態のキャップ100における上蓋部20について説明する。
上蓋部20は、
図8及び
図9などからも明らかなとおり、上記した本体部10と密接して注出口11をカバーする機能を有している。かような本実施形態の上蓋部20は、押圧部21、外周壁22、天面板23、及び内周壁24を含んで構成されている。
【0029】
押圧部21は、例えば
図2や
図5に示されるとおり、上蓋部20に設けられて注出口11の軸方向(図中のZ方向)に沿って移動可能なように構成されている。より具体的に本実施形態の押圧部21は、
図4などに示すとおり、使用者が指などで押圧することが可能なように、上蓋部20の天面板23から上方に膨出して構成されている。なお
図4(a)では押圧部21は円盤状に膨出した形状を呈しているが、膨出形状はこれに限定されない。
【0030】
また
図5から理解されるとおり、本実施形態の上蓋部20は、上記した天面板23からそれぞれ内周壁24及びこの内周壁24よりも相対的に大径の外周壁22が垂下するように構成された二重壁構造の蓋体となっている。
このうち外周壁22の外周面には、上記したガイド部22aが形成されるとともに、このガイド部22aに対応するように周方向に関して重なる位置にバンド接続部22bが設けられている。バンド接続部22bには、上記した連結帯80の他端が固着される。
【0031】
なお、本実施形態においては、上蓋部20が本体部10に被せられた場合に、被ガイド部13a、ガイド部22a、バンド接続部14a、及びバンド接続部22b、が同一のZ軸上に設けられているが、この形態に限られることはなく、例えば被ガイド部13a及びガイド部22aは、バンド接続部14a、22aの周方向において180°反対側に形成されるようにしてもよい。
【0032】
なお、連結帯80と上蓋部20との固着形態、又は連結帯80と本体部10との固着形態は特に制限されず、これらが予め一体で形成されていてもよいし、接着剤や熱融着など公知の固着手法を介して互いを固定してもよい。
【0033】
このように本実施形態では上蓋部20が本体部10に密着する際に、ガイド部22aに被ガイド部13aが挿入されることで、これら上蓋部20と本体部10の相対的な回動が制限されることになり、周状部材30の回動による反作用の影響を抑制することができる。これにより後述する開栓動作や閉栓動作時に周状部材30だけへ回動力が効率的に伝達されることが実現されている。
【0034】
また、
図4、8及び
図9に示すとおり、本実施形態においては、本体部10と上蓋部20との間に弾性体40が設けられ、この弾性体40は、
図3や
図4(c)に示すように注出口11の上端面に密接して密封可能な弾性リングが例示でき、本実施形態では上蓋部20の内面(天面板23の内面のうち外周壁22と内周壁24の間)に配設されている。
【0035】
なお弾性体40の配設箇所は上記に制限されず、本体部10と上蓋部20との間に設けられて押圧部21への押圧動作に対する反力を上蓋部20に伝達可能な限りにおいて種々の配置形態を採用できる。かような弾性体40の配置箇所としては、例えば上蓋部20の外周壁22の開口端部や本体部10のフランジ面12上など種々の配置形態を採用できる。また弾性体40の構造についても上記したゴム状の弾性リングに限らず、上記した反力を発生可能であればバネなど公知の弾性部材を適用可能である。
【0036】
図1、3及び5などから明らかなとおり、上蓋部20の内周壁24には、後述するカム機構50に含まれる突起部60が設けられている。より具体的に突起部60は、例えば内周壁24の外周面に所定の間隔を隔てて複数個設けられた径方向外側に向けて突出する部位である。なお本実施形態では、内周壁24の外周面に対して周方向において90度間隔で4つの突起部60が設けられているが、4つ以外の数でもよいし必ずしも等間隔で設置されていなくともよい。この場合において、突起部60の数は、軸方向への安定した移動を実現する観点からは仮想的な面を形成可能な3つ以上であることが尚好ましい。
【0037】
<キャップ100の開閉栓を担うカム機構50>
次に各図を参照しながら、本実施形態におけるキャップ100の開閉栓を担うカム機構50について詳述する。本実施形態のカム機構50は、上記した押圧部21と周状部材30の一方に設けられる突起部60と、他方に設けられるカム溝70と、で構成されている。
そして
図5~7などから理解されるとおり、本実施形態では押圧動作の基点となる押圧部21(すなわち上蓋部20側であり、より具体的には内周壁24の外周面)に突起部60が設けられるとともに、本体部10に対して相対的に回動可能な周状部材30にカム溝70が設けられている。
【0038】
かような構成を有する本実施形態のカム機構50によれば、使用者の押圧動作による押圧部21の軸方向(Z方向)への移動に伴って周状部材30が本体部10に対して相対的に回動し、これにより上蓋部20が本体部10から開閉栓が可能となる。
なお周状部材30が本体部10に対して相対的に回動することで上蓋部20が本体部10から開閉栓可能となれば、必ずしもカム機構50の組み合わせは上記に限定されない。
【0039】
例えば突起部60とカム溝70の設置位置を変えて、周状部材30は上蓋部20に回動可能に設けられる突起部60としつつ、カム溝70は本体部10に回動せず固定される形態であってもよい。あるいは、上蓋部20にはカム溝70を形成するとともに、本体部10には当該カム溝70に対応した突起部60を形成していずれかを回動可能としてもよい。
【0040】
次に、本実施形態における周状部材30の構成について説明する。
図6に示すとおり、周状部材30は、本体部10の収容凹部13b内で回動可能に配設されている。かような周状部材30は、例えばキャップ100の組み立て時に収容凹部13b内に嵌入される。
【0041】
周状部材30は、軸方向に所定の長さを有した中空のリング状部材であって、その外周面が上記した収容凹部13bと対向するとともに、その内周面には突起部60に対応したカム溝70が形成されている。
このうちカム溝70は、
図7に示すとおり、周状部材30の下側に設けられる下部カム71と、この下部カム71に対して上方に配置される上部カム72と、を含んで構成されている。
【0042】
下部カム71は、上記した開栓動作時や閉栓動作時において、軸方向(Z方向)における突起部60の移動下限を規定する機能を有している。
かような本実施形態の下部カム71は、
図7(b)に示すとおり、閉栓動作時に突起部60が最初に接触する+側の周方向(Z軸の時計回りであり、「+θz方向」とも称する)に沿って下方に傾斜した第1傾斜部71b、第1傾斜部71bの起点となる第1頂部71a、第1傾斜部71bの下端部と連なる第2頂部71c、及びこの第2頂部71cから+θz方向に沿って下方に傾斜した第2傾斜部71dが繰り返し単位となるように構成されている。より詳細には、下部カム71における各第2傾斜部71dの下端部と各第1頂部71aとが連なることで、上記した繰り返し単位として周方向で連続することが実現されている。
なお上記においては、周状部材30の底面からの高さを基準として、第1頂部71aは、第2頂部71cよりも高いことが好ましい。
【0043】
一方で上記した下部カム71と対応する上部カム72は、閉栓動作時における突起部60の移動上限を規定する機能を有している。
かような本実施形態の上部カム72は、同図に示すとおり、周方向に関して所定間隔で複数設けられる。より具体的に上部カム72は、閉栓動作時に突起部60が下部カム71から離脱した後で接触する+θz方向の上方に向けて傾斜した第3傾斜部72b、第3傾斜部72bの起点となる左底部72a、第3傾斜部72bの端部で突起部60を保持する突起保持部72c、及びこの突起保持部72cから+θz方向の下方に向けて傾斜した第4傾斜部72dを含んで構成されている。
【0044】
また
図7(b)に示すように、本実施形態の上部カム72は、開栓動作時に下部カム71と接触した突起部60が上方へ移動を転じた後で最初に接触する+θz方向の上方に向けて傾斜した第5傾斜部72gと、第5傾斜部72gの起点となる右底部72fと、をさらに含んでいることが好ましい。さらに同図のとおり、本実施形態の上部カム72の上端は、閉栓動作時において複数の上部カム72の間隙Gに突起部60を誘導する誘導面72eが形成されていてもよい。これにより、使用者は効率的に閉栓動作を実行することが可能となる。
上記した構成を有する下部カム71と上部カム72に対して突起部60が相対的に移動することで、以下に説明する開栓動作および閉栓動作が実行される。
【0045】
<キャップ100における閉栓動作時の状態遷移>
まず
図10を用いてキャップ100における閉栓動作時の状態遷移を説明する。
キャップ100の上蓋部20を本体部10に装着する閉栓時の動作では、まず使用者は連結帯80で互いに接続された本体部10に対して上蓋部20を装着する。このとき、上述のとおり本体部10の被ガイド部13aに上蓋部20のガイド部22aが挿入されるように装着される。このとき
図10(1)に示すように、複数の上部カム72の間における間隙Gの上方に突起部60が位置付けられる。
【0046】
次いで使用者は、被ガイド部13aにガイド部22aが挿入され、更に押圧部21を指や肘などで軸方向に沿って容器本体1側へ向けて押圧する。すると
図10(1)に示すとおり、上蓋部20に設けられた突起部60も押圧部21の軸方向への移動に伴って軸方向に沿って連動して間隙G内を下降して下部カム71の第1頂部71aと接触する。
【0047】
すると
図10(1)に示すとおり突起部60の中心よりも第1頂部71aは左側(より好ましくは突起部60における直径の3/4よりも左側)に位置するため、突起部60は、
図10(2)のとおり上記軸方向の移動に連動して下部カム71の第1傾斜部71bに沿ってカム溝70(周状部材30)が-側の周方向(Z軸の反時計回りであり、「-θz方向」とも称する)に回動する。そしてその後は、突起部60が下部カム71の第1傾斜部71bの端部と第2頂部71cを結ぶ面に到達すると、上記したカム溝70(周状部材30)の-θz方向への回動が停止する。
そしてこの時点で使用者は上記した押圧動作を解除する。
【0048】
ここで
図10(2)に示した状態においては、突起部60の軸方向に沿った下降中に弾性体40からの反力を受けている。したがって使用者が押圧動作を解除すると上記した反力を受けて突起部60が軸方向の上方へ向けて上昇を開始し、
図10(3)に示すように上部カム72の左底部72aに接触する。
【0049】
このとき上部カム72の左底部72aは周方向に関して突起部60の中心よりも左側(上記と同様に、好ましくは突起部60における直径の3/4よりも左側)に配置されているので、その後も突起部60は第3傾斜部72bに沿った相対的な移動を継続できる(実際は突起部60の軸方向への移動に連動して周状部材30が-θz方向に回動する)。このように本実施形態では、上部カム72の左底部72aは、周方向に関して下部カム71の第1頂部71aと第2頂部71cの間に配置されることが好ましい。
【0050】
そして上部カム72は下向き凹状の底部に相当する突起保持部72cを有するため、上部カム72の第3傾斜部72bに沿って移動する突起部60は、
図10(4)のとおり当該突起保持部72cで軸方向に沿った移動を停止して閉栓動作が完了する。
このとき弾性体40は上蓋部20と本体部10で挟持された形で軸方向に関して圧縮されたままであり、本実施形態ではこの弾性体40によって内容物の気密性も維持される状態となっている。換言すれば本実施形態の弾性体40は、上記した反力を発生させる作用に加えて上蓋部20の本体部10(注出口11)に対するシール機能も有するように構成されている。なお本実施形態では弾性体40がシール機能と反力機能を兼備しているが、上述のとおりシール機能は分離して構成してもよい。
【0051】
<キャップ100における開栓動作時の状態遷移>
次に
図11を用いてキャップ100における開栓動作時の状態遷移を説明する。
キャップ100の上蓋部20を本体部10から離脱させる開栓時の動作では、閉栓動作時と同様に使用者は押圧部21を指や肘などで軸方向に沿って容器本体1側へ向けて押圧する。すると
図11(1)に示すとおり、上部カム72の突起保持部72cで保持された突起部60も上記した押圧部21の軸方向への移動(下降)に伴って軸方向に沿って下降して下部カム71の第2頂部71cと接触する。
【0052】
このとき
図11(1)に示すとおり突起部60の中心よりも第2頂部71cは左側(好ましくは突起部60における直径の3/4よりも左側)に位置するため、突起部60は、
図11(2)のとおり上記軸方向の下降に連動して下部カム71の第2傾斜部71dに沿ってカム溝70(周状部材30)が-θz方向に回動する。
このように
図11(1)に示すとおり、本実施形態における下部カム71の第2頂部71cは、周方向に関して上部カム72の突起保持部72cよりも左底部72aに近くなるように配置されることが好ましい。
【0053】
さらにその後、突起部60が下部カム71の第2傾斜部71dに沿って相対的に移動を継続すると、突起部60が下部カム71の第2傾斜部71dと端部と第1頂部71aを結ぶ面まで到達したときに上記したカム溝70(周状部材30)の-θz方向への回動が停止する。そしてこの時点で使用者は上記した押圧動作を解除する。
【0054】
ここで上記した閉栓動作時と同様に使用者が押圧部21を押圧している状態においては、突起部60の軸方向に沿った下降中に弾性体40からの反力を受けている。したがって使用者が押圧動作を解除すると上記した反力を受けて突起部60が軸方向の上方へ向けて上昇を開始し、
図11(3)に示すように上部カム72の右底部72f(第4傾斜部72dの右底)に接触する。
【0055】
このとき上部カム72の右底部72fは周方向に関して突起部60の中心よりも左側(好ましくは突起部60における直径の3/4よりも左側)に配置されているので、その後に突起部60は第5傾斜部72gに沿った相対的な移動を継続した後、間隙G内を上昇移動することができる(実際は突起部60の軸方向への移動に連動して周状部材30が-θz方向に回動する)。
このように本実施形態では、下部カム71の第2傾斜部71dの下端は、周方向に関して上部カム72の右底部72fよりも+θz方向の側となるように配置されることが好ましい。
そして突起部60が上記した間隙Gを通過した後は、連結帯80の弾力も介して本体部10から上蓋部20が離脱することで開栓動作が完了する。
【0056】
以上説明した本実施形態のキャップ100においては、突起部60とカム溝70とが協働して周状部材30が本体部10に対して相対的に回動を開始するように構成されている。すなわち弾性体40の軸方向における伸縮による突起部60の移動に伴って突起部60とカム溝70(周状部材30)の一方が周方向へ相対的に回動することで、(a)カム溝70(周状部材30)に対して突起部60が離脱して上蓋部20が本体部10から解放されて開栓されるとともに、(b)カム溝70(周状部材30)と突起部60との位置関係が固定されて上蓋部20と本体部10とが密接して注出口11を閉栓することが可能となっている。
【0057】
なお上記した実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば上記実施形態において、キャップ100の各構成を互いに異なる材料で構成してもよい。かような材料構成の一例として、例えば本体部10、上蓋部20及び連結帯80をポリプロピレン樹脂で構成するとともに周状部材30をポリエチレン樹脂で構成することで、突起部60とカム溝70との同種材料によるブロッキングを抑制するなどの効果を奏することができる。もちろん、キャップ100の各構成を同一の材料で形成するようにしてもよい。
【0058】
また、上記した実施形態では内容物が流通する流路内にカム溝70が露出した形態を示したが、カム溝70の配置は上記に限定されない。例えば上記した周状部材30の内周面でなく外周面にカム溝70を形成するなどして流路外にカム溝70を配設するようにしてもよい。
また、上記した実施形態では本体部10と上蓋部20とを連結する連結帯80が設けられていたが、開栓時に弾性体40の充分な反発力が確保できれば連結帯80を適宜省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、押圧動作のごとき簡便な動作によって開閉栓を実行可能なキャップを提供するのに適している。
【符号の説明】
【0060】
1:容器本体
10:本体部
20:上蓋部
30:周状部材
40:弾性体
50:カム機構
60:突起部
70:カム溝
80:連結帯
90:封止カバー
100:キャップ
200:キャップ付き容器