(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】覆い部材及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/239 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B60R21/239
(21)【出願番号】P 2018182126
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 圭
(72)【発明者】
【氏名】村松 亮介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌司
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09776591(US,B1)
【文献】特開2012-176706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0102911(US,A1)
【文献】特開2009-298222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0187797(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013013177(DE,A1)
【文献】特開2001-347913(JP,A)
【文献】特開2018-052364(JP,A)
【文献】実開昭59-187193(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/239
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部がエアバッグに連結される連結部材の他端部を着脱可能に保持するアクチュエータが搭載される相手部材に対して取り付けられて前記アクチュエータを覆う覆い部材であって、
前記アクチュエータの少なくとも一部に対し前記相手部材への取付方向に対向する対向部と、
この対向部から前記取付方向に延びて形成され、前記相手部材に対して前記取付方向に押し込まれることで係止保持される側面部とを備え
、
前記側面部は、前記取付方向と交差する方向に沿って前記相手部材に突設された爪部が係合される孔部と、この孔部を挟む位置にあるスリットと、を備え、前記相手部材に対し前記取付方向と交差する方向に圧接される
ことを特徴とする覆い部材
。
【請求項2】
側面部は、取付方向と交差する方向に括れて相手部材に対し圧接される括れ部を備える
ことを特徴とする請求項
1記載の覆い部材
。
【請求項3】
スリットは、側面部の先端部から取付方向に沿って形成され、前記取付方向に沿って相手部材に設けられたガイド部に嵌合される
ことを特徴とする請求項
1または2記載の覆い部材。
【請求項4】
連結部材の他端部と交差する方向に沿って対向部に形成された確認窓部を備える
ことを特徴とする請求項1ないし
3いずれか一記載の覆い部材。
【請求項5】
エアバッグと、
折り畳まれた前記エアバッグを収納する相手部材であるケース体と、
このケース体に搭載されるアクチュエータと、
このアクチュエータを覆って前記ケース体に取り付けられる請求項1ないし
4いずれか一記載の覆い部材と
を備えることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータが搭載される相手部材に対して取り付けられてアクチュエータを覆う覆い部材及びこれを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両の運転席や助手席などに設置されるエアバッグ装置が広く知られている。このようなエアバッグ装置において、保護対象となる乗員の体格や着座状態に応じてエアバッグの内圧を制御できるようにするものがある。例えば、エアバッグに設けた可変ベントホールの蓋の開閉を、この蓋に一端部が連結された連結部材であるテザーの張力を調整することでエアバッグの内圧を制御可能となっている。テザーの他端部は、エアバッグに設けられた開口からエアバッグの外部に導出されて、アクチュエータに係止保持される。そして、センサなどの検出に基づき制御装置がアクチュエータを制御することによって、アクチュエータに係止されているテザーの他端部を係止した状態または係止を解除した状態に切り換えて、可変ベントホールの蓋の開閉量を可変させ、ガスの排出量を制御して、エアバッグの内圧を制御する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-143509号公報 (第9-10頁、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクチュエータは、エアバッグ装置のエアバッグを収納したケース体の底部などに搭載される。この状態で、アクチュエータは、ケース体の外部に露出することとなるため、カバー体などを設けて保護することが好ましい。この点、カバー体を容易に取り付けできるようにすることが望まれる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、アクチュエータを搭載した相手部材に対して容易かつ確実に取り付けてアクチュエータを保護できる覆い部材及びこれを備えたエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の覆い部材は、一端部がエアバッグに連結される連結部材の他端部を着脱可能に保持するアクチュエータが搭載される相手部材に対して取り付けられて前記アクチュエータを覆う覆い部材であって、前記アクチュエータの少なくとも一部に対し前記相手部材への取付方向に対向する対向部と、この対向部から前記取付方向に延びて形成され、前記相手部材に対して前記取付方向に押し込まれることで係止保持される側面部とを備え、前記側面部は、前記取付方向と交差する方向に沿って前記相手部材に突設された爪部が係合される孔部と、この孔部を挟む位置にあるスリットと、を備え、前記相手部材に対し前記取付方向と交差する方向に圧接されるものである。
【0007】
請求項2記載の覆い部材は、請求項1記載の覆い部材において、側面部は、取付方向と交差する方向に括れて相手部材に対し圧接される括れ部を備えるものである。
【0008】
請求項3記載の覆い部材は、請求項1または2記載の覆い部材において、スリットは、側面部の先端部から取付方向に沿って形成され、前記取付方向に沿って相手部材に設けられたガイド部に嵌合されるものである。
【0009】
請求項4記載の覆い部材は、請求項1ないし3いずれか一記載の覆い部材において、連結部材の他端部と交差する方向に沿って対向部に形成された確認窓部を備えるものである。
【0010】
請求項5記載のエアバッグ装置は、エアバッグと、折り畳まれた前記エアバッグを収納する相手部材であるケース体と、このケース体に搭載されるアクチュエータと、このアクチュエータを覆って前記ケース体に取り付けられる請求項1ないし4いずれか一記載の覆い部材とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の覆い部材によれば、側面部が相手部材に対して取付方向に押し込まれると、側面部が孔部を含む位置でスリットにより容易に弾性的に変形することが可能であり、アクチュエータを搭載した相手部材に対して覆い部材を容易かつ確実に取り付けることができるとともに、相手部材に対し取付方向と交差する方向に圧接されて孔部と爪部との係合により係止保持されるため、エアバッグの展開圧力に対して覆い部材を相手部材に強固に保持でき、対向部によってアクチュエータの少なくとも一部を覆い、アクチュエータを保護できる。
【0012】
請求項2記載の覆い部材によれば、請求項1記載の覆い部材の効果に加えて、側面部の括れ部が相手部材に対し圧接されることで、覆い部材を相手部材に対してより強固に組み付けることができる。
【0013】
請求項3記載の覆い部材によれば、請求項1または2記載の覆い部材の効果に加えて、スリットを側面部の先端部から取付方向に沿って形成して、相手部材のガイド部に嵌合させることで、覆い部材を相手部材に取り付ける際に、スリットとガイド部との嵌合によって覆い部材が相手部材に対して容易に位置決めされるとともに取付方向にガイドされ、より容易に取り付けできる。
【0014】
請求項4記載の覆い部材によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の覆い部材の効果に加えて、連結部材の他端部と交差する方向に沿って確認窓部を対向部に形成することで、確認窓部を介して連結部材の他端部を容易に目視確認できる。
【0015】
請求項5記載のエアバッグ装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の覆い部材を備えることで、アクチュエータを確実に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の覆い部材を備えたエアバッグ装置の一部を示す分解斜視図である。
【
図2】(a)は同上エアバッグ装置の一部を示す平面図、(b)は(a)のI-I相当位置の断面図である。
【
図3】同上エアバッグ装置のアクチュエータを示す斜視図である。
【
図4】(a)は同上覆い部材の平面図、(b)は同上覆い部材の側面図である。
【
図5】同上アクチュエータのケース体への取り付け作業を模式的に示す断面図である。
【
図6】(a)は同上アクチュエータのケース体への取り付け作業を模式的に示す断面図、(b)は同上覆い部材のケース体への取り付け作業を模式的に示す断面図である。
【
図7】同上覆い部材を取り付けたケース体を示す斜視図である。
【
図8】同上エアバッグ装置のエアバッグの展開状態を模式的に示す側面図である。
【
図9】(a)は本発明の第2の実施の形態の覆い部材の平面図、(b)は同上覆い部材の側面図である。
【
図10】本発明の第3の実施の形態の覆い部材の側面図である。
【
図11】本発明の第4の実施の形態の覆い部材の平面図である。
【
図12】本発明の第5の実施の形態の覆い部材の平面図である。
【
図13】本発明の第6の実施の形態の覆い部材の平面図である。
【
図14】本発明の第7の実施の形態の覆い部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図8において、10はエアバッグ装置である。このエアバッグ装置10は、本実施の形態において、車両としての自動車の助手席、すなわち被保護物としての助手席の乗員Aの前方に位置する被設置部としてのインストルメントパネル部11の内側に配置され、助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成している。なお、以下、前後方向、両側方向、及び上下方向は、それぞれエアバッグ装置10を自動車に取り付けた状態における自動車の直進方向を基準として説明する。
【0019】
そして、このエアバッグ装置10は、エアバッグモジュールとも呼び得るもので、単数または複数の基布にて構成された袋状のエアバッグ12、エアバッグ12にガスを供給するインフレータ13、これらエアバッグ12とインフレータ13となどが取り付けられる相手部材であるケース体14、リテーナ15、展開前のエアバッグ12を覆う図示しないカバー体、及びインフレータ13の動作を制御する図示しない制御手段などを備えている。さらに、エアバッグ装置10は、自動車のインストルメントパネル部11に取り付けられ、センサなどを備えた制御装置に電気的に接続して構成される。
【0020】
ケース体14は、略箱状に形成され、正面側あるいはインストルメントパネル部11の上方に連続するウインドシールドであるフロントガラス18に向かう上側を開口部である矩形状の突出口19とし、内側が、折り畳んだエアバッグ12を収納するエアバッグ収納部20とされている。また、ケース体14の底部21には、インフレータ13の取り付け用の取付孔22が形成されている。突出口19は、通常時、カバー体により覆われている。
【0021】
インフレータ13は、例えば円盤状をなす本体部23を備え、本体部23の外側にフランジ部が突設され、フランジ部に通孔が形成されている。そして、本体部23の上側部、すなわちフランジ部の上方に位置して、本体部23の外周面に、複数の図示しないガス噴射口が形成されている。本体部23の内側には、点火器及び薬剤が収納され、底部に接続されたコネクタを介して伝えられる制御手段からの電気信号により、点火器が薬剤を燃焼させ、ガス噴射口から膨張用のガスを急速に供給するようになっている。そして、インフレータ13は、ガス噴射口を設けた本体部23をエアバッグ12の内側に挿入した状態で、ケース体14の底部21に取り付けられている。なお、インフレータ13は、種々の形状があり、例えば、円柱状の本体部23をエアバッグ12の内側に配置する構成などを採ることもできる。
【0022】
リテーナ15は、枠状に形成されており、エアバッグ12とともにインフレータ13をケース体14の底部に取り付けるための図示しない取付ボルト(スタッドボルト)が突設されている。
【0023】
カバー体は、樹脂にてインストルメントパネル部11と一体あるいは別体をなして形成され、他の部分より薄肉で容易に破断するテアラインが平面略H字状などに形成されている。
【0024】
エアバッグ12は、展開状態で乗員Aに対向する乗員拘束面部31を後端部に有している。また、エアバッグ12は、本実施の形態では、乗員拘束面部31の両側から反乗員側すなわち乗員側と反対側、換言すれば前側に前後方向に沿って延びるバッグ側面部32がそれぞれ連続し、これら乗員拘束面部31及び両バッグ側面部32の上部間に前後方向に沿って延びるバッグ上面部33が連続し、かつ、乗員拘束面部31及び両バッグ側面部32の下部間に前後方向に沿って延びるバッグ下面部34が連続している。さらに、このエアバッグ12は、インフレータ13からのガスが導入されるガス導入部35を前端部に備えている。なお、エアバッグ12は、少なくとも乗員拘束面部31を有していれば、形状はこれに限られるものではなく、エアバッグ12による拘束対象やエアバッグ12の設置位置の形状などに応じて、任意の形状としてよい。
【0025】
乗員拘束面部31は、前方へ移動してきた乗員Aに対して反力を与えることで乗員Aを拘束する部分である。
【0026】
各バッグ側面部32は、エアバッグ12が展開した状態で乗員Aに対して直接対向しない、両側方向に面方向を向けて展開する面部である。
【0027】
バッグ上面部33は、展開状態でフロントガラス18に対向する部分であり、バッグ下面部34の上方に対向している。
【0028】
バッグ下面部34は、乗員拘束面部31及び両バッグ側面部32の下側を下方に突出した状態で連結する、すなわち下方へと膨出する形状に形成されている。
【0029】
ガス導入部35は、インフレータ13のガス噴射口から噴射されたガスがエアバッグ12の内部へと供給される部分である。このガス導入部35は、エアバッグ12のインストルメントパネル部11に対向する位置である前側に設けられている。このガス導入部35は、例えばバッグ下面部34に開口された開口部である。そして、このガス導入部35の周縁部がインフレータ13とともにケース体14のエアバッグ収納部20に一体的に固定されている。
【0030】
そして、エアバッグ12には、
図2(a)及び
図2(b)などに示す連結部材であるテザー40の一端部が連結される。テザー40は、単数、または複数の基布により全体としてはフラップ状(帯状)に形成されている。テザー40は、長手状に設けられている。テザー40は、
図6(a)に示すように、一端部側がエアバッグ12に形成された開口12aに挿通されてエアバッグ12の内部に位置している。また、テザー40は、一端部が例えばエアバッグ12のバッグ側面部32(
図8)に形成された可変ベントホールの蓋体や、エアバッグ12の乗員拘束面部31(
図8)の背面側などに固着され、エアバッグ12(
図8)の膨張状態での内圧や膨張形状を制御する、膨張制御部材として作用する。すなわち、テザー40の一端部は、エアバッグ12に対して連結されている。
【0031】
また、テザー40の他端部は、例えばループ状に形成されており、
図1ないし
図3に示すアクチュエータ41により保持される。アクチュエータ41は、被固定部43と、可動部44とを両端部に備え、これら被固定部43と可動部44とが互いに分離可能に形成されている。被固定部43は、ケース体14に対して相対的に固定される部分である。可動部44は、ケース体14に対して可動な部分である。これら被固定部43と可動部44との接続位置にテザー40の他端部が引っ掛けられるようになっている。また、可動部44には、制御装置と電気的に接続されるハーネスなどの配線部材46が着脱可能に接続される。
【0032】
また、アクチュエータ41は、例えばケース体14に搭載される。本実施の形態において、アクチュエータ41は、ケース体14の底部21の外側に形成されたアクチュエータ搭載部50(以下、単に搭載部50という)に搭載される。搭載部50は、アクチュエータ41を収容可能な任意の形状とすることが可能であるが、互いに離れて配置された組付部である側壁部51,51と、これら側壁部51,51間に連なって形成される端壁部52,52とを備える。すなわち、搭載部50は、側壁部51,51と端壁部52,52とにより四角形状に囲まれて形成されている。また、搭載部50は、例えばケース体14の底部21において、取付孔22(
図7)の側方に離れて位置している。本実施の形態の搭載部50は、側壁部51,51が車幅方向、すなわち左右方向に互いに離れて配置され、端壁部52,52が前後方向に互いに離れて配置されている。また、搭載部50は、ケース体14の側縁に偏って位置している。さらに、本実施の形態の搭載部50には、アクチュエータ41を保持する保持部53が形成されている。また、搭載部50には、テザー40の他端部側をケース体14から外部に導出するための導出口55が底部21を貫通して形成されている。なお、搭載部50は、アクチュエータ41を搭載可能であれば、任意の形状としてよい。
【0033】
各側壁部51は、ケース体14の底部21から、エアバッグ12に対して離れる方向、すなわち下側に向かって突設されている。
【0034】
各端壁部52は、各側壁部51と同様に、ケース体14の底部21から、エアバッグ12に対して離れる方向、すなわち下側に向かって突設されている。ケース体14の前後方向の中心側に近い一方の端壁部52aは、例えば側壁部51と略等しい高さ寸法に形成され、側壁部51,51間に連なっている。また、ケース体14の前後方向において、ケース体14の外部側に近い他方の端壁部52bは、各側壁部51及び一方の端壁部52aよりも高さ寸法が小さく設定され、側壁部51,51間に連なっている。
【0035】
保持部53は、一方の端壁部52aと側壁部51,51とにより囲まれる位置に形成されている。保持部53は、上下方向に凹凸状に形成され、アクチュエータ41の被固定部43が嵌合されることで、アクチュエータ41を保持するとともに、アクチュエータ41の位置がケース体14(搭載部50)に対し固定されるようになっている。
【0036】
また、搭載部50に搭載されたアクチュエータ41は、
図1、
図2(a)、
図2(b)、
図4(a)、
図4(b)及び
図5などに示す覆い部材60により覆われる。覆い部材60は、アクチュエータ41を覆って保護する保護部材である。覆い部材60は、アクチュエータ41に対向する対向部61と、対向部61から延出する側面部62とを一体的に有している。また、覆い部材60は、好ましくは、対向部61から延出する端面部63をさらに一体的に有している。本実施の形態において、覆い部材60は、例えば板金により形成されたカバー体である。
【0037】
対向部61は、上下方向に厚みを有する平板状に形成された対向面部である。対向部61は、搭載部50の形状に応じた形状となっている。すなわち、対向部61は、本実施の形態において、例えば前後方向に沿って長手方向を有する四角形状に形成されている。対向部61は、搭載部50の側壁部51,51の外面間の寸法W1よりも大きい幅寸法W2を有している。また、本実施の形態において、対向部61は、端壁部52,52間と略等しい、または端壁部52,52間よりも大きい長手寸法を有している。また、対向部61には、アクチュエータ41に保持されたテザー40の他端部を覆い部材60の外方から目視可能とする確認窓部65が対向部61を貫通して形成されている。確認窓部65は、本実施の形態において、対向部61の前側寄りの位置に開口されている。また、確認窓部65は、アクチュエータ41により保持されたテザー40の他端部と交差する方向に沿って形成されている。すなわち、本実施の形態の確認窓部65は、前後方向に長手状の長穴状となっている。
【0038】
また、対向部61には、開口部67が形成されている。開口部67は、アクチュエータ41に接続された配線部材46を挿通する部分である。開口部67は、対向部61の端部に連通するとともに、対向部61の長手方向に沿って切り欠き形成されている。すなわち、開口部67は、両側縁67a,67aと一端縁67bとを有し、他端側が開放されている。また、対向部61の両側縁67a,67a及び一端縁67bは、対向部61の補強用に屈曲されて立ち上げられたリブ部として形成されている。そのため、開口部67の両側縁67a,67aと一端縁67bとが連なる位置には、屈曲時の割れ防止用の曲げ逃げ部68が開口部67に連続して切り欠き形成されている。なお、開口部67は、本実施の形態において、対向部61の幅方向の中央部に位置している。
【0039】
側面部62は、対向部61の両側からそれぞれケース体14側、すなわち覆い部材60のケース体14への取付方向Dに沿って延出されている。側面部62,62は、左右方向に互いに離れて位置している。側面部62,62は、覆い部材60をケース体14(搭載部50)に対して取り付けた状態で、側壁部51,51の外側に対向する部分である。各側面部62は、本実施の形態において、対向部61に対して傾斜状に連なる側面基端部70と、側面基端部70の先端部にて側面基端部70に対して傾斜状に連なる側面先端部71とを一体的に有している。側面基端部70は、対向部61に対して直交する上下方向に対し、対向部61の幅方向の中央側、すなわち内側へと傾斜している。つまり、側面基端部70,70は、対向部61に対してそれぞれ鋭角をなすように傾斜している。また、側面先端部71は、対向部61に対して直交する上下方向に対し、対向部61の幅方向の中央とは反対側、すなわち外側へと傾斜している。このため、各側面部62は、側面基端部70と側面先端部71とが連なる位置が、内方つまり搭載部50の側壁部51,51側に向かって括れる括れ部72として形成されている。括れ部72の位置において、側面部62,62は、側壁部51,51の外面間の寸法W1よりも小さい幅寸法W3となっている。つまり、側面部62,62は、括れ部72,72の位置で側壁部51,51に対して強干渉(強当たり)するように設定され、ケース体14の側壁部51,51に対して、覆い部材60のケース体14(搭載部50)への取付方向Dに対し交差する方向である幅方向に圧接されるようになっている。言い換えると、側面部62,62は、ケース体14(搭載部50)への取り付けに伴い撓み、ケース体14(搭載部50)に取り付けた状態でケース体14(搭載部50)を挟み込むようになっている。
【0040】
また、各側面部62には、孔部74が開口されている。孔部74は、側面部62の括れ部72に位置して形成されている。すなわち、孔部74は、側面基端部70と側面先端部71とに亘り開口されている。本実施の形態の孔部74は、側面部62の長手方向の略中央部に配置されている。すなわち、本実施の形態の孔部74は、開口部67の側方に位置している。また、孔部74は、例えば四角形状に形成されている。孔部74には、ケース体14に突設された爪部75が係合される。爪部75は、側壁部51に突設されている。爪部75は、側壁部51の先端側から基端側に向かい、側壁部51から徐々に大きく突出するように形成されている。
【0041】
さらに、各側面部62には、スリット77が形成されていることが好ましい。スリット77は、孔部74を挟む位置にそれぞれ形成されている。すなわち、1つの側面部62につき、スリット77が2つずつ形成されている。スリット77は、側面部62の先端部に連通し、基端部に向かい延びて形成されている。つまり、スリット77は、側面先端部71から側面基端部70に亘り形成されている。また、本実施の形態において、スリット77は、覆い部材60のケース体14(搭載部50)への取付方向Dに沿って直線状に形成されている。これらスリット77,77により、各側面部62は、先端部側が、スリット77,77間に位置する第1側面部80と、スリット77,77に対して第1側面部80とは反対側に位置する第2側面部81,81とに分断されている。なお、本実施の形態において、第1側面部80及び第2側面部81,81は基端部側が互いに一体的に連なっているが、スリット77,77を対向部61付近まで延ばして形成することでそれぞれ先端部から基端部に亘り舌片状に分断されていてもよい。
【0042】
第1側面部80は、孔部74が位置し、覆い部材60をケース体14(搭載部50)に取り付ける際に爪部75に沿って撓み変形する部分である。すなわち、第1側面部80は、覆い部材60をケース体14(搭載部50)に取り付ける際の撓みが第2側面部81,81よりも大きく、側面部62において最も大きく撓む部分である。第1側面部80の基端部、すなわちスリット77,77の先端部間は、第1側面部80が撓み変形する際の撓み部80aである。
【0043】
第2側面部81,81は、覆い部材60をケース体14(搭載部50)に取り付ける際に側壁部51の外面に沿って撓み変形する部分である。すなわち、第2側面部81,81は、覆い部材60をケース体14(搭載部50)に取り付ける際の撓みが第1側面部80よりも小さい。
【0044】
また、各スリット77は、覆い部材60をケース体14(搭載部50)に取り付ける際に、ケース体14に設けられたガイド部83にそれぞれ嵌合される。ガイド部83は、側壁部51に突設されている。また、ガイド部83は、覆い部材60のケース体14(搭載部50)への取付方向Dに沿って、本実施の形態では上下方向に沿って直線状に形成されたリブである。ガイド部83は、爪部75を挟む位置に形成されている。また、ガイド部83は、爪部75よりも側壁部51からの突出が小さく設定されている。
【0045】
端面部63は、覆い部材60をケース体14(搭載部50)に対して取り付けた状態で、一方の端壁部52の外側に対向する部分である。端面部63は、対向部61から側面部62と同方向、すなわちケース体14に向かう方向に屈曲されて舌片状に形成されている。そのため、端面部63の両側の位置にて対向部61に、屈曲時の割れ防止用の曲げ逃げ部85が切り欠き形成されている。なお、この端面部63は、必須の構成ではない。
【0046】
そして、
図1に示すエアバッグ装置10を組み立てる際には、エアバッグ12を、リテーナ15によりケース体14に取り付けた状態で、導出口55(
図2(b))から導出したテザー40の他端部を
図5に示すようにアクチュエータ41の被保持部43と可動部44との間に引っ掛けた状態で、アクチュエータ41をケース体14(搭載部50)に装着して固定する。次いで、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、このアクチュエータ41を覆うように、ケース体14(搭載部50)に対して覆い部材60を取り付ける。
【0047】
このとき、覆い部材60は、ケース体14の搭載部50に対して位置合わせし、側面部62,62の先端部を搭載部50の側壁部51,51に宛がいながらケース体14に向かって押し込むことで取り付けられる。
【0048】
より詳細に、覆い部材60は、側面部62,62の括れ部72,72の位置が側壁部51,51の先端部に当接する位置でケース体14側に押し込むと、括れ部72,72が側壁部51,51の外面に沿って外側に押し開かれる。覆い部材60の押し込みは、各ガイド部83が各スリット77に嵌合されることでガイドされる。各側面部62では、第1側面部80が、爪部75と接触して爪部75に沿って撓み部80aから外側に撓み、孔部74が爪部75の位置となったときに復帰変形して、爪部75が孔部74に係合される。第2側面部81,81は、そのまま側壁部51,51の外面との当接を維持する。この結果、覆い部材60がケース体14に固定される。すなわち、この状態で、対向部61は、アクチュエータ41と対向し、側面部62,62は、爪部75が孔部74に係合されてケース体14(搭載部50)に保持されるとともに、括れ部72,72の位置でケース体14(側壁部51,51)に対して圧接されて搭載部50を挟み込む。また、端面部63が、ケース体14(端壁部52)に沿って重ねられる。
【0049】
この結果、
図2(a)、
図2(b)及び
図7に示すように、覆い部材60が、ケース体14(搭載部50)に対して取付方向Dに押し込まれることにより、アクチュエータ41を覆ってワンタッチで容易に取り付けられる。
【0050】
また、エアバッグ12が折り畳まれるとともに、インフレータ13がケース体14に取り付けられ、ケース体14がインストルメントパネル部11に設置される。インフレータ13やアクチュエータ41は、それぞれ制御装置などに電気的に接続される。
【0051】
このように設置されたエアバッグ装置10の動作の概略としては、自動車の衝突などの際に、制御装置がインフレータ13を作動させ、このインフレータ13からガスを噴射させると、折り畳み状態でエアバッグ収納部20に収納されたエアバッグ12が、ガス導入部35からのガスの流入に伴い膨張展開してカバー体のテアラインを破断して突出口19から突出し、
図8に示すように乗員A側へと展開する。
【0052】
制御装置では、センサによりセンシングされた乗員Aの体格や着座状態などに応じて、アクチュエータ41を作動させることなくテザー40の他端部をアクチュエータ41に保持した状態を維持したり、被固定部43に対して可動部44を移動させてテザー40の他端部の保持を解除したりして、テザー40の張力を変化させる。この結果、エアバッグ12の膨張状態が制御され、本実施の形態ではベントホールの開閉量が変化されてエアバッグ12の内圧が制御され、乗員Aが適切に保護される。
【0053】
このように、第1の実施の形態によれば、覆い部材60の側面部62がケース体14に対して取付方向Dに押し込まれることで係止保持されるため、アクチュエータ41を搭載したケース体14に対して覆い部材60を容易かつ確実に取り付けることができるとともに、対向部61によってアクチュエータ41の少なくとも一部を覆い、アクチュエータ41を保護できる。
【0054】
側面部62がケース体14に対し取付方向Dと交差する方向に圧接されることで、覆い部材60をケース体14に対して、より強固に保持できる。
【0055】
特に、側面部62の括れ部72がケース体14に対し圧接されることで、覆い部材60をケース体14に対してより強固に組み付けることができる。
【0056】
取付方向Dと交差する方向に沿ってケース体14に突設された爪部75が係合される孔部74を側面部62に設けることで、孔部74と爪部75との係合により、エアバッグ12の展開圧力に対して覆い部材60をケース体14に強固に保持できる。
【0057】
側面部62の孔部74を挟む位置にスリット77を設けることで、覆い部材60の取り付けの際にケース体14に対して取付方向Dに押し込まれた側面部62が孔部74を含む位置で容易に弾性的に変形することが可能となるので、覆い部材60の他の弱部(例えば、確認窓部65と曲げ逃げ部68,85とを結ぶ部分87など)の変形を抑制しつつ、覆い部材60をより容易に取り付け可能となる。
【0058】
スリット77を側面部62の先端部から取付方向Dに沿って形成して、ケース体14のガイド部83に嵌合させることで、覆い部材60をケース体14に取り付ける際に、スリット77とガイド部83との嵌合によって覆い部材60がケース体14に対して容易に位置決めされるとともに取付方向Dにガイドされ、より容易に取り付けできる。
【0059】
テザー40の他端部と交差する方向に沿って確認窓部65を対向部61に形成することで、確認窓部65を介してテザー40の他端部を容易に目視確認できる。したがって、テザー40の有無や取り付け状態を容易に確認できる。
【0060】
なお、
図9(a)及び
図9(b)に示す第2の実施の形態のように、スリット77を側面部62の先端部から基端部に向かい徐々に接近するように傾斜させて、撓み部80aの距離を短くし、撓み部80aの強度を低下させてもよい。この場合には、覆い部材60をケース体14(搭載部50)に取り付ける際に、撓み部80aが対向部61などにある他の弱部(例えば、確認窓部65と曲げ逃げ部68,85とを結ぶ部分87)よりも撓みやすくなることで、他の弱部での覆い部材60の変形を抑制可能となる。あるいは、
図10に示す第3の実施の形態のように、スリット77の先端部を円形状など拡大した形状とすることで、撓み部80aの強度を低下させても、第2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0061】
また、確認窓部65の形状は、例えば
図11に示す第4の実施の形態のように、楕円形状としてもよいし、
図12に示す第5の実施の形態のように、四角形、例えば菱形や平行四辺形などとしてもよい。すなわち、確認窓部65は、テザー40の他端部を覆い部材60の外方から確認できれば、その形状は問わない。
【0062】
さらに、確認窓部65は、例えば
図13に示す第6の実施の形態のように、開口部67に隣接して対向部61にアクチュエータ41に向かい曲げ起こしされた曲げ起こし部90に形成されていてもよい。この場合、曲げ起こし部90の曲げ起こしにより対向部61に形成される穴部91の四隅には、曲げ起こし部90の曲げ時の割れ防止用の曲げ逃げ部92,93が切り欠き形成されるが、確認窓部65の側方に位置する曲げ逃げ部92も確認窓部として作用することができる。すなわち、確認窓部65は、1つに限定されるものではなく、複数あってもよい。なお、第6の実施の形態では、対向部61において、例えば、曲げ逃げ部68と曲げ逃げ部92とを結ぶ部分95や曲げ逃げ部85と曲げ逃げ部93とを結ぶ部分96なども弱部となり、これらの部分95,96には覆い部材60をケース体14(搭載部50)に取り付ける際に応力が集中しやすくなるものの、上記第2の実施の形態や第3の実施の形態の構成と組み合わせることで、取り付け時の覆い部材60の変形を抑制可能となる。
【0063】
また、確認窓部65は、覆い部材60の対向部61の幅方向の中央に位置している必要はなく、例えば
図14に示す第7の実施の形態のように、覆い部材60の対向部61の一側に偏って配置されていてもよい。
【0064】
なお、上記各実施の形態では、助手席用のエアバッグ装置10について説明したが、例えば運転席用のエアバッグ装置10など、その他の任意のエアバッグ装置10に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、例えば自動車などの車両用のエアバッグ装置及びそのケース体に取り付けられる覆い部材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 エアバッグ装置
12 エアバッグ
14 相手部材であるケース体
40 連結部材であるテザー
41 アクチュエータ
60 覆い部材
61 対向部
62 側面部
65 確認窓部
72 括れ部
74 孔部
75 爪部
77 スリット
83 ガイド部
D 取付方向