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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】放熱構造体およびバッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6554 20140101AFI20221208BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20221208BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221208BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20221208BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221208BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20221208BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20221208BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20221208BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20221208BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01M10/6554
B32B7/027
B32B27/18 Z
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6556
H01M50/204 401H
H01M50/209
H05K7/20 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018187073
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020057507
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中田 和哉
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139364(WO,A1)
【文献】実開平04-071236(JP,U)
【文献】国際公開第2013/047430(WO,A1)
【文献】特開2014-216298(JP,A)
【文献】特開平11-340677(JP,A)
【文献】特開2003-142876(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6554
H05K 7/20
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6556
H01M 50/20
H01M 10/617
B32B 27/18
B32B 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源に接して空気中若しくは冷却部材への放熱を行うための放熱構造体であって、
金属、炭素およびセラミックスの内の少なくとも1つを含む第1熱伝導シートと、
前記第1熱伝導シートに積層され前記第1熱伝導シートより柔らかい第2熱伝導シートと、を備え、
前記第2熱伝導シートは、弾性部材中に、金属、炭素およびセラミックスの内の少なくとも1つの熱伝導性フィラーを含み、
前記第2熱伝導シートは、熱伝導性の異なる2以上のシートを前記第1熱伝導シートの面に沿って隣接配置し、
前記第2熱伝導シートは、その面内所定領域に前記熱伝導性の異なる2以上のシートの内で熱伝導性のより高い高熱伝導シートを配置し、前記高熱伝導シートより熱伝導性の低い低熱伝導シートを前記高熱伝導シートの両側に隣接配置しており、
前記第1熱伝導シートは、その厚さ方向よりも、当該シートの面に沿う方向に熱伝導しやすいシートであり、
前記第2熱伝導シートは、方向を問わない等方的な熱伝導性を有するか、あるいは面に沿う方向よりも厚さ方向に熱伝達しやすいシートである放熱構造体。
【請求項2】
前記熱伝導性の異なる2以上のシートの内で最も熱伝導性の高い前記高熱伝導シートの位置から前記第2熱伝導シートの両側に向かって熱伝導性が低くなるように2以上の前記低熱伝導シートを配置している請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項3】
前記第1熱伝導シートが炭素材料を含む請求項1または2に記載の放熱構造体。
【請求項4】
筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、
請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱構造体を備え、前記バッテリーセルに前記第2熱伝導シートを接触させているバッテリー。
【請求項5】
前記筐体は、冷却部材を流す部位を備え、
前記放熱構造体を、前記部位と前記バッテリーセルとの間に介在している請求項4に記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造体およびそれを備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
【0003】
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは冷却ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム、立方晶窒化ホウ素などから構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、冷却ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しょうとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、2040年までにガソリン車とディーゼル車から完全に電気自動車に切り替えることを宣言している。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が大きな課題となっている。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-243999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱源からの放熱効率をより高めるには、熱源の表面の凹凸に追従可能な放熱構造体が求められている。また、放熱構造体の軽量化も重要なファクタとなる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するべく、熱源の表面の凹凸に追従できて軽量な放熱構造体およびそれを備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱構造体は、熱源に接して空気中若しくは冷却部材への放熱を行うための放熱構造体であって、金属、炭素およびセラミックスの内の少なくとも1つを含む第1熱伝導シートと、前記第1熱伝導シートに積層され前記第1熱伝導シートより柔らかい第2熱伝導シートと、を備え、前記第2熱伝導シートは、弾性部材中に、金属、炭素およびセラミックスの内の少なくとも1つの熱伝導性フィラーを含む。
【0009】
(2)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記第1熱伝導シートは炭素材料を含む。
【0010】
(3)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記第2熱伝導シートは、熱伝導性の異なる2以上のシートを前記第1熱伝導シートの面に沿って隣接配置している。
【0011】
(4)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記第2熱伝導シートは、その面内所定領域に前記熱伝導性の異なる2以上のシートの内で熱伝導性のより高い高熱伝導シートを配置し、前記高熱伝導シートより熱伝導性の低い低熱伝導シートを前記高熱伝導シートの両側に隣接配置している。
【0012】
(5)別の実施形態に係る放熱構造体は、好ましくは、前記熱伝導性の異なる2以上のシートの内で最も熱伝導性の高い前記高熱伝導シートの位置から前記第2熱伝導シートの両側に向かって熱伝導性が低くなるように2以上の前記低熱伝導シートを配置している。
【0013】
(6)上記目的を達成するための一実施形態に係るバッテリーは、筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、上述のいずれかの放熱構造体を備え、前記バッテリーセルに前記第2熱伝導シートを接触させている。
【0014】
(7)別の実施形態に係るバッテリーは、好ましくは、前記筐体に、冷却部材を流す部位を備え、前記放熱構造体を前記部位と前記バッテリーセルとの間に介在している。
【0015】
(8)別の実施形態に係るバッテリーでは、好ましくは、前記第2熱伝導シートは、その面内所定領域に前記熱伝導性の異なる2以上のシートの内で熱伝導性のより高い高熱伝導シートを配置し、前記高熱伝導シートより熱伝導性の低い低熱伝導シートを前記高熱伝導シートの両側に隣接配置しており、前記バッテリーセルの内、より高温の高温バッテリーセルに前記高熱伝導シートを接触するように、また、前記高温バッテリーセルより低温の低温バッテリーセルに前記低熱伝導シートを接触するように、前記放熱構造体を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱源の表面の凹凸に追従できて軽量な放熱構造体およびそれを備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る放熱構造体の斜視図(1A)および該斜視図におけるA-A線断面図(1B)をそれぞれ示す。
図2図2は、本発明の第2実施形態に係る放熱構造体の斜視図(2A)および該斜視図におけるB-B線断面図(2B)をそれぞれ示す。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図(3A)、当該バッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図(3B)および当該(3B)中のCで示す部分の拡大図(3C)をそれぞれ示す。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係るバッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図(4A)および当該(4A)中のDで示す部分の拡大図(4B)をそれぞれ示す。
図5図5は、本発明の第3実施形態に係るバッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図を示す。
図6図6は、第2実施形態に係るバッテリーの図4(4B)と同領域Dにおいて、変形例に係る放熱構造体を備えた状況の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
1.放熱構造体
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る放熱構造体の斜視図(1A)および該斜視図におけるA-A線断面図(1B)をそれぞれ示す。
【0020】
第1実施形態に係る放熱構造体1は、熱源に接して空気中若しくは冷却部材への放熱を行うための放熱構造体である。放熱構造体1は、金属、炭素およびセラミックスの内の少なくとも1つを含む第1熱伝導シート2と、第1熱伝導シート2に積層され第1熱伝導シート2より柔らかい第2熱伝導シート3と、を備える。第2熱伝導シート3は、弾性部材中に、金属、炭素およびセラミックスの内の少なくとも1つの熱伝導性フィラーを含む。第1熱伝導シート2は、好ましくは炭素材料を含む。以下、第1熱伝導シート2および第2熱伝導シート3について詳述する。
【0021】
(1.1)第1熱伝導シート
第1熱伝導シート2は、熱源から放熱する機能を有する部材である。第1熱伝導シート2は、好ましくは、炭素、金属および/またはセラミックスを含むもの、若しくはこれらのいずれかの単体から成る。第1熱伝導シート2は、より好ましい形態としては、炭素系材料を含む可撓性シートである。炭素を含むシート(あるいは炭素系材料を含む可撓性シート)は、好ましくは、炭素材料のより好適な形態である炭素フィラーと、樹脂と、を含むシートである。本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、膨張黒鉛、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。第1熱伝導シート2は、この実施形態では、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。また、第1熱伝導シート2は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。第1熱伝導シート2は、好ましくは、その厚さ方向をZ方向とすると、Z方向よりも、当該シート2の面内におけるX方向(Z方向と直交する方向)およびY方向(Z方向およびX方向と直交する方向)に、より熱伝導しやすい。
【0022】
第1熱伝導シート2に樹脂を含む場合には、当該樹脂が第1熱伝導シート2の全質量に対して50質量%を超えていても、あるいは50質量%以下であっても良い。すなわち、第1熱伝導シート2は、熱伝導に大きな支障が無い限り、樹脂を主材とするか否かを問わない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)等を好適に挙げることができる。樹脂は、第1熱伝導シート2の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状に分散している。第1熱伝導シート2は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、Al、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。
【0023】
第1熱伝導シート2は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金などの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、Al、AlN、cBN、hBNなどの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
【0024】
第1熱伝導シート2の熱伝導率は、等方的な熱伝導性を奏する場合には、好ましくは5W/mK以上、より好ましくは10W/mK以上である。また、第1熱伝導シート2がその面方向とその厚み方向とで異なる熱伝導性を有する場合もある。例えば、フィラーの一例である炭素系フィラーが繊維状若しくはウィスカー状であって、当該炭素系フィラーが上記面方向に配向している場合には、例えば、面方向の熱伝導率が100W/mKであって、厚さ方向の熱伝導率が2W/mKというように、方向によって熱伝導率の差が大きいこともある。第1熱伝導シート2は、金属製のシート、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅あるいはステンレススチール製のシートとしても良い。第1熱伝導シート2は、その構成材料如何に関わらず、湾曲(若しくは屈曲)しやすいシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.05~5mmが好ましく、0.065~0.5mmがより好ましい。ただし、第1熱伝導シート2の可撓性はその厚さが増加するほど低下し、第1熱伝導シート2の熱抵抗値、強度および重量はその厚さが増加するほど大きくなる。第1熱伝導シート2の厚さは、第1熱伝導シート2の強度、可撓性、熱抵抗値などを総合的に勘案して決定される。
【0025】
(1.2)第2熱伝導シート
第2熱伝導シート3は、第1熱伝導シート2の厚さ方向に積層されるシートである第2熱伝導シート3は、熱源(一例として、後述するバッテリーセル)と接触し、熱源の熱を第1熱伝導シート2に伝達する機能を有する。第1熱伝導シート2は、前述のように、好ましくは、その面内におけるX方向およびY方向に熱を伝達しやすいシートであるが、第2熱伝導シート3は、好ましくは、方向を問わない等方的な熱伝導性を有するか、あるいは厚さ方向(Z方向)により熱伝達しやすいシートである。
【0026】
第2熱伝導シート3を構成する弾性部材は、第1熱伝導シート2よりも弾性変形可能な部材である。弾性部材は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。弾性部材は、第1熱伝導シート2および/または第2熱伝導シート3を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、弾性部材は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。
【0027】
第2熱伝導シート3は、その熱伝導性を少しでも高めるために、弾性部材の一例である上記のゴム中に、例えば、Al、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンド、アルミニウム、銅、銀、黒鉛、非晶質炭素等の粒子状、ウィスカー状、繊維状等の各種形態の熱伝導性フィラーを分散して構成されている。第2熱伝導シート3は、第1熱伝導シート2より柔らかいので、熱源の凹凸を吸収して熱源と密着しやすい。第2熱伝導シート3の厚さは、好ましくは、第1熱伝導シート2の厚さよりも大きい。弾性部材は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「弾性部材」は、柔軟性に富み、弾性的に圧縮と伸張を繰り返すことのできる部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」と読み替えることもできる。
【0028】
(2)第2実施形態
図2は、本発明の第2実施形態に係る放熱構造体の斜視図(2A)および該斜視図におけるB-B線断面図(2B)をそれぞれ示す。
【0029】
第2実施形態に係る放熱構造体1aは、第1実施形態に係る放熱構造体1と同様、第1熱伝導シート2と第2熱伝導シート3aとを積層して構成されている。放熱構造体1aが放熱構造体1と異なる点は、第2熱伝導シート3aが複数の熱伝導シートから構成されている点である。その点以外は、前述の放熱構造体1と共通するので、第1実施形態の説明を代り、重複した説明を省略する。
【0030】
第2熱伝導シート3aは、熱伝導性の異なる2以上のシート5,6を、第1熱伝導シート2の面に沿って、すなわち、前述のX方向またはY方向に隣接配置している。シート6は、シート5よりも高い熱伝導率を有する。シート5およびシート6の熱伝導率の違いは
熱伝導性フィラーの含有量(含有率とも称する)の多少、あるいは熱伝導性フィラーの種類によって実現できる。例えば、同種の熱伝導性フィラー(例えば、グラファイト)を用いる場合には、シート6内の当該熱伝導性フィラーの含有率を、シート5内の当該熱伝導性フィラーの含有率よりも多くすれば良い。また、異種の熱伝導性フィラーを用いる場合には、シート6内の当該熱伝導性フィラーを、シート5内の当該熱伝導性フィラーの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するフィラーにすれば良い。
【0031】
第2熱伝導シート3aは、この実施形態では、図2に示すように、その面内所定領域に熱伝導性の異なる2以上のシートの内で熱伝導性のより高いシート(以後、「高熱伝導シート」と称しても良い。)6を配置し、高熱伝導シート6より熱伝導性の低いシート(以後、「低熱伝導シート」と称しても良い。)5を高熱伝導シート6の両側に隣接配置している。高熱伝導シート6は、この実施形態では、第2熱伝導シート3aのX方向またはY方向の略中央に配置されているが、略中央に配置されていなくても良い。
【0032】
第1熱伝導シート2の構成、第2熱伝導シート3aを構成する弾性部材および熱伝導性フィラーの種類等については、第1実施形態と同様である。
【0033】
2.バッテリー
次に、先に説明した放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。
【0034】
(1)第1実施形態
図3は、本発明の第1実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図(3A)、当該バッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図(3B)および当該(3B)中のCで示す部分の拡大図(3C)をそれぞれ示す。
【0035】
図3および図3以後の図では、図の複雑化を避けるため、バッテリーセル10は10個のみ図示されている。しかし、バッテリーの仕様や必要な電力に応じて、バッテリーセル10の数を10個より多くすることができる。放熱構造体1の大きさも、バッテリーセル10の個数に応じて、任意に変えることができる。放熱構造体1に代えて、放熱構造体1aを用いることもできる。
【0036】
この実施形態において、バッテリー20は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル10を備える。バッテリー20は、一方に開口する有底型の筐体21を備える。筐体21は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル10は、前述の熱源の一例であって、筐体21の内部24に配置される。バッテリーセル10は、その外側を硬質樹脂や金属の容器で囲った形態でも、あるいは金属フィルムを樹脂フィルムにてラミネートした、いわゆるパウチ袋で囲った形態でも良い。バッテリーセル10の上方には、電極11が突出して設けられている。複数のバッテリーセル10は、好ましくは、筐体21内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体21の底部22には、冷却部材25の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ26が備えられている。バッテリーセル10は、底部22との間に、放熱構造体1を挟むようにして筐体21内に配置される。より具体的には、放熱構造体1は、それを構成している第2熱伝導シート3がバッテリーセル10の底部に接触し、また、第1熱伝導シート2が底部22に接触するように筐体21内に配置される。
【0037】
このように、バッテリー20は、筐体21内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセル10と放熱構造体1とを備え、バッテリーセル10に第2熱伝導シート3を接触させている。バッテリー20は、好ましくは、筐体21に、冷却部材25を流す部位(この実施形態では底部22)を備え、放熱構造体1を前記部位とバッテリーセル10との間に介在している。これにより、バッテリーセル10は、放熱構造体1を通じて筐体21に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。より具体的には、バッテリーセル10からの熱は、第2熱伝導シート3、第1熱伝導シート2、底部22、水冷パイプ26、冷却部材25へと伝わる。なお、冷却部材25は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却部材25は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。
【0038】
図3(3C)に示すように、第2熱伝導シート3は、柔軟性に富むため、複数個のバッテリーセル10の底部が完全に平面ではなく段差を構成していても、隙間なくあるいは隙間が極めて小さくなるように各バッテリーセル10に密着可能である。この結果、バッテリーセル10から放熱構造体1への熱伝導性を高めることができる。
【0039】
(2)第2実施形態
図4は、本発明の第2実施形態に係るバッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図(4A)および当該(4A)中のDで示す部分の拡大図(4B)をそれぞれ示す。
【0040】
第2実施形態に係るバッテリー20aは、第1実施形態に係るバッテリー20と異なり、冷却部材25を流す水冷パイプ26を筐体21に備えておらず、かつ放熱構造体1aをバッテリーセル10の上部に接触させて空気中に放熱させる構造を有している。また、放熱構造体1aは、第1熱伝導シート2aに第2熱伝導シート3aを積層させた構造を有する。第2熱伝導シート3aは、先に説明したように、複数の熱伝導シート(高熱伝導シート6と低熱伝導シート5)から構成されている。
【0041】
バッテリー20aでは、好ましくは、第2熱伝導シート3aは、その面内所定領域(ここでは、バッテリーセル10を並べる方向の略中央領域)に、熱伝導性の異なる2以上のシートの内で熱伝導性のより高い高熱伝導シート6を配置し、高熱伝導シート6より熱伝導性の低い低熱伝導シート5,5を高熱伝導シート6の両側に隣接配置している。筐体21内の複数のバッテリーセル10は、その並べられた列の中央近傍に位置するものが最も放熱性に劣り、蓄熱されやすい。一方、複数のバッテリーセル10の並べられた列の端近傍に位置するものは中央近傍に比べて放熱されやすい。この実施形態では、複数のバッテリーセル10の並べられた列の中央近傍に位置していて、より高温の高温バッテリーセル10に高熱伝導シート6を接触するように、また、高温バッテリーセル10よりも端に位置していて、より低温の低温バッテリーセル10に低熱伝導シート5,5を接触するように、バッテリー20aは放熱構造体1aを備えている。このように、バッテリーセル10の集団の中央付近にあって熱が逃げにくく高温になっている高温バッテリーセル10は、同集団の端に近い位置にあって比較的放熱しやすい位置にある低温バッテリーセル10に比べて、熱伝導性のより高い高熱伝導シート6の作用で放熱されやすくなる。この結果、バッテリー20a内の一部分が高温になることを防ぎ、発熱部分の温度勾配を低減できる。したがって、局所的な異常発熱も抑えることができ、発熱に起因するバッテリー20aの充放電機能の低下を抑えることができる。
【0042】
放熱構造体1aは、好ましくは、電極11を貫通可能な穴部30を備える。穴部30は、第1熱伝導シート2aおよび第2熱伝導シート3aを貫通するように形成されている。図4(4B)に示すように、放熱構造体1aは、各バッテリーセル10の電極11を穴部30から貫通させて、第2熱伝導シート3aを各バッテリーセル10の上部に接触させた状態で、バッテリー20aに備えられる。図4(4B)に示すように、第2熱伝導シート3aは、柔軟性に富むため、複数個のバッテリーセル10の上部が完全に平面ではなく段差を構成していても、隙間なくあるいは隙間が極めて小さくなるように各バッテリーセル10に密着可能である。この結果、バッテリーセル10から放熱構造体1aへの熱伝導性を高めることができる。
【0043】
(3)第3実施形態
図5は、本発明の第3実施形態に係るバッテリーを組み立てた後の状態の縦断面図を示す。
【0044】
第3実施形態に係るバッテリー20bは、熱源の一例である複数のバッテリーセル10の底部と筐体21の底部との間、さらには複数のバッテリーセル10の上部に、それぞれ放熱構造体1aを備える点で、第1実施形態および第2実施形態とは異なる。バッテリー20bは、バッテリー20と同様、筐体21の底部22に水冷パイプ26を備え、冷却部材25の一例である水を水冷パイプ26中に流して水冷するタイプのバッテリーである。放熱構造体1aは、第2実施形態で用いられている放熱構造体1aと同種の構造体であり、高熱伝導シート6を低熱伝導シート5,5にて挟んだ構造の第2熱熱伝導シート3aを備えている。なお、バッテリーセル10の上部に備える放熱構造体1aは穴部30を備えるが、バッテリーセル10の底部に備える放熱構造体1aは穴部30を備えていても、あるいは備えていなくとも良い。
【0045】
この実施形態では、複数のバッテリーセル10の並べられた列の中央近傍に位置していて、より高温の高温バッテリーセル10に高熱伝導シート6を接触するように、また、高温バッテリーセル10よりも端に位置していて、より低温の低温バッテリーセル10に低熱伝導シート5,5を接触するように、バッテリー20bは放熱構造体1a,1aを備えている。これによって、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0046】
3.その他の実施形態
以上、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0047】
例えば、熱源は、バッテリーセル10のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。同様に、冷却部材25は、冷却用の水のみならず、有機溶剤、液体窒素、冷却用の気体であっても良い。また、放熱構造体1,1aは、バッテリー20,20a,20b以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【0048】
図6は、第2実施形態に係るバッテリーの図4(4B)と同領域Dにおいて、変形例に係る放熱構造体を備えた状況の縦断面図を示す。
【0049】
図6に示される変形例に係る放熱構造体1bは、第1熱伝導シート2aに第2熱伝導シート3bを積層した構造を有する。放熱構造体1bは、熱伝導性の異なる2以上のシート5,6,7の内で最も熱伝導性の高い高熱伝導シート7の位置から第2熱伝導シート3bの両側に向かって熱伝導性が低くなるように2以上の低熱伝導シート6,5を配置している。すなわち、バッテリー20aでは、第2熱伝導シート3bは、その面内所定領域(ここでは、バッテリーセル10を並べる方向の略中央領域)に、熱伝導性の異なる2以上のシートの内で熱伝導性の最も高い高熱伝導シート7を配置し、高熱伝導シート7より熱伝導性の低い低熱伝導シート6,6を高熱伝導シート7の両側に隣接配置し、低熱伝導シート6,6よりも熱伝導性の低い低熱伝導シート5,5を低熱伝導シート6,6の外側にそれぞれ配置する構造を有する。これによって、複数のバッテリーセル10の内で最も温度の高いものに高熱伝導シート7を接触させ、それより温度の低いバッテリーセル10に低熱伝導シート6,6を接触させ、さらにそれより温度の低いバッテリーセル10に低熱伝導シート5,5を接触させることができる。
【0050】
なお、図6では、高熱伝導シート7は、第2熱伝導シート3bのバッテリーセル10の並ぶ方向に沿って略中央領域に存在するが、当該略中央領域以外に存在していても良い。また、第2熱伝導シート3bは、熱伝導性の異なる3種のシートではなく、4種以上のシートを備えても良い。
【0051】
上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る放熱構造体は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係るバッテリーは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1,1a,1b・・・放熱構造体、2,2a・・・第1熱伝導シート、3,3a,3b・・・第2熱伝導シート、5・・・低熱伝導シート、6・・・高熱伝導シート(または低熱伝導シート)、7・・・高熱伝導シート、開口部、10・・・バッテリーセル(高温バッテリーセル、低温バッテリーセル、熱源の一例)、20,20a,20b・・・バッテリー、21・・・筐体、22・・・底部(部位の一例)、25・・・冷却部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6