(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】基板保持部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2018202466
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 教夫
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-135681(JP,A)
【文献】特開2017-212343(JP,A)
【文献】特開2003-332411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有する平板状の基体と、前記基体の上面から上方に向って突出する複数の上面凸部と、前記基体の下面から窪んでいる凹部により構成される通気路と、前記通気路に連通し、かつ、前記基体の上面に開口部を有し、前記基体の下面に沿った指定方向に配列された複数の通気孔と、を備える基板保持部材であって、
前記指定方向における前記通気路の通気性を維持しながら、前記通気路を画定する前記基体の壁面のうち下方を向く天井面から局所的に突出する複数の通気路凸部が前記基体に形成され、
前記基体の上面に垂直な上下方向から見たときに、前記通気路凸部は、前記複数の通気孔のそれぞれの周囲のうち前記指定方向の一方側に少なくとも1つずつ配置され
、
前記基体の上面において、前記上下方向について前記通気路凸部に重なるように前記上面凸部が配置されていることを特徴とする基板保持部材。
【請求項2】
上面および下面を有する平板状の基体と、前記基体の上面から上方に向って突出する複数の上面凸部と、前記基体の下面から窪んでいる凹部により構成される通気路と、前記通気路に連通し、かつ、前記基体の上面に開口部を有し、前記基体の下面に沿った指定方向に配列された複数の通気孔と、を備える基板保持部材であって、
前記指定方向における前記通気路の通気性を維持しながら、前記通気路を画定する前記基体の壁面のうち下方を向く天井面から局所的に突出する複数の通気路凸部が前記基体に形成され、
前記基体の上面に垂直な上下方向から見たときに、前記通気路凸部は、前記複数の通気孔のそれぞれの周囲のうち前記指定方向の一方側に少なくとも1つずつ配置され、
前記通気路凸部が前記通気孔を部分的に取り囲むように延在していることを特徴とする基板保持部材。
【請求項3】
請求項1
または2記載の基板保持部材において、
前記通気路凸部の下端部が前記基体の下面または下端部と同じ高さに位置することを特徴とする基板保持部材。
【請求項4】
請求項
1記載の基板保持部材において、
前記通気路凸部が前記通気孔を部分的に取り囲むように延在していることを特徴とする基板保持部材。
【請求項5】
上面および下面を有する平板状の基体と、前記基体の上面から上方に向って突出する複数の上面凸部と、前記基体の内部に設けられた中空空間により構成される通気路と、前記通気路に連通し、かつ、前記基体の上面に開口部を有し、前記基体の下面に沿った指定方向に配列された複数の通気孔と、を備える基板保持部材であって、
前記指定方向における前記通気路の通気性を維持しながら、前記通気路を画定する前記基体の壁面のうち下方を向く天井面又は上方を向く床面から局所的に突出する複数の通気路凸部が前記基体に形成され、
前記基体の上面に垂直な上下方向から見たときに、前記通気路凸部は、前記複数の通気孔のそれぞれの周囲の前記指定方向の一方側に少なくとも1つずつ配置され
、
前記基体の上面において、前記上下方向について前記通気路凸部に重なるように前記上面凸部が配置されていることを特徴とする基板保持部材。
【請求項6】
上面および下面を有する平板状の基体と、前記基体の上面から上方に向って突出する複数の上面凸部と、前記基体の内部に設けられた中空空間により構成される通気路と、前記通気路に連通し、かつ、前記基体の上面に開口部を有し、前記基体の下面に沿った指定方向に配列された複数の通気孔と、を備える基板保持部材であって、
前記指定方向における前記通気路の通気性を維持しながら、前記通気路を画定する前記基体の壁面のうち下方を向く天井面又は上方を向く床面から局所的に突出する複数の通気路凸部が前記基体に形成され、
前記基体の上面に垂直な上下方向から見たときに、前記通気路凸部は、前記複数の通気孔のそれぞれの周囲の前記指定方向の一方側に少なくとも1つずつ配置され、
前記通気路凸部が前記通気孔を部分的に取り囲むように延在していることを特徴とする基板保持部材。
【請求項7】
請求項5
または6記載の基板保持部材において、
前記複数の通気路凸部の突出高さは、前記天井面から前記床面までの距離と同じであることを特徴とする基板保持部材。
【請求項8】
請求項
5記載の基板保持部材において、
前記通気路凸部が前記通気孔を部分的に取り囲むように延在していることを特徴とする基板保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなど基板を真空吸着保持するために用いられる基板保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
平板状の基体の上面から上方に突出する複数の上方凸部と、基体の下面から窪んでいる溝と、溝に連通し、かつ、基体の上面に開口部を有する通気孔と、を備える基板保持部材が知られている。基板が複数の上方凸部のうち少なくとも一部により支持され、かつ、基体の下面側がステージに載置された状態で溝に負圧領域が形成されることにより、基体の上面と基板の下面とにより挟まれている空隙に負圧領域が形成され、基板に対して基体に向かう引力(真空吸着力)が作用する。この際、溝の上方にある肉薄領域において基体、ひいては基板が局所的に下方に凹む場合があるが、この凹みを抑制するため、溝に下方に突出する下方凸部を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、基体の肉薄領域のうち下方凸部から外れた箇所または下方凸部が設けられていない箇所において、当該基体が局所的に下方に凹む場合がある。溝に代えて中空空間が基体の内部に設けられている場合、当該中空空間の上方にある肉薄領域を下側から支持するための構造を設けることが困難であり、当該基体が局所的に凹む場合がある。上面凸部にウエハ等の基板が載置された状態で基体の凹みに起因して上面凸部の高さにばらつきが発生すると吸着された基板に応力が働くことになる。このときの応力が基板に残留すると基板にひずみが発生する要因となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、基体に負圧形成のための局所的な肉薄領域が存在する場合、肉薄領域直上の基板の局所的な平坦度の低下を抑制することによって基板の全体的な平坦度の向上を図ることができる基板保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の基板保持部材は、上面および下面を有する平板状の基体と、前記基体の上面から上方に向って突出する複数の上面凸部と、前記基体の下面から窪んでいる凹部により構成される通気路と、前記通気路に連通し、かつ、前記基体の上面に開口部を有し、前記基体の下面に沿った指定方向に配列された複数の通気孔と、を備え、前記指定方向における前記通気路の通気性を維持しながら、前記通気路を画定する前記基体の壁面のうち下方を向く天井面から局所的に突出する複数の通気路凸部が前記基体に形成され、前記基体の上面に垂直な上下方向から見たときに、前記通気路凸部は、前記複数の通気孔のそれぞれの周囲のうち前記指定方向の一方側に少なくとも1つずつ配置され、前記基体の上面において、前記上下方向について前記通気路凸部に重なるように前記上面凸部が配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2態様の基板保持部材は、上面および下面を有する平板状の基体と、前記基体の上面から上方に向って突出する複数の上面凸部と、前記基体の内部に設けられた中空空間により構成される通気路と、前記通気路に連通し、かつ、前記基体の上面に開口部を有し、前記基体の下面に沿った指定方向に配列された複数の通気孔と、を備える基板保持部材であって、前記指定方向における前記通気路の通気性を維持しながら、前記通気路を画定する前記基体の壁面のうち下方を向く天井面又は上方を向く床面から局所的に突出する複数の通気路凸部が前記基体に形成され、前記基体の上面に垂直な上下方向から見たときに、前記通気路凸部は、前記複数の通気孔のそれぞれの周囲の前記指定方向の一方側に少なくとも1つずつ配置され、前記基体の上面において、前記上下方向について前記通気路凸部に重なるように前記上面凸部が配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1態様および第2態様のそれぞれの基板保持部材によれば、基体がその下面側において台に支持され、かつ、その上面側にウエハなどの基板が載置された状態で、通気路が真空吸引される。これにより、通気路に連通する通気孔を介して基体の上面および基板の下面により上下が挟まれた空間に負圧領域が形成され、基板に対して基体に向かう吸引力が作用する。
【0009】
各通気孔の指定方向の一方側に少なくとも1つずつ通気路凸部が設けられているため、通気路の指定方向の一方側の端部から排気を行った場合、通気路において負圧が発現し始める初期段階において、通気孔の直下領域で発現する負圧をその他の領域で発現する負圧よりも弱めることができる。このため、この段階で、基体の上面および基板の下面により上下が挟まれた空間において、通気孔の近傍付近で発現した負圧により基体および基板が局所的に下方に凹み、基板保持部材により吸着保持されている基板の平坦性が低下する事態が回避または抑制されうる。
【0010】
さらに、通気路の上方における基体の局所的な肉薄部分が、通気路凸部により局所的に肉厚になっている分だけ、当該肉薄部分の機械的強度の向上が図られている。これにより、通気路における負圧領域の形成により、基体の肉薄部分に対して下方に吸引力が作用した際、肉薄部分の凹み、ひいてはそこに配置された上面凸部の下方への変位が抑制または防止される。このため、基板を通気路の上方に配置されている上面凸部を含む全ての上面凸部の頂面に均一に当接させることができ、基板保持部材に吸着保持されている際の基板の平面度の向上が図られる。このように、通気孔の直下領域で発現する負圧が弱められ基体の変形を抑制することができるので、脱着後の基板にひずみが発生することを抑制することができる。
本発明の第1態様の基板保持部材において、前記通気路凸部の下端部が前記基体の下面または下端部と同じ高さに位置することが好ましい。
本発明の第2態様の基板保持部材において、前記複数の通気路凸部の突出高さは、前記天井面から前記床面までの距離と同じであることが好ましい。
【0011】
当該構成の基板保持部材によれば、通気路凸部が、通気路の上方における基体の局所的な肉薄部分を基体が載置される台または通気路の床面によって下方から支持する補強構造として機能する。
【0012】
これにより、通気路における負圧領域の形成により、基体の肉薄部分に対して下方に吸引力が作用した際、肉薄部分の凹み、ひいてはそこに配置された上面凸部の下方への変位が抑制または防止される。このため、基板を通気路の上方に配置されている上面凸部を含む全ての上面凸部の頂面に均一に当接させることができ、基板保持部材に吸着保持されている際の基板の平面度の向上が図られる。
【0013】
本発明の第1態様および第2態様のそれぞれの基板保持部材において、前記基体の上面において、前記上下方向について前記通気路凸部に重なるように前記上面凸部が配置されていることが好ましい。
【0014】
当該構成の基板保持部材によれば、通気路の上方における基体の肉薄部分のうち、比較的下方に凹む可能性が低い通気路凸部の形成領域に重なるように上面凸部が配置されている。このため、基体の肉薄部分に配置された上面凸部のうち一部が他の上面凸部よりも下方に変位する事態が回避される。このため、基板を通気路の上方に配置されている上面凸部を含む全ての上面凸部の頂面に均一に当接させることができ、基板保持部材に吸着保持されている際の基板の平面度の向上が図られる。
本発明の第1態様および第2態様のそれぞれの基板保持部材において、前記通気路凸部が前記通気孔を部分的に取り囲むように延在していることが好ましい。
【0015】
当該構成の基板保持部材によれば、通気路の指定方向の一方側の端部から排気を行った場合、通気路において負圧が発現し始める初期段階において、通気孔の直下領域で発現する負圧をその他の領域で発現する負圧よりもより確実に弱めることができる。このため、この段階で、基体の上面および基板の下面により上下が挟まれた空間において、通気孔の近傍付近で発現した負圧により基体および基板が局所的に下方に凹み、基板保持部材により吸着保持されている基板の平坦性が低下する事態がより回避または抑制されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態としての基板保持部材の上面図。
【
図2】
図1のII-II線に沿った基板保持部材の縦断面図。
【
図3A】通気路における通気孔および通気路凸部のX-Y平面における第1の配置態様に関する説明図。
【
図3B】通気路における通気孔および通気路凸部のX-Y平面における第2の配置態様に関する説明図。
【
図3C】通気路における通気孔および通気路凸部のX-Y平面における第3の配置態様に関する説明図。
【
図3D】通気路における通気孔および通気路凸部のX-Y平面における第4の配置態様に関する説明図。
【
図4A】通気路における通気孔および通気路凸部のX-Y平面における第5の配置態様に関する説明図。
【
図4B】通気路における通気孔および通気路凸部のX-Y平面における第6の配置態様に関する説明図。
【
図4C】通気路における通気孔および通気路凸部のX-Y平面における第7の配置態様に関する説明図。
【
図4D】通気路における通気孔および通気路凸部のX-Y平面における第8の配置態様に関する説明図。
【
図5A】通気路および通気路凸部のY-Z平面における第1の配置態様に関する説明図。
【
図5B】通気路および通気路凸部のY-Z平面における第2の配置態様に関する説明図。
【
図5C】通気路および通気路凸部のY-Z平面における第3の配置態様に関する説明図。
【
図5D】通気路および通気路凸部のY-Z平面における第4の配置態様に関する説明図。
【
図6】本発明の第2実施形態としての基板保持部材の
図2に対応する縦断面図。
【
図7A】通気路および通気路凸部のY-Z平面における第5の配置態様に関する説明図。
【
図7B】通気路および通気路凸部のY-Z平面における第6の配置態様に関する説明図。
【
図7C】通気路および通気路凸部のY-Z平面における第7の配置態様に関する説明図。
【
図7D】通気路および通気路凸部のY-Z平面における第8の配置態様に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
(構成)
図1および
図2に示されている本発明の第1実施形態としての基板保持部材は、基体1と、基体1の上面101から上方に向って突出する複数の上面凸部110と、基体1の上面101から上方に向って突出し、かつ、複数の上面凸部110を囲うように環状に延在する環状上面凸部114と、基体1の下面102から下方に向って突出する複数の下面凸部120と、基体1の下面102から窪んでいる凹部により構成されている通気路22と、通気路22に連通し、かつ、基体1の上面101に開口部を有する通気孔21と、基体1において通気路22の上方にある天井部221(通気路22を画定する基体1の壁面のうち下方を向く天井面2210)から下方に突出する通気路凸部121と、基体1の下面102から下方に向かって突出し、かつ、通気路22を吸気する際の気密シールのために通気路22の下面開口を囲うように環状に延在する内側環状下面凸部122と、基体1の下面102の外縁部から下方に向かって突出し、かつ、複数の下面凸部120を囲うように環状に延在する外側環状下面凸部124と、を備えている。
【0018】
各構成要素の配置態様を説明するため、基体1に対して固定された基体座標系(X,Y,Z)が適宜用いられる。基体座標系のX-Y平面は、基体1の上面101および下面102のそれぞれに対して平行になるように定義されている。基体座標系のZ軸は、基体1の厚さ方向に対して平行になるように定義されている。
【0019】
基体1は、例えばZ軸に沿ってみたときに略円形をなし、略平板状のSiC、AlN、Al2O3等のセラミックス焼結体からなる。複数の上面凸部110、環状上面凸部114、複数の下面凸部120、内側環状下面凸部122、外側環状下面凸部124、通気孔21および通気路22のそれぞれは、研削加工、ブラスト加工、ミリング加工もしくはレーザー加工またはこれらの組み合わせにより形成される。基体1の上面101および下面102のそれぞれは略平面状に形成されている。
【0020】
複数の上面凸部110は、基体1の上面101において三角格子もしくは正方格子等の格子様に配置されるほか、複数の同心円のそれぞれに沿って配置され、あるいは、中心から延在する複数の放射線のそれぞれに沿って規則的に配置される等、規則的に配置されてもよく、不規則的に配置されていてもよい。複数の上面凸部110のうち、一の群を構成する上面凸部110(例えば通気路22の上方にある天井部221に配置された複数の上面凸部110)の配置態様または規則性と、当該一の群とは異なる他の群(例えば天井部221から外れた位置に配置された複数の上面凸部110)を構成する上面凸部110の配置態様または規則性と、が相違していてもよい。
【0021】
複数の上面凸部110のそれぞれは、略柱状、略錘台状、柱状体または錘台状体の端面または上底に、小面積の底面または下底を有する柱状体、半球、半楕円球または錘台状体が載ったような複数の段差付きの略柱状など、様々な形状に形成されていてもよい。上面凸部110の上端面1100は、基体1の上面101と略平行な平面状に形成されている。基体1の上面101を基準とした複数の上面凸部110の突出量は、互いに同じである。
【0022】
基体1において通気路22の上方にある天井部221に配置されている複数の上面凸部110のうち、例えば、一部の上面凸部110、好ましくは全部の上面凸部110が通気路凸部121の存在領域に配置されている。
【0023】
基板保持部材の縦断面図において環状上面凸部114の形状が略矩形状のほか、略台形状、半楕円形状、半円形状、または、矩形と当該矩形の一辺を直径とする半円形とが組み合わせられた形状など、様々な形状であってもよい。なお、環状上面凸部14が省略されてもよい。基体1の上面101を基準とした環状上面凸部114の上端面1140の高さ位置(上面101からの突出量)が、上面凸部110の上端面1100の高さ位置よりも低いまたは同一に設計されている。
【0024】
複数の下面凸部120は、基体1の下面102において三角格子もしくは正方格子等の格子様に配置されるほか、複数の同心円のそれぞれに沿って配置され、あるいは、中心から延在する複数の放射線のそれぞれに沿って規則的に配置される等、規則的に配置されてもよく、不規則的に配置されていてもよい。下面凸部120のそれぞれは、上面凸部110と同様に、様々な形状に形成されていてもよい。下面凸部120の下端面1200は、基体1の下面102と略平行な平面状に形成されている。
【0025】
基体1の下面102を基準とした下面凸部120の下端面1200の高さ位置(突出量)は、基体1の上面101を基準とした上面凸部110の突出量および環状上面凸部14の突出量のうち少なくとも一部と同一であってもよく、これらのすべてよりも小さくてもよく、これらのすべてよりも大きくてもよい。基体1の下面102を基準とした内側環状下面凸部122の下端面1220の高さ位置(突出量)および外側環状下面凸部124の下端面1240(突出量)のそれぞれは、基体1の下面102を基準とした下面凸部120の突出量と同じであってもよく、下面凸部120の当該突出量より小さくてもよい。複数の下面凸部120がすべて省略されてもよい。内側環状下面凸部122および外側環状下面凸部124のうち少なくとも一方が省略されてもよい。
【0026】
通気路22は、例えば、基体1の下面102から基体1の厚み方向に窪んでいる、基体1の中心から外れた領域で径方向(X方向)に延在する直線状凹部と、当該直線状凹部の内側端部に連続して周方向(X
2+Y
2が一定である条件下でθ=arctan(Y/X)が変化する方向)に延在する円弧状凹部と、により構成されている(
図1参照)。直線状凹部および円弧状凹部のそれぞれの延在方向(例えばX方向)に垂直な縦断面(例えばY-Z平面)における形状は略矩形状である。通気路22の延在方向に垂直な当該通気路22の縦断面形状は、台形状、平行四辺形状または下方を短径または長径とする半楕円形状などの様々な形状であってもよい。通気路22を構成する凹部の延在態様はさまざまに変更されてもよい。
【0027】
また、通気路22は直線状凹部から複数の円弧状凹部が分岐していてもよく、基体1の周方向に延びるリング状の凹部であってもよく、リング状の凹部に直線状凹部が接続されていてもよい。
【0028】
基体1における通気路22の数は単数であってもよく複数であってもよく、Z軸に沿ってみたときに、複数の通気路22が基体1の中心に配置される、あるいは、当該中心を基準とした回転対称性を有するように配置されるなど配置態様は任意に設計変更されてもよい。
【0029】
基体1の厚さに対する、基体1において通気路22の上方にある天井部221(肉薄部分)の厚さの比率は、例えば0.20~0.70の範囲に含まれている。例えば、基体1の厚さが1mmである場合、天井部221の厚さは0.20mm~0.70mmの範囲に含まれている。
【0030】
通気孔21は、基体1の上面101から通気路22に達するまで、基体1を貫通する略円柱状の孔により構成されている。一の通気路22に連通する通気孔21の数は単数であってもよく複数であってもよく、基体1の上面101における通気孔21の個数および配置態様は任意に設計変更されてもよい。例えば、Z軸に沿ってみたときに複数(例えば6つ)の通気孔21が基体1の中心回りの回転対称性(例えば6回対称性)を有するように配置されてもよく(
図1参照)、複数の通気孔21が非対称性を有するように配置されてもよい。
【0031】
通気路凸部121の下端部1210は、基体1の下端部、すなわち下面凸部120の下端面1200、内側環状下面凸部122の下端面1220および外側環状下面凸部124の下端面1240と同じ高さ(Z座標値が同じ)に位置している。なお、下面凸部120、内側環状下面凸部122および外側環状下面凸部124が省略されている場合、通気路凸部121の下端部1210は、基体1の下面102と同じ高さに位置している。
【0032】
通気路凸部121の下端部1210は、基体1の下端部よりも高い位置(Z座標値が大きい)に位置していてもよい。この場合、基体1が載置台4に載置された状態で、通気路凸部121の下端部1210は、載置台4の上面から離間している。
【0033】
基体1の上面101に垂直な方向(-Z方向)に基体1を臨んだ際、通気路凸部121は、複数の通気孔21のそれぞれの周囲のうち指定方向(例えばX方向および周方向などの通気路22の延在方向)の一方側(上流側)に少なくとも1つずつ配置されている。
【0034】
例えば、
図3Aに示されているように、X-Y平面に平行な横断面において略楕円形状の1つの通気路凸部121が、通気路22の延在方向(例えばX方向)について通気孔21の一方側(例えばX座標値が小さい側)に配置されていてもよい。さらに、当該一方側から通気路凸部121を臨んだ際に当該通気路凸部121が通気孔21を部分的に隠すように1つの通気路凸部121が通気路22に配置されていてもよい。通気路凸部121の当該断面形状は、略楕円形状のほか、略円形状、略半円形状、略半楕円形状、略三角形状、略矩形状または略台形状など、さまざまに変更されてもよい。
【0035】
通気孔21を基準とする所定範囲に通気路凸部121が配置されていてもよい。例えば、幅Y0の通気路22における通気孔21の中心から、通気路22の延在方向について通気孔21の一方側にX1=0.4×Y0~100×Y0だけ広がり、かつ、通気路22の延在方向について通気孔21の他方側にX2=0.4×Y0~50×Y0だけ広がっている所定範囲に通気路凸部121が配置されていてもよい(
図3A/破線矩形参照)。
【0036】
図3Bに示されているように、通気孔21の一方側から複数の通気路凸部121を臨んだ際に当該複数の通気路凸部121が通気孔21を部分的に隠すように複数の通気路凸部121が通気路22に配置されていてもよい。
【0037】
図3Cに示されているように、通気孔21の一方側(例えばX座標値が小さい側)から通気路凸部121を臨んだ際に通気路凸部121が通気孔21を全体的に隠すように1つの通気路凸部121が配置されていてもよい。
【0038】
図3Dに示されているように、通気孔21の一方側から複数の通気路凸部121を臨んだ際に当該複数の通気路凸部121が通気孔21を全体的に隠すように複数の通気路凸部121が通気路22に配置されていてもよい。
【0039】
図4Aに示されているように、通気孔21の一方側から第1群を構成する一の(または複数の)通気路凸部121を臨んだ際に当該通気路凸部121が通気孔21を部分的に隠すように第1群を構成する通気路凸部121が通気路22に配置され、かつ、通気孔21の他方側から第2群を構成する一の(または複数の)通気路凸部121を臨んだ際に当該通気路凸部121が通気孔21を部分的に隠すように第2群を構成する通気路凸部121が通気路22に配置されていてもよい。
【0040】
図4Bに示されているように、通気孔21の一方側から第1群を構成する一の(または複数の)通気路凸部121を臨んだ際に当該通気路凸部121が通気孔21を部分的に隠すように第1群を構成する通気路凸部121が通気路22に配置され、かつ、通気孔21の他方側から第2群を構成する複数の(または一の)通気路凸部121を臨んだ際に当該通気路凸部121が通気孔21を全体的に隠すように第2群を構成する通気路凸部121が通気路22に配置されていてもよい。
【0041】
図4Cに示されているように、1つの略円弧状の通気路凸部121が通気孔21を部分的に囲むように配置されていてもよい。この場合、通気孔21の一方側(例えばX座標値が小さい側)から通気路凸部121を臨んだ際に通気路凸部121が通気孔21を全体的に隠すように通気路22に配置されている。さらに、通気孔21の他方側(例えばX座標値が大きい側)から通気路凸部121を臨んだ際に通気路凸部121が通気孔21を部分的に隠すように通気路凸部121が通気路22に配置されている。
【0042】
図4Dに示されているように、通気孔21の一方側から第1群を構成する複数の(または一の)通気路凸部121を臨んだ際に当該通気路凸部121が通気孔21を全体的に隠し、かつ、通気孔21の他方側から第2群を構成する一の(または複数の)通気路凸部121を臨んだ際に当該通気路凸部121が通気孔21を部分的に隠すように、第1群および第2群を構成する複数の通気路凸部121が通気路22に配置されていてもよい。
【0043】
基体1の上面101および下面102に平行な指定方向(例えばX方向)および基体1の厚さ方向(Z方向)のそれぞれに延在する平面(例えばX-Z平面)または曲面に平行な基体1の断面における、当該指定方向に延在する通気路凸部121の形状は、指定方向を長辺方向とする略矩形状のほか、下辺を上側にした略三角形状、下底を上側にした略台形状、略半円形状、略半楕円形状など、さまざまに変更されてもよい。
【0044】
指定方向(例えばX方向)を垂線とする平面(例えばY-Z平面)に平行な基体1の断面における、当該指定方向に延在する通気路凸部121の形状は、略矩形状のほかさまざまに変更されてもよい。当該形状が、例えば、台形状または等脚台形状(
図5A参照)、段差付き台形状(
図5B参照)、矩形とその下辺を長径とする半楕円との複合形状(
図5C参照)、または、段差付き矩形状であってもよい(
図5D参照)。
【0045】
当該断面において通気路22を構成する溝(基体1の下面102を下端とする略矩形状領域)が占める面積S22に対する、当該溝において通気路凸部121が占める面積S121の比率S121/S22は、通気路22の場所の相違に応じた負圧領域の発現タイミングの顕著なずれを回避しうる程度の通気性を確保するため、例えば0.50以下であり、好ましくは0.40以下であり、さらに好ましくは0.30以下である。当該比率は断面の位置に応じて変化してもよい。
【0046】
なお、図面では基板保持部材が概略的に表されており、当該基板保持部材の構成要素のアスペクト比、間隔、個数などは、原則的に実際の設計値とは異なっている。これは、すべての実施形態において同様である。
【0047】
(機能)
本発明の第1実施形態としての基板保持部材によれば、基体1が複数の下面凸部120のそれぞれを載置台4の上面に当接させた状態で、当該載置台4により支持される。基体1の下面102における内側環状下面凸部122の内側に、載置台4に形成されている通気路42の開口部が含まれるように基体1が載置台4に対して位置合わせされる。
【0048】
複数の上面凸部110のうち少なくとも一部の上面凸部110の上端面1100において基板Wが載置された状態で、載置台4の通気路42に接続された真空吸引装置(図示略)により、当該通気路42が吸気され、基体1の通気路22に負圧領域が形成される。これにより、通気路22に連通する通気孔21を介して基体1の上面101および基板Wの下面により上下が挟まれた空間に負圧領域が形成され、基板Wに対して基体1に向かう吸引力が作用する。通気路22に負圧領域が形成されることにより、基体1の上面101側において通気路22が形成されている分だけ厚さが局所的に小さい天井部221に局所的に下方への力が作用する。
【0049】
各通気孔21の指定方向の一方側に少なくとも1つずつ通気路凸部121が設けられているため、通気路22の指定方向の一方側の端部から排気を行った場合、通気路22において負圧が発現し始める初期段階において、通気孔21の直下領域で発現する負圧をその他の領域で発現する負圧よりも弱めることができる。このため、この段階で、基体1の上面101および基板Wの下面により上下が挟まれた空間において、通気孔21の近傍付近で発現した負圧により基体1および基板Wが局所的に下方に凹み、基板保持部材により吸着保持されている基板Wの平坦性が低下する事態が回避または抑制されうる。
【0050】
さらに、通気路22の上方における基体の局所的な肉薄部分である天井部221が、通気路凸部121により局所的に肉厚になっている分だけ、当該天井部221の機械的強度の向上が図られている。これにより、通気路22における負圧領域の形成により、基体1の天井部221に対して下方に吸引力が作用した際、天井部221の凹み、ひいてはそこに配置された上面凸部110の下方への変位が抑制または防止される。このため、基板Wを通気路22の上方に配置されている上面凸部110を含む全ての上面凸部110の頂面1100に均一に当接させることができ、基板保持部材に吸着保持されている際の基板Wの平面度の向上が図られる。そして、基板Wの表面(上面)において、所望のパターンの回路形成のための露光処理など、所定の処理が実施されうる。このように、通気孔21の直下領域で発現する負圧が弱められ基体1の変形を抑制することができるので、脱着後の基板Wにひずみが発生することを抑制することができる。
【0051】
(第2実施形態)
(構成)
図6に示されている本発明の第2実施形態としての基板保持部材によれば、通気路22が、基体1の下面102から窪んでいる凹部ではなく、基体1の内部に終端を有し、基体1の上面101および下面102の間に位置する基体1の天井面2210と天井面2210と対向する基体の床面2220とにより少なくとも部分的に画定される中空空間により構成されている。具体的には、通気路22は、基体1の下面102における開口部から上方に延在した後、基体1の上面101と平行な方向に延在し、基体1の内部で終端している。
【0052】
中空空間の延在方向を垂線とする基体1の断面における当該中空空間の形状は、矩形状、台形状、平行四辺形状、多角形状、半円形状、円形状、半楕円形状または楕円形状など、閉曲線により囲まれる任意の2次元領域の形状であってもよい。例えば、天井面2210が下方に開いた略半円筒形状であり、床面2220が上方に開いた略半円筒形状である場合、略円筒状に延在する通気路22は天井面2210および床面2220により画定されている。通気路22は天井面2210および床面2220に加えて、両側面により画定されていてもよい。
【0053】
図7Aに示されているように、通気路22において天井部221から下方に突出する通気路凸部121の下端部が床面2220と当接または一体化していてもよい。指定方向に延在する、基体1において通気路22の下方にある床部222から上方に突出する通気路凸部121の上端部が天井面2210と当接または一体化していてもよい。
【0054】
図7Bに示されているように、通気路22において天井部221から下方に突出する通気路凸部121の下端部が床面2220から離間していてもよい。
図7Cに示されているように、通気路22において床部222から上方に突出する通気路凸部121の上端部が天井面2210から離間していてもよい。
図7Dに示されているように、通気路22において天井部221から下方に突出する通気路凸部121の下端部と、床部222から上方に突出する通気路凸部121の上端部と、が相互に離間して対向するように配置されていてもよい。
【0055】
2つの略平板状の成形体(または仮焼結体)のそれぞれの接合面に中空空間に相当する溝が形成され、かつ、少なくとも一方の成形体の当該溝の底から突出する通気路凸部121に相当する凸部が形成された上で、当該2つの成形体が接合面同士で接合された状態で焼成一体化されることにより、第2実施形態の基板保持部材が作製される。
通気路22および通気路凸部121の構成を除く他の構成は、第1実施形態の基板保持部材と同様なので、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0056】
(機能)
本発明の第2実施形態としての基板保持部材によれば、通気路22に負圧領域が形成されることにより、基体1の上面101側において通気路22が形成されている分だけ厚さが局所的に小さい天井部221に下方への力が作用しても、第1実施形態と同様の理由により、基板Wが天井部221に配置されている少なくとも一部の上面凸部110および天井部221から外れている箇所に配置されている上面凸部110のそれぞれの上端面1100に均一に当接した状態で、基板保持部材に吸着保持され、この際の当該基板Wの平面度の向上が図られる。そして、基板Wの表面(上面)において、所望のパターンの回路形成のための露光処理など、所定の処理が実施されうる。
【符号の説明】
【0057】
1‥基体、4‥載置台、21‥通気孔、22‥通気路、42‥通気路、101‥上面、102‥下面、110‥上面凸部、114‥環状上面凸部、120‥下面凸部、121‥通気路凸部、122‥内側環状下面凸部、124‥外側環状下面凸部、221‥天井部、222‥床部、2210‥天井面、2220‥床面、W‥基板(ウエハ)。