(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】航空機の飛行計画において微細風況を考慮するシステム
(51)【国際特許分類】
B64C 39/02 20060101AFI20221208BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20221208BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20221208BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B64C39/02
B64D45/00 Z
B64F1/36
G08G5/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018207217
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ビー.ヘンドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ルネ シュ-ゾン カボス
(72)【発明者】
【氏名】ニルス ノイパー
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0217694(US,A1)
【文献】特開2007-290647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0019796(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0049382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02,27/08
B64D 45/00
B64F 1/36
G08G 5/00
G01W 1/08-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5度の緯度及び0.5度の経度の水平方向分解能並びに50ミリバールの垂直分解能で定義される一つの格子内に収まる地域内の微細風況を考慮するシステムであって、
前記地域内に位置し、各々が高度センサ及びGPS受信機を有する複数の
無人航空機
と、
前記複数の
無人航空機からの測定値を用いて、前記地域内の
複数の風ベクトルを特定するよう構成された風速算出部
と、
前記特定された複数の風ベクトルに基づき、前記地域内
において複数の3次元格子の設定格子点にそれぞれ関連付けられた複数の補間風ベクトルを用いて3次元風況マップを作成するよう構成された3次元風況マップ作成部
と、
前記地域の前記3次元風
況マップを用い
て飛行計画を作成するよう構成され
た飛行計画作成部と、
前記
無人航空機に飛行計画を伝達するよう構成された通信システム
と、を含む、システム。
【請求項2】
前記風速算出部は、ベクトル合成、前記複数の
無人航空機の設定飛行速度、前記複数の
無人航空機の設定飛行方位、前記複数の
無人航空機の観測飛行速度、及び、前記複数の
無人航空機の観測飛行方位を用いて、前記風ベクトルを特定するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記3次元風況マップ作成部は、さらに、前記地域の3次元モデルと、将来の時点の粗間隔予報と、を用いて、前記将来の時点における前記地域の3次元風況予測マップを作成するよう構成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記飛行計画作成部は、前記
無人航空機の貨物について最大許容乱気流を特定し、前記
無人航空機が遭遇する乱気流が前記最大許容乱気流を下回るように前記飛行計画を作成するよう構成されている、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記飛行計画作成部は、前記
無人航空機の貨物の配達期限を特定し、前記
無人航空機が前記貨物を前記配達期限までに配達されるように前記飛行計画を作成するよう構成されている、請求項1~
4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記地域について追加で特定された風ベクトル及び受信した粗間隔予報を用いて、前記地域の3次元モデルの修正及び更新を行うよう構成されたモデル修正システムをさらに含む、
請求項1~
5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
0.5度の緯度及び0.5度の経度の水平方向分解能並びに50ミリバールの垂直分解能で定義される一つの格子内に収まる地域内を
複数の無人航空機が飛行する間、前記複数の
無人航空機の高度測定値を収集し、
前記複数の
無人航空機を用いて、前記地域内の風ベクトルを特定し、
前記特定された複数の風ベクトルに基づき、前記地域内において複数の3次元格子の設定格子点にそれぞれ関連付けられた複数の補間風ベクトルを特定し、
前記特定した
複数の補間風ベクトルに基づいて、前記地域における航空機の飛行計画を作成する
、方法
。
方法。
【請求項8】
さらに、前記飛行計画にしたがって、前記地域において前記
無人航空機を飛行させる、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記地域における前記
無人航空機の前記飛行計画を作成するに際し、
前記無人航空機の貨物について最大許容乱気流を特定し、
前記
無人航空機が遭遇する乱気流が前記最大許容乱気流を下回るように前記飛行計画を作成する、
請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記地域における前記
無人航空機の前記飛行計画を作成するに際し、
前記無人航空機の貨物の配達期限を特定し、
前記無人航空機が前記貨物を前記配達期限までに配達されるように前記飛行計画を作成する、
請求項
7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記特定した複数の補間風ベクトルに基づいて前記地域における前記無人航空機の前記飛行計画を作成するに際し、前記無人航空機が現に飛行している間に前記無人航空機の修正飛行計画を作成する、請求項
7~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記複数の
無人航空機の設定飛行速度及び設定飛行方位を収集し、
前記複数の
無人航空機の観測飛行速度及び観測飛行方位を収集し、前記
複数の補間風ベクトルを特定するに際し、ベクトル合成、前記設定飛行速度、前記設定飛行方位、前記観測飛行速度、及び、前記観測飛行方位を用いて、前記地域内の前記風ベクトルを特定する、
請求項
7~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記地域は、郊外地域又は市街地域の少なくとも一つである、
請求項
7~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記
特定された複数の補間風ベクトルを用いて前記地域の3次元風況マップを作成し
、
将来の時点における前記地域の粗間隔予報を受信し、
前記地域の3次元モデルと前記粗間隔予報とを用いて、前記将来の時点における前記地域の3次元風況予測マップを作成し、前記地域における前記飛行経路を計画するに際し、前記将来の時点における前記地域の前記3次元風況予測マップを用いて前記飛行経路を計画する、
請求項
7~13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、航空機の運航に関し、より具体的には、微細風況(micro wind conditions)を考慮した航空機の運航に関する。
【背景技術】
【0002】
民間航空機の飛行計画を作成する際は、例えば、国立気象局(National Weather Service)などの気象団体により粗間隔で作成された風況予報(coarsely-grained wind forecasts)が利用される。粗間隔風況予報は、一般的に、0.5度の水平方向分解能(lateral resolution)、及び、50ミリバールの垂直方向分解能(vertical resolution)で作成される。この分解能は、何千マイルの距離を飛行する民間航空機には十分であるものの、この分解能では、複数の分解能点/座標点の間の「微視的(microscopic)」風を把握することはできない。
【0003】
通常、無人航空機の飛行距離は、民間航空機に比べ極端に短い。貨物の配達や乗客の輸送を行う無人航空機の中には、0.5度の水平分解能を境界とする領域内のみで移動するものもある。粗間隔風況予報では、その分解能のため、無人航空機の飛行経路に亘る気象の詳細は提示されない。例えば、飛行経路に亘る風ベクトルを知ることはできない。
【0004】
無人航空機によっては、気象計器(weather gauge)よりもかなり高い高度を飛行するものもある。無人航空機は、民間航空機の巡航高度よりも低い高度を飛行し、風速及び風向は、高度によって変化する。気象計器で収集される風ベクトル及び風向は、無人航空機の飛行計画の作成に必ずしも好ましいものではない。民間航空機で収集される風ベクトル及び風向も、無人航空機の飛行計画の作成に適しているとは限らない。
【0005】
したがって、上述の事項の少なくともいくつかと、その他の潜在的な事項を考慮した方法及び装置の提供が望まれる。例えば、地域内で無人航空機を飛行させる助けとなる方法及び装置の提供が望まれる。他の例では、地域内の状況を考慮して無人航空機の飛行計画を作成する方法及び装置の提供が望まれる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の例示的な実施形態は、地域内の微細風況を考慮するシステムを提供する。前記システムは、複数の航空機を前記地域内に含むとともに、風速算出部を含む。前記複数の航空機の各々は、高度センサ及びGPS受信機を有する。前記風速算出部は、前記複数の航空機からの測定値を用いて、前記地域内の風ベクトルを特定するよう構成されている。
【0007】
本開示の他の例示的な実施形態は、方法を提供する。複数の航空機が地域内を飛行する間、前記複数の航空機の高度測定値が収集される。前記複数の航空機を利用して、前記地域内の風ベクトルが特定される。
【0008】
本開示のさらに他の例示的な実施形態は、方法を提供する。地域内を飛行中の複数の航空機を利用して、第1時点における前記地域内の風ベクトルが特定される。前記地域について、前記風ベクトルに基づく補間風ベクトルを含む3次元風況マップが作成される。前記3次元マップは、前記第1時点における前記地域の粗間隔予報に関連づけられる。前記第1時点における前記地域の前記粗間隔予報に関連づけられた前記3次元マップを用いて、前記地域の3次元モデルが修正される。第2時点における前記地域の粗間隔予報が受信される。前記第2時点における前記地域の3次元風況予測マップが作成される。
【0009】
これら特徴及び機能は、本開示の様々な実施形態において個別に達成可能であり、また、他の実施形態との組み合わせも可能である。この詳細については、以下の記載と図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
例示的な実施形態に特有のものであると考えられる新規な特徴は、添付の請求の範囲に記載されている。ただし、例示的な実施形態、並びに、好ましい使用形態、さらに、その目的及び利点は、以下に示す本開示の例示的な実施形態の詳細な説明を、添付の図面と併せて参照することによって最もよく理解されるであろう。
【0011】
【
図1】例示的な実施形態による、微細風況を考慮した飛行計画を用いて無人航空機が飛行する環境のブロック図を示す図である。
【
図2】例示的な実施形態による、地域内で確認された複数の航空機の位置を2次元で示す図である。
【
図3】例示的な実施形態による、地域内で確認された複数の航空機の位置を3次元で示す図である。
【
図4】例示的な実施形態による、地域内で特定された風ベクトルを3次元で示す図である。
【
図5】例示的な実施形態による、無人航空機を例示的なベクトルとともに示す図である。
【
図6】例示的な実施形態による、地域内の設定格子点を2次元で示す図である。
【
図7】例示的な実施形態による、地域内の設定格子点を3次元で示す図である。
【
図8】例示的な実施形態による、地域内の設定格子点で補間された風ベクトルを2次元で示す図である。
【
図9】例示的な実施形態による、無人航空機を、初期の飛行計画及び微細風況を考慮した新たな飛行計画と併せて2次元で示す図である。
【
図10】無人航空機の実際の軌道と予定の軌道との差分を示す図である。
【
図11A-11B】例示的な実施形態による、地域内で特定された風ベクトルに基づいて、当該地域で航空機を飛行させる方法のフローチャートである。
【
図12】例示的な実施形態による、地域内で航空機を飛行させる方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的な実施形態では、1以上の事項が認識及び考慮されている。例えば、例示的な実施形態では、幾つかの異なる状況において無人航空機が有利なことが認識及び考慮されている。例示的な実施形態では、無人航空機は、店舗や販売業者による商品の配達に利用可能なことが認識及び考慮されている。例示的な実施形態では、無人航空機は、注文されたファーストフードの配達に利用可能なことが認識及び考慮されている。例示的な実施形態では、無人航空機は、人又は動物の輸送に利用可能なことが認識及び考慮されている。
【0013】
例示的な実施形態では、無人航空機(UAV)の飛行計画の提出が必要であることが認識及び考慮されている。例示的な実施形態では、無人航空機の飛行距離は短いので、粗間隔風況予報は、無人航空機の飛行計画の策定において有用でないことが認識及び考慮されている。例えば、粗間隔風況予報では、最もコスト効率の高い経路を特定するために十分な情報量が提供されない。
【0014】
例示的な実施形態では、地域内の風況の3次元ビューを「ライブ」つまりリアルタイムで提供することが望ましいことが認識及び考慮されている。さらに、例示的な実施形態では、地域内の複数の無人航空機を利用して測定値を収集し、当該地域内の風ベクトルを特定可能なことが認識及び考慮されている。また、例示的な実施形態では、当該地域内の風況のリアルタイム・ビューを利用して、将来の時点の風況予測が可能なことが認識及び考慮されている。さらに、例示的な実施形態では、風況のリアルタイム・ビューを利用して、風ベクトルを所定の格子間隔で特定可能なことが認識及び考慮されている。
【0015】
また、例示的な実施形態では、乱気流が無人航空機に望ましくないことが認識及び考慮されている。また、例示的な実施形態では、無人航空機が乱気流に遭遇する可能性を低減するために、無人航空機が実行すべき修正を予め特定できることが望ましいことが認識及び考慮されている。
【0016】
以下では、図面を参照し、特に、例示的な実施形態による微細風況を考慮した飛行計画によって無人航空機を飛行させる環境のブロック図である
図1を参照する。環境100は、地域104内の微細風況を考慮するためのシステム102を含む。いくつかの例示的な実施例において、地域104は、0.5度の水平方向分解能における一つの格子(single 0.5° lateral resolution grid)内に収まる地域である。
【0017】
いくつかの例示的な実施例において、地域104は、郊外地域105又は市街地域107の少なくとも一つである。いくつかの例示的な実施例において、地域104は市103に相当する。市103は、少なくとも一つの郊外地域105又は市街地域107を含む。
【0018】
システム102は、地域104内に複数の航空機109を含むとともに、風速算出部(wind speed calculator)108を含む。いくつかの例示的な実施例において、システム102は、飛行計画作成部(flight plan generator)110も含む。いくつかの例示的な実施例において、複数の航空機109は、複数の無人航空機106を含む。
【0019】
風速算出部108は、複数の航空機109からの測定値112を用いて、地域104内の風ベクトル111を特定するよう構成されている。複数の航空機109が複数の無人航空機106である場合、風速算出部108は、複数の無人航空機106からの測定値112を用いて、地域104内の風ベクトル111を特定するよう構成されている。
【0020】
飛行計画作成部110は、風速算出部108によって特定された風ベクトル111に基づいて、地域104における航空機115の飛行計画114を作成するよう構成されている。本明細書において、「飛行計画」及び「飛行経路」との用語は、同義に用いられる場合がある。航空機115が無人航空機116である場合、飛行計画作成部110は、風速算出部108によって特定された風ベクトル111に基づいて、地域104における無人航空機116の飛行計画114を作成するよう構成されている。
【0021】
複数の航空機109の各々は、高度センサ及びGPS受信機を有する。図示のように、複数の航空機109は、GPS受信機120及び高度センサ122を含むセンサ118を有する。いくつかの例示的な実施例において、複数の航空機109に搭載されているセンサ118は、所望のその他のセンサも含む。いくつかの例示的な実施例において、複数の航空機109は、風速センサ124も含む。
【0022】
複数の航空機109が複数の無人航空機106である場合、各無人航空機106はセンサ118を有する。例えば、複数の無人航空機106が含まれる場合、その各々は、高度センサ及びGPS受信機を有する。
【0023】
測定値112は、第1時点126に関連づけられている。測定値112は、センサ118を用いて取得される。
【0024】
第1時点126における地域104内の風ベクトル111は、複数の航空機109からの測定値112を用いて特定される。いくつかの例示的な実施例において、地域104内の微視的風は、複数の航空機109によって直接測定される。これらの例示的な実施例では、測定値112は、風速センサ124により測定された風測定値(wind measurements)128を含む。これらの例示的な実施例では、風速算出部108は、風測定値128を複数の航空機109の位置130及び高度132と関連づけて、風ベクトル111を形成する。
【0025】
いくつかの他の例示的な実施例において、地域104内の微視的風は、複数の航空機109を用いて間接的に測定される。いくつかの例示的な実施例において、風ベクトル111は、演算と測定値112を用いて特定される。これらの例示的な実施例では、測定値112は、設定飛行速度(set speed)134及び設定飛行方位(set heading)136を含む。いくつかの例示的な実施例では、第1時点126における設定飛行速度134及び設定飛行方位136は、複数の航空機109の飛行計画から取得することができる。いくつかの例示的な実施例では、第1時点126における設定飛行速度134及び設定飛行方位136は、複数の航空機109のコントローラから取得することができる。
【0026】
いくつかの例示的な実施例において、測定値112は、観測飛行速度(observed speed)138及び観測飛行方位(observed heading)140を含む。観測飛行速度138及び観測飛行方位140は、地域104の地面(ground)142に対して相対的に特定される。いくつかの例示的な実施例では、観測飛行速度138及び観測飛行方位140は、複数の航空機109のGPS受信機120を用いて特定される。
【0027】
いくつかの例示的な実施例において、風速算出部108は、ベクトル合成、複数の航空機109の設定飛行速度134、複数の航空機109の設定飛行方位136、複数の航空機109の観測飛行速度138、及び、複数の航空機109の観測飛行方位140を用いて、風ベクトル111を特定するよう構成されている。
【0028】
風ベクトル111は、第1時点126における地域104内の微視的風について特定される。風ベクトル111は、第1時点126における複数の航空機109の位置130でのベクトルである。風ベクトル111は、システム102のデータベース144に格納される。
【0029】
データベース144は、粗間隔予報146も格納している。粗間隔予報146は、地域104についての予報である。図示の通り、粗間隔予報146には、第1時点126の粗間隔予報148、及び、第2時点152の粗間隔予報150が含まれる。
【0030】
データベース144の情報は、リアルタイム風況分析装置154に提供される。データベース144の情報は、リアルタイム風況分析装置154によって、地域104の3次元モデル156の修正に利用される。例えば、第1時点126の風ベクトル111及び第1時点126の粗間隔予報148は、モデル修正システム(model training system)158に提供されて、3次元モデル156の修正に利用される。
【0031】
3次元モデル156は、地域104を表すモデルである。3次元モデル156は、地域104の任意の特徴を含む。いくつかの例示的な実施例において、3次元モデル156は、建物を含む。いくつかの例示的な実施例において、3次元モデル156は、植生を含む。3次元モデル156のいくつかの特徴は、経時的に変化する。例えば、時間の経過にともなって、地域104に建物が建設されたり、取り壊されたりする可能性がある。他の例を挙げると、地域104における木や植物の葉は、秋冬の期間には存在しない可能性がある。さらに他の例を挙げると、地域104に仮設の構造物が一時的に設置され、撤去される可能性がある。
【0032】
モデル修正システム158は、データベース144からの入力に基づいて3次元モデル156を修正する。例えば、モデル修正システム158による3次元モデル156の修正は、粗間隔予報146と、風速算出部108によって特定されるとともに粗間隔予報に関連づけられた風ベクトルと、に基づいて行われる。一実施例では、モデル修正システム158による3次元モデル156の修正は、粗間隔予報146のうちの粗間隔予報148と、風速算出部108によって特定されるとともに粗間隔予報148に関連づけられた風ベクトル111と、に基づいて行われる。3次元モデル156は、地域104内の建物や植生の変化など、地域104における変化を加味して修正される。
【0033】
データベース144の情報は、3次元風況マップ作成部160により、地域104内の微視的風を示す3次元風況マップの作成に利用される。3次元風況マップ作成部160は、データベース144からの入力と3次元モデル156とを利用して、3次元風況マップを作成する。
【0034】
例示的な実施例では、3次元風況マップ作成部160は、第1時点126における3次元風況マップ162を作成する。3次元風況マップ162は、「リアルタイム」あるいは現状風況マップともいう。3次元風況マップ162は、補間風ベクトル164を含む。補間風ベクトル164は、地域104内の格子点に関連付けられている。補間風ベクトル164は、3次元格子166に配列されたベクトルである。補間風ベクトル164は、3次元格子166における地域104内の格子点に関連付けられている。地域104の3次元風況マップ162は、風ベクトル111に基づく補間風ベクトル164を含んで作成される。
【0035】
3次元格子166は、水平と垂直の両方向に延びる格子である。3次元格子166によれば、位置が経度/緯度/高度によって明確に定義される。風ベクトル111の位置130は、複数の航空機109に割り当てられた運航及び飛行経路に基づいて、地域104全体に分散されている。風ベクトル111を3次元格子166などの格子に合わせて適合化(tailoring)することで、風ベクトル111がモデル修正システム158による修正に利用可能なものになる。適合化プロセスとは、風ベクトル111の間隔を補間して、3次元格子166の各格子点での補間風ベクトル164を算出する処理である。いくつかの例示的な実施例において、補間風ベクトル164などの風ベクトルは、水平方向のスケールで各格子点について算出される。いくつかの例示的な実施例において、補間風ベクトル164などの風ベクトルは、水平方向のスケールに加えて、異なる高度で各格子点について算出される。
【0036】
3次元格子166における各位置における補間風ベクトル164は、補間によって特定することができる。この結果、補間風ベクトル164には、3次元格子166の各座標点における風速が含まれる。これが、3次元格子166のすべての点について実行される。
【0037】
他の実施例では、3次元風況マップ作成部160は、3次元風況予測マップ168を作成する。3次元風況予測マップ168は、第2時点152についての予測風ベクトル170のマップである。第2時点152は、将来の時点である。第2時点152は、第1時点126より後の時点である。
【0038】
予測風ベクトル170は、第2時点152における3次元格子166の各点の風ベクトルである。図示の通り、第1時点126の3次元風況マップ162と第2時点152の3次元風況予測マップ168は、同じ3次元格子、つまり3次元格子166を有する。予測風ベクトル170は、第2時点152の3次元モデル156及び粗間隔予報150を用いて特定される。
【0039】
飛行計画作成部110は、3次元風況マップ作成部160によって作成された3次元風況マップを用いて飛行計画を作成する。いくつかの例示的な実施例では、飛行計画作成部110は、第1時点126の3次元風況マップ162を用いて飛行計画を作成する。いくつかの例示的な実施例では、飛行計画作成部110は、第2時点152の3次元風況予測マップ168などの、将来の時点の3次元風況予測マップを用いて、飛行計画を作成する。
【0040】
いくつかの例示的な実施例において、飛行計画作成部110は、離陸前に新たな飛行計画を作成する。例えば、飛行計画作成部110は、無人航空機116の飛行計画114を、無人航空機116の離陸前に作成する。いくつかの例示的な実施例において、飛行計画作成部110は、無人航空機の飛行中に、修正飛行計画を作成する。例えば、飛行計画作成部110は、無人航空機116が地域104を現に飛行する間に、無人航空機116の修正飛行計画172を作成する。
【0041】
飛行計画114は、地域104内の微視的風を考慮したものである。飛行計画114は、無人航空機116又は貨物174の少なくとも一つについて所望のパラメータを考慮したものである。例えば、飛行計画114は、無人航空機116の燃料効率、乱気流、最大高度、最高速度、無人航空機116の寸法形状、その他のパラメータ、貨物の種類、又は、その他の所望のパラメータのうちの少なくとも一つを考慮したものである。
【0042】
いくつかの例示的な実施例において、飛行計画作成部110は、無人航空機116の貨物174の最大許容乱気流178を特定し、無人航空機116が遭遇する乱気流が最大許容乱気流178を下回るように飛行計画114を作成するよう構成されている。いくつかの例示的な実施例において、飛行計画作成部110は、無人航空機116の貨物174の配達期限180を特定し、無人航空機116が配達期限180までに貨物174を配達されるように飛行計画114を作成するよう構成されている。
【0043】
いくつかの例示的な実施例では、飛行計画作成部110は、将来の時点における地域104の3次元風況予測マップ168を用いて、飛行計画114を作成するよう構成されている。いくつかの例示的な実施例では、3次元風況マップ作成部160は、3次元モデル156と将来の時点の地域104の粗間隔予報とを用いて、将来の時点における地域104の3次元風況予測マップを作成するよう構成されている。例えば、3次元風況マップ作成部160は、3次元モデル156と第2時点152の地域104の粗間隔予報150を用いて、第2時点152における地域104の3次元風況予測マップ168を作成するよう構成されている。
【0044】
いくつかの例示的な実施例において、モデル修正システム158は、3次元モデル156を継続的にチェックするよう構成されている。例えば、モデル修正システム158は、適切な出力を新たな入力として受け取っているか確認する。モデル修正システム158は、追加で特定された風ベクトル176及び受信された地域104の粗間隔予報146を用いて、地域104の3次元モデル156を調整及び更新するよう構成されている。
【0045】
システム102は、飛行計画を複数の航空機109に伝達するよう構成された通信システム182を含む。通信システム182は、飛行計画114を無人航空機116に伝達する。
【0046】
システム102の稼働中、例えば、風ベクトル111などの、リアルタイムの風測定値/レポートは、先ず、(例えば、国立気象局からの)対応する粗間隔風況予報とマッチングされる。例えば、午後3時の風況は、午後3時の風況予報とマッチングされる。いくつかの例示的な実施例において、予報は、その予報が有効となる時刻(valid time)の前に発表される。例えば、午後1時に発表される予報は、午後3時に有効になる。
【0047】
マッチング後、風ベクトル111を粗間隔予報148とマッチングして形成されたデータの組(instance pair)は、データベース144に保存される。データの組は、後に、例えば、リアルタイム風況分析装置154において、モデル修正システム158などにより行われるリアルタイム予測モデル/機械学習アルゴリズムトレーニング(predictive real-time model/machine learning algorithm training)に利用される。いくつかの例示的な実施例では、新たな粗間隔予報が到着すると、これらアルゴリズムを使用して、将来の風況の3次元ビューが予測される。リアルタイム風況分析装置154は、他にも、現時点/ライブ/リアルタイムの風速の3Dビューを出力してもよい。これら2つの出力は、下の説明において、飛行計画を「即座に」、つまり、現在の生の微視的風の状態に基づいて作成するために、あるいは、予測された微視的風の状態に基づいて将来の飛行計画を作成するために利用される。
【0048】
任意の時点tにおいて、風ベクトル111は、地域104内に位置する複数の航空機109を用いて特定され、この情報がリアルタイム風況分析装置154に中継される。情報が到達すると、設定された格子である3次元格子166上の位置に沿った補間により、補間風ベクトル164が特定される。補間を行うことにより、3次元格子166の各座標点において有効な補間風ベクトル164を知ることができる。これは、3次元格子166のすべての点に対して実行される。この時点で新たな粗間隔予報が利用可能になれば、これを3次元風況マップ162とマッチングして、データベース144に保存する。
【0049】
3次元風況マップと粗間隔予報とのマッチング後、マッチング結果がデータベースからリアルタイム風況分析装置154に転送される。マッチング結果、即ち、「データの組」は、モデル修正システム158における機械学習アルゴリズムのトレーニングに繰り返し利用される。データストリームを用いてアルゴリズムのトレーニングをリアルタイムで実現するラムダアーキテクチャ(Lambda architecture)を採用してもよい。
【0050】
いくつかの例示的な実施例では、新たな粗間隔予報を受け取ると、リアルタイム風況分析装置154を用いて、3次元風況予測マップ168などの3次元風況予測マップが作成される。将来の時点t2における風況の値を予測した新たな粗間隔予報が届くと、この予報が機械学習アルゴリズムに適用されて、時点t2に有効な地域104内の3次元風況予測マップ168の予測が生成される。これも、当該装置の出力と同様であり、地域104内を飛行する無人航空機の飛行計画を作成する飛行計画作成部110への入力となる。
【0051】
リアルタイム風況分析装置154は、ハードウェア又はソフトウェアの少なくともいずれかで実現される。図示の通り、リアルタイム風況分析装置154は、コンピュータシステム184において実現されている。図示の通り、コンピュータシステム184は、地域104内には配置されていない。ただし、他の例示的な実施例では、コンピュータシステム184が地域104内に配置されていてもよい。
【0052】
本明細書において、「の少なくとも一つの」という表現がアイテムの列挙とともに用いられている場合、列挙されたアイテムのうちの一つ以上を様々な組み合わせで利用可能であることを意味しており、列挙された各アイテムのうちの一つのみが必要な場合もありうる。換言すると、「の少なくとも一つ」は、列挙されたアイテムを任意の組み合わせで、任意の数だけ利用可能であることを意味している。ただし、列挙したアイテムのすべてを必要とするとは限らない。ここでいうアイテムは、例えば、特定のオブジェクト、物、又は、カテゴリーである。
【0053】
例えば、「アイテムA、アイテムB、又は、アイテムCの少なくとも一つ」は、限定するものではないが、アイテムAか、アイテムAとアイテムBか、又は、アイテムBを含みうる。この例は、アイテムAとアイテムBとアイテムC、又は、アイテムBとアイテムCをさらに含みうる。当然のことながら、これらのアイテムのあらゆる組み合わせが存在しうる。他の例では、「の少なくとも一つ」は、限定するものではないが、例えば、2つのアイテムAと、一つのアイテムBと、10のアイテムCであってもよいし、4つのアイテムBと7つのアイテムCであってもよいし、あるいは、他の適当な組み合わせであってもよい。
【0054】
図1に示す例示的な環境100は、例示的な実施形態を実現可能な態様に対する物理的な限定やアーキテクチャの限定を意図するものではない。記載したコンポーネントに別のコンポーネントを追加したり、別のコンポーネントで置き換えたりすることができる。いくつかのコンポーネントは、不要であってもよい。また、ブロックは、いくつかの機能コンポーネントを表す。例示的な実施形態において実施する際には、1以上のブロックを結合したり、分割したり、結合及び分割して異なるブロックを構成したりすることもできる。
【0055】
例えば、風速算出部108は、複数の航空機109以外の機器又は構造物からも追加の測定値を受信することもできる。いくつかの例示的な実施例では、風速算出部108は、測候所188から測定値186を受信する。このような例示的な実施例の場合、風速算出部108は、複数の航空機109からの測定値112、及び、測候所188からの測定値186を使って、地域104内の風ベクトル111を特定するよう構成されている。
【0056】
測候所188は、地域104内の定位置に配置されている。各測候所188の緯度、経度、及び、高度は不変である。いくつかの例示的な実施例では、各測定値186は、当該測定値についての緯度、経度、及び、高度を含む。他の例示的な実施例では、各測定値186は、測候所188のうちの該当する測候所の識別番号を含む。風速算出部108は、この識別番号を、該当する測候所の緯度、経度、及び、高度と関連づける。
【0057】
次に、
図2は、例示的な実施形態による、地域内で確認された複数の航空機の位置を2次元で示す図である。地域200は、
図1に示した地域104の物理的な実施態様である。図示の通り、地域200は、郊外地域又は市街地域の少なくとも一つを含む。図示の通り、地域200は市を含む。
【0058】
地域200は、マーカ202、マーカ204、マーカ206、及び、マーカ208の間に位置する。例示的な実施例によっては、地域200は、0.5度の水平方向分解能の一つの格子内に収まる。このような例示的な実施例では、マーカ202、マーカ204、マーカ206、及び、マーカ208は、0.5°の水平方向分解能の一つの格子を区画するものである。各座標点であるマーカ202、マーカ204、マーカ206、及び、マーカ208における予報は存在するが、これらの間の位置における風の状態は未知である。
【0059】
無人航空機のオペレータが地域200の市内の家庭に荷物を配達しようとする場合、オペレータにとっては、市内の風ベクトル及び風向を把握することが望ましい。市内の風ベクトル及び風向を用いれば、オペレータは、より適切な航路を計画することが可能になる。例えば、オペレータは、市内の風ベクトル及び風向を用いて、乱気流との遭遇が低減されるように飛行計画を立てることができる。他の例では、オペレータは、市内の風ベクトル及び風向を用いて、燃料消費が低減されるように飛行計画を立てることができる。さらに他の例では、オペレータは、市内の風ベクトル及び風向を用いて、飛行時間が短縮されるように飛行計画を立てることができる。
【0060】
図示のように、地域200には、複数の点210が含まれている。これらの点210は、地域200内を飛行中の航空機の位置を表す。航空機は、
図1に示す複数の航空機109の物理的な実施態様の例である。より具体的には、航空機は、
図1に示す複数の無人航空機106の物理的な実施態様の例である。なお、複数の点210は複数の無人航空機であるとして説明しているが、例示的な実施例によっては、複数の点210は、無人航空機の代わりに、あるいは、これに加えて、任意の数の従来の航空機を表してもよい。また、複数の点210を2次元の設定で説明しているが、3次元の設定の場合、複数の点210は、複数の無人航空機のそれぞれの高度も含む。
【0061】
ビュー212は、例えば、
図1に示す第1時点126などの、第1時点における地域200のスナップショット・ビュー(snapshot view)である。複数の点210は、第2時点においては、地域200内の異なる位置に移動している(図示せず)。
【0062】
いくつかの例示的な実施例において、ビュー212は、多数の無人航空機を使用するオペレータの無人航空機が存在する例を示している。これらの例示的な実施例では、無人航空機は、市内で貨物を配達する業者によって運航されている。いくつかの例示的な実施例では、ビュー212は、いくつかの業者により運航されている無人航空機が存在する例を示している。
【0063】
地域200内で運航されている無人航空機が複数あるので、地域200を好適に網羅することが可能である。複数の点210で表される無人航空機に接続されたセンサが、地域200内の風ベクトルを特定するための測定値を生成する。
【0064】
次に、
図3は、例示的な実施形態による、地域内で確認された複数の航空機の位置を3次元で示す図である。ビュー300は、
図2に示す地域200の3次元ビューである。
【0065】
ビュー300に示されるように、マーカ202は、地表304から上向きの方向306に積み重ねられた一連のマーカ302のうちの一つである。ビュー300に示されるように、マーカ204は、地表304から上向きの方向306に積み重ねられた一連のマーカ308のうちの一つである。ビュー300に示されるように、マーカ206は、地表304から上向きの方向306に積み重ねられた一連のマーカ310のうちの一つである。ビュー300に示されるように、マーカ208は、地表304から上向きの方向306に積み重ねられた一連のマーカ312のうちの一つである。
【0066】
ビュー300では、複数の点210は、3次元空間に配置されている。複数の点210は、地域200内を飛行中の無人航空機の位置を示し、
図1に示す高度132などの高度314も示している。なお、複数の点210を複数の無人航空機として説明しているが、例示的な実施例によっては、複数の点210は、無人航空機の代わりに、あるいは、これに加えて、任意の数の従来の航空機を表すものでもよい。
【0067】
次に、
図4は、例示的な実施形態による、地域内において特定された風ベクトルを3次元で示す図である。ビュー400では、複数の点210の代わりに、風ベクトル402が示されている。各風ベクトル402は、
図1に示す風速算出部108などの風速算出部によって特定された風ベクトルを示す。各風ベクトル402は、風速及び風向を含む。各風ベクトル402は、複数の点210のうちの一つの点に関連づけられている。
【0068】
次に、
図5は、例示的な実施形態による無人航空機を、例示的なベクトルとともに示す図である。無人航空機500は、
図1に示す複数の無人航空機106の物理的な実施態様の例である。
【0069】
ビュー502では、無人航空機500は、無人航空機500により選択された飛行速度及び飛行方位を表すベクトル504を有する。無人航空機500により選択された速度及び飛行方位は、無人航空機500が従う飛行計画の一部であってもよい。
【0070】
ビュー502では、無人航空機500は、対地飛行速度及び飛行方位を表すベクトル506を有する。ベクトル506が表す飛行速度及び飛行方位は、GPSシステムを用いて特定することができる。
【0071】
ベクトル508は、ベクトル合成を用いて特定される。ベクトル508は、風速及び風向を表す。
【0072】
ベクトル508が表す風速及び風向は、
図1に示す風速算出部108によって、ベクトル合成を用いて特定することができる。ベクトル508が表す風速及び風向は、
図1に示すデータベース144に格納することができる。ベクトル508が表す風速及び風向は、
図1に示す3次元モデル156の構築に利用することができる。
【0073】
次に、
図6は、例示的な実施形態によって、ある地域内の設定格子点を2次元で示す図である。図示のとおり、ビュー600では、地域200は、マーカ202、マーカ204、マーカ206、及び、マーカ208によって区切られている。ビュー600では、設定格子点602は、地域200内に配置されている。図示の通り、設定格子点602は、地域200内に等間隔で配置されている。
【0074】
次に、
図7は、例示的な実施形態による、地域内の設定格子点を3次元で示す図である。
【0075】
ビュー700は、
図2に示す地域200を設定格子点602と併せて示す3次元ビューである。ビュー700に示されるように、設定格子点602は、3次元格子702を構成する。3次元格子702は、方向704、方向706、及び、方向708に沿って等間隔の格子である。
【0076】
設定格子点602は、3次元格子702を構成する。3次元格子702は、水平と垂直の両方向に延びる格子である。3次元格子702によれば、位置が経度/緯度/高度によって明確に定義される。
【0077】
次に、
図8は、例示的な実施形態による、地域内の設定格子点に補間された風ベクトルを2次元で示す図である。ビュー800では、設定格子点602の代わりに、補間風ベクトル802が示されている。
【0078】
各補間風ベクトル802は、
図1に示す3次元モデル156などの3次元モデルによって特定された風ベクトルを表す。各補間風ベクトル802は、風速及び風向を含む。各補間風ベクトル802は、設定格子点602に関連付けられている。なお、補間風ベクトル802は、単に水平方向のスケールの2次元ビューで示されているが、補間風ベクトル802は高度ごとに算出されてもよい。
【0079】
次に、
図9は、例示的な実施形態による、無人航空機とともに、初期の飛行計画及び微細風況を考慮した新たな飛行計画を2次元で示す図である。無人航空機900は、地域902内で運航される。この例示的な実施例では、地域902には建物904が含まれている。この例示的な実施例では、無人航空機900には目的地906が定められている。経路908は、初期の計画の経路である。経路908は、所望の方法を用いて決定することができる。いくつかの例示的な実施例では、経路908は、風のない最速経路である。いくつかの例示的な実施例では、経路908は、最短の経路である。
【0080】
経路910は、
図1に示す修正飛行計画172など、修正された飛行計画である。この例示的な実施例では、経路910は、地域902内の風ベクトル912に基づいて作成される。いくつかの例示的な実施例において、風ベクトル912はリアルタイムで特定される。いくつかの例示的な実施例において、風ベクトル912がリアルタイムで特定される場合、風ベクトル912は、無人航空機によって直接測定される。例えば、風ベクトル912は、
図1に示す風測定値128の例である。いくつかの例示的な実施例では、風ベクトル912がリアルタイムで特定される場合、風ベクトル912は、
図1に示す観測飛行速度138、及び、観測飛行方位140などの観測飛行速度、及び、観測飛行方位から間接的に特定される。いくつかの例示的な実施例では、無人航空機900は、風ベクトル912の測定に関与する。いくつかの他の例示的な実施例では、無人航空機900は、風ベクトル912の測定に関与しない。
【0081】
他の例示的な実施例では、風ベクトル912は、特定された風ベクトルを補間したものである。これらの例示的な実施例では、風ベクトル912は、
図1に示す補間風ベクトル164の例である。特定された風ベクトルを補間して風ベクトル912を得る場合、風ベクトル912は、地域902内で取得された測定値を用いて特定された風ベクトルを用いて補間される。いくつかの例示的な実施例では、測定値は、無人航空機900以外の無人航空機によって取得することもできる。いくつかの例示的な実施例では、風ベクトル912の形成に用いられる地域902内の測定値の少なくとも一つの測定値は、無人航空機900により取得される。
【0082】
さらに他の例示的な実施例において、風ベクトル912は、
図1に示す3次元風況予測マップ168などの3次元風況予測マップによって生成される。これらの例示的な実施例では、風ベクトル912は、
図1に示す粗間隔予報150などの粗間隔予報が、
図1に示す3次元風況マップ作成部160などの3次元風況予測マップ作成部に供給されると、特定される。
【0083】
経路910は、目的地906への飛行時間が短縮されるように生成することができる。経路910は、無人航空機900が乱気流に遭遇することが少なくなるように生成することができる。経路910は、無人航空機900の燃料効率が高くなるように生成することができる。
【0084】
次に、
図10は、例示的な実施形態による、無人航空機の所望の経路と実際の経路との差分を示す図である。経路1000は、無人航空機1002の所望の経路である。無人航空機1002は、
図1に示す複数の無人航空機106のうちの一つの無人航空機の物理的な実施態様の例である。風ベクトル1004は、他の複数の無人航空機には未だ認識されていない風の変化を表す。無人航空機1002は、経路1000に沿った飛行を試みるが、風ベクトル1004のため、実際には経路1006に沿って飛行する。なお、経路1000及び経路1006は無人航空機1002のものとして記載されているが、経路は、従来の航空機について生成することもできる。
【0085】
風ベクトル1004は、無人航空機1002からの測定値としてシステム102に報告される。いくつかの例示的な実施例では、風ベクトル1004の測定値は、無人航空機1002のセンサ(図示せず)を用いて直接測定した値である。いくつかの例示的な実施例では、測定値は、経路1000及び経路1006を直接測定することで、風ベクトル1004を間接的に測定した値である。
【0086】
この例示的な実施例では、無人航空機1002は、飛行中である。飛行中に遭遇した風ベクトル1004を打消すように、無人航空機1002は経路1000へ復帰しようとする。この飛行の間、無人航空機1002は、風ベクトル1004に関連する測定値を送出するので、他の無人航空機(図示せず)は、風ベクトル1004に遭遇する前に、風ベクトル1004を予測し、相殺することができる。いくつかの例示的な実施例において、無人航空機1002が取得した測定値は、他の無人航空機(図示せず)が風ベクトル1004を回避する経路を特定するために利用することができる。
【0087】
図2~
図10に示す様々なコンポーネントは、
図1に示すコンポーネントと組み合わせたり、
図1に示すコンポーネントとともに用いたり、あるいは、その両方が可能である。加えて、
図2~
図10に示すコンポーネントのうちのいくつかは、
図1にブロックで示したコンポーネントを物理的な構造として実現した例である。
【0088】
次に、
図11A及び
図11Bは、例示的な実施形態による、地域内で特定された風ベクトルに基づいて、当該地域で航空機を飛行させる方法のフローチャートである。方法1100は、
図1のシステム102を用いて実現することができる。方法1100は、
図1に示す風ベクトル111、補間風ベクトル164、又は、予測風ベクトル170などの風ベクトルを特定するために用いられる。方法1100は、
図1に示す地域104内で無人航空機116を飛行させるために用いられる。方法1100は、
図2~
図4及び
図6~
図8に示す地域200において用いられる。方法1100は、
図5に示す無人航空機500を飛行させるために用いられる。方法1100は、
図9に示す経路910を計画するために用いられる。
【0089】
方法1100は、複数の航空機が地域を飛行する間、当該複数の航空機の高度測定値を収集する(処理1102)。いくつかの例示的な実施例では、地域は、0.5度の水平方向分解能の一つの格子内に収まる。いくつかの例示的な実施例では、地域は、郊外地域又は市街地域の少なくとも一つである。
【0090】
方法1100は、複数の航空機を用いて、地域内の風ベクトルを特定する(処理1104)。いくつかの例示的な実施例では、風ベクトルは、複数の航空機に搭載されたセンサを用いて、地域内で直接に特定される。これらの例示的な実施例では、風ベクトルは、複数の航空機に搭載されたセンサで取得した風測定値を用いて特定される。
【0091】
いくつかの例示的な実施例において、風ベクトルは、複数の航空機に搭載されたセンサを用いて、地域内で間接的に特定される。これらの例示的な実施例では、方法1100は、複数の航空機の設定飛行速度及び設定飛行方位を収集する(処理1106)。これらの例示的な実施例では、方法1100は、複数の航空機の観測飛行速度及び観測飛行方位も収集し、また、風ベクトルを特定することは、ベクトル合成、設定飛行速度、設定飛行方位、観測飛行速度、及び、観測飛行方位を用いて、地域内の風ベクトルを特定することを含む(処理1108)。
【0092】
方法1100は、特定した風ベクトルに基づいて、地域における航空機の飛行計画を作成する(処理1110)。いくつかの例示的な実施例では、航空機は、無人航空機である。いくつかの例示的な実施例では、航空機は、無人航空機であり、地域における航空機の飛行計画を作成することは、当該無人航空機の貨物について最大許容乱気流を特定することと、当該無人航空機が遭遇する乱気流が最大許容乱気流を下回るように飛行計画を作成することと、を含む(処理1112)。いくつかの例示的な実施例では、航空機は、無人航空機であり、地域における航空機の飛行計画を作成することは、当該無人航空機の貨物の配達期限を特定することと、当該無人航空機が貨物を配達期限までに配達されるように飛行計画を作成することと、を含む(処理1114)。
【0093】
いくつかの例示的な実施例では、地域における無人航空機の飛行計画を作成することは、当該無人航空機の飛行中に、当該無人航空機について修正飛行計画を作成することを含む(処理1116)。このような例示的な実施例では、修正飛行計画は、航空機、又は、当該航空機が運搬する貨物の少なくとも一方についての所望のパラメータを考慮して作成される。
【0094】
方法1100は、飛行計画に従って、無人航空機を地域内で飛行させる(処理1118)。地域内で無人航空機を飛行させるため、飛行計画は、
図1に示すリアルタイム風況分析装置154などのリアルタイム風況分析装置に機能的に接続された通信システムによって、無人航空機に伝達される。
【0095】
いくつかの例示的な実施例では、方法1100は、前記特定した風ベクトルに基づいて特定された補間風ベクトルを用いて、地域の3次元風況マップを作成する(処理1120)。いくつかの例示的な実施例では、方法1100は、将来の時点における地域の粗間隔予報を受信する(処理1122)。これらの例示的な実施例において、方法1100は、地域の3次元モデルと粗間隔予報とを用いて、将来の時点における地域の3次元風況予測マップを作成し、また、地域における飛行計画を作成することは、将来の時点における地域の3次元風況予測マップを用いて飛行計画を作成することを含む(処理1124)。
【0096】
次に、
図12は、例示的な実施形態による、地域内で無人航空機を飛行させる方法のフローチャートを示す図である。方法1200は、
図1のシステム102を用いて実現することができる。方法1200は、
図1に示す風ベクトル111、補間風ベクトル164、又は、予測風ベクトル170などの風ベクトルを特定するために用いられる。方法1200は、
図1に示す地域104内で無人航空機116を飛行させるために用いられる。方法1200は、
図2~
図4及び
図6~
図8に示す地域200において用いられる。方法1200は、
図5に示す無人航空機500を飛行させるために用いられる。方法1200は、
図9に示す経路910を計画するために用いられる。
【0097】
方法1200は、複数の航空機を用いて、第1時点における地域内の風ベクトルを特定する(処理1202)。いくつかの例示的な実施例では、風ベクトルは、複数の航空機に搭載されたセンサを用いて、地域内で直接に特定される。これらの例示的な実施例では、風ベクトルは、複数の航空機に搭載されたセンサから取得した風測定値を用いて特定される。
【0098】
いくつかの例示的な実施例では、風ベクトルは、複数の航空機に搭載されたセンサの測定値を用いて、地域内で間接的に特定される。いくつかの例示的な実施例では、第1時点における地域内の風ベクトルを特定することは、ベクトル合成、地域内の複数の航空機の設定飛行速度、複数の航空機の設定飛行方位、複数の航空機の観測飛行速度、及び、複数の航空機の観測飛行方位を用いて、風ベクトルを特定することを含む(処理1203)。
【0099】
方法1200は、風ベクトルに基づく補間風ベクトルを含む、地域の3次元風況マップを作成する(処理1204)。方法1200は、3次元風況マップを、第1時点における地域の粗間隔予報と関連付ける(処理1206)。方法1200は、第1時点における地域の粗間隔予報に関連づけられた3次元マップで、地域の3次元モデルを修正する(処理1208)。方法1200は、第2時点における地域の粗間隔予報を受信する(処理1210)。方法1200は、第2時点における地域の3次元風況予測マップを作成する(処理1212)。方法1200は、第2時点における地域の3次元風況予測マップに基づいて、航空機を飛行させる(処理1214)。
【0100】
いくつかの例示的な実施例では、第2時点における地域の3次元風況予測マップに基づいて航空機を飛行させることは、当該航空機の飛行中に、飛行計画を修正することを含む(処理1216)。いくつかの例示的な実施例では、第2時点における地域の3次元風況予測マップに基づいて航空機を飛行させることは、当該航空機の飛行中に、新たな飛行計画を作成することを含む(処理1218)。
【0101】
記載した異なる実施形態におけるフローチャートやブロック図は、例示的な実施形態の装置及び方法を実施可能ないくつかの態様のアーキテクチャ、機能、及び、処理を示している。この意味で、フローチャート又はブロック図における各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、及び/又は、処理やステップの一部を表す場合がある。
【0102】
なお、いくつかの代替的な実施態様において、ブロックで示した機能は、図示の順とは異なる順で実行されてもよい。例えば、関連する機能によっては、連続ブロックとして示した2つのブロックが実質的に同時に実行されてもよいし、あるいは、これらブロックが逆の順序で実行されてもよい。また、フローチャート又はブロック図に記載のブロックに加えて、他のブロックが追加されてもよい。
【0103】
いくつかの例示的な実施例では、方法1100のブロックのすべてが実行されない場合がある。例えば、処理1106、処理1108、処理1120、又は、処理1122の少なくとも一つは任意である。いくつかの例示的な実施例では、方法1200のブロックのすべてが実行されない場合がある。例えば、処理1216又は処理1218の少なくとも一つは任意である。
【0104】
例示的な実施例は、4次元の気象モデルを構築する手段を提供する。例示的な実施例の4次元気象モデルによれば、水平方向及び垂直方向の風を予測することが可能になる。いくつかの例示的な実施例では、4次元気象モデルによれば、水平方向及び垂直方向の障害(disturbance)又は乱気流の予測が可能になる。
【0105】
例示的な実施例では、粗間隔の「マクロ」予報に依存するのではなく、限られた3次元空間における微視的レベルの風について、より詳細なイメージが生成される。このような風の予測は、任意の時間だけ先行して行うことが可能である。例示的な実施例による風況予報は、より細かな格子間隔で得られるので、この風況を利用すれば、より現実的な風況及び降水状況を考慮した飛行計画を作成することができる。
【0106】
より現実的な風況及び降水状況を考慮することにより、多数のドローンを有するオペレータは、突発的に運航が混乱するような事態を少なくすることができる。突発的な運航の混乱を低減することで、オペレータは信頼性を高め、よって、顧客満足を高めることができる。この方法は、「IoT(Internet of Things)」システムに依り、具体的には、オペレータが自身で所有するドローン、及び、入手可能な気象状況の測定値に依る方法である。
【0107】
ドローンの飛行距離は民間航空機に比べてかなり短いので、従来の気象予報では大まかすぎて、気象の詳細が分からない。例示的な実施例によれば、予め画定された限られた空間(例えば、ドローンオペレータが活動及び商品の配達を行う市)における風況がモデル化されるので、このギャップを埋めることができる。
【0108】
例示的な実施例には、主に次のような2つの利点がある。一つ目は、ドローンオペレータは、3次元の区画で現在の風況を判断することができる。現在の風況を判定することは、現在の風の状態を把握する助けとなる。さらに、例示的な実施例によれば、予測した風況を3次元で示すビューの生成が可能である。エリア内のドローンの飛行では、NWSによる区画の粗い予報だけに頼る場合に比べ、分解能が高い方が有用である。これにより、ドローンの飛行計画を、実際の軌道、及び/又は、所定の飛行時間により近づけることができ、よって予測性を高めることができる。ドローンオペレータは、顧客への商品配送をより正確に予測することで、より正確なサービスを顧客に提供することが可能になる。
【0109】
また、微視的レベルの風についての情報が得られることにより、ドローンオペレータは、よりエネルギー効率の高い経路で飛行させることが可能になる。この結果、エネルギー消費の低減が、ひいては、コストの低減が可能になる。
【0110】
加えて、例示的な実施例は、乱気流の測定に有用である。乱気流を4次元の位置に関連付けることは、ドローンの飛行計画に有用である。飛行中に遭遇する障害が多すぎると、コスト効率が悪くなる。加えて、飛行中に遭遇する障害が多すぎると、ドローンで配送中の貨物によっては、貨物が損傷する可能性がある。
【0111】
一般的に、許容可能な障害レベルは、搬送する負荷に連動する。負荷によっては一定レベルの乱気流しか許容できず、それ以外の場合は、貨物が損傷することがある。この概念を「エアタクシー」に適用する場合は、経路の決定には、移動時間の数値に、乗客の快適さを組み合わせて考慮することができる。一般に、リアルタイムで行うリプランニング(live re-planning)がサポートされており、この手法を、運搬対象に関する許容パラメータが既知である無人航空機に関連付けることが可能である。
【0112】
格子の粗い風況に依存する場合に比べ、より微細なスケール/分解能の風況を把握することは効果的であり、実際の風速状況をより精度よく反映させることができる。大型の航空機の長距離の航行においては、その大きさ及び速度に鑑みると、分解能が高いことによって得られる利益は限定的である。しかしながら、無人航空機(UAV)などの小型の航空機、又は、民間航空機よりもかなり小型な「エアタクシー」においては、運航範囲もかなり小さく、飛行速度も遅いので、高分解能の気象情報は非常に有益である。
【0113】
様々な例示的な実施形態の説明は、例示及び説明のために提示したものであり、すべてを網羅することや、開示した形態での実施に限定することを意図するものではない。多くの改変や変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。なお、異なる例示的な実施形態は、他の望ましい例示的な実施形態とは異なる特徴をもたらしうる。上述した1以上の実施形態は、実施形態の原理、及び、実際の用途を最も的確に説明するとともに、想定した特定の用途に適した種々の改変を加えた様々な実施形態のための開示を当業者が理解できるようにするために、選択し、記載したものである。