(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A47C7/40
(21)【出願番号】P 2018210904
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018190577
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】河本 誠太郎
(72)【発明者】
【氏名】春田 大輔
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-314437(JP,A)
【文献】特開平11-137363(JP,A)
【文献】実開昭60-140454(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0195882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00- 7/74
B60N 2/00- 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座と背もたれ、
キャスタ及び脚支柱を含む脚装置、前記脚支柱に固定されると共に前記座を支持するベース体、及び、前記ベースに連結されて前記背もたれの後ろに配置されたバックフレームを備え
て、前記バックフレームに前記背もたれが取り付けられている椅子であって、
前記バックフレーム
は、当該バックフレームの上端部を構成して前記背もたれの上端部が取り付くアッパサポート
と、前記アッパサポートの下方に位置した固定部とを有して、前記アッパサポートは、
前記固定部に対して水平旋回し得るように取付けられて
おり、
前記背もたれの下端は前記バックフレームの固定部に取り付けられて、前記アッパサポートの水平旋回に追従して前記背もたれが変形する構成において、
前記アッパサポート
と前記固定部との境界部が筒状の弾性カバーで覆われており、
前記弾性カバーは、前記アッパサポートと
固定部との両方に対して連結されている、
椅子。
【請求項2】
座と背もたれ、及び、前記背もたれの左右中間部の後ろに配置された背支柱を備えて、
前記背支柱の上端部に、前記背もたれの上端部が取り付くアッパサポートを水平旋回し得るように取付けており、
前記アッパサポートと前記背支柱との境界部が、前記アッパサポートと前記背支柱との両方に連結された筒状の弾性カバーで覆われている椅子であって、
前記背支柱の上端部に、前記アッパサポートが、上下長手で円形のロッドを軸受け部で回転自在に保持している軸支手段を介して水平旋回可能に連結され
て、
前記アッパサポートから前記ロッドが下向きに突出している一方、
前記背支柱
は、前記ロッドを回転自在に保持する軸受け部を有し
て、
前記ロッドは前記背支柱の上方において部分的に露出しており、
前記弾性カバーはエラストマ製であって、前記ロッドの露出部を囲っていると共に、外周面が前記
背支柱の略外周面と同一面を成すように形成されている、
椅子。
【請求項3】
前記弾性カバーの上端と下端との内部に上下の規制板がそれぞれ相対回転不能に保持されており、
前記上下の規制板のうち上規制板は、当該上規制板を上向き動させると嵌合する上係合部により、前記アッパサポートに対して相対回転不能に保持されている一方、
前記上下の規制板のうち下規制板は、当該下規制板を下向き動させると嵌合する下係合部により、前記背支柱の上端部に相対回転不能に保持されており、
前記上下の係合部は前記弾性カバーの内部に隠れている、
請求項2に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子は様々な形態があり、オフィスで多用されている回転椅子は、キャスタを備えた脚装置、座、背もたれを主要要素としており、オプション品として肘掛け装置やヘッドレスト、ハンガーなどが取付けられている。
【0003】
また、回転椅子では、背もたれが後傾可能なロッキング機能を備えていることが多い。このようなロッキング機能により、着座者は身体をリラックスさせて長時間の使用を継続することができる。
【0004】
椅子において快適性を保持する重要な要素は、背もたれのフィット性や当たりの柔らかさであり、そこで、背もたれの前面をクッション材で構成したり、メッシュ材で身体を支持したりしている。メッシュ材は、通気性に優れているため蒸れを防止できる利点もある。
【0005】
さて、着座者が背もたれにもたれる場合、上半身の中心線を背もたれの中心線に揃えているとは限らず、上半身を右又は左に倒した状態でもたれたり、背もたれにもたれつつ身体を捩じって後ろを向いたりすることがあるが、これらの場合、着座者のもたれ掛かりによる押圧力(体圧)は、背もたれの左側部又は右側部に強く作用する。
【0006】
そして、椅子の背もたれは、基本的には、着座者の押圧力によっては殆ど変形しない剛性を有していることが多いが、背もたれが剛性構造であると、着座者の身体が背もたれの左側部又は右側部に偏って当たった場合に、着座者の身体の一部が背もたれの一部に強く当たることになって、快適性が損なわれてしまう。
【0007】
そこで、着座者の身体が背もたれの左側部又は右側部に偏って当たった場合に、背もたれが着座者の押圧力によって曲がり変形(捩じれ変形)することを許容することにより、使用感を高めた椅子が提案されている。例えば、特許文献1,2には、背もたれを、三点支持(又は略三点支持)の状態でバックフレームに取り付けて、左右の上コーナー部を非支持状態にすることにより、着座者の押圧力によって背もたれの左側部又は右側部が後ろに曲がり変形することを許容する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】再公表WO2014/196630号公報
【文献】欧州特許公開0970639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2では、背もたれは着座者の押圧力によって曲がり変形(捩じれ変形)できるため、上半身を右又は左にずらして背もたれにもたれ掛かった場合に、背もたれが追従して変形する。従って、着座者の身体の動きを許容できると共に、身体に対する背もたれの当たりを柔らかくすることができる。その結果、快適性を向上できると云える。
【0010】
しかし、特許文献1,2では、背もたれの変形の程度は、専ら、背もたれの弾性力の程度に依存するため、バラツキが発生することは不可避であり、品質の安定性が必ずしも高くないと云える。
【0011】
また、特許文献1,2では、着座者の押圧力が掛かった部分は大きく曲がり変形できるが、着座者の押圧力が掛かった部分と反対側の部分が逆方向に変形するということは殆どないため、背もたれ全体としての追従性は必ずしも高くないと云える。
【0012】
本願発明は、このような現状を背景に成されたものであり、着座者の身体の動きに対する背もたれの変形の追従性が高い椅子を、より完成度が高い状態で提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、
「座と背もたれ、キャスタ及び脚支柱を含む脚装置、前記脚支柱に固定されると共に前記座を支持するベース体、及び、前記ベースに連結されて前記背もたれの後ろに配置されたバックフレームを備えて、前記バックフレームに前記背もたれが取り付けられている」
という椅子に関し、
「前記バックフレームは、当該バックフレームの上端部を構成して前記背もたれの上端部が取り付くアッパサポートと、前記アッパサポートの下方に位置した固定部とを有して、前記アッパサポートは、前記固定部に対して水平旋回し得るように取付けられており、
前記背もたれの下端は前記バックフレームの固定部に取り付けられて、前記アッパサポートの水平旋回に追従して前記背もたれが変形する」
という構成において、
「前記アッパサポートと前記固定部との境界部が筒状の弾性カバーで覆われており、
前記弾性カバーは、前記アッパサポートと固定部との両方に対して連結されている」
という特徴を有している。
【0014】
請求項2の発明は、
「座と背もたれ、及び、前記背もたれの左右中間部の後ろに配置された背支柱を備えて、
前記背支柱の上端部に、前記背もたれの上端部が取り付くアッパサポートを水平旋回し得るように取付けており、
前記アッパサポートと前記背支柱との境界部が、前記アッパサポートと前記背支柱との両方に連結された筒状の弾性カバーで覆われている椅子であって、
前記背支柱の上端部に、前記アッパサポートが、上下長手で円形のロッドを軸受け部で回転自在に保持している軸支手段を介して水平旋回可能に連結されて、
前記アッパサポートから前記ロッドが下向きに突出している一方、
前記背支柱は、前記ロッドを回転自在に保持する軸受け部を有して、
前記ロッドは前記背支柱の上方において部分的に露出しており、
前記弾性カバーはエラストマ製であって、前記ロッドの露出部を囲っていると共に、外周面が前記背支柱の略外周面と同一面を成すように形成されている」
という構成になっている。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2において、
「前記弾性カバーの上端と下端との内部に上下の規制板がそれぞれ相対回転不能に保持されており、
前記上下の規制板のうち上規制板は、当該上規制板を上向き動させると嵌合する上係合部により、前記アッパサポートに対して相対回転不能に保持されている一方、
前記上下の規制板のうち下規制板は、当該下規制板を下向き動させると嵌合する下係合部により、前記背支柱の上端部に相対回転不能に保持されており、
前記上下の係合部は前記弾性カバーの内部に隠れている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、アッパサポートはその下方の部位に対して水平旋回可能(水平回動可能)に保持されているため、着座者の押圧力が背もたれの右側部又は左側部に偏って作用した場合、背もたれを的確に変形させることができる。従って、背もたれの強度に多少のバラツキがあっても、着座者の身体の動きに追従させて、背もたれを的確に捩じれ変形させることができる。また、背もたれの下端部は水平旋回しないため、着座者の身体は安定的に保持される。
【0017】
また、背もたれが大きく捩じれ変形するため、着座者は、背中を背もたれにできるだけ広い範囲で密着させた状態で身体を捩じることができる。従って、背もたれに対する身体のフィット性を向上できる。
【0018】
このように、本願発明の椅子は従来にない優れた利点を有するが、アッパサポートが水平旋回する構成であるため、アッパサポートとその下方の部分との間に境界が現れることになり、長期にわたって使用しているうちに磨耗によって粉が発生して落下したり、境界部に隙間があると、人が指先を当てたときに皮膚が境界部に引き込まれたりする不具合が懸念される。
【0019】
これに対して本願発明では、境界部は弾性カバーで覆われているため、磨耗によって粉が発生しても、粉が外部に落下することはなくて美観の悪化を防止できる。また、指先の皮膚が境界部に引き込まれたりする不具合も解消して、高い安全性を確保できる。従って、品質の向上に大きく貢献できる。
【0020】
請求項2のように、アッパサポートにロッドを設けてこれを背支柱によって回転自在に保持する構成を採用すると、ロッドは強度を保持するに足りる長さを確保できるため、背支柱をできるだけ細くしてスリム化しつつ、必要な強度を確保できる。
【0021】
また、ロッドが露出部を有するため、例えば、背もたれや背支柱に寸法きバラ付きがあっても、露出部の上下長さが変化することにより、バラ付きを吸収できる。この面でも、品質の安定性に向上できる。そして、弾性カバーの外周面と背支柱の外周面とが同一面を成すように揃っているため、美観にも優れている。なお、請求項2の「同一面」とは、人が一瞥したときにほぼ同じ面として認識できる程度の状態を云う。従って、多少の段差が存在しても差し支えない。
【0022】
請求項2においては、弾性カバーは、その上端はアッパサポートに固定されて、下端は背支柱に固定されているのが好ましい。この場合の固定手段としてはビス止めが考えられるが、この場合は、ビスの頭が外部に露出するため、美観が損なわれるおそれがある。また、ビスをねじ込むのは面倒である。
【0023】
これに対して請求項3の構成を採用すると、弾性カバーは、上下の規制板を介してアッパサポート及び背支柱に相対回転不能に保持されるが、規制板と係合部は弾性カバーの内部に隠れているため、美観が悪化するようなことはない。また、規制板は係合部に対して嵌め込むだけでよいため、取付けもごく簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の椅子を示す図で、(A)は前方斜視図、(B)は後方斜視図、(C)は背部のみの後方斜視図である。
【
図2】(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は背部のみの背面図、(D)は背部のみの側面図である。
【
図4】(A)は骨組みを示す斜視図、(B)は後方斜視図、(C)は分離斜視図である。
【
図5】(A)は座部の分離斜視図、(B)
は座部の構成部材の分離側面図、(C)は背支柱とセンターカバーとの分離斜視図である。
【
図6】(A)は後ろから見た分離斜視図、(B)(C)は背もたれの動きを示す平面図である。
【
図7】(A)は主要部材の分離正面図、(B)は座とバックフレームとの関係を示す正面図、(C)は分離背面図、(D)はバックフレームの平面図である。
【
図8】(A)は後ろから見た分離斜視図、(B)は背もたれの下端とバックフレームとの連結関係を示す分離斜視図、(C)は背もたれの下端部とバックフレームとの連結部の縦断側面図、(D)は背もたれの上端部とバックフレームとの連結部の縦断側面図である。
【
図9】(A)はバックフレームと背面カバーとを分離した状態で後方から見た斜視図、(B)はバックフレームと背面カバーとを分離した状態で前方から見た斜視図、(C)はアッパサポートの端部を前方から見た斜視図、(D)はロアサポートの端部を前方から見た斜視図である。
【
図10】(A)は
バックフレームを前方から見た斜視図、(B)はバックフレームの縦断側面図、(C)は(B)のC-C視断面図である。
【
図11】(A)は背支柱と枢支ユニットとアッパサポートとの分離斜視図、(B)は背支柱と枢支ユニットとを後方分離斜視図、(C)
は弾性カバーとの上方分離斜視図、(D)は弾性カバーとの上方分離斜視図である。
【
図12】(A)は枢支ユニットとアッパサポートとの関係を示す正面図、(B)は弾性カバーを分離した状態での分離正面図、(C)は弾性カバーのみを分離した状態での正面図、(D)は構成部材を分離した正面図である。
【
図13】枢支ユニットの構造を示す後方分離斜視図である。
【
図14】枢支ユニットの構造を示す図、(A)は後ろから見た全体的な分離斜視図、(B)は前から見た全体的な分離斜視図、(C)は可動カムと下部軸受けブロックとの分離斜視図である。
【
図15】第2実施形態であるメッシュタイプの椅子を示す図で、(A)は正面図、(B)は背面図である。
【
図16】メッシュタイプの椅子の前方分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これの方向は、普通に着座した人から見た状態として特定している。正面視方向は、着座者と対向した方向である。
【0026】
(1).第1実施形態の概要
まず、第1実施形態の概要を説明する。本実施形態の椅子は、オフィス等で多用されている回転椅子に適用している。
図1,2に示すように、椅子は、主要部材として、座1と背もたれ2、背もたれ2が取り付けられたバックフレーム3、及び脚装置4を備えている。また、背もたれ2の後ろにはランバーサポート装置5が配置されている。また、椅子は、オプション品として、肘掛け装置6とヘッドレスト(或いはショルダーレスト)7を備えている。
【0027】
例えば
図1に示すように、脚装置4は、キャスタを備えた枝足の群を有している。また、
図5に示すように、中央部に配置した脚支柱(ガスシリンダ)8にベース体9を固定し、ベース体9に、バックフレーム3がジョイント部材10を介して後傾動自在に連結されている。正確に述べると、
図4(A)(C)に示すように、バックフレーム3の下端には前向き部3aが一体に形成されており、前向き部3aがジョイント部材10に固定されて、ジョイント部材10が、
図5(B)のとおり、ベース体9に後傾動自在に連結されている。いずれにしても、本実施形態の椅子は、背もたれ2が弾性手段に抗して後傾動するロッキングタイプである。
【0028】
図5に大まかに示すように、ベース体9には、中間金具11を介して座アウターシェル12が後退動可能に取付けられており、座アウターシェル12の後部とジョイント部材10とが、相対回動可能に連結されている。従って、背もたれ2の後傾動に連動して座1が後退する。座1は、座アウターシェル12に取付けられている。なお、座アウターシェル12には、座1の前後長さを調節するためのスライド部12a(
図5(A)参照)が取付けられている。
【0029】
本願の背もたれ2は、
図1(C)から理解できるように、合成樹脂製の背板(背インナーシェル)2aの表裏にクッション材13を張って、表裏の全体を袋状の表皮材で覆った構造になっている。
図1(A)(B)、
図2(A)(B)などの多くの図では、クッション材13は省略して背板2aのみを表示している。
【0030】
背板2aは、着座者がもたれ掛かることによる押圧力によって容易に撓み変形する強度になっている。そして、特に着座者の腰部の後ろの部位に、変形を容易化するために多数の横長スリットを形成している。従って、背もたれ2は、ランバーサポート装置5によって容易に変形する。また、背板2aは、後ろ向きに凹むようにも変形し得る。
【0031】
(2).バックフレーム
例えば
図6に示すように、バックフレーム3は、左右中間部に位置した上下長手の背支柱15と、その上端に水平旋回可能に取付けた左右長手のアッパサポート16と、背支柱15の下端に一体に設けた左右のロアサポート17とを有している。当然ながら、アッパサポート16の左右両端とロアサポート17の先端とは自由端になっている。
請求項との関係では、背支柱15は固定部に相当する。背支柱15及びアッパサポート16は、合成樹脂製である(アルミダイキャスト品や板金加工品も採用できる。)。
【0032】
例えば
図6のとおり、アッパサポート16は、手前に向けて凹むように(後ろに向けて膨らむように)、平面視で弓なりに反った形態になっており、その左右両端部に、背もたれ2の左右両端部が連結されている。従って、アッパサポート16と背もたれ2との間には大きな空間が空いている。この空間の存在により、背もたれ2の上端部は、着座者の押圧力(体圧)によって後ろ向きに伸び変形する(凹み変形する)ことが許容されている。
【0033】
他方、例えば
図7に明示するように、ロアサポート17は、背面視において上面と下面とが先端に向けて高くなるように湾曲しており、かつ、左右ロアサポート17の下面と背支柱15の下面とで形成される下面(すなわち,バックフレーム3の下面)も、下向きに膨れた湾曲面になっている。従って、バックフレーム3は、全体として錨に似た形態になっている。或いは、丸みを帯びた矢印に似た形態になっているということもできる。
【0034】
ロアサポート17の上部面の曲がり具合は、下面の曲がりの程度がやや大きくなっている。このため、ロアサポート17は、先端に行くに従って上下幅がやや小さくなっている。また、ロアサポート17は、例えば
図1(B)(C)に示すように、平面視では、座の後部を抱くような状態で前向きに延びており、その先端部に肘掛け装置6が取付けられている。
【0035】
図7(D)に明示するように、ロアサポート17は、平面視において先端に向けて幅が小さくなっている。このため、座1の後部を後ろから抱持しつつも、ロアサポート17の外周面が座1の外周面に収束するかのような外観を呈している。
【0036】
例えば
図7(A)(B)に明示するように、座1の後部には、正面視及び背面視において、ロアサポート17の上面の形状と相似形を成すように突部1aを設けている。このため、ロアサポート17の先端が上向きに反っていても、座1との一体感が形成されて、デザイン的に違和感のない状態になっている。座1の突部1aは、着座者の臀部に対するホールド効果も発揮しており、着座者の身体の安定性向上に貢献している。
【0037】
図7(D)から理解できるように、背もたれ2の下面は下向きに膨れた曲面になっているが、背もたれ2の下面の曲面は、バックフレーム3の下面
の曲面と略同じ形状になっている。従って、デザイン的な統一がとれている。
【0038】
例えば
図7(C)に示すように、バックフレーム3の背面は、センターカバー18とサイドカバー19とで覆われている。すなわち、センターカバー18は、背支柱15の全体とロアサポート17の一部とを覆っており、サイドカバー19は、ロアサポート17の前半部の背面を覆っている。これらのカバー18,19は、バックフレーム3に手前から挿通したビスによって、バックフレーム3に固定されている。
図9に、バックフレーム3に設けたビス挿通穴20と、センターカバー18に設けたタップ穴21とを表示している。
【0039】
また、
図5(C)及び
図10(C)に示すように、センターカバー18の左右側縁にリブ18aを前向きに突設する一方、背支柱15の背面には、リブ18aが嵌まる溝18bを形成している。従って、センターカバー18は左右ずれ不能に保持されている。
【0040】
(3).バックフレームと背もたれとの連結構造
図8(A)に示すように、背もたれ2を構成する背板2aの左右両端には下向き鉤状の係止爪22が形成されている一方、バックフレーム3におけるアッパサポート16の左右両端には、係止爪22が上から嵌まり込む係合枠部23が形成されている。
【0041】
また、
図8(B)に示すように、背もたれ2の下端の左右両端部に、四角錐の頭部分を切断した態様(四周各面が四角形の台錘形)のテーパ状角形突起24が後ろ向きに突設されている一方、ロアサポート17の先端部には、テーパ状角形突起24が入り込むテーパ状角形凹所25を形成し、ビス26によって、テーパ状角形突起24をテーパ状角形凹所25に引き込んでいる。
【0042】
ビス26は、ロアサポート17に後ろから挿通している一方、背もたれ2のテーパ状角形突起24に前向きの角形ポケット穴27が形成されており、ポケット穴27に回転不能に嵌め入れたナット28にビス26がねじ込まれている。
【0043】
背もたれ2の上端はアッパサポート16の係合枠部23に嵌め込まれているため、左右2本のビスで背もたれ2のテーパ状角形凹所25を引き込むだけで、背もたれ2をバックフレーム3に離脱不能に取り付けることができる。そして、テーパ状角形突起24は、くさび作用によってテーパ状角形凹所25にしっかりと入り込むため、背もたれ2は、2本のビス26によってガタ付きのない状態に固定される。
【0044】
アッパサポート16は手前に向けて凹むように反っているため、アッパサポート16と背もたれ2との間には空間が空いている。ロアサポート17との背もたれ2との間にも、既述のように空間が空いている。また、背もたれ2は、4つのコーナー部がアッパサポート16とロアサポート17とに連結されていて、バックフレーム3に対して4点支持の状態に取付けられている。従って、背もたれ2の左右側部の後ろは開放されている。このため、背もたれ2は、着座者の押圧力によって後ろ向きに凹むように容易に弾性変形し得る。これにより、高いフィット性を確保することができる。
【0045】
なお、背もたれ2を構成する背板2aは、単体の状態で、人が手で簡単に曲げることができる程度の弾性強度になっている。実施形態では、背板2aの前後両面をクッション材13で覆っているが、クッション材13を前面のみに配置することも可能である(但し、実施形態のように後面にも配置すると、背板2aの地肌やスリットなどが後ろから透けて見えない利点がある。)。また、背板2aをクロス等の表皮材のみで覆ったり、背板2aを剥き出しの状態で使用したりすることも可能である。
【0046】
図8(A)に示すように、ヘッドレスト7の下端に後ろ向きの取付け片7aを設けている一方、アッパサポート16には、ヘッドレスト7の取付け片7aが嵌まる取付け穴7bを形成しており、取付け片7aが、図示しないビスでアッパサポート16に固定されている。取付け片7aは、ヘッドレスト7に内蔵した金具に形成している。
【0047】
(4).アッパサポートの旋回構造
次に、主として
図10~14に基づいて、アッパサポート16の水平旋回機構を説明する。
【0048】
アッパサポート16は、軸支手段の一例としての枢支ユニット30を介して、背支柱15に水平旋回可能に取付けられている。枢支ユニット30は、例えば
図14に示すように、アッパサポート16の左右中間部に固定された下向きロッド31と、下向きロッド31を回転自在に保持する上部軸受けブロック32と、上部軸受けブロック32の下方に配置した下部軸受けブロック33とを備えている。「ブロック」は部材と言い換えてもよい。
【0049】
下向きロッド31の上端部はアッパサポート16に嵌め込まれて固定されているが、下向きロッド31の上端に、軸心を挟んだ両側に突出した一対の回り止めリブ34を設けている一方、アッパサポート16の左右中間部には、下向きロッド31の上端部が回転不能に嵌まった取付け穴35を形成している。そして、上部ビス36により、下向きロッド31をアッパサポート16に固定している。ビスは、アッパサポート16の一部を貫通して回り止めリブ34にねじ込まれている。従って、回り止めリブ34にはタップ穴が空いている。
【0050】
図14に示すように、下向きロッド31のうち上部軸受けブロック32に嵌まっている部分には、その前面部を除いて周方向に広がる平面視C形のストッパー突起38が一体に(別体でもよい)形成されている一方、上部軸受けブロック32には、下向きロッド31のストッパー突起38が上下動不能に嵌まる凹溝39を形成している。
【0051】
更に、
図10(C)に示すように、背支柱15には、下向きロッド31の前面に密着する軸受け凹面40が形成されており、軸受け凹面40と上部軸受けブロック32とによって、下向きロッド31が回転自在に保持されている。従って、本実施形態では、下向きロッド31は請求項に記載した
ロッドに相当し、上部軸受けブロック32と軸受け凹面40とは、請求項に記載した軸受け部に相当している。
【0052】
軸受け凹面40の左右側方部とストッパー突起38の左右前面との間に、若干の空間41を空けている。左右の空間41の前後幅は同一寸法になっている。ストッパー突起38と軸受け凹面40と空間41とは、アッパサポート16の旋回範囲を規制するストッパー手段の一例であり、ストッパー突起38の縦長端面が空間41の前面に当たることにより、アッパサポート16と背支柱15との相対的な最大水平旋回角度が規制される。ストッパー手段は、他の構造であってもよい。
【0053】
(5).復帰手段(弾性抵抗付与手段)
下向きロッド31のうちストッパー突起38よりも少し下方の部分は小径部31aになっており、小径部31aは、下部軸受けブロック33に嵌入している。そして、小径部31aを形成したことによって下向きロッド31にできた段差面に、周方向に凹凸が連続する固定端面カム43を形成している一方、小径部31aに可動筒体44を下方から嵌め入れて、可動筒体44の上面に、固定端面カム43と噛み合う可動端面カム45を形成している。
【0054】
更に、下部軸受けブロック33には、可動筒体44が上下動可能に嵌まる円形穴46を形成している。円形穴46の内径は、下向きロッド31の外径と略同径になっている。そして、
図13や
図14に示すように、円形穴46に、弾性手段の一例として、可動筒体44を上向きに付勢するコイルばね47が嵌め入れられている。ばね47に代えて、ゴムのような弾性体も使用可能である。
図10(B)のとおり、下部軸受けブロック33は、下方から挿通したビス33aによって下向きロッド31に固定されている。
【0055】
図13,14に示すように、可動筒体44の左右側面には回り止めリブ49が突設されている一方、下部軸受けブロック33には、回り止めリブ49が上から嵌まる回り止め溝50を形成している。従って、可動筒体44は、下部軸受けブロック33に対して、上下動可能で回転不能に保持されている。
【0056】
例えば
図13から理解できるように、下部軸受け部材33は、当該下部軸受け部材33に下方から挿通された2本の縦長ビス53により、上部軸受け部材32に固定されている。そこで、
図13に示すように、上部軸受け部材32の後面に第1ポケット部55を形成して、第1ポケット部55に、縦長ビス53がねじ込まれるナット54を回転不能に嵌め入れている。
【0057】
例えば
図13に示すように、上部軸受け部材32と下部軸受け部材33とは(枢支ユニット30は)、背支柱15に形成された凹所51に内蔵されており、上部軸受け部材32と下部軸受け部材33とは、背支柱15に手前から挿通された前後長手の水平ビス58(
図14参照)により、背支柱15に固定されている。そこで、上部軸受け部材32と下部軸受け部材33との背面に第2ポケット部60を形成して、第2ポケット部60に、水平ビス58がねじ込まれるナット59を回転不能に保持している。
【0058】
下向きロッド31の固定端面カム43、可動端面カム45を有する可動筒体44、コイルばね47は、アッパサポート16を基準姿勢に戻す復帰手段を構成している。すなわち、アッパサポート16が旋回しようとすると、その旋回に対して、上下のカム(カム面)43,45の噛み合いによって抵抗が付与され、アッパサポート16に対する外力がある程度以上に大きくなると、可動筒体44をばね47に抗して下降動する。これにより、アッパサポート16が水平旋回する。また、アッパサポート16に対する着座者の押圧力が解除されると、可動筒体44は上向きに移動して、上下のカム43,45が密着する。これにより、アッパサポート16は基準姿勢に復帰する。アッパサポート16が基準姿勢のときも、ばね47はある程度加圧(与圧)されている。
【0059】
実施形態のように、復帰手段として端面カム43,45を利用すると、部材が上下に並ぶため、コンパクト化されて全体を背支柱15に内蔵できる利点がある。また、アッパサポート16に作用した外力がカム面43,45を介してばね47に作用するが、カム43,45の摩擦抵抗により、アッパサポート16の水平旋回に対する抵抗を増幅できる。従って、小さいばね47でありながら、アッパサポート16の水平旋回に対して的確な抵抗を付与できる。
【0060】
なお、下向きロッド31の水平回転角度はストッパー突起38で規制されているが、可動筒体44は回転しないように設定されている。上下のカム43,45を周方向に連続して形成しているのは、下向きロッド31に回転偶力を与えて回転をスムース化させるためである。
【0061】
アッパサポート16はばね47の弾性に抗して水平旋回するが、アッパサポート16が水平旋回すると、背支柱15には捩じるような外力(回転モーメント)が作用する。そして、本実施形態では、背支柱15は、着座者の押圧力によって捩じれ変形し得る強度に設定している。
【0062】
背もたれ2の左側部又は右側部に着座者の押圧力が作用すると、
図6(B)(C)に示すように、背もたれ2の下端部がロアサポート17に固定された状態で、アッパサポート16が水平旋回する。従って、背もたれ2が平面視で大きく捩じれ変形する(なお、
図6(B)(C)に表示している平行斜線は、背もたれ2の外形を明示するための措置であり、断面の表示ではない。)。
【0063】
このようにアッパサポート16の水平旋回によって背もたれ2が大きく捩じれ変形するため、背もたれ2を撓み変形しやすい強度に設定しておくことにより、背もたれ2の強度に誤差があっても、また、使用者の体格が小さい人であって背もたれ2に対する押圧力が小さい場合であっても、背もたれ2を容易に変形させることができる。従って、身体の動きに対する背もたれ2の追従性を格段に向上できる。
【0064】
更に、背もたれ2が全体的にねじれ変形するため、着座者の背中と背もたれ2との密着性を向上できる。その結果、高いフィット性を確保しつつ、身体の動きに対する背もたれ2の追従性を向上できる。これにより、椅子の品質を格段に向上できる。
【0065】
そして、背もたれ2は、まず、ばね47の弾性に抗して捩じれ変形し、次いで、背支柱15の弾性に抗して捩じれ変形しうる。このような2段階の捩じれ変形により、背もたれ2は、作用した押圧力の程度に応じて、着座者の身体の動きに的確に追従して変形することができる。従って、高い品質を確保できる。なお、背支柱15は捩じれ変形しない強度であってもよい。
【0066】
(6).下向きロッドのカバー構造
例えば
図1(B)や
図2(B)に示すように、背支柱15の上端とアッパサポート16の下端との間にはある程度の間隔が空いている。従って、下向きロッド31の一部が、背支柱15及びアッパサポート16の外側に露出している。そこで、
図1(C)や
図2(C)に示すように、下向きロッド31の露出部を、エラストマのような弾性樹脂から成る弾性カバー61で覆っている。弾性カバー61は、蛇腹状の構造になっている。
【0067】
例えば
図14(A)に示すように、背支柱15は後ろ向きに開口した樋状の形態を成しており、センターカバー18を装着した状態では、全体として、平面視形状は手前が幅狭の台形になっている。そこで、
図14のとおり、弾性カバー61も平面視台形の筒状に形成して、弾性カバー61の外周面と背支柱15及びセンターカバー18の外周面とを略同一面に形成している。このため、美観に優れている。
【0068】
図11(C)(D)に示すように、弾性カバー61の上端面と下端面には、それぞれ段部62,63が形成されており、段部62,63に規制板64,65が相対回転不能に嵌まっている。また、
図14(A)に示すように、上規制板64には、下向きロッド31の回り止めリブ34に嵌まる内向き切欠き溝66が形成されている。従って、弾性カバー61の上端は、アッパサポート16の下端に相対回転不能に保持されている。
【0069】
本実施形態では、下向きロッド31に設けた回り止めリブ34と、上規制板64に形成した内向き切欠き溝66とが、請求項に記載した上係合部を構成している。上規制板64の内向き切欠き溝66は、アッパサポート16の下面に設けた突起に対して嵌め込むことも可能である。また、上規制板64とアッパサポート16とに、他の形態の係合部を形成してもよい。
【0070】
他方、例えば
図13や
図14(A)に示すように、上部軸受けブロック32の上面にはスペーサ板67が相対回転不能に重ね配置されており、スペーサ板67の上面に左右の係合突起68を形成している一方、下規制板65に、スペーサ板67の係合突起68に嵌合する内向き切欠き溝69を形成している。従って、弾性カバー61の下端は、上部軸受けブロック32(及び背支柱15)に対して相対回転不能に保持されている。
【0071】
図13に示すように、上部軸受けブロック32の上面には左右の突起70を形成している一方、スペーサ板67には、突起70と嵌合する下向き穴(図示せず)が形成されている。この場合、
図5(C)に示すように、センターカバー18の上端部に、突起70が手前から重なる鉤状部18cを形成して、突起70と鉤状部18cとに対して、スペーサ板67を嵌合させている。従って、センターカバー18の上端部は後ろ向きずれ不能に保持されている。スペーサ板67を使用せずに、下規制板65を上部軸受けブロック32に対して相対回転不能に係止してもよい。
【0072】
以上のように、弾性カバー61は、上端はアッパサポート16に相対回転不能に保持されて、下端は、上部軸受けブロック32に相対回転不能に固定されているため、アッパサポート16が水平旋回すると、弾性に抗して捩じれ変形する。従って、アッパサポート16の水平旋回を許容しつつ、アッパサポート16と背支柱15との間の境界部を覆うことができる。その結果、安全性を確保できると共に、美観も向上できる。
【0073】
また、弾性カバー61は、アッパサポート16の下面と背支柱15の上面とに密着しているため、上下の規制板64,65は、上下動不能に保持されている。従って、規制板64,65は、上下方向から回り止めリブ34などに嵌め込んだだけで、抜け不能に保持されている。この場合、弾性カバー61を、僅かながら上下方向に圧縮させた状態にしておくと、アッパサポート16及び背支柱15に対する密着性を向上できる。
【0074】
本実施形態では、アッパサポート16は弾性カバー61の弾性力に抗して旋回する。従って、弾性カバー61は、復帰手段のばね手段としても機能している。このため、ばね47を小型化しつつ、アッパサポート16が基準姿勢に復帰することを確実化できる。ばね47を使用せずに、弾性カバー61のみで基準姿勢に復帰させることも可能である。
【0075】
実施形態のように弾性カバー61を蛇腹状に形成すると、撓み変形を容易化できる。このため、アッパサポート16の水平旋回に対して抵抗になることを抑制して、背もたれ2の捩じれ変形を容易化できる。また、蛇腹状に形成すると、上下方向に伸縮できるため、弾性カバー61を、その弾性に抗してアッパサポート16及び背支柱15に突っ張らせることも容易に実全できる。このため、弾性カバー61にガタツキが生じることを防止できる。
【0076】
本実施形態では、アッパサポート16を背支柱15の上端部に旋回可能に取付けたが、背支柱15を、ばね手段に抗して相対回転する上下2本の部材で構成して、上部の部材にアッパサポート16を固定することも可能である。この場合は、弾性カバー61は、上下に分離した2本の部材の間に配置したらよい。
【0077】
背支柱15を上下に並んだ3本以上の部材で構成して、上下に隣り合った部材をばね手段(復帰手段)に抗して相対回転するように連結することも可能である。この場合は、相対回転部が複数存在するが、それぞれの部位を弾性カバーで覆ったらよい。
【0078】
(7).第2実施形態
図15,16では、メッシュタイプに適用した第2実施形態を示している。すなわち、背もたれ2は、前後に開口した背フレーム80にメッシュ材81を張った構造になっており、第1実施形態と同様に、ランバーサポート装置5と肘掛け装置6とヘッドレスト7とを備えている。
【0079】
背フレーム80は合成樹脂製であり、上下に長い左右のサイドメンバー82と、サイドメンバー82の上端に一体に繋がった水平状のアッパメンバー83と、サイドメンバー82の下端に一端に繋がった水平状のロアメンバー84とで構成されており、例えば、椅子に組み付けていない単体の状態で、人が容易に捩じり変形させ得る弾性強度になっている。
【0080】
メッシュ材81は、
図16に明示するテープ材85,86を介して背フレーム80に取付けている。具体的には、上下長手の左右のテープ材85には、外向きに突出したボス87が多段に形成されており、このボス87が、サイドメンバー82の内周板に形成した係合溝88に嵌め込まれている。メッシュ材81の縁部はテープ材85の内面に重なっており、サイドメンバー82は、メッシュ材81の左右端部に重なって後ろからぐるりと巻かれている。
【0081】
他方、
図16に明示するように、上下に配置された左右長手のテープ材86には、上下方向の外向きに突出した係止片89が左右方向に並べて形成されている一方、アッパメンバー83とロアメンバー84との対向面には、係止片89が嵌合する係合穴99が形成されている。そして、メッシュ材81の上下端部は、上下のテープ材86の内面に固定されており、メッシュ材81の上下端部により、アッパメンバー83及びロアメンバー84が外側からぐるりと巻かれている。
【0082】
このように、背フレーム80の全周はメッシュ材81でぐるりと包まれているため、背フレーム81の素材が露出することを極力抑制して、美観を向上できる。また、テープ材85,86の取付けも容易である。
【0083】
メッシュ仕様の背もたれ2では、背フレーム96の内周が透けて見える。そして、
図15から理解できるように、ロアメンバー84の上面(内面)の背面視形状(正面視形状も同じ)を、バックフレーム3における左右ロアサポート17の上面で形成される曲面とほぼ同じ形状の曲面と成している。このため、ロアメンバー84とロアサポート17とのデザイン的な統一性がとれて、すっきりとした外観を呈している。
【0084】
また、
図15から理解できるように、ロアメンバー84の上面の形状は、座における左右の突部1aで形成される凹面ともほぼ一致している。従って、座1の後部の形状と、背フレーム80におけるロアメンバー84の形状と、バックフレーム3における左右ロアサポート17の形状とが、統一性をもって形成されている。
【0085】
図示は省略するが、背フレーム80とバックフレーム3との連結構造は第1実施形態と同じである。従って、アッパサポート16と背支柱15との間に、弾性カバー61が配置されている。
【0086】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願の各発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、本願発明は、背もたれが後傾しないタイプの椅子にも適用できる。アッパサポートを左右2本の部材に分割して、それぞれのパーツを背支柱等のバックフレームに対して水平旋回するように取り付けた構成も採用可能である。
【0087】
弾性カバーの形態は、背支柱の形態などに応じて任意に設定できる。例えば、背支柱が円形である場合は、弾性カバーも円形に形成したらよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 座
2 背もたれ
3 バックフレーム
15 背支柱(固定部)
16 アッパサポート
17 ロアサポート
30 軸支手段としての枢支ユニット
31 軸支手段を構成する下向きロッド(軸)
32 軸支手段を構成する上部軸受けブロック(軸受け部)
33 下部軸受けブロック
34 回り止めリブ
61 弾性カバー
64,65 規制板
66,69 係合部を構成する内向き切欠き溝
67 スペーサ板
70 係合部を構成する係合突起