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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】トラネキサム酸含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20221208BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221208BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/60
A61K8/92
A61K9/00
A61K31/195
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/44
A61P17/00
A61Q19/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018227814
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020090452
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 昌枝
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-077221(JP,A)
【文献】特開2017-109972(JP,A)
【文献】特開2017-155034(JP,A)
【文献】特開2009-292734(JP,A)
【文献】国際公開第2009/093534(WO,A1)
【文献】Ultra Restorative Capsules, Uni-President Biotech, 2015年3月, Mintel GNPD [online],[検索日 2022.09.01], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:3079015
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/00-31/80
A61P 17/00-17/18
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸もしくはその誘導体またはその塩と、アシルアミノ酸エステルとを含有し、
前記トラネキサム酸もしくはその誘導体またはその塩の含有量が、組成物全体の0.01~5質量%であり、
前記アシルアミノ酸エステルの含有量が、組成物全体の0.1~10質量%であり、
前記トラネキサム酸の誘導体が、トラネキサム酸のエステル体又はアミド体であり、
前記アシルアミノ酸エステルが、アシルアミノ酸とアルコールとのエステルであり、前記アルコールが少なくともフィトステロールを含む、油性固形組成物。
【請求項2】
前記アシルアミノ酸エステルが、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)及び/又はN-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/2-オクチルドデシル)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらにソルビタン系界面活性剤を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、粉体を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記粉体の含有量が、組成物全体の0.5~40質量%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
固形油脂及び/又は半固形油脂を組成物全体の5質量%以上含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
皮膚外用剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラネキサム酸を含有する油性固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸やその誘導体は、肌荒れや色素沈着を抑制する作用を有することが知られており、化粧料等の皮膚外用組成物に含有させる成分としてよく用いられている(特許文献1,2等)。
【0003】
また、油性固形剤型は、油溶性の成分を含有させたり、肌に閉塞性や保湿性を付与したり、スティック状など取扱いしやすい形状にしたりすることができるため、化粧料等で汎用される剤型である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平03-007212号公報
【文献】特開平01-093519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラネキサム酸は水溶性であるところ、これを油性固形組成物に含有させるに際しては油性基剤に分散させる態様となる。しかしながら、分散系の組成物においては一般に時間が経つと分散成分が沈降してしまうという問題が存する。
本発明は、このような状況下においてなされたものであり、トラネキサム酸もしくはその誘導体またはその塩を、油性固形組成物に含有させるときに、均一に分散させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは鋭意努力を重ねた結果、トラネキサム酸もしくはその誘導体またはその塩を、アシルアミノ酸エステルと共に油性固形組成物に含有させることにより、トラネキサム酸もしくはその誘導体またはその塩を均一に分散させることができ、さらに経時的にもその分散安定性が図れることに想到し、本発明を完成させるに至った。
さらに、本発明者らは、トラネキサム酸を含有する油性固形組成物では、時間が経つと硬度が低下することに着目したところ、アシルアミノ酸エステルが共存することにより、経時的な硬度の維持も図れることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]トラネキサム酸もしくはその誘導体またはその塩と、アシルアミノ酸エステルとを含有する、油性固形組成物。
[2]前記アシルアミノ酸エステルの含有量が、組成物全体の0.1~10質量%である、[1]に記載の組成物。
[3]さらにソルビタン系界面活性剤を含有する、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]さらに、粉体を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]前記粉体の含有量が、組成物全体の0.5~40質量%である、[4]に記載の組成物。
[6]固形油脂及び/又は半固形油脂を組成物全体の5質量%以上含む、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]皮膚外用剤である、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トラネキサム酸もしくはその誘導体またはその塩の均一分散性が高められた油性固形組成物が提供される。さらに、本発明の油性固形組成物は、経時で硬度が維持される効果やトラネキサム酸類の析出抑制効果をも奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物は、トラネキサム酸もしくはその誘導体またはその塩(本明細書において「トラネキサム酸類」とも記す)を必須に含有する。
トラネキサム酸は、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸を指す。
【0010】
トラネキサム酸の誘導体としては、特に限定されないが、エステル体やアミド体等が挙げられ、トラネキサム酸のエステルとしてはトラネキサム酸ラウリルエステル、トラネキサム酸ヘキサデシルエステル、トラネキサム酸セチルエステル等を、トラネキサム酸のアミド体としてはトラネキサム酸メチルアミド等を例示できる。
【0011】
また、トラネキサム酸またはその誘導体の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;亜鉛塩;鉄塩;アンモニウム塩;アルギニン、ヒスチジン、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンとの塩等が挙げられる。これらのうち、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、アルギニン塩が、後述する皮膚外用剤の態様とするのに好ましい。
【0012】
本発明の組成物におけるトラネキサム酸類の含有量は、特に限定されないが、組成物全体に対して0.01~5質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。かかる範囲で含有させることにより、トラネキサム酸類が発揮する抗炎症(肌荒れ抑制)効果や美白(色素沈着抑制)効果を発揮させやすくなる。
【0013】
本発明の組成物は、アシルアミノ酸エステルを必須に含有する。
油性固形組成物に該成分をトラネキサム酸類と共に含有させることにより、トラネキサム酸類を組成物に均一に分散させることができ、また経時でもその均一分散性を維持することができる。また、トラネキサム酸類を含有する油性固形組成物においても、経時でも硬度が低下することなく維持することができる。さらに、一般にトラネキサム酸類は析出しやすく、これを含有する化粧料等では保存に難が生じる場合があるところ、アシルアミノ酸エステルの共存により析出を抑制することができる。
【0014】
アシルアミノ酸エステルは、アシルアミノ酸とアルコール類とのエステルである。
アシルアミノ酸部分としては、特に限定されないが、N-アシル酸性アミノ酸が好ましく、N-アシルアスパラギン酸又はN-アシルグルタミン酸がより好ましく、N-アシルグルタミン酸がさらに好ましい。これらのアミノ酸構造は光学活性体又はラセミ体のいずれであってもよい。
アシル基としては炭素数8~22の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基であることが望ましく、例えばラウリン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸等の単一組成の脂肪酸によるアシル基の他に、ヤシ油脂肪酸,牛脂脂肪酸,硬化牛脂脂肪酸等の天然より得られる混合脂肪酸あるいは合成により得られる脂肪酸(分枝脂肪酸を含む)のアシル基であってもよい。
【0015】
エステル部分を生成する基としては、特に限定されないが、ステロール、炭素数8~3
0の液状高級アルキル、もしくはアルケニルアルコール、炭素数12~38の固形状高級アルキルアルコールなどが好ましく挙げられる。N-アシル酸性アミノ酸エステルの場合、モノエステル体であってもジエステル体であっても構わないが、2つのエステル生成残基のうち少なくとも一方がステロール残基であるジエステル体であることが特に好ましい。ステロールとしては、動物由来のものであっても植物由来のものであってもよく、例えばコレステロール、フィトステロール又はこれらの水添物等を挙げることができる。また、炭素数8~30の液状高級アルキル、もしくはアルケニルアルコールは炭素数8~30の天然又は合成脂肪族アルコールでかつ常温で液状を呈するものであり、例えば2-オクチルドデシルアルコール等の分枝アルコール、オレイルアルコール等の不飽和アルコールなどが挙げられる。炭素数12~38の固形状高級アルキルアルコールは炭素数12~38の飽和一価アルコールでかつ常温で固形状を呈するもので、例えばセチルアルコール,ベヘニルアルコールなどが挙げられる。
【0016】
具体的には、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)等を挙げることができる。これらのうち、N-ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)が特に好ましい。
【0017】
これらは一般に市販されており、味の素株式会社より販売されている「エルデュウPS203」、「エルデュウCL-301」、「エルデュウCl-202」、「エルデュウPS-304」、「エルデュウPS-306」などが例示できる。
【0018】
アシルアミノ酸エステルは一種でも二種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の組成物におけるアシルアミノ酸エステルの含有量は、特に限定されないが、組成物全体に対して0.1~10質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましい。かかる範囲で含有させることにより、トラネキサム酸類の均一分散性効果や、組成物の経時での硬度維持の効果を発揮させやすくなる。
【0019】
本発明の組成物は、さらにソルビタン系界面活性剤を含有することが、トラネキサム酸類の均一分散性をより向上させる観点から好ましい。
ソルビタン系界面活性剤としては、特に限定されないが、モノステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE-ソルビットモノラウレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類が挙げられる。これらのうち、ソルビタン脂肪酸エステル類がより好ましく、セスキイソステアリン酸ソルビタンがさらに好ましい。
本発明の組成物におけるソルビタン系界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、組成物全体に対して0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。かかる範囲で含有させることにより、トラネキサム酸類の均一分散性効果をより発揮させやすくなる。
【0020】
本発明において油性固形組成物とは、実質的に水及び水性成分を含まず、油剤を基材とする固形の化粧料をいう。
ここで、固形とは、半固形も含み、通常は高い粘度を有し流動性が低い状態のものである。例えば、25℃で流動性がないものが好ましい。また、25℃における粘度が20,000Pa・s以上であることが好ましい。かかる剤型であることにより、トラネキサム酸類が、時間が経っても沈降しにくくなり、経時での分散安定性に優れた組成物となり得
る。
また、「実質的に含まない」とは組成物全体に対して好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下であることをいう。また、水性成分とは例えば25~65℃のミネラルオイルに懸濁して1時間静置した後にミネラルオイルと相分離する成分をいう。
【0021】
本発明の油性固形組成物において基材となり得る油剤としては、通常は固形油脂及び/又は半固形油脂である。固形油脂や半固形油脂を含有させることにより組成物の粘度が大きくなるため、組成物に分散したトラネキサム酸類が、時間が経っても沈降しにくくなり、経時での分散安定性に優れた組成物となり得る。かかる態様は後述のオイルゲル剤型等に好適である。
さらに通常化粧料に用いられる油剤(液状油剤などの流動性のある油剤も含む)も加えられてもよい。
油剤の種類や含有量は特に限定されず、所望の硬度、塗布後の皮膚上での粉末の白さの軽減、皮膚への密着感や塗布時のすべり感などの使用性によって適宜調整してよい。
【0022】
固形油脂及び/又は半固形油脂の含有量は、組成物全体の5質量%以上が好ましく、8質量%がより好ましく、12質量%以上がさらに好ましい。また、組成物全体の50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
ここで、固形油脂における固形とは25℃で流動性がないものをいい、半固形油脂における半固形とは1気圧、20℃で応力の存在しない環境では殆ど変形しないが、若干の応力(10~100g/cm程度)がかかると変形するものをいう。また、融点が50℃以上のものがより好ましい。
固形油脂及び/又は半固形油脂としては、植物由来のものとして、カルナウバロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、シアバター、アフリカマンゴバター等が挙げられ、動物由来のものとして、ミツロウ、シェラックロウ、イボタロウ等が挙げられ、石油由来のものとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の精製ワックスが挙げられ、鉱物由来のものとしてオゾケライト、セレシン、モンタンワックス等の精製ワックスが挙げられる。これらの固形油脂及び/又は半固形油脂は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の組成物において基材となり得る他の油剤としては、さらに通常化粧料に用いられる油剤(液状油剤などの流動性のある油剤も含む)も挙げられる。
かかる他の油剤としては、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類
;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等の前記のシリコーンに分類されないシリコーン油等の油剤類が挙げられる。
【0025】
本発明の組成物は、さらに粉体を含有することが好ましい。粉体を含有させることにより組成物の粘度が大きくなるため、組成物に分散したトラネキサム酸類が、時間が経っても沈降しにくくなり、経時での分散安定性に優れた組成物となり得る。かかる態様は後述のオイルゲル剤型等に好適である。
粉体の含有量は、組成物全体の0.5~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0026】
粉体類としては、表面を処理されていてもよい、シリカ(無水ケイ酸)、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、ベントナイト、ヘクトライト等の粘土鉱物、表面を処理されていてもよい、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていてもよい、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていてもよい赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエステル末、ポリアミド末、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、が挙げられる。
また、その形状は、特に限定されないが、一般に化粧料等の皮膚外用剤に用いられる球状、半球状、板状などが挙げられ、また多孔性であってもよい。
また、その粒子径は、一般に化粧料等の皮膚外用剤に用いられる程度であればよいが、とくに煙霧状の微細な粒子径(例えば5nm~20nm)が好ましい。
これらのうち、本発明においては、組成物の分散安定性の観点から、煙霧状シリカ(フュームドシリカ)が特に好ましく挙げられ、市販品を用いてもよい。
【0027】
本発明の油性固形組成物は、オイルゲル剤型であることが好ましい。
本発明の組成物がオイルゲル剤型である場合は、前述の固形油脂や半固形油脂に加えて又は替えて、油性ゲル化剤を含有することが好ましい。油性ゲル化剤を含有することで組成物の粘度が大きくなるため、組成物に分散したトラネキサム酸類が、時間が経っても沈降しにくくなり、経時での分散安定性に優れた組成物となり得る。
ここで油性ゲル化剤とは、油剤等の油性成分と相溶性のあるゲル化剤をいい、特に限定されないが、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン
酸/オクタン酸)デキストリン、ジブチルラウロイルグルタミド、ジメチコンクロスポリ
マー等を例示できる。
油性ゲル化剤の含有量は、組成物全体の0.5~20質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。
【0028】
本発明の組成物は、トラネキサム酸類の、経時での組成物中の分散安定性が高いものである。具体的には、例えば、40℃で1日間静置した後、該化合物の沈降が目視により認められないことをいう。あるいは、40℃で1日間静置した後、組成物の上方95v/v
%中と下方95v/v%中との該化合物の濃度の差が、好ましくは10%以内、より好ま
しくは5%以内、さらに好ましくは0.5%以内である。
【0029】
本発明の組成物は、前述の通りトラネキサム酸類は抗炎症(肌荒れ抑制)効果や美白(色素沈着抑制)効果を発揮し得るため、皮膚外用剤に好適に利用でき、化粧料への適用がより好ましい。なお、化粧料には医薬部外品が含まれる。
【0030】
本発明の組成物においては、かかる成分以外に、通常の皮膚外用剤で使用される任意成分を本発明の効果を損なわない限りにおいて任意に含有することができる。この様な任意成分としては、各種有効成分、油性成分、他の界面活性剤、多価アルコール、増粘剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0031】
有効成分としては、他の美白成分、シワ改善成分、他の抗炎症成分、動植物由来の抽出物等が挙げられる。
他の美白成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、リノール酸、ニコチン酸アミド、5,5'-ジプロピルビフェニル-2,2'-ジオール、5'-アデニル酸二ナトリウム、ト
ラネキサム酸セチル、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、ハイドロキノン、パントテン酸等が挙げられる。
【0032】
シワ改善成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、ニコチン酸アミド、ビタミンA又はその誘導体(レチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステルが挙げられる。
【0033】
他の抗炎症成分としては、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール等が挙げられ、好ましくは、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩である。
【0034】
動植物由来の抽出物としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、インドキノエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エイジツエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オタネニンジンエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オレンジエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クジンエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、紅茶エキス、ゴボウエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コケモモエキス、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、タンポポエキス、茶エキス、チョウジエキス、チンピエキス、甜茶エキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス
、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子エキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マヨナラエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、緑茶エキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0035】
他の界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、
セスキイソステアリン酸ポリグリセリル、グリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸グリセリル等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、等が挙げられる。
【0036】
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。
【0037】
増粘剤としては、グアーガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0038】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類
、等が挙げられる。
【0039】
本発明の組成物は、前記必須成分、好ましい成分、任意成分などを常法に従って処理することにより製造することができる。
【実施例
【0040】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0041】
<製造例>
下記の表1に示す処方に従い、乳化剤形の皮膚外用剤を製造した。すなわち、成分ロを95℃にて加熱溶解させ、混合した。さらに95℃下で3000rpm1分間ディスパーを用いて撹拌しながら、前記混合物に成分イを添加した。その後脱泡を行い、容器に充填し、冷却固化させ、油性固形化粧料を得た。
【0042】
<試験例>
(1)分散安定性の評価
調製した各油性固形化粧料を40℃で1日間静置した後、トラネキサム酸の沈降の有無を目視により観察し、均一に分散している場合に分散安定性が○、わずかに沈降が認めらるが凝視しないとわからない場合に分散性が△、沈降が認められた場合に分散安定性が×と評価した。結果を表1に併せて示す。
【0043】
(2)硬度の評価
調製した各油性固形化粧料を0℃から40℃まで24時間で変化させるよう設定したエイジングボックスに1ヶ月間放置した後、さらに20℃の恒温室に2時間放置し、その後カードメーター(アイテクノエンジニアリング株式会社製)を用いて硬度を測定した。調製直後の硬度を100%とした場合の3ヶ月放置後の硬度を維持率とした。硬度の経時での維持率が80%以上の場合は○、51~79%の場合は△、経時での変化が50%以下の場合は×と評価した。結果を表1に併せて示す。
【0044】
(3)トラネキサム酸析出評価
調製した各油性固形化粧料を40℃で1ヵ月静置し、油性固形化粧料の表面にトラネキサム酸の析出の有無を目視で確認した。結果を表1に併せて示す。
【0045】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。