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特許7190354被写体の完全性を鑑定及び/又はチェックするための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】被写体の完全性を鑑定及び/又はチェックするための方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20221208BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221208BHJP
   G07D 7/128 20160101ALI20221208BHJP
   H04N 1/387 20060101ALI20221208BHJP
   H04N 1/393 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G06T7/00 300E
G06T7/00 510B
G06T1/00 400E
G06T1/00 430H
G07D7/128
H04N1/387 200
H04N1/387 700
H04N1/393
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018546769
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 FR2016053125
(87)【国際公開番号】W WO2017089736
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】1561527
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1670055
(32)【優先日】2016-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518184498
【氏名又は名称】ケルクエスト
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ブタン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フルネル,ティエリ
【合議体】
【審判長】五十嵐 努
【審判官】千葉 輝久
【審判官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0001604(US,A1)
【文献】特開2004-199614(JP,A)
【文献】米国特許第5982932(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T7/00
H04N1/387
H04N1/393
G07D7/128
G06T1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)と(2)のステップを含む被写体の完全性の目視鑑定及び/又は目視チェックのための方法:
(1)本物の被写体の少なくとも1つの鑑定領域の少なくとも1つの連続ランダム成分テクスチャを含む少なくとも1つの鑑定画像と、前記連続ランダム成分テクスチャを含む候補被写体の鑑定領域自体又は候補被写体の鑑定領域の少なくとも1つの検証画像とを、離散要素又は離散パターンを追加、抽出又は生成せずに、光学的又は電子的に、視覚的に重畳させるステップ、および
(2)上記の重畳させるステップで生じる重畳画像上で前記鑑定領域におけるGlassパターンタイプの光学現象を観察した場合に、前記候補被写体は前記本物の被写体であると結論付け、及び/又は、前記本物の被写体の前記鑑定領域の少なくとも部分的な完全性を結論付けるステップ。
【請求項2】
以下の(a)~(c)のステップを含む請求項1に記載の方法:
(a)所定観察条件において、平均視力を有する観察者によって容易に再現且つ観察できない固有の材料構造を有する少なくとも1つの鑑定領域をそれぞれ有する、三次元又は材料被写体の中から本物の被写体を選択するステップ、
(b)下記(i)と(ii)を行う記録フェーズのステップ:
(i)平均視力を有する観察者にとって鑑定領域の鑑定画像が少なくとも1つの連続ランダム成分テクスチャを含むように、所定の取得倍率若しくは拡大率で且つ/又は所定条件で、本物の被写体の少なくとも鑑定領域を含む少なくとも1つの鑑定光学画像を取得し、
(ii)この鑑定光学画像を記録し、
(c) 以下の(i)と(ii)を観察する検証フェーズのステップ:
(i)各鑑定光学画像と候補被写体とを少なくとも部分的に重畳した時に、候補被写体が本物の被写体である場合にGlassパターンタイプの光学現象の出現を観察するか、
(ii)各鑑定光学画像と候補被写体とを少なくとも部分的に重畳した時に、候補被写体が本物の被写体である場合に、Glassパターンを観察しないが、鑑定画像の少なくとも局所的な寸法形状変換及び/又は候補被写体に対する鑑定画像の相対的変位を行った時にGlassパターンタイプの光学現象の出現を観察する。
【請求項3】
鑑定画像を候補被写体に投影する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
鑑定画像及び候補被写体の重畳を可能にする取得倍率又は拡大率で鑑定画像を取得する請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
鑑定領域が少なくとも半透明であり、検証フェーズを透き通しモードで実行する請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
検証フェーズを少なくとも表示手段を含む電子デバイスによって実行し、上記表示手段は鑑定画像を表示又は投影し、且つ実質的に候補被写体の縮尺で候補被写体及び鑑定画像の重畳を可能にする請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
以下のステップを含む請求項1に記載の方法:
- 所定観察条件において、平均視力を有する観察者によって容易に再現且つ観察できない固有の材料微細構造を有する少なくとも1つの鑑定領域をそれぞれ有する、三次元又は材料被写体の中から本物の被写体を選択するステップ、
- 下記(i)と(ii)を行う記録フェーズのステップ:
(i)平均視力を有する観察者にとって鑑定領域の鑑定画像が少なくとも1つの連続ランダム成分テクスチャを含むように、所定の取得倍率若しくは拡大率で且つ/又は所定条件で、本物の被写体の少なくとも鑑定領域を含む少なくとも1つの鑑定光学画像を取得し、
(ii)この鑑定光学画像を記録し、
- 下記(i)と(ii)を行う視覚検証フェーズのステップ
(i)鑑定画像及び検証画像の視覚化を同じ縮尺で可能にする倍率又は拡大率で鑑定領域の少なくとも1つの部分を含む候補被写体の少なくとも1つの検証画像を取得し、
(ii)実質的に同じ縮尺で鑑定画と検証画像を少なくとも部分的に重畳して、
- Glassパターンを観察しない場合に、重畳した画像の少なくとも1つの画像を少なくとも局所的な寸法形状変換するか、及び/又は、重畳した画像の相対的変位を行い、
- 候補被写体が本物の被写体である場合にGlassパターンタイプの光学現象の出現を観察する。
【請求項8】
前記検証フェーズを少なくとも一つの電子デバイスによって実行し、この電子デバイスが少なくとも1つの検証画像を取得する取得手段と、検証画像を視覚化スクリーン上に表示し且つ検証画像と鑑定画像とを実質的に同じ縮尺で重畳可能にする表示手段とを含む請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電子デバイスが上記取得手段及び候補被写体の相対的変位から生じる一連の又は一続きの検証画像を表示し且つ鑑定画像との検証画像の重畳を可能にするように適合されている請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電子デバイスが重畳された画像の少なくとも1つの画像を少なくとも局所的な寸法形状変換するか、及び/又は、重畳した画像の相対的変位を実行する処理手段を含む請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの検証画像がデジタル形式で記録される請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
検証画像が可視化され、且つ/又は、階調若しくは中間調で記録される請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電子デバイスによって少なくとも部分的に実行される自動検証フェーズを更に含み、この自動検証フェーズでは検証画像と前記鑑定画像との間の類似係数を計算し、類似係数が所定の閾値よりも高い場合には高い確率の信憑性又は確実性があるとし、逆の場合には信憑性がないとする請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
類似係数の前記計算を検証画像及び鑑定画像から抽出した署名に基づいて実行する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記自動検証フェーズが自動検証の結果を第三者又はユーザへ伝送又は通信するステップを含む請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
鑑定画像をセルの行列又は格子に適用することによって鑑定画像が記録され、上記セルの内側面は鑑定画像の対応する部分によって形成され且つ前記セルが鑑定画像と関係のない表面によって離間され、鑑定画像の記録前に少なくとも特定のセルが対応するセル内に含まれる画像の形状寸法変換を受ける請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
変換を受ける前記セルが検証画像との重畳時にメッセージ又はパターンを形成するように選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記の寸法形状変換がアフィン若しくは剛性変換又はアフィン及び/若しくは剛性変換の組み合わせの中から選択される少なくとも1つの局所的に適用される寸法形状変換を含む請求項2~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記の寸法形状変換での画像の変化が小さいか、非常に小さく、変更前の鑑定領域の画像の相関関係の長さよりも小さい請求項2~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記の相対的変位が平行移動、回転、又は1回若しくは幾つかの回転及び/若しくは平行移動の組み合わせである求項2~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料被写体の完全性の鑑定及びチェックの技術分野並びに視覚暗号法の分野に関する。好ましいが非排他的な用途において、本発明は、材料被写体の単一鑑定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
上記分野において、特に米国特許第4,423,415号明細書から、本質的にランダムな三次元固有微細構造を含む、いわゆる鑑定領域から署名を抽出することによって材料被写体の識別を行うことが公知である。この抽出は、一般に、コンピュータ等の電子コンピューティング手段により行われ、被写体の信憑性を検証するためにかかるコンピューティング手段を再度実施することを必要とする。従って、特定の公知の方法に従って、鑑定領域からの署名の第1の抽出が鑑定署名を記録するために行われる。次いで、信憑性の検証中、検証署名と呼ばれる第2の署名が同じ鑑定領域から抽出され、鑑定及び検証署名の比較が、署名の類似性の閾値に基づいて信憑性を判断するよう行われる。他の公知の方法によれば、予め記録された鑑定画像と信憑性検証時に取得される検証画像との間の類似又は相関係数は、相関又は類似係数に基づいて被写体の信憑性を断定するか又はしないように計算される。
【0003】
かかる方法は、非常に低いリスクを有する鑑定が、本物でない被写体の信憑性を結論付けることを効果的に可能にする場合、それにもかかわらず、記録フェーズ中及び検証フェーズ中の両方でコンピューティング操作及び対応するリソースを必要とする欠点を有する。その上、オペレータ、すなわち人間は、オペレータが信憑性検証のプロセスに関してコンピューティングシステムを盲目的に信用しなければならないため、信憑性検証のプロセスから除外される。更に、依然として、コンピューティングシステムが、該当する場合はないものの、信憑性を結論付ける結果を提供するように違法行為を受けるか又は不正に改変され得るリスクが存在する。
【0004】
記録フェーズにおいて、この鑑定領域の顕微鏡的な詳細の観察を可能にするように、鑑定される材料被写体の鑑定領域の高い倍率又は拡大率で鑑定画像を記録するように提案される方法も公知である。それらの方法は、次いで、検証フェーズにおいて、オペレータが2つの並列画像の目視比較を行って同一領域又は異なる領域を識別し、鑑定される被写体の信憑性を結論付けるか又は結論付けないことができるように、オペレータに同じ倍率又は拡大率で、鑑定される被写体上の鑑定領域の検証画像を観察させるように提案している。鑑定がオペレータによって行われる目視比較に起因するため、かかる方法又はプロセスが何らのコンピューティング手段も必要としない鑑定を可能にする場合、この目視方法は、大きい欠点として、オペレータにとって満足な程度の自信及び確信をもって鑑定を結論付けるか又は結論付けないことができるようにするために、オペレータの長期間の事前訓練及び/又は比較的長期間の観察を必要としなければならない。その上、これらの方法はオペレータの明確な記憶を実施し、記憶は個人間で非常に不確定なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4,423,415号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、鑑定判定の最終フェーズコンピューティング手段を一切必要としないか、それ程必要とせずオペレータ人間的な視覚システムの利点を利用して、公知の方法より短い観察時間で鑑定を結論付けることが可能な、オペレータが判断を確信し得る手段を提供する目視鑑定の新規な方法に対するニーズが生じている
本発明の意味において、用語「視覚」は自然又は人工視覚の両方に関係する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、被写体の完全性の目視鑑定及び/又は目視チェックのための方法であって、
- 光学的又は電子的に、
- 一方では、本物の被写体の少なくとも1つの鑑定領域の、鑑定画像と称される少なくとも1つの画像であって、少なくとも1つの連続ランダム成分テクスチャを含む鑑定画像と、
- 他方では、候補被写体の鑑定領域自体又は候補被写体の鑑定領域の少なくとも1つの検証画像と
を視覚的に重畳させることと、
- 重畳から生じる画像上で鑑定領域におけるGlassパターンタイプの光学現象を観察する場合、候補被写体が本物の被写体であること、及び/又は本物の被写体の鑑定領域の少なくとも部分的な完全性を結論付けることと
を含む方法に関する。
【0008】
本発明では、鑑定領域画像又は人間の視覚システム(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)(短縮形:HVS)によ視覚表示はテクスチャを有する。このテクスチャは平均視力を有する観察者が裸眼で又は光学及び/若しくはデジタルズームを介して観察できるすなわち、人間の視覚システム(SVH)によって観察される小さな寸法の構造、または観察倍率で小さな寸法として知覚されるものはテクスチャを含む画像として知覚される。例えば、砂の粒子を数十センチメートルの距離で裸眼で観察した場合、それらは小さいサイズとして認識されるが、拡大鏡で観察した場合には、それらは中程度の寸法の物体として認識される。同様に、牧草地を数十メートルの所から観察した場合には、それは均一または非常に小さな識別できない構造要素で構成されていると認識されるがそれを数十メートルの所で観察した場合には、観察者が草の葉を知覚することができる。小石の多い海岸に関しても観察距離によって同じ現象が認識できる。
【0009】
本発明おいて、「テクスチャ」という用語は、人間の視覚システム(SVH)の直接観測又は光学系を介して若しくは表示手段を少なくとも含む画像取得システムを介して得られる、一つの画像内で一つの信号又は一つの均一な領域として認識できるものを意味する。これに対して「構造」というは用語は被写体自体の構成物質の組成及び組織を意味する。認証領域の対象となるテクスチャは、ランダム性または不規則性の少なくとも一部または特定の割合を含むという点で、ランダムなコンポーネントを有するテクスチャとして認定(qualifiee)される。例えば、繊維から成る糸を用いて織られた被写体の画像は一般に布の織り方に対応する準周期的または規則的な成分と、繊維およびその変化を反映したランダム成分とを含む本発明では、これら2つの成分の組み合わせはランダム成分テクスチャとして見なされ、テクスチャとして観察される。発明方法では、同じ鑑定領域の繊維糸織物の検証画像と鑑定画像とを重畳して観察した時に、テクスチャの通常の成分で生じる通常のモアレに、上記組み合わされたテクスチャのランダムな成分から生じるGlassタイプのパターンが観察される
【0010】
本発明の枠組みにおいて、用語「テクスチャ」は、画像又は被写体又は景色において可視又は観察できるものに関するのに対し、用語「構造」又は「微細構造」は材料被写体自体に関する。従って、鑑定領域のテクスチャ又は微細構造は、鑑定領域の構造又は微細構造の画像に対応する。
本発明の枠組み内において及び特定の構成によれば、ランダム成分テクスチャは、それが観察に起因するか、又は連続構造の並列若しくは光学的重ね合わせの、観察倍率若しくは縮尺で小さいサイズとして認識される粒子若しくは構成要素の並列若しくは光学的重ね合わせの連続構造の画像であるという点で連続(連続ランダム成分テクスチャ)として見なされ得る。本発明の枠組みにおいて、連続する又は視覚的に連続する微細構造又は構造は、物質的若しくは物理的のいずれか一方で連続するか、又は2つの隣接するか若しくは連続する構成要素が視覚的に接触していない離散的な構造とは反対に、視覚的に、2つの隣接するか又は連続する構成要素が視覚的に接触する、すなわち、互いに重畳されるような方法で、並列される構成要素からなる。また、特にボイドのない媒体又はクヌーセン数が1と比べて小さい特定の媒体又は観察縮尺での高密度媒体として、本発明の意味において連続構造又は微細構造を定義することも可能である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、本物の各被写体は、その材料構造が容易に再現できない、すなわち、その再現が困難であるか、又はそれが特に成分レベルにおいて及び/又はプロセス自体から危険を暗示する完全に制御されない形成プロセスから生じるという点で、更に不可能である少なくとも1つの鑑定領域を含む被写体ファミリーに属する。かかる鑑定領域の図の近接点からの観察の類似する条件における撮像は、それぞれその材料構造のノイズの多い反映であるランダム成分テクスチャを含む画像を提供する。かかるランダム成分テクスチャは、それらの材料構造の形成における危険部分と完全に異なる鑑定領域から埋め合わせるランダム成分テクスチャに関するその不確実性及び独立性を継承する。鑑定領域は、English publication Encyclopedia of Cryptography and Security、01/2011 edition、929~934でJorge Guajardoの論文において特に定義されるような「Physical Unclonable Functions」(PUF)に対応する。好ましくは、本発明による被写体の鑑定領域は、上記論文内で「固有PUF」と称される固有の物理的複製困難な関数に対応する。
【0012】
本発明者らは、精密さ、発達、又は成長のその形態から生じるため、その固有機能がこの特定の構造の画像の重畳によってGlassパターンを生成するもので特定の構造、特に印刷又は彫刻を鑑定領域に追加する必要がないように、鑑定領域の三次元構造のランダム性が被写体の又は鑑定領域の性質自体に本来の又は固有のものであるという事実を活用する。本発明によれば、Glassパターンを生じることを目的とする1つ以上の離散パターンを鑑定領域から合成、抽出、又は生成するいずれの必要もない。しかし、これは、例えば、位置合わせ及び/又は相対的縮尺を容易にするように自然の又は加えられた特異点の使用を排除しない。
【0013】
本発明による目視鑑定の方法の実施に適合される鑑定領域を含む材料被写体において、特に以下が言及され得るが、このリストは限定するものではなく、網羅するものでもない:
- 紙又は厚紙包装、
- 繊維材料、
- 金属、プラスチック、セラミック、又は他の焼結材料、
- 胞状又は細胞状材料、
- エイ革を含む革材、
- 木材、
- 金属、特に加工、鋳造、成形、射出、又は圧延されたもの、
- ガラス、磨りガラス、
- 塑性材料、ゴム、
- 織布又は不織布(場合によりデスクリーニングによるもの)、
- 特定の毛皮又は羽毛、
- 以下のような自然の景色の画像、
- 風景画像、
- 草木の画像、
- 曇り空の画像、
- 道路又は歩道の舗装画像、
- 野原又は草地の画像、
- 石又はコンクリート壁の画像、
- 皮膚又は指紋、
- 動物又は人間の眼の虹彩、生体プリント、
- 芸術作品、
- 透明容器又はパッケージ内に貯蔵された粉末又は粒状製品又は材料。
【0014】
鑑定領域における被写体の多重スケール特性は、幾つかの異なる倍率比による自然のテクスチャの観察を可能にし得、Glassパターンが次いで前記倍率比のそれぞれで観察又は生成されやすいことに留意されたい。その上、同じ鑑定領域の異なる部分は、異なる光学的挙動を有し得、例えば、光を透過する部分と、鏡面又は散乱方法で光を反射する部分とを含む。
【0015】
いわゆるGlassパターンに関して、本発明は、Leon GLASSにより、1969年8月9日付の学会誌NATURE、vol.223、ページ578~580及び1973年12月7日付のvol.246、360~362ページの論文において得られたものと類似のパターンが、それぞれ同じ被写体の同じ多重スケールランダム固有三次元材料構造の適切な倍率又は拡大率による取得又は更に写真から生じる自然又はランダム成分テクスチャを含む2つの画像の重畳によって出現する可能性があるという本発明者らによる強調を利用する。この点において、Mathematics Intelligencer、24、Nr.4、37~43ページにおいて2002年に発表されたLeon GLASSの「Looking at dots」という名称の発表、並びに2007年2月27日付のthe Journal of Vision、7.3.5、1~15ページのMatthew SMITHらの「Glass pattern response in macaque V2 neurons」という名称の発表を引用することも可能である。本発明者らは、Glassタイプのこれらのパターンが、同じ材料構造及び互いの本質的な残りの寸法形状変換から生じる連続ランダム成分テクスチャの重畳が存在する場合にのみ出現し、連続ランダム成分テクスチャが十分に相関しないか、又は被写体の鑑定領域に対応する同じ材料構造の取得から生じない場合に実際には出現しないことを実証した。本発明は、従って単一鑑定を可能にすることができる。
【0016】
本発明による方法は、Glassパターンの観察に基づいており、観察は、Leon GLASSによる、全ての人間によって広く共有される視覚システムを実施する。それは、何らの考え又はそのように考え抜かれた知的メカニズムも関与しない、2つの色を区別することに類似した本能的プロセスである。
【0017】
Glassタイプのパターンの観察は、更に、本発明の枠組みにおいて、オペレータが、候補被写体の信憑性を立証するか又は立証しないその決定を確実にするか又は補強することを速やかに可能にする。この点において、本発明は、Glassタイプのパターンが観察される一方、信憑性が鑑定領域の材料構造から生じる連続ランダム成分テクスチャの性質を変える画像処理なしで可視のままであり、及び/又はオペレータによる取扱のためにアクセス可能である被写体の所定の実施条件(実施条件が良好に考慮される場合)において確実である場合に限り、候補被写体の信憑性に関する疑念を解決することを可能にすることが強調されるべきである。他方では、Glassパターンを観察しない場合、本物でない確信をもって結論付けることは不可能である。
【0018】
その上、本発明者らは、材料被写体の鑑定時の場合、前記材料被写体がある期間にわたって十分な材料安定性を有する場合、数日、数ヶ月、数年間で隔てられている可能性のある異なる瞬間に取られた画像が、それらの重畳により、かかるGlassパターンを生成する可能性があることを強調している。その上、本発明によれば、本物の被写体は、鑑定画像の記録後に変更を受ける可能性がある一方、鑑定領域の一部が任意の又は意図しないこれらの変更によって深く影響を受けない限り、鑑定可能なまま残る。
【0019】
本発明者らは、Glassパターンを生成するために、(準)ランダムであるか又はそうでないかを問わず特定の構造の合成及び/又は構成及び/又は製作を行う必要がなく、特に媒体上でランダム又は準ランダム分散を有するドット群を印刷又は生成して、この群の画像の重畳によりGlassパターンの出現を得る必要がないことも強調している。本発明者らは、画像の重畳後に得られるGlassパターンがその非再現特性に基づいて被写体を鑑定しやすく、類似した観察条件において、2つの異なる瞬間でのそのランダム成分テクスチャの取得時、通常、かかるパターンを特定する人間の視覚能力の鑑定又は研究のためにドット画像の合成に応じて出現するだけでないことも強調している。その上、本発明者らは、Glassパターンの観察が、連続ランダム成分テクスチャを有する同じ鑑定領域の2つの画像の重畳によって可能であり、離散要素又は離散パターンを追加、抽出、又は生成することなく、先行技術によって提案されるように可能であることを実証する。
【0020】
本発明は、本発明が、一方では材料構造の単一特性、非再現性、及び不確実性に基づき、他方では人間の視覚システム、すなわち、Leon Glass自身によって示されたようなGlassパターンの存在の識別を自然に実行する後者の能力に基づいている限り、従来のシステムの場合のように、かなり大きい計算能力及び/又は精細なポーリング/比較を一切必要としない簡単なプロセスを実施する利点を有する。その上、測定可能な物理的現実であるGlassパターンの観察は、また、2つの画像間の類似性の測定又は2つの画像の重畳からなる画像に関する現場計測を行う産業用又は人工的な視覚電子デバイスによって実行され得る。
【0021】
第1の実施形態によれば、Glassタイプのパターンによる被写体の鑑定のための方法は、以下のステップ:アドホックデバイスを介して該当し得るように、観察の所定条件において、平均視力を有する観察者によって容易に再現且つ観察できない固有の材料微細構造を有する少なくとも1つのいわゆる鑑定領域をそれぞれ有する、三次元又は材料被写体の中から本物の被写体を選択するステップと、
-記録フェーズにおいて、
- 少なくとも鑑定領域を含む本物の被写体の少なくとも1つのいわゆる鑑定光学画像を取得することであって、取得は、平均視力を有する観察者にとって鑑定領域の前記画像が少なくとも1つの連続ランダム成分テクスチャを有するように、所定の取得倍率又は拡大率で且つ/又は所定条件において行われる、取得することと、
- 鑑定画像を記録することと
を行うステップと、
- 検証フェーズにおいて、
- 各鑑定画像及び候補被写体を、
- Glassパターンタイプの光学現象の出現を観察する場合、候補基材が本物の被写体であると結論付けることと、
- Glassパターンを観察しない場合、Glassパターンタイプの光学現象の出現を観察する場合に候補被写体が本物の被写体であると結論付けるために、鑑定画像の少なくとも局所的な寸法形状変換及び/又は候補被写体に対する鑑定画像の相対的変位を行うことと
のために少なくとも部分的に重畳するステップと
を含む。
【0022】
第1の実施形態の特徴によれば、鑑定画像は、鑑定されることになる被写体又は候補被写体に投影される。
【0023】
第1の実施形態の別の特徴によれば、鑑定画像の取得は、鑑定画像及び候補被写体の重畳を可能にする取得倍率又は拡大率で実行される。
【0024】
第1の実施形態の更に別の特徴によれば、本物の被写体の鑑定領域は、少なくとも半透明であり、及び検証は、透き通しモードで実行される。
【0025】
第1の実施形態の特徴によれば、検証フェーズは、鑑定画像を表示又は投影し、且つ実質的に候補被写体の縮尺で候補被写体及び鑑定画像の重畳を可能にするように適合される少なくとも表示手段を含む電子デバイスによって実行される。
【0026】
本発明による鑑定方法の第1の実施形態によれば、鑑定画像は、候補被写体に適切に直接重畳される。しかし、かかる操作形態は、本発明の実施のために厳密に必要ではない。
【0027】
第2の実施形態によれば、Glassパターンによる被写体の目視鑑定のための方法は、以下のステップ:
- 観察の所定条件において、平均視力を有する観察者によって容易に再現且つ観察できない固有の材料微細構造を有する少なくとも1つのいわゆる鑑定領域をそれぞれ有する、三次元又は材料被写体の中から本物の被写体を選択するステップと、
- 記録フェーズにおいて、
- 少なくとも鑑定領域を含む本物の被写体の少なくとも1つのいわゆる鑑定画像を取得することであって、取得は、鑑定領域の画像のレベルでランダム成分テクスチャを認識することを可能にするように適合される、取得することと、
- 鑑定画像を記録することと
を行うステップと、
- 検証フェーズにおいて、
- 鑑定領域の少なくとも1つの部分を含む候補被写体の少なくとも1つの検証画像を取得することであって、取得は、近い又は類似する縮尺で鑑定及び検証画像の視覚化を可能にする倍率又は拡大率で実行される、取得することと、
- 鑑定及び検証画像を、
- Glassパターンタイプの光学現象の出現を観察する場合、候補基材が本物の被写体であると結論付けることと、
- Glassパターンを観察しない場合、Glassパターンタイプの光学現象の出現を観察する場合に候補被写体が本物の被写体であると結論付けるために、重畳された画像の少なくとも1つの画像の少なくとも局所的な寸法形状変換及び/又は重畳された画像の相対的変位を行うことと
のために少なくとも部分的に重畳することと
を行うステップと
を含む。
【0028】
好ましい実施形態において、単純な重畳で何らのGlassパターンも観察されない場合、検証フェーズが最初に検証及び鑑定画像の相対的な位置合わせを行い、次いで相対的縮尺変更又は相似変換タイプの変換及び/又は回転及び/又は平行移動タイプの変位又はそれらの変位の組み合わせを行うことにより、Glassパターンを探すために継続される。
【0029】
別の好ましい実施形態において、鑑定及び検証画像は類似条件で作成される。
【0030】
好ましいが厳密には必要ではない方法では、目視検証フェーズ中、候補被写体は、直接それを観察するか又は実際に触り得、それを動かすか又は更にその周囲に表示システムに関連する光学又は取得システムを移動させ得るオペレータの前に物理的に存在する。従って、候補被写体は、鑑定操作の信頼性に寄与するオペレータの自信の感覚環境内に位置する。
【0031】
同様に、好ましいが厳密には必要ではない方法では、検証画像上及び/又は鑑定画像上に行われる画像品質修正は、オペレータが、画像内にランダム成分テクスチャの変性及び/又は画像置換がないと確信できるように、その目視制御下においてリアルタイムで行われ、これらの変更は、初期画像に戻ることができるように可逆性であることが好ましい。
【0032】
本発明の枠組みにおいて、実行される重畳は、静的、すなわち、重畳される要素の相対移動がないか、又は動的、すなわち、重畳される要素の相対移動中にオペレータによって決定可能なようなものであり得る。同様に、本発明によれば、2つの画像若しくは画像及びビデオストリーム、又は更に2つのビデオストリームで重畳することが可能であり、ビデオストリームは一連の画像に対応することが理解される。従って、本発明の枠組みにおいて、静的画像の重畳に関して説明されるものは、必要な変更を加えて、同期又は非同期方式での、一連の画像との1つの画像の重畳又は一連の画像同士の重畳に適用する。
【0033】
本発明の2つの実施形態は、Glassタイプのパターンの出現を探すことに留意されたい。ここで、かかるGlassパターンは、本物の被写体の場合にのみ及び本発明の意味において、残留寸法形状変換と称するゼロではないわずかな寸法形状変換が候補被写体と鑑定画像との間又は所定条件で取得された検証及び鑑定画像間に存在する場合に出現する。厳密に同一の要素/画像同士の完全な重畳の理論上の場合、更に本物の被写体の存在において、Glassパターンの出現はなく、従って、この残留寸法形状変換の存在の必要性、及び鑑定画像及び検証画像の取得中の撮影角度又は視点の相違によって誘導される移動又は相対的変位若しくは変換を実施する一般的関心がある。Glassパターンのこの特性は、検証画像の取得条件が鑑定画像の取得条件と厳密に同一である必要がない限り、本発明による大きいロバスト性を提供する。従って、鑑定及び検証画像の解像度は特に異なり得る。
【0034】
本発明により及び第1の実施形態の枠組みにおいて、鑑定画像は、その取得チェーンが光学的部分を含み、人間の眼、人間の視覚システム、又は産業用若しくは自動視覚システムの適切なセンサによって可視又は認知できる光放射による鑑定領域の誘引から生じる光学画像であることに留意されたい。
【0035】
第2の実施形態の枠組みにおいて、用語「画像」は、広範な意味で理解されるべきであり、特に可視光放射による鑑定領域の誘引から生じる光学画像の意味だけに限定されない。従って、第2の実施形態の枠組みにおいて、鑑定及び検証画像は、適切な取得チェーンと関連して任意の種類の鑑定領域の誘引によって得られてもよく、同じ種類又は同じ性質の誘引が鑑定及び検証画像の取得のために実施されることが理解される。想定できる種類の誘引又は取得の形態において、特に超音波、X線又はガンマ線照射、X線又はレーザ断層撮影、X線撮影、磁気共鳴について言及され得るが、このリストは限定するものではなく、網羅するものでもない。
【0036】
本発明の第2の実施形態の好ましいが厳密には必要ではない特性によれば、検証フェーズは、少なくとも、
- 少なくとも1つの検証画像を取得するように適合される取得手段と、
- 検証画像を視覚化スクリーン上に表示し、且つ実施的に同じ縮尺で検証及び鑑定画像の重畳を可能にするように適合される表示手段と
を含む電子デバイスによって実行される。
【0037】
好ましいが厳密には必要ではない方法において、電子デバイスは、重畳された画像の絶対又は相対的透過又は不透過レベルを変調又は調整することを可能にするように適合される。この透過又は不透過レベルは、チャンネルαとも称される。従って、電子デバイスはチャンネルαの調整を可能にするように適合されるのが好ましい。
【0038】
本発明の変形例によれば、電子デバイスは、取得手段及び候補被写体の相対的変位から生じる一連の又は一続きの検証画像の表示を提供し、且つ鑑定画像との検証画像の重畳を可能にするように適合される。この変形例は、特に、候補被写体上の鑑定領域の正確な場所が完全に知られていないか、又は後者上に印を付けられていない場合、本発明による方法を容易に実施することを可能にする。
【0039】
本発明の別の変形例によれば、記録ステップ中、一連の鑑定画像が取得され、検証フェーズ中に用いられる電子デバイスは、一連の検証画像を取得し、一連の検証画像との一連の鑑定画像の重畳の可視化を可能にするように適合される。
【0040】
本発明の別の変形例によれば、電子デバイスは、重畳された画像の少なくとも1つの画像の少なくとも局所的な寸法形状変換及び/又は重畳された画像の相対的変位を実行するように適合される処理手段を含む。この変形例は、特に、次いで1つの検証画像のみの取得を引き起こすことができるオペレータのタスクを容易にし得、電子デバイスは、次いで、本物の被写体の場合にGlassタイプのパターンの出現のために必要とされる相対的変位又は相対的寸法形状変換を実行することを可能にする。
【0041】
本発明の更に別の変形例によれば、少なくとも1つの検証画像は、デジタル方式で記録される。かかるデジタル方式の記録は、電子デバイスによって行われる後続の処理操作を実質的に容易にする。
【0042】
本発明の意味において、用語「記録」は、説明することなく、本発明の対応する実施と適合する条件下において広範な意味で理解されることに留意されたい。従って、用語「記録」は、本発明の意味において、デジタル又はアナログ形式で任意の適切な方法により記録することに関する。本発明と適合する実施形態において、特に任意のコンピュータ及び/又は電子フォーマットでの記録、例えば透明媒体のような本発明の実施のために適合される媒体上での印刷形態での記録、ポジ又はネガ等の媒体上での写真記録、カラー又は白黒写真フィルム、ホログラフ形態での記録、特にレーザによる彫刻形態での記録について言及され得るが、このリストは限定するものではなく、網羅するものでもない。
【0043】
本発明の別の変形例によれば、検証画像は、可視化され、且つ/又はバイナリ形式、階調、若しくは中間調、若しくはカラーで記録される。同様に、本発明の更に別の特徴によれば、鑑定画像は、可視化され、且つ/又はバイナリ形式、階調、若しくは中間調、若しくはカラーで記録される。
【0044】
本発明の特徴によれば、電子デバイスは、重畳から生じる少なくとも1つの画像を記録するように適合される。
【0045】
本発明の別の特徴によれば、鑑定方法は、電子デバイスによって少なくとも部分的に実行される自動検証フェーズを更に含む。電子デバイスによって実行される自動検証フェーズの一部は、次いで、単に検証画像の取得及び外部処理ユニットへのこの検証画像の送信を含み得る。当然のことながら、電子デバイスは、自動検証フェーズのステップの全てを実行し得る。
【0046】
本発明の特徴によれば、自動検証フェーズは、検証画像と鑑定画像との間の類似係数を計算して、類似係数が所定の閾値よりも高い場合、高い確率の信憑性又は更に確実性を結論付け、且つ逆の場合、信憑性を結論付けない(疑念が解消されない)ステップを含む。
【0047】
この特徴の変形例によれば、類似係数の計算は、例えば、検証画像及び鑑定画像から抽出される署名に基づいて実行される。所定の、通常、ガボール関数又は一次視覚野のそれぞれの視界の特性とのウェーブレットマッチングに基づいて解析される画像の「分解から生じる」ベクトル(J.G.Daugman、Computational Neuroscience、ed.Schwartz E.、403~423、MIT Press、Cambridge、MA、1990を参照されたい)、又は非負行列因子分解(NMF)若しくは主成分分析(MCA)による、このファミリーの特徴と一致する、通常、被写体画像が属するファミリーに関して学習される基部を用いることも可能である。非定型的な使用(すなわち、ガボール以外の定義済み基部及び被写体画像が属するもの以外のファミリー)が可能である。
【0048】
署名は、直接的に、例えば、NMFの場合、分解ベクトル及び類似性測定、ユークリッド距離であり得る。署名は、分解ベクトルの成分の符号を形成するベクトル及び類似性測定、ハミング距離、すなわち、鑑定される他の種類の被写体に容易に転置され得るDaugmanの場合の「虹彩コード」であり得る。
【0049】
自動検証フェーズは、第三者又はオペレータへの自動検証の結果の伝送又は通信のステップを含み得る。「第三者」により、例えば、製造者、候補被写体の供給者又は所有者、証明又は鑑定当局、管轄又は行政又は国際機関、公共団体、サービス提供者、信頼できる第三者機関のようなオペレータと異なる任意の人物が理解されるが、このリストは限定するものではなく、網羅するものでもない。自動検証の結果は、また、送信前にオペレータの地理位置情報、タイムスタンプ、プロフィール、又は識別データ等の他のデータに関連させ得るが、このリストは網羅するものではない。かかるデータは、更に顧客関係管理(CRM)又は「強化された顧客体験」用途の枠組みにおいて用いられ得る。かかるデータは、また、特に、この被写体が、流通ネットワークを制御し、平行流通を防ぐために提供される管轄領域内にあるかどうかを知るために、鑑定された被写体の制作者又は販売店によって用いられ得る。
【0050】
オペレータによって行われる目視鑑定フェーズが、また、任意の自動検証と無関係であり得、オペレータによって開始される第三者への情報送信フェーズが後に続くことに留意されたい。送信される情報は、特に疑念が解消されたかどうかを示すことができる。
【0051】
本発明の2つの実施形態において用いられやすい特徴によれば、鑑定画像は、鑑定画像に、セルであって、場合により変換の集合の中から選択された少なくとも形状寸法変換を受けた後、その内側が鑑定画像の対応する部分によって形成される、鑑定画像と関係のない厚い縁部を有するセルの行列又は格子を適用することによって記録される。鑑定画像のかかる記録モードは、特定の用途において、オペレータによって行われるチェック又は検証を容易にし得る。格子の全てのセルが必ずしも同じ形状を有する必要はないことに留意されたい。その上、各セルの大きさ又は表面は、場合により、対応するセル内でGlassパターンの全体又は部分的な視覚化を可能にするために十分であるように選択される。セル縁部の厚さは、セル間の表面を離間させる役割を果たし、場合により、所定のセル(2つの非同一セルの内側間で独立した)に適用される逆変換の予測を可能にしないように、対象のセルの位置において鑑定画像の相関関係の長さと少なくとも等しくなければならない。「相関長さ」により、考慮される画像の自己相関ピークの高さの半分の幅に比例する値を理解すべきである。
【0052】
この特徴の変形例によれば、変換を受けるセルは、検証画像との重畳時にメッセージ又はパターンを形成するように選択される。本発明の実施のこの変形例は、2つの共有画像を有する視覚暗号方法として見なされ得、画像の一方が鑑定画像であるのに対し、他方の画像が候補被写体自体又は検証画像のいずれか一方である。
【0053】
本発明の変形例によれば、セルの格子及びセル毎に行うか行わないかの変換の選択は、この後者の場合においてのみ適用されるか、又は検証画像にも適用され得ることに留意されたい。秘密メッセージ-画像の暴露に加えて、本物の被写体の場合にメッセージ-画像の可視化は、オペレータの決定及び自信を容易にし、強化することができる。
【0054】
本発明の2つの実施形態に適用できる特徴によれば、寸法形状変換は、少なくとも1つの固定又は準固定点を有する線形又は非線形性の剛性タイプ又はそうでないことを選択される画像に対して局所的に適用される少なくとも1つの残留寸法形状変換を含む。適用できる寸法形状変換において、従って、上記に示し、引用して本明細書中に組み込むLeon Glassによってその1973年及び2002年の論文内で説明された変換を実施することが可能である。準固定点により、残留寸法形状変換後、残留寸法形状変換に起因する最大変位に対して小さい振幅の変位を受ける点を理解すべきである。
【0055】
本発明の2つの実施形態に適用できる別の特徴によれば、寸法形状変換は、変更前の鑑定領域の画像の変更された部分の小さい振幅の縮小変更を誘発する。
【0056】
本発明の2つの実施形態に適用できる更に別の特徴によれば、相対的変位は、平行移動、回転、又は1回若しくは幾つかの回転及び/若しくは平行移動の組み合わせである。
【0057】
本発明の2つの実施形態に適用できる特徴によれば、相対的変位の距離は、小さい振幅に低減される。
【0058】
本発明の特徴によれば、鑑定画像は、写真フィルムタイプのアナログ媒体上にアナログ形式で記録されるか、又は透明媒体上に印刷される。
【0059】
本発明の別の特徴によれば、鑑定画像は、階調又は中間調で記録される。当然のことながら、鑑定画像は、カラーでも記録され得る。
【0060】
本発明の更に別の特徴によれば、鑑定画像は、デジタル形式で記録され、例えば、鑑定画像の格納スペースを最適化するように圧縮フェーズを受け得る。
【0061】
この特徴の変形例によれば、鑑定被写体は、識別子と関連付けられ、及び対応する鑑定画像は、本物の被写体の識別子によって少なくともインデックスを付けられることにより、データベース内に格納されるか、又は鑑定画像は、インクラステーション(透かし、タトゥー、...)として識別子を担持し得る。識別子は、次いで、異なる公知の方法に従って本物の被写体によって記録又は格納又は担持され得、悪意のあるユーザに対して部分的に隠されるのが理想である。
【0062】
この特徴の別の変形例によれば、候補被写体の識別子は、鑑定領域から抽出又は計算される署名である。従って、検証フェーズは、重畳ステップより前に候補被写体の署名を判定し、その後、判定された署名を、この送信に応じ、署名に基づき、電子検証デバイスに対して重畳ステップのために用いられるべき1つ以上の鑑定画像を宛てるサーバに送信するステップを含み得る。サーバは、次いで、本物の被写体の署名及び場合により識別子に基づいてインデックスを付けられた鑑定画像の拠点を含む。検証は、次いで、データベース内(1対1鑑定)、又は最も近い署名及び/又は最も似た本物の被写体としてデータベース内で識別されるn署名(nは小さく、通常、1~10程度である)のサブセット(1対n鑑定)に関連して指し示す署名のいずれかにより候補被写体から抽出された署名を定量的に比較することを含み得、対応する鑑定画像は、次いで視覚認識にかけられるか、又は本発明の方法オブジェクトの実行のためのようなものとして伝送されやすい。
【0063】
本発明の特徴によれば、鑑定及び/又は検証画像は、重畳前に少なくともデスクリーニング及び/又はフィルタリングを受ける。この特徴は、本物の被写体の場合にGlassタイプのパターンの認識に干渉するか又はそれを妨げやすい潜在的な周期パターンを排除することができる。
【0064】
本発明の好ましい特徴によれば、鑑定及び検証画像は、重畳を考慮して、検証フェーズのために、コントラスト、明度の向上又は変更、中間調変換、階調又は白黒への経路等の測色空間変更の操作、特定の濃淡の飽和度の変更操作、チャンネルαを介する相対的不透明度のレベル反転又は変更以外の何らの変換も受けない。従って、この好ましい特徴によれば、画像は、概して、被写体の本質を視覚的に認識する可能性に影響を及ぼさない、いわゆる改良変換を受ける。好ましくは、適用される変換は、画像、特にそれらが含む連続ランダム成分テクスチャを変性しない。これは、本発明の暗号法変形例のセル内に位置する画像の一部にも適用する。改良操作は、2つの画像の1つのみに関係し得、その上、これらの改良操作は必ずしも常に本発明の実施に必要でないことに留意されたい。本発明の特徴によれば、2つの画像の少なくとも1つは、任意の格子、厚さ若しくはそうではないもの、規則性、周期性、又はランダムによってサンプリングすることを含む何らの変換も受けない。
【0065】
本発明の別の特徴によれば、本物の被写体上の鑑定領域の位置が記録される。かかる記録は、絶対に必要というわけではないが、検証フェーズを容易にすることができる。
【0066】
本発明の更に別の特徴によれば、鑑定領域の位置は、本物の被写体上で印を付けられる。この印は、また、絶対に必要というわけではないが、検証フェーズを容易にすることができる。
【0067】
本発明の特徴によれば、本物の被写体は、以下の文書、被写体、又は対象カテゴリ:信託文書、機密文書、紙幣、契約書類、硬貨、公文書、身分証明書又は用紙、贅沢品、芸術作品、芸術製品、規制品、包装、特に錠剤の薬剤、機械安全部品等、機械摩耗部品、光学的可変構成部品、保護ホログラム、及び信憑性及び/又は完全性をチェックすることを可能にするために必要であることを証明できる一般的な任意の物体、製品、又は被写体の少なくとも1つに属する。
【0068】
本発明は、また、本発明による鑑定方法の実施のいずれか1つ、特に検証フェーズのために用いられやすい電子デバイスに関する。このデバイスは、そのディスプレイスクリーン上で、相対的に、場合によりデジタル方式で、回転、水平、それぞれ垂直に従う縮尺の変更、平行移動、又は特に光学的な歪み修正を実行する可能性を提供することにより、チャンネルαを介するその時点の検証及び鑑定画像の重畳を行うことを可能にする。好ましいが厳密には必要ではない方法において、電子デバイスは、視覚化タッチスクリーンを含み、タッチスクリーン上で2つの接触点の変位により、鑑定画像及び/又は検証画像の視覚倍率比の変更を可能にするように適合される。通常、4倍の倍率比が調べられ得る。タッチスクリーンは、また、重畳された画像の相対的変位、通常、10°未満のゼロではない角度による回転を制御するために有利に用いられ得る。このデバイスは、Glassタイプのパターンの効果的な検索を実行することが可能である。特に、デバイスは、好ましい検索に従って最初に検証及び鑑定画像の位置合わせを行い、次いでGlassタイプのパターンを出現させるために残留寸法形状変換を実行することが可能である。代替例は、Glassタイプのパターン又は画像の位置合わせを得るまで、検証及び鑑定画像のそのような重畳を行うことを含む。
【0069】
当然のことながら、本発明の方法の異なる特徴、変形例、及び実施形態は、それらが互いに関して相容れないか又は排他的でない限り、様々な組み合わせに従って互いに関連し得る。
【0070】
その上、本発明の様々な他の特徴が、本発明による方法の非限定的な実施形態を示す図面を参照して与えられる以下の説明から生じるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】鑑定領域が取り囲む紙幣によって形成される、本発明による方法によって鑑定される本物の被写体である。
図2】本発明による方法の例示的な実施形態のブロック図を示す。
図3図1の本物の被写体の鑑定領域の鑑定画像である。
図4図1の本物の被写体と類似する候補被写体の鑑定領域の検証画像である。
図5】本発明による方法の検証フェーズの取得ステップの実施例を示す。
図6】Glassパターンを視覚化することを可能にする、図3及び4の画像同士の重畳の画像である。
図7】本発明の枠組みにおいて視覚化されやすいGlassパターンの様々な可能性のある形態を完全に網羅されていない方法で示す。
図8】鑑定領域が印刷された枠によって識別される1枚の紙によって形成される、本発明による方法によって鑑定される本物の被写体の画像である。
図9図5の本物の被写体の鑑定領域の、ここではスライドの鑑定画像である。
図10】Glassパターンを視覚化することを可能にする、図5及び7の画像同士の重畳の画像である。
図11図5のものと異なり、鑑定領域が印刷された枠によって識別される1枚の紙によって形成される候補被写体の画像である。
図12】Glassパターンを視覚化することができない図6及び8の画像同士の重畳の画像である。
図13】手のひらによって形成される、本発明による方法によって鑑定される本物の被写体の鑑定画像である。
図14図13のものと類似する候補被写体の検証画像である。
図15】Glassパターンを視覚化することを可能にし、従って候補被写体が本物の被写体であることを示す、図13及び14の画像同士の重畳の画像である。
図16】自然の景色によって形成される本物の被写体の鑑定画像である。
図17図16のものとわずかに異なる撮影角度による図16の本物の被写体の検証画像である。
図18】Glassパターンを視覚化することを可能にする、図15及び16の画像同士の重畳の画像である。
図19】透明容器内に貯蔵された粒状製品によって形成される本物の被写体の鑑定画像である。
図20図19の本物の被写体の検証画像である。
図21】Glassパターンを視覚化することを可能にする、図19及び20の画像同士の重畳の画像である。
図22】砂の広がりによって形成される本物の被写体の鑑定画像である。
図23】砂の広がりの一部がかき回され、ここでは影が存在するという点で図22のものと異なる図22の本物の被写体の検証画像である。
図24】Glassパターンを視覚化することを可能にする、図21及び22の画像同士の重畳の画像である。
図25
図28は本発明による方法を用いた目視的暗号の実相を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
これらの図面において、異なる変形例に共通の構造的及び/又は機能的要素は、同じ参照を有し得ることに留意されたい。
【0073】
本発明による方法の第1の例示的な実施形態の枠組みにおいて、鑑定される被写体Sとして、図1に示すような透かし入り用紙上に印刷された紙幣を選択する。そのために、鑑定領域Rとして、少なくとも部分的に半透明な透かし領域を選択する。かかる透かし領域Rは、Glassパターンが検証フェーズ中に出現するべきであるレベルにおいて鑑定領域を容易に識別するための手段を提供する透かしパターンを含む利点を有する。その上、透かし領域は、容易に再現できない又は再現不可能な本質的にランダムな連続媒体に観察尺度において匹敵する固有構造を構成する紙の繊維構造を容易に観察することを可能にする。紙の場合、この微細構造が、全ての方向を照らし、本質によってランダムであり、同じ1枚の紙において又は同じ機械から出る複数の紙において若しくは異なる機械から出る複数の紙でも、一領域から別のものまで異なる光を散乱させるという点で、再現不可能な本質的にランダムな連続微細構造について述べることが可能である。
【0074】
図2で見て取れるように、第1に、例えば、紙幣の製造後及びそれらの流通前に行われる記録フェーズEが実行される。記録フェーズは、例えば、各紙幣のシリアル番号の印刷直後に介在し得る。
【0075】
この記録中、本物の被写体を形成する各紙幣に対して、少なくとも鑑定領域を含む、図2に示すいわゆる鑑定画像iAの取得Elのために実行される。取得を実行するため、各紙幣を電子データ記録及び記憶システムに接続された取得ビデオカメラの前に配置することが可能なシステムが実装される。紙幣の照明は、取得領域が伝送モードで観察されるように、取得カメラの反対側で実行されるのが好ましい。一般に、被写体、本明細書中では紙幣の照明は、鑑定領域の反射及び/又は伝送における光学的挙動に適合される。
【0076】
各鑑定画像iAの取得は、所定の取得倍率又は拡大率で行われ、この場合、紙の微細構造の性質に適合される。本発明による方法のこの例示的な実施形態によれば、取得倍率比は中間の光学系を用いずに目視観察と一致する初期値で選択される。本発明の枠組みにおいて、倍率比は、対象物の対応する寸法に対する、光学系によって与えられる最終画像の線寸法の1つの比率に対応する。同様に、本発明の枠組みにおいて、倍率比は、観察される対象物の直径又は見掛け角度と観察取得機器によって与えられる画像の直径又は見掛け角度との間の比率に対応する。
【0077】
図3に示すような各鑑定画像iAは、その取得後、場合により圧縮形態で、対応する紙幣の識別子、例えば、そのシリアル番号に基づいてインデックスを付けることにより、データベースBd内に記録されるE2。
【0078】
検証フェーズVにおいて、オペレータが記録フェーズを受けた一連の紙幣に属する1枚の紙幣の信憑性を検証することを望む場合、オペレータは、鑑定領域の検証画像iVの取得V1を行う。検証画像iVは、例えば、タッチ式又はそうではないカメラ及び視覚化スクリーンを含む、例えば、スマートフォン等の電子デバイスDを用いてある倍率比で取得された完全な透かしの画像を含み得る。電子デバイスは、画像取得手段、コンピューティング及び画像処理手段、拡張された通信ネットワークと通信するための手段、画像可視化手段、入力手段を含み、本発明による方法の少なくとも特定のステップを実施するように適合されるのが好ましい。実装されやすい電子デバイスの中で、特にスマートフォンに加えて、タブレット、一体型投影システムを有するスクリーン、メガネ等の取得及び可視化システムに関連するコンピュータ、ビデオ映写機が言及され得るが、このリストは限定するものではなく、網羅するものでもない。
【0079】
図4に示すような検証画像は、例えば、図5に示すように取得中に背後から照らされるように、候補被写体Sを窓ガラス1上に載置することによって作成される。鑑定及び検証画像の取得条件は、必ずしも同一ではなく、近いことが好ましい。この場合、オペレータは、検証画像の取得時、オペレータが行うチェック操作に対するオペレータの確信を補強することに寄与する候補被写体Sを保有することに留意されたい。
【0080】
その後、オペレータによって電子デバイスD上に予めインストールされる適切なアプリケーションが実施される。このアプリケーションは、オペレータによって予め入力された候補被写体のシリアル番号に基づき、データベースがシリアル番号に対応する鑑定画像iAをアプリケーションに送信するようにリモートデータベースを検索する。アプリケーションは、次いでステップV2において、図6において表す画像を可視化することを可能にする検証画像及び鑑定画像の重畳を提供する。検証及び鑑定画像が実質的に位置合わせされていないか、又は一致していない場合、オペレータは、検証及び鑑定画像の相対的変位を行って、透かしパターンの補助により、スマートフォンのキーを用いて又はその指をスクリーン上、後者の場合にはタッチスクリーン上で動かすことにより、それらの位置合わせに気を配る。オペレータのこの行動は、次いで、2つの画像の一方を、それらが最初に一致する場合に他方に対してオフセットさせ、それらの位置合わせ/一致の近傍におけるGlassパターンの形成によりそれらの類似点を次第に強調することを可能にする。しかし、検証画像に対する鑑定画像のこの相対的変位、ステップV3中、オペレータが、図6で見て取れるようなGlassパターンを観察する場合、オペレータは、候補被写体がその保有する本物の被写体、本明細書中では紙幣であると結論付け得る。
【0081】
オペレータが、この位置合わせ操作中及びオペレータが鑑定及び検証画像を一致位置に配置するときまでに何らのGlassパターンも観察しなかった場合、オペレータは、その後、2つの画像のわずかな相対的変位、例えば、通常、2°又は5のわずかな回転を制御し得る、ステップV4。このわずかな変位は、次いで、位置合わせ操作に用いられるものと類似した命令から生じ得る。わずかな変位は、また、それらのパラメータが予め記録された、2つの画像の相対的変位を自動的に操作するアプリケーションの機能から生じ得る。このわずかな変位後、観察者がGlassパターンを観察した場合、ステップV5、観察者は、候補被写体が本物の被写体であると結論付けることができる。一方、観察者が何らのGlassパターンも観察しなかった場合、観察者は候補被写体と本物の被写体との間の識別を結論付けることができず、観察者は疑念を払拭することができない。
【0082】
2つの画像の1つの位置合わせ又は変位がオペレータによって開始され、決定されるという事実は、オペレータに対し、オペレータが操作を良好にマスターしていることを確認し、従って実行するチェック操作に対するその確信を補強することを可能にする。実際、目視鑑定の枠組みにおいて、鑑定があるか否か決定するのはオペレータであるため、オペレータに間違った情報が提供されることに関する恐れがないように、目視鑑定の最後のステップはオペレータによって行われる。
【0083】
本発明による鑑定方法は、従って、簡単な方法で候補被写体の信憑性の検証を行うか、又はオペレータによって鑑定されることを可能にし、候補被写体の信憑性についての最終決定はオペレータの責任のままである。その上、オペレータのこの介在は、自動的な方法で行われるチェック操作を補強し得る。
【0084】
その上、図6で見て取れるように、透かしの明るい及び暗い領域において、明るい及び暗い領域に延在する適用された変位又は変形から生じる連続性又はトレースと共に、Glassパターンが現れることに留意されたい。従って、本発明者らは、Glassパターンの出現が、Leon Glassによってその前述の刊行物において実施されたような均一に明るい又は暗い背景及びドットクラウドを必要としないことを強調している。
【0085】
その上、紙幣に組み込まれる他のセキュリティ要素は、オペレータが行った鑑定を補強するためにそれらを用い得るオペレータに対してアクセス可能且つ可視のままであることに留意されたい。
【0086】
本発明による方法は、鑑定及び検証画像が、例えば、少なくとも1つの固定又は準固定点を有する相対的な寸法形状変換Gによる互いの本質的な寸法形状の変換であるという意味で、又はこれらの画像が類似した条件におけるそれらの取得中の視点及び付近曝露による被写体の本質的な射影変換に起因するという意味でも、変更が依然として小さい条件下でこれが方法の実施を妨げることなく、鑑定iA及び/又は検証iV画像又は本物の被写体Sが、時間が経つにつれて変更を受ける可能性がある限り、特にロバストである。
【0087】
本発明の実施を妨げない変換又は変更の中で、以下:
- そのパラメータが、観察者の観察に関連する確信を更に補強するよう(及び「イエスマシン」が存在するという仮説を除外するよう)に観察者によって付与される、予め定義されておらず事前に知られていない移動に従って、時間が経つにつれて変化する小さい変位(回転-平行移動)又は小さい寸法形状変換、画像を向上させるための軽微な処理(信号レベル変換、スカラー又はベクトル定量化、コントラスト強調、補間、...)、軽微な光学的歪み(光透過性構成部品を介した図)、
図5の矢印F1~F3によって示されるような装置の小さい傾斜角に例えば起因する鑑定画像と検証画像との間の撮影角度の動的又は静的変化に起因する画像の軽微な歪み、
- 取得ノイズの(任意の取得/再取得において暗黙の)影響、
- 使用により鑑定領域が受ける軽微な損傷(経年変化、摩耗、局部損傷...)、
- 上塗り、膜被覆タイプの軽微な表面処理
について言及され得、このリストは限定するものではなく、網羅するものでもない。
【0088】
本発明の枠組みにおいて視覚化されるGlassパターンは、全て鑑定及び検証画像間、すなわち鑑定画像と、候補、すなわち鑑定される被写体との間の物理的な相関関係が高く、少なくとも1つの固定又は準固定点から変動するため、より多く観察可能であり且つ存在している。この変動は、中間周波数領域の詳細が保存され、且つそれらのコントラストが高いため、より重要である。光学及び/又はデジタル画像改善前処理操作がより良好な観察のためにそれらに適用され得る。従って、観察尺度のより良好な選択を可能にする光学ズーム(可変焦点装置)及び/又はデジタルズーム、焦点はずれ又は運動を解消するための画像デコンボリューション、中間周波数詳細を選択/偏重するための帯域フィルタリング、又はコントラストを強調するためのコントラスト強調が例として適用され得る。従って、潜在的なGlassパターンの可視化を容易にするために、鑑定及び検証画像並びに重畳画像は、それらの表示前若しくは更にそれらの記録前に、反相関を観察する図と共に他方(ポジ画像)のネガ画像を形成するように、特に階調若しくは分解カラーチャンネルヒストグラム等化によるか、又は階調若しくは分解カラースケールの反転による1回又は幾つかの例えばコントラスト強調等の改善処理操作を受け得る。
【0089】
その上、電子デバイスDは、鑑定領域の検証ビデオストリーム、すなわち、一連の検証画像との鑑定画像のリアルタイムでの重畳を可能にするように適合され得る。従って、候補被写体との電子デバイスの相対運動は、撮影角度の、又は全般的には撮影角度に対するそれぞれ鑑定画像の視点に対する検証画像の視点の変動を誘発する。この変動は、鑑定領域の画像の重畳の場合にGlassパターンの出現を含む。この点において、出現しやすいGlassパターンは、必ずしも図6で見て取れるような単一中心螺旋又は円構造でないことに留意されたい。従って、図7はGlassパターンの他の形態を示し、これは、本発明の枠組みにおいて出現しやすいGlassパターン形態の網羅的又は限定的な提示ではないことが理解される。
【0090】
本発明の実施の別の変形例によれば、例えば、本物の被写体を形成する図8に示すような1枚の紙を鑑定するため、鑑定画像が反転タイプの写真フィルム上に記録されて、鑑定される紙上に示されるか、又は印を付けられ得る被写体の鑑定領域Rの実質的に1に等しい倍率比で図9に示すスライドを形成する。
【0091】
検証フェーズ中、操作は、スライドを紙の鑑定領域に重畳し、図10に示すように背面から全体を照明することによる透き通しモードでこの重畳の結果を観察する。オペレータがGlassパターンを観察した場合、オペレータは信憑性を結論付けることができる。一方、観察者が何らのGlassパターンも観察しなかった場合、観察者はスライド及び紙のわずかな相対的変位を実行してそれらの位置合わせを行う。位置合わせ中、観察者がGlassパターンを認識する場合、観察者は紙の信憑性を結論付け、そうでない場合、観察者は被写体の信憑性を立証できない。完全な重畳でない限り、逆に手動で得るのは困難であるが、重畳時にGlassパターンの少なくとも初期段階が出現し、ここで、このパターンは変位によって目立たせることができることに留意されたい。
【0092】
図6の鑑定画像に対応しない図11に示すような1枚の紙の鑑定画像の重畳の場合、何らのGlassパターンも、図12で見て取れるように見られない。
【0093】
1枚の紙に重畳されたスライドからなる鑑定画像による本発明による方法の実施は、Glassパターンが同じ材料被写体の同じ鑑定領域の取得から生じる2つの自然テクスチャの重畳により認識できることを疑いなく実証することが強調される。更に、重畳された画像のテクスチャは、裸眼により又は概して10倍未満、好ましくは2倍~5倍の倍率比により観察された構造に起因することに留意し得る。従って、Glassタイプのパターンを出現させるためにサブミクロン構造の画像を用いる必要はない。
【0094】
図1~12に関して上で説明する例示的な実施形態において、鑑定及び検証画像の取得は、被写体を通る光の伝送において行われる。しかし、本発明による方法は、その取得が反射モードで行われる鑑定及び検証画像により実施され得る。
【0095】
従って、本発明による方法は、図13に示すような鑑定画像が予め記録される手のひらの鑑定のために実施され得る。この記録に続いて、信憑性の検証又は識別が行われ、図14に示すような検証画像が取得される。次いで、2つの画像は図15に示すように重畳される。Glassパターンが図15において観察できる限り、図13の手のひらの鑑定画像は図14の手のひらの検証画像に対応すると結論付けることが可能である。
【0096】
本発明は、異なる行為者、すなわち制作者、販売者、小売業者、消費者が全てこのチェックを実行するために自由に使える異なる金融及び技術的手段と共に、信憑性チェックにより興味を有している、例えば、サプライチェーンの追跡性の過程におけるような異なる分野において用途を見出す責任がある。従って、本発明は、それが、制作者から物流の下流部分及び消費チェーンまで、簡単なツールにより、それらの秘密が保全されなければならない複合アルゴリズムを有することから抽出されるデジタル署名を用いる場合に存在する可能性があるような実施秘密の漏洩の危険なしに、チェックを実行する可能性を提供するという点で特に有利であることを証明する。その上、知的財産権を保持する制作者は、また、制御された製品がサプライチェーン内の良好な場所(並行市場の制御)にあるかどうかを知ることに興味を有している可能性があるのに対し、消費者は、最初に対象の製品が事実上本物であるか、消費者が本物の製品を介して同意できるサービスに関心があるかどうかを知ることを心配する。全体は、単一の自動鑑定手段(署名及び識別子)と本発明の視覚物体鑑定手段との共同の補助により上で示したように実施され得る。アクセス制御は、従って、署名の抽出によるか又はそれによらずに実施され得る。
【0097】
本発明は、鑑定、識別、シリアル化、完全性チェック、及び視覚暗号法の様々な用途の枠組みにおいて実施され得る。この点において、本発明の枠組みにおいて、用語「鑑定」、「識別」、及び「完全性チェック」は、考察された用途に従って均等であり得ると考えられるべきである。
【0098】
本発明は、図16~18に示すような自然の景色、すなわち風景を識別するために実施され得る。図16は、前景に草地、背景に山を有する平原の画像である。図17は、わずかに異なる撮影角度での同じ景色の画像である。
【0099】
図18は、画像の左下にGlassパターンを出現させることを可能にする、わずかな相対的回転による2つの画像の重畳の結果である。このパターンの出現は、取得の条件の相違に対する本発明の方法のロバスト性を実証することを可能にする。その上、Glassパターンの出現は、2つの画像が同じ自然の景色に対応すると結論付けることを可能にする。従って、図16の画像から図17の画像の景色を識別することが可能である。これは、例えば、図16の画像が特徴的な山の背景を有さずに草地の一部のみを構成していた場合にも可能である。2つの画像の重畳は、画像17が画像16の草地の一部に対応することを推定することを可能にするであろう。同じ原理が、画像若しくはフィルム又はビデオの一連の画像の完全性を制御するために用いられ得る。その上、草地画像の実施により、本発明者らは、物体からGlassパターンを出現させるには顕微鏡サイズ又は非常に小さいサイズの構造を実装する必要がないことを再度実証する。
【0100】
図19~21は、透明容器内に貯蔵された粒状製品の完全性をチェックするための本発明の実施を示す。図19の画像は、瞬間T0に撮られたのに対し、図20の画像は、瞬間T1に撮られており、撮影角度が図19のものとわずかに異なる。わずかな相対的回転を有する画像19及び20の重畳は、図21で見て取れるようにGlassパターンを出現させている。このGlassパターンの出現は、それらが同じ容器であることを良好に結論付けることを可能にする。その上、Glassパターンの出現は、Glassパターンが見られる容器の中身が変位されていないか、又は機械的に影響を受けていないと結論付けることを可能にし、それはまた、この中身の完全性を結論付けることを可能にする。
【0101】
図22~24は、2つの異なる瞬間で可視化し、部分的に変更された砂の表面の鑑定又は識別のための本発明の実施を示す。従って、図22は、初期状態の砂の表面の画像であるのに対し、図23は、棒で行った印2によるこの表面の変更後に取得された同じ表面の画像である。図23の画像は、影3の存在により、及び撮影角度のわずかな相違により図22のものと異なる。わずかな相対的回転を有する2つの画像の重畳は、図24で見て取れるようにGlassパターンMを出現させている。このGlassパターンの視覚化は、それが良好に砂の同じ表面であり、従って同じ場所であると結論付けることを可能にする。その上、Glassパターンの観察は、本発明による方法が本物の被写体の部分的な変更に対して耐性を有し、鑑定及び検証画像の取得条件の変化に関してロバストであることを実証する。
【0102】
更に、Glassパターンは、表面の又は鑑定領域の変化部分に対応する画像の領域において観察されないことに留意され得る。従って、本発明は、Glassパターンが見られ、鑑定領域が完全性を有するか、又は鑑定画像の取得から変更されていないと結論付けることができる限り、鑑定領域の完全性をチェックするために実施され得る。
【0103】
従って、本発明による方法は被写体の表面の完全性を制御することを可能にする。そのため、一連の鑑定画像は、その完全性が検証される表面を覆うように撮られる。一連の鑑定画像は記録フェーズの枠組みにおいて記録される。この場合において完全性チェックに対応する鑑定フェーズ中、その完全性が検証される表面の一連の検証画像は後者を覆うように撮られる。次いで、表面のある領域の各鑑定画像は、Glassパターンの視覚化が生じた場合、対応する領域の完全性において、パターンが出現しない領域に存在する完全性についての疑念を結論付けるために、表面の同じ領域の検証画像に重畳される。
【0104】
本発明の別の変形例によれば、目視鑑定の方法は視覚暗号法を実施する。この変形例は、その実施により、純粋な視覚暗号法に例えられ得ることに留意されたい。通常、それは、重畳中にメッセージのコントラストを強調するために、階調反転を伴う残余寸法形状変換により、鑑定画像上の厚い縁部格子内で回転を局所的に適用するよう選択され得る。
【0105】
これに関連して、セルであって、その内側面が鑑定画像の対応する部分によって形成され、及びセルが、画像の連続性を絶って各セル内に適用される寸法形状変換のいずれの検出も回避するように意図される独立した厚い縁部によって離間される、セルの行列又は格子に従ってマスクされた後、記録される1枚の紙の鑑定画像であり、その選択は、ランダムビットにより且つ場合により、図25で見て取れるようなメッセージ画像、本明細書中では伝送されると想定されるバイナリの対応ビットによって決まる。この場合、変換されたセルは、それらの中心又は等重心を中心として数度の回転を受ける。図25に示すような鑑定画像が次いで記録される。図25において、何らのメッセージも見られないことに留意され得る。図25内に隠れているメッセージを読み取ることを望む場合、図26に示すような、鑑定画像を作成するために用いられるものよりも同じ鑑定領域の画像に対応する検証画像が用いられる。
【0106】
検証画像(図26)は、次いで鑑定画像(図28)に重畳され、従って、メッセージE1cが読み取られる図27の画像が得られる。読取りを容易にするために、重畳の画像は、メッセージがより際立たされる図28に示す画像を得ることを可能にするヒストグラム変換等の強調処理を受け得る。
【0107】
当然のことながら、本発明による方法の様々な他の変形例が添付の特許請求の範囲の枠組みにおいて考察され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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