(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】フィルタ監視システム
(51)【国際特許分類】
B01D 46/42 20060101AFI20221208BHJP
B01D 46/44 20060101ALI20221208BHJP
F24F 11/50 20180101ALI20221208BHJP
【FI】
B01D46/42 A
B01D46/44
F24F11/50
(21)【出願番号】P 2019028370
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000163660
【氏名又は名称】ケンブリッジフィルターコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 宣久
(72)【発明者】
【氏名】近藤 芳世
(72)【発明者】
【氏名】岡田 克宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 篤
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-002554(JP,A)
【文献】特開平05-137929(JP,A)
【文献】特開平11-156131(JP,A)
【文献】特表2007-536073(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0283682(US,A1)
【文献】特開2011-005478(JP,A)
【文献】特開平10-230126(JP,A)
【文献】特開2002-174445(JP,A)
【文献】特表2008-504718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-37/08、39-00-41/04、
46/00-46/54
F24F 7/00-7/007、7/04-7/06
11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を浄化するためのフィルタの製造時のデータを含む固有情報と、前記フィルタの使用時の環境データや状態データを含む使用環境情報とから、推論規則に基づいて使用中の前記フィルタの劣化を予測して前記フィルタの交換時期を設定する監視装置を備え、
入口部と出口部との間で空気が流通する通路を形成する筐体の内部において、前記通路を仕切るように複数の前記フィルタが並列されたフィルタユニットを構成し、
前記使用環境情報は、前記フィルタユニットにおける各前記フィルタの位置情報、および個々の前記フィルタ
の下流側に設けた流速計により計測した流速データを含み、
前記監視装置は、
ネットワークを介して前記固有情報を取得すると共に、前記フィルタの使用中の前記使用環境情報を取得し、取得した前記固有情報と前記使用環境情報との相互関係から推論規則に基づいて使用中の前記フィルタの劣化を予測して、前記フィルタの交換時期を設定し、
前記推論規則は、記憶装置に記憶されて、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論から選択される1または複数から選択されるものであって、時々刻々と変わる前記固有情報および前記使用環境情報に基づき更新される、
フィルタ監視システム。
【請求項2】
前記使用環境情報は、未使用の前記フィルタの在庫情報を含み、
前記監視装置は、前記交換時期および前記在庫情報から前記フィルタの推奨納入数を設定する、
請求項1に記載のフィルタ監視システム。
【請求項3】
前記固有情報は、製造後の前記フィルタの保管情報を含み、
前記監視装置は、前記交換時期および前記保管情報から前記フィルタの推奨保管数を設定する、
請求項1または2に記載のフィルタ監視システム。
【請求項4】
前記使用環境情報は、使用中の前記フィルタの質量データを含み、
前記監視装置は、前記質量データから前記フィルタの健全性を予測し、前記フィルタの交換時期を設定する、
請求項1~3のいずれか1つに記載のフィルタ監視システム。
【請求項5】
前記フィルタユニットにおける各前記フィルタの通過空気の流速を調整する調整機構をさらに備える、
請求項1~4のいずれか1つに記載のフィルタ監視システム。
【請求項6】
前記監視装置は、前記使用環境情報から使用中の前記フィルタの異常を判断する、
請求項1~5のいずれか1つに記載のフィルタ監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、フィルタ交換時期の予測技術として、フィルタ前後の差圧検出により、フィルタの劣化を予測することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタの劣化を予測する手法として、特許文献1に開示されているように差圧検出に基づくことが知られている。しかし、差圧は、フィルタの性能以外に、フィルタの設置条件の違いによっても変化することから、フィルタの劣化をより正確に予測し適正な交換時期を設定することが望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、フィルタの劣化をより正確に予測し適正な交換時期を設定することのできるフィルタ監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係るフィルタ監視システムは、フィルタの製造時のデータを含む固有情報と、前記フィルタの使用時の環境データや状態データを含む使用環境情報とから、推論規則に基づいて使用中の前記フィルタの劣化を予測して前記フィルタの交換時期を設定する監視装置を備える。
【0007】
本発明の一態様に係るフィルタ監視システムでは、前記使用環境情報は、未使用の前記フィルタの在庫情報を含み、前記監視装置は、前記交換時期および前記在庫情報から前記フィルタの推奨納入数を設定する、ことが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係るフィルタ監視システムでは、前記固有情報は、製造後の前記フィルタの保管情報を含み、前記監視装置は、前記交換時期および前記保管情報から前記フィルタの推奨保管数を設定する、ことが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係るフィルタ監視システムでは、前記使用環境情報は、使用中の前記フィルタの質量データを含み、前記監視装置は、前記質量データから前記フィルタの健全性を予測し、前記フィルタの交換時期を設定する、ことが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係るフィルタ監視システムでは、複数の前記フィルタが並列されたフィルタユニットを構成し、前記使用環境情報は、前記フィルタユニットにおける各前記フィルタの位置情報を含み、前記監視装置は、前記位置情報から前記フィルタの劣化を予測する、ことが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係るフィルタ監視システムでは、前記フィルタユニットにおける各前記フィルタの通過空気の流速を調整する調整機構をさらに備える、ことが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係るフィルタ監視システムでは、前記監視装置は、前記使用環境情報から使用中の前記フィルタの異常を判断する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルタの劣化をより正確に予測し適正な交換時期を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムの監視装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムの監視装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例を示す側面視断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例を示す平面視断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例を示す部分斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例における質量計を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例における流速の説明図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムにおける調整機構を示す側面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係るフィルタ監視システムにおける調整機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
図1は、本実施形態に係るフィルタ監視システムの構成例を示す図である。
【0017】
本実施形態のフィルタ監視システムは、メーカデータベース(フィルタ固有情報(固有情報とも言う))1と、サイトデータベース(フィルタ使用環境/フィルタ劣化情報(使用環境情報とも言う))2と、監視装置3と、ネットワーク4と、を有する。
【0018】
メーカデータベース1は、フィルタの製造時に係るフィルタ固有情報1を保有する。フィルタ固有情報1は、フィルタ固有情報収集部1Aを以て纏められる。フィルタ固有情報1は、フィルタのシリアルコードデータ(以下、シリアルコードデータという)1Aaや、フィルタのろ材データ(以下、ろ材データという)1Abや、フィルタの工場検査データ(以下、工場検査データという)1Acや、フィルタの対ダスト保持容量データ(以下、対ダスト保持容量データという)1Adや、フィルタの対圧損データ(以下、対圧損データという)1Aeや、フィルタの対流速データ(以下、対流速データという)1Afや、メーカにおいて保管しているフィルタの保管データ(保管情報)1Agがある。
【0019】
シリアルコードデータ1Aaは、製造したフィルタの識別データであり、例えば、個々のフィルタに対して個別に付与される。シリアルコードデータ1Aaは、例えば、バーコードやRFID(Radio Frequency Identification)タグにより管理できる。
【0020】
ろ材データ1Abは、ろ材の強度やダスト保持能力などの性能や、ろ材の製造日や、ろ材の製造ロットに関する。ろ材データ1Abは、シリアルコードデータ1Aaに関連付けられる。
【0021】
工場検査データ1Acは、フィルタの製造時に工場で検査された結果に関する。工場検査データ1Acは、例えば、同ろ材のフィルタや、同製造日のフィルタや、同ロットのフィルタにおいて、無作為に抜き取られて検査された結果である。例えば、高性能フィルタとして、JIS規格において定格風量で対象粒子径が0.15μmで99.97%の捕集率のHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)では、工場検査にて捕集率が99.97%以上であれば合格であるが、99.97%のものもあれば99.99%のものもある。この工場検査データ1Acは、シリアルコードデータ1Aaに関連付けられる。
【0022】
対ダスト保持容量データ1Adは、工場検査データ1Acと同様に、例えば、同ろ材のフィルタや、同製造日のフィルタや、同ロットのフィルタにおいて、無作為に抜き取られて検査された結果である。対ダスト保持容量データ1Adは、フィルタの性能を示す指標であり、ダストの保持容量に伴うダスト捕集効率である。ダストの保持容量は、ダストを保持することによるフィルタの質量で算出され、フィルタに所定の粒子径の疑似ダストを通過させ、疑似ダストを捕集したフィルタの質量の変化に伴い、粒子計測器によりフィルタの上流側と下流側とでの疑似ダストの個数の変化を計測する。この対ダスト保持容量データ1Adは、シリアルコードデータ1Aaに関連付けられる。
【0023】
対圧損データ1Aeは、工場検査データ1Acと同様に、例えば、同ろ材のフィルタや、同製造日のフィルタや、同ロットのフィルタにおいて、無作為に抜き取られて検査された結果である。対圧損データ1Aeは、フィルタの性能を示す指標であり、フィルタの圧力損失に伴うダスト捕集効率である。圧力損失は、ダストを保持することによるフィルタを通過する空気の圧力の変化で算出され、フィルタに所定の粒子径の疑似ダストを通過させ、疑似ダストを捕集したフィルタの上流側と下流側との圧力差の変化に伴い、粒子計測器によりフィルタの上流側と下流側とでの疑似ダストの個数の変化を計測する。この対圧損データ1Aeは、シリアルコードデータ1Aaに関連付けられる。
【0024】
対流速データ1Afは、工場検査データ1Acと同様に、例えば、同ろ材のフィルタや、同製造日のフィルタや、同ロットのフィルタにおいて、無作為に抜き取られて検査された結果である。対流速データ1Afは、フィルタの性能を示す指標であり、フィルタを通過する空気の流速に伴うダスト捕集効率である。流速は、ダストを保持することによるフィルタを通過する空気の流速変化で算出され、フィルタに所定の粒子径の疑似ダストを通過させ、フィルタを通過する空気の流速の変化に伴い、粒子計測器によりフィルタの上流側と下流側とでの疑似ダストの個数の変化を計測する。この対流速データ1Afは、シリアルコードデータ1Aaに関連付けられる。
【0025】
保管データ1Agは、メーカで保管されているフィルタの保管数であり、上述したシリアルコードデータ1Aaを管理する、個々のフィルタに設けたバーコードやRFID(Radio Frequency Identification)タグの読み取り装置により取得できる。また、保管データ1Agは、管理者によるデータ入力により取得してもよい。
【0026】
これらのフィルタ固有情報1Aa~1Agが、フィルタ固有情報収集部1Aに纏められメーカデータベース1に記憶される。
【0027】
サイトデータベース2は、フィルタの使用時の使用環境情報1を保有する。使用環境情報1は、フィルタの使用時の環境データおよび状態データを含み使用環境情報収集部2Zを以て纏められる。使用環境情報1は、流速データ(環境データ)2A、質量データ(状態データ)2B、位置データ(ロケーションデータ(状態データ):位置情報)2C、差圧データ(状態データ)2D、捕集データ(状態データ)2E、温度データ(環境データ)2F、湿度データ(環境データ)2G、サイトにおける在庫データ(状態データ:在庫情報)2H、および交換履歴データ(状態データ:交換履歴情報)2Iを含む。なお、サイトは、原子力発電設備や火力発電設備などの設備であってフィルタを使用する場所を意味する。
【0028】
流速データ2Aは、フィルタを通過する空気の流速であり、フィルタの下流側に設置された回転式(プロペラ式)の風速計や熱線風速計などからなる流速計2Aaにより計測される。
【0029】
質量データ2Bは、フィルタの質量であり、
図7および
図8を参照するように、フィルタの下側であって本実施形態ではフィルタ受部上面に設置された歪みゲージや重量ゲージなどからなる質量計2Baにより計測される。
【0030】
位置データ(ロケーションデータ)2Cは、後述する空気浄化装置10のフィルタユニット12においてフィルタ12Aの設置位置であり、上述したシリアルコードデータ1Aaを管理する、位置検出器2CaとしてバーコードやRFID(Radio Frequency Identification)タグの読み取り装置により取得できる。また、位置データ2Cは、空気浄化装置10の管理者によるデータ入力により取得してもよい。
【0031】
差圧データ2Dは、フィルタの上流側と下流側との圧力差であり、差圧計2Daにより計測される。
【0032】
捕集データ2Eは、ダストの捕集能力であり、フィルタの上流側および下流側に設置された粒子計測器2Eaにより計測された所定の粒子径のダストの個数差からダストの捕集能力が算出される。
【0033】
温度データ2Fは、フィルタが配置される環境のデータであり、温度計2Faにより計測される。
【0034】
湿度データ2Gは、フィルタが配置される環境のデータであり、湿度計2Gaにより計測される。
【0035】
在庫データ2Hは、サイトに保管されているフィルタの保管数であり、上述したシリアルコードデータ1Aaを管理する、個々のフィルタに設けたバーコードやRFID(Radio Frequency Identification)タグの読み取り装置により取得できる。また、在庫データ2Hは、空気浄化装置10の管理者によるデータ入力により取得してもよい。
【0036】
交換履歴データ2Iは、サイトにおいて、フィルタを交換した履歴であり、フィルタを交換した日時や、交換数など、フィルタの交換におけるデータである。交換履歴データ2Iは、空気浄化装置10の管理者によるデータ入力により取得できる。
【0037】
これらの使用環境情報2A~2Iが、使用環境情報収集部2Zに纏められフィルタ使用環境/フィルタ劣化情報(サイトデータベース)2に記憶される。
【0038】
監視装置3は、端末装置であって、例えば、コンピュータであり、演算処理装置101や記憶装置(コンピュータプログラム)102などにより実現される。また、監視装置3は、表示装置103と、入力装置104と、音声出力装置105と、ドライブ装置106と、入出力インターフェース装置107とを有してもよい。演算処理装置101は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを含む。記憶装置102は、ROMやRAMのようなメモリおよびストレージを含む。演算処理装置101は、記憶装置102に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施する。表示装置103は、フラットパネルディスプレイを含む。入力装置104は、操作されることにより入力データを生成する。入力装置104は、キーボードおよびマウスの少なくとも一方を含む。なお、入力装置104が表示装置103の表示画面に設けられたタッチセンサを含んでもよい。音声出力装置105は、スピーカーを含む。ドライブ装置106は、監視装置3を実行させるためのプログラムなどのデータが記録された記録媒体108からデータを読み出す。記録媒体108は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスクなどのように情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリなどのように情報を電気的に記録する半導体メモリなど、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。入出力インターフェース装置107は、演算処理装置101と記憶装置102と表示装置103と入力装置104と音声出力装置105とドライブ装置106との間でデータ通信する。監視装置3、メーカデータベース1およびサイトデータベース2は、ネットワーク4を介して相互に通信可能に接続されている。
【0039】
監視装置3は、
図3に示すように、ネットワーク4を介してメーカデータベース1からフィルタ固有情報収集部1A内のフィルタの製造時のフィルタ固有情報1を取得する(ステップS1)。また、監視装置3は、ネットワーク4を介してサイトデータベース2から使用環境情報収集部2Z内のフィルタの使用中の使用環境情報2である流速データ2A、質量データ2B、位置データ2C、差圧データ2D、捕集データ2E、温度データ2F、湿度データ2G、在庫データ2H、および交換履歴データ2Iを取得する(ステップS2)。監視装置3は、フィルタ固有情報(メーカデータベース)1と、使用環境情報収集部2Z内のフィルタの使用中の使用環境情報(サイドデータベース)2との相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測して(ステップS3)、フィルタの交換時期を設定する(ステップS4)。
【0040】
推論規則は、記憶装置102に記憶され、例えば、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論などによる1または複数からなる。なお、推論規則は、記録媒体108やネットワーク4を介して監視装置3に入力され記憶装置102に記憶される。そして、監視装置3では、時々刻々と変わる情報に基づき記憶装置102に記憶されている推論規則を更新することができる。そのため、記憶装置102には、推論規則を更新する更新プログラムが記憶されている。
【0041】
監視装置3は、サイトデータベース2から取得した流速データ2Aと、メーカデータベース1から取得した対流速データ1Afとの相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測して、フィルタの交換時期を設定する。また、監視装置3は、サイトデータベース2から取得した質量データ2Bと、メーカデータベース1から取得した対ダスト保持容量データ1Adとの相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測して、フィルタの交換時期を設定する。また、監視装置3は、サイトデータベース2から取得した差圧データ2Dと、メーカデータベース1から取得した対圧損データ1Aeとの相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測して、フィルタの交換時期を設定する。また、監視装置3は、サイトデータベース2から取得した捕集データ2Eと、メーカデータベース1から取得した工場検査データ1Acとの相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測して、フィルタの交換時期を設定する。工場検査データ1Acは、上述したように捕集率の異なるフィルタがあり、この工場検査データ1Acと捕集データ2Eとの相互関係から予測する劣化は異なることとなり、設定するフィルタの交換時期も異なるものとなる。そして、監視装置3は、設定したフィルタの交換時期のデータを、ネットワーク4を介してサイトデータベース2およびメーカデータベース1に送る。フィルタを使用するサイトは、サイトデータベース2から交換時期のデータを取得する。そして、サイトでは、交換時期のデータに基づきフィルタの交換準備をする。一方、フィルタを製造するメーカは、メーカデータベース1から交換時期のデータを取得する。そして、メーカでは、交換時期のデータに基づきフィルタを製造準備及び製造をする。なお、フィルタの交換時期を設定するにあたり、フィルタが配置される環境を加味して温度データ2F、湿度データ2Gを利用してもよい。
【0042】
監視装置3は、サイトデータベース2から取得した位置データ2Cと、設定したフィルタの交換時期とから推論規則に基づいて、フィルタの交換数を設定する。そして、監視装置3は、設定したフィルタの交換数のデータを、ネットワーク4を介してサイトデータベース2およびメーカデータベース1に送る。フィルタを使用するサイトは、サイトデータベース2から交換数のデータを取得する。そして、サイトでは、交換数のデータに基づきフィルタの交換準備をする。一方、フィルタを製造するメーカは、メーカデータベース1から交換数のデータを取得する。そして、メーカでは、交換数のデータに基づきフィルタの製造準備及び製造をする。なお、フィルタの交換数を設定するにあたり、フィルタが配置される環境を加味して温度データ2F、湿度データ2Gを利用してもよい。
【0043】
監視装置3は、サイトデータベース2から取得した在庫データ2Hと、設定したフィルタの交換数とから推論規則に基づいて、フィルタの推奨納入数を設定する。そして、監視装置3は、設定したフィルタの推奨納入数のデータを、ネットワーク4を介してサイトデータベース2およびメーカデータベース1に送る。フィルタを使用するサイトは、サイトデータベース2から推奨納入数のデータを取得する。そして、サイトでは、推奨納入数のデータに基づきフィルタの納入準備をする。一方、フィルタを製造するメーカは、メーカデータベース1から推奨納入数のデータを取得する。そして、メーカでは、推奨納入数のデータに基づきフィルタの製造準備及び製造をする。なお、フィルタの推奨納入数を設定するにあたり、フィルタが配置される環境を加味して温度データ2F、湿度データ2Gを利用してもよい。
【0044】
監視装置3は、メーカデータベース1から取得した保管データ1Agと、設定したフィルタの交換数とから推論規則に基づいて、フィルタの推奨保管数を設定する。そして、監視装置3は、設定したフィルタの推奨保管数のデータを、ネットワーク4を介してサイトデータベース2およびメーカデータベース1に送る。フィルタを使用するサイトは、サイトデータベース2から推奨保管数のデータを取得する。そして、サイトでは、推奨保管数のデータに基づき在庫となるフィルタの納入準備をする。一方、フィルタを製造するメーカは、メーカデータベース1から推奨保管数のデータを取得する。そして、メーカでは、推奨保管数のデータに基づきメーカ側で保管するフィルタの製造準備及び製造をする。なお、フィルタの推奨保管数を設定するにあたり、フィルタが配置される環境を加味して温度データ2F、湿度データ2Gを利用してもよい。
【0045】
監視装置3は、サイトデータベース2から取得した交換履歴データ2Iと、使用中のフィルタの劣化の予測とから推論規則に基づいて、フィルタの異常を判断する。上述したように、監視装置3は、サイトデータベース2から取得した流速データ2Aと、メーカデータベース1から取得した対流速データ1Afとの相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測している。監視装置3は、このフィルタの劣化を予測しているデータと、交換履歴データ2Iとの相互関係から推論規則に基づいて、交換して間もないにもかかわらず劣化が進んでいる場合、ダスト以外にフィルタに目詰まりが生じている異常と判断する。一方、監視装置3は、このフィルタの劣化を予測しているデータと、交換履歴データ2Iとの相互関係から推論規則に基づいて、交換して長期間が経過しているにも係わらず劣化が進んでいない場合、フィルタに何らかの通気漏れが生じている異常、または送風機の異常と判断する。そして、監視装置3は、判断した異常のデータを、ネットワーク4を介してサイトデータベース2およびメーカデータベース1に送る。フィルタを使用するサイトは、サイトデータベース2から異常のデータを取得する。そして、サイトでは、異常のデータに基づき異常の改善を実施する。一方、フィルタを製造するメーカは、メーカデータベース1から異常のデータを取得する。そして、メーカでは、異常のデータに基づきフィルタの製造改善を検討・実施する。なお、フィルタの異常を判断するにあたり、フィルタが配置される環境を加味して温度データ2F、湿度データ2Gを利用してもよい。
【0046】
また、上述したように、監視装置3は、サイトデータベース2から取得した質量データ2Bと、メーカデータベース1から取得した対ダスト保持容量データ1Adとの相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測している。監視装置3は、このフィルタの劣化を予測しているデータと、交換履歴データ2Iとの相互関係から推論規則に基づいて、交換して間もないにもかかわらず劣化が進んでいる場合、ダスト以外にフィルタに目詰まりが生じている異常と判断する。一方、監視装置3は、このフィルタの劣化を予測しているデータと、交換履歴データ2Iとの相互関係から推論規則に基づいて、交換して長期間が経過しているにも係わらず劣化が進んでいない場合、フィルタに何らかの通気漏れが生じている異常と判断する。そして、監視装置3は、判断した異常のデータを、ネットワーク4を介してサイトデータベース2およびメーカデータベース1に送る。フィルタを使用するサイトは、サイトデータベース2から異常のデータを取得する。そして、サイトでは、異常のデータに基づき異常の改善を実施する。一方、フィルタを製造するメーカは、メーカデータベース1から異常のデータを取得する。そして、メーカでは、異常のデータに基づきフィルタの製造改善を検討・実施する。なお、フィルタの異常を判断するにあたり、フィルタが配置される環境を加味して温度データ2F、湿度データ2Gを利用してもよい。
【0047】
また、上述したように、監視装置3は、サイトデータベース2から取得した差圧データ2Dと、メーカデータベース1から取得した対圧損データ1Aeとの相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測している。監視装置3は、このフィルタの劣化を予測しているデータと、交換履歴データ2Iとの相互関係から推論規則に基づいて、交換して間もないにもかかわらず劣化が進んでいる場合、ダスト以外にフィルタに目詰まりが生じている異常と判断する。一方、監視装置3は、このフィルタの劣化を予測しているデータと、交換履歴データ2Iとの相互関係から推論規則に基づいて、交換して長期間が経過しているにも係わらず劣化が進んでいない場合、フィルタに何らかの通気漏れが生じている異常と判断する。そして、監視装置3は、判断した異常のデータを、ネットワーク4を介してサイトデータベース2およびメーカデータベース1に送る。フィルタを使用するサイトは、サイトデータベース2から異常のデータを取得する。そして、サイトでは、異常のデータに基づき異常の改善を実施する。一方、フィルタを製造するメーカは、メーカデータベース1から異常のデータを取得する。そして、メーカでは、異常のデータに基づきフィルタの製造改善を検討・実施する。なお、フィルタの異常を判断するにあたり、フィルタが配置される環境を加味して温度データ2F、湿度データ2Gを利用してもよい。
【0048】
また、上述したように、監視装置3は、サイトデータベース2から取得した捕集データ2Eと、メーカデータベース1から取得した工場検査データ1Acとの相互関係から推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測している。監視装置3は、このフィルタの劣化を予測しているデータと、交換履歴データ2Iとの相互関係から推論規則に基づいて、交換して間もないにもかかわらず劣化が進んでいる場合、ダスト以外にフィルタに目詰まりが生じている異常と判断する。一方、監視装置3は、このフィルタの劣化を予測しているデータと、交換履歴データ2Iとの相互関係から推論規則に基づいて、交換して長期間が経過しているにも係わらず劣化が進んでいない場合、フィルタに何らかの通気漏れが生じている異常と判断する。そして、監視装置3は、判断した異常のデータを、ネットワーク4を介してサイトデータベース2およびメーカデータベース1に送る。フィルタを使用するサイトは、サイトデータベース2から異常のデータを取得する。そして、サイトでは、異常のデータに基づき異常の改善を実施する。一方、フィルタを製造するメーカは、メーカデータベース1から異常のデータを取得する。そして、メーカでは、異常のデータに基づきフィルタの製造改善を検討・実施する。なお、フィルタの異常を判断するにあたり、フィルタが配置される環境を加味して温度データ2F、湿度データ2Gを利用してもよい。
【0049】
なお、上述したフィルタ監視システムは、
図1に示すように、フィルタ固有情報収集部1Aと、使用環境情報収集部2Zとを含み、フィルタ管理システムを構成する。
【0050】
図4は、本実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例を示す側面視断面図である。
図5は、本実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例を示す平面視断面図である。
図6は、本実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例を示す部分斜視図である。
図7は、本実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例における質量計を示す図である。
図8は、
図7に示す質量計の説明図であって、
図7に示す一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
【0051】
図4および
図5に示すように、空気浄化装置10は、筐体11と、フィルタユニット12と、粗フィルタユニット13と、を有する。本実施形態の空気浄化装置10は、例えば、原子力発電設備や火力発電設備などの設備に適用され、浄化した空気を設備における部屋に送る。
【0052】
筐体11は、気密性を有したケーシングである。筐体11は、入口部11Aと出口部11Bとを有している。入口部11Aは、図示しない送風機が接続されて外気などの空気が送られ筐体11の内部に供給される。筐体11の内部に供給された空気は、出口部11Bから筐体11の外部に排出される。出口部11Bは、浄化した空気を送る部屋に接続される。入口部11Aと出口部11Bとは、矩形状に形成された筐体11の相反する側に向く面に設けられており、筐体11の内部に空気を相反する一方から他方に向けて送るように配置されている。従って、筐体11は、入口部11Aと出口部11Bとの間で空気が流通する通路を形成している。なお、筐体11は、その側部を開閉可能とする気密扉11Cが設けられている。気密扉11Cは、フィルタユニット12,13のメンテナンス時に作業者が筐体11に入ることができる。
【0053】
フィルタユニット12は、筐体11の内部に設けられている。フィルタユニット12は、フィルタ12Aが複数取り付けられるように、フレーム12Bと、フィルタ受部12Cと、フィルタ固定部12Dと、を有している。
【0054】
フィルタ12Aは、
図6に示すように、矩形の筒状に形成された殻部12Aaの筒内にフィルタ部12Abが固定されている。フィルタ部12Abは、上述したHEPAフィルタが適用される。フィルタ12Aは、殻部12Aaの開口する一端に添って矩形状のガスケット12Acが固定されている。
【0055】
フレーム12Bは、
図4および
図5に示すように、筐体11の通路の内部を入口部11Aと出口部11Bとの間で区画するように配置されている。フレーム12Bは、
図6に示すように、格子状に形成された枠部12Baと、枠部12Ba内に形成された矩形状の開口部12Bbと、を有している。開口部12Bbは、筐体11の通路の内部を入口部11Aと出口部11Bとに繋ぐように開口している。開口部12Bbは、その内形状がフィルタ12Aの殻部12Aaの内形状に一致する。本実施形態において、フレーム12Bは、開口部12Bbを上下3個、左右3個で計9個配置し、上下3個、左右3個で計9個のフィルタ12Aを配置する。開口部12Bbとフィルタ12Aの数についてはこれに限定されない。
【0056】
フィルタ受部12Cは、
図4~
図6に示すように、フレーム12Bに固定されている。フィルタ受部12Cは、フレーム12Bにおいて枠部12Ba内の開口部12Bbの両下角部にそれぞれ配置され、開口部12Bbの矩形状の一部に合わせた断面L字形状に形成され、フレーム12Bの一方向(入口部11A側または出口部11B側)に向けて延びて設けられている。フィルタ受部12Cは、L字形状の水平部分にフィルタ12Aの殻部12Aaが載置されることでフィルタ12Aを支持する。
【0057】
フィルタ固定部12Dは、
図4~
図6に示すように、フレーム12Bに固定されている。フィルタ固定部12Dは、雄ネジ部12Daと、固定片12Dbと、雌ネジ部12Dcと、を有する。雄ネジ部12Daは、一端がフレーム12Bに固定され、他端がフィルタ受部12Cと同様に、フレーム12Bの一方向(入口部11A側または出口部11B側)に向けて延びて設けられている。固定片12Dbは、板状に形成されて、雄ネジ部12Daを挿通する。雌ネジ部12Dcは、例えば、ナットであり、雄ネジ部12Daに対して螺合する。フィルタ固定部12Dは、フレーム12Bにおいて、開口部12Bbの矩形状の対向する鉛直辺に添って2つずつ設けられて計4箇所に設けられている。そして、フィルタ固定部12Dは、フィルタ受部12Cに支持されたフィルタ12Aの殻部12Aaの縁に固定片12Dbを引っ掛けるようにし、雄ネジ部12Daに雌ネジ部12Dcを螺合する。そして、雌ネジ部12Dcの螺込みにより固定片12Dbを介してフィルタ12Aの殻部12Aaをフレーム12Bの枠部12Baに押し付ける。これにより、フィルタ12Aの殻部12Aaがフレーム12Bの枠部12Baに固定される。固定されたフィルタ12Aは、フィルタ部12Abがフレーム12Bの開口部12Bbを覆うように配置される。また、固定されたフィルタ12Aは、ガスケット12Acが殻部12Aaとフレーム12Bの枠部12Baとの間に挟まれて、殻部12Aaと枠部12Baとの間の気密性を確保する。なお、固定片12Dbは、水平方向に並ぶフィルタ12Aの枠部12Baにも引っ掛かり、このフィルタ12Aも固定するように構成されている。
【0058】
従って、フィルタユニット12は、筐体11の通路の内部をフィルタ12Aのフィルタ部12Abを介して入口部11Aと出口部11Bとの間で区画する。また、本実施形態において、フィルタユニット12は、2つ設けられて筐体11の通路の内部をそれぞれ入口部11Aと出口部11Bとの間で区画する。
【0059】
粗フィルタユニット13は、フィルタユニット12と同様の構成であり、フィルタ13Aと、フレーム13Bと、フィルタ受部13Cと、フィルタ固定部13Dと、を有している。フィルタ13Aは、フィルタ12Aと同様に構成され、殻部13Aaと、フィルタ部13Abと、ガスケット(図示せず)と、を有する。ただし、フィルタ13Aは、フィルタ部13AbがHEPAフィルタよりも低性能で、例えば、対象粒子径が50μm以上の空気濾過フィルタや、対象粒子径が25μm以上の中高性能フィルタが適用される。フレーム13Bは、フレーム12Bと同様に構成され、枠部13Baと、開口部13Bbと、を有する。フィルタ受部13Cは、フィルタ受部12Cと同様に構成されている。フィルタ固定部13Dは、フィルタ固定部12Dと同様に構成され、図には明示しないが、雄ネジ部と、固定片と、雌ネジ部と、を有する。従って、粗フィルタユニット13は、筐体11の通路の内部をフィルタ13Aのフィルタ部13Abを介して入口部11Aと出口部11Bとの間で区画する。粗フィルタユニット13は、筐体11の内部において、各フィルタユニット12よりも入口部11A側に配置されている。
【0060】
このような空気浄化装置10は、入口部11Aから筐体11の通路の内部に供給されて出口部11Bから筐体11の通路の外部に排出される空気は、入口部11A側から、粗フィルタユニット13におけるフィルタ13Aのフィルタ部13Abにより比較的粒径の大きいダストを捕集する。その後、出口部11B側に向かって第一フィルタユニット12におけるフィルタ12Aのフィルタ部12Abと、第二フィルタユニット12におけるフィルタ12Aのフィルタ部12Abと、により順次、対象粒子径が0.15μmのダストを捕集する。
【0061】
空気浄化装置10は、筐体11の内部に流速計2Aaが設置される。流速計2Aaは、フィルタユニット12や粗フィルタユニット13の下流側に設置される。空気浄化装置10は、筐体11の内部に
図7に示すように歪みゲージや重量ゲージなどからなる質量計2Baが設置される。質量計2Baは、フィルタ受部12C,13Cにおいて、フィルタ12A,13Aが載置される部分に設置される。そして、質量計2Baは、
図8(a)に示す状態から、フィルタ12A,13Aがダストを捕集して質量が増加した場合、
図8(b)に示すようにフィルタ受部12C,13Cに向けてフィルタ12A,13Aが降下し。フィルタ受部12C,13Cとフィルタ12A,13Aとの間に挟まれてフィルタ12A,13Aの荷重により歪む。この質量計2Baの歪み量αによりフィルタ12A,13Aの増加した質量を計測できる。また、
図8(b)に示すように、フィルタ受部12C,13Cの撓み量βによってもフィルタ12A,13Aの増加した質量を計測できる。空気浄化装置10は、筐体11の内部に位置検出器2Caが設置される。位置検出器2Caは、フレーム12B,13Bに設置される。空気浄化装置10は、筐体11の内部に差圧計2Daが設置される。差圧計2Daは、フレーム12B,13Bの上流側および下流側の圧力から差圧を計測する。空気浄化装置10は、筐体11の内部に粒子計測器2Eaが設置される。粒子計測器2Eaは、フレーム12B,13Bの上流側および下流側に設置される。空気浄化装置10は、筐体11の内部に温度計2Faおよび湿度計2Gaが設置される。
【0062】
このように、本実施形態のフィルタ監視システムは、フィルタ12A,13Aの製造時の固有情報(メーカデータベース)1と、フィルタ12A,13Aの使用時の環境データや状態データを含む使用環境情報(サイトデータベース)2とから推論規則に基づいて使用中のフィルタ12A,13Aの劣化を予測して、フィルタ12A,13Aの交換時期を設定する監視装置3と、を備える。これにより、フィルタ12A,13Aの劣化をより正確に予測し適正な交換時期を設定することができる。
【0063】
また、本実施形態のフィルタ監視システムでは、使用環境情報2は、未使用のフィルタ12A,13Aの在庫情報を含み、監視装置3は、フィルタ12A,13Aの交換時期および在庫情報からフィルタ12A,13Aの推奨納入数を設定することが好ましい。これにより、使用側(サイト)に対し、フィルタ12A,13Aの交換に際して適切な納入数を設定し、知らせることができる。この結果、使用側は、適した数だけ余剰な在庫を保有することなく、運用できる。
【0064】
また、本実施形態のフィルタ監視システムでは、固有情報1は、製造後のフィルタ12A,13Aの保管情報を含み、監視装置3は、フィルタ12A,13Aの交換時期および保管情報からフィルタの推奨保管数を設定することが好ましい。これにより、製造側(メーカ)に対し、フィルタ12A,13Aの交換に際して適切な保管数を設定し、知らせることができる。この結果、製造側は、使用側に出荷するフィルタ12A,13Aの製造準備及び製造を適したタイミングで実施することができる。
【0065】
また、本実施形態のフィルタ監視システムでは、使用環境情報2は、使用中のフィルタ12A,13Aの質量データを含み、監視装置3は、質量データからフィルタ12A,13Aの健全性およびフィルタ12A,13Aの交換時期を設定することが好ましい。
【0066】
例えば、HEPAフィルタ(例えば、フィルタ12A)を、火山灰を捕集する火山灰フィルタに用いた場合、火山灰は、飛散してくる火山灰特性(各火山、天候など)が異なるため差圧検出による火山灰フィルタの管理が困難である。そこで、火山灰フィルタで捕集した火山灰を含むダストの質量(ダスト保持量)を、上述した質量計2Baにより質量増加を監視する。これにより、ダスト保持状態からフィルタ健全性を予測すると共に、フィルタ交換時期の設定に基づき、適切な交換タイミングをシステムとして自動(AI)で指示・監視・警報する。指示・監視・警報に基づき、設置されているフィルタ交換の優先順位(設置ロケーションによる優先順位)を作業員個人の判断でなく、蓄積されたデータに基づき対応することが可能となる。なお、質量データによる管理は、火山灰フィルタに限らず、上述したフィルタ12A,13Aに適用できる。
【0067】
また、本実施形態のフィルタ監視システムでは、複数のフィルタ12A,13Aが並列されたフィルタユニット12,13を構成し、使用環境情報2は、フィルタユニット12,13における各フィルタ12A,13Aの位置情報を含み、監視装置3は、位置情報からフィルタ12A,13Aの交換数を設定することが好ましい。これにより、使用側に対し、フィルタ12A,13Aの交換に際してフィルタユニット12,13におけるフィルタ12A,13Aの設置位置に応じたフィルタ12A,13Aの劣化予測および交換時期の設定を行うことができる。
【0068】
また、本実施形態のフィルタ監視システムでは、監視装置3は、使用環境情報2から使用中のフィルタ12A,13Aの異常を判断することが好ましい。これにより、フィルタ12A,13Aの健全性を常に確保することができる。
【0069】
図9は、本実施形態に係るフィルタ監視システムに適用される空気浄化装置の例における流速の説明図である。
図10は、本実施形態に係るフィルタ監視システムにおける調整機構を示す側面図である。
図11は、本実施形態に係るフィルタ監視システムにおける調整機構を示す斜視図である。
【0070】
図9(a)は、上述した空気浄化装置10を空気の通過方向から視た模式図であり、
図9(b)および
図9(c)は、上述した空気浄化装置10側方から視てフィルタユニット12を通過する空気の流速分布を示す模式図である。
図9(a)に示すように、上述した空気浄化装置10は、筐体11に対して入口部11Aおよび出口部11Bが、筐体11の相反する各面の上下左右方向の中央に配置されている。そして、
図10に示すように、上下3個、左右3個で計9個配置されたフィルタ12Aに対し、流速計2Aaを設けて流速を計測する。すると、
図9(b)に示すように、上下3個、左右3個で計9個配置されたフィルタ12Aに対し、中央のフィルタ12Aを通過する空気の流速が速く、そのまわりのフィルタ12Aを通過する空気の流速が遅くなる。このような場合、比較的に、中央のフィルタ12Aにダストが多く捕集され、そのまわりのフィルタ12Aにはダストの捕集量が少なくなり、同じフィルタ12Aを配置しても、ダストの捕集量に偏りが生じてしまう。ダストの捕集量に偏りが生じると、交換時期の設定によりフィルタユニット12の全てのフィルタ12Aを交換した場合、まだ使用できるフィルタ12Aも交換してしまうこととなり廃棄物が増加する。
【0071】
このようなダストの捕集量に偏りがあっても、上述した本実施形態のフィルタ監視システムでは、流速計2Aaにより計測した流速データ2A、および位置検出器2Caにより検出した位置データ2Cから推論規則に基づいて使用中のフィルタの劣化を予測できる。
【0072】
また、本実施形態のフィルタ監視システムでは、流速の偏りを抑えることで、より正確に予測できるようにする。本実施形態のフィルタ監視システムは、例えば、
図11に示す調整機構15を備える。調整機構15は、各フィルタ12Aの殻部12Aaの下流側の開口を覆うように、複数(
図11では2枚)のパンチングプレート15Aを重ねて設置する。各パンチングプレート15Aは、同じパンチ孔15Aaが同じ配置で設けられている。また、各パンチングプレート15Aは、互いに重ねた面に沿って相対的に移動可能とし、移動した位置で固定できるように構成する。即ち、各パンチングプレート15Aを相対移動させることで、互いにパンチ孔15Aaが一致したりズレたりするため、一致したときは通過する空気の流速が速くなるように調整でき、互いのパンチ孔15Aaの位置がズレた時は通過する空気の流速が遅くなるように調整できる。このような調整機構15により、各フィルタ12Aに通過する空気の流速を調整することで、
図9(c)に示すように、フィルタ12Aの配置に係わらずフィルタユニット12を通過する空気の流速分布を均一にすることができる。また、各隅部のフィルタ12Aと中央部のフィルタ12Aのダスト捕集量を平均化することができる。
【0073】
ここで、流速計2Aaは、
図10に示すように、各フィルタ12Aに対して設けることが好ましいが、隣接する数個単位でまとめて設けてもよい。この場合、隣接する各フィルタ12Aにおいて空気の流速を同様に調整したものを単位とすることが好ましい。
【0074】
本実施形態において、対象とするフィルタは、上述したフィルタ12A,13Aに限らず、例えば、JIS規格において定格風量で対象粒子径が0.15μmで99.9995%以上の捕集率のULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)であってもよい。また、フィルタは、工業用クリーン施設、バイオクリーン施設、展示・保管施設、ビル空調施設。医療施設、または汚染施設のような分野において、空調機やダクト、クリーンルーム、排気の用途で使われるものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 メーカデータベース(固有情報)
1A フィルタ固有情報収集部
1Aa シリアルコードデータ
1Ab ろ材データ
1Ac 工場検査データ
1Ad 対ダスト保持容量データ
1Ae 対圧損データ
1Af 対流速データ
1Ag 保管データ
2 サイトデータベース(使用環境情報)
2A 流速データ
2Aa 流速計
2B 質量データ
2Ba 質量計
2C 位置データ
2Ca 位置検出器
2D 差圧データ
2Da 差圧計
2E 捕集データ
2Ea 粒子計測器
2F 温度データ
2Fa 温度計
2G 湿度データ
2Ga 湿度計
2H 在庫データ
2I 交換履歴データ
2Z 使用環境情報収集部
3 監視装置
4 ネットワーク
10 空気浄化装置
11 筐体
11A 入口部
11B 出口部
11C 気密扉
12 フィルタユニット(第一フィルタユニット,第二フィルタユニット)
12A フィルタ
12Aa 殻部
12Ab フィルタ部
12Ac ガスケット
12B フレーム
12Ba 枠部
12Bb 開口部
12C フィルタ受部
12D フィルタ固定部
12Da 雄ネジ部
12Db 固定片
12Dc 雌ネジ部
13 粗フィルタユニット
13A フィルタ
13Aa 殻部
13Ab フィルタ部
13B フレーム
13Ba 枠部
13Bb 開口部
13C フィルタ受部
13D フィルタ固定部
15 調整機構
15A パンチングプレート
15Aa パンチ孔
101 演算処理装置
102 記憶装置
103 表示装置
104 入力装置
105 音声出力装置
106 ドライブ装置
107 入出力インターフェース装置
108 記録媒体