(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】有機溶剤と水とを含む混合液の精製システムにおける分析装置及び分析方法並びに精製システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20221208BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20221208BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20221208BHJP
B01D 61/36 20060101ALI20221208BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01N1/00 101G
B01D61/00
B01D61/14 500
B01D61/36
B01D19/00 H
(21)【出願番号】P 2019046691
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴垣 裕志
(72)【発明者】
【氏名】増子 尚武
(72)【発明者】
【氏名】宮川 健一
(72)【発明者】
【氏名】玉川 正之
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-056484(JP,A)
【文献】特開2002-139486(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017186(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
B01D 61/00
B01D 61/14
B01D 61/36
B01D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤と水とを含む混合液の精製システムが受け入れる前記混合
液を分析対象液として分析する分析装置であって、
前記分析対象液を貯留可能な第1及び第2の容器と、
前記第1の容器または前記第2の容器に切り替え可能に接続される、前記分析対象液の供給ラインと、
前記第1の容器と共に前記分析対象液の循環経路を形成する第1の循環ラインと、前記第2の容器と共に前記分析対象液の循環経路を形成する第2の循環ラインとに切り替え可能な循環ライン形成手段と、
前記循環ライン形成手段によって形成された前記循環経路内の前記分析対象液を分析する分析手段と、
前記第1の容器と前記第2の容器の一方が前記供給ラインに接続される受入れ容器として、他方が前記循環経路を形成する分析容器として交互に切り替わるように、前記供給ラインと前記循環ライン形成手段とを切り替え可能な切替手段と、を有する分析装置。
【請求項2】
前記循環ライン形成手段は、前記循環経路の前記分析対象液を循環させる循環ポンプを有している、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記第1の循環ラインと前記第2の循環ラインは共通の流路を有し、前記分析手段は前記共通の流路に設けられている、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第1の容器または前記第2の容器に切り替え可能に接続される分析終了液の排出ラインを有し、前記切替手段は、前記分析の終了後、前記受入れ容器として機能している容器が前記供給ラインに接続された状態で、前記循環ライン形成手段によって形成された前記循環経路が遮断され、前記分析容器として機能している容器が前記排出ラインに接続されるように、前記循環ライン形成手段及び排出ラインを切り替え可能である、請求項1から3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記第1及び前記第2の容器は、前記分析と前記排出ラインからの排出に要する時間の間に前記受入れ容器が受入れる前記分析対象液の全量を受け入れる容量を有している、請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記第1の容器に接続された第1の不活性ガス供給ラインと、
前記第2の容器に接続された第2の不活性ガス供給ラインと、
前記第1及び第2の不活性ガス供給ラインに接続された母管と、
前記母管に接続された不活性ガスの供給手段及びブローラインと、を有し、
前記第1の不活性ガス供給ラインと、前記第2の不活性ガス供給ラインと、前記母管と、前記ブローラインは互いに連通している、請求項4または5に記載の分析装置。
【請求項7】
有機溶剤と水とを含む混合液の精製システムが受け入れる前記混合液、または前記精製システムから払い出される精製された有機溶剤を分析対象液として分析する分析装置であって、
前記分析対象液を貯留可能な第1及び第2の容器と、
前記第1の容器または前記第2の容器に切り替え可能に接続される、前記分析対象液の供給ラインと、
前記第1の容器と共に前記分析対象液の循環経路を形成する第1の循環ラインと、前記第2の容器と共に前記分析対象液の循環経路を形成する第2の循環ラインとに切り替え可能な循環ライン形成手段と、
前記循環ライン形成手段によって形成された前記循環経路内の前記分析対象液を分析する分析手段と、
前記第1の容器と前記第2の容器の一方が前記供給ラインに接続される受入れ容器として、他方が前記循環経路を形成する分析容器として交互に切り替わるように、前記供給ラインと前記循環ライン形成手段とを切り替え可能な切替手段と、
分析終了液を貯留可能な第3の容器と、
前記第1~第3の容器に切り替え可能に接続される前記分析終了液の排出ラインと、を有し、
前記供給ラインは前記第1~第3の容器に切り替え可能に接続され、
前記循環ライン形成手段は、前記第1の循環ラインと、前記第2の循環ラインと、前記第3の容器と共に前記分析対象液の循環経路を形成する第3の循環ラインとを選択的に形成し、
前記切替手段は、前記第1~第3の容器のうちの一つが前記受入れ容器として機能し、他の一つが前記分析容器として機能し、残りの一つが前記分析終了液を貯留するとともに前記排出ラインに接続される移送容器として交互に切り替わるように、前記供給ラインと前記排出ラインと前記循環ライン形成手段とを切り替え可能であ
る分析装置。
【請求項8】
前記第1~第3の容器は、前記分析が行われる間に前記受入れ容器が受入れる前記分析対象液の全量を受け入れる容量を有している、請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
前記第1の容器に接続された第1の不活性ガス供給ラインと、
前記第2の容器に接続された第2の不活性ガス供給ラインと、
前記第3の容器に接続された第3の不活性ガス供給ラインと、
前記第1~第3の不活性ガス供給ラインに接続された母管と、
前記母管に接続された不活性ガスの供給手段及びブローラインと、を有し、
前記第1の不活性ガス供給ラインと、前記第2の不活性ガス供給ラインと、前記第3の不活性ガス供給ラインと、前記母管と、前記ブローラインは互いに連通している、請求項7または8に記載の分析装置。
【請求項10】
請求項4から9のいずれか1項に記載の分析装置と、
前記分析の結果不良とされた不良液を貯留する不良液貯留容器と、
前記排出ラインから分岐して前記不良液貯留容器に接続される不良液移送ラインと、前記排出ラインと前記移送ラインの切替手段と、を有する、有機溶剤と水とを含む混合液の精製システム。
【請求項11】
前記循環路は閉じた流路である、請求項1から9のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項12】
有機溶剤と水とを含む混合液の精製システムが受け入れる前記混合
液を分析対象液として分析する分析装置を用いた分析方法であって、
前記分析装置は、
前記分析対象液を貯留可能な第1及び第2の容器と、
前記第1の容器または前記第2の容器に切り替え可能に接続される、前記分析対象液の供給ラインと、
前記第1の容器と共に前記分析対象液の循環経路を形成する第1の循環ラインと、前記第2の容器と共に前記分析対象液の循環経路を形成する第2の循環ラインとに切り替え可能な循環ライン形成手段と、
前記循環ライン形成手段によって形成された前記循環経路内の前記分析対象液を分析する分析手段と、を有し、
前記第1の容器と前記第2の容器の一方が前記供給ラインに接続される受入れ容器として、他方が前記循環経路を形成する分析容器として交互に切り替わるように、前記供給ラインと前記循環ライン形成手段を切り替えることを有する、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機溶剤と水とを含む混合液の精製システムにおける分析装置及び分析方法並びに精製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPという)と水との混合液(以下、NMP水溶液という)から、浸透気化法(PV法)を用いてNMPを分離する方法が知られている。PV法はNMP水溶液を減圧して蒸留する方法(減圧蒸留法)と比べ、省エネルギー性能に優れている。PV法では水と親和性のある分離膜(浸透気化膜)を備えた浸透気化膜装置が用いられる。浸透気化膜の入口側にNMP水溶液を供給し透過側を減圧することで、NMP水溶液を入口側から透過側へ移動させる駆動力が得られる。この際、NMPと水の透過速度差により、主に水が透過側に移動し、NMPと水の分離が行われる。
【0003】
特許文献1には、NMP水溶液の精製システムが開示されている。このNMP水溶液の精製システムは、リチウムイオン二次電池の製造システムとともに利用される。NMP水溶液の精製システムは、リチウムイオン二次電池の製造システムから排出されるNMP水溶液の原液を受け入れ、微粒子や溶存酸素を除去し、浸透気化膜装置で水分を除去してNMP濃縮液を生成する。NMP水溶液の精製システムはさらにNMP濃縮液を蒸留することによって、NMP精製液を生成する。NMP精製液はリチウムイオン二次電池の製造システムに払い出され、再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NMP水溶液の精製システムが、精製が困難または不可能なレベルの品質のNMP水溶液を受入れると、リチウムイオン二次電池の製造システムでNMP精製液が再利用された際に、リチウムイオン二次電池の品質に重大な影響を及ぼす可能性がある。このため、NMP水溶液を受入れる際には品質レベルを確認し、許容範囲の品質のNMP水溶液だけを受入れることが望まれる。しかし、NMP水溶液の分析には一定の時間を要するため、特許文献1に記載のNMP水溶液の精製システムにおいてNMP水溶液の品質レベルを確認するためには、NMP水溶液の受け入れを一時的に停止する必要がある。NMP精製液をリチウムイオン二次電池の製造システムに払い出す際も同様であり、NMP精製液の品質レベルを確認するためには、NMP精製液の払出しを一時的に停止する必要がある。以上の点についてはNMP以外の有機溶剤と水とを含む混合液についても同様である。
【0006】
本発明は、有機溶剤と水とを含む混合液の受け入れ、または精製された有機溶剤の払出しを停止することなく、受入れる混合液または払い出す有機溶剤の品質を分析することが可能な分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機溶剤と水とを含む混合液の精製システムが受け入れる混合液を分析対象液として分析する分析装置に関する。本発明の分析装置は、分析対象液を貯留可能な第1及び第2の容器と、第1の容器または第2の容器に切り替え可能に接続される、分析対象液の供給ラインと、第1の容器と共に分析対象液の循環経路を形成する第1の循環ラインと、第2の容器と共に分析対象液の循環経路を形成する第2の循環ラインとに切り替え可能な循環ライン形成手段と、循環ライン形成手段によって形成された循環経路内の分析対象液を分析する分析手段と、第1の容器と第2の容器の一方が供給ラインに接続される受入れ容器として、他方が循環経路を形成する分析容器として交互に切り替わるように、供給ラインと循環ライン形成手段を切り替え可能な切替手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機溶剤と水とを含む混合液の受け入れ、または精製された有機溶剤の払出しを停止することなく、受入れる混合液または払い出す有機溶剤の品質を分析することが可能な分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るNMP水溶液の精製システムの概略構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係る分析装置の概略構成図である。
【
図3】第1の実施形態に係る分析装置における、容器が切り替えられた状態を示す概略構成図である。
【
図4】第1の実施形態に係る分析装置における、容器がさらに切り替えられた状態を示す概略構成図である。
【
図5】第1~第3の容器の切り替えパターンを示す模式図である。
【
図6】第2の実施形態に係る分析装置の概略構成図である。
【
図7】第2の実施形態に係る分析装置における、容器が切り替えられた状態を示す概略構成図である。
【
図8】第2の実施形態に係る分析装置における、容器がさらに切り替えられた状態を示す概略構成図である。
【
図9】第2の実施形態に係る分析装置における、容器がさらに切り替えられた状態を示す概略構成図である。
【
図10】第1及び第2の容器の切り替えパターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に適用可能な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類の他、大気圧(0.1013Mpa)での沸点が水の沸点(100℃)よりも高く、好ましくは大気圧下での沸点が浸透気化膜装置の一般的な運転温度である120℃であるかそれ以上である有機溶剤が挙げられる。このような有機溶剤の例を表1に示す。
【0011】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るNMP水溶液の精製システム1の概略構成図を示している。図中、CWは冷却水を、BR1,BR2はブラインを、STは高温蒸気を意味する。
【0013】
NMPは水に対して高い溶解度を有する有機溶剤の一つである。NMPは、例えば、リチウムイオン二次電池の製造工程において、電極活物質などの粒子を分散させたスラリーを電極集電体上に塗布し乾燥させて電極を形成する際に、スラリーの分散媒として広く用いられている。スラリーを乾燥させる際にNMPが回収され、回収されたNMPは精製した後に再利用することができる。NMPは、例えば水スクラバーを用いて、NMPと水とが混合した混合液(NMP水溶液)として回収される。回収されたNMP水溶液におけるNMP濃度は、70~99重量%程度である。
【0014】
NMP水溶液の精製システム1は、NMP水溶液から微粒子、溶存酸素、イオン成分等を除去する第1のサブシステム100と、微粒子、溶存酸素、イオン成分等が除去されたNMP水溶液から浸透気化膜装置によって水分のほとんどを除去してNMP濃縮液を生成する第2のサブシステム200と、NMP濃縮液を蒸留してNMP精製液を生成する第3のサブシステム300と、を有している。以下、個々のサブシステムの構成を説明する。
【0015】
(第1のサブシステム100)
第1のサブシステム100は、上述のようにして回収された処理対象のNMP水溶液を受け入れる受入部101を有している。NMP水溶液は、水スクラバーなどのNMP回収手段(図示せず)と接続された第1のNMP水溶液供給ラインL101によって、受入部101に供給される。受入部101は複数の容器(第1~第3の容器101a,101b,101c)を有し、これらの容器101a,101b,101cは精製システム1に供給されるNMP水溶液の原液の受け入れ、分析、移送などの目的に応じて切替え可能とされている。分析の結果問題がなければ、NMP水溶液は後段に移送されて精製処理を受け、精製処理に適さない場合は廃液槽(図示せず)に移送される。受入部101は第2のNMP水溶液供給ラインL102を介して、NMP水溶液に含まれる微粒子を除去する第1の精密ろ過膜装置102と接続されている。第2のNMP水溶液供給ラインL102上にはNMP水溶液を圧送するポンプ107が設けられている。第1の精密ろ過膜装置102は膜脱気装置103(後述)の上流に設けられているが、膜脱気装置103の下流、すなわち膜脱気装置103とイオン交換装置104(後述)との間に設けられてもよく、あるいは、膜脱気装置103の上流と、膜脱気装置103とイオン交換装置104との間の両方に設けられてもよい。
【0016】
第1の精密ろ過膜装置102は第3のNMP水溶液供給ラインL103を介して、NMP水溶液の溶存酸素を除去する膜脱気装置103と接続されている。後述するように、NMP水溶液は浸透気化膜装置201に導入される前に120℃程度まで加熱される。120℃程度まで加熱されたNMP水溶液では、NMP水溶液中に含まれる溶存酸素が過酸化水素になり、この過酸化水素がNMPを酸化させ、劣化させる可能性がある。予めNMP水溶液中の溶存酸素を除去することによって、NMPの酸化を抑制することができる。溶存酸素の濃度を監視するため、膜脱気装置103の入口ラインL103と出口ラインL104には溶存酸素計(図示せず)が設けられている。また、膜脱気装置103の入口ラインL103には水分濃度計と比抵抗計(ともに図示せず)が設けられている。受入部101の下流のポンプ107と第1の精密ろ過膜装置102との間にはヒータ108が設けられている。ヒータ108には高温蒸気が供給され、高温蒸気によってNMP水溶液を加熱する。蒸気配管には高温蒸気の流量を調整する流量調整弁V103が設けられている。
【0017】
膜脱気装置103の脱気膜は、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリウレタン、エポキシ樹脂などから形成することができる。NMPは一部の有機材料を溶解させる性質があるため、脱気膜はポリオレフィン、PTFEまたはPFAで形成することが好ましい。脱気膜は非多孔性であることが好ましい。中空糸状の脱気膜の内部を流れるNMP水溶液の溶存酸素が、真空ポンプ109によって負圧にされた脱気膜の外部に移動することによって、脱気、すなわち溶存酸素の除去が行われる。なお、脱気膜の外側(ガス透過側)に窒素ガス等の不活性ガスをスウィープして酸素分圧を下げてもよく、真空法とスウィープ法を併用してもよい。
【0018】
膜脱気装置103は第4のNMP水溶液供給ラインL104を介して、NMP水溶液のイオン成分を除去するイオン交換装置104と接続されている。イオン交換装置104にはアニオン交換樹脂もしくはカチオン交換樹脂が単床で、または、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂が混床もしくは複層床で充填されている。なお、イオン交換樹脂の種類は、ゲル型、MR型のいずれでもよい。イオン交換装置104は第5のNMP水溶液供給ラインL105を介して第2の精密ろ過膜装置105と接続されている。第2の精密ろ過膜装置105はイオン交換装置104から流出する可能性のある樹脂を捕捉し、樹脂の下流への流出を防止する。第2の精密ろ過膜装置105は第6のNMP水溶液供給ラインL106を介して、1次処理液槽106と接続されている。1次処理液槽106は、第1の精密ろ過膜装置102、膜脱気装置103、イオン交換装置104及び第2の精密ろ過膜装置105で処理されたNMP水溶液を受け入れ、受け入れたNMP水溶液を浸透気化膜装置201に供給する。以下、1次処理液槽106に貯留され、浸透気化膜装置201に供給されるNMP水溶液を1次処理液という場合がある。
【0019】
イオン交換装置104の入口ラインL104と出口ラインL105には比抵抗計(図示せず)が設けられている。イオン交換装置104で処理されたNMP水溶液の比抵抗が所定の値より小さい場合、すなわちイオン成分が十分に除去されないときは、イオン交換装置104を通るループに沿ってNMP水溶液を循環させることができる。具体的には、第5のNMP水溶液供給ラインL105から分岐して受入部101に接続された戻りラインL107が設けられている。通常は第5のNMP水溶液供給ラインL105の弁V101が開けられ、戻りラインL107の弁V102が閉じられているが、NMP水溶液の比抵抗が所定の値より小さい場合は第5のNMP水溶液供給ラインL105の弁V101を閉じ、戻りラインL107の弁V102を開く。これによって、受入部101、第1の精密ろ過膜装置102、膜脱気装置103、イオン交換装置104を通る循環ループが形成される。NMP水溶液がこの循環ループに沿って流れることで、NMP水溶液に含まれるイオン成分が十分に除去される。
【0020】
なお、前述の膜脱気装置103で処理されたNMP水溶液の溶存酸素が所定の値より大きい場合、すなわち溶存酸素が十分に除去されないときも、前述のイオン交換装置104を通るループに沿ってNMP水溶液を循環させることができる。これにより、NMP水溶液に含まれる溶存酸素も十分に除去される。
【0021】
(第2のサブシステム200)
微粒子と溶存酸素とイオン成分が除去され1次処理液槽106に貯蔵された1次処理液は次に第2のサブシステム200に供給され、ほとんどの水分が除去されたNMP濃縮液が生成される。1次処理液槽106は第7のNMP水溶液供給ラインL201を介して、浸透気化膜装置201に接続されている。第7のNMP水溶液供給ラインL201にはポンプ224と弁V201が設けられている。第7のNMP水溶液供給ラインL201には外部蒸気を用いた第1のヒータ205と、第1のヒータ205の上流(一次側)に位置する廃熱回収熱交換器206と、が設置されており、これらの第1のヒータ205及び廃熱回収熱交換器206によってNMP水溶液は120℃程度まで加熱される。浸透気化膜装置201に供給されるNMP水溶液を120℃程度まで加熱することで、浸透気化膜装置201の脱水性能を高めることができる。廃熱回収熱交換器206は、第7のNMP水溶液供給ラインL201を流れるNMP水溶液と、NMP濃縮液排出ラインL204を流れるNMP濃縮液との間で熱交換を行う。第1のヒータ205は外部の蒸気源(図示せず)から供給される高温蒸気によってNMP水溶液を加熱する。第1のヒータ205の蒸気供給ラインには蒸気供給量を調整するための弁V202が設けられている。第1のヒータ205の下流には温度警報表示器223が設けられている。温度警報表示器223で検出された温度に基づき弁V202の開度が調整され、NMP水溶液の温度が120℃程度に制御される。第7のNMP水溶液供給ラインL201の廃熱回収熱交換器206の上流には流量警報表示器225が設けられている。流量警報表示器225で検出された流量に基づき弁V201の開度が調整され、NMP水溶液の流量が所定の範囲内に制御される。
【0022】
浸透気化膜装置201は直列に接続された複数の浸透気化膜モジュール202~204を有している。本実施形態では3台の浸透気化膜モジュール、すなわち上流から下流に向けて第1の浸透気化膜モジュール202、第2の浸透気化膜モジュール203、第3の浸透気化膜モジュール204が直列に接続されているが、台数は3台に限定されない。第1の浸透気化膜モジュール202は第1の接続ラインL202を介して第2の浸透気化膜モジュール203に接続されている。第2の浸透気化膜モジュール203は第2の接続ラインL203を介して第3の浸透気化膜モジュール204に接続されている。第1~第3の浸透気化膜装置202,203,204は分離膜(浸透気化膜)202c、203c、204cによって、上流側の濃縮室202a,203a,204aと下流側の透過室202b,203b,204bとに区画されている。分離膜202c,203c,204cは水に対する親和性を有しているため、水をNMPよりも大きな透過速度で分離膜202c,203c,204cを透過させる。透過室202b,203b,204b側を負圧とすることで、透過速度の大きい水が透過速度の小さい少量のNMPともに蒸気(気相)の形態で透過室202b,203b,204bに移動し、ほとんどのNMPは濃縮室202a,203a,204aに残存する。この原理を用いてNMP水溶液から水分の一部が除去され、NMP水溶液の濃縮液が生成される。第3の浸透気化膜モジュール204の出口では、NMP濃度が99.99%程度まで高められたNMP濃縮液(水分は0.01%未満)が得られる。
【0023】
NMP水溶液は第1~第3の浸透気化膜モジュール202,203,204を順次流通し、徐々にNMP水溶液中の水分が除去される。水分の除去効率を維持するため、第1の接続ラインL202と第2の接続ラインL203にはそれぞれ、第2のヒータ207と第3のヒータ208が設けられている。第2及び第3のヒータ207,208は第1のヒータ205と同様、熱交換器であり、外部の蒸気源から供給される高温蒸気によってNMP水溶液を120℃程度まで加熱する。第2及び第3のヒータ207,208の蒸気供給ラインにはそれぞれ、蒸気供給量を調整するための弁V203,V204が設けられている。第3の浸透気化膜モジュール204から排出されたNMP濃縮水はNMP濃縮液排出ラインL204を通って第3のサブシステム300の中継槽301に供給される。上述のように、NMP濃縮液排出ラインL204を流れるNMP濃縮液は、廃熱回収式熱交換器206によって、第7のNMP水溶液供給ラインL201を流れるNMP水溶液との間で熱交換を行い、NMP水溶液を予熱する。
【0024】
NMP濃縮液排出ラインL204から分岐して1次処理液槽106に接続されるNMP濃縮液の戻りラインL215が設けられている。通常はNMP濃縮液排出ラインL204の弁V205が開かれ、戻りラインL215の弁V206が閉じられ、NMP濃縮液は中継槽301に供給される。一方、中継槽301にNMP濃縮液を供給できない場合などは弁V205が閉じられ、弁V206が開かれて、NMP濃縮液が1次処理液槽106に戻される。なお、NMP濃縮液を1次処理液槽106に返送する場合は、戻りラインL215に設けられた冷却器226によって、NMP濃縮液の温度がNMP水溶液(1次処理液)の温度と同程度になるように冷却水により冷却する。
【0025】
第1~第3の浸透気化膜モジュール202,203,204の透過室202b,203b,204bはそれぞれ第1~第3の透過液排出ラインL206,L209,L212によって第1~第3の透過液タンク214,215,216に接続されている。第1~第3の透過液タンク214,215,216の上部には、透過室201b,202b,203bに負圧を印加し、透過室201b,202b,203bの内部を負圧に維持可能な第1~第3の真空ポンプ217,218,219が設けられている。気相の水と少量のNMPは冷却水またはブラインによって凝縮され、透過液となって第1~第3の透過液タンク214,215,216の底部に収集される。第1~第3の透過液タンク214,215,216は透過液を一時的に貯蔵することができる。具体的には、冷却水CW及びブラインBR1,BR2はそれぞれ、第1~第3の透過液タンク214,215,216の周囲を覆う冷却ジャケット(図示せず)を流れて気相の水及びNMPを保冷し、さらに冷却ラインL207,L210、L213を通って、第1~第3の透過液排出ラインL206,L209,L212に設けられた第1~第3の熱交換器211,212,213に供給され、気相の水及びNMPを凝縮する。ブラインBR1,BR2の温度は0~-20℃程度が好ましい。
【0026】
第1~第3の熱交換器211,212,213はそれぞれ、第1~第3の透過液排出ラインL206,L209,L212を介して第1~第3の浸透気化膜モジュール202,203,204の透過室202b,203b,204bと連通している。第1~第3の熱交換器211,212,213は、透過室202b,203b,204bに透過した透過蒸気を冷却し、凝縮して、透過液を生成する冷却器である。透過室202b,203b,204bは第1~第3の熱交換器211,212,213の下流で第1~第3の透過液タンク214,215,216と連通している。
【0027】
第1~第3の透過液タンク214,215,216の底部にはそれぞれ第1~第3の透過水排出ラインL208,L211,L214が接続されている。第1~第3の透過液タンク214,215,216の上部にはそれぞれ、後述する不活性ガス供給母管L401から分岐した不活性ガス供給ラインL406A,406B,406Cが接続されている。凝縮された水と少量のNMPは第1~第3の透過液タンク214,215,216に一時的に貯蔵され、不活性ガス供給ラインL406A,406B,406Cから供給される不活性ガスで第1~第3の透過液タンク214,215,216の内部を加圧することによって、第1~第3の透過液タンク214,215,216から排出される。第1の透過液タンク214から排出された透過水は廃液槽に排出され、第2~第3の透過液タンク215,216から排出された透過水は後述するように再利用される。
【0028】
第1の透過液タンク214に収集された気相の水と少量のNMPを冷却した冷却水CWは第1の冷却水排出ラインL220に排出される。第1の冷却水排出ラインL220を流れる冷却水の一部は、第1の冷却水排出ラインL220から分岐した冷却水排出ラインL221を通って、第2の透過水排出ラインL211に設けられた熱交換器220に供給され、第2の透過水排出ラインL211を流れるNMPを含む透過水を加熱する。冷却水の残りは、第3の透過水排出ラインL214に設けられた熱交換器221に供給され、第3の透過水排出ラインL214を流れるNMPを含む透過水を加熱する。第2及び第3の透過水排出ラインL211,L214の熱交換器220,221の下流には水分濃度、流量などを計測する計測器222,223が設けられている。
【0029】
最上流の浸透気化膜モジュール、すなわち第1の浸透気化膜モジュール202はCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトからなる浸透気化膜202cを有している。最上流の浸透気化膜モジュール以外の浸透気化膜モジュール、すなわち第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204はA型ゼオライトからなる浸透気化膜203c,204cを有している。A型ゼオライトは、比較的安価で脱水性能が高いものの、水分濃度が高いNMP水溶液を処理する場合に、リークや性能低下が生じやすい。これに対し、A型以外のゼオライトは上述の環境でより長期間性能を保持することができる。このため、10~20重量%の水を含有するNMP水溶液を処理する第1の浸透気化膜モジュール202の浸透気化膜202cはCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトを用い、水分含有量の少ないNMP水溶液を処理する第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204の浸透気化膜203c,204cはA型ゼオライトを用いている。なお、第1の浸透気化膜モジュール202を構成する複数の浸透気化膜のすべてがCHA型、T型、Y型またはMOR型のゼオライトからなっている必要はなく、一部の膜がA型ゼオライトからなっていてもよい。
【0030】
第3の透過液排出ラインL212には冷却器209とメカニカルブースターポンプ210が設けられている。冷却器209は第3の浸透気化膜モジュール204から排出された透過液を予冷する。メカニカルブースターポンプ210および冷却器209は第3の浸透気化膜モジュール204の透過室204bに大きな負圧を印加するために設けられている。第3の浸透気化膜モジュール204に供給されるNMP水溶液の水分含有量は非常に少ないため、第3の真空ポンプ219に加えてメカニカルブースターポンプ210で十分な負圧を印加することで、水をNMP水溶液から効率的に分離することができる。冷却器209及びメカニカルブースターポンプ210は省略することができる。また、冷却器209とメカニカルブースターポンプ210との間に、冷却器209で凝縮された透過水を貯留するためのポッド(図示せず)を設けることもできる。
【0031】
第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204の透過液は浸透気化膜装置201の上流側に回収される。具体的には第2及び第3の透過液排出ラインL211,L214は透過液回収ラインL205に接続され、透過液回収ラインL205は1次処理液槽106に接続されている。第2及び第3の透過液排出ラインL211,L214から排出される透過液は第1の透過液排出ラインL208から排出される透過液と比べNMPの含有量が高いため、これを回収することで、NMPの回収率を高めることができる。透過液が回収される浸透気化膜モジュールは第2及び第3の浸透気化膜モジュール203,204に限定されず、少なくとも最下流の浸透気化膜モジュール(第3の浸透気化膜モジュール204)の透過液が浸透気化膜装置201の上流側に回収されればよい。透過液は受入部101に回収してもよく、透過液回収ラインL205に分岐ライン(図示せず)を設けることによって、1次処理液槽106と受入部101とに選択的に回収してもよい。
【0032】
(第3のサブシステム300)
第2のサブシステム200で生成されたNMP濃縮液は、ほとんどの水分が除去されている。しかし、NMP濃縮液は色度成分や浸透気化膜モジュールから溶出した浸透気化膜202c,203c,204cの微粒子およびイオン成分をわずかに含むため、さらに浸透気化膜装置201の下流に位置する第3のサブシステム300で蒸留されてNMP精製液が生成される。第3のサブシステム300はNMP濃縮液を蒸留し凝縮することによってNMPの精製液を生成することから、NMP濃縮液の蒸留精製装置として機能する。なお、以下に述べる第3のサブシステム300は単蒸留方式を用いているが、NMP濃縮液を蒸留することが可能な限り蒸留方法は限定されない。例えば、精密蒸留方式を用いることもできる。ただし、エネルギー消費が少ないこと、装置サイズが小さいこと、操作が簡単であることなどの理由から単蒸留方式が好ましい。また、単蒸留方式の中でも、本実施形態で用いている減圧単蒸留方式は熱劣化を防止できる観点から特に望ましい。
【0033】
前述のように、NMP濃縮液は一旦中継槽301に貯留される。第3のサブシステム300は第2のサブシステム200から独立したサブシステムであり、例えば、第2のサブシステム200の運転中に第3のサブシステム300の運転を一時的に停止するといった運用がなされることがある。このため、中継槽301を設けることで、第2のサブシステム200と第3のサブシステム300を、互いの独立性を維持しながらより弾力的に運用することが可能となる。中継槽301は第1のNMP濃縮液供給ラインL301を介して再生器302に接続されている。第1のNMP濃縮液供給ラインL301にはポンプ306と弁V301が設けられている。再生器302は熱交換器であり、後述する蒸発缶303で蒸発したNMP濃縮液(以下、NMP精製ガスという)との間で熱交換を行う。これによって、蒸発缶303の熱負荷を低減することができる。再生器302は第2のNMP濃縮液供給ラインL302を介して蒸発缶303に接続されている。蒸発缶303は外部の蒸気源(図示せず)から供給される高温蒸気によってNMP濃縮液を加熱し蒸発させる。蒸発缶303の蒸気供給ラインには蒸気供給量を調整するための弁V302が設けられている。蒸発缶303の底部には高温の液相のNMP濃縮液が滞留し、その上部に微粒子が除去された気相のNMP精製ガスが形成される。液相のNMP濃縮液に含まれる色度成分も蒸発しにくいため、蒸発缶303の底部に蓄積される。なお、本実施形態における蒸発缶303としては、液膜流下式の蒸発缶を例に挙げて以下に説明するが、液膜流下式以外の蒸発缶、例えばフラッシュ式、カランドリア式などの蒸発缶を用いてもよい。蒸発缶303の底部と頂部には循環ラインL303が接続されており、蒸発缶303を含む循環経路が循環ラインL303によって形成されている。循環経路上では、液相のNMP濃縮液を取り出して蒸発缶303に戻し、液膜流下にて再度加熱するサイクルが繰り返される。蒸気取り出し缶304(後述)の底部には、循環ラインL303と合流するNMP濃縮液取り出しラインL306が設けられている。蒸気取り出し缶304の底部に滞留するNMP濃縮液も、NMP濃縮液取り出しラインL306と循環ラインL303を通って蒸発缶303に戻され、再度加熱される。循環ラインL303には循環ポンプ307と弁V303が設けられている。循環ラインL303からは、弁V304が設けられたNMP濃縮液の不純物排出ラインL309が分岐している。
【0034】
蒸発缶303のNMP精製ガスは蒸発缶303の気相部から取り出され、第1のNMP精製ガス取り出しラインL304によって蒸気取り出し缶304に取り出される。蒸気取り出し缶304は第2のNMP精製ガス取り出しラインL305を介して再生器302と接続されている。NMP精製ガスの熱は再生器302で液相のNMP濃縮液と熱交換される。再生器302を出たNMP精製ガスはさらに第3のNMP精製ガス取り出しラインL307によってコンデンサ305に導入され、冷却水CWによって凝縮されてNMP精製液となる。コンデンサ305の内部では底部にNMP精製液が貯留され、その上はNMP精製ガスからなる気相部となっている。コンデンサ305の気相部は、負圧ラインL310によって真空ポンプ309と連通しており、コンデンサ305の気相部は真空ポンプ309によって負圧にされる。蒸発缶303を含む第3のサブシステム300の気相部も真空ポンプ309によって負圧にされ、蒸発缶303において減圧蒸発が行われる。これによって、NMP濃縮液の蒸発が促進される。負圧ラインL310のコンデンサ305と真空ポンプ309との間にはガスクーラ310が設けられ、コンデンサ305から真空ポンプ309に排出される、NMP精製ガスを含む気体が冷却される。コンデンサ305の冷却水はコンデンサ305と接続された冷却水排水ラインL311に排出される。冷却水排水ラインL311には熱交換器311が設けられており、不純物排出ラインL309を流れるNMP濃縮液が、排出される前に熱交換器311で冷却される。
【0035】
コンデンサ305の出口にはNMP精製液取り出し配管L308が接続されている。NMP精製液は、NMP精製液取り出し配管L308に設けられたポンプ308によって、払出し部311に送られる。払出し部311は受入部101と同様、複数の容器(第1~第3の容器311a,311b,311c)を有し、これらの容器311a,311b,311cは精製システム1から払い出されるNMP精製液の受け入れ、分析、移送などの目的に応じて切替え可能とされている。分析の結果問題がなければ、NMP精製液は排出ラインL312を通ってリチウムイオン二次電池の製造システムに移送され、当該製造システムで再利用される。問題がある場合は、NMP精製液は廃液槽(図示せず)に移送される。
【0036】
(不活性ガス供給手段)
本実施形態のNMP水溶液の精製システム1はさらに、容器の気相部を不活性ガスで充填する不活性ガス供給手段を備えている。上述のように、浸透気化膜装置201の上流及び下流にはNMP水溶液、NMP濃縮液またはNMP精製液が貯留される様々な容器が設けられている。これらの容器のいくつかは、内部にNMP水溶液、NMP濃縮液またはNMP精製液と、気相部との界面が形成される。この条件を満たす容器として以下が挙げられる。
【0037】
(1)NMP水溶液の受入部101の第1~第3の容器101a,101b,101c
(2)1次処理液槽106
(3)中継槽301
(4)再生器302
(5)蒸発缶303
(6)蒸気取り出し缶304
(7)コンデンサ305
(8)NMP精製液の払出し部311の第1~第3の容器311a,311b,311c
従来の容器(不活性ガス供給手段に関する以下の記載では、容器は容器101a,101b,101c,106,301~305,311a,311b,311cを意味する)の気相部は空気で形成されていた。しかし、発明者はこれらの容器に空気が充填されている場合、NMPが気相部の空気と結合して、NMPの過酸化物(NMP-O-O-H;5-ハイドロパーオキソ-1-メチル-2-ピロリドン)が生成されることを見出した。NMPの過酸化物は蓄積されると爆発の可能性がある。そこで、本実施形態ではこれらの容器に不活性ガス供給手段を設けている。不活性ガスとしては窒素ガスが好ましく、アルゴンガスを用いることもできる。不活性ガス供給手段は以下に述べる不活性ガス供給母管L401と、母管L401から分岐し各容器に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ラインと、各不活性ガス供給ライン上に設置されたガスシールユニット、とから構成される。
【0038】
具体的には不活性ガスの供給源(図示せず)に不活性ガス供給母管L401が接続され、不活性ガス供給母管L401と受入部101、1次処理液槽106、中継槽301、払出し部311がそれぞれ不活性ガス供給ラインL402,L403,L404,L407で接続されている。不活性ガス供給ラインL402,L403,L404,L407は容器の頂部に接続されている。不活性ガス供給ラインL402,L403,L404,L407にはそれぞれガスシールユニットU402,U403,U404,U405が設けられている。さらに、コンデンサ305(より正確にはガスクーラ310)と真空ポンプ309との間の負圧ラインL310にスウィープ用の不活性ガス供給ラインL405が接続されている。不活性ガスは不活性ガス供給ラインL405からコンデンサ305に供給され、さらにラインL307,L302,L304,L305を通って再生器302、蒸発缶303及び蒸気取り出し缶304にも不活性ガスが供給される。図示は省略するが、再生器302、蒸発缶303、蒸気取り出し缶304にも、同様の真空ポンプとスウィープ用の不活性ガス供給ラインを設けることができる。
【0039】
不活性ガスはNMP水溶液の精製システム1が最初に稼動する際に容器に充填される。このとき、容器の内部は空気で満たされているため、ガスシールユニットU402,U403,U404,U405を通して不活性ガスを容器に送り込み、容器の内部の空気を強制的に不活性ガスに置換する。ガスシールユニットU402,U403,U404,U405は、下流側の容器の圧力が低下すると自動的に開き、不活性ガスを容器に充填するようにされている。従って、容器内のNMP水溶液、NMP濃縮液及びNMP精製液の量が低下すると容器の圧力が下がり、ガスシールユニットU402,U403,U404,U405を介して不活性ガスが容器に補充される。他のガスシールユニットについても同様である。
【0040】
容器に不活性ガスを充填することで、NMP過酸化物の爆発の可能性を低減できるだけでなく、容器内のNMP水溶液、NMP濃縮液及びNMP精製液に溶け込む水分量および溶存酸素量を抑えることができる。この結果、浸透気化膜モジュールの負荷を軽減することができる。また、容器内に酸素がほとんど存在しないため、NMP水溶液、NMP濃縮液及びNMP精製液の酸化を防止する効果も得られる。
【0041】
(分析装置)
次に、NMP水溶液の精製システムの分析装置について説明する。分析装置は受入部101と払出し部311の分析機能に着目した別称である。本実施形態では受入部101に対応する分析装置101と、払出し部311に対応する分析装置311とを備えており、両者は同じ構成を有している。受入部101に対応する分析装置と払出し部311に対応する分析装置のいずれかだけが設けられてもよい。また、受入部101に対応する分析装置と払出し部311に対応する分析装置が互いに異なる実施形態で構成されてもよい。各実施形態の分析装置は、NMP精製システムが受け入れるNMP水溶液、またはNMP精製システムから払い出されるNMP精製液を分析対象液として分析する。しかし、分析対象液はNMP水溶液及びNMP精製液に限らず、有機溶剤と水とを含む混合液の精製システムが受け入れる混合液、または当該精製システムから払い出される精製された有機溶剤であってもよい。具体的な有機溶剤の種類は前述のとおりである。
【0042】
(第1の実施形態)
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る分析装置について説明する。本実施形態では受入部101に対応する分析装置101を例に説明する。分析装置は、分析対象液であるNMP水溶液を貯留可能な第1~第3の容器101a,101b,101cを有している。第1~第3の容器101a,101b,101cは同じ形状及び同じ容量を有している。後述するように、第1~第3の容器101a,101b,101cには低品質のNMP水溶液が供給される可能性があるため、底部が円錐形の形状等、洗浄のしやすい形状であることが好ましい。有害なNMPを貯蔵するため、第1~第3の容器101a,101b,101cはタンクなどの密閉可能な容器で構成されている。第1のNMP水溶液供給ラインL101から第1~第3の個別供給ラインL501a,L501b,L501cが分岐しており、第1~第3の個別供給ラインL501a,L501b,L501cがそれぞれ第1~第3の容器101a,101b,101cに接続されている。第1~第3の個別供給ラインL501a,L501b,L501cにはそれぞれ弁V501a、V501b,V501cが設けられている。従って、分析対象液の供給ラインである第1のNMP水溶液供給ラインL101は、第1~第3の容器101a,101b,101cに切り替え可能に接続されている。また、第1~第3の容器101a,101b,101cに第1~第3の個別排出ラインL505a,L505b,L505cがそれぞれ接続されている。第1~第3の個別排出ラインL505a,L505b,L505cは第2のNMP水溶液供給ラインL102に合流しており、個別排出ラインL505a,L505b,L505cにはそれぞれ弁V502a、V502b,V502cが設けられている。従って、分析終了液の排出ラインである第2のNMP水溶液供給ラインL102は、第1~第3の容器101a,101b,101cに切り替え可能に接続されている。
【0043】
第1の容器101aは、ラインL503-1,L503-2,L504a,L505a,L503-3からなる第1の循環ラインと共に分析対象液の第1の循環経路を形成する。ラインL504aとラインL505aにはそれぞれ弁V503a,V504aが設けられている。第1の循環経路は第1の容器101aと第1の循環ラインからなる。同様に、第2の容器101bは、ラインL503-1,L503-2,L504b,L505b,L503-3からなる第2の循環ラインと共に分析対象液の第2の循環経路を形成する。ラインL504bとラインL505bにはそれぞれ弁V503b,V504bが設けられている。第2の循環経路は第2の容器101bと第2の循環ラインからなる。同様に、第3の容器101cは、ラインL503-1,L504c,L505cからなる第3の循環ラインと共に分析対象液の第3の循環経路を形成する。ラインL504cとラインL505cにはそれぞれ弁V503c,V504cが設けられている。第3の循環経路は第3の容器101cと第3の循環ラインからなる。ラインL503-1~L503-3,L504a~L504c,L505a~L505cは第1の循環ラインと、第2の循環ラインと、第3の循環ラインとに選択的に切り替え可能な循環ライン形成手段を構成する。第1~第3の循環経路に共通する流路であるラインL503-1には循環経路の分析対象液を循環させる循環ポンプ504が設けられている。
【0044】
第1~第3の循環経路には、第1~第3の循環経路内の分析対象液を分析する分析手段が設けられている。分析手段はサンプリング点505、水分濃度を測定する水分濃度計506、導電率(比抵抗)を測定する導電率計(比抵抗計)507を含んでいる。サンプリング点505はラインL503-1から分岐するサンプリングラインL506の端部に設けられ、弁V505を開けることによって試料を採取することができる。試料から分析対象液の純度や色度を測定することができる。水分濃度計506と導電率計507はインライン方式で設けられ、それぞれ水分濃度と導電率を連続的に測定することができる。これらの分析手段505,506,507はラインL503-1に設けることが好ましい。それによって、分析手段505,506,507の数を最小化することができる。しかし、分析手段505,506,507は第1~第3の循環経路のそれぞれにおいて任意の場所に設けることもできる。例えばサンプリングラインL506を第1~第3の容器101a,101b,101cのそれぞれに設けることも可能である。
【0045】
第2のNMP水溶液供給ラインL102のポンプ107の下流側から不良液移送ラインL507が分岐している。不良液移送ラインL507は不良液を貯留する不良液貯留容器502に接続されている。不良液貯留容器502は分析の結果不良とされたNMP水溶液を貯留する。第2のNMP水溶液供給ラインL102の不良液移送ラインL507との分岐部の下流側には弁V506が、不良液移送ラインL507には弁507が設けられている。これらの弁V506,V507は第2のNMP水溶液供給ラインL102と不良液移送ラインL507の切替手段を構成する。
【0046】
第1の容器101aの上部には第1の不活性ガス供給ラインL512aが、第2の容器101bの上部には第2の不活性ガス供給ラインL512bが、第3の容器101cの上部には第3の不活性ガス供給ラインL512cが、それぞれ接続されている。第1~第3の不活性ガス供給ラインL512a~L512cは母管L511に接続され、母管L511には不活性ガスの供給手段である不活性ガス供給母管L401が、ガスシールユニットU402を介して接続されている。また、母管L511にはブローラインL513が接続されている。第1~第3の不活性ガス供給ラインL512a~L512cと、母管L511と、ブローラインL513は互いに連通している。従って、第1~第3の容器101a,101b,101cの上部気相部は第1~第3の不活性ガス供給ラインL512a~L512cと母管L511を介して互いに連通している。
【0047】
弁V501a~V501c,V502a~V502c,V503a~V503c,V504a~V504cは、供給ラインである第1のNMP水溶液供給ラインL101と、排出ラインである第2のNMP水溶液供給ラインL102と、循環ライン形成手段と、を切り替え可能な切替手段を構成する。
図2では、弁V501a,V502c,V503b、V504bが開かれ,弁V501b,V501c,V502a,V502b,V503a,V503c、V504a,V504cが閉じられている。これによって、第1の容器101aが受入れ容器として機能し、第2の容器101bが分析容器として機能し、第3の容器101cが分析終了液を貯留するとともに排出ラインに接続される移送容器として機能する。
図3では、弁V501c,V502b,V503a、V504aが開かれ,弁V501a,V501b,V502a,V502c,V503b,V503c、V504b,V504cが閉じられている。これによって、第2の容器101bが受入れ容器として機能し、第3の容器101cが分析容器として機能し、第1の容器101aが分析終了液を貯留するとともに排出ラインに接続される移送容器として機能する。
図4では、弁V501b,V502a,V503c、V504cが開かれ,弁V501a,V501c,V502b,V502c,V503a,V503b、V504a,V504bが閉じられている。これによって、第3の容器101cが受入れ容器として機能し、第1の容器101aが分析容器として機能し、第2の容器101bが分析終了液を貯留するとともに排出ラインに接続される移送容器として機能する。すなわち、切替手段を操作することによって、第1の容器101aと第2の容器101bと第3の容器101cが受入れ容器、分析容器及び移送容器として交互に切り替わる。
【0048】
これらの切り替えは時間と共に順次行われる。
図5は第1~第3の容器101a,101b,101cの切り替えパターンを模式的に示している。
図2に示す状態ではNMP水溶液の受け入れが第1の容器101aで行われ、分析が第2の容器101bを含む循環経路で行われる。すなわち、第1の容器101aは受入れ容器として機能し、第2の容器101bは分析容器として機能する。分析は2つのステップを含む。最初のステップでは、第2の容器101bを含む循環経路を形成した後、一定時間、循環ポンプ504で循環経路内のNMP水溶液を流動させる。これによって、NMP水溶液を攪拌・均一化させ、NMP水溶液の濃度ムラを緩和し、分析精度を高めることができる。次のステップではNMP水溶液の性状を、分析手段505,506,507を用いて測定する。上述のように、水分濃度や導電率(比抵抗)はインライン方式によって測定できるため、分析は短時間で終了するが、純度や色度の分析はサンプリングで行う必要があるため、より多くの時間を要する。インライン方式で測定する水分濃度や導電率(比抵抗)については、NMP水溶液が流動している状態で測定することが望ましいため、測定中も循環ポンプ504は稼動し続けることが好ましい。第3の容器101cには既に分析が終了したNMP水溶液が貯留されており、第3の容器101cからは下流側に一定流量でNMP水溶液が供給される。すなわち、第3の容器101cは移送容器として機能する。
【0049】
第1の容器101aがNMP水溶液で一杯になると、第1~第3の容器101a,101b,101cの切り替え操作をおこなう。第1の容器101aは分析容器となり、第2の容器101bは移送容器となり、第3の容器101cは受入れ容器となる。分析の結果所定の品質を満たしていないと判断されたNMP水溶液は、弁V507を開き、弁V506を閉じることにより、不良液貯留容器502に移送される。以上の切り替え操作によって
図3に示す状態となり、NMP水溶液の受け入れと分析と払出しが新たに開始される。受入れ容器として機能する第3の容器101cがNMP水溶液で一杯になると、
図4に示すように、第1の容器101aは移送容器となり、第2の容器101bは受入れ容器となり、第3の容器101cは分析容器となり、同様のプロセスが繰り返される。
【0050】
第1~第3の容器101a,101b,101cの容量は、受入量と分析に要する時間とを勘案して決定する。本実施形態では第1~第3の容器101a,101b,101cの上流側に廃液受槽501が設けられており、廃液受槽501からNMP水溶液が供給されるため、一定流量での受入れが可能である。この場合、一定時間(例えば分析の所要時間)に受入れるNMP水溶液の量を第1~第3の容器101a,101b,101cの容量とすることも可能である。しかし、廃液の発生量は変動する可能性があること、廃液受槽501が設けられない場合もあること、廃液がバッチ処理によって一気に受入れ容器に流入する可能性もあることなどを考慮すると、受入れ容器が一杯になった時点で切り替えを行うことが望ましい。分析は一定の時間を要するため、一定の時間を経過しないと分析容器の移送容器への切り替えはできないが、分析が終了した時点で受入れ容器が一杯になっていない場合は、受入れ容器が一杯になるまで待機させることができる。払出しについては、受入れ容器が一杯になったときに払出しが終わっていないと、移送容器の受入れ容器への切り替えができない。しかし、払出し流量の調整はポンプ107の制御によって可能であること、精製システムの処理容量は受入量に対して余裕をもって決められていることなどを考慮すれば、払出しが容器の容量の決定要因となる可能性は小さい。
【0051】
以上を勘案すると、第1~第3の容器101a,101b,101cは、分析が行われる間に受入れ容器が受入れる分析対象液の全量、あるいは供給ラインから供給される分析対象液の全量を受け入れる容量を有していればよい。例えば、第1~第3の容器101a,101b,101cの容量をQ、分析が行われる間に受入れ容器が受入れる分析対象液の量をQ1とすれば、Q≧Q1であればよい。Q=Q1であれば分析が終わると同時に受け入れ容器が一杯になり、Q>Q1であれば、分析が終わったときに受入れ容器はまだ一杯になっていない。この場合は、上述のように受入れ容器が一杯になるまで分析容器が待機する。なお、払出しが完了していることを条件にこの時点で容器の切り替えを行ってもよい。払出しについてはできるだけ定流量で且つ連続的に行うことが好ましいため、切り替えのタイミングに合わせて移送容器が丁度空になるように払出し流量を調整してもよい。
【0052】
第1~第3の容器101a,101b,101cには前述した理由により窒素ガスなどの不活性ガスが導入される。
図2に示す運転モードでは第1の容器101aにNMP水溶液が供給されるため、第1の容器101aに充填された不活性ガスはパージされる。第2の容器101bはNMP水溶液の出入りがないため、内部に充填された不活性ガスの量はほぼ不変である。第3の容器101cはNMP水溶液が放出されるため、第3の容器101cには不活性ガスが充填される。第3の容器101cには第1の容器101aからパージされた不活性ガスが母管L511を通して供給される。第1の容器101aに導入されるMNP水溶液の流量(または、第1の容器101aの気相部容積の単位時間当たりの増分)が第3の容器101cから排出されるNMP水溶液の流量(または、第3の容器101cの気相部容積の単位時間当たりの減分)より少ないときは、不足分の不活性ガスが不活性ガス供給母管L401から導入され、多いときは、余分な不活性ガスがブローラインL513から放出される。以上により、本実施形態では不活性ガス供給母管L401から供給する不活性ガスの量を削減することができる。
図3,4に示す運転モードでも、不活性ガスがパージされる容器と、不活性ガスが導入される容器と、不活性ガスの出入りがほぼない容器が順次切り替わり、
図2と同様の現象が生じる。
【0053】
図示は省略するが、本実施形態は払出し部311に適用することも可能である。この場合、
図1に示す払出し部311の第1~第3の容器311a,311b,311cがそれぞれ本実施形態の第1~第3の容器101a,101b,101cに対応する。
【0054】
(第2の実施形態)
図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る分析装置について説明する。本実施形態では払出し部311に対応する分析装置を例に説明する。本実施形態では相互に切り替え可能な第1及び第2の容器311a,311bと、回収機能だけを有するNMPの回収容器508と、が設けられている。第1及び第2の容器311a,311bは受入れ容器として機能するとともに、分析・移送容器として機能する。すなわち、本実施形態では第1の実施形態における分析容器と移送容器の機能が一つの容器に集約されている。また、本実施形態では循環経路と下流側への移送ラインの一部が共用化されている。以下、第1の実施形態との差異を中心に説明する。第1の実施形態と同じ機能を有するライン、弁等については第1の実施形態と同じ符号を用い、適宜説明を省略する。
【0055】
NMP精製液取り出し配管L308から第1及び第2の個別供給ラインL501a,L501bが分岐しており、第1及び第2の個別供給ラインL501a,L501bがそれぞれ第1及び第2の容器311a,311bに接続されている。第1及び第2の個別供給ラインL501a,L501bにはそれぞれ弁V501a、V501bが設けられている。従って、分析対象液の供給ラインであるNMP精製液取り出し配管L308は第1及び第2の容器311a,311bに切り替え可能に接続されている。また、第1及び第2の容器311a,311bに第1及び第2の個別排出ラインL502a,L502bがそれぞれ接続されている。第1及び第2の個別排出ラインL502a,L502bはラインL508に合流しており、第1及び第2の個別排出ラインL502a,L502bにはそれぞれ弁V502a、V502bが設けられている。ラインL508からラインL509が分岐し、ラインL509は回収容器508に接続されている。回収容器508は排出ラインL312に接続されている。ラインL509からラインL507が分岐し、ラインL507は不良液貯留容器502に接続されている。従って、分析終了液の排出ラインである排出ラインL312は、第1及び第2の容器311a,311bに切り替え可能に接続されている。
【0056】
第1及び第2の容器311a,311bに接続された第1及び第2の個別供給ラインL501a,L501b及び第1及び第2の個別排出ラインL502a,L502bは循環ラインの一部をなしている。第1の循環ラインは、ラインL508,ラインL504a、第1の個別排出ラインL502aからなり、第2の循環ラインは、ラインL508,ラインL504b、第2の個別排出ラインL502bからなっている。ラインL502a,L502b,L504a,L504b,L508は第1の循環ラインと、第2の循環ラインとに選択的に切り替え可能な循環ライン形成手段を構成する。弁V501a,V501b,V502a,V502b,V503a,V503bは、供給ラインであるNMP精製液取り出し配管L308と、排出ラインであるラインL508と、循環ライン形成手段を切り替え可能な切替手段を構成する。
図6では、弁V501a,502b,503bが開かれ,弁V501b,V502a,V503aが閉じられている。これによって、第1の容器101aが受入れ容器として機能し、第2の容器101bが分析容器として機能する。
【0057】
図10は第1及び第2の容器311a,311bの切り替えパターンを模式的に示している。前述のように、回収容器508はNMP精製液の回収機能だけを有しているため、時間によって機能が切り替わることはない。
図6に示す状態では、NMP精製液の受け入れが第1の容器311aで行われ、分析が第2の容器311bを含む循環経路で行われる。すなわち、第1の容器311aは受入れ容器として機能し、第2の容器311bは分析容器として機能する。分析が終了すると第2の容器311bのNMP精製液は回収容器508に移送される。具体的には
図7に示すように弁V501a,V502bが開かれ,弁V501b,V502a,V503a,V503bが閉じられる。これによって、循環ライン形成手段によって形成された循環経路が遮断され、第2の容器311bが移送容器として機能する。この間、第1の容器311aは受入れ容器として機能している。分析の結果所定の品質を満たしていないと判断されたNMP精製液は、弁V507を開き、弁V506を閉じることにより、不良液貯留容器502に移送される。
【0058】
第1の容器311aがNMP精製液で一杯になると、第1及び第2の容器311a,311bの切り替え操作をおこなう。具体的には、弁V501b,V502a,V503aが開かれ,弁V501a,V502b,V503bが閉じられる。第1の容器311aは分析容器となり、第2の容器311bは受入れ容器となる。従って、第1及び第2の容器311a,311bの容量は、分析と排出ラインからの排出に要する時間の間に前記受入れ容器が受入れる分析対象液の全量、あるいは供給ラインから供給される分析対象液の全量を受け入れ可能に設定することが望ましい。以上の切り替え操作によって
図8に示す状態となり、NMP精製液の受け入れが第2の容器311bで行われ、分析が第1の容器311aを含む循環経路で行われる。すなわち、第1の容器311aは分析容器として機能し、第2の容器311bは受入れ容器として機能する。分析が終了すると第1の容器311aのNMP精製液は回収容器508に移送される。具体的には
図9に示すように弁V501b,502aが開かれ,弁V501a,V502b,V503a,V503bが閉じられる。これによって、第1の容器311aが移送容器として機能する。この間、第2の容器311bは受入れ容器として機能している。受入れ容器として機能する第2の容器311bが一杯になると、
図6に示すように、第1の容器311aは受入れ容器となり、第2の容器311bは分析容器となり、同様のプロセスが繰り返される。
【0059】
以上説明したように、切替手段は、第1の容器311aと第2の容器311bの一方が、供給ラインであるNMP精製液取り出し配管L308に接続される受入れ容器として、他方が循環経路を形成する分析容器として交互に切り替わるように、供給ラインと循環ライン形成手段を切り替えることができる。また、切替手段は、分析の終了後、受入れ容器として機能している容器が供給ラインに接続された状態で、分析容器として機能している容器が排出ラインに接続されるように、循環ライン形成手段及び排出ラインである排出ラインL312を切り替えることができる。
【0060】
回収容器508は削除することも可能である。例えば、リチウムイオン二次電池の製造システムはNMP精製液の受入れ槽を有していることがある。受入れ槽にはリサイクルされたNMPだけでなく新たなNMPが補充される。このような受入れ槽では、一定流量で継続的にNMP精製液を供給する代わりに、大流量で一気に供給できる場合がある。分析装置を払出し部311に適用する場合、ポンプの容量を増やし、分析の終わったNMP精製液を一気に払い出すようにすれば、回収容器508を設ける必要はない。この場合、移送の終わった移送タンクは次の切り替えのタイミングまで空となるが、それによって運用上のメリットが生じることも考えられる。分析装置を受入れ部101に適用する場合も、NMP精製システムが同様の受入れ槽を備えていれば回収容器508を省略することができる。
【0061】
分析の結果不良と判定され、不良液貯留容器502に貯留されたNMP精製液の処理は、分析結果に応じて決定することができる。再度処理を行うことで判断基準を満たす可能性が高い品質レベルの場合、不良NMP精製液は受入部101に戻すことができる。水分量が過多であり、その他の判断基準を満たす場合は脱水処理を行うことで判断基準を満たす可能性が高い。そこで、このような場合は第1のサブシステム100での再処理を省略し、1次処理液槽106に不良NMP精製液を移送することができる。純度が規定値を満たしていない不良NMP精製液はイオン交換装置104の入口側に戻すことができる。また、不良の程度が高く再度処理を行うことで判断基準を満たす可能性が低い場合は、廃棄処分とすることもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 NMP水溶液の精製システム
100 第1のサブシステム
101 受入部
101a,101b,101c 受入部の第1~第3の容器
102 第1の精密ろ過膜装置
103 膜脱気装置
104 イオン交換装置
105 第2の精密ろ過膜装置
106 1次処理液槽
107 ポンプ
108 ヒータ
L101~L106 第1~第6のNMP水溶液供給ライン
L107 戻りライン
V101,V102 弁
200 第2のサブシステム
201 浸透気化膜装置
202~204 第1~第3の浸透気化膜モジュール
202a,203a,204a 濃縮室
202b,203b,204b 透過室
202c,203c,204c 分離膜(浸透気化膜)
205 第1のヒータ
206 再生式熱交換器
207 第2のヒータ
208 第3のヒータ
209 冷却器
210 メカニカルブースターポンプ
211,212,213 第1~第3の熱交換器
214,215,216 第1~第3の透過液タンク
217,218,219 第1~第3の真空ポンプ
220,221 第4,第5の熱交換器
223 温度警報表示器
224 ポンプ
225 流量警報表示器
226 冷却器
L201 第7のNMP水溶液供給ライン
L202,L203 第1,第2の接続ライン
L204 NMP濃縮液排出ライン
L205 透過液回収ライン
L206,L209,L212 第1~第3の透過液排出ライン
L207,L210,L213 冷却ライン
L208,L211,L214 第1~第3の透過水排出ライン
L215 NMP濃縮液の戻りライン
L220 第1の冷却水排出ライン
V201~V206 弁
300 第3のサブシステム
301 中継槽
302 再生器
303 蒸発缶
304 蒸気取り出し缶
305 コンデンサ
306 ポンプ
307 循環ポンプ
308 ポンプ
309 真空ポンプ
310 ガスクーラ
311 払出し部
311a,311b,311c 払出し部の第1~第3の容器
L301 第1のNMP濃縮液供給ライン
L302 第2のNMP濃縮液供給ライン
L303 循環ライン
L304 第1のNMP精製ガス取り出しライン
L305 第2のNMP精製ガス取り出しライン
L306 NMP濃縮液取り出しライン
L307 第3のNMP精製ガス取り出しライン
L308 NMP精製液取り出し配管
L309 NMP濃縮液の不純物排出ライン
L310 負圧ライン
L311 冷却水排水ライン
V301~V304 弁
L401 不活性ガス供給母管
L402~L407 不活性ガス供給ライン
U402,U403,U404,U405 ガスシールユニット
501 廃液受槽
502 不良液貯留容器
504 循環ポンプ
505 サンプリング点
506 水分濃度計
507 導電率計(比抵抗計)
508 回収容器
L501a,L501b,L501c 第1~第3の個別供給ライン
L505a,L505b,L505c 第1~第3の個別排出ライン
L512a~L512c 第1~第3の不活性ガス供給ライン
L511 母管